2021/03/28

自発的に蠕動を繰り返すアカタテハ垂蛹の謎

 

アカタテハの飼育記録#10

前回の記事:▶ アカタテハ蛹の体内寄生チェック
2020年10月下旬・深夜

触診で体内寄生されていない健常個体と判定された2頭のアカタテハVanessa indica)垂蛹b,cを卓上に置いていると、誰も触れていないのにときどきブルブルッと自発的に暴れだすことに気づきました。 
タイミングが予測不能で突発的なので、ハンディカムで長撮り監視してみました。 
屋外で工事している騒音・振動に反応しているのか?と思ったりしたのですが、深夜の静かな時間帯(草木も眠る丑三つ時)でも変わらずに突発的な蠕動を繰り返していました。 
「蛹は全く動かないもの」という先入観があるヒトが見れば、まるで怪奇現象です。 
ブルブルッと自発的に震えてから、しばらく左右にブラブラと揺れています。 
睡眠中のヒトがたまにビクッと急に動くジャーキング現象みたいなものなのかな? 
変態期間中に何度も繰り返すと体力を無駄に消耗するのではないかと心配になります。 
白色LED照明を点けると眩しくて警戒するかと思いきや、照明の有無は無関係で蠕動していました。 
もしかすると私も気づかないぐらい微小なアリやダニなどがアカタテハ垂蛹の上を這い回っていて、それを振り落とそうと暴れていたのかもしれません。 

暴れているのはいつも特定の個体(右)だけ、というのも不思議です。 
おとなしくしている左の個体は表面が黒ずんでいて、変態の進行が早いようです。 (翌日に羽化しました)
羽化が近づくと運動性が消失(低下)するのかもしれません。 
隣の個体の振動が伝わって蠕動が連鎖するということもありませんでした。 



【追記】
大谷剛『昆虫―大きくなれない擬態者たち』によると、
 蛹は基本的に動けないが、ピクリとも動かないのは羽化がごく近いときだけで、たいていはピクピクと腹部を動かす。動かないと思ったものが、ちょっとだけ動くと、ギクッとするものだ。蛹はその効果を狙う。
 「蛹」という漢字の「つくり」のほうは、ピクピクとかヒラヒラとか動くさまを表す。(p58より引用)

最後の一文が初耳で面白く思ったのですが、『Super日本語大辞典』の漢和辞典で「蛹」の解字を調べると、違うことが書いてありました。

諸説あり、ということなのでしょうか?

会意兼形声。「虫+音符甬(ヨウ)(=通。上下つつぬけ、筒型をなす)」。筒の形のまゆや、からの中にこもっており、筒型の外形をした虫。 


2021/03/27

ハイタカとハシボソガラスの激しい空中戦:モビング行動(野鳥)

 

2020年11月中旬・午後14:45頃・くもり 

川沿いに広がる農地の上空を見慣れない猛禽が飛び回っています。 
この近辺でよく見かけるノスリかと初めは思ったのですが、大きさも飛び方も翼の下面の斑紋も明らかに違います。 
その正体はなんと憧れのオオタカAccipiter gentilis)でした。 
この地域でオオタカが生息している確証を遂に得ることができました。 
▼関連記事(2年前の撮影:今回の撮影地点の対岸付近) 
オオタカ?との遭遇(野鳥)

その正体は、ハイタカAccipiter nisus)でした。
目測ではノスリより小さく、軽快な羽ばたきと滑空を交互に繰り返しながら広大な農地の上空をグルグル飛び回っていました。 
胴体の斑紋が縦縞ではなく細い横縞なので、オオタカの成鳥と分かります。 
背面はあまりよく見えませんでした。 

ガララララ…♪というカラスの嗄れ声が聞こえたと思ったら、1羽のハシボソガラスCorvus corone)がハイタカを迎撃するために下から全速力で飛来しました。 
カラスによるモビング(擬攻撃)が始まりました。 
ハシボソガラスは執拗に追い回すものの、ハイタカの方が高高度を飛んでいるので攻守逆転し、追われる立場になりました。 
体格はハイタカよりもカラスの方がやや大きいです。 

猛禽を猛追するカラスが高圧線になぜか一瞬止まってからすぐに飛び出し、追跡を再開。(@1:14) 
激しい空中戦で疲れた翼をちょっと休めるためというよりも、高圧線に衝突しそうになったカラスが慌てて急停止したようにも見えます。 (危険物の回避行動)

カラスと互角に空中戦を繰り広げる猛禽を見るのは初めてかもしれません。 
ハイタカは小型なので、小回りの効く敏捷な飛翔能力が持ち味です。 
空中で互いに接近すると反転して両足を伸ばし相手を蹴ろうと威嚇します。 
ただし、実際に相手を蹴る本気の攻撃シーンは一度も見られませんでした。 
ハイタカが得意の急降下(ダイブ)からの反転でカラスの追跡を振り切る様は圧巻です。 
モビング中にハシボソガラスはたまに嗄れ声♪を発したのに対して、ハイタカは鳴きませんでした。(聞き取れず) 

※ カラスの鳴き声♪が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

素人目には互角に戦っていたように見えたのですが、カラスがモビングに成功したようです。 
どういう決着がついたのか、最後はハイタカが空域を離脱し、水平に飛び去りました。 
勝ったハシボソガラスは、近くの電柱の天辺に止まり、周囲の縄張りを油断なく見回しています。 
縄張りから排除したハイタカをしつこく深追いすることはありませんでした。 
このハシボソガラスの性別を知りたいところです。 
モビング中につがい相手が加勢に駆けつけるかと期待したのですが、現れませんでした。 

空中戦を1/5倍速のスローモーションでリプレイしますので、息を呑む攻防をご堪能ください。(@3:10〜) 


【追記】
YouTubeのコメント欄にて海外の視聴者数名からオオタカではなくハイタカ(sparrowhawk)ではないか?とのご指摘をいただきました。
まず、体格の問題です。
映像の猛禽はハシボソガラスよりも明らかに小さいです。
図鑑では、ハイタカ<ハシボソガラス<≒オオタカとなっていました。
これだけでもオオタカは除外できそうです。
「オオタカとハイタカの見分け方」でネット検索して勉強してみました。
動きの早い映像から切り出したスナップショットしかないので、識別点をすべて検討できません。(例えば目の回りの眉斑が不明)
私にも明快に理解できたのは、次のポイントです。
最長初列風切の暗色横斑はハイタカでは5~7本なのにたいし、オオタカでは7~8 本です(参考サイト:図鑑.jp掲示板の投稿の回答より引用)

下に掲載した写真を拡大すると、最長初列風切の暗色横斑が6本なので、確かにハイタカのようです。 

という訳で、遅ればせながらオオタカではなくハイタカに訂正しておきます。

「オオタカだと嬉しいな…」という願望に引きずられたようです。



キイトトンボ♂の身繕いと飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年7月下旬・午後15:20頃・くもり
▼関連記事(6年前の撮影): キイトトンボ♂
湿地帯の横に繁茂するクズの葉にキイトトンボCeriagrion melanurum)が止まっていました。 
本種は翅をしっかり閉じて休息します。 

マクロモードでカメラのレンズをそっと近づけると、右前脚で顔(複眼)を拭っていました。 
化粧が済むと少し飛んで、今度はヨモギの葉先に着陸しました。 
何か微小な昆虫を空中で捕食したようで、口をモグモグさせていました。 

クズの葉から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:54〜)

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