2024/03/26

タヌキの溜め糞場で狩ったキンバエを隠れ家に運んでから捕食するサビハネカクシ

 

2023年7月上旬・午後14:00頃・晴れ 

里山のスギ林道でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場sを定点観察しています。 
前年(2022年)にはトレイルカメラを設置して監視したのですが、今季はカメラの台数が足りず、他所に回しています。 

この日は比較的新鮮な糞が残されていました。 
未消化の種子が糞にたくさん含まれています。 
この時期のタヌキはヤマザクラやウワミズザクラの果実を食べたのではないかと予想しているのですけど、いつか真面目に糞分析をしないといけません。 

糞塊に多数群がっていたハエはキンバエの仲間(種名不詳)がメインで、他にはニクバエの仲間(種名不詳)およびキバネクロバエMesembrina resplendens)が来ていました。 
甲虫ではクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫、サビハネカクシOntholestes gracilis)および謎の糞虫(種名不詳)が集まっていました。 

複数いたサビハネカクシの中で一匹に注目してみましょう。
獣糞から吸汁しているキンバエ類を追い回すものの、ハエは素早く飛んで逃げてしまいます。 
サビハネカクシが狙うのはハエ類だけで、硬い鞘翅で身を守る甲虫のクロボシヒラタシデムシを襲うことはありません。 
失敗続きの狩りを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
最初の例ではハエに襲いかかるのではなく、なぜか尻尾を振ってハエを追い払っていました。 
微小なアリ(種名不詳)にも襲いかかったものの、小さ過ぎて逃げられました。(邪魔なアリを狩場から追い払ったのかも知れません。) 
しばらくすると、サビハネカクシは狩りを諦めて糞塊の縁の下に潜り込みました。 

次は何を撮ろうかと私が目移りしている間に、別個体のサビハネカクシが溜め糞上で狩りに成功しました! 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、待ち伏せ猟ではなく、キンバエの斜め後ろから忍び寄り、襲いかかって仕留めていました。 
油断していたキンバエは激しく羽ばたいて逃げようとするものの、サビハネカクシは獲物の左翅の根元付近にしっかり噛み付いていました。 
溜め糞場で捕食者による殺戮が行われても、周囲の食糞性昆虫たちは全く無関心でした。 

胸部を噛み砕かれた獲物がおとなしくなると(絶命)、サビハネカクシは急に方向転換して、獲物を咥えたまま走り出しました。 
ライバル(捕食者)の多い溜め糞場では獲物を横取りされるリスクがありますから、急いで離脱したのでしょう。 
ときどき立ち止まると、少し上に曲げた尻尾を嬉しそうにグルグル回しています。 
スギ林床の落葉落枝をどんどん乗り越えて進んで行きます。 
ようやくスギ落ち葉の上で落ち着くと、落ち着いて捕食を開始。 
翅を広げたまま動かなくなったキンバエを仰向けにして胸部を食べています。 
肉食性のハネカクシは、獲物の体液を吸汁するのではなく、固形物として肉を噛み砕いて飲み込むのだと思うのですけど、じっくり観察できませんでした。 
タヌキの溜め糞に集まる他の虫に気を取られて私がちょっと目を離したら見失ってしまったたのです。 
スギ落ち葉の上で静止すると、サビハネカクシは保護色で全く目立ちません。 
完食するまで見届けるべきでしたね。 

サビハネカクシが狩りに成功して獲物を捕食したシーンは、これが初見です。 
念願だった狩りのシーンがようやく撮れて感無量。 
狩りの直後に離れたところまで獲物を持ち去るとは知りませんでした。 
貯食したり求愛給餌したら面白いのにな…と期待したのですけど、獲物を自分で食べました。 


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2024/03/25

アナグマが転出した後の巣穴に出入りする野ネズミ同士が縄張り争い【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月上旬 

二次林でニホンアナグマMeles anakuma)が子育てをしてから引っ越した空き巣に最近ではホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が住み着いています。 
アナグマもときどき戻ってきては巣穴のメンテナンスしているようです。
つまり、現時点では誰が所有する巣穴なのか流動的な状態です。
トレイルカメラに写る野ネズミ(ノネズミ)の探餌行動をまとめました。
巣穴の主であるアナグマが引っ越した後で野ネズミが堂々と巣穴に出入りする頻度が増えるかと予想したのですが、そんな単純な2種間の問題ではないので難しいです。 


シーン0:6/29・午後13:28・気温27℃(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
右奥の巣穴Rと左手前の巣穴Lの2つがあります。 


シーン1:7/2・午後20:06・気温23℃(@0:04〜) 
ある晩に2つの巣穴LRの中間地点を野ネズミがうろついてから、奥の巣穴Rに入りました。 

その間、ザトウムシの一種が監視カメラのレンズ上を這い回っています。 
夏の時期はザトウムシのせいで監視対象の野生動物がしっかり撮れないことが多いので、何か対策する必要がありそうです。 
忌避剤を使いたくなりますが、その異臭で嗅覚の鋭い哺乳類が警戒したり来なくなったら元も子もありません。
トレイルカメラに近づけないように何か物理的なバリアを設置するしかなさそうです。


シーン2:7/3・午前2:42・気温20℃(@0:50〜) 
日付が変わった深夜未明に野ネズミが再び現れました。 
画面の右下に姿を消したということは、手前の巣穴Lに入ったのかもしれません。 


シーン3:7/3・午後20:31・気温21℃(@1:09〜) 
野ネズミは夜行性なので、昼間は出没しません。 
次に登場したのは、すっかり暗くなった晩でした。 
今回は珍しく2匹が同時に写っていました。 

まず1匹目の個体aがアナグマの旧営巣地(セット)を徘徊してから、奥の林縁で灌木の根本に立ち止まって何かしています。 
採食なのか毛繕いなのか、やや遠くてよく見えません。 
その辺りには有毒植物のナニワズ(別名エゾナニワズ、エゾナツボウズ)という小低木の群落があり、この時期には赤い実がなっています。
まさか野ネズミはナニワズの熟果を食べに来たのかな?
殺鼠剤の原料として使われるクマリンと似た構造の有毒成分を含んでいるそうです。
監視カメラに写る野ネズミの数が一時期よりも減ったのは、テンやフクロウなど捕食者の活動が盛んになったからだと思っていたのですが、もしかしてナニワズの実を食べて死んでしまったからなのでしょうか?
普通に考えれば、野ネズミは有毒植物ナニワズを忌避するように進化するはずです。
ドブネズミやクマネズミでは殺鼠剤に対する薬剤抵抗性を獲得した個体(スーパーラット)の存在が報告されています。
当地の野ネズミもナニワズへの耐性をつけたとしたら面白い話です。

しばらくすると、右奥の巣穴Rから野ネズミの別個体bが外に出て来ました。(赤丸@1:52〜)
bが左へ行って灌木の背後に回り込む間、aは油断していてbの存在に全く気づいていないようです。 
縄張り争いの追いかけっこが始まった途端に、残念ながら1分間の録画時間が終了してしまいました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:13〜)、背後から奇襲されたaは驚いて大きく跳んで逃げ出していました。 



シーン4:7/4・午前0:29・気温19℃(@2:24〜) 
日付が変わった真夜中に現れた野ネズミは、餌を探し歩いて右から左へ横切りました。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 




地下に巣穴を掘った土を分業で外に捨てるクロオオアリ♀の群れ

 

2023年7月上旬・午後14:55頃・くもり 

里山で山道の真ん中に乾いた盛り土がこんもりと堆積していました。 
細い落枝が盛り土で埋もれかけています。 
よく見ると、盛り土の縁にクロオオアリCamponotus japonicus)の巣口が2つ並んでいるのを見つけました。 
ワーカー♀が巣内を掘り広げた土塊を大顎に咥えて外に続々と出て来ると、巣口から離れたところでポトリと捨てます。
1箇所に捨てた土砂が盛り土を形成しているのです。 
地中から掘り出したばかりの土塊は湿っていて黒っぽいですが、巣外で乾くと白っぽくなります。 
したがって、盛り土の色の違いをよく見るだけでも、排土作業の様子を窺い知ることが出来ます。

普通種なのに、クロオオアリの造巣行動(排土行動)をじっくり観察するのはこれが初めてでした。 
巣口横の盛り土が次第に成長する様子を長時間の微速度撮影で記録してみたかったのですが、残念ながらこの日は三脚を持参していませんでした。 
「小さなことからコツコツと」「塵も積もれば山となる」 

土粒を捨てに行く地点は個体によって決まっているのか(道標フェロモンを分泌しているか?)、それとも毎回ランダムなのか、個体標識して調べたら面白そうです。 
遠出しないで巣口のすぐ外に砂粒を捨てる個体は臆病なのか、それとも要領が良い(ちゃっかりズルしている)のでしょうか? 
しばらくすると驚いたことに、巣内から巣口Lまで土塊を運ぶ個体(地下部隊)と、巣外で巣口Lから土捨て場まで運んで往復する個体(地上部隊)とで、分業が始まりました。 
女王アリや現場監督に指示された訳でもないのに、分業が自然に生まれるのは凄いですね。 
分業によって各個体が往復する距離を短くできますから、流れ作業の効率が上がるはずです。 
火事の消火現場に集まったヒトがバケツリレーをするのも同じ理由です。
帰巣Lするのに邪魔な砂粒を取り除く行動が結果的に分業になっているだけかもしれません。 
クロヤマアリなど他の種類のアリでこのような分業を私はこれまで見たことがありません。

巣穴は内部でつながっていると思われますが、クロオオアリ♀は2つの巣口を使い分けているようです。 
排土のために出てくるのはいつも左の巣穴Lで、右の巣穴Rには採餌のために出入りしています。 
土塊を外に捨ててから巣内に戻る個体は必ず真っ直ぐ帰巣Lし、巣口Rには入りません。 
( 巣口Rから出て巣口Lに入る個体がたまにいました。 )
空荷で出巣Rする個体は採餌に出かけるのでしょう。 

ひときわ大型の個体が何匹も巣口Rの外に出てきて身繕いしています。 
大型の個体は力が強いはずなのに、造巣・排土行動に従事しない点が興味深く思いました。 
巣外で仲間を護衛するソルジャー(兵アリ)なのかな? 

巣口Lからアリの触角だけ覗いて見えます。 
外敵が侵入しないように、門衛が見張りを務めているのでしょう。 
門衛は穴掘り・排土作業に従事することはなく、専業のようです。 

山道に転がっている細い落枝が盛り土で埋もれかけているのは果たして偶然でしょうか? 
クロオオアリにとってこの落枝が邪魔で取り除きたくても非力で動かせないとしたら、仕方なく土砂で埋めようとしているのかもしれません。 
邪魔な障害物を土砂で隠すアリの集団行動をテレビの動物番組で見たことがアリます。 

後半は採寸のために、土捨て場の小山の横に15cmの白いプラスチック定規を置いてみました。 
定規という邪魔な異物を巣口の横に一時的に置くだけでなく、もしも長期間放置したら、アリは土砂で埋めるかな? 


 

↑【おまけの動画】 
クロオオアリの巣穴を見つけた私が、動画を撮り始めてすぐの様子です。 
巣口の近くから見下ろしている私を警戒しているのか、クロオオアリ♀は土塊を咥えて遠くまで捨てに行かなくなりました。 
巣口からおそるおそる顔を出しても、すぐに奥へ引っ込んでしまいます。 
アリの視力が悪くても、私の作る大きな影を恐れているようです。 
あるいは、じっと撮影しているつもりでも私の靴底から生じる微弱な振動が地中のアリには気になるのかも知れません。
一方、空荷で外出から帰巣する個体は私の存在を気にしていません。 

そこで試しに、巣口のアリから私の姿が見えないように、数歩横にずれてから続きを撮るようにしました。 
するとアリはようやく警戒を解いてくれて、巣外に土砂を捨て始めたのです。 
冒頭で紹介した動画がそれです。
私が巣口から遠くに離れるほど、アリたちはリラックスして自然な行動を見せてくれるようになった気がします。
退屈な前編を編集でただ捨てる(カットする)のは惜しいので、私的な記録としてブログ限定で公開しておきます。 
あるいは何か別の理由で巣外に出てこれなかったのかも知れません。 

余談ですが、近くでひたすら鳴き続けているホトトギス♂(Cuculus poliocephalus)の囀りさえずり♪が今まで聞いたことのない独特の節回し(方言? 変奏曲?)で印象に残りました。 


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