2024/03/24

前の家主ニホンアナグマが一時帰宅した匂いを巣口に嗅ぎ取ると居候のホンドタヌキは慌てて逃走【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月上旬〜中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後もトレイルカメラ2台で古い巣穴の監視を続けています。 
この時期に写ったホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の動向をまとめました。 


シーン1:7/9・午後15:45・くもり(@0:00〜) 
旧機種のトレイルカメラにしては珍しく、昼間にフルカラーで録画されていました。 (気まぐれな症状)
この時期のタヌキ成獣(親タヌキ)が明るい日中も活動するのは、育ち盛りで腹を空かせた幼獣に餌を取ってくる必要があるのでしょう。 
アナグマの巣口Rを覗き込んでいます。(左右2つの穴が並んでいます。) 
散々ためらった挙句に、結局中には入らず、左へ立ち去りました。 

尻尾に特徴的な黒班があるかどうか、しっかり後ろ姿を見せてくれませんでした。 
アブなのかハエなのか分かりませんが、昼間に巣穴の周辺を常に飛び回っているということは、完全な空き巣ではなく依然として何者か獣が巣穴を利用していることを示唆しています。 


シーン2:7/9・午後15:46・くもり・気温27℃ (@1:00〜) 
同じ時刻に別アングルに設置した監視カメラでも撮れていました。 
画面の左端にちらっと写っただけで、巣口Lには行かず、左奥に?立ち去りました。 


シーン3:7/9・午後21:47(@1:07〜) 
同じ日の晩にもタヌキが来ていました。 
夏毛のタヌキは、かなりほっそりした体型に見えます。 
目が大きく爛々と光っていますし、初めはハクビシンかと思ったぐらいです。 

夜のアナグマ営巣地(セット)にタヌキが堂々と来るということは、ここにはもうアナグマ一家は住んでいないのでしょう。 
巣口Rの縁を回り込んで慎重に匂いを嗅いでから、巣穴Rの中にそっと入りました。 

白っぽい尻尾の中央部に滴状の小さな黒班▼がある個体でした。 
今はこの個体のタヌキがアナグマの巣穴Rをねぐらとしてときどき利用しているようです。 
ただの内見(偵察)だった可能性もありますけど、出巣Rするシーンは撮れていません。 


シーン4:7/11・午前8:51・晴れ・気温25℃(@2:07〜) 
次にタヌキの姿が写ったのは、2日後の午前中でした。 
2つの巣口LRの間を歩いて通り、巣口Rの横で立ち止まりました。 

林床の木漏れ日が美しく撮れています。 
二次林の葉が鬱蒼と生い茂り、林冠ギャップがほとんどありません。 


シーン5:7/11・午前8:52・晴れ・気温25℃(@2:36〜) 
同じ時刻に別アングルのトレイルカメラでも撮れていました。 
旧機種に特有の症状で、昼間なのにフルカラーで録画されません。 

タヌキが巣口Rの横を通り過ぎてから林縁の獣道で立ち止まり、身震いしてから再び歩き出しました。 
左奥を気にしています。 
尻尾に例の黒斑▼があるような気もしますが、後ろ姿をしっかり見せてくれませんでした。 


シーン6:7/11・午前16:13・(@2:58〜) 
同じ日の夕方近くにタヌキがまた奥の二次林から登場。 
獣道を辿ってまっすぐ巣口Rへ向かってきたものの、中には入りませんでした。 
巣口の匂いを嗅ぐと、慌てて右へ走り去りました。 
音量を上げてもアナグマが威嚇する鳴き声♪は聞き取れず、直後にアナグマのヘルパー♂が巣口Rから顔を出すこともありませんでした。 
実は同じ日の夜明け前にアナグマのヘルパー♂が営巣地(セット)に戻って来ており、巣穴Rにも出入りしていたことが動画に残されていました(映像公開予定)。 
前の家主の残り香を嗅ぎ取って、慌てて退散したのでしょう。

タヌキとアナグマの動画を別々に切り分けて編集してしまいましたが、今思うと単純に時系列順に見せた方が分かりやすかったですね。

空き巣を巡って直接的な闘争(争奪戦)はなくても、匂い付けで所有権を互いに主張し合っているらしく、タヌキとアナグマ(同じ穴のむじな)の間で興味深い攻防戦(心理戦?)が続きます。 
つまり、タヌキは力づくでアナグマの巣穴を乗っ取った訳ではありません。

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【参考文献】
島田将喜; 落合可奈子. アナグマ (Meles anakuma) とタヌキ (Nyctereutes procyonoides) が利用する巣穴付近における行動の違いと時間的ニッチ分化. 哺乳類科学, 2016, 56.2: 159-165.
全文PDFが無料でダウンロードできます。
センサーカメラで撮れた動画を統計的に細かく解析した研究で、興味深く拝読しました。
アナグマが掘った巣穴にタヌキが侵入し、2種が同じ巣穴を利用する時間帯をずらして住み分けることがよくあるそうです。
アナグマとタヌキは時期,時間帯をずらして同一の巣穴を利用することによって,両種が時間的ニッチ分化を実現していることが示唆された.タヌキはアナグマに比べて巣穴付近での探索行動の持続時間が長く,その割合も多かった.アナグマは巣穴内をより頻繁に利用することが示唆された.タヌキは嗅覚を用いた探索行動をおこなうことで,アナグマとの出会いを回避しつつ巣穴を共有しているものと考えられる. (論文の概要より引用)



つづく→怪我した右後脚をかばって3本足で痛々しく跛行するホンドタヌキ♂が排尿マーキング【トレイルカメラ】


山道で死んでいたオオスズメバチ♀の謎

2023年7月上旬 

里山の急峻な山道でオオスズメバチ♀(Vespa mandarinia japonica)の死骸を見つけました。 
複眼が白く変色しています。 
足先以外は目立った外傷や破損がありませんし、おそらく昆虫病原菌や虫カビに感染して斃死したのでしょう。 
いつ死んだのか、死亡時期が私には分かりません。 
昨シーズンのワーカー♀が死んで雪の下に埋もれていたとしたら、夏までに死骸がここまできれいに残らず分解されてしまう気がします。 
例えば、なぜアリが群がってオオスズメバチ♀の死骸を解体し巣に持ち去らなかったのか不思議です。
それとも越冬明けの創設女王が感染してしまったのでしょうか。 
心臓破りの急坂を登る途中だったため、体長を採寸するなどじっくり調べる余力がありませんでした。 

素人目には、これから冬虫夏草の一種ハチタケが育ちそうな予感がしたのですけど、定点観察に通えばよかったですね。 
しかし山道の真ん中に転がっていたので、たまに往来する登山客やタヌキなどの野生動物に踏まれてしまいそうです。 
かと言って、もしオオスズメバチの死骸を採集して持ち帰ったとしても、室内でハチタケが成長できる最適の培養条件(温度、湿度)が分かりません。

ウツボグサの花から花へ飛び回り採餌するトラマルハナバチ♀【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年7月上旬・午前11:45頃・くもり 

里山の麓に近い山道に沿って咲いたウツボグサの群落でトラマルハナバチBombus diversus diversus)のワーカー♀が忙しなく訪花していました。 
シソ科の唇形花に正当訪花で吸蜜する蜂の後脚を見ると、花粉籠に茶色の花粉団子を付けています。 

トラマルハナバチ♀の採餌行動を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:30〜) 
トラマルハナバチは顔の幅が細いので、花筒の奥に顔を突っ込みやすくなっています。 
花筒から長い口吻を引き抜きながら、左右の中脚で同時に胸背と頭部を拭い、付着した花粉をまとめています。 
次の花に飛びながら空中でも身繕いを行い、後脚の花粉籠に移しています。 
飛翔中も長い口吻を伸ばしたままでした。 (邪魔にならないよう後方に向けている。)
一連の動きに無駄がありません。

関連記事(11年前の撮影:吸蜜のみ)▶ トラマルハナバチ♀がウツボグサに訪花 


トラマルハナバチの他にはセセリチョウの仲間(イチモンジセセリ?)も訪花していたのですが、蜂の撮影を優先している間に見失ってしまいました。

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