2020年11月中旬・午前11:24〜11:43・晴れ
野生ニホンカモシカ(Capricornis crispus)が山から里に降りて来て、段々畑(田んぼ?)になった休耕地で採食していました。
この個体を長時間追い回して夢中で撮影したのですが、その中でフキの葉を食べているシーンを抜粋しました。(※追記参照)
北国のカモシカは体毛が白っぽく、背景が秋の枯れ草だと目立ちません。
角や外耳は無傷で、個体識別できそうな特徴がありませんでした。
地面に生えた草本植物を食べているようです。
背後の土手にフキの群落が見えていますし、カモシカが顔を上げた際に緑の大きな丸い葉を口にしていたので、採食メニューはおそらくフキの葉だろうと判明しました。
どうやらフキの葉ばかりを選んで次々と採食しているようです。
日に照らされた休耕地から陽炎が立ち上っています。
後半、ニホンカモシカは私を警戒して斜面を登り返します。
山へ帰りながらもあちこちでフキの葉の採食を続けていました。
撮影中にこの個体は私に対して一度も鼻息威嚇をしませんでした。
里はヒトの縄張りだと知っていて、遠慮がちなのかな?
普段から人馴れした個体なのかもしれません。
斜面でカモシカは常に私よりも上に位置しているので、心理的に優位を感じてあまり私が怖くないのでしょう。
最初は手持ちカメラで撮っていたのですが、長期戦になると疲労が激しくなるので、後半は三脚を使いました。
しかし、カモシカが移動するたびに三脚の水平を取り直したり画角を調節し直したりするのがとても面倒臭いのです。
むしろ一脚のように使った方が楽でした。
私は手ブレ云々よりも野生動物の決定的瞬間を撮り逃がす方が悔しいので、三脚を使うかどうかは一長一短ですね。
もっと三脚にお金を掛けてグレードアップすれば自由雲台が使いやすくなるのかもしれません。
※【追記】
ほぼノーカットの長編動画を改めて記事にしました。
【追記2】
平田貞雄『ニホンカモシカ・ミミの一生』は生後間もないカモシカを引き取って6年間飼育した貴重な記録です。
生後約60〜100日目の期間に筆者はカモシカの食べる植物の好みを徹底的に調べています。(p45〜50)
0:全く食べない
1:くわえて止める
2:食べ始めて中止する
3:食べる
4:好んで食べる
のように植物嗜好度指数を定めて植物1種につき8回以上ランダムに実験を繰り返して平均を取った結果、♀ミミのフキの葉の嗜好度は1.17でした。
フキは7月下旬にテストし、「初め食べたが後で食べなくなった」と記されています。
2歳以後の嗜好度についてはテストしていません。
私が観察した個体は幼獣ではなく明らかに成獣です。
大人になるとフキのほろ苦さが好きになるのでしょうか?
筆者(平田貞雄氏)も1頭でしか調べていないので、個体差や地域差があっても不思議ではありません。
季節によってフキの葉の味(忌避物質の含有量)が変化するのかもしれません。
今回、私は採食現場で食痕を調べませんでしたが、同書の写真36に「フキの葉の食べ跡」と題した写真が掲載されていました。
採食する場合、(下顎だけにある:しぐま註)前歯を使う場合も奥歯を使う場合も、物をはさんで振り切るという方法で食べるので、フキのような広い葉を食べた時には食べ跡は乱れた形となる (p60より引用)