2024/03/17

ニホンアナグマの幼獣4頭を溜め糞場に連れて来て排便およびスクワットマーキングした母親♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月上旬

スギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma) 専用の溜め糞場stmpを自動センサーカメラで見張っています。


シーン1:6/29・午後14:46(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
トレイルカメラを設置するアングルに少し失敗してしまいました。 
画面の左下に朽ち果てた切株が見えます。 
その少し下にアナグマの溜め糞場stmpがあるのですけど、画角内にしっかり写っていません。 


シーン2:7/4・午後20:11(@0:06〜) 
アナグマの母親♀が溜め糞場stmpで排便していました。
その周囲を3頭の幼獣がウロチョロしています。 

用を足し終えた母親♀が林床に掘られた溝(古い用水路の跡?)に沿って奥へ立ち去る途中で立ち止まり、尻を地面の落ち葉に擦り付けました。(@0:21〜) 
スクワットマーキングと呼ばれる匂い付けの行動です。 
更に奥へ進んでから左折し、茂みの中に姿を消しました。 
しばらくすると、4頭目の最後の幼獣個体が慌てて家族群を追いかけて行きます。 
はぐれかけながらも、迷子にならず良かったです。 
下草の匂いを嗅ぎ回り、道草を食っています。 
発育の遅い個体という訳でも無さそうで、独立心・冒険心の強い性格なのかも知れません。 

アナグマの母親♀が4頭の幼獣を引率して縄張りを連れ歩き、溜め糞場stmpの位置を教えたことになります。 
今回、幼獣はどの個体も排便しませんでした。 
幼獣の成長はめざましく、母親について一緒に歩き、夜の森を探餌徘徊できるほど体力がついていました。
母親♀は幼獣を引き連れて夜の森を歩く際に、幼獣を誘導する鳴き声(ジェジェジェビーム♪)を発していませんでした。
(音量を上げても聞き取れず) 
ヘルパー♂は同伴していませんでした。(育児には参加しないのでしょう。)
アナグマの家族がこの溜め糞場stmpに来る頻度は低いので、縄張り内のどこか別な場所にも溜め糞場があることが予想されます。 

アナグマの母子の姿が営巣地(セット)から忽然と消えたので、天敵に捕食されて全滅したのではないか?と内心では不安でした。 
母子ともに無事が確かめられて一安心。 
幼獣が生まれた巣穴を離れてどこか別の巣穴へ母子が転出したということが、これではっきりしました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 



ニホンザルの糞に群がる虫たち:キンバエ、キバネクロバエ、ムネアカオオアリ♀、サビハネカクシなど

 

2023年6月下旬・午前11:30頃・くもり 

里山の整備が行き届いていない山道を冬に倒れた倒木が何本も塞いだまま放置されています。 
重いザックを背負ったままで1本ずつ跨いで乗り越えるのが大変でした。 
(登山客の往来がほとんどない廃道の方が、実は自然が多く残されていますから、私は廃道が結構好きです。) 
ニホンカモシカがフシュ♪と鼻息を荒らげて威嚇する鳴き声を繰り返し聞いたものの、藪が密生していて姿を見つけられませんでした。

朽ちた倒木の端の上にこんもりと残されている新鮮な獣糞を見つけました。 
倒木の樹種はスギ(またはアカマツ?)だと思います。
山中で倒木の上という目立つ場所(サインポスト)にあったことから、初めはホンドテンMartes melampus melampus)の糞かと思いました。 
しかし、形状がテンの糞とは明らかに違います。 
植物質の餌を多く食べたようで、緑がかった色でした。 
ゴマ粒大の未消化の種子が糞に含まれています。 
どうやらニホンザルMacaca fuscata fuscata)の糞でした。 
棒で獣糞をほぐして中身を探るなど、もう少し真面目に糞分析すれば、何を食べたのか(食性)より詳しく分かったはずです。
熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』で調べると、
(サルの)フンは基本的にはいくつかの節に分かれた「モスラの幼虫」形だ。ただし、季節や食べ物により色や形にバリエーションがある。(中略)春夏に新芽や若葉を食べると、フンは緑色でやわらかく、節目がわかりにくくいソーセージ状。(p40より引用)
同じ日の山行であちこちで見つけたニホンザルと思われる糞の写真(節目のある典型例)を最後に掲載しておきます。 
長い倒木が山道を塞いでいたことから、群れと一緒に遊動中のニホンザルが丸木橋のように渡る途中で腰掛けて排便したのかもしれません。 
山道の横は荒れたスギ植林地でした。 

獣糞の横で私がじっとしていると、逃げていたハエが続々と糞に戻ってきました。 
ほとんどが緑色の金属光沢に輝くキンバエの仲間(種名不詳)で、最大8匹が集まりました。 
キンバエ間で求愛や交尾などの配偶行動は始まらず、獣糞を舐めて吸汁しているだけです。 (色気より食い気)
1匹だけキバネクロバエMesembrina resplendens)も倒木上を歩いて獣糞に接近しました。 

肉食性のサビハネカクシOntholestes gracilis)が獣糞に集まるハエ類を狙って付け回しています。 
しかしキンバエの方がすばしこくて、サビハネカクシが忍び寄る前に易々と飛んで逃げてしまいます。(ハエ狩りに失敗) 

ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀も倒木上を歩いて来ました。 
獲物を待ち伏せしているサビハネカクシにすばやく触れたものの、慌てて逃げ出しました。 
ようやく獣糞に到着すると、触角で少し調べただけで離れて行きました。 




この日の山行でニホンザルには出会えなかったものの、あちこちに糞が落ちていました。 
その写真(節目のある典型例)を最後に掲載しておきます。
ガードレールの側面にへばりついた糞は、路上の猿が逆立ちしながらガードレールに擦り付けるように排便したのではなく、ガードレールの上に座りながら脱糞したのでしょう。


2024/03/16

ニホンアナグマ家族が転出した後の巣穴に不法侵入するハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年7月上旬・午前4:00頃・気温19℃・日の出時刻は午前4:19。 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の巣穴をトレイルカメラで監視し続けていると、夜明け前にハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)がやって来ました。 
アナグマ営巣地(セット)のある平地の二次林でハクビシンを見かけるのは初めてです。 
手前の巣穴Lへ慎重に忍び寄り、画角の外に姿を消しました。
カメラの設置アングルがいまいちだったせいで、巣穴Lの中までしっかり入ったかどうか、見届けられませんでした。 
巣穴Lを内見しただけかもしれませんが、出巣Lする様子は撮れていません。 

てっきりホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がアナグマの空き巣を乗っ取り、ねぐらとして使っているのかと思ったのですが、事態はより複雑で、一筋縄ではいきません。
アナグマのヘルパー♂がたまに戻ってきたり、ホンドタヌキ(尻尾に黒点▼) が塒として使ったり、通りすがりのハクビシンが侵入を試みたりと流動的で、空き巣の争奪戦になっているようです。

アリストテレスは「自然は真空を嫌う」という科学史では有名な言葉を残しています。 
※ 容器にポンプをつないで陰圧にすると、普通の容器は体気圧によってぺしゃんこに押し潰されてしまいます。今となってはアリストテレスの素朴な自然観は否定(修正)されています。強力な真空ポンプと頑丈な密閉容器を発明したことで(技術革新)、後世の人類は真空状態を作り出し、真空の宇宙空間にも進出しました。

この名言は、物理学的な真空現象についてだけでなく、生態学的な暗喩(メタファー)にもなっています。 
つまり、自然界の生き物はニッチの空白(真空地帯)を嫌って、周囲からどんどん侵入して来るのです。 
アナグマ家族が健在だった頃は、営巣地の周辺で排尿マーキングをしたり、臭腺・肛門腺によるスクワットマーキングしたりして、縄張り宣言していました。
嗅覚が退化している我々ヒトには全く分かりませんが、匂い付けで縄張りに結界を張っているのでしょう。
それでも営巣地に侵入してくる不届き者に対しては、アナグマ♀が吠えながら突進して追い払っていました(縄張り防衛の実力行使)。
充分に育った幼獣を引き連れてアナグマ一家がよその巣穴へ急に転出すると、それまで住んでいた巣穴の付近からアナグマの匂いが急速に薄れてしまいます。
その結果、新たな侵入者を招くことになるのでしょう。
自力では巣穴を掘れないのに巣穴で暮らしたがる哺乳類は多く、アナグマが掘った空き巣は引く手あまたの優良物件となっています。



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