2024/03/10

枯草に産卵するヒメウラナミジャノメ♀

 

2023年6月下旬・午後14:35頃・くもり 

農村部の畑の横でヒメウラナミジャノメ♀(Ypthima argus)を見つけました。 
道端に咲いたドクダミの群落で訪花吸蜜しているかと初めは思ったのですが、よくよく観察すると、地表の枯草に潜り込んで腹端を擦りつけています。 
地面を歩き回りながら、あちこちの枯草に腹端をチョンチョンと付けています。 
産卵中の腹端の動きをようやく側面からしっかり撮れました! 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:17〜1:46) 
ヒメウラナミジャノメ♀の産卵行動は初見です。 

本種幼虫の食草はイネ科やカヤツリグサ科の生葉なのだそうです。 (『フィールドガイド日本のチョウ』p271より) 
それなのに、食草ではなくわざわざ枯葉や枯草に産卵する行動が進化してきたのは不思議です。 
寄生蜂への対策なのでしょうか? 
しかし、ヒメウラナミジャノメの卵は薄い緑色なので、本来は緑の生葉に産卵する方が目立ちません(保護色)。 
茶色の枯草に産み付けると逆に目立ってしまうはずです。 
卵から孵化した幼虫は、近くに生えた食草を自力で探し出す必要があります。 
鈴木知之『虫の卵ハンドブック』でヒメウラナミジャノメの産卵習性について調べると、
産卵場所は、枯葉・葉(イネ科のチヂミザサなど) 。♀は食草の葉裏や周辺の枯れ葉などに、1卵ずつ産卵する。(p109より引用)

産卵の合間に休息(日光浴)する際には、翅を開きました。 
この♀個体には、後翅の外縁に切れ込み状の損傷があります。 
左右対称の損傷なので、鳥に襲われかけたビークマークかもしれません。
(多数の眼状紋で威嚇していても、飛翔中は鳥に襲われることがあるのかもしれません。)
少し休むと、次の産卵を始めます。 


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2024/03/09

ニホンアナグマの溜め糞場に飛来した夜蛾を捕食する野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬・午後22:00頃 

平地のスギ防風林に残されたニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpをカメラトラップで監視すると、野ネズミ(ノネズミ)がよく写ります。 
明るい昼間に撮った現場の様子はこちらです。 

一方、夜になると暗闇のスギ林の中を夜行性の蛾が複数飛び回っています。 
ある晩アナグマの溜め糞場stmpに来ていた野ネズミが、溜め糞から飛び立った(あるいはたまたま低空で飛来した?)夜蛾に襲いかかりました。 
蛾は素早く飛んで逃げ、狩りに失敗した野ネズミは手前の切株へ立ち去りました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 

わずか1分半後、次にトレイルカメラが再び起動すると、溜め糞の横で野ネズミが夜蛾を捕食していました。 
狩りに成功した瞬間を撮り損ねたのが残念無念。 
獲物の翅はちぎってその場に捨て、胴体だけを食べています。 
野ネズミの肉食行動は初見で、感動しました。 
野生動物のトイレでは食物連鎖の様々なドラマが静かに繰り広げられているのです。

映像からは餌食となった蛾の種類を見分けられません。
この時期(昼間)はトンボエダシャクがよく飛び回っているのを見かけますが、なんとなくシャクガ科ではなくヤガ科のように見えます。 
夜行性の蛾の中に獣糞で吸汁する種類がいるらしいということは、過去にも観察しています。 
昼行性の蝶と同じく、性成熟に必要なミネラル成分(ナトリウムイオンやアンモニウムイオンなど)を獣糞から摂取しているのでしょう。

ニホンアナグマの溜め糞をほじくり返してみると…

 

2023年6月下旬・午前10:00頃 



スギ防風林の中にニホンアナグマMeles anakuma)が通う溜め糞場stmpがあり、定点観察しています。 
放置されたまま朽ちた古い手押し車(猫車)の金属フレームが目印になっています。
約5m離れた地点に残されたタヌキの溜め糞wbc-1と異なり、アナグマの溜め糞は黒い軟便で糞の原形が残っていません。 

鈴木欣司『アナグマ・ファミリーの1年』(2000年)によると、
 (アナグマの溜め糞は:しぐま註)軟便でしたが、(中略)土の中の酸化鉄を原料にしている絵の具のイエローオーカーのにおいがしました。これは、ミミズばかりむさぼり食べていた証拠です。(p35より引用)
アナグマの糞特有の匂いが気になっているのですけど、私はまだイエローオーカーの匂いを理解できていません。
タヌキの溜め糞に比べて臭くない(糞便臭が弱い)としか思えません。


すぐ横には朽ち果てた切株があり、その下にオニグルミ堅果の殻が大量に散乱していました。 
殻の両側に丸い穴がくり抜かれていることから、アカネズミApodemus speciosus)の食痕と判明。 
周囲を見回してもオニグルミの木は生えていなかったので、秋にオニグルミの落果を1個ずつせっせと運んで貯食していたのでしょう。 
大雪の積もる冬に貯蔵庫のクルミを食べて暮らし、残りの殻を一箇所に捨てていたのです。 
つまり、この辺りはアナグマのトイレでもあり、アカネズミのゴミ捨て場でもあります。 
どこか近くにアカネズミの巣穴があるはずですけど、朽ち果てた切株の根元は穴だらけで逆によく分かりませんでした。 
後日、すぐ近くのスギ林床(スギ落ち葉の下)に野ネズミ(ノネズミ)の巣穴を発見しました。(映像公開予定)
右上にアカバトガリオオズハネカクシ
 
2023年6月下旬・午後13:50頃

3日後に現場を再訪しました。
鬱蒼としたスギ林の林床は、日中でもかなり薄暗いです。 
小枝でアナグマの溜め糞stmpをほじくってみると、湿った粘土状というか、独特の質感です。 
溜め糞の中から得体の知れない小型の黒い虫が大量に現れ、慌てて逃げ惑います。
糞虫やハネカクシ類、シデムシ類だと思うのですが、糞分析の要領でじっくり調べないと分かりません。
(目の細かいザルに獣糞を入れてほぐしながら流水で洗い流し、未消化の内容物や糞虫を濾し取る手法)
アナグマの調査で忙しくてこれ以上手を広げられず、糞虫の採集調査は後回しになっています。
隣りにあるタヌキの溜め糞wbcと糞虫相を比較するのも面白そうです。

溜め糞stmpの周囲を黄色い昆虫が高速でブンブン飛び回っていました。
ようやく近くの下草に止まったので接写してみると、キイロコウカアブPtecticus aurifer) でした。
右翅だけ広げた謎の体勢です。 
レンズをそっと近づけてもなかなか逃げません。
最後にようやく羽音を立てて飛び去りました。


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