2023/02/17

深夜の溜め糞場で排便する「垂れ尾」のホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年9月上旬・午前2:15頃・気温20℃ 

里山のスギ林道にある溜め糞場sに「垂れ尾」のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が久々にやって来ました。 
緩やかな坂になっている林道を右から登って来ると、トレイルカメラの方をちらっと見上げました。 
自分たちの溜め糞場に跨ると、左を向いたまま軟便を排泄しました。 
用を足したタヌキは左に立ち去りました。 



地中の巣穴から空荷で飛び去るモンスズメバチ♀

 



2022年6月中旬・午後13:45頃・晴れ 

河川敷でブタナの根際に開いた巣口からモンスズメバチVespa crabro)のワーカー♀が外に出てきて飛び去りました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。 
地下の巣穴を拡張工事している最中なのに、この個体は珍しく空荷でした。 
(大顎に土塊を咥えていません。) 

実は、出巣直後にこの個体はホバリングしながら扇状に飛んだのですが、あまりにも動きが速過ぎてカメラのズームアウトが間に合わず、動画に撮り損ねました。 
定位飛行で営巣地近辺の景色を記憶したということは、この日に初めて外に出た(初飛行)ことを意味しています。 
羽化したばかりのワーカー♀なのかもしれません。 (とは限らない。)
巣口の位置を正確に記憶しないと、外役に出ても帰巣できなくなってしまいます。 

他の多くの個体は、土塊を咥えて巣口から一目散に飛び去り、不要な土砂を外に捨てに行きます。 
定位飛行は一度やれば充分で、次回の出巣から省略されます。 


2023/02/16

ニホンカモシカは野山で有毒植物のトリカブトを味見するか?

 



2022年9月中旬・午前11:40頃・くもり 

山中で出会ったニホンカモシカ♂(Capricornis crispus)はスギ林でにわか雨をやり過ごした後、林道を横断して横の湿地帯に入りました。
その辺りは沢の水が流れ込んで小さな池になっている他、周囲の地面もジメジメしています。
カモシカ♂は草を食みながらこちらを振り返りました。 
股間でブラブラ揺れる睾丸が見えたので♂と分かりました。 
外性器でカモシカの性別がしっかり見分けられたのはきわめて珍しく、ラッキーでした。 

採食メニューの植物種名を知りたくて必死で目を凝らしても、肝心の口元がなかなか見えません。 
カモシカが佇んでいる手前にはイヌタデの群落がピンクの花を咲かせていますが、カモシカがイヌタデを食べたかどうか不明です。 
他にはミゾソバの白い花、ツリフネソウのピンクの花などが見えます。 
採食メニューはイネ科の草(ヨシなどの単子葉植物)ではなく、広葉の草でした。 
カモシカは何か蔓植物の葉を蔓ごとむしって食べました。 
ようやくミゾソバの白い花を食べる様子がしっかり撮れました。 
ちなみに、別の地点に設置したトレイルカメラでもカモシカがミゾソバを好んで食べる様子が録画されていました。(映像公開予定) 

秋の花が咲いている草地(山中のお花畑)で、トリカブト(詳しい種名は知りませぬ)の紫の花もたくさん咲いているのが気になりました。 
ニホンカモシカ♂は藪の中を歩きながらあれこれと摘み食いしていますが、トリカブトの葉や花は一度も食べませんでした。 
もしトリカブトの葉を食い千切ったら、紫の花が激しく揺れるはずです。
トリカブトにはアコニチンという猛毒のアルカロイド(神経毒および心臓毒)が全草に含まれています。 
カモシカはトリカブトの危険性を本能で知っているのか、それとも味見して学習するのでしょうか? 
植食性の草食獣は生息地に自生する有毒植物を忌避するように進化したと考えられます。 
逆に言うと、有毒植物を忌避できない草食動物はとっくに自然淘汰されたはずです。 
味覚が鋭敏になって、危険な有毒植物なら少し味見しただけで不味く感じるように進化したのかな? 
それともカモシカは味見しなくても生まれつきトリカブトを忌避するように進化したのでしょうか? (匂いや見た目で忌避?)
カモシカは草食性有蹄類にしては珍しく、基本的には群れを作らずに単独で暮らします。
幼獣が離乳してから独立するまでの期間に、どの植物が食べられるか母親がいちいち教育したとは思えないのですが、カモシカ母子の採食行動をもっとしっかり観察しないことには決めつけられません。



【追記】
平田貞雄『ニホンカモシカ・ミミの一生』という本は、生後間もなく母親とはぐれたニホンカモシカの幼獣♀を保護した長期の飼育観察記録です。 
様々な植物を与えて食べるかどうか丹念に調べ上げていて貴重な資料なのですが、当然ながら猛毒のトリカブトを与えてみたという記録は書いてませんでした。

植物は食害から身を守るために毒を蓄積します(化学防衛)。
毒を生産するのもコストがかかりますから、敵を殺すのが第一の目的ではなく、食害を避けることができればそれで良いはずです。
毒を持つ動物は派手な警告色を身にまとって捕食者にアピールする例が多く知られています。
草食動物は夜行性のものが多いですから、植物の警告色はあまり有効ではないでしょう。(昼間しか見えない)
植物も毒と一緒に強烈な味や匂いのする物質を含んでいれば、草食動物が少し味見をしただけで毒の作用と合わせて学習し、その後は忌避してくれることが期待できそうです。
有毒植物は視覚ではなく味覚による「警告味」で草食動物に食べられないよう強くアピールしているのではないか、というアイデアを思いつきました。
トリカブトの場合、猛毒のアコニチン自体がたとえ無味無臭でも、強烈な(独特な)味のする物質を併せ持っていれば良さそうです。
更にもう一歩妄想を進めると、有毒植物の警告味が共通になるようにミューラー型擬態するかもしれませんし、無毒の植物もその味に便乗してベーツ型擬態するように進化するかもしれませんね。


【追記2】
カモシカ幼獣を生後1ヶ月から2年間飼育した武田修『ロッキーへの手紙』によると、
・ ミルクの時期も終わり、そろそろ山の草や葉を食べさせたいと思った時、ロッキーにとって、栄養になる草、栄養にならない草、毒になる草、ならない草を、どう選別し、どのように教えたらいいのか、ひどく悩みました。しかし、カモシカの体の中には、解毒酵素があり、まずは食べてみて判断する特性があることがわかりました。(p69より引用)
・食べられる葉とそうでないのは体験的に見分けます (p70より引用)
・ ロッキーは、山で木の葉を食べる際、どんなにおいしい葉であっても、最後まですべて食べ尽くすということがありませんでした。先のほうだけを少しだけ食べて、次の木に移動するのです。(中略)同じ木から大量に食べないのは、カモシカがもっている習性のひとつで、自然と共生していくための知恵なのでしょう。自分の縄張りをひと回りして元の木に戻る頃には、その木はまた成長していて、おいしい葉が食べられるというわけです。(p113〜114より引用)
筆者の飼育体験によれば、幼獣に毒草をいちいち教えなくても大丈夫とのことです。
最後に記述されたカモシカの食べ方は、毒草対策にもなっている気がします。(毒味)

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