2012年4月下旬
ようやく根雪が消えた里山の斜面にショウジョウバカマの花がピンク色に咲き誇っていました。
早春を告げるいわゆるスプリング・エフェメラル(※)の一つです。
※ スプリングエフェメラルの由来は、ギリシア神話に登場する妖精エフェメロス(1日限りの生存の意)。
『森のいろいろ事情がありまして』p10より
春を待ちわびた様々な昆虫が花蜜を求めてやって来ます。
ホバリングの名手であるビロウドツリアブ(ビロードツリアブ;Bombylius major)が長い口吻を花に差し込んで吸蜜する様子をハイスピード動画(220 fps)で撮影してみました。
ホバリング飛行の神髄をご堪能ください。
スローモーションで見ると、花弁に着陸している(脚を掛けている)間も激しく羽ばたき続けていることが分かります(アイドリング)。
ひたすら同じ場所で長いこと吸蜜したかと思えば、飛びながら少しずつ小さな花を変えて飲み屋をハシゴしています。
たまたま飛来した他の昆虫とニアミスするシーンも捉えられていました。
この日は初夏を思わせるほど日差しが強く、日向に居ると暑いぐらいでした。
【追記】
Newton special issue『植物の世界 ナチュラルヒストリーへの招待 第4号』の中でショウジョウバカマのポリネーターを解説した記事によると、
(ビロウドツリアブなど)ツリアブの仲間は飛翔しながら吸蜜するが、そのとき腹部が葯や柱頭にふれる。また、葯や柱頭を足でつかんだりすることもある。(p104より)
蜜腺は花被片の基部にあるが、花が杯状に開くので、ハナバチやクマバチのような大型のハチのみならずハナアブやツリアブのような小型の昆虫でも楽に吸蜜することができる。昆虫相がまだ豊富でない早春に開花する不利さを、可能なかぎりの昆虫を花にひきつけることによって補っているのだろう。(p100より)