2012/02/25

野生ニホンザルの採食@雪山(樹皮、冬芽)



2012年1月下旬・気温4℃→0℃
雑木林で遭遇した野生ニホンザル群れ

ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の採食行動が撮れた映像を中心にまとめてみました。

木に登った個体が枝の樹皮をガリガリ齧っています。
脚で体を掻きながら口をモグモグさせています。
白毛の若い猿が奥の木をすごい勢いで上り下りして独り遊びしています。

首輪を付けた猿が樹上で採食
斜面左奥に首輪を付けた猿が潅木に腰掛けていました(@1:38-4:18)。
欠伸の際など顔が上を向くと胸元の発信器がよく見えました。
俯いていると毛皮に隠れて首輪に気づかないかもしれません。
おもむろに小枝を拾い上げて齧り始めるも、すぐに枝を捨てました。

斜面奥の樹上に居る別の個体が樹冠を枝から枝へと身軽に移動し、枝を折って口にしました(@4:19-)。
次は折らないままの枝から何かを指で摘み上げて続けざまに口に運びました(@5:00)
枝に付いた冬芽や地衣類を採食したのかなと想像したものの、激しい降雪と手前の木々に遮られてよく見えませんでした。

雑木林のあちこちに散開した猿たちがときどき枝を折る音がピシッと静かな谷に響き渡ります。

(「樹上の毛繕いとクーコール」篇につづく)



2012/02/24

センチコガネの前脚にあるオレンジ色の付着物の正体



2011年10月上旬

地面でセンチコガネGeotrupes laevistriatusを発見。
触角が動いています。
前方から接写すると、左右の前脚腿節の前面にオレンジ色の部分があるのが目を引きました。
センチコガネでは見たことのないお洒落な色です。
初めはメタリックな構造色のいたずら(錯覚)なのかと思いました。
側面から見ると明らかに何か黄色い物質が前脚に付着しており、少し盛り上がっています。
左右対称というのも不思議です。
ダニではなさそうですし、何が付着しているのだろうか。
花粉のようなオレンジ色から連想したのはハナバチ♀の後脚脛節にある花粉籠です。
しかしセンチコガネが花粉を食べたり運んだりするなんていう話は聞いたことがありません。
オレンジ色のキノコや獣糞で食事していたのかもしれません。
それまで静止していたセンチコガネがおもむろに方向転換し、のそのそ歩いて立ち去りました。
採集してもっとしっかり調べればよかったかな…?

実はすぐ近くで見つけたもう一匹のセンチコガネにも似たような付着物を認めました。


【追記1】
関係ないかもしれませんが、『ファーブルが観た夢』という本を読んでいてとても興味深い記述を見つけたので覚え書き。

  • ルリオトシブミ属は、菌のタネを運び、育てているらしい。
  • 揺籃を作りながら糸状菌の胞子を植え付けていく。
  • 出所は、なんと♀の身体である。後ろ脚のつけ根に、ちいさなポッケがあって、ここで培養しているのだという。
<文献>
1. 「ルリオトシブミ属Euopsから新たに発見された胞子嚢と胞子の揺籃への伝搬方法(甲虫目 : オトシブミ科)」 (リンク
2. 「カシルリオトシブミのゆりかご作りとカビとの共生」 (講演要旨リンク

センチコガネも同様に、産卵用に獣糞を丸める際に菌糸を植え付けていたりして…と妄想したのでした。

キクイムシ以外にも菌を体のなかに保持し、それを新天地で栽培する昆虫は意外に多く、とくに微小な甲虫のなかまに多い。それらの甲虫は菌嚢と呼ばれる穴を体の一部に持ち、そこに菌を保持して移動することができる。(丸山宗利『昆虫はすごい (光文社新書)』p149~150より 引用)


【追記2】
YouTubeにて貴重な情報提供を頂きました。
センチコガネ科およびクワガタムシ科に性別を問わず見られる構造だそうです。
オレンジ色に見えるのは付着物ではなく密生した毛束で、その奥からフェロモンを分泌するらしい。
参考文献も紹介してもらいました。
Houston, W. W. K. "Exocrine glands in the forelegs of dung beetles in the genus Onitis F.(Coleoptera: Scarabaeidae)." Australian Journal of Entomology 25.2 (1986): 161-169.全文PDFが無料で閲覧できます。
確かにクワガタムシでも同様の毛束を見つけることができました。(関連記事




2012/02/23

群れで雑木林の雪山を遊動するニホンザル



2012年1月下旬・気温4℃

雪がしんしんと降りしきる中、雪山の斜面を遊動する野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の群れに遭遇しました。
集落の裏山を少し登った標高480m地点で、沢筋の斜面になっています。
雑木林を構成するのは多分ミズナラあたりで、斜面上部はアカマツが多く生えています。
初めは左手から猿が続々と現れ、斜め右下に雪の斜面を横切るように下りて来ました。
木の陰に見え隠れしながらニホンザルが行き交う様子が観察できました。
互いに鳴き交わす静かなクーコール♪や悲鳴がときどき聞こえます。
特に縦列は作らず、各自が自由に(?)遊動しているように見えます。
なぜか一頭が逆行して斜面をトラバースして登り始めました。
上空でカラスが鳴くと、ある猿は一瞬怯んだように立ち止まって見上げました(@1:11)。

一頭の猿が細い立木にするすると登り、樹皮を齧り取って(採食)から枝に腰掛けました。
奥の木に先客が居て、見事な木登り術を披露してくれました。
雪山で行動中の猿が休む際は、尻だこがあるとは言えども雪面には座らず木に登って休むことが多いそうです。
きびしい寒さの冬には、サルたちも、冷たい雪のつもった地表には、あまりおりたがりません。(『ニホンザル観察事典』p32 より)

左手からトラバースしてきた個体(@5:55-)が首輪を付けています。
針金のアンテナが延びているので電波発信器(GPS首輪?)と判明。
テレメトリー調査対象の個体らしい。



先程まで樹上に居た一頭がするすると木から下りました(@6:59)。
雪の斜面を左上に登って行きました。
樹上に残された2頭は枝の樹皮を齧っているようです。

長時間眺めていても群れ全体がどちらに向かっているのか、遊動方向がどうも判然としませんでした。
斜面右下へと斜行して下る者と、逆に左上へ登る者が居ます。
特定の個体が右往左往(行ったり来たり)していたのかどうかも不明です。
これだけ大きな群れに遭遇すると、あちこちで色んな動きがあるので目移りしてしまいます。
斜面の端で腰を据えてそっと撮影する私の存在をニホンザル達が意識して、本来行きたかった遊動経路に影響したのだろうか。
一つの群れではなくて実は小群に分かれているのかもしれませんが、個体識別しないことには分かりません。
最終的に群れはみんな右手の方に移動したようです。
そう言えば、子猿をおんぶして運ぶ子連れの♀が全く映っていませんね。
既に通り過ぎた後なのかな?

冬の採食行動篇につづく)





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