2022年9月中旬・午前11:15頃・くもり
林道脇でコナラの二又になった部分の枝に腰掛けた若いニホンザル(Macaca fuscata fuscata)が体を手でボリボリ掻きながら、咀嚼したノブドウ果実の残渣を吐き出しています。 そこへ左からスズメバチのワーカー♀が飛来しました。
樹上にスズメバチの巣があって猿を攻撃しに来たという訳ではありません。
猿が食べていたノブドウ果実の糖度は、スズメバチを誘引するほど高いはずがありません。
コナラの枝から甘い樹液が少し滲んでいたのかもしれません。
(私の鼻では樹液の発酵臭は嗅ぎ取れませんでした。)
1/5倍速のスローモーションでリプレイしても(@1:03〜)、スズメバチの種類をしっかり見分けられませんでした。
ニホンザルはスズメバチを恐れる素振りもなく、無邪気に右手を軽く振って追い払いました。
咄嗟に蜂を手掴みしようとしたのかもしれません。
これは我々ヒトがスズメバチと遭遇した際に絶対やってはいけないことです。
飛んでいるスズメバチが顔に向かってこられるとどうしても反射的に腕を振り回したくなるのですが、特にスズメバチの巣の近くでこれをやると蜂を一層怒らせることになります。
怒った蜂は警戒フェロモンを放出して仲間を呼び寄せることになって致命的です。
野外でスズメバチと出会ったときの対処法は、鉄の意志で身を固くして動きを止めて(フリーズ)スズメバチをやり過ごすか、ゆっくり後退するしかありません。
話が少し逸れましたが、毒針をもつ有剣類の蜂がせっかく黄色と黒の縞模様(警告色)でミューラー型擬態しているのに、ニホンザルには恐怖を抱かせる効果があまりなかったことになります。 このニホンザル個体はスズメバチの怖さを未だ学習してない(刺されて痛い目にあった経験がない)のでしょう。
しかし、スロー再生すると一瞬だけ歯を剥き出したのは軽い恐怖の現れなのかな?
その後、ニホンザルは手に持っていた何か黒い謎の塊を口に運びました。
手前の枝が邪魔で採食メニューの正体を見極めることができません。
なんとなく、樹皮から剥ぎ取ったキノコを食べたような気がするのですけど、どうでしょうか?
オニグルミの腐りかけた果実のようにも見えますが、堅果の回りの黒ずんだ果皮はタンニンが渋くてとても食べられないはずです。
口を使ってオニグルミの果皮を剥いだところで、硬い殻を割って食べる方法を猿は知っているのでしょうか?
賢いカラスは高いところから硬い路面に繰り返し落としてその衝撃でクルミの殻を割り、中身を食べます。
ニホンザルは硬い石や枝をハンマーのように打ち付けてクルミを叩き割るしかないはずですが、私は未だ彼らの道具使用を実際に見たことがありません。
このニホンザルは若い個体ですから好奇心が旺盛で、採食中に遊び半分でクルミの実を弄んでいただけかもしれません。
ちなみに、猿が登っていたコナラの枝には未熟なドングリが大量に実っていました。
最後はおまけの映像です。
(おそらく)同一個体が木から木へ渡り歩いたり、しつこく撮影する私に嫌気が差して木から地上に下りて走り去るところまで見届けました。