2016年11月上旬
早朝の川でオナガガモ(Anas acuta)の大群が岸辺近くに密集しています。
一緒に採食しているコハクチョウからいじめられるだけでなく、オナガガモ同士でも喧嘩が頻発します。
鴨は川面に浮かんでいるだけでほとんど採食はしていないのですが、一体何が気に入らないのか、目の前の相手をいきなり嘴で突いて追い回します。
振り向きざまに相手を嘴で突いたり、嘴で噛み合って激しく争うこともありました。
♂vs♂、♀vs♀、♂vs♀と性別を問わず攻撃しています。
本種は性的二型なので、性別を見わけるのが容易です。
白黒のツートンカラーが♂で、地味な茶色が♀です。
川岸近くは水鳥(オナガガモとコハクチョウ)でかなり混み合っています。
まるで芋を洗うような混雑で、そんなに苛々カリカリするぐらいなら、群れから離れれば良いのに…と他人事ながら思ってしまいます。
都会の朝の満員電車で殺気立つヒトの行動を連想し、身につまされますね。
八木力『冬鳥の行動記 Ethology of Wild Ducks』p50によると、
争いは♀をめぐる♂同士であったり、同種や異種間での場所の取り合い、その他何が気に入らないのか、私には理解不能の争いが数多くあります。
この際、逃げた側は高確率で転位行動を行ない、勝者もまれに行ない、闘争は終結します。(p50より引用)
争いや突然何かに驚いたとき、どう対処したら良いのか迷ったりパニックに陥ると、もうヤーメタとばかりに儀式的水浴びをし、次いで転移性羽ばたきを行なって、その後は何事もなかったかのように全く別の行動へと移っていきます。この一連の行動を転位行動と呼びます。 この行動は交尾の後にも行なわれ、要は気分転換をはかり、精神的混乱や性衝動の回避をしているようです。また、羽ばたきの代わりに体振りをすることがあり、儀式的水浴びを省略することもあります。(p37より)
闘争後の転位行動に注目して改めて映像を見直すと一層面白いですね。
世界平和のためにはヒトも喧嘩の後に(特に負けた後に)根に持たないように口惜しさを発散する工夫が必要かもしれません。(ノーサイドの精神、グッドルーザー)
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
闘争は予測不能なので、コハクチョウを長撮りした映像素材から編集で抜き出しました。
2017年4月下旬
湿地帯を貫く用水路の岸辺でキジ♂(Phasianus versicolor)が採食していました。
歩きながら地面の枯れ草を啄み、その合間に頭を上げて周囲を警戒しています。
やがて右からカルガモ(Anas zonorhyncha)がキジ♂に近づいて来ました。(@0:55)
地味なキジ♀かと思いきや、カルガモでした。
キジ♂の目の前で立ちふさがり、至近距離で睨み合います。(一触即発?)
しかし喧嘩(種間闘争)にはならず、互いに向きを変えました。
見ている私は「もしかして、カルガモの巣が近くにあるからキジ♂の接近を許さないのかな?」と勝手に想像しました。
更に用水路の中にもカルガモが何羽も居ます。
遠く(隣の縄張り)から別個体のキジ♂の鳴き声がケンケーン♪と聞こえます。(@1:52)
左から今度はキジ♀が登場。(@2:24)
地味な♀は周囲の枯れ草に対して完璧な保護色になっていて、動かなければ全く目立ちません。
♀は採食しながら、先行する♂にゆっくり近づきます。
それまで手前のハンノキの枝に隠れていた(用水路の水際に居た)もう1羽のキジ♀が右から合流しました。(@3:10)
これ以降、キジ♀は2羽で行動するようになりました。
1羽の♀が用水路の水際に下りたので水を飲んだり水浴したりするのかと期待したものの、なぜか何もせずに引き返しました。(@3:55)
邪魔なハンノキに業を煮やし、私は撮影アングルを求めてそっと横に移動しました。
2羽のキジ♀は並んで採食しながら用水路沿いに枯れ葦原をゆっくり歩いて行きます。
なぜかカルガモ1羽がキジ♀について歩くのが可笑しいですね。
まるで孵化したときにキジ♀に刷り込み(インプリンティング)されてしまった鴨の幼鳥みたいです。
…と思いきや、そのカルガモがキジ♀と別れて用水路に降りて入水しました。
♀に先行していたはずのキジ♂の姿を見失ってしまいましたが、広い湿地帯(ヨシ原)の縄張り内で2羽の♀と一緒にハレムを形成しているようです。
♂は♀に付き添って(ライバル♂から)がっちりガードするのではなく、自由に採食していました。
2016年11月上旬・午前6:40頃
▼前回の記事
コハクチョウ:川での採食法(冬の野鳥)
早朝に川岸近くでコハクチョウ(Cygnus columbianus)の小群(成鳥3羽および幼鳥2羽の計5羽)を撮影していると、一緒に採食しているオナガガモ(Anas acuta)の大群を邪険に追い払う行動が繰り返し見られました。
邪魔な(目障りな)鴨を追い払って空いたスペースで採食するのです。
コハクチョウの成鳥も幼鳥も長い首を前方に伸ばして目障りな鴨たちを嘴で突いたり威嚇したりして、激しく追い立てています。
コハクチョウ自身が岸に上陸したい訳ではないのに、ただの意地悪というか、面白がって鴨を追い立てているだけにも見えます。
空腹で気が立っているのですかね?
性格悪いなーと思いますけど、ヒトの幼児も公園で走り回りハトの群れを無邪気に追い散らして遊んだりするので、五十歩百歩でしょう。
「オナガガモ、そこのけそこのけ、コハクチョウが通る。」字余り
今季は鳥インフルエンザの流行を恐れて、この川で白鳥への給餌を中止したらしいので、餌不足なのでしょう。
(昼間は他の餌場まで飛んで行き、夕方になるとこの川に帰って来て塒入りするのです。)
同じカモ科とは言え、オナガガモよりも体格に断然勝るコハクチョウが喧嘩に強いのは当然です。
(正確に言えば喧嘩らしい喧嘩にもならず、オナガガモはただ逃げ惑うだけで一切反撃しません。)
白鳥はその見た目から「聖なる鳥」のような印象を持たれていますが、実像は普通に性格が悪い(意地悪)と知り、なんだか安心しました。
白鳥に抱く「清純で無垢な鳥」というイメージが一変する衝撃映像かもしれません。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
この種間闘争はいつ起きるのか予測不能なので、長撮りした映像素材から編集で抜き出しました。