2018年10月下旬
雑木林で立ち枯れした灌木にアケビとヤマノイモの蔓が巻き付いていて、黄葉したヤマノイモの葉の表にダイミョウセセリ(Daimio tethys daiseni)の幼虫を見つけました。
私の手が届かない高い所に居たのですが、目視ではかなり体長が大きな老熟幼虫のようです。
ヤマノイモの黄葉しかけた黄緑色の葉には、この幼虫による虫食い穴(食痕)がありました。
緑色の葉の方が栄養価が高いはずですけど、この時期のヤマノイモは黄葉ばかりです。
(隣のアケビの葉は青々としていましたが、ダイミョウセセリの食草ではありません。)
ダイミョウセセリの幼虫は顔を左右に振りながらゆっくり前進。
やがて腹端から褐色の糞を排泄しました。(@0:58)
腹端を持ち上げず、最後にポーンと勢い良く糞を後方(上方)に弾き飛ばしたので驚きました。
肛門の括約筋の力だけで糞をこれほど勢い良く弾き飛ばせるのでしょうか?
まさか、おなら(屁)による空気圧で吹き飛ばすのでしょうか?
それとも糞を弾く専用の器官があるのかな?(※追記2参照)
その後はヤマノイモの葉縁で摂食を開始。
隣のアケビの葉の影になって見にくいのが残念です。
やがて食事を止めると、葉表で方向転換しました。
葉の上部の縁を乗り越えて葉裏に移動し、姿が見えなくなりました。
もしかすると巣作りの最中かと思ったのですが、葉の切り方が違う気がします。
実はこの日、山芋のムカゴを探し歩いていたら、その代わりにこのイモムシを発見したのでした。
ダイミョウセセリの幼虫を見つけたのはこれが初めてだったので、嬉しい出会いでした。
ダイミョウセセリ幼虫と言えば有名な巣作りを観察するために飼育したかったのですが高所で手が届かず、採集することができませんでした。
ダイミョウセセリは幼虫越冬するらしい。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
【追記1】
新開孝『虫のしわざ観察ガイド—野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』によると、
・(ダイミョウセセリ)幼虫は巣から出て、近くの葉を縁から食べる。葉が小さくなってくると、他の葉に引っ越し、新たに巣を作る。・10月〜11月、葉が枯れると、巣ごと地面に落下し巣内で冬を越す。翌春、葉を食べることなく蛹化する。(p40〜41より引用)
次はぜひ飼育下で幼虫の巣作りを観察してみたいものです。
【追記2】
とあるネット記事を読んでいたら、興味深い記述を見つけました。
セセリチョウの幼虫が抱えている問題は、アリが幼虫のふんに寄ってくることだ。このため、セセリチョウの幼虫はお尻の血圧を上げて体長の40倍もの距離にふんを飛ばし、アリを遠ざける。
出典(原著論文)を未だ見つけられていませんが、忘れないように引用しておきます。
初耳ですけど面白い話です。
私はセセリチョウ科の幼虫を飼育した経験が未だないのですけど、ぜひとも自分の目で確かめてみたいものです。
【追記3】
安田守『イモムシの教科書』という本を読んでいたら、とても面白いことが書いてありました。
寄生バチの糞探索に対する対抗手段として考えられるのが放糞行動だ。たとえばモンキチョウ(シロチョウ科)は、腹端にそのための放糞器という器官を備えている。糞を排出する際、そのまま落下させるのではなく、放糞器を使って遠くまで放り投げる。(中略)終齢では50センチも遠くに飛ばすことができるという。(p168より引用)
放糞行動という用語や放糞器という器官の存在を初めて知りました。
私はシロチョウ科の幼虫も未だ飼育したことがないので、今後の宿題です。
セセリチョウ科幼虫の放糞行動とは仕組みが違うのでしょうか?