2012年2月中旬
タヌキが登ったばかりの雪山の斜面を、ラッセル跡を辿って追跡開始。
動画を撮りながらスノーシューで斜面左手から登ります。
少し進むと足跡の下の雪面から枝が伸びていて、樹皮が齧られた跡(食痕)が残っていました。
ホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が道中に齧ったのだろうか?
枝の上部は折れていて樹種は不明です。
息を切らして更に急斜面を登ると、今度は雪に埋もれかけたクズ?(フジ?)の蔓に食痕を発見。
蔓の表面を齧り取った痕跡があるものの、新鮮な食痕ではないような気もします。
実際にタヌキが齧っている様子を見た訳ではないので、もしかしたら別な動物の食痕を見つけて気になったタヌキが寄ってみただけかもしれません。
自分で登ってみると、トラバースしたおかげで斜面の勾配はそれほど大したことありませんでした。
しかし積雪が深いのでラッセルしつつ登るのは重労働。
大木への最後のアプローチは短いジグザグのつづれ折れになっていました。
ようやくタヌキが目指していた大木に到着(樹種不明)。
大木の根元にある雪の窪みを覗いてみるも、長居した形跡や溜め糞もありませんでした。
てっきり塒(ねぐら)や巣として使っているのかと思ったので予想が外れました。
冬ごもりの巣穴だったら監視カメラを仕掛けようかとワクワクしながら登ってきたのに…。
まさに撮らぬ狸の皮算用。
この先でタヌキの梅花状の足跡を見失ってしまいました。
てっきり穴の奥に隠れてしまったのかと思い、諦めて引き返しました。
帰ってから前の動画を見直すと、タヌキはこの大木を素通りし尾根を目指して斜面を登り切ったようです。
タヌキが厳冬期に何を食べているのか食性(メニュー)に興味がありますが、なんとか元気に厳しい冬を乗り切って欲しいものです。
2012年2月中旬
里山の雪深い山腹を横切る獣を発見。
急いでカメラを向けるとホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)でした。
左手から現れ、右斜め上にトラバースしつつ登って行きます。
雪に半ば埋もれたトレイルを辿っているようにも見えます。
通い慣れた獣道があるのかもしれません。
ラッセルを止めたタヌキがこちらを見下ろし警戒しています。
再び登り始めると、深い新雪の中をもがくように前進します。
斜面が急なせいか何度も小刻みに蛇行して、つづら折れで登ります。
ヒトの登山テクニックと同じで驚きました。
最近目撃したニホンザルの雪山登山では急斜面のラッセルでもひたすら直登したので、少しでも楽をするためジグザグに登る知恵があるのはヒトだけなのかと思ってました。
どうやら斜面に立つ大木(樹種不明)を目指しているようです。
また小休止してこちらを見下ろすタヌキ。
最後の一頑張りでラッセルすると、大木の根元に到着しました。
ここが塒(ねぐら)なのかと思いきや、またすぐに出てきました。
溜め糞をする場所なのかな?
雪の壁を登れずに諦めて、大木を右に巻くように登り続けます。
潅木の茂みに隠れて姿が見えなくなりました。
これから尾根に向かうのかな?
こんな厳冬期に活動するタヌキを見たのは初めてです。
逞しく生きる姿に感動しました。
※ それまで三脚を立て冬景色のインターバル撮影をしていたのでカメラの諸設定を変えており、急に現れたタヌキに焦って動画撮影の操作を色々とミスしてしまいました…。
(つづく→「雪山でタヌキの足跡を追跡してみる」)
【追記】
ブルーバックス『狐狸学入門:キツネとタヌキはなぜ人を化かす』p193より
寒冷地で積雪の多い地方では、冬に土穴や樹洞に入って冬ごもりする。この習性をもつものは、イヌ科動物の中でタヌキだけである。(中略)穴の中には草や苔が敷き詰められ、居心地はいいらしい。冬ごもりしない地方のものでも、冬季には寒いと活動が鈍る。彼らの冬ごもりは、ヤマネのような真の冬眠ではなくて、クマやアナグマのような、体温の低下が二、三度といった、不活動状態といったほうがよい。眠りは浅く、シベリアなどでも天気の良い日は外へ出てくることもある。とくに秋に脂肪を蓄えられなかったようなときは、冬でも食物探しを行い、吹雪の日や厳冬期にのみ、巣穴に閉じこもるのである。
同書p232より
発情期は一~三月である。だからのんびり冬ごもりなんかしていられない。
wikipediaによると、
エゾタヌキは冬籠りをするが(ホンドタヌキ)本亜種は冬籠りはせず、真冬でも活動する。
『日本動物大百科1:哺乳類I』p118によれば、
積雪の多い寒冷地では、冬に岩穴などの中で冬ごもりをする。真の冬眠ではなく、眠りは浅くて暖かい日には外出する。
コカマキリの飼育記録
2011年10月中旬・室温24℃
しばらく飼育してきたコカマキリ(Statilia maculata )♀bに婿入りさせようと、新たに採集してきた♂2匹と順番にペアリングしてみました。
初めに同居させた♂bとは相性が悪かったのか、マウントするものの交尾器の結合まで至りませんでした。
この♂bはぐったりしていて、ひどく体力の弱った個体のようでした。
諦めて次の♂c(左の触角が途中で折れ曲がった個体)と入れ替えました。
初めは飼育容器からとにかく逃げ出そうと暴れる♂c。
ガラス板を被せてしばらくするとようやく落ち着いてくれました。
♂cが身繕いする間、♀bは油断なく見張っていました。
煩雑なので以下は個体の記号を略して♀、♂と表記します。
(映像はここから。)
止り木で♂が動いた瞬間、♀が反射的に鎌で襲いかかりました。
(攻撃の決定的瞬間は撮り損ねてしまいました。)
驚いた♂は威嚇誇示。
翅を目一杯広げ、腹部を膨らませつつ反らせシューシュー♪と威嚇音を発しています。
下にいる♀と互いに鎌が絡まっています。
軽量の♂は下に引きずり下ろされた格好。
♀の射程距離ですけど、♀の側に追撃、捕食の意志は無いようです。
しばらくすると♀が呆然と♂を離しました。
この♀は産卵間近でここ数日は食欲が無いのです。
「性的共食い」はカマキリの交尾行動の代名詞のように言われていますが、未遂に終わりました。
隅に追い詰められた♂は身がすくんだのか、まるで擬死したみたいに全く動かず♀と対峙。
どこかに致命傷を負ったようには見えないので、おそらくショック状態(動物催眠状態?)なのでしょう。
襲われるまで♀の存在に気づかなかったのかもしれません。
しばらくして♂がようやく復活し、身繕いを始めました。
果たしてこのトラウマを乗り越えてもう一度♀に挑むでしょうか?
止り木の端に妙な姿勢でぶら下がっている♀に♂がアプローチ。
♀は油断無く睨みつけています。
緊張感のある対峙が続きます。
今度の♂は慎重です。
ここで♂は鎌(前脚)を揃えて謎の「前ならえ運動」を行いました。
これは採集前に単独の♂が野外でやった前ならえ運動と同じです。
♀との距離を測るための行動でしょうか。
それとも「同種の♂だよ」と求愛ディスプレーを行い、♀の攻撃性を宥めようとしているのだろうか。
この間、♀は静止したままです。
♀は壁を登ろうともがいています。
それを止り木から見下ろす♂。
遂に♂が意を決して、♀に飛びつきざまに鎌で♀の胴体を捕獲しました。
♀は特に驚いた素振りは示さず、咄嗟に反撃することもありませんでした。
♀が妙な体勢でいるため(止り木から中途半端にぶら下がっている)、♂がうまく背中に乗り移れないでいます。
♂が完全に止り木を離れたものの、♀の背に前後逆に乗ってしまいました。
♂を背負ったまま遂に♀が床へ落下すると、その隙に♂がマウントの向きを変えました。
これ以降、♀は落ち着いて交尾できる場所を探してしばらく徘徊を続けます。
マクロレンズの装着にもたついている間に交尾器が結合する肝心の瞬間は撮り損ねてしまいました。
♀は大人しく静止しており、ときたま暇そうに身繕いします。
この♂は経験豊富(床上手)なのか♀との相性が良いのか、一発でがっちり結合に成功。
長時間の交尾中、鎌で♀の背にしがみついたままの♂がときどき身震いするのが気になりました。
移精に伴う運動なのだろうか。
それとも♀の徘徊を抑制したり攻撃性を宥めたりする合図なのかな?と想像を逞しくしました。
(映像はここまで。)
翌朝も同じ姿勢で交尾を続けていました。
やがて♂は♀に食われることなく無事に離れました。
隔離した♀に水と生き餌を与えると、その日の晩に産卵していました。
本個体は前回も交尾直後に産卵しています。