2022年8月下旬・午後15:25頃・くもり
里山で下山中、ニホンカモシカ(Capricornis crispus)が砂利道の真ん中に排泄した大量の黒い糞粒を見つけました。 多雪地帯の当地ではニホンジカが生息していないことになっているので、鹿の糞という可能性は除外します。
採寸代わりに携帯していたクマよけスプレー(高さ20cm)を並べて置いてみます。
黒い糞粒の形状が独特です。
少し離れたもう1箇所にも糞粒がばら撒いたように残されていました。
こちらには茶色の糞粒が混じっているのが珍しく思いました。
表面が乾いているようにも見えますし、少し鮮度が古い(排便後に日数が経過している)のでしょうか?
それとも採食メニューの違いを反映しているのかな?
カモシカの飼育記録をまとめた平田貞雄『ニホンカモシカ・ミミの一生』によると、
・山地で見る野生のカモシカのふんは、季節によって、言い換えると食べ物によって、形とか固さおよび色が違います。
・カモシカのふんの色ですが、晩秋から翌春まではやや褐色を帯びた緑色です。そしてその他の時期のものは黒緑色です。
・四季を通じて、一日の排ふん回数は3〜4回です。
(p69〜72より引用)
現場の林道は車の轍ができているぐらいですから、昼間に登山客や林業車両の往来がそこそこ多いです。 したがって、カモシカが糞場として定期的に通ってくるとは思えません。
カモシカの糞場は、もっと人目につかない場所を選ぶはずです。
カモシカは生活域内で、だいたいきまった場所で排便します。その場所を「ふん場」と呼びますが、山地で生活している場合には、斜面の棚状の地形のところをふん場とします。そういう地形のところはそんなにたくさん無いから同じ場所でふんをすることになり、そこにはふんが小高く積もります。 そして、ふん場にはかなりこだわるようです。(中略) 山の麓の方とか、平地の森林内で生活しているカモシカの場合は、棚状の地形に似たところ、たとえば小高い土手のわきなどをふん場とします。(同書p78-79より引用)
おそらく夜間に縄張りを巡回する途中で便意をもよおしたカモシカが立ち止まってポロポロと排便したのでしょう。
同一個体が2箇所で連続して脱糞したのか、それとも母子が並んで脱糞したのかな?
糞粒のサンプルからDNA鑑定すれば突き止められるはずです。
獣糞に集まる昆虫に興味を持って調べているのですが、今回はハエも糞虫も来てませんでした。
後日、同じ地点を通りかかる度にチェックしても、カモシカの新鮮な糞塊は二度と見つかりませんでした。
つまり、カモシカはここで繰り返し排泄していないことになります。
山中でニホンカモシカが通う溜め糞場を見つけたら、トレイルカメラを設置してみたいところです。
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