2017年3月下旬・午後18:03~18:17(日の入り時刻は午後17:54)
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春の大雪が降った宵のハクセキレイ(冬の野鳥)塒入り:前編
寒の戻りで春の雪が降りしきる中、ハクセキレイ(Motacilla alba lugens)の群れが民家の軒下の辺りに続々と飛来し、ホバリング(停空飛翔)していることに気づきました。
死角に入りよく見えないので、私も少し横に移動して撮影アングルを変更。
すると、通りから少し奥に入った2階建て民家の軒下の雨樋の手前でハクセキレイたちが激しくホバリングしていました。
屋根に積もった雪の上に止まっている個体もいます。
雨樋に潜り込んで並んでいる(目白押し)ハクセキレイが可愛らしい。
カメラを横にパンしても、従来の集団塒である電柱Sには1羽も居ません。
雪が降って寒い夜は雨樋の中で塒をとるのでしょうか?
吹きさらしの電柱よりも雨樋の中は吹雪になっても安心なシェルターに思えます。
この雨樋こそ冬季の集団塒、荒天時の塒としていつも使われているのかもしれません。
この場所はまさに灯台下暗しというか盲点になっていて、冬の間に私が見落としていた可能性もありそうです。
しかし、いくら断熱効果が高い羽毛に覆われているとは言え、金属の雨樋に密着していたのでは体温が容赦なく奪われそうな気もします。
ところが、しばらくすると突然ハクセキレイが雨樋から次々に飛び立ち、近くの細い電柱から伸びる電線止まり直しました。
民家の住人が追い払ったのではなく、ハクセキレイが自発的に飛び立ったのです。
更に再び飛んで、大通り沿いの電柱Sへ移動しました。
結局はいつもの集団塒(電柱S)にハクセキレイが続々と集まり始めました。
したがって、雨樋で
就塒前集合を経てから一気に塒入りするのは、ハクセキレイの習性です。(集団就塒)
夏に観察したときには、近所の別の建物の三角屋根(平屋建ての赤いトタン屋根)に就塒前集合していました。
電柱Sの塒内ではいつものように位置取りの小競り合いや追いかけっこ(空中戦)、ホバリングが巻き起こっています。
私の予想に反し、発熱して暖かそうな柱上トランス(柱上変圧器)付近に特に集中して群がっている様子はありませんでした。
鳥は恒温動物で断熱効果が高い羽毛に包まれています。
ハクセキレイは留鳥なので(一部は漂鳥?)、このぐらいの風雪や寒さは全く平気なのかもしれません。
(それなら何故、春になるまで電柱Sの集団塒は使われず閑古鳥が鳴いていたのか?という疑問が残り、堂々巡りです。)
てっきり寒い冬は柱上トランスで暖を取るだろうと予想していたのに、拍子抜けしました。
しかし結論付けるのは未だ早いでしょう。
最低気温になる深夜から早朝にかけて寝静まったハクセキレイをストロボ写真に撮って塒内分布をもう一度調べてみるべきでしたね。
また、柱上トランスが実際に夜どれぐらい放熱しているのか、サーモグラフィーでいつか撮影してみたいものです。
非接触型のレーザー温度計があれば電柱に登らなくても測定できそうです。(野外の高所までレーザーが届くのか?)
電柱Sのハクセキレイにズームインしてみると、ほとんどが背中の黒い♂ばかりでした。
極端な性比の偏りはいつ見ても不思議で、♀(背中が灰色)の塒はどこにあるのだろう?という疑問は未解決のままです。
鳥の本を読むと、おそらく繁殖期のハクセキレイ♀は各自の巣内で寝ているのだろう、と言われています。
カメラを横にパンして先程の民家をチェックすると、もう軒下の雨樋にはハクセキレイが1羽も居なくなっていました。
街灯(水銀灯)に照らされ、雪がしんしんと降っている様子がよく分かります。
地温が高いため路上には少ししか積もらず、水たまりになっています。
午後18:14に測定した気温は2.1℃、湿度56%。
※ 前半の雨樋のパート(~@3:07)のみ動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもっと薄暗く彩度が低い)
【追記】
唐沢孝一『生物からみた都市の姿』によれば、
都心のヒートアイランド現象は、厳寒の冬を生きのびる生物にとっては魅力的です。都心の駅前やゴミ焼却炉の近くで集団ねぐらをとる習性があるハクセキレイは、都市で発生する熱を利用している可能性があります。 (ポピュラー・サイエンス241『都市生物の生態をさぐる:動物からみた大都会』第7章 p164-165より引用)
私が見ているフィールドは都市ではなくかなり田舎の市街地(郊外)ですけど、参考までに抜書きしておきます。