2017/07/04

春の大雪が降った宵のハクセキレイ(冬の野鳥)塒入り:後編



2017年3月下旬・午後18:03~18:17(日の入り時刻は午後17:54)
▼前回の記事
春の大雪が降った宵のハクセキレイ(冬の野鳥)塒入り:前編

寒の戻りで春の雪が降りしきる中、ハクセキレイMotacilla alba lugens)の群れが民家の軒下の辺りに続々と飛来し、ホバリング(停空飛翔)していることに気づきました。
死角に入りよく見えないので、私も少し横に移動して撮影アングルを変更。
すると、通りから少し奥に入った2階建て民家の軒下の雨樋の手前でハクセキレイたちが激しくホバリングしていました。
屋根に積もった雪の上に止まっている個体もいます。
雨樋に潜り込んで並んでいる(目白押し)ハクセキレイが可愛らしい。
カメラを横にパンしても、従来の集団塒である電柱Sには1羽も居ません。
雪が降って寒い夜は雨樋の中で塒をとるのでしょうか?
吹きさらしの電柱よりも雨樋の中は吹雪になっても安心なシェルターに思えます。
この雨樋こそ冬季の集団塒、荒天時の塒としていつも使われているのかもしれません。
この場所はまさに灯台下暗しというか盲点になっていて、冬の間に私が見落としていた可能性もありそうです。
しかし、
いくら断熱効果が高い羽毛に覆われているとは言え、金属の雨樋に密着していたのでは体温が容赦なく奪われそうな気もします。

ところが、しばらくすると突然ハクセキレイが雨樋から次々に飛び立ち、近くの細い電柱から伸びる電線止まり直しました。
民家の住人が追い払ったのではなく、ハクセキレイが自発的に飛び立ったのです。
更に再び飛んで、大通り沿いの電柱Sへ移動しました。
結局はいつもの集団塒(電柱S)にハクセキレイが続々と集まり始めました。
したがって、雨樋で就塒前集合しゅうじぜんしゅうごうしていたことになります。
就塒前集合を経てから一気に塒入りするのは、ハクセキレイの習性です。(集団就塒)
夏に観察したときには、近所の別の建物の三角屋根(平屋建ての赤いトタン屋根)に就塒前集合していました。

電柱Sの塒内ではいつものように位置取りの小競り合いや追いかけっこ(空中戦)、ホバリングが巻き起こっています。
私の予想に反し、発熱して暖かそうな柱上トランス(柱上変圧器)付近に特に集中して群がっている様子はありませんでした。
鳥は恒温動物で断熱効果が高い羽毛に包まれています。

ハクセキレイは留鳥なので(一部は漂鳥?)、このぐらいの風雪や寒さは全く平気なのかもしれません。
(それなら何故、春になるまで電柱Sの集団塒は使われず閑古鳥が鳴いていたのか?という疑問が残り、堂々巡りです。)
てっきり寒い冬は柱上トランスで暖を取るだろうと予想していたのに、拍子抜けしました。
しかし結論付けるのは未だ早いでしょう。
最低気温になる深夜から早朝にかけて寝静まったハクセキレイをストロボ写真に撮って塒内分布をもう一度調べてみるべきでしたね。
また、柱上トランスが実際に夜どれぐらい放熱しているのか、サーモグラフィーでいつか撮影してみたいものです。
非接触型のレーザー温度計があれば電柱に登らなくても測定できそうです。(野外の高所までレーザーが届くのか?)

電柱Sのハクセキレイにズームインしてみると、ほとんどが背中の黒い♂ばかりでした。
極端な性比の偏りはいつ見ても不思議で、♀(背中が灰色)の塒はどこにあるのだろう?という疑問は未解決のままです。

鳥の本を読むと、おそらく繁殖期のハクセキレイ♀は各自の巣内で寝ているのだろう、と言われています。
カメラを横にパンして先程の民家をチェックすると、もう軒下の雨樋にはハクセキレイが1羽も居なくなっていました。

街灯(水銀灯)に照らされ、雪がしんしんと降っている様子がよく分かります。
地温が高いため路上には少ししか積もらず、水たまりになっています。
午後18:14に測定した気温は2.1℃、湿度56%。

※ 前半の雨樋のパート(~@3:07)のみ動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもっと薄暗く彩度が低い)



【追記】
唐沢孝一『生物からみた都市の姿』によれば、
 都心のヒートアイランド現象は、厳寒の冬を生きのびる生物にとっては魅力的です。都心の駅前やゴミ焼却炉の近くで集団ねぐらをとる習性があるハクセキレイは、都市で発生する熱を利用している可能性があります。 (ポピュラー・サイエンス241『都市生物の生態をさぐる:動物からみた大都会』第7章 p164-165より引用)


私が見ているフィールドは都市ではなくかなり田舎の市街地(郊外)ですけど、参考までに抜書きしておきます。

芝の堤防で採食するムクドリ(野鳥)



2015年4月中旬

河原の土手でムクドリSturnus cineraceus)が採食していました。
堤防の斜面を歩き回り、枯れた芝生をつついたり地面をほじくったりして虫を探しているようです。
芝生の若葉が少しだけ芽吹いていました。

斜面の奥でもう一羽のムクドリが同様に採食していました。
もしかすると番(つがい)の関係なのかもしれません。


2017/07/03

春の大雪が降った宵のハクセキレイ(冬の野鳥)塒入り:前編



2017年3月下旬・午後17:54~17:58(日の入り時刻は午後17:54)
▼前回の記事
ハクセキレイの集団塒に紛れ込むムクドリ(野鳥)

前回の定点観察から4日後、寒の戻りで朝から大雪が降りました。
雪の日のハクセキレイMotacilla alba lugens)はどこに塒入りするのか?という長年の疑問が解決するかも?と期待に興奮しながら集団塒を見に行きました。
特に寒い夜は電柱の集団塒で柱上変圧器(柱上トランス)の周囲に密集して暖を取るのでは?という個人的な予想を検証したいところです。
それとも気候が厳しい冬に逆戻りすると、夏季(繁殖期)の塒を一時的に離れて寒さを凌げる冬季の塒に移動するのでしょうか?

万全の防寒具を着込んで出かけ、現場に着いたのは午後17:05。
断続的に雪が降りしきる中をしばらく待ちます。
地温が高いため、路上にはほとんど雪が積もらず、すぐに溶けていきます。
(映像はここから。)
ハクセキレイの定宿となっている2本の電柱SとNを日没時刻にチェックすると、未だ1羽も来ていませんでした。
電線や電柱、柱上トランスにうっすらと冠雪しています。
横風の影響で、電柱の西面に沿って雪が縦の帯状に付着しています。
数分後には、電柱Sの近くの電線に3羽のハクセキレイが止まっていました。
就塒前集合が始まりそうです。
更にもう1羽のハクセキレイが飛来して電柱Sの天辺に着地しました。
ところがこれ以上はハクセキレイの数が増えず、電柱S/電線からどこか住宅地の方へ次々に飛び去ってしまいます。
群れの本隊はどこに居るのでしょう?
午後17:47に測定した外気温は3.1℃、湿度55%。

前編は状況説明しただけで、面白い本題は後編になります。

※ 夕暮れ時で薄暗く彩度が低い映像のまま、あえて自動色調補正していません。

つづく→後編:意外な場所で就塒前集合



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