2012/02/22

アカゲラ♀がイラガ(蛾)の繭を砕いて採食【冬の野鳥】



2012年1月中旬・外気温6℃(測定ミス? 実際はもっと低いような…)

朝7時、窓の外からキョッキョッ♪と独特の鳴き声が聞こえてきます。
ケヤキの樹上でアカゲラ♀(Dendrocopos major)が枝から枝へ飛び回っていました。
夜に降った雪は止んでいるものの、枝には新雪が積もっています。
やがて細い枝先にぶら下がり、何かを啄き始めました。
イラガMonema flavescens)の堅い繭のようです。
このときは割れずに諦めて再びあちこち枝を移動し始めました。
幹をヒョコヒョコ登ります。
間断なくキョッキョッ♪と鳴き声を発しています。
枝に止まって糞を排泄(@3:51)。

再びケヤキの木に戻ってくると、細い枝先に付いたイラガの繭を啄いて割ろうとしています。
これほど多くのイラガ繭を短時間で見つける能力は流石です。
遂に鋭い嘴が堅いイラガの繭を貫通したようで、中の蛹を嘴で引きずり出して食べました(@6:28)。
肝心の捕食シーンがピンぼけになってしまい残念…。
後日、イラガ繭を割って中を見る機会がありましたが、ずんぐりした前蛹で越冬するようです。映像で繭から引きずり出した時にビョーンと伸びたように見えたのは虫体ではなくアカゲラの長い舌と思われます。
最強の盾と最強の矛の対決は啄木鳥に軍配が上がりました。
足場が悪くて力が入らない様な細い枝先でも器用に割ることができるようです。
これで味をしめたのか、しつこく他の枝を調べて回ります。
やがて枝に止まって大休止。
顔は常にキョロキョロしています。
固い尾羽で体重を支えている様子がよく分かります。
寒風でなびく羽毛が美しい。
最後は急に飛び去りました。

早朝から良い物を見れました♪
これほど長時間アカゲラを撮れたのは初めてです。
初めは慎重にカーテンの陰からガラス越しに隠し撮りしていたのですけど、次第に大胆になり窓を少し開けて直接レンズを向け、鳴き声もクリアに録音出来ました。



前回2010年の観察記録はこちら→「イラガの繭を割って食べるアカゲラ
このとき飛来したアカゲラも♀でした。



【追記1】
冬になるとキツツキは餌を求めて、繁殖の期間守ってきた縄張りから離れるようになるらしい。(『科学のアルバム:キツツキの森』p30より)


【追記2】
鳴き声の著作権問題について問題提起
この動画をYouTubeにてアップロードしたところ、公開当初から「Matched third-party content. 」との警告が表示されました。

  Your video, Great Spotted Woodpecker vs Oriental Moth Cocoon アカゲラ♀がイラガの繭を採食 , may include content that is owned or administered by this entity:
  • Entity:
  • Music Publishing Rights Collecting Society Content Type: Musical Composition   

「音声パートが何かの楽曲の著作権を侵害している」というおかしな主張(言いがかり)です。
もちろん私が自分で撮った100%オリジナルの動画ですし、音声も自然環境で録音された野鳥の鳴き声に過ぎません。
お聞きになって分かるように、BGMも一切含まれていません。
YouTube側が著作権違反対策として既知の楽曲や番組などにマッチングするかどうかプログラム(アルゴリズム)で自動的に判定しているのだと思いますが、誤検知がままあることは周知の事実です。
一番の問題は、反論したくてもどの音楽レーベルの誰が申し立てをしているのか具体的に通知されないことです※。
少なくともマッチングしたと称する楽曲名を知りたいところです。
キツツキ自身あるいはその団体が著作権および肖像権の侵害だと訴えているのでしょうか?!
※ この点についてYouTubeのヘルプ・フォーラムにて多くのユーザーから繰り返し怒りの抗議が提起されているにも関わらず、改善される兆しがありません。
以前も私の動画で山中で撮ったクロスズメバチの羽音が「Matched third-party content. 」と言われて憤慨したことがあります。
このときは相手にするのも面倒なので音声部をカットして無音の動画をアップロードし直しました。
今回はアカゲラの鳴き声も生態記録として重要なので音声をカットする訳にはいきません。

最近、同様の問題を扱った記事を見つけました。
YouTube、鳥のさえずりを著作権の発生する音楽と判断
事態は概ね私の想像していた通りのようです。
野鳥の鳴き声を収録したCDが販売されていることは知っていますし、彼らが自分の著作物を守りたいという動機は理解できます。
鳴き声CDの一部を無許可でコピーして自分の動画のBGM素材として不正使用する輩がいるのかもしれません。
鳴き声CDの音声データには電子透かしを入れたら良いでしょう。
YouTubeで野鳥や動物の鳴き声のマッチングをチェックする際は判定基準を厳格にしてもらわないと、鳴き声はどうしてもステレオタイプ(種特異的)ですから過剰な不正請求が横行する結果になりかねません。
ナチュラリストの健全な楽しみを奪うだけでなく、鳴き声によるコミュニケーションを研究する動物行動学の発展を阻害することになります。
もしイヌやネコの鳴き声を含む動画が著作権違反だと勝手に削除されたなら、YouTube上にある大量の(正当な)ペット動画はどうなるでしょう?
人間の赤ちゃんの泣き声も同様です。
(むしろそうやって大騒ぎにならなければ対策されないのかも…。)

誤検知で言いがかりのような著作権違反の申し立てを繰り返す(濫用)悪質な個人や機関にはペナルティを課すべきではないでしょうか。

生き物の行動の記録をアーカイブするためにYouTubeを利用している私としては、ヒト以外の鳴き声はフェアユース扱いにしてもらいたいというのが個人的な強い希望です。

という訳で、私も他人事ではありません。
ブログの片隅にてひっそりと抗議します。

ネタ元のスレッド英語)を読むと更にはらわたが煮えくり返ります。
当事者が登場して非を認めダメージコントロールに努めるのですが、その弁解がまたなんとも…。
グリシャムの次回作でこれをテーマに痛快なリーガルサスペンスを書いてくれないかなー。

2012/02/21

熟柿を採食するニホンザルの群れ



2012年1月下旬

雪が激しく降りしきる中、野生ニホンザルMacaca fuscata)の群れが山からまた里に下りてきました。
群れには白猿もいます。
民家の裏にある柿の木に数頭の猿が登り、熟した果実を採食していました。
猿は枝から枝へ身軽に移動し、枝ごと折って柿の実を食べます。
食べながら枝や余分な実を無造作に捨てて落としました。



子猿をおんぶした母猿も食べ放題に参加。
母親の背にしがみついた子猿も真似して自ら手を伸ばして柿をもぎ取る様子が微笑ましい(@2:32)。
今年は雪が多く、食料の少ない山で厳しい冬を生き延びるために猿達も必死です。
激しい雪のためよく見えませんが、頬袋一杯に果実を詰め込んでいることでしょう。
ときどき聞こえる「キキキキッ、キーキー♪」という猿の騒ぐ声は近くの広場で喧嘩する個体の鳴き声だと思います。
餌が豊富なためか、柿の樹上では食べるのに夢中で喧嘩にはなりません。
こうしたご馳走にありつけるのは、群れで上位の個体だけなのだろうか。
一番右の枝に居た個体は発信器付きの首輪をしています(@0:55)。

隣の猿はよく柿食う猿だ


2012/02/20

交尾不調でもマウントを続けるコカマキリ♂♀ペア(100倍速映像)



2011年10月上旬
コカマキリ成虫の飼育記録

コカマキリStatilia maculata)が交尾する一部始終を飼育下で観察するため、♂と♀bを同居させてみました。
夜の11時頃にペアリングを始めると♂はすぐに♀の隙を見て背後からマウントしました。
ところがどういう訳か交尾器の結合が上手くいかず、すぐに外れてしまいます。
何度か失敗すると、その後はマウントしつつも♂は交尾器の結合を諦めたようでした。

♀がときどき体を左右に揺するのは♂への催促だろうか?
♂はときどき♀の背中からずり落ちそうになるのか、慌てたように身動きします。
(鎌が痙攣するようなもがくような動き)

(映像はここから)
夜中は5秒間隔のインターバル撮影で監視を続けました。
カメラのバッテリーが切れるまで8時間40分もの間、マウント姿勢のまま結局交尾に至りませんでした。
暇を持て余した♀は、止り木でときどきカメラを睨んだり身繕いしたりしていました。


翌日の午後、痺れを切らした♀が止り木で方向転換した際に♂が遂に力尽きて♀の背中から落下しました。
ひどく消耗しており自力で立ちあがれず、そのまま♂は寿命を迎えました。
下に敷いた紙に♀が排泄した糞が計6粒落ちていました。
♀bの方は毎日充分な生き餌を与えているせいか、不甲斐ない交尾相手にも共食い行動を起こすことはありませんでした。

この♂は左右の後脚が欠損しています。
これが交尾行動に影響したのだろうか。
あるいは♂がライバルから♀を守る「交尾前ガード」の行動なのかと首をひねって見てましたが、どうやら♂の健康状態に問題があったようです。
(栄養状態が悪かった? 寿命間近だった?)
それとも交尾器の相性が悪かったのだろうか。

生き物相手の撮影はなかなか一筋縄では行きません。
野外で別の元気な♂を捕まえてきて、もう一度婿入りさせてみることにします。
(つづく)



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