ノシメマダラメイガの飼育記録#22
2015年7月上旬飼育容器の底に作られたノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)の薄い繭の中で蛹の黒化が進んでいます。
この蛹は頭部を上に向けており、体の前半部は黒色になり、腹部は褐色のままです。
24時間以内に羽化しそうです。
羽化する瞬間を記録するつもりで10倍速の微速度撮影で監視・録画していたら、全く予想外の展開になりました。
個体密度などは考慮せずに適当に飼っているため、他の幼虫が絶え間なく徘徊して来て繭内の蛹も落ち着かなそうです。
餌の穀類の下に潜った幼虫がときどき激しい地殻変動を起こしています。
繭の入り口から幼虫が侵入してきて触れたため、蛹が少し回転しました。
このとき蛹が蠕動して威嚇(抗議)したようです。
繭の隙間に幼虫が居座り、上半身だけ外に出して食事しています。
ようやく居候が出て行ってくれたと思いきや、また戻って来ました。(別個体?)
繭の作りが甘くて侵入し放題です。
頭部を幼虫につつかれた蛹は、尾を振って(身を攀じって)必死に抵抗しています。
図らずも蛹の運動能力を見ることが出来ました。
侵入者の幼虫は蛹室を乗っ取ろうとしているのでしょうか?(労働寄生)
本種の幼虫が集めたゴミを糸で綴って念入りに繭を作るのは、共食い防止のためのような気がしてきました。
幼虫が蛹を完全に繭の左端から追いやってしまいました。
繭を乗っ取った幼虫は押麦をかじったり繭内で方向転換したりしています。
まさか蛹と幼虫の仁義なき兄弟喧嘩が見れるとは予想外でした。
散々、狼藉を働いた後に幼虫は、意外にも繭から出て行きました。
したがって幼虫には何も悪気はなく(繭を乗っ取るとか労働寄生する意図は無く)、無邪気に勝手気ままに徘徊・摂食していただけのようです。
苦心して作った繭から後輩(弟/妹)に追い出された蛹は無防備な剥き出し状態になってしまいました。
もちろん自力では繭に戻れません。
※ プラスチック容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に対して動画編集時に自動色調補正を施してあります。
つづく→#23:成虫の羽化【微速度撮影】
【追記】
小島渉『わたしのカブトムシ研究』に似たような話が書いてありました。
(カブトムシの)幼虫は先にできた蛹室の近くにやってきて、そこで自らも蛹室を作る。このとき、やってきた幼虫は先にできた蛹室と必ず一定の距離を保っており、それを壊してしまうようなことはほとんど起こらないようなのだ。(中略)カブトムシの蛹室の壁は物理的にそれほど頑丈ではないので、ほかの幼虫が土を掘って蛹室を作るときに壊してしまうことが起こるはずである。(p67-68より引用)
幼虫がまさに蛹室の壁に到達しようかというとき、蛹が蛹室の中でぐるぐると服節をまわし回転運動をおこなうのが見えた。幼虫は動くのをやめ、しばらくすると蛹室のそばから少しずつ離れていった。(p68より)
幼虫は決して蛹を食べてしまうようなことはなかった。ただ単に、土の中を動き回って蛹室の近くに来たときに知らず知らずのうちに蛹室を壊してしまうのだと考えられる。(p69より)
腐葉土の中で育つカブトムシの幼虫は、天敵(捕食者)であるモグラの振動を察知するとしばらく動きを止めてやり過ごすらしい。
カブトムシの蛹はモグラの振動を行動擬態することで、同種の幼虫に蛹室を壊されないようにしている、という興味深いストーリーでした。
ノシメマダラメイガの蛹も同様の防衛戦略を発達させていても不思議ではありません。(実際に繭が壊され侵入されそうになったときに、蛹が繭の中で激しく暴れました)
今回はあまりにも高密度で飼い過ぎたせいで、繭内の蛹が繭内で動いてもその音がかき消されてしまったのかもしれません。