2015/08/17

ノシメマダラメイガ(蛾)の繭を乗っ取る幼虫【微速度撮影】



ノシメマダラメイガの飼育記録#22

2015年7月上旬

飼育容器の底に作られたノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)の薄い繭の中で蛹の黒化が進んでいます。
この蛹は頭部を上に向けており、体の前半部は黒色になり、腹部は褐色のままです。
24時間以内に羽化しそうです。
羽化する瞬間を記録するつもりで10倍速の微速度撮影で監視・録画していたら、全く予想外の展開になりました。

個体密度などは考慮せずに適当に飼っているため、他の幼虫が絶え間なく徘徊して来て繭内の蛹も落ち着かなそうです。
餌の穀類の下に潜った幼虫がときどき激しい地殻変動を起こしています。
繭の入り口から幼虫が侵入してきて触れたため、蛹が少し回転しました。
このとき蛹が蠕動して威嚇(抗議)したようです。

繭の隙間に幼虫が居座り、上半身だけ外に出して食事しています。
ようやく居候が出て行ってくれたと思いきや、また戻って来ました。(別個体?)
繭の作りが甘くて侵入し放題です。
頭部を幼虫につつかれた蛹は、尾を振って(身を攀じって)必死に抵抗しています。
図らずも蛹の運動能力を見ることが出来ました。
侵入者の幼虫は蛹室を乗っ取ろうとしているのでしょうか?(労働寄生)
本種の幼虫が集めたゴミを糸で綴って念入りに繭を作るのは、共食い防止のためのような気がしてきました。
幼虫が蛹を完全に繭の左端から追いやってしまいました。
繭を乗っ取った幼虫は押麦をかじったり繭内で方向転換したりし
ています。
まさか蛹と幼虫の仁義なき兄弟喧嘩が見れるとは予想外でした。
散々、狼藉を働いた後に幼虫は、意外にも繭から出て行きました。
したがって幼虫には何も悪気はなく(繭を乗っ取るとか労働寄生する意図は無く)、無邪気に勝手気ままに徘徊・摂食していただけのようです。
苦心して作った繭から後輩(弟/妹)に追い出された蛹は無防備な剥き出し状態になってしまいました。
もちろん自力では繭に戻れません。


※ プラスチック容器越しに撮ったやや不鮮明な映像に対して動画編集時に自動色調補正を施してあります。

つづく→#23:成虫の羽化【微速度撮影】



【追記】
小島渉『わたしのカブトムシ研究』に似たような話が書いてありました。

(カブトムシの)幼虫は先にできた蛹室の近くにやってきて、そこで自らも蛹室を作る。このとき、やってきた幼虫は先にできた蛹室と必ず一定の距離を保っており、それを壊してしまうようなことはほとんど起こらないようなのだ。(中略)カブトムシの蛹室の壁は物理的にそれほど頑丈ではないので、ほかの幼虫が土を掘って蛹室を作るときに壊してしまうことが起こるはずである。(p67-68より引用)
幼虫がまさに蛹室の壁に到達しようかというとき、蛹が蛹室の中でぐるぐると服節をまわし回転運動をおこなうのが見えた。幼虫は動くのをやめ、しばらくすると蛹室のそばから少しずつ離れていった。(p68より)
幼虫は決して蛹を食べてしまうようなことはなかった。ただ単に、土の中を動き回って蛹室の近くに来たときに知らず知らずのうちに蛹室を壊してしまうのだと考えられる。(p69より)

腐葉土の中で育つカブトムシの幼虫は、天敵(捕食者)であるモグラの振動を察知するとしばらく動きを止めてやり過ごすらしい。
カブトムシの蛹はモグラの振動を行動擬態することで、同種の幼虫に蛹室を壊されないようにしている、という興味深いストーリーでした。
ノシメマダラメイガの蛹も同様の防衛戦略を発達させていても不思議ではありません。(実際に繭が壊され侵入されそうになったときに、蛹が繭の中で激しく暴れました)
今回はあまりにも高密度で飼い過ぎたせいで、繭内の蛹が繭内で動いてもその音がかき消されてしまったのかもしれません。



柳の葉を舐めるハシボソガラス(野鳥)



2015年7月上旬

湿地帯に生えた柳の群落で葉を舐めているのは蜂(モンスズメバチ♀スズバチクロマルハナバチ♀)だけではありませんでした。

柳(樹種不詳)の高木に3羽のハシボソガラスCorvus corone)が集まっていました。
梢の細い枝に止まって何をしているのかと思いきや、柳の葉を嘴でパクパク摘んでいます。
葉に付いたアブラムシの甘露や、あるいは柳の花外蜜腺を舐めてるのでしょうか?
舌の動きが見えないのですけど、決して葉を千切って食べている(葉を飲み込む)のではありません。
それともアブラムシなどの虫を捕食しているのかな?

三羽烏のうち、左の枝に止まった個体が頻りにカーカー♪(正確にはガーガー♪掠れ声で)鳴いてます。
口の中が黒いので成鳥ですね。
注目していたら気不味く感じたのか、鳴きながら飛び去りました。

ちなみに、柳の葉を舐める野鳥を見たのはこれが二度目です。

▼関連記事
柳の花外蜜腺を舐めるヒヨドリ
柳の葉はよほど甘いのでしょうか?
今度私も舐めてみようかな…。


2015/08/16

成虫の死骸を解体して巣材とするノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫



ノシメマダラメイガの飼育記録#21

2015年6月下旬

ノシメマダラメイガPlodia interpunctella)成虫が1頭、飼育容器の壁面にへばり付いて死んでいます。
その死骸の傍らに居る幼虫が気になりました。
分散移動の途中にたまたま死骸に遭遇して立ち往生しているのではなく、やけに死骸へ執着しています。
気になって観察していると、死骸を掴んで(噛んで?)保持しながら後退して引き寄せました。
翅を根本から食いちぎろうとしているようです。
もちろん幼虫が生きた成虫を捕食したのではなく、成虫は寿命で死んだのでしょう。
死骸なので共食いや親殺しではありません。
幼虫の餌として与えた穀物やチョコレートだけでは物足りず、屍肉を食べてタンパク質を補給しているのでしょうか?(scavenger)

※ プラスチック容器越しに撮った前半のみ自動色調補正を施してあります。

容器越しの撮影ではまどろっこしいので、容器の蓋を開けて直接接写することにしました。
辺りは死骸の鱗粉が散乱していました。
斜めに見下ろすアングルのため、肝心の幼虫の口元が残念ながらよく見えません。

先日、終齢幼虫が営繭する初めの段階で周囲から様々なゴミを集めては糸で綴って繭を強化する様子を観察しました。
その際に近くにあった成虫の死骸を引き寄せて解体していました。
親のバラバラ死体を巣材に再利用するという猟奇的な習性に震撼しました。

▼関連記事
ゴミを綴り繭を紡ぐノシメマダラメイガ(蛾)終齢幼虫【微速度撮影】

今回も似たような行動なのだろうと予測がつきました。
案の定、後日この場所で(おそらく同一個体が)繭を紡ぎました。
幼虫がゴミ資源(死骸)のすぐ近くを選んで営繭することが興味深く思いました。

この繭は中の蛹が透けて見えるので、成虫が羽化するまで観察を続けることにしました。

つづく→#22:蛹と幼虫の兄弟喧嘩




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