2010/12/25

手乗りヒメホソアシナガバチ♂




2010年10月下旬

遊歩道の鉄柱でホソアシナガバチの仲間の♂が休んで居ました。
午前中で気温が低いせいか、近づいても弱々しく歩き回るだけです。
その場で軽く羽ばたくことも。頭を下に向けて静止し、折り畳んだ前足をピクピクさせています。
白い頭楯とカールした触角から♂であると確信できたので、手乗りに挑戦してみました。

ハチの前方から指を差し出してやると、初めは嫌がってそっぽを向きましたが、二回目で指に乗ってくれました。

人肌で体温が上がったのか、急に活発になりました。
軽く身繕いしてから飛び立ちました。
♂は毒針が無いので決して刺しません。
束の間の触れ合いを楽しみました。
次回は指で摘んでも危険は無いことを実演するつもりです。


ホソアシナガバチ属♂が単独で居る場合の見分け方(ヒメホソアシナガバチ/ムモンホソアシナガバチ)を知らなかったので、蜂類情報交換BBSにて質問してみました。
「触角の先端節に注目すると先端が細くなく、前節と同じ位の長さなので、ヒメホソアシナガバチParapolybia varia)である」とご教示頂きました。



比較のため、ムモンホソアシナガバチ♂の触角も載せておきます。



キマワリの遁走





2010年7月上旬

資材置場の近く(木周り)でキマワリPlesiophthalmus nigrocyaneusを二匹続けざまに発見。
一匹は体表の金属光沢が鮮やかな個体でした。
接写してみると複眼の形状が面白いですね。
指で軽く触れると慌てて逃げて行きました。




アオクチブトカメムシ




2010年7月上旬

アオクチブトカメムシDinorhynchus dybowskyi)だと思います。
怒り肩が格好良いです。
ヨモギの葉に居ました。絵に動きがないので指で軽く触れてみたのですが、あまり逃げませんでした。


アズマキシダグモ♀(蜘蛛)の卵嚢保護



2010年7月上旬

アシの葉を巻いた中でアズマキシダグモ♀(Pisaura lama)が卵嚢を大切そうにガードしていました。
粽状の産室は他のクモが作ったものだろうか?
歩脚に指で軽く触れても逃げませんでした。


ミドリヒョウモンの交尾




2010年7月上旬

林縁で交尾中のミドリヒョウモンArgynnis paphia)を発見。
前翅表に黒い発香鱗条をもつ♂は翅を開閉しています。
♀は翅を閉じたまま静止。
ときどき連結したまま飛んで移動しました。
連結飛行の際は♂が主導権を握るようです。





垂直円網で捕食するイシサワオニグモ(蜘蛛)




2010年7月上旬

ヒメジョオンの茎を支柱に垂直円網を張ったイシサワオニグモAraneus ishisawai)が網の中央に占座していました。
近づいたら逃げてヒメジョオンの蕾に静止。
歩脚は網に触れておいて、振動をいつでも感知出来るようにしています。
円網の中央(甑)に食べ滓が残されています。
辛抱強く待つと、ようやく安心したのか網の中央に戻りました。
腹面を見せて食事を再開。
獲物はハムシの仲間のようです。
食事中に偶然、小さな虫が網にかかりました。
クモは素早く駆け寄って噛み付き、甑に持ち帰りました。
この獲物は小さいので糸でラッピングする手間をかけませんでした。
初めの獲物(ハムシ)は放っておいて、小さな虫を先に食べてしまいました。


在巣のコアシナガバチ♂





2010年8月上旬

軒下に成熟期のコアシナガバチPolistes snelleni)の巣を発見。
ワーカーだけでなく、すでに♂が数匹羽化しています。
在巣の♀と比べると♂は体全体が華奢で、触角の先が軽くカールし、頭楯が白く、複眼がレモン色、大顎も未発達です。

≪追記≫
その後は♂が居なくなり、巣に残っている蜂は新女王だけになりました。
障害物の多い狭い空間で拡張を迫られたせいで、巣の形はかなり不規則です。
11月下旬にコロニー解散後の巣を採集するとかなり不規則な形状で、育房数は141室、巣盤辺縁の不完全な育房(空気室?)が51室でした。


コアシナガバチの栄養交換と蟻除け物質塗布



2010年7月上旬

コアシナガバチPolistes snelleni)の巣の定点観察。
巣盤の下から見上げると、成虫が幼虫と口移しで栄養交換していました。
続いて白い繭キャップの表面に腹部腹面を左右に擦り付けてアリ除け物質を塗布し始めました。
巣の背面はアリ除け物質で黒光りしています。
ワーカーの日齢は複眼の色で見分けられます。
複眼が黒い個体は羽化後間もない個体で、成熟すると褐色になります。




【追記】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』を読むと栄養交換について解説した章があり、とても勉強になりました。
・この分泌物は、どの齢の幼虫にもみられるが、とくに終齢幼虫の分泌量が多い。 
・分泌量の少ない時は、成虫が大腮で幼虫の口もとを激しくかみほぐして、分泌を催促したり強制する。 
現在では「栄養交換」という言葉は、幼虫と成虫間の食物交換だけでなく、同じ巣内の成虫相互の食物のやりとりの意味も含めて使われていることが多い。 
・アシナガバチやスズメバチの幼虫の分泌物は、唾液腺から分泌される。(中略)この組成は、ヒトの乳のそれと非常によく似ており、高い栄養価のものであることがわかる。 (p179-181より引用)

コアシナガバチが肉団子を給餌





2010年7月上旬

コアシナガバチPolistes snelleni)の巣を発見。
営巣地は南に面し、地上190㎝。
周りに色々と障害物が多く、巣全体を見渡せられないのが残念。
本種の創設女王は直射日光の当たる場所を営巣地に選択する傾向が顕著らしい。
(『日本の真社会性ハチ:全種・全亜種生態図鑑』 信濃毎日新聞社 p63より)


すでにワーカーが羽化しているようですが、創設女王と見分けが付きません。
在巣の成虫(計4匹写っているが実際はもっと居る)のうち一匹の♀が肉団子を処理しています。
他の成虫に分配せず、充分に噛みほぐすと肉団子を育房内の幼虫に給餌して回ります。

キタテハ死骸に群がるアリ




2010年10月下旬

舗装路でキタテハPolygonia c-aureum)が翅を閉じた状態で息絶えていました。
とても小さな蟻(種名不詳)が死骸に群がっています。



この日は適当な容器を持参してなかったため、アリを採集できませんでした。
このアリの名前が映像から分かる方がいらっしゃいましたら教えて下さい。
腹柄節が2節見える?

巣に葉片を搬入充填するフタスジスズバチ4




(承前)
緑の葉片を咥えて帰巣したヤマトフタスジスズバチ♀(=フタスジスズバチ;Discoelius japonicus)は今回なぜか節穴を見つけられず、定位飛行を繰り返しました。
すぐ近くにもう一つ節穴があって紛らわしい上に、前回ピンクの葉片で充填したのでピンクの板壁の背景では保護色になっています。
これほど力を込めて葉片を詰め込む(圧迫充填)のでは、中の卵や貯食物が潰れてしまわないのだろうか※。
充填作業の後半になると、葉片を噛みほぐしながら興奮したかのようにその場で羽ばたく行動が目立つようになりました。

  • 映像を見る限り、滑落防止説(板壁から滑り落ちないようバランスを取っている)は考えにくい。
  • アシナガバチの扇風行動を連想させます。気温は25℃と暑くありませんが、重労働で火照った大顎の筋肉を自分で扇いで空冷? (サーモグラフィーの動画を撮れれば解明可能かも) 
  • 噛みほぐした葉パルプの水分を飛ばしている? 

葉片で巣穴の入り口を完全に埋めると、ここでの営巣活動は完了したようです。
蜂はさっさと次に営巣する穴を探索し始めました。
巣穴を葉片で充填する全過程を動画に記録することが出来ました。
次は貯食や産卵、葉切り行動などを観察してみたいものです。
日にちが立つと葉片の詰め物はカビが生えてきました。


(シリーズ完)

※ 本種は巣坑の入り口近くには必ずEVC(空室)を設けるらしい。
巣材の葉片は常にバラ科の葉緑部から切り取られるらしい。
(『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』 岩田久二雄 眞野書店 p244 より)


巣に葉片を搬入充填するフタスジスズバチ3




(つづき)
フタスジスズバチ♀(Discoelius japonicus)は外で切り取ってきた葉片を丹念に大顎で噛み砕いてからパルプを巣穴に詰め込んでいます。
緑色/ピンクの葉片はランダムに選んでくるのか、それとも何か意図があるのだろうか。
この蜂の色覚はどうなっているのだろう?
蜂が去ってから巣穴を接写すると、二色のモザイクになっています。
最終回4へ続く)

巣に葉片を搬入充填するフタスジスズバチ2




(つづき)
巣材集めに出かけたヤマトフタスジスズバチ♀(=フタスジスズバチ;Discoelius japonicus)はすぐに戻って来ます。
近くで葉を切り取ってくるようです。
植物の種類は不明。
ときどきピンク色の葉片を搬入します。
初めは枯葉や樹皮かと思いましたが、同じ葉の斑入り(紅葉?)部分でも構わず使っているのだろう。
巣穴の周囲の壁の色と同じ保護色にしようとしているのかと想像してみました。
しかしよく考えると、植物繊維が乾くと枯葉色になるはずですから、意味がありません。
二年前に観察した個体は全て緑の葉片を搬入していました。
葉片を巣穴に詰め込む作業では頭楯で押し込んでいるようです。
せっかく運んできた葉片を充填作業の途中で半分落としてしまうこともありました。
出かけたまましばらく戻って来ない時間もあって心配しましたが、花蜜で栄養補給していたのかもしれません。
3へ続く


巣に葉片を搬入充填するフタスジスズバチ1




(つづき)
巣穴の横でじっと観察していると、ヤマトフタスジスズバチ(=フタスジスズバチ;Discoelius japonicus♀が外で切り取ってきた葉片を巣穴に詰め込み始めました。
本種は日本産ドロバチ類の中で葉片を用いて巣室を仕切る唯一の種です。
運んでくる葉片の縁はギザギザ。
大雑把に切り取って来るのだろう。
ピンク色の葉片もときどき運んで来るのが面白く思いました。
穴が浅くなると、葉片を単純に詰め込んだだけでは弾力で戻ってしまう(穴から飛び出してしまう)のだろう。
よく噛みほぐしパルプ状にしてから充填しています。
作業中に辺りを飛び回る小さな羽虫に警戒しています(寄生者対策?)。
次の葉片を採集してくる前に巣穴の位置を記憶するため定位飛行してから飛び去ります。
2へ続く


巣穴を拡張するフタスジスズバチ♀



2010年7月上旬

小さな祠の板壁北面で最近ずっと節穴を物色しつつ探索飛行していたヤマトフタスジスズバチ♀(Discoelius japonicus)が、遂に営巣を始めたようです。
地上60㎝にある直径3.5㎜の虫孔に頭を突っ込み、拡張作業していました。
落ちた木屑が下に溜まっています。
最後は胸部全体が穴に入りました。
中は暗闇なので触角だけを頼りに作業しているのでしょう。
ようやく一段落すると巣穴の傍で身繕いし、定位飛行と点検を繰り返してから飛び去りました。
気温25℃。

営巣行動のどの段階なのか撮影時は分からなかったのですが、貯食および産卵は既に済ませていたことが後に判明しました。
EVC(巣口に設けられた空室)を掃除していたのだろう。

つづく

営巣地を探索するフタスジスズバチ♀




2010年6月下旬〜7月上旬

フタスジスズバチ(=ヤマトフタスジスズバチDiscoelius japonicus)♀が板壁に向かってホバリングしていました。
借坑性の蜂なので、巣穴になりそうな物件を探しているのでしょう。
後半の映像は5日後に同じ場所で撮ったものです。
まさに穴があったら入りたい様子でした。


つづく

2010/12/24

ホソヘリカメムシ




2010年10月下旬

ほっそりした体型の見慣れないカメムシがガードレール上を徘徊していました。

太い後脚を接写してみます。
帰ってから調べてみるとホソヘリカメムシRiptortus pedestris)のようです。
飛ぶ様子が蜂に似ているらしいので、是非次回はそれを撮影してみたいものです。

オニノゲシの葉を食すホソバセダカモクメ(蛾)幼虫




2010年7月上旬

農道に生えたオニノゲシホソバセダカモクメCucullia fraterna幼虫が居ました。
黄色と黒の派手な模様です。
頭楯に逆Vサイン(黒地に白V)が描かれています。
茎上部の若葉を採食中でした。
幼虫はチクチクする葉の鋸歯の刺が痛くないのだろうか。
食害した傷口から滲み出る白い乳液※も舐めているようです。
試しに私も茎の断面に滲み出た乳液を指ですくい取ってみると、香ばしい油分の粘り気があり美味しそうでした。
芋虫はここにしばらく陣取っているようで、下の葉には二粒の糞が残されていました。



【追記】※乳液について
保谷彰彦『わたしのタンポポ研究』p40~41によると、
タンポポのほかにも、乳液をもつ植物があり、その数は数万種にもおよびます。主な植物に、サツマイモ、イチジク、クワ、ゴムノキ、トウダイグサなどが挙げられます。乳液成分は種ごとに異なり、有害成分が含まれていることもあります。乳液はアルカロイドにより食害を防ぐことや、ゴムや樹脂の成分で傷口を防ぐこと、あるいは栄養分となることなどに役立っているとされます。また、不要な成分を乳液中にためているだけかもしれないという説もあります。おそらく乳液は、植物ごとに異なる働きを持つのでしょう。
おそらくホソバセダカモクメの幼虫はこの乳液の有毒成分を解毒できるので、食べても平気なのでしょう。



【追記2】
『ふしぎな花時計:身近な花で時間を知ろう』によると、
(ハルノノゲシの)葉や茎のどこを傷つけても白い乳液が出てきますが、このような植物は浸透圧が高く、耐寒性に富んでいます。(p34より引用)


フキバッタの脱皮




2010年7月上旬

道端に生い茂ったススキに葉裏で脱皮しているフキバッタの一種を発見。
終盤のようで、脚が固まるのを待っています。
成虫への羽化なのかもしれませんが、成虫も翅の短い種類なのでよく分かりません。
腹端を抜け出る肝心の瞬間を撮り損ねてしまいました。
痛恨のミス...。
本来は三脚を立てて脱皮の過程を望遠で監視すべきでしたが(早回し映像作成)、この日はあまりにも暑くて頭がぼーっとしてしまい、雑な撮影になってしまいました。
マクロレンズ装着で不用意に近づき、撮影に邪魔な手前の葉を折っていたら警戒したフキバッタがスルリと脱いで逃げられてしまいました。
「♪緑の中を走り抜けてくバッタがおるでぇ~」と古い替え歌を口ずさみながら、記念に脱皮殻を採集して持ち帰りました。


【追記】
改めて映像を見直すと、翅のようなものが見えるので、成虫への羽化かもしれません。
『カラー自然シリーズ44:バッタのくらし』によると、
成虫になる最後の脱皮を羽化といいます。(中略)フキバッタの成虫には、他のバッタのような長い羽は見られません。小さな褐色の羽が、成虫のしるしです。






ヒメトラガ?(蛾)の幼虫




2010年7月上旬

道端の草むらで見つけた芋虫。
体側面にはなんとも複雑怪奇な模様(黄色地に黒曲線)があります。
蔓に掴まったまま頭部(オレンジ色地に黒斑点)を少し持ち上げ威嚇姿勢を取っていました。
脚はオレンジ色。
指で軽く頭部に触れると慌ててUターンし、葉裏に隠れました。
幼虫図鑑サイトで調べてみると、たぶんヒメトラガAsteropetes noctuina)の幼虫だと思います。
蔓植物は種名不詳ですが(ヤブガラシかな?)、ヒメトラガの食草としてヤマブドウなどのブドウ科植物が知られています。


柳の樹上にカラスの巣?【野鳥】




2010年6月中旬


柳の木の上に鳥の巣を発見。
しばらく眺めていても親鳥が居ないようなので、よじ登って調べてみました。
巣の直径は約40cm。
沢山の枯れ枝を密に組み合わせお椀状の巣が作られています。
残念ながら中に卵や雛は居ませんでした。
後日再訪しても主は不在だったので、古い巣なのだろうか。
それとも作りかけ?
図鑑で調べてみると、素人目にはカラスの巣と似ている気がします。
平地なのでハシボソガラスかな?

≪参考≫  『日本の野鳥:巣と卵図鑑』 世界文化社



【追記】
『カラスは街の王様だ』p13によると、

ハシボソガラスの巣は落葉広葉樹やマツなどの明るい樹枝上に割と開放的に作られるのに対し、ハシブトガラスではクスなどの常緑広葉樹の樹冠部の茂みにひっそりと作られる傾向がある。(中略)巣の高さは、警戒心の強さを反映してか、一般にハシブトガラスの方が高い。
同書p143によると、
カラス類では、偽巣と呼ばれる、実際には使用しない巣を造ることがよくある。

『カラスの思惑』p22によると、
カラスは4月から5月にかけて卵を産み、かえったヒナを7月の初めごろまで巣で育てる。

巣材の樹脂を運ぶイスカバチ




2010年7月上旬

イスカバチの一種が出入りする巣穴の回りに塗られた樹脂の滴が日に日に増えていくのが不思議でした。
この日ようやく褐色の樹脂の塊を咥えて運んでいる様子を一瞬だけ観察できました。
残念ながらこの個体が営巣する穴は突き止められませんでした。
今まで定点観察していた板壁の東面ではなく北面を徘徊し、最後は板の隙間奥に潜り込みました。
蜂を同定するため採集しようと思い立った途端に姿が見えなくなりました。
ありがち...。


イスカバチの巣穴を囲む樹脂の役割





2010年7月上旬

イスカバチの一種が営巣している板壁は千客万来です。
在巣の主が同種の別個体を追い払ったり、同じく借坑性のフタスジスズバチが巣穴を物色しに来たり、働きアリが餌を求めて徘徊していたり、寄生バチ(ヒメバチの一種)が飛来したりします。
巣穴bの入り口に塗られた樹脂は日に日に追加され、最後には板壁に巣穴を中心に放射状に並べられ、滴り落ちるほどの量になりました。



巣材として運び入れる際にうっかり巣穴の周囲を汚してしまうにしては丁寧な(戦略的な)塗り方です。
しばらく定点観察していると、この樹脂はどうやらアリなどの捕食性昆虫に対して忌避効果があるような印象を受けました。
板壁を徘徊するアリは樹脂に触角で触れるだけで慌てて逃げていきます。
すぐ上に樹脂の塗られていない別の虫孔(同サイズ)があるのですが、この穴c(空き巣)にはアリが平気で潜り込んで探索しています。(自然の対照実験)

≪追記≫
後日、巣穴cにもイスカバチが営巣を始めたようで、同様に樹脂が塗られました。



イスカバチの巣穴bと樹脂の縁取り




2010年6月下旬〜7月上旬

年季の入った板壁の地上130cmの所に開いた虫孔(直径2.5mm)にイスカバチの一種が出入りしています。
入り口はオレンジ色の樹脂で縁取られており、樹脂の量や配置は見に行く度に変わります。
板材が自然に樹脂を分泌するはずがありませんから、どうやら蜂が巣材として集めて来ているようです。
イスカバチの仲間はアブラムシを大量に狩って貯食するらしいのですが、観察の機会に恵まれませんでした。


↑一ヶ月後の様子。樹脂が滴り落ちています。


※ 前回の動画に撮った虫孔aでは蜂の姿を見なくなったので、同じ板壁で定点観察の対象を変えました。虫孔入り口のサイズは同じでした。


イスカバチの巣穴aと樹脂の縁取り



2010年6月下旬

杉林にある小屋の板壁に黒い蜂が止まり、小さな穴を物色していました。
直径2.5mmの穴はオレンジ色の物質で縁取られています。
指で触れてみると、粘性のある新鮮な樹脂と判明(杉のヤニ?)。
初めて見るハチで気になるので、定点観察してみます。
入り口に塗られた樹脂にはどんな役割があるのだろうか。
いつもお世話になっている「蜂類情報交換BBS」にて写真鑑定してもらったところ、青蜂@管理人さんよりアリマキバチ科イスカバチ属の一種であると教えて頂きました。
アブラムシを大量に狩る借坑性のハチで、育房の仕切りには樹脂を使うのだそうです。
画像から翅の亜縁室が2個、腹柄はないように見えます。その特徴からイスカバチ属の一種(Passaloecus sp.)だと思われます。イスカバチは、材の細い虫孔や屋根のカヤのずい孔などを利用して造巣し、各幼虫室の仕切り壁には一般に杉ヤニや松ヤニが使われるそうです。狩るのはアブラムシです。
Passaloecusで検索したところ、このようなウェブサイトを見つけました。リンク先のページ中程の画像群の一番左上をクリックしてみてください。ちなみにドイツ語のページです。検索でヒットした画像には、「Aphid Buster Passaloecus Nest」という画像もありました。イスカバチでアブラムシの駆除をしているようです。資料によると1室に20~50集めるとありますから、これだけ大量に営巣するとアブラムシ退治にかなり効果がありそうですね。

営巣地を探索するオオフタオビドロバチ




2010年7月上旬

オオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum)がネットを被せた柱の奥の節穴に入りたそうにしていました。
ずっと辺りを探索飛行しているので、営巣地を物色している♀なのだろう。
節穴をノギスで採寸すると、短径9㎜、長径10㎜。


2010/12/23

疾走するセアカヒラタゴミムシ





2010年10月下旬

歩道を走り回る赤い甲虫がいました。
撮影後に採集して調べると、セアカヒラタゴミムシDolichus halensis)と思われます。
体長16mm。





エントツドロバチの泥巣閉鎖3/3




(承前)
午前中の連続観察約80分間でエントツドロバチ(オオカバフスジドロバチ)Orancistrocerus drewseni♀は計18回往復し、17個の泥玉を運びました。
カメラのメモリーカードを使い切ったところで観察を打ち切りました。
三脚を立ててじっくり監視したいところでしたが、巣の位置が撮影アングルを確保できない高所だったため無理でした。
脚立に乗り腕を伸ばしたままの苦しい姿勢で接写を続け、疲労困憊。
後日再訪すると、これで巣の閉鎖はほぼ完了だったようです。
隣に泥巣を新設することもありませんでした。
(シリーズ完)


続編はこちら→「エントツドロバチの泥巣を発掘

エントツドロバチの泥巣閉鎖2/3




(承前)
営巣を完了したエントツドロバチ♀(=オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseni)♀は、鉄骨とコンクリートに挟まれた空間の奥から斜めに土手(あるいはトーチカ?)を作るように巣全体を塗り潰そうとしているようです。
大顎を使って泥を伸ばしていきます。
巣材の泥はどこから集めて来るのだろう。
出かけてもすぐに泥玉を咥えて戻ってくるので、近くにある田んぼの畦や小川の岸から採土していると思われます。

その3に続く)


エントツドロバチの泥巣閉鎖1/3




2010年7月上旬

エントツドロバチ♀(=オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseni)が鉄骨支柱とコンクリートの隙間(地上195cm。22 x 75 x 25 mm)に営巣していました。
既に育房への貯食、産卵は済ませた後のようで、特徴的な煙突状の入り口は撤去されています。
巣材の泥玉をせっせと運んできては巣の全体を塗りつぶしています。

その2へ続く)


アオサギが水田で食事




2010年7月中旬

アオサギArdea cinerea jouyiが田んぼの畦に佇み、水中の獲物を狙っています。
ゆっくりとした足取りで水田にどんどん入って行き、何か獲物を捕食しました。
手前の木立が邪魔でよく見えませんでしたけど、おそらくカエル、オタマジャクシやザリガニかな?

イエユウレイグモの振身威嚇




2010年10月中旬

不規則網に占座した窓際族のイエユウレイグモPholcus phalangioides)です。
ありふれた普通種ですが、「刺激したときに身を揺する」と図鑑に記述されています。
二年前は気温が低くて反応しなかったので再挑戦。


指で体に触れようとしたらうっかり網に触れてしまったようで、クモは逃げてしまいました。
獲物と思って駆け寄ったのかもしれない。
オートフォーカスでは背後の摺りガラスにピントが合ってしまい撮りにくいです。
邪魔な窓を開けようとしたら不規則網がビリビリと破れてしまいました。
これにはイエユウレイグモも堪らず警戒して体を激しく揺すり始めました。
しばらくすると一旦落ち着きました。
すっかり怖気づいてしまったようで、少し風が吹いても逃げ腰です。
もう一度ペン先で体に触れてみたら、振身威嚇するどころか窓枠へ逃げてしまいました。
しばらく待っても網には戻らず、開いた窓から外に脱出してしまいました。
未採集、未採寸。


簡単そうな課題でもなかなか満足のいく映像が撮れません。今度うまく撮れたら差し替えます。


オカトラノオを訪花するシタキモモブトスカシバ(蛾)の吸蜜ホバリング





2010年7月中旬

ホバリングしながらオカトラノオの花蜜を吸って回るスカシバ(蛾)がいました。
だらりと下げた太く毛深い後脚が印象的です。
我虫像掲示板にて問い合わせたところ、おそらくシタキモモブトスカシバMelittia inouei)か、あるいは鱗粉の擦れたオオモモブトスカシバ本土亜種Melittia sangaica nipponicaだろうと教えて頂きました。

【追記】
東北地方にはシタキモモブトスカシバしか分布していないのだそうです。
3年後の同じ時期に、吸蜜ホバリングする様子をハイスピード動画に撮りました。→関連記事


【追記2】
石井誠『昆虫のすごい瞬間図鑑: 一度は見ておきたい!公園や雑木林で探せる命の躍動シーン』には、モモブトスカシバMacroscelesia japona)という別種の蛾の写真が掲載されていました。
「オカトラノオの花の周りで観察できる」という訪花習性は似ています。
ただし、ベイツ型擬態の一例として紹介されていて、ルリモンハナバチがモデルだろうと書いてある点に私は首をひねってしまいました。
2種類の写真を並べて見せられると確かに似ている気もするのですが、「他人の空似」ではないかと私は思います。
まず第一に、ルリモンハナバチは労働寄生種ですから、♀も花粉を集める必要がなく、モモブトスカシバのように毛深くありませんし後脚の花粉籠も退化しています。
また、ベイツ型擬態が成立するためには、捕食者の各個体がモデルとなった虫を食べようとして一度痛い目に遭う必要があります。
一般に寄生バチは個体数が少ないです。
私が通うフィールドでは未だ一度もルリモンハナバチを見つけたことがありません。(希少種と思われます)
野鳥がルリモンハナバチ♀(毒針あり)を野外で捕食して学習する機会はとても低いでしょう。
ルリモンハナバチをモデルとしたベイツ型擬態種が進化してくるとはとても思えません。



蟻を食すトラフカニグモ♀




2010年7月中旬

道端に生えたオカトラノオの葉上で食事中のクモが居ました。
獲物は黒いアリのようです。
撮影後に一時捕獲して調べてみました。



近縁種にセマルトラフカニグモがいますが、腹部後方が尖るのでトラフカニグモ♀(Tmarus piger)だと思います。
体長5.5mmで腹面に外雌器を認めました。

図鑑によると本属は、「他のカニグモ類と異なり飛翔性の昆虫はあまり獲らず、茎や枝を上って来るアリ類を捕食する」らしい。(『日本のクモ』 文一総合出版 p254)



飼育したらアリを狩る瞬間を撮れるだろうか。
蟻酸をかけられても平気なのかな?

コアシナガバチ♀の肉団子作り





2010年7月中旬

青虫を狩ったコアシナガバチPolistes snelleni)のワーカー♀が風で揺れる草の上で獲物を食肉処理していました。
大顎で噛みほぐして肉団子が出来ると巣の方へ飛び去りました。

オオフタオビドロバチ♀が巣穴を掃除




2010年7月下旬

資材置場に転がっている丸太の端が加工され、下面にほぞ穴が3つ並んでいます。
手前の穴に一匹の蜂が入ったのを見届けたので、正体を突き止めようと動画を撮りながら出巣を待ち構えました。
穴の内側は木ネジ(ボルト)の溝が切ってあるようです。
中から木屑が落ちてきます。
借坑性の♀が巣穴の奥を穿坑あるいは掃除しているようです。
やがて後ろ向きに出てきた蜂はぶら下がった状態からすぐ落下するように飛び去りました(1:30)。
映像をコマ送りで確認すると多分オオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum)だろうと判明。
口に木屑の塊を咥えていました。
隣のほぞ穴(中央)は営巣完了したようで、入り口は既に泥で閉鎖されています。

≪追記≫
 結局この穴はお気に召さなかったようで、10日後に再訪しても穴は未使用のままでした。
その代わり、近くに設置した竹筒トラップでの営巣活動を後日詳しく観察できました。
新シリーズの動画はこちら

2010/12/22

オオハナアブ♀のノギク吸蜜




2010年10月中旬

野菊(種名不詳)の群落でオオハナアブPhytomia zonata)が何匹も訪花していました。
同一個体ではなく、複数の♀を追いかけて接写しました。
全体的な雰囲気はクマバチやマルハナバチに擬態しているらしい。
複眼の表面に縞模様があるのが面白いです。
左右の複眼が頭頂部で離れているので♀だと思います。
口吻を伸ばして蜜を舐めています。
次の花へは飛んで移動することもあれば花弁を伝い歩きすることもありました。


オオモンクロクモバチが獲物を巣坑に搬入





(つづき)
▼前回の記事オオモンクロクモバチ♀のアリ対策

2010年7月下旬

営巣地探索からオオモンクロクモバチ♀(=オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensisが戻ってきました。
草むらに放置した獲物のスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)を探し回るもなかなか見つけられないでいます。
ようやく発見すると、しばしの休憩後に運び始めました。
営巣地の選定にかなり手間取りましたが(2時間!)、決まると最後の運搬作業は迅速でした。
クモを咥えると後ろ向きで一目散に歩いて行きます(後退地上運搬)。
クモが地面の障害物に引っかかって悪戦苦闘しています。
ヒメクモバチのように麻酔した獲物の歩脚を切り落とせば運搬は楽になりそうな気がします。
しかし歩脚が無いと草上に引っ掛けられなくなり、アリに持ち去られる可能性が高まるのでしょう。
映像をよく見ると蜂は獲物を大顎で咥えて引きずっているのではなく、少し持ち上げて運んでいます。
数回の小休止と偵察を挟んで運搬します。
もはやゴールが近いので、獲物から離れる際もわざわざ草上に引っ掛けたりしません。
あれほど念入りに選定した営巣地は落ち葉の下の隙間で、人間が上から見ても何の変哲も無い場所です。
後ろ向きのまま獲物を搬入しました。
初めに麻酔したクモを置いた草むらから目測で約3mの地点。 
クモバチ科の蜂は独房に獲物を一匹貯食する毎に産卵するはずです。
残念ながら地中での様子は分からず、産卵および巣坑の閉鎖行動は見届けられませんでした。
搬入後20分ほど粘って蜂が潜った場所を監視してみたものの、同じ穴からは出てきませんでした。
数分後に離れた場所からひょっこり現れた蜂が同一個体なのかどうか定かではありません。
観察打ち切り時(18:00 PM)の気温は28℃。
日が暮れる前に決着が付いて一安心。
心地良い疲労です。
(シリーズ完)


 ≪参考図書≫
『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』 岩田久二雄 眞野書店 p98より 
本種は狩猟行動が掘坑に先行するタイプであり、「地中の小動物の坑を入ってから、暗黒のところで狩猟運搬後に自ら巣坑をほるのである。」

『狩蜂生態図鑑』p80によればオオモンクロクモバチは
地中深くに営巣するため、巣を調べるのは困難。 


オオモンクロクモバチ♀のアリ対策





(承前) 
オオモンクロクモバチ♀(オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensis)が留守の間、辺りを徘徊していたクロオオアリCamponotus japonicus)の働き蟻が放置されたスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)を見つけました。
恰好の餌ですが、アリの怪力でも草に引っかかった重いクモを引きずって運べません。
クモの歩脚を食い千切ろうと膜質部に噛みついても歯が立たず、解体も諦めました。



オオモンクロクモバチは巣坑を探しに出かける前に盗難(置き引き)対策として、麻酔したクモを必ず草の上に運び、歩脚を振り分けるように引っ掛けて置くのです。
シリーズその2で実験したように、蜂の留守中にクモを草の上から下ろすと、蜂は再び獲物を草の葉までわざわざ引っ張り上げます。
賢いですねー。
動物番組でよく見る、サバンナのヒョウが狩った獲物を他の肉食獣に横取りされないようにアカシアの高木に咥えて運び上げる行動を連想しました。

▼その7へ続く
オオモンクロベッコウが獲物を巣坑に搬入





オオモンクロクモバチの巣穴選定





(つづき)
オオモンクロクモバチ♀(=オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensis)は何度もクモの場所まで戻り獲物の無事を確認してから営巣地の偵察を続けます。
獲物から離れる際、位置を記憶するための定位飛行などは見られませんでした。
もしかしてフェロモンを用いて印を付けているのだろうか。 
蜂の探索範囲は舗装路と側溝に挟まれた幅135cmの細長い土手で、横には用水路が流れています。
最近草刈りされたようで、草は疎らにしか生えていません。
地面は枯れ草や根が複雑に絡み合っています。
蜂は地面に堆積した枯草、枯れ枝の隙間や穴を偵察し、適当な既存坑を探しているようです。
落ち葉の下に潜り込んだと思ったら、入った隙間とは違う穴から出てきたりします。
主に歩いて偵察しますが、ときどき短い低空飛行で移動します。
飛ぶのは消費カロリーが大きいのかも。
土手をランダムウォークしているようですが、隣接する舗装路は決して偵察しません。
巣坑を掘れないことを知っているみたいです。


約2時間にわたって断続的に撮り続けた映像をまとめてみました。
営巣地選定にこれほど時間がかかるとは予想外でした。
もしかしたら、蜂が予め掘っておいた巣坑を私が知らずに踏んで埋めてしまったのではないかと心配になってきました。
シリーズ4で示したような穴掘り行動は少しで、蜂はほとんどの時間をひたすら探索に費やしました。
近くにアリの巣穴もありますが、この辺に獲物を埋めて大丈夫なのだろうか。
なんとかクモの搬入まで見届けたい一心で、少し離れた位置から観察を続けます。

▼その6へ続く
オオモンクロベッコウのアリ対策

オオモンクロクモバチ♀が巣穴を試掘





(承前)

オオモンクロクモバチ♀(=オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensis)は獲物を草の上に残したまま、運び込む営巣地の選定に余念がありません。
近くの地面で適当な既存坑を念入りに探しているようです。
落ち葉の下の地面を掘り始めました。
後ろに土を掻き出します。
やがて地中に隠れて姿が見えなくなりました。
しかし何故か気に入らなかったようで、場所を変えあちこちで試掘を続けます。

▼その5へ続く
オオモンクロベッコウの巣穴選定

オオモンクロクモバチの喧嘩





(承前)
クモの横で待っていると、オオモンクロベッコウ(=オオモンクロクモバチ;Anoplius samariensis)が偵察から戻って来ました。
草の葉の上に置いたクモの無事を確認しています。
そこへもう一匹のオオモンクロベッコウが飛来して喧嘩になりました。
二匹が地上で一瞬もつれ合った後にすぐ別れました。
昨年の失敗(麻酔事故)に懲りて、今回は蜂に個体識別のマーキングを施していません。
しかしすぐ獲物の元に戻ったので多分、獲物の主が勝って仲間を追い払ったのでしょう。
もしかして同種の蜂が狩った獲物を強奪することがあるのだろうか(労働寄生)。
その後、蜂は偵察のため辺りの草むらを歩き回ってから獲物が心配で戻り、傍らで休息しました。
このときクモに触れつつ腹端を曲げているように見えるが、毒針を刺しているかどうか映像では定かではありません。
曲げた腹部を左右に振ってクモに擦り付けているようにも見えます。
アシナガバチが腹部腹面の腺から分泌されるアリ除け物質を巣に塗布する行動を連想しました。
オオモンクロベッコウも目印のためクモに何かフェロモンのような物を擦り付けているのかな?と想像を逞しくしてみる。

▼その4に続く
オオモンクロベッコウが巣穴を試掘


ランダムに記事を読む