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2020/06/29

熟柿をついばむツグミ、ヒヨドリ、ヒレンジャクの混群(冬の野鳥)



2020年2月上旬・午後15:45頃

川沿いの民家の庭に植栽されたカキノキで野鳥の混群が熟柿を食べに来ていました。
ツグミTurdus eunomus)とヒヨドリHypsipetes amaurotis)がメインですが、撮影中はヒレンジャクBombycilla japonica)も1羽来ていることに気づきませんでした。
実は近くの針葉樹(ヒノキ?)にヒレンジャクの大群が集まっていたのですが、柿の木を占有しているヒヨドリやツグミに遠慮して順番待ちをしていたのかもしれません。

動画冒頭で、下の枝にメジロもチラッと写っていたような気がするのですけど、川の対岸から撮っていた私はすぐにカメラを上にパンしてしまい残念。
もっとじっくり撮影すべきでしたね。

途中で2羽のヒヨドリが小競り合いを繰り広げながら飛来しました。
連鎖反応で計3羽のヒヨドリが三つ巴の空中戦になりました。
ツグミの飛び立ちおよびヒヨドリの喧嘩を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。


▼関連記事(7年前の撮影)
雪の庭で熟柿を採食するツグミ、ヒヨドリ、ヒレンジャクの群れ【冬の野鳥:HD動画&ハイスピード動画】
ツグミとヒヨドリの喧嘩【冬の野鳥:ハイスピード動画】


2020/06/28

電線から飛び立つカワラヒワの群れ(冬の野鳥)



2020年1月上旬・午後12:55頃・くもり

郊外で計11羽のカワラヒワCarduelis sinica)が電線3本に並んで止まっていました。
五線譜に並ぶ音符♪を連想します。
寒そうに羽毛を膨らませたり身震いしたりしています。
風切り音で鳴き声は聞き取れませんでした。
カメラを向けると次々に飛び去り、2羽だけが残りました。

厳冬期にカワラヒワを見かけるのは珍しい気がするので、動画で記録しておきます。
記録が無いと「存在が無かった」ことにされてしまいますから、面白くない記録でもとりあえず残しておく価値があるのです。
図鑑でカワラヒワは留鳥とされています。
しかし、種子食性の鳥は豪雪地帯で餌を探すのが困難になりますから、南の地方に渡って行くはずです。(漂鳥)
今年は雪が異常に少ない暖冬なので、雪国でも落ち穂拾いなどをして餌を確保できているのでしょう。
冬季の採餌行動を動画に撮りたくてカワラヒワを探し歩いたのですが、目的を果たせませんでした。
もっと少数の群れで行動していることが多く、私が気づくより早く飛んで逃げてしまうのです。
来年以降に持ち越しですが、例年並みの積雪になるとカワラヒワの数は減ってしまうだろうと予想されます。

例えばスズメは草の種の他に熟柿を食べたりして、冬でも雪国に残って逞しく生き残ります。(留鳥)
その一方で、柿の木の熟果をカワラヒワが食べに来るシーンを一度も見たことがありません。



▼関連記事(3年前の3月下旬に撮影)
カワラヒワが群れで桜の冬芽を採食(冬の野鳥)


【追記】
山形新聞社『やまがた野鳥図鑑』によると、
冬季に観察されるのは大陸からくる亜種オオカワラヒワのようだ。(p55より引用)
今まで私はカワラヒワの亜種の違いを区別してこなかったので、新たな宿題ができました。
また同図鑑によれば、山形県内でカワラヒワが特によく見られる時期は、4月上旬〜8月中旬と記されていました。

2020/06/26

川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その3:少数♂による囲い込みの例



2020年1月上旬・午後15:45頃・くもり


▼前回の記事
川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その2:喧嘩に負けた♂が♀に八つ当たり

川面で4羽のオナガガモ♂(Anas acuta)が1羽の♀を取り囲んで求愛しています。
今まで見てきた「取り囲み」よりも集団婚活に参加する♂が少ないせいか、♀へのマークが甘くルーズな群れでした。
♀の一番番近くに居た♂αがライバル♂βに突進すると威嚇して追い払いました。
しかし♀の傍には別のライバル♂γδが2羽も残っているので油断できません。(漁夫の利を狙うかも)

♀から離れてしまった♂αが、慌てて♀の元に飛んで戻ろうとしたら、驚いた♀が飛び立ってしまいました。
残りの♂γδも即座に♀を追いかけて飛び立ちます。

私の勝手な妄想ですが、もしかするとこの♀は強くても♂αのことがあまり好きではなくて、逃げるチャンスを窺っていたのかもしれません。
囲い込みに参加しないで川面に浮いているだけの♂もたくさん居る点が興味深く思います。(若鳥の可能性は?)
婚活中のオナガガモは♂も♀も互いに選り好みしているようです。

一連の行動を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。
此岸に向かって飛行中も、♂αが♀の左横でぴったりと密着マークしています。
逃げた♀は少し飛んだだけで同じ川にすぐ着水し、♂4羽による求愛の囲い込みが再開されます。

【追記】
求愛の囲い込みに4羽の♂しか参加しなかったからと言って、この♀があまり人気がないとは限りません。
♂同士の争いで囲い込みから♂が次第に脱落していき、残り4羽まで花婿候補が絞られたのかもしれません。
♀は最後に残った♂と交尾すると思われますが、未だそこまで観察できていません。


2020/06/23

水路の流水を飲みに来たツグミ(冬の野鳥)



2020年2月上旬・午後14:40頃・くもり

街中を流れる水路(融雪溝)が川の本流に注ぐ手前の地点で、ツグミTurdus eunomus)が水を飲みに来ました。
コンクリート護岸の緩斜面を水際まで慎重に下ると、冷たい雪解け水に嘴を浸しました。
よほど喉が渇いていたのか、頭を11回も上下させて流水を飲みました。
画面の奥に短い氷柱が連なって見えます。

喉を潤したツグミはコンクリート護岸の斜面を少し登り返すと、雪面の落ち葉を数枚嘴でめくりました。
落ち葉の裏に隠れて越冬している昆虫類を探して食べるための探餌行動でしょうか。
そう言えばこの個体は、飲水後に嘴を拭う行動をなぜかやりませんでした。
最後は水路から飛び去りました。

実はこの撮影直前に、雪で覆われた河原の落葉灌木に2羽のツグミが止まっていました。
私がカメラを向けると1羽は飛んで逃げたものの、残った個体が水路に近づいて来たのです。
全く同じ場所で以前キジバトが水を飲んだのを思い出した私は、ツグミの意図を察することができました。


▼関連記事(2年前の撮影)
水路の流水を飲みに来たキジバト(野鳥)

撮りやすいアングルにさり気なく移動して、動画に記録することができました♪
今年は暖冬とは言え、川岸のあちこちには少量の残雪がありました。
水を飲むためにわざわざ用水路の岸まで降りていくのは天敵に襲われるリスクがありそうな気がします。
土手に積もった雪を食べる方が安全だと思うのですけど、このツグミはそうしなかったのが興味深く思いました。
雪を食べると体温が下がってしまうことを知っているのでしょうか。
例えばカラスやカワガラスは、冬に雪を食べて喉を潤すことがあります。
黒い羽毛の鳥は、晴れれば冬でも暑いのかな?

▼関連記事
雪を食べるハシボソガラス【冬の野鳥】
川岸で雪を食べ続けるカワガラス(冬の野鳥)


オナガガモ♂の同性愛?(冬の野鳥)



2020年1月上旬・午後15:10・くもり

川の水面で群れから離れた2羽のオナガガモAnas acuta)が暴れていました。
♀♂が交尾中なのかと思いきや、♂2羽の喧嘩でした。
疑似交尾のように背後からのしかかるようにマウントして嘴で相手をつつくと、やられた個体がたまらず飛び去りました。

その場に残った勝者♂は尾羽根を左右に振りながら頭部を繰り返し、水面下に漬けて儀式化された水浴をしました。
続けてその場で羽ばたきながら伸び上がり、羽根の水気を切りました。
これは転位行動だと思われます。
川面を遊泳し、群れに合流しました。
戻った先に複数♂による♀の囲い込み(求愛行動)はありませんでした。

1/5倍速のスローモーションでもう一度ご覧ください。
近くに♀が居なかったので、喧嘩の原因は不明です。
群れ内で♂の順位を決める争いがあるのでしょうか?
♀を巡る争いや交尾前ガードではないすれば、同性愛の行動という可能性があります。
そもそも私はオナガガモ♀♂による異性愛の交尾行動を未だ観察できていないのですけど、カルガモ♀♂の交尾行動と似ていました。

▼関連記事(1ヶ月前の撮影)
カルガモ♀♂の求愛・交尾行動(冬の野鳥)

参考:「動物の同性愛」@wikipedia

マガモなど野生のカモ類には同性愛カップルが多いという話を聞いたことがあります。
しかし、同性愛が報告された鳥類の種名リストにオナガガモは含まれていませんでした。

そもそも私はオナガガモ♀♂による異性愛の交尾行動を未だ観察できていないので、これ以上は何とも言えません。
逃げた♂が嫌がっているとしたら強姦になりますし、受け入れて♀の役割を果たしているようにも見えます。
同性愛行動と証明するには、個体識別したり♂の射精を確認したりしないといけないのですかね?
アマチュアは観察事例を地道に積み重ねるしかありません。
♂同士の同性愛だとしたら、求愛行動を始めるところから観察してみたいものです。
同じ相手とつがい形成して同性愛的な交尾を繰り返すのでしょうか。


2020/06/22

ミズキの花で獲物を探すキイロスズメバチ創設女王



2019年5月下旬・午前8:00頃

河畔林に咲いたミズキキイロスズメバチ♀(Vespa simillima xanthoptera)が訪花していました。
時期的に未だワーカー♀ではなく、創設女王でしょう。

吸蜜が目的ではなく、獲物を探索しているようです。
すぐに飛び去ってしまいました。
1/5倍速のスローモーションで見直しても、狩りは成功していませんでした。

ミズキは高木になり花がテーブル状に咲くので、上の枝に咲いた散房花序を下から見上げて撮っても訪花昆虫の活動がなかなかよく見えません。
花を見下ろして撮れるようなアングルを工夫しないといけません。




電柱から飛び立ち屋根に止まるノスリ(冬の野鳥)【HD動画&ハイスピード動画】



2020年1月上旬・午後13:20頃・くもり


▼前回の記事
ノスリを2羽でモビングするハシボソガラス(冬の野鳥)

カラスにモビング(擬攻撃)されて逃げてきたノスリButeo japonicus)がコンクリート製の電信柱の天辺に止まり、辺りをキョロキョロ見回しています。
ノスリの背後から飛来した1羽のヒヨドリが目の前を高速で横切っても、ノスリは動じませんでした。
(ヒヨドリによるモビングではなさそうです。)
ノスリは身震いしてから向きを変え、原っぱを見下ろすようになりました。
野ネズミなどの獲物を探し、待ち伏せしているのでしょう。

240-fpsのハイスピード動画に切り替えると(@1:07〜)、右足を上げて顔を掻きました。
私がしつこくカメラを向けて撮り続けると、ようやく飛んでくれました。

スローモーションで見るノスリの飛翔シーンは格別です。
翼を広げながら身を屈め、力強く羽ばたきながら足で電柱を蹴り出して飛び立ちました。
車道を渡ると堤防沿いの民家のトタン屋根に着陸しました。
実は、前回の記事で初めにノスリが止まっていたTVアンテナのすぐ近くです。
つまり、カラスが居なくなるを待ってから元の止まり場所に戻ったことになります。

このノスリとハシボソガラスは営巣(予定)地を中心とする縄張りが重なり合うようで、日々こうした神経戦のような攻防が繰り広げられているのでしょう。
互いに縄張りを譲る気は無いようで、いずれ折り合いを付けるのでしょう。


ノスリ(野鳥)@電柱天辺

ノスリの目の前を飛んで横切るヒヨドリ

2020/06/21

川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その2:喧嘩に負けた♂が♀に八つ当たり



2020年1月上旬・午後15:15頃


▼前回の記事
川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その1:♂同士の喧嘩

冬の川面で1羽のオナガガモ♀(Anas acuta)を7羽の♂が囲い込んで婚活(求愛)しています。

♀を先導するように一番近く(♀の眼の前)に居た♂aが左前のライバル♂bを嘴でつついて追い払いました。
やられた♂b個体が一旦離れてから戻って来ると、驚いたことになぜか♀に向かって突進し、嘴で攻撃しました。
喧嘩に負けた弱い♂の八つ当たりにしか見えないのですが、♂から♀に対するこれほど本気の攻撃は初見です。
♂bに激しくつつかれた♀は慌てて水面から飛び去りました。

逃げた♀を追うように、♂の群れも続けて一斉に飛び立ちます。
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、更に驚きの行動が記録されていました。
追いかけてきた劣位♂bが♀を追い越す際に、隣で飛ぶ♀を嘴でつつこうとしたのです。
かなり♀を恨んでいる(根に持っている)様子です。
劣位♂bは他の♂とは異なり、嘴を半開きで飛んでいました。
鳴いてるのかもしれませんが、周囲のオナガガモ大群の喧騒に掻き消されて、私には聞き取れませんでした。

逃げた♀は少し飛んだだけですぐに同じ川へ着水し、♂による求愛の囲い込みが再開されます。
もしも場所を変えれば♀を取り囲む♂同士の順位(どれぐらい♀に近づけるか)もご破算になるのだとしたら、劣位♂にも再びチャンスが巡ってきますから、わざと♀を飛び立たせたのも作戦なのだろうと納得できます。
もう一つの可能性は、♂bと♀が元々仲が良くてつがい形成しそうだったのに、急に♀が他の魅力的な♂に乗り換えようとしたので、♂bが怒ってしまったのかもしれません。

それとも選り好みの激しい♀が♂同士を長々と競わせるので、いい加減早く相手を決めてくれよ…と♀に苛立ったのでしょうか。
そんなことをあれこれ妄想するほど、非常に興味深い事件でした。



つづく→川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その3:少数♂による囲い込みの例

2020/06/20

ノスリを2羽でモビングするハシボソガラス(冬の野鳥)



2020年1月上旬・午後13:20頃

川沿いの住宅地でノスリButeo japonicus)と
ハシボソガラスCorvus corone)が喧嘩していました。

逃げてきた1羽のノスリが民家の屋根の八木式アンテナに止まりました。
追いかけてきた2羽のハシボソガラスが、ノスリの頭上から代わる代わる蹴りつけるような素振りをして嫌がらせをしています。
カラスが繁殖開始するには未だ少し時季が早いと思うのですが、既につがいを形成した♀♂ペアが縄張りから天敵の猛禽類を追い払っているのでしょう。

カラスにモビング(擬攻撃)されたノスリは、アンテナからまた飛び立つと逃げ出しました。
この間、鳴き声は聞き取れませんでした。

※ 音量を強制的に上げるために、動画編集時に音声を正規化しています。

ノスリは車道の上空を低く飛んで渡ると、近くに立つ電柱の天辺にフワリと止まりました。
なぜかカラスはもう追いかけて来ません。
逃げたノスリをハシボソガラスが見失ったとは思えないので、深追いしなかったのには何か理由があるはずです。
ノスリが横断した車道がカラスの縄張りの境界線になっているのかな?

モビングからの飛翔シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
飛んでいるノスリを注意深く見ると、左翼の後縁の羽毛(初列風切)が抜け落ちています。
換羽からの回復期間が私には分からないのですが、この特徴は個体識別に使えそうです。
だとすれば、昨年の春から夏にかけて近くの河畔林で営巣していたノスリ親鳥(性別不明)の可能性が高そうです。


▼関連記事(半年前の6月中旬に撮影)
初列風切羽を一部欠いたノスリの帆翔(野鳥)

ノスリも留鳥として真冬の川辺りで元気に暮らしていることが分かり、嬉しい出会いでした。
実は直前にこのノスリは、暖冬で雪が溶けた河川敷の枯草地から飛び立ったので、野ネズミなどを狩っていたと思われます。(動画撮影が間に合わず残念)


▼関連記事(7年前に別の地域で撮影)
ノスリの狩り・捕食と飛翔(冬の野鳥)




つづく→電柱から飛び立ち屋根に止まるノスリ(冬の野鳥)【HD動画&ハイスピード動画】




2020/06/19

川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その1:♂同士の喧嘩



2020年1月上旬・午後14:55頃・くもり

冬の川に集結したオナガガモ♀♂(Anas acuta)はあまりにも大群なので、求愛行動を観察したくても、どの個体に注目すべきか目移りしてしまいます。
しばらく眺めていると、複数の♂に囲まれて追い回されている地味な♀に注目すれば良いことが分かりました。

この動画では、川面を遊泳する1羽の♀に計8羽の♂が取り囲みながら並走し、求愛誇示を繰り返してしています。
この状態を「囲い込み」と呼ぶそうです。

『動物たちの気になる行動〈2〉恋愛・コミュニケーション篇 』という本(ポピュラー・サイエンス・シリーズ)に収められた、福田道雄『人前で求愛ディスプレイをするオナガガモ』がとても参考になりました。


囲い込み行動はオナガガモだけにみられるもので、他種のカモ類は行いません。オナガガモが多数飛来した水辺で、1〜2月ごろに注意深く観察していると、数羽以上の♂が一羽の♀を囲むようにして、追いかけながら泳いでいく光景がよくみられます。(中略)「囲い込み」が始まると、集まったメンバーはほとんど入れ替わることなく続けられます。その周囲に浮かんでいるカモたちは、この集団にほとんど関心を示さず、この一団だけがまとまって群れの中を移動して行くので、よく目立ちます。そしてこの集団の♂たちが、♀に対して求愛のディスプレイを繰り返し行います。(p27より引用)

囲い込む♂同士で頻繁に牽制しあい、嘴でつついて激しく攻撃しています。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。
その後に等倍速でリプレイ。

♀の前に居た1羽の♂aが横のライバル♂bを急に嘴でつついて攻撃し、追い払いました。(@0:11)
やられた方も珍しく反撃し、大喧嘩になりました。
ライバル♂bが堪らず逃げ、♀から少し離れました。
喧嘩直後の♂2羽はともに尾羽根を左右に振りました。
続けて勝者♂aが川面で水浴びを始めました。(儀式的水浴びに続けて転移性羽ばたき)

その隙をついて別の♂cが♀に向き直ると接近し、首を伸ばして求愛しました。(漁夫の利?@1:03)
怒った♂aはライバル♂cの右脇腹を嘴で激しくつつき、そのまま相手を嘴でグーッと押し続けました。(@1:13)
どうやら今のところ♂aが最も喧嘩に強く、♀の一番近くの位置を死守しているようです。
ところが、せっかく♂aの優位性が決まりかけたのに、急に群れが一斉に飛び立ちました。
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、初めに♀が飛び立ち、♂も慌てて後を追って飛び去ったことが分かりました。
撮影に集中していた私は、群れがどうして急に飛び立ったのか理由が分かりませんでした。
川岸の通行人に警戒したのかと思ったのですが、その後も囲み込み求愛からの飛翔という行動を川のあちこちで何度も観察したので、どうやら♀が自発的に飛び去ったのだろうと分かりました。
本にもそのように書いてありました。(下線を引いたのは私しぐま)


 オナガガモの代表的なディスプレイには、つぎのものがあります。ただし多くの場合、一つのディスプレイは単独で行われることはなく、組み合わせられたり、一連の行動として行われます。
a あご上げ ― 攻撃と逃避の入り交じった気分を示すもので、♂・♀共に幼鳥時から行われる、生活するうえでの基本的なディスプレイです。
b げっぷ ― ♀にマウントしようとする意図が込められていて、♀の後方に近づいた♂がよく行います。嘴を引き、上げた頭を下げるときに「ピュー」という笛声を出します。
c 水はね鳴き ― 「げっぷ」のときよりも、♀から離れた位置で行われ、しかも、♀に対してどの方向からも行われます。前方に伸ばした嘴を引き寄せるときに嘴の先で水をはね上げ、頸(くび)が突き上げられたときに笛声を出します。
d そり縮み ― 「水はね鳴き」の後に続いて行われる、セットになったディスプレイです。オナガガモやコガモでは、引き上げられた尾の側面にある、下尾筒(かびとう)のクリーム色の羽部分が視覚的に強調されます。このディスプレイの後、目当ての♀のほうに嘴を向けます。
また、このようなディスプレイがみられる水辺では、「囲い込み」の一団が、♀を追って飛び立ち、飛行する光景もみられます。よく観察すると、♂たちは飛びながら、頸(くび)を動かしたり、胸をそらしていて、飛行時用に変形した前記の求愛ディスプレイをしていることがわかります。 (同書p27〜29より引用)

飛翔シーンのスローモーションを見直しても、♂が♀に求愛ディスプレイし続けていたかどうかまでは分かりませんでした。
飛び去る群れをしっかり流し撮りする必要がありそうです。
ビデオカメラも発達していない時代にここまで詳細に一連の求愛行動を記録した専門家(研究者)の観察眼に感服します。
大群の喧騒のせいで、求愛時の鳴き声(笛声)を聞き取ることはできませんでした。
オナガガモ観察歴の浅い私には、本に書いてあるほど細かい求愛行動はとても未だ見分けられません。
それでも野外でオナガガモの求愛行動が少しずつ分かってくると面白くなってきました。

♂にしつこくつきまとわれている♀が嫌がって(?)飛んで逃げても、♂は即座に飛び立ち一斉に追尾します。
どうしても擬人化したりヒトの心情を勝手に投影したりしがちですが、♀が本当に♂の求愛(セクハラ?)を嫌がっているかどうかは分かりません。
♀は交尾相手を決めるために何度も飛んで逃げて、付いて来れない♂を篩いふるい落としているのかもしれません。(♀による♂の品定め)

つづく→川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その2:喧嘩に負けた♂が♀に八つ当たり




2020/06/18

雪化粧した川岸に集まるカワウの群れ(冬の野鳥)



2020年1月上旬・午前11:25頃・晴れ

今年は暖冬ですが、真冬にカワウPhalacrocorax carbo hanedae)の群れを見るのは初めてです。
本当に留鳥なのかと実は疑っていたのですが、冬の雪国でもカワウは元気に暮らしているようです。
定点観察のポイントに来てみると、川岸はきれいに雪化粧していました。
川の右岸の倒木に5羽のカワウが休んでいて、もう1羽が川面を遊泳しています。
更にもう1羽が新たに飛来し、川に着水しました。
そのまま右岸の空いた倒木に跳び乗ると、羽繕いを始めました。(@0:33)
この時点でカワウは計7羽。

画面奥の下流から川面を泳いできた別のカワウが近くで休んでいたカルガモを嘴でつつく素振りをすると(牽制)、カルガモは慌てて逃げて行きました。(@0:45)
そのまま川面を遡上してきた個体が右岸で倒木に上陸を試みたものの、先客と小競り合いになりました。(@1:28)
先客を追い払って止まり木を横取りしたのが、とても珍しく思いました。(先住者効果が働かなかった例)


▼関連記事
止まり木の空席を巡りカワウ同士で小競り合い(冬の野鳥)

倒木を横取りしたのは、胸が白い若鳥でした。
負けた個体も若鳥のような気がするのですが、正面を向いてくれませんでした。
倒木を追い出された個体は、川面を下流へ移動します。

次に川面を泳いで横断する個体を撮っていたら、対岸にもカワウ4羽の群れが休んでいました。
私が定点観察に通っているこの流域で、左岸にもカワウのコロニー(止まり木、休息場)が形成されていたのは初めてです。(私が今まで不覚にも気づかなかっただけ?)
川岸に並べられたコンクリートブロックに上陸したり倒木に止まって休んでいました。
そのうちの1羽が翼を大きく広げて羽根を乾かし始めました。

この日カワウを計12羽もカウントできたのは、過去最高の個体数でした。
カワウの他にはいつものようにカルガモの群れが集まっていました。
(別種の黒い鴨も少数混じっていましたが、遠くて見分けられません。)


カワウ8@右岸
カワウ5@左岸

2020/06/17

繁殖期にメタセコイア樹冠でさえずる♪アオゲラ♂(冬の野鳥)



2020年1月中旬・午後12:05頃・くもり

昼過ぎに何者かが甲高い声でキョン、キョン、キョン…♪と鳴き続けていました。
かなり遠くまで響き渡る大きな鳴き声です。
誰か子供(ヒト)が笛を吹いて悪戯しているのかと思ったぐらいです。
気になって探し回ると、平地で民家の庭に聳え立つメタセコイア(=アケボノスギ)の梢で啄木鳥が鳴いていました。
なんとなく猛禽類かと予想したのですが、聞き覚えのない謎の鳴き声の主は意外にもアオゲラ♂(Picus awokera awokera)でした。
しかし私は啄木鳥のこんな鳴き方は聞いたことがありません。
縄張り宣言は、嘴で幹を激しく叩くドラミングのはずです。


▼関連記事(7年前の撮影では♀がキョッキョッ♪と鳴いていました。)
アオゲラ♀の木登りと鳴き声♪【冬の野鳥】

手元にある鳥の図鑑で何冊か調べ回ると、繁殖期に特有の囀りさえずりだとわかりました。


(アオゲラの)鳴き声は、キョッキョッ。飛翔時にケレケレケレと鳴くこともある。繁殖期には口笛のようなピョーピョーピョーという声も発する。wikipediaより引用)

高木清和『フィールドのための野鳥図鑑:野山の鳥』でアオゲラのさえずりを調べると、

さえずり:ピュー、ピュウー、ピュウー、コロロロロロローン(さえずりと枯木をたたく音がまじる)/ピヨー、ピヨー(通る声)(p46より引用)


高野伸二『山渓カラー名鑑:日本の野鳥』でアオゲラを調べると、

声:主として繁殖期に「ピョー、ピョー、ピョー」と、笛のような大きな声で鳴く。(中略)飛び立つ時には「ケレレレ」と鳴くことが多い。(p368より引用)


鳴く合間に、黒っぽくて細長い固形の糞を排泄しました。(@0:25)

背景が曇り空の逆光のため、肝心のアオゲラの色姿がはっきり見えません。
私がそっと回り込んで順光から撮ろうとしたら、この辺りを縄張りとするヒヨドリHypsipetes amaurotis)が飛来してアオゲラを追い払ってしまいました。
図鑑の記述とは異なり、アオゲラ♂が飛び去るときにケレレレ♪と鳴くことはありませんでした。(@0:49)

アオゲラ♂と入れ替わるように飛来したヒヨドリが、少し下の小枝に止まりました。
メタセコイアは針葉樹なのに冬には落葉します。

※ 動画編集時に彩度を少し上げています。
また、音声を正規化して音量を強制的に上げました。




アオゲラ♂の囀りさえずりを声紋解析してみる


上の映像では定時(正午)に鳴り響く街のサイレン♪が耳障りで、声紋解析の邪魔でした。
9日後の1月下旬・午前9:04に同じ場所で再びアオゲラ♂が繰り返し鳴いていました。
おそらく前回と同一個体なのでしょう。
このときは物陰の死角になっていて鳴く姿を撮れなかったものの、窓ガラス越しに鳴き声だけでもハンディカムの動画で記録しました。
正規化した音声をブログ限定で公開しておきます。



オリジナルの動画ファイルから音声を抽出してから鳴いている部分だけを適当に切り取り、スペクトログラムを描いてみました。
今回混じっているノイズは、ハンディカム内部の動作音や私の鼻息などです。

犬の飼い主は皆さんご存知のように、街のサイレン♪や救急車、パトカーのサイレンが鳴る度に競い合うように(つられて)イヌはアォーン♪と遠吠えをします。
もしかするとアオゲラ♂もそうなのかと思ったのですが、静かな朝にも囀っていたので、サイレンの音とは関係ないことが分かりました。




2020/06/15

コンクリート護岸を徘徊するジガバチ♀



2019年9月下旬・午後13:50・晴れ

河原のコンクリート護岸でジガバチの一種♀を見つけました。
歩行徘徊と短い低空飛行を繰り返しています。
正面を一瞬向いたときに顔が黒かったので♀と判明。

炎天下で熱々になったコンクリート護岸に獲物となるイモムシが居るはずがないので、探餌徘徊というよりも営巣地の探索中なのかな?
だとすれば借坑性のミカドジガバチ?
(しかし私は恥ずかしながら、どうしてもミカドジガバチを見分けられません…。サトジガバチやヤマジガバチとの違いが分からないのです。)




2020/06/14

営巣地の上空を鳴きながら飛ぶ2羽のノスリ(野鳥)



ノスリ(野鳥)営巣地での観察記録#22



▼前回の記事
樹上の巣で羽ばたき練習するノスリの雛(野鳥)

2019年6月下旬・午後12:40頃・くもり

梅雨のため定点観察の間隔が開いてしまいました。
8日ぶりに様子を見に来ると、2羽のノスリButeo japonicus)が営巣地の上空を旋回していました。
羽ばたきと滑翔を繰り返しています。
飛びながらたまにピーェ、ピーェ♪と甲高い声で鳴いています(@2:09)。

※ 鳴き声の音量を強制的に上げるために、動画編集時に音量を正規化しています。

逆光のため翼下面の模様がほとんど見えなかったのですが、1羽が偵察するように私の頭上を飛んでくれたときは奇跡的にしっかり撮れました。
風切羽に欠損は無いものの、尾羽根の真ん中の羽根が欠損した個体と尾羽根が無傷の個体が飛んでいます。
私は未だノスリの性別や年齢をしっかり見分けられません。
それでもなんとかノスリのフィールドガイドと見比べると、脛に模様が無く、喉線も無いことから♂成鳥は除外できると思います。
最近、初列風切羽を一部欠いた個体が営巣地上空を飛んでいたのですが、今回はなぜかその特徴をもつ個体が見当たりませんでした。


▼関連記事
初列風切羽を一部欠いたノスリの帆翔(野鳥)

換羽がわずか8日で進行して初列風切羽がきれいに回復するとは思えないので、以前とは別個体の2羽が飛んでいることになります。
したがって、親鳥が飛んでいるだけでなく、巣立った幼鳥も縄張り内で飛行練習しているのではないかと推測しました。(例えば今回の2羽は、親鳥♀と幼鳥1の組み合わせ)

ちょっと面白いと思ったのは、高速で飛来したツバメがノスリに近づきそうになったら慌てて角度を変えた(ように見えた)ことです。(@2:28)
ツバメが猛禽に対して果敢にモビングしたのなら面白いのですが、映像では2種の遠近感や高度差がよく分かりません。


夏にノスリが飛ぶ姿を見たのはこの日が最後になりました。
独学での観察を記録しても中途半端であやふやな点だらけですが、とにかく我慢して継続することが大切です。






↑【おまけの動画】
同じ日に撮った巣の様子です。(午後12:35および16:18頃)
巣の周囲に枝葉がますます茂って覆い隠され、巣内に動きは見られませんでした。
個人的な記録としてブログ限定で公開しておきます。

つづく→#23:樹上にノスリ(野鳥)の古巣を見つけた!






その後は定点観察に通っても、巣内に動きはありませんでした。
(個人的な記録として、ブログ限定で公開しておきます。)



↑ノスリ古巣@6月下旬




↑ノスリ古巣@7月中旬




↑ノスリ古巣@7月下旬



2020/06/13

川岸で配偶者♀を一途にガードするオナガガモ♂(冬の野鳥)



2020年1月上旬・午後15:20頃・くもり

オナガガモ♀♂(Anas acuta)の大群が川面だけでなく、一部は岸に上陸して休んでいます。
陸上で配偶者ガード(配偶者防衛)している♀♂カップルを見つけました。
オナガガモはとても分かりやすい性的二型なので、野外で配偶行動の観察がしやすくて助かります。

渥美猛『オナガガモの奇妙なつがい形成』によると、

鮮やかな羽毛に換羽した♂は、♀に気に入られようと、ポンプ、げっぷ、水はね鳴き、そり縮みといったさまざまな求愛行動をします。つがいになった♂と♀は、一定の距離を保って、寄り添うように行動します。(中略)つがい♂は、つがい♀に求愛したり、接近する他の♂に対して攻撃します。この行動を配偶者防衛行動と呼びます。 (上越鳥の会 編『雪国上越の鳥を見つめて』p126より引用)

♂は♀を獲得すると採餌に専念できるのです。(中略)攻撃する頻度が一番多いのはつがい♂です。攻撃される相手はつがい♀に近づく独身♂やつがいにうっかり近づく独身♀でした。つがい♀はつがい♂に守られているため攻撃される頻度はごくわずかでした。(同書p127より引用)

これは主に水面上で繰り広げられる配偶者防衛行動について記述したものですが、今回の観察で、陸上でも続けられることが分かりました。

陸上で寝ている地味な♀aの横に♂が歩いて来ると、並んで止まりました。
♀は薄目を開けて♂の様子をこっそり見ています。
♂は首を上下に伸縮し始めました。
♂に特有の白い首筋を♀にアピールする求愛誇示行動なのでしょう。
このとき小声で鳴いているかどうか気になったのですが、周囲の大群の鳴き声にかき消されてよく聞き取れませんでした。
♂は求愛の合間に羽繕いもしています。

驚いたことに、♂が求愛しながら♀に胸で軽く体当りしました。(@0:27)
「プロポーズしてるのに無視すんなよ!」という「構ってちゃん」なのかな?と、どうしても擬人化しそうになります。
驚いた♀は歩き出しました。
もしかすると、♂はパートナーの♀を群れから離れたどこか静かな場所に誘導し、交尾したいのかもしれません。
その後の様子を見ていると、♂aはライバル♂から♀aを少しでも遠ざけたいのだ、と分かってきました。
しかし♀aはすぐに立ち止まると、片足立ちで寝始めました。

その間♂は、近寄ってきたライバル♂を目掛けて突進すると、追い払いました。
すぐに♀の傍らに戻って来ると、♂は求愛を繰り返します。
ライバル♂が近づきそうになると、♀との間に割り込むように地面に座りました。

座位休息しながらも♂は眠らずに、首を上下に伸び縮みさせて横の♀に白い首筋を見せつけています。(求愛誇示)
♂がときどき尾羽根を左右に激しく振る行動も何か意味がありそうです。

寝ている♀の横で♂が再び立ち上がりました。
ライバル♂が目の前を横切ろうとするだけで、♂は突進して撃退します。
♀の傍に戻って来ると、♂は必ず首を伸ばして求愛を披露します。
尾羽根を左右に振りながら♂は♀の横に座り込み、羽繕いを始めました。

♂は座りながらも油断なく配偶者防衛を続けます。
♂がまたすぐに立ち上がると、♀に求愛を再開。
ライバル♂が目の前を横切ろうとすると、♂は突進して尻を激しくつつき、追い払いました。

注目している♀♂ペアの背後でも、別の♀♂ペアが同様の求愛誇示および配偶者ガードを繰り広げています。

配偶者防衛に奮闘する♂aをよそに♀aはのんびりと片足立ちで寝ていました。
ようやく♀が目覚めると、歩いて川の方へ移動し始めました。
慌てて♂は求愛しながら、ぴったりと♀の横を付いて歩きます。
護岸の水際までやって来ると、♀a♂aが並びました。
このとき、♂aが右隣の♀b(無関係の♀b)をつついて追い払ったので驚きました。(@4:20)
オナガガモの♂から♀への攻撃を見たのは初めてかもしれません。
繁殖期のオナガガモ♂はとても一途で、配偶者以外の♀には興味が無いのでしょうか?
それとも発情していない♀には用が無いので追い払ったのかな?
そして♂aは左隣りのパートナー♀aに求愛誇示を続けます。

一旦逃げた♀bが戻って来て同じ場所に割り込むと、そのまま川に入りました。
最後はオナガガモの群れ全体が何か(通行人?)に驚き、岸から川へ一斉に飛ぶと、大騒ぎしながら逃げて行きました。
せっかく長時間、配偶者ガードを続けたのに、♂がこの混乱でパートナー♀とはぐれたのではないか?と心配になります。
同種の大群の中からどうやってパートナーを互いに個体識別しているのでしょうか?

オナガガモの♂は♀が浮気しないように一瞬も気が休まらず、見ていて気の毒になるほどでした。
この時期の♂はほとんど不眠不休、飲まず食わずで配偶者防衛に専念するのですかね?(男はつらいよ)
しかし上記の本を読むと、私の印象とは異なり、研究結果は意外なものでした。

つがいを形成した♀は、配偶者防衛行動により、♂に守ってもらえるため餌をとることに専念でき、繁殖のための栄養源を確保できるというのが従来の説です。(中略)
 つがい形成は♂にメリットはあるのでしょうか。オナガガモの場合、♂はつがいになったほうが採餌に専念できます。つがいになることは、♂にとって♀を獲得できるという最大のメリットのほかに餌をたくさん食べられるというメリットがあります。越冬期にたくさん餌を食べ、栄養を蓄えた♂は渡りや繁殖において栄養不足の♂よりも有利と考えられます。(同書p127〜128より引用)
本の記述はつがいが完全に形成されて落ち着いた後の話で、私が見ていたのはその前の段階だったような気もします。

つづく→オナガガモ(冬の野鳥)のラブコメ:♂aを追い払う♀に求愛する♂b




【追記】
松原始『鳥類学者の目のツケドコロ』によると、♀は♀で次々と迫ってくる♂の相手をいなしたりかわしたりする必要があり大変なようです。
(カモ類の)♂がやっているのは、「まずは自分が♀をナンパする」「ナンパに成功したら他の♂がつきまとわないよう、ひたすら♀をガードする」という行動なのです。 もし、このようなガードがなかったら、♀はつきまとってくる♂を追い払うのに多大な時間とエネルギーを費やすことになります。こういった無法な♂どもが寄ってくることのストレスや行動の不自由も馬鹿になりません。論文でも文字通りに「ハラスメント」と表現されることがあります。その結果、♀の栄養条件や健康状態が悪化する例もあることが知られています。 (電子書籍版より引用)

カモの繁殖には大きな特徴があります。せいぜい産卵のあたりまで♂は♀を厳重にガードするが、その後は何もしない、ということです。(同書より引用) 






2020/06/12

ウコギの枝先で縄張りを張るシオカラトンボ♂



2019年9月上旬・午後15:45

路地裏のウコギ(おそらくヒメウコギ)生垣から突き出した小枝の先端にシオカラトンボOrthetrum albistylum speciosum)の成熟♂が止まっていました。
側面からズームインしてみると、複眼の深い水色がきれいですね。
風が吹いて小枝が揺れていても、シオカラトンボ♂は頭部をグリグリと動かして辺りを油断なく見張っています。

急に枝先から飛び立ったのですが、すぐにまた同じ止まり木に戻って来ました。
飛び立つ瞬間をまずは1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。
その後に等倍速でリプレイ。
前と同じ向きで着地したトンボの口元を見ても、獲物を捕らえてはいませんでした。
縄張りをパトロールするために飛んだのか、獲物を狩ろうとして飛び立ったのでしょう。

実はすぐ近くに池があって、そこの岸で別個体の♂が縄張りを張っていました。

▼関連記事
池の枯草に離着陸を繰り返すシオカラトンボ成熟♂【HD動画&ハイスピード動画】

池の近くなら交尾相手の♀が飛来するのを待ち伏せする意味もあるのだろうと予想されます。
しかし、わざわざ池から離れた生垣で縄張りを張っている♂は、♂同士の喧嘩(縄張り争い)に負けた劣位の個体なのでしょうか?
池に飛来する♀をライバル♂よりもいち早く見つけて交尾に持ち込むことは可能なのかな?




雛のために道端の側溝で虫を捕るハクセキレイ♂(野鳥)



2019年6月中旬・午後18:06・晴れ

街中の道端を流れる側溝にハクセキレイ♂(Motacilla alba lugens)が出入りしていました。
通行人が側溝に落ちないように鉄格子のような蓋で覆われているのですが、外に出てきたハクセキレイ♂は嘴に大量の虫を咥えていました。
おそらく側溝内に発生する蚊柱を目当てに虫取りに来たのでしょう。
側溝の外に出てから振り向くと、通りを渡って市街地の方へ飛び去りました。
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、大量の獲物を嘴に咥えたままなので、巣で待つ雛に給餌するのでしょう。

同様のシーンは今季2回目の観察です。


▼関連記事
道端の側溝内で虫を捕るハクセキレイ♂(野鳥)



2020/06/11

クズの葉を切り抜いて巣に空輸するクズハキリバチ♀【HD動画&スーパースロー】



2019年8月上旬・午後14:38〜15:16・快晴・猛暑


▼前回の記事
葛の葉を切り取るクズハキリバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】

クズハキリバチ♀(Megachile pseudomonticola)が巣材を集める行動を今季になってようやく観察できたのが嬉しくて、5日後にもいそいそと撮影にやって来ました。
川岸に蔓延るクズ群落に巣材集めに通って来る複数個体を撮影。

240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:38〜)
蜂はクズの葉縁にまたがって下へ下へと大顎で噛み切っていきます。
丸く(卵型または楕円形)切り取られる葉片をふたつ折りに曲げながら腹面に脚で抱えます。
切り落とす直前に羽ばたきを始め、巣に向かって飛び去りました。
無駄のない流れるような匠の技を何度見ても惚れ惚れします。
クズハキリバチ♀の営巣地を突き止められなかったのが残念でした。
葉片を空輸すると空気抵抗がかなり大きくなるようで、帰巣速度はゆっくりです。
蜂を見失わないように走って追いかけたら巣まで辿り着けるかな?
翌年も次世代の♀が同じ場所で巣材を集めるのか、とても気になります。
(そもそも、どうして複数個体♀が同じ場所で巣材集めに来るのでしょう?)


【追記】
小松貴『絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)』によると、
 (クズハキリバチは)ハキリバチの例に漏れず、古木に空いた小穴や竹筒、地面の裂け目といった空隙に営巣する。そして、巣材として道端に茂っているクズの葉を利用する習性を持っている。本種のクズの葉に対する執着はかなり強く、他種の植物の葉は周囲にクズが生えていない場合に限り、やむを得ず利用する程度だという。また、営巣地点から約10メートル以内にある至近のクズ群落から、葉の切り出しを行う傾向が強い。(p175より引用)
私が観察した事例では、葉の切り出し地点と営巣地は明らかに10m以上離れていました。
飛ぶ速度は比較的遅く、しかも至近に営巣箇所があるはずなので、跡を追いかけると比較的簡単に巣まで誘導してもらえる。(同書p176より引用)

今回は撮影を優先しましたが、次に機会があれば、私も巣材を持ち去るクズハキリバチ♀を追いかけてみることにします。 



クズハキリバチ♀@クズ葉切り取り:巣材集め
巣材集め・全景

食べ残したクルミを貯食するハシボソガラス(冬の野鳥)



2020年1月上旬・午後12:30頃・小雪

小雪がちらつく午後に、ひと気のない広い駐車場でハシボソガラスCorvus corone)が割れたクルミの堅果をほじくって食べていました。
オニグルミの固い殻を空中から舗装された地面に何度も投げ落として割ったと思われますが(※)、お馴染みのクルミ割り行動は今回見逃してしまいました。

※ 駐車場に車は一台も停まっていませんでした。
したがって、停車中の車のタイヤの前にクルミを置いて発進時に割らせる作戦を行ったとは考えにくいです。

カラスのすぐ横には未だ割れていないクルミの実(黒っぽい)がもう一つ転がっています。
割れた殻の中身をほじくって栄養豊富な実を食べ終えると、ハシボソガラスはもう満足したようです。
私にじっと見られているので、警戒して食欲が失せたのかもしれません。

カラスは食べ残したクルミの殻を嘴で拾い上げると、トコトコ歩いて駐車場を横断しました。
ときどき小走りになりながら駐車場の端まで持って行くと、枯れた草むら(セイタカアワダチソウの群落?)の根際にクルミの実を埋めて隠しました。
カラスの貯食行動をこれほどしっかり観察できたのは初めてです!
近くで別個体が嗄れ声で鳴いていますが、食料を隠す現場を見られると仲間に盗まれてしまうので注意が必要です。

駐車場に戻ってきたカラスの嘴にはクルミの実は無くなっていました。
ひと仕事終えたカラスは「やれやれ」と言わんばかりに、路面に嘴を擦り付けて拭います。
ふわりと飛び上がると、横に建つ高い塀の天辺に止まりました。
食料が乏しい冬の間、カラスは貯食した場所をどれだけ記憶しているのでしょう?
もし忘れてしまったら、今回埋めたクルミの実は割っていませんから、リスや野ネズミのようにハシボソガラスもクルミの種子散布に貢献することになります。

今思えば、撮影直後にハシボソガラスが貯食したクルミを探しに行くべきでしたね。
もしかしたら他の餌や宝物がザクザクと出てきたかもしれません。
しかし盗掘現場をカラスに見られたら、人間不信になったり一生恨まれたりしそうです。(食べ物の恨みは恐ろしい)


▼関連記事(5、7年前の撮影)
ハシボソガラスのクルミ割り行動:Ⅳ投げ落としと貯蔵【野鳥】
貯食を中止したハシブトガラス(野鳥)



2020/06/10

訪花中のベニシジミにヒメウラナミジャノメが誤認求愛?



2019年6月中旬・午後15:40頃

川沿いの堤防に咲いたキリンソウの群落でヒメシジミ♂(Plebejus argus micrargus)とベニシジミLycaena phlaeas daimio)が仲良く並んで花蜜を吸っていました。

吸蜜中のヒメシジミ♂は青い翅表を全開にしていますが、ベニシジミは半開きだった翅を途中からしっかり閉じてしまいました。
右に居たヒメシジミ♂が先に飛び去った後で、ちょっとした面白い事件が起こりました。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。
その後に等倍速でリプレイします。

ヒメウラナミジャノメYpthima argus)が左から低空で飛来すると(@1:13)、一度は通り過ぎたのに戻って来ました。
そしてベニシジミの真上で激しく羽ばたいてホバリング(停飛)しました。
これは誤認求愛なのでしょうか?
所属する科も違うのに、たまたま翅を閉じていたベニシジミの翅裏の色合いや斑紋がヒメウラナミジャノメの目には同種の異性(他人の空似)に見えたのかもしれません。
急にちょっかいをかけられたベニシジミが飛んで逃げると、ヒメウラナミジャノメはすかさず追尾します。
しかしすぐに相手が別種だと気づいたようで、ヒメウラナミジャノメはどこかへ飛び去りました。
ベニシジミは一回り飛んだだけで、近くのキリンソウの花にすぐ舞い戻ってきました。
もし蜜源植物を巡る縄張り争いだとしたら、ヒメウラナミジャノメは戻って来たベニシジミを許さず執拗に追い払うはずです。

一瞬の出来事で、残念ながら私にはヒメウラナミジャノメおよびベニシジミの性別が見分けられません。
映像だけで性別が分かる達人がいらっしゃいましたら教えてください。
ヒメウラナミジャノメ♀♂の正常な求愛行動も未見です。


【追記】
かなり古い本ですが、『原色日本昆虫生態図鑑IIIチョウ編』(1972年)でヒメウラナミジャノメについて調べると、
樹林を好むジャノメチョウ科としては珍しく花によく集まり、(中略)♂は互いに追飛を行なうがなわばりはつくらない。交尾飛翔型は←♀+♂。(p243より引用)



ベニシジミ春型(左)+ヒメシジミ♂(右)@キリンソウ訪花吸蜜

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