2011/01/04

ホオナガスズメバチ創設女王による巣作り




2010年5月中旬

ホオナガスズメバチの一種の創設女王の観察記録。
この日も独りで外被作りに励む女王。
下から見上げるアングルでは外被上部を増築する様子は死角になってよく分かりません。
外で集めてきた巣材を口に咥えて戻ると、必ず一度巣内に入り育房を点検してから外被作りを再開します。
中で巣材を噛みほぐしているのかも。
頭楯の模様が同定ポイント(シロオビホオナガスズメバチまたはニッポンホオナガスズメバチ)なのですけど、映像をコマ送りにしても遠くて蜂が一瞬こちらを向いたときも顔のアップは確認できず残念。
ワーカーが羽化したら採集して調べてみようと思います。
つづく

ホオナガスズメバチ初期巣の定点観察




2010年5月中旬

巣盤をすっぽり覆う外被の建設が進んでいます。(二層目?)
この日は気温が低く、女王は余り外出しませんでした。
寒い日はなるべく抱卵に専念しているのだろうか。
女王が帰巣したり中で動いたりすると巣が激しく揺れます。
スズメバチの本によると、樹上に営巣することの多いホオナガスズメバチ類の巣は耐震構造に優れた工夫が凝らされているそうです。
巣盤を支える巣柄が単純な円柱状ではなく、紙製の吊り手が三角形の板状でしかも螺旋状に捻って作られるために、スプリングのように巣の振動をうまく吸収してくれるらしい。
コロニーが解散したら巣を採集して、この目で確かめてみたいものです。
つづく) 



≪参考≫
『スズメバチはなぜ刺すか』 p185(北海道大学図書刊行会)
『蜂は職人・デザイナー』 p40, 58(INAX出版)

ニワハンミョウ




2010年5月中旬

ハンミョウ類はじっくり撮影しようとしても人の気配に敏感でいつも足早に逃げてしまいます。
この個体はどういう風の吹き回しか、大人しくモデルになってくれました。
正面から見た上唇の特徴からニワハンミョウCicindela japana)と判明。
鋭い牙が精悍です。



 




スギカミキリ♀




2010年5月中旬

見慣れない甲虫が林道上を歩いていました。
帰ってから調べてみると、どうやらスギカミキリ♀(Semanotus japonicus)のようです。
杉林の大害虫らしい。
触角が体長よりも短いので♀なのかな?
手に乗せてみたらしばしの逡巡の後、不格好に飛び立ちました。

ホオナガスズメバチ女王が外被を増築




2010年5月上旬

ホオナガスズメバチの仲間(シロオビホオナガスズメバチまたはニッポンホオナガスズメバチ)の初期巣の定点観察。
前日には露出していた巣盤は既に外被で覆われ見えなくなりました。仕事の速さに驚かされます。
創設女王は外から灰色の巣材ペレットを集めてきてはせっせと二層目の外被を増築しています。
作業の様子は一部、3倍速の早回しにてお届けします。
帰巣直後は必ず巣内に入って点検してから作業を行うようです。
巣材を噛みほぐしているのかも。
巣材を付け足しながら外被の円周に沿って後退していきます。
外被作りが一段落すると巣内に戻ります。
もう中の様子は見えませんが、抱卵するようです。
巣の中で女王が動くと巣全体が振動します。
女王自身も補強の必要性を感じたのか、基礎の部分(角材との接着面)を補強し始めました。
 (つづく


ホオナガスズメバチ女王の抱卵




2010年5月上旬

ホオナガスズメバチの一種の女王は巣に居る間、ときどき見回りしたり姿勢を変えるものの、ほとんどの時間は抱卵姿勢(カーリング行動)で卵を温めて過ごしていました。
初期巣の卵を積極的に温めて発生を早めたり保温のための外被を作ったりする点がスズメバチのアシナガバチとは決定的に違うところです。


昆虫は一般に変温動物と思われがちですが、抱卵する女王蜂は胸部の飛翔筋を活発に収縮させて(羽そのものは動かさず)発熱しているそうです。
激しく呼吸する腹部の収縮が見えます。
つづく

≪参考≫
『熱血昆虫記:虫たちの生き残り戦略』 どうぶつ社
『スズメバチはなぜ刺すか』 北海道大学図書刊行会 p192
 


ホオナガスズメバチ創設女王の外被建設




2010年5月上旬

山地の軒下で白っぽいスズメバチの巣を発見。
未だ小さい初期巣の外被を作っている女王蜂は一見するとクロスズメバチに似ているが、地中営巣性のクロスズメバチが軒下に巣作りするはずはありません。
ホオナガスズメバチの一種(シロオビホオナガスズメバチまたはニッポンホオナガスズメバチ)だろう。
顔の正面にある頭楯の模様で区別するらしいのだが、採集しない限り顔写真のアップを撮るのは難しそう。
外被が未完成なので巣盤が剥き出しです(育房数8室)。
スズメバチ類(Vespa属)やクロスズメバチ類(Vespula属)が朽木の木質部や生きた樹皮から齧り撮ったチップを唾液と混ぜたパルプを巣材とするのとは異なり、ホオナガスズメバチの仲間(Dolichovespula属)の巣は植物の茎や葉の表面に生えている繊維や繊維質を含んだ材を原料としている点でアシナガバチの巣と同様、和紙そっくりです(wikipediaより引用)。
高所にあるので巣の大きさを直接測ることは無理ですが、土台(営巣基質)となる梁の角材の幅は35ミリ。
建設中の初期巣の隣に、スズメバチの大きな古巣を撤去した痕が残っています。
つづく
 


2011/01/03

ベッコウバエの交尾・求愛行動




2010年10月下旬

とある杉林でいつもチェックしているタヌキの溜糞ポイントがあります。
この日は珍しく新鮮な糞が残されていました。
ベッコウバエNeuroctena formosa)が御馳走の山に何匹も集まっています。
獣糞上で交尾中のペアがいます。
雌雄の体格はさほど違わないようです。
♂に乗られた♀の口吻を見ると糞を舐めておらず、珍しく情事に集中しているようです。
交尾器の結合状態は残念ながら薄暗くてよく見えませんでした。
♂はマウンティングしているだけの交尾後ガード行動かもしれません。
翅は閉じていても平均棍がぴくぴく動いています。

カップルのすぐ横で独り者のハエが糞上をあちこち徘徊しています。
一匹の♀に二匹の♂がしがみ付き、必死に♀の争奪戦をしています。
♂が小刻みに翅を震わせているのは求愛行動なのだろうか。
更にもう一匹の♂が飛びつくも、すぐに諦めて去りました。

撮影中に私が少し動くとハエは殆ど逃げてしまいました。
戻ってきた一匹のハエを遠くから望遠で撮り始めたら、急に別の♂が飛びついて来ました。
私は外見でベッコウバエの性別を見分けられないのですが、このペアは直ちに別れたので♂同士だったのかもしれません(うっかり誤認求愛?)。
あるいは♀が交尾拒否したのだろうか。
気温12℃。
 
≪追記≫
いわゆる並ベッコウバエにしては黄色っぽい気がするのですが、近縁の別種なのだろうか? 
(キイロベッコウバエという蝿がいるらしいので気になりますが情報不足。)
同定してもらうため採集すればよかったかも。 



トゲアシオオクモバチ♀によるクモ運搬




(つづき)
蜂は獲物のヤマヤチグモ?♀(Tegecoelotes corasides)を後ろ向きに引きずって道端の落ち葉の上を構わず運んで行きます。
運搬時にはクモの歩脚の根元を咥えています。
落ち葉の下にクモを置くと休憩しました。
獲物を残して辺りを偵察して回ります。
そのうちどこかに巣穴を掘って貯食し産卵するのかなと期待して見守りました。
しかし、いくら待っても進展がありません。
それともいつの間にか落ち葉の下で適当な既存坑を探してクモを隠し、素早く産卵を済ませたのだろうか。
さすがに穴掘り行動を見落としたはずはありません。
夕方で薄暗くなってきたので痺れを切らして観察を打ち切り、同定のため蜂を採集して帰りました。
放置されたクモは目を離した隙に落ち葉に紛れてしまい、残念ながらどうしても見つけられませんでした。
今回もクモバチの営巣行動を最後まで追跡できませんでしたが、昨年より少し前進しました♪
蜂類情報交換BBSで写真鑑定してもらうとトゲアシオオクモバチ♀(Priocnemis irritabilis)と教えて頂きました。





落とし物を探すトゲアシオオクモバチ♀




2010年5月中旬

山道を下っていたら目の前を黒い蜂が歩いて横切りました。
何か獲物を運んでいます。
近付いた私に驚いた蜂は獲物を地面に残したまま飛び去ってしまいました。
(映像はここから。)


蜂が戻って来るまでの間に獲物(体長10㎜)をじっくり検分。
腹面に外雌器が認められるので♀成体です。
闇クモ画像掲示板で写真鑑定してもらうと、ヤマヤチグモTegecoelotes corasides)の可能性が高いだろうと教えて頂きました。

蜂に狩られた際に刺された毒針によって完全に麻痺しています。
歩脚は切り落とされていません。
歩脚で隠れてよく見えない頭胸部や眼列の様子をしっかり記録する前に蜂が戻ってきてしまいました。

一方、蜂の方は蜂類情報交換BBSにてトゲアシオオクモバチ♀(Priocnemis irritabilis)と教えてもらいました。
蜂は歩いたり低空飛行したり辺りを必死に探し回りますが、なかなか落し物を見つけられません。
クモのすぐ近くまで来ては何度も素通りしてしまったりと見ていてもどかしいほどでした。
クモのことなどすっかり忘れてしまったのかと心配でした。
動きの無い物を視覚で認識するのは苦手なのだろうか。
クモの傍らに立つ私を警戒していたのかもしれません。
それともクモがあるのは分かっていながら、巣へ運ぶ行き先を偵察していたのかな?
ようやく獲物を再発見(3:45)。
その場でしばらく休息すると、運搬開始(5:05)。
クモの糸疣ではなく歩脚を大顎で咥え、後ろ向きに引きずりながら歩いて運びます。
林道横の落ち葉が積もった場所まで来ました。
つづく

≪追記≫
クモ狩りの行動を再現させる方法の一つとして運搬中の蜂を驚かせて獲物を離させ、戻ってきた蜂の目の前で麻痺した獲物をピンセットなどで動かしてやると蜂は再び毒針で刺すらしいです。
しかし下手に動くと蜂はすぐ逃げてしまうので、今回は我慢して手出しせずに見守りました。

シロトラカミキリ




2010年5月下旬

木の葉の上に小さなカミキリムシを発見。
身繕いした後、隣の葉に飛び立ちました。
帰って調べてみると、どうやらシロトラカミキリParaclytus excultus)らしい。

ヒメオドリコソウを訪花するクロマルハナバチ女王



2010年5月下旬

ヒメオドリコソウの群落で蜜を吸っているクロマルハナバチBombus ignitus)がいました。
時期的に未だ女王蜂でしょうか。
頭部がオレンジ色に染まっているのが気になります。
ダニに寄生されているのかと初めは思いました。
ところが後日ヒメオドリコソウの唇形花を調べてみると、雄しべの先にある花粉は赤橙色でした。
指先で花を幾つも触ると確かに花粉で赤く染まりました。
謎が解けて一件落着。



 


スジアカハシリグモ♂亜成体の食事



2010年5月下旬

綺麗なシャガの花で食事中のスジアカハシリグモDolomedes saganus)がいました。
毒牙にかかった獲物(スジグロシロチョウまたはエゾスジグロシロチョウ)には気の毒ですけど、絵になるなー。
腹面から覗き込むと外雌器は認められず触肢の先が少し膨らんでいるので♂亜成体と判明。
食欲が満たされたせいか随分おっとりしたクモで、採寸代わりに差し伸べた人差し指で軽く触れても余り逃げません。
さすがにしつこくすると獲物を離してしまいました。
しかし落ちた獲物を写真に記録した後でシャガの花の上に戻してやると、鷹揚に食事を再開しました(映像なし)。
徘徊性クモは死骸には口をつけないとばかり思っていたので少しびっくり。
 


斜面を掘るヒミズ




2010年5月中旬
林道脇の斜面で何やらガサガサ音がするので見ていると、落ち葉が動いている。
黒い毛皮の小動物が斜面に穴を掘っているようでした。
アズマモグラあるいはヒミズかな?と思うものの、定かではありません。
野ネズミの仲間だったりして...。
どなたかもしお分かりの方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい。 
コメント欄でヒミズUrotrichus talpoides)だろうとご教示頂きました。

道端で転がっている死骸はよく見かけますけど、生きている個体の活動を目にしたのは初めてかもしれません。


【追記】
『モグラ博士のモグラの話』p23より
ヒミズは全長は14cmくらいですが、その1/3程度は尻尾という、とても小さな動物です。手もモグラのように大きくはなく、土を掘るのもそれほど得意ではありません。ヒミズはモグラのように完全な地下生活者ではなく、堆積した落ち葉の層の下に溝を掘ってそこを通り道にしている、「半地下生活者」なのです。


結婚飛行後のムネアカオオアリ女王



2010年5月下旬

この日は路上で大きな羽アリが何匹もうろついていました。
ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)女王のようです。
結婚飛行を済ませて巣を作る場所を探していたのでしょう。
もう飛ぶ力はあまり残っていないようです。



映像の前後半で別個体です(計二匹)。
採集して持ち帰りました。
巣作りの前に女王自ら不要になった羽を落とすらしいのですけど、帰宅後も羽は残っていました。
いつか飼育にも挑戦してみたいものです。

【追記】
ムネアカオオアリの女王アリが日本では最大のアリとされている。(『いつか僕もアリの巣に』p44より)
 


山椒に訪花するヒメハナバチの仲間♀




2010年5月下旬

道端で地味に咲くサンショウ(山椒)の花にミツバチよりも小さな蜂が何匹も通ってきました。
後脚に黄色い花粉団子を大量に付けています。
胸部の背中にも花粉が付着しています(薄い黄色)。
蜂類情報交換BBSにて問い合わせたところ、ヒメハナバチの仲間♀と教えて頂きました。
この山椒の花は雌花なので、蜂が運んでいる花粉は別の植物から集めたものだそうです。
 


撮影後に一匹だけ採集した蜂を写真鑑定してもらうと、ヤマトツヤハナバチ♀(Ceratina japonica)とご教示頂きました。
動画に映っている蜂とは別種だそうです。
私の目にはどれも似ているように思えたのですが、一匹だけの採集ではサンプリングにはなりませんね。

猿の惑星




2010年5月上旬

ニホンザルMacaca fuscata)の軍団が車道を占領して寛いでいました。
道端のクルミの木に登っている一頭は見張り役を努めているのでしょうか。
車が通りかかると群れは逃げ、見張り役も後を追いました。



 


2011/01/02

キツネノチャブクロ(ホコリタケ)の胞子放出




2010年10月下旬

林縁でホコリタケ(別名キツネノチャブクロ;Lycoperdon perlatum)と思われる群落が地面から生えていました。
天辺の穴から褐色の胞子が放出するシーンを観察するために、7個の茸を順に指で摘んだり棒で突ついてみました。

後で思うと、もう少し自然な演出をすれば良かったですね。
木の実を上から落としたり、雨粒を模して水をキノコに垂らしたりして、スーパースローの映像にすれば格好良い作品になりそうです。
 


コガタスズメバチの壊れた巣の再建策




2010年8月下旬・気温26℃

コガタスズメバチVespa analis insularis)の門衛が辺りを見張りつつ中から巣口周りの外被を噛んで拡張していました。
かじり取った巣材を丸めると巣内に搬入したので、育房の材料として再利用するのだろう。
外被上を徘徊していた小さなアリに門衛が大顎で攻撃を加えました。
しかしアリが小さすぎて有効な攻撃になっていません。
横の林道を車が通ると振動で門衛が警戒している気がします。
巣を壊されたトラウマが残っているのだろうか。
やがて一匹のワーカーが帰巣しました。
集めてきた巣材ペレットを門衛に渡し、またすぐ出巣しました。
巣材をもらった♀(創設女王?)は外被上を少し点検して回り、結局巣内に戻りました。
この非常時には外被の再建よりも育房の増築を優先するのだろうか※。
映像を見る限り計4匹以上の♀成虫が残っているようです。
巣の破壊前後で個体数の増減は不明です。


※ 同じ日に外被の増築も見てますので(シリーズ#27参照)、外被の修復が一段落付いたということなのかもしれません。
 

その後は忙しくなり滅多に通えなくなりました。
巣は小さいままで蜂の姿もいつの間にか見なくなりました。
10月下旬、 解散後の巣を調べてみることにしました。
壊れかけた外被はあまりにも脆くて全体を採集できませんでした。
中の巣盤は一層だけでした。


 育房数は28.5室しかなく、未受精卵 孵化しなかった卵が1個だけ残されていました。(スズメバチの未受精卵は♂になる。)


コガタスズメバチ巣の再建(3倍速映像)




2010年8月下旬

コガタスズメバチVespa analis insularis)の壊れた巣は初期巣の時より小さいサイズになってしまいました。
逃去せず居残った成虫が健気に外被を再建する様子を3倍速の早回し映像でお届けします。
ワーカーが出巣する際、口に何かゴミを咥えて捨てに行くことがあるようです。
誰かに悪戯もしくは駆除された可能性をどうしても拭い去れないのですが、なによりも気になるのは創設女王の安否です。
個体識別のマーキングを施さなかったことが悔やまれます。
女王が亡失するとワーカーが未受精卵を産卵するようになり、今後♂ばかりが羽化するはずです。
しかし門衛を務める♀が大型なので、これが創設女王のような気がします(希望的観測)。 
次に気になるのは手狭になった巣内の様子です。
女王が無事だと仮定して、この非常事態に創設女王はワーカーを増員しようとするだろうか。
それとも8月下旬という時期を考え、残り少ないシーズン中に少数でも次世代の新女王や♂を残そうと繁殖戦略を切り替えるだろうか。
当初の家族計画が狂ってしまった女王の対応に注目です。
外被の球対称性が失われ歪な形状になっても、今外被のどこに新しい巣材が必要とされているか各自がきちんと判断できるようです(造巣行動の融通性)。
できれば巣の破壊直後から再建する様子を観察したかったです。
スズメバチの巣盤は外被を中から削り取った巣材を再利用して作られるのが原則です。
外被の修復と同時に育房の増築も迫られるこの非常時には、初期巣の段階(創設女王の単独営巣期)のように外で集めてきた巣材を直接使って育房を作るのだろうか。
知りたいことは幾つもあるのに、中が見えないのが残念。
つづく
 


半壊したコガタスズメバチの巣




2010年8月下旬

春から定点観察しているコガタスズメバチVespa analis insuralisの巣を16日ぶりに見に行ったら、破壊されていて大ショック。
軒下に外被の欠片が散乱していて、巣口を含む外被の下半分が転がっていました。
拾って裏返してみると断熱性に優れる多重構造がよく分かります。
幸い全壊は免れたようで、残った蜂が活動していました。
全体に初期巣状態より小さく形も歪になってしまいました。
肝心の巣盤や育房は果たして無事だろうか。
オオスズメバチやヒト、クマタカなどの天敵に襲撃されたのだろうか。
台風が上陸した日に、巣の隣に吊り下げられた栓抜きが嵐で激しく揺れて巣に何度もぶつかり破壊したのかもしれません。
こんなことなら、お盆の期間も頑張って通えばよかった...。
つづく

コガタスズメバチ発達期の巣作り(10倍速映像)





2010年7月中旬・気温29℃

軒下に営巣したコガタスズメバチVespa analis insuralis)発達期のコロニーを10日ぶりに定点観察。
ワーカーが外被を増築する様子を10倍速の早回しでお届けします。
巣口で目を光らせている門衛は他よりも巨漢なので、やはり創設女王が率先して門衛を勤めているのだろうか。

つづく
 


コガタスズメバチの門衛



2010年7月上旬

コガタスズメバチVespa analis insuralis)の巣の定点観察。
巣口から常に門衛が顔を出して辺りを見張っています。
厳重に門番して蟻の這い出る隙も無いかと思いきや、そうでもないようです。
極小のアリが巣内から這い出ましたが、門衛は僅かに反応を示しただけで攻撃を加えることはありませんでした。
他のワーカーが帰巣すると、門衛とキスしています。
成虫間の栄養交換、あるいは挨拶でしょうか。
狩りで仕留めた獲物を咥えたワーカーが帰巣すると、巣口で門衛に肉団子を口移しで分配しました。
咀嚼および幼虫への給餌を分担するようです。
出巣の際にも門衛とキスを交わしています(お出かけのキス)。
つづく
 


ヒガシニホントカゲ成体




2010年9月中旬

資材置場で見つけたヒガシニホントカゲPlestiodon finitimus)の成体。
落ち葉がガサガサすると思ったら、あまり人を恐れずうろちょろしていました。
丸々と太っていて巨大です。
舌をチョロリと出して物陰に消えました。
同じ日に近くで尻尾の切れた若い個体が走り去るのを目撃しています(映像なし)。 

手元の古い図鑑によると
本種の「成体では背面は一様に褐色の金属光沢。尾の青は消えて体色と同じになる」らしい。
(『日本の両生類・爬虫類』 小学館・自然観察シリーズ p87より)

コガタスズメバチ働き蜂による造巣





2010年7月上旬

3日ぶりの定点観察。
既にワーカーが羽化しており、コガタスズメバチVespa analis insuralis)の初期巣に特有の外被の長い首は切り落とされていました。
首部分の解体現場をどうしても見届けたかったのですが、今年も見逃してしまい残念無念…。
梅雨の雨にも負けず風にも負けず通い詰めるべきでした。
外被の増築が進み、複数のワーカーが作業した部分は女王担当部(白色)とは違い、黒色や焦げ茶色の巣材を用いているので美しいマーブル模様ができつつあります。
巣口で見張っている門衛は巨体なのでおそらく創設女王だろう。
前の失敗に懲りて(シリーズ#12参照)個体識別のマーキングを施していませんが、外被作りを終えたワーカーが巣内に戻るときに門衛と体格を比較できます(女王>ワーカー)。
春から単独で営巣してきた女王はこれで危険な外役から解放され、今後は産卵に専念できます。
ワーカーが外被増築の個所を途中で変更し、巣口近くの外被に巣材を追加しています。
新たに帰巣したワーカーが入れ替わり、同じ部分の外被増築を引き継ぎました。

つづく
 


コガタスズメバチの初期巣に侵入したシダクロスズメバチ女王




2010年7月上旬

コガタスズメバチVespa analis insuralis)創設女王の留守中に、またもやクロスズメバチの一種が飛来して軒下を探索飛行し始めました。
コガタ初期巣の外被に取り付き徘徊した後、遂に巣口から侵入しました。
しかし中の幼虫などを狩ることなく、10秒後に出てきて飛び立つと巣の位置を覚えるための定位飛行を示しました。
相変わらず訪問の目的が不明です。
捕虫網の一振りで捕獲成功。
炭酸ガスによる全身麻酔下で調べてみると、体長18mmのシダクロスズメバチVespula shidai)女王と判明。


前回(エピソード#18)と同種でした。
ついでに個体識別するため標識してみます。
この辺りでシダクロの生息密度が高いのか、それとも同一個体が通って来ているのか確かめたいと思ったのです。


後で思うと、ペインティングよりも目印の綿などを体に付けてやり、「すがれ追い」の手法でシダクロスズメバチの営巣地を突き止めればよかったですね。
生憎、この直後に雨が降ってきてしまいました。
捕獲して約2分後にコガタ創設女王が帰巣。
シダクロと蜂合わせしたときの反応を見てみたかったです。
つづく) 

≪追記≫
コガタスズメバチのワーカーが羽化して巣の防衛力が上がってからはシダクロスズメバチの姿を近くで見ることはなくなりました。

コガタスズメバチ女王陛下の憂鬱





2010年6月下旬

この日は続けざまに招かれざる来客(シダクロスズメバチやチャイロスズメバチ)があったので、コガタスズメバチVespa analis insuralis)の創設女王は少し不安になっているようです。
巣材を咥えて巣口から出てきたのに、外被を点検して回っただけで増築作業を行わず巣内に戻りました。
この巣材はどうするのかと思っていたら、後に落ち着いてから外被を作りました。
また、外出の際に珍しく定位飛行を示しました(ホバリングして巣の位置を記憶する)。
ワーカーが羽化してくるまでの単独営巣期は女王蜂が全て独りで切り盛りしなければいけないので大変です。
巣の防衛に専念したくても、どうしても外役のため巣を留守にしないといけないのです。

つづく


チャイロスズメバチvsコガタスズメバチ女王





2010年6月下旬

本シリーズのエピソード#16で報じたように、軒下に営巣したコガタスズメバチVespa analis insuralis)の初期巣にときどきチャイロスズメバチVespa dybowskii)がやって来ます。
この日も一匹のチャイロスズメバチが巣の外被に止まり、乗っ取り先を品定めしています。
前回とは違い、コガタの創設女王が在巣でした。
巣内から創設女王が現れ、チャイロスズメバチ女王を撃退しました。
コガタ女王は戻ると少し外被を点検してから巣内に入りました。
しばらくするとまた巣口に現れ、なんと外被の首の先端を少し齧り始めました。
初期巣を独りで防衛するためには首が長いほうが良いのでは?と心配になりました。
怒り・興奮の刷毛口としての転移行動※だったのかも(虫の居所が悪かった?)。
あるいはチャイロの匂いが付着した部分を嫌って取り除く行動だろうか。 
※ 動物行動学において機能不明な非適応的行動の発現は「葛藤行動」として説明されることもあるそうです。『ダンゴムシに心はあるのか:新しい心の科学』p178より
首の先を落とした削り滓は地面に散乱しています。

チャイロスズメバチの女王はキイロスズメバチやモンスズメバチの巣を狙って乗っ取り、元の女王を殺すと寄主のワーカーに自分の子供を育てさせることが知られています。
コガタスズメバチが社会寄生の対象にならない理由の一つは、本種の初期巣に特有の外被の長い首でチャイロスズメバチの侵入を防いでいるのかもしれません。
ただし、チャイロ女王は寄主のワーカーが羽化するのを待ってから巣を乗っ取るらしいので、今回の小競り合いも本気ではなくただの偵察だったのかもしれません。
つづく


≪追記≫
この巣ではその後、コガタスズメバチのワーカーが羽化して巣の防衛力が上がるとともに、チャイロスズメバチの姿を近くで見かけなくなりました。



「チャイロスズメバチは何故宿主から攻撃されないのか?」という問題に対して最新の研究の興味深い解説がこちら()にあります。



≪追記2≫
『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』 岩田久二雄・眞野書店 p318 において、
チャイロスズメバチが寄主としてモンとキイロの2種のスズメバチを選択する理由を考察していました。

1)同属(Vespa)種間の順位性
樹液の出る場所での、席次争いで強いものから弱いものへの順列は、オオ>チャイロ>コガタ>モン>ヒメ(スズメバチ)。
コガタは攻撃性が強いので、侵入者には不都合である。

2)創設雌の営巣開始時期
早いものから順に並べると
キイロ→モン→チャイロ→コガタ→オオ→ヒメ
となり、明白に選択根拠を示しているであろう。




コガタスズメバチの初期巣とシダクロスズメバチによる謎の訪問





2010年6月下旬

コガタスズメバチVespa analis insuralis)創設女王がしばらく巣口にぶら下がってから外出しました。
入れ替わるようにクロスズメバチの仲間が一匹飛来し、軒下を探索し始めました。
初期巣の外被にもときどき止まって徘徊しています。
虫の知らせで異変を感じたのか、コガタスズメバチ女王が巣材を咥えて帰巣しました。
以前も同様の事件があり侵入者の正体が気になっていたので(エピソード#15参照)、同定のため採集することにしました。
捕虫網を振り捕まえた蜂を容器に移していたら、なんと別個体のクロスズメバチが飛来しました。
千客万来です。
どうしてコガタスズメバチの初期巣にこれほど集まるのか不思議でなりません。

コガタスズメバチ創設女王が口に巣材を咥えたまま出巣しました。
ホバリングで定位飛行し、外被に止まりました。
外被を徘徊して点検するも、増築せず巣内に戻りました。
またすぐ出てきて外被を点検し、巣内に戻りました。
招かれざる訪問客が相次ぐので警戒しているのだろうか。
ようやく外被増築を開始。
梁との結合部を補強しています。気温25℃。


採集した蜂を持ち帰り標本を調べると、シダクロスズメバチ♀(Vespula shidai)と判明しました。
腹部体節が縮こまってしまいましたが、体長17mmは明らかにワーカーではなく女王蜂のサイズです。
期待していたような社会寄生種のスズメバチではありませんでした。
それにしても、単独営巣期のシダクロスズメバチ女王がコガタスズメバチの初期巣に一体何の用があって強い興味を示すのだろうか。
謎は深まるばかりです。
主が留守の間に巣内に進入して大胆にも幼虫や蛹を狩ろうとしているのだろうか。
ちなみに体格差は歴然としています(コガタ>シダクロ)。
もし侵入中に見つかって喧嘩になると、シダクロに勝ち目はないでしょう。
つづく
 


2011/01/01

蜘蛛(ワシグモ科)の遊糸飛行




2010年10月下旬

飛行機雲…ではなく飛行蜘蛛の映像です。
道端で黒い小さな徘徊性クモがススキの茎(直径4mm)に止まっていました。
触肢が膨らんでいるので♂だろう。
茎を少し前進し、腹端を持ち上げてそよ風に糸を吹き流しています。
糸疣から複数の糸が風に乗って伸びているのが分かります。
風でススキが揺れて接写しにくいので、後半は左手で茎を摘まみながら撮りました。
逆バンジーのように飛んで行く瞬間がばっちり撮れてラッキー♪
風が弱かったようでそれほど飛距離は稼げなかったものの、クモを見失ってしまいました。
バルーニング行動の撮影と採集は両立できないのが悩みです。
秋晴れですが前日に降り続いた雨のせいで肌寒い午前中。
いつもお世話になっている闇クモ画像掲示板に投稿したところ、ワシグモ科の一種だろうとご教示頂きました。

『クモの科学最前線:進化から環境まで』p91によると、
糸疣を高く突き上げる“tip-toeing(つま先立ち)”と呼ばれる行動は、バルーニングの際にさまざまなクモで見られる特有の行動である。飛んでいく方向は風任せであるが、バルーニングに関わる一連の行動は特定の気象条件が揃った場合に限られ、能動的な行動であると考えられる。




↑【おまけの動画】
最新の研究によると、クモのバルーニングは空気の静電気も関与しているらしい。

ムネアカオオアリvsコガタスズメバチ女王




2010年6月下旬

コガタスズメバチVespa analis insuralis)初期巣の定点観察記録

次の招かれざる客は蟻です。
ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)と思われる働き蟻が餌を求めて巣の外被上を徘徊しています。
遂に巣口から中に侵入しました。
スズメバチはアシナガバチのように天敵である蟻の忌避物質を巣の表面に塗布していないみたいです。
コガタスズメバチの初期巣に特有の長い首にいわゆる「アリ返し」の効果があるんじゃないかと個人的に思っていたのですけど、それも無さそうです。(時間稼ぎにはなるでしょうけど。)
しばらくすると中から這い出てきたアリが巣口の辺りでウロウロしています。
コガタスズメバチ女王が帰巣すると慌ててアリは退散しました。
単独営巣期に初期巣外被の長い首を人為的に壊すと女王は修復するだろうか?
中の幼虫・蛹がアリや寄生虫などの天敵に襲われ易くなるのだろうか?
 (つづく


【追記】
森林生物データベースによるとコガタスズメバチの「初期巣の円筒部分は北日本より南日本のほうが長くなる」らしい。
南方で特に跋扈するアリ対策として初期巣の首が長く発達したことを示唆しているように思います。

コガタスズメバチの初期巣を物色するチャイロスズメバチ女王




2010年6月下旬

いつものようにコガタスズメバチVespa analis insuralis)初期巣の定点観察を始めたら、いきなり大事件が勃発しました。
創設女王が外出中にチャイロスズメバチVespa dybowskii)の女王が飛来したのです。
本種はキイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取り、社会寄生することが知られています。
乗っ取る巣を品定めしているのだろう。
興奮したように羽ばたきながら外被を触角で調べて回ります。
巣内の幼虫の発達状況を外から匂いや物音で探っているのだろうか。
巣の外被を丹念に調べるも、巣内には侵入しませんでした。
入り口を探し当てられないでいるようです。
コガタスズメバチの単独営巣期の巣に特有の長い首の外被が奏効したのかもしれません。
諦めて飛び去ったり戻ったりを何度か繰返しました。


チャイロスズメバチが居なくなってから4分後、巣の主が帰巣しました。
おそるべき天敵と 鉢合わせしたときの防衛行動を見たかったです。
面白い展開になってきました。
これは目が離せません。
果たしてチャイロスズメバチはコガタスズメバチの巣も乗っ取るのだろうか。
つづく

≪参考図書≫
『日本の真社会性ハチ:全種・全亜種生態図鑑』 信濃毎日新聞社 p115
 


コガタスズメバチの初期巣を訪問する謎のクロスズメバチ




2010年6月下旬

祠の軒下に営巣したコガタスズメバチVespa analis insuralis)の初期巣を監視していると、クロスズメバチの仲間(種名不詳)が一匹、飛来しました。
この軒下で獲物を探索しているとは思えませんが、巣材集めなのだろうか。
訪問の目的や意図がよく分かりません。
外被上を徘徊するものの、巣口からの侵入は見られませんでした。
もしかしたら、ニッポンホオナガスズメバチの巣に社会寄生する種(ヤドリホオナガスズメバチ)の女王が乗っ取り先を物色中なのだろうか、と想像を逞しくしてみたり。
しかし採集してみないと見分けが付きません。
このとき巣内に居るはずのコガタスズメバチ女王は気づいていないのか出て来ません。
同様のシーンをこの日はもう一度見ています(2回目は撮り損ねました)。

つづく
 


初期巣の外被を増築するコガタスズメバチ創設女王




2010年6月下旬

初期巣から少し離れた位置でカメラを三脚に固定し望遠でコガタスズメバチVespa analis insuralis)女王の活動を監視し始めました。
初めは撮り損ねもありましたが、慣れると大体全ての出入りを記録できるようになりました。
白っぽい巣材を咥えた女王が巣口から出てきました。
外被を登り、梁との結合部(基礎部分)に巣材を塗り始めたようですが、死角になって殆ど見えません。
作業を終えた女王は巣内に戻りました。
後に女王が留守の間に、外被の増築部を確認できました。


この女王は前に観察した別のコガタスズメバチ初期巣よりも白っぽい巣材を選んで集めて来ているようです。
残りの映像は、外役に出かけたり帰巣したり忙しく出入りする女王の記録です。
つづく


飛んで脅すコガタスズメバチ創設女王



2010年6月下旬・気温22℃

山林にある小さな祠の軒下にコガタスズメバチVespa analis insuralis)の初期巣を発見。
外被に長い首があるので、創設女王が単独で作った初期巣だろう。
軒下にぶら下がっている栓抜きがスケール代わりに丁度良い(長さ13cm)。
お神酒を供えるのに使うのだろう。
徳利状の初期巣の横に栓抜きが用意してあるとは粋ですね。
巣の高さは地上150cm(巣口まで)。
初期巣が固定されている木材(梁)の横幅は4cm。
しばらく監視していると女王が帰巣。
古巣ではなかったのです。 
スーパーマクロモードで巣口を下から覗き込むように接写していたら、巣から出ようとした女王が至近距離のカメラに気づきました。
見慣れない物体に驚いて飛び立つとホバリングしながらご立腹の様子。
ワーカーのように一直線には攻撃してこないのが救いです。
肝を冷やしましたが、ゆっくり後退して難を逃れました。
カメラのボディがスズメバチの嫌う黒なので、女王をいっそう警戒させてしまったようです。
別個体の創設女王もカメラが巣の近くにあると同様に軽く威嚇してきたので、間違いありません。
カメラを白い袋で覆うとよいかもしれません。
私は接写を諦めて、少し離れた位置に三脚を据え望遠で定点観察することにしました。

つづく
 


野菊で吸蜜するヒメアカタテハ




2010年10月下旬

道端に咲く野菊の群落でキタテハやヒメアカタテハが訪花していました。
ヒメアカタテハVanessa cardui)は少なくとも二頭いました。


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