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2022/12/17

山中の池に最後まで残ったオタマジャクシ(アズマヒキガエル幼生?)

前回の記事:▶ 前脚も生えてきたオタマジャクシの大群(アズマヒキガエル幼生?)

2022年8月上旬・午後14:30頃・晴れ 

定点観察の間隔がまた開いてしまいました。 
15日ぶりに山中の泉に行ってみると、黒いオタマジャクシの数が激減していました。 
ほとんどのオタマジャクシは変態を済ませてカエルとなり、池から上陸して山林に去ったのでしょう。 
しかし岸辺を探しても、子ガエルは見当たりませんでした。 

必死で探すと、左岸の水中に少数のオタマジャクシを発見。 
池に残っているオタマジャクシは、発生が遅れた個体だけのようです。 
お魚観察ケースでなんとか2匹を一時捕獲しました。 
アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生だと思うのですが、後脚と前脚が伸びつつある小型の個体でした。 
未だ長いままの尻尾を左右に振って泳ぎます。
しばらく観察すると、前脚も少し動かしました。 

サンダル履きで池に入水すると、かなり冷たい水温でした。 
レーザー式温度計で水温を測定すると、池の中央部が10.1℃、左岸が13℃でした。 
真夏の昼間でも水温がこれだけ低いと、夜霧の発生が頻発するのも納得です。 
左岸は木陰なのに水温が高いのがいつも不思議でした。 
オタマジャクシ大群の呼吸熱で水温が少し上昇していたのかと疑っていたのですが、オタマジャクシが(ほとんど)居なくなっても温度差が保たれているので、その仮説は却下。 
単純に、冷たい湧き水(地下水)が常に流れる部分の水温は低く、淀んでいる左岸の水温は少し高いのでしょう。 
したがって、オタマジャクシが左岸に集まっていたのは、捕食者から逃れるために日陰に隠れていたというだけでなく、水温が少しでも高いエリアを好んでいたようです。 

後日の定点観察では、池にオタマジャクシは1匹も居なくなっていました。
オタマジャクシが変態する過程をじっくり観察するには、頑張って池に毎日通うか、採集して家で飼育するしかなさそうです。
今季は、オタマジャクシの尻尾が短くなっていく様子や子ガエルが上陸する様子は見れませんでした。

2022/11/09

前脚も生えてきたオタマジャクシの大群(アズマヒキガエル幼生?)

 

2022年7月下旬・午後15:20頃・くもり
前回の記事:▶ オタマジャクシの群れが池の中で日陰に偏って分布する謎

5日ぶりに山中の水場を訪れると、オタマジャクシを捕食していたアカショウビンの鳴き声はもう周囲の森から聞こえませんでした。 
夏鳥ですから、もう繁殖を終えて南国に渡去したのかもしれません。 
聞こえるのはヒグラシ♂♪の蝉しぐれだけです。 

池の岸辺で蠢く夥しい数の黒いオタマジャクシは健在でした。 
相変わらず日陰の左岸に多いのが不思議です。 
透明ケースで大群の一部を掬って観察しようとすると、気温に対して水温が低いために、プラスチックの表面を拭いても拭いてもすぐに結露してしまいます。 
今回も温度計を持参し忘れて、水温を測定できませんでした。 
観察容器(13.5×3.5×7.0cm)の真上から見下ろすように撮影すれば、オタマジャクシを明瞭に撮れます。 
容器内でも互いに群れる性質があるようです。 

オタマジャクシの変態が進み、一部の個体には後脚だけでなく前脚も生えていました。 
しかし四肢はまだ動かせないようで、長い尻尾を左右にくねらせて泳いでいます。 
これから尻尾が短くなれば変態の完了で、子ガエルとなって上陸するはずです。 
サンプリング調査の後で、オタマジャクシを元の泉に放流しました。 

アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生だと予想しているのですが、どうでしょうか? 

2022/10/21

オタマジャクシの群れが池の中で日陰に偏って分布する謎

 

前回の記事:▶ 後脚が生えてきたオタマジャクシの大群

2022年7月中旬・午後13:10頃・晴れ 

前回の2日後にも頑張って山中の水場にやって来ました。 
冷たい湧き水(地下水)が溜まっている泉です。
日陰になっている左岸の浅瀬では、相変わらず膨大な数の黒いオタマジャクシがひしめき合い、蠢いています。 
あまりにも密集していて、脚の発達具合(変態)を確かめられません。 
オタマジャクシを観察容器ですくって見れば良いのですけど、今回は横着してサンプリング調査をやりませんでした。 
こんなに密集していては酸欠状態になるのではないかと心配になります。
水面にはアメンボの幼虫(種名不詳)が浮いています。 

一方、日当たりの良い右岸では水中を遊泳するオタマジャクシの密度が低く、数が疎らです。 
素人考えでは水温が高い方が生育が早まって有利ではないかと思うのですが、酸素濃度が低かったりするのでしょうか?
池の中で右岸よりも左岸の方がオタマジャクシの餌が圧倒的に豊富とは思えません。 
日向の右岸では昼行性の捕食者に狙われやすいので、明るい日中は日陰者としてひっそり暮らしているのかもしれません。 
つまり、水温の高い日向は発生が早い利点があるものの、捕食者に狙われやすい欠点がありそうです。
関連記事 ▶ 山中の池に飛び込んで獲物を捕食するアカショウビン【野鳥:トレイルカメラ】

オタマジャクシの密度が低い右岸では、個々のオタマジャクシをじっくり観察できます。 
頭でっかちですけど、後脚の肢芽が生えかけているようです。 
同じ池の中でもオタマジャクシの発育の程度が不揃いなのは、複数回に分けて産卵した結果と思われます。 
アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生ではないかと予想しているのですけど、別種の幼生が混じっている可能性もありそうです。 

不定期の観察のため、オタマジャクシの成長記録としては不完全です。 
子ガエルへと変態が完了した個体はさっさと水場から上陸するはずですから、発育の遅いオタマジャクシばかりが池に残ることになります。 
本当は採集したオタマジャクシを飼育してじっくり観察したいところです。 
しかし、オタマジャクシを山中から家まで生きたまま持ち帰るミッションが想像するだけでも大変だ…という言い訳をして二の足を踏んでいます。 
今回は温度計を忘れてしまい、池の水温も気温も測っていません。 


2022/10/05

後脚が生えてきたオタマジャクシの大群

前回の記事:▶ 山の泉で育つオタマジャクシの大群をすくって見る

2022年7月中旬・午後13:30頃・晴れ・水温17〜18℃ 

トレイルカメラで監視している山中の泉に10日ぶりにやって来ました。 
電池交換のついでに、池で育つ黒いオタマジャクシを観察します。 
アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)の幼生ではないかと予想しているのですけど、どうでしょうか? 
今回は横着して、観察容器にすくうサンプリングをやりませんでした。

地下水の湧き水が溜まっている泉は水温が低く、そのためにオタマジャクシの発育が他の池よりもかなり遅れているようです。 
それでもオタマジャクシの変態が進行中で、後脚が伸びた個体が混じっていました。 
私が裸足で池に入水すると、長時間は浸かっていられないぐらいの冷たさです。 
赤外線レーザーの非接触式温度計で池の水温を測ると、17〜18℃でした。
 

ところが今回はうっかり気温を測り忘れてしまいました。 
オタマジャクシの大群が蠢いている岸辺は、日の当たらない木陰なのに水温が少し高いのが不思議でした。
冷たい地下水が湧き出してくる地点を避けてオタマジャクシは集結しているのでしょうか? 
変温動物のはずですが、オタマジャクシの大群の呼吸熱で周囲の水がわずかに温まるのかな? 

動画にたまたま写ったように見えたアメンボ(種名不詳)は、まさかオタマジャクシを襲って吸血するのでしょうか? 
この池ではアカショウビンという鳥がオタマジャクシを捕食しに通っていましたが、数で圧倒することでオタマジャクシの多くが無事に生き残りました。
▼関連記事 
山中の池に飛び込んで獲物を捕食するアカショウビン【野鳥:トレイルカメラ】

つづく→オタマジャクシの群れが池の中で日陰に偏って分布する謎

2021/07/14

ヤマアカガエル幼生の群れと触れ合う

 

2021年4月中旬・午後16:50頃・くもり 


里山の緩斜面に2つ並んでいる繁殖池のうち、低い所にあって浅い池Lの記録です。 
残雪があった頃は雪解け水で満水となり2つの池は細い流れで繋がっていたのですが、春になって雪が完全になくなると独立した池になりました。 

池LでもヤマアカガエルRana ornativentris)の幼生が既に孵化していて、多数の黒いオタマジャクシが浅瀬で遊泳しています。 
岸辺に産卵したゼラチン質の卵塊が全く残っていませんでした。 
おそらく幼生が最初の餌として食べ尽くしたのでしょう。※
その後は池の底に堆積した泥に含まれる有機物を食べているようです。 
上の池Hと異なり、この池Lは浅いのでガマなどの抽水植物がこれから生えてきます。 

私が右手の指をそっと水中に入れるとオタマジャクシは慌てて逃げ回るものの、泳力が未発達のようで触れることが可能でした。
その気になれば手掴みできそうです。 
浅い池で生まれたオタマジャクシは特に、鳥や野生動物によって次々に捕食されてしまうのではないかと心配です。
池畔に無人の監視カメラを設置すれば、そうした捕食シーンが撮れるかな?

※ 【参考サイト】徹底解説 オタマジャクシの餌は何が良いか?によると、
オタマジャクシを卵から育てる場合、まだ十分に泳げないような最初の段階の餌は、卵を包んでいたゼリー状の紐になります。この卵の紐の残骸は、すぐに食べつくされて無くなるので、捨ててはいけません。


いつかその様子を微速度撮影してみたいものです。

卵塊から飼育する必要がありそうですね。



つづく→池の水面に繰り返し浮上するヤマアカガエル幼生の群れ


 

2021/07/01

池で孵化したヤマアカガエル幼生の群れが遊泳・採食

前回の記事:▶ 浅い繁殖池の底に隠れるヤマアカガエルの群れ

2021年4月中旬・午後16:45頃・晴れ 

前回の観察から25日後、ヤマアカガエルRana ornativentris)の繁殖池Hを久しぶりに訪れました。 
岸辺に産みつけられた卵塊をチェックしてみると、透明なゼラチン質の中で初めは黒い点だったのが胚発生が進んでオタマジャクシの形が作られつつあります。 
しかし、これは遅い時期に産卵された卵塊のようです。 

ヤマアカガエルの産卵時期には数日のずれがあるようで、初めに産みつけられた卵塊からは既に多数の黒いオタマジャクシ(幼生)が孵化していました。 
多くの個体は卵塊付近の浅い水底に留まって静止しています。 
ときどき尾を左右に振って遊泳し、池の底の泥に頭を突っ込んで有機物を採食しています。 
この池Hには抽水植物が生えないぐらい水深が深く、素人目には栄養が乏しいのではないかと心配していたのですが、大丈夫そうです。 

たまに水面近くまで浮上する個体がいて、すぐに池の底に戻ります。 
息継ぎのための上下動かと一瞬思ったのですが、落ち着いて考えるとオタマジャクシは鰓呼吸ですから、息継ぎは不要のはずです。 

※ レンズに円偏光(CPL)フィルターを装着して撮影。 
最後にズームアウトすると、水面に反射した飛行機雲が写っています。 

いつかヤマアカガエルの卵塊を採集して、オタマジャクシを飼育してみたいものです。 
他にもやりたいことが多過ぎて、なかなか手が回りません。 

2021/04/23

アカタテハの羽化c【10倍速映像】

 

アカタテハの飼育記録#13

前回の記事:▶ 赤い羽化液を排泄するアカタテハb

2020年10月下旬・午後14:15〜14:45頃・室温21.2℃・湿度44% 

カラムシの群落で採集してきたアカタテハVanessa indica)の垂蛹4個のうち、垂蛹cに変化が現れました。 
翅芽の赤色が透けて見えるようになったので、羽化が近いようです。 
羽化の一部始終を動画で記録したので、10倍速の早回し映像をご覧ください。 

蛹の胸背が割れて羽化が開始。 
中脚を突っ張って開口部を広げていました。 
退化した前脚はこのとき使っていません。 
触角の次は左右1対の口吻が蛹から抜け出ました。 
突っ張っていた中脚が抜け出ると、前屈して垂蛹の後端や食草にしがみつきながら、腹部を引き抜きました。 
次に翅芽が抜け出たものの、未だシワクチャです。 
抜け殻にしがみついたまま体をときどき左右に揺すり、翅を伸展させていきます。 
今回はカメラに対して背側を向けているので、翅表の伸びる様子を観察できるのは貴重です。 
左右1対の口吻を何度もくるくると伸縮させると、ゼンマイ状の1本の管に融合します。 

今回は腹端が見えないアングルになってしまい、赤い蛹便(羽化液)の排泄まで見届けられませんでした。 


最後の垂蛹dは体内寄生されていました


 

↑【おまけの映像】 
等倍速のリアルタイム映像をブログ限定で公開しておきます。

2021/04/17

繭塊から続々と羽化するサムライコマユバチ【10倍速映像】寄主ナシケンモン(蛾)幼虫

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#12

前回の記事:▶ 繭塊の外で蛹化したサムライコマユバチ:寄主ナシケンモン(蛾)幼虫
2020年11月中旬・午後22:00〜翌日の午後12:45・室温〜21℃ 

前回の動画から3日後。 
寄主から脱出して繭塊を紡いでから11日後。 
円筒形の透明プラスチック容器(直径7.5cm、高さ8cm、綿棒容器を再利用)に閉じ込めておいた繭塊から、いよいよサムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)成虫の羽化が始まりました。 
プラスチック越しの撮影は不鮮明になるので、予め密閉容器の蓋代わりにサランラップを張っておきました。 
ところが、いざ接写しようとすると室内の照明がサランラップに反射して白飛びしてしまい、セッティングに苦労しました。 

10倍速の早回し映像をご覧ください。 
フワフワの白い繭塊の中から黒っぽい寄生バチが頭から苦労して這い出してきます。 
繭の絹糸を大顎で噛み切りながら脱出路を切り開くのか、それとも絹糸を分解する消化酵素を吐き戻しているのか、不明です。
(1匹ずつ蜂の口元をもっと拡大して接写するべきでしたね。) 
無事に羽脱した新成虫は繭塊の表面に留まって身繕いしてから徘徊を開始。 

もっと多数の個体が一斉に羽化してくるかと期待したのですけど、かなり間隔を空けて五月雨式の羽化でした。 
自然界でも夜に羽化が始まるのだとしたら、撮影用の照明が眩しいせいで羽化が抑制されてしまったのかもしれません。 
長撮りした素材から羽化のシーンだけを抜粋し、成虫がこれから脱出してくる部位を赤い丸で示しました。 

羽化がいつもスムーズに行くとは限りません。 
脱出孔から仰向けに出てしまった個体は、繭塊表面の絹糸に翅が絡まってしまい、長時間もがいていました。 
疲労困憊でときどき休みながらも、ようやく自力で脱出することが出来ました。 
揺り籠があわや死のトラップと化すところでした。 
翅が繭の絹糸に絡まってシワクチャになっても、脱出直後には自然と真っ直ぐ伸びるのが蜂の羽化に特有です。 
チョウなどの鱗翅目なら羽化不全(翅の奇形)になるはずです。 

後半(@2:40〜)は等倍速の映像です。 
私にはサムライコマユバチ成虫の性別が見分けられません。 
枯葉の上で休んでいた新成虫が別個体と遭遇しても、2匹は交尾せずにすぐ別れました。 
翌日になると、密閉容器内で多数の寄生バチが歩き回っていました。 
ときどき容器内を飛び回る個体もいます。 

 

↑【おまけの動画】 

等倍速の映像と長撮りしたタイムラプス映像(10倍速)ノーカット版をブログ限定で公開しておきます。 


2021/04/13

繭塊の外で蛹化したサムライコマユバチ:寄主ナシケンモン(蛾)幼虫

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#11

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(3)10倍速映像
2020年11月中旬・午後22:35頃・ 

寄主から脱出して繭塊を作ってから8日後。 
サムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)幼虫の中で繭塊から一旦こぼれ落ちた者は、繭塊に戻れず、裸でまま蛹化していました。 
単独では自分の繭を正常に紡げないのかもしれません。

フワフワした白い繭塊の中で発生(完全変態)が進行している様子を見ることはできませんが、裸の蛹なら直接観察することが可能です。 
寄生蜂の蛹は全体が薄い黄色ですが、黒い複眼が目立つようになりました。 
長い触角も見えます。 
蛹の心臓(背脈管)の拍動が透けて見えるかと期待して動画に撮ってみたのですけど、動いていませんでした。 
側面を向いていた隣の個体も接写すべきでしたね。 

裸の蛹は、繭塊どころかベニバナボロギクの葉からもこぼれ落ちています。 
もしこれが自然界なら、繭塊に覆われていない裸の蛹は死亡率が上がるはずです。 
アリに見つかって捕食されたり、二次寄生バチ♀に真っ先に産卵されたりしてしまうことでしょう。 
また、微小な寄生バチの蛹は繭に覆われていないと乾燥に弱いはずです。 
密閉容器に入れているのですが、無事に成虫が羽化するでしょうか? 

寄主のナシケンモン幼虫はさすがにもう死んだようで、全く動きません。(右が頭部) 


 

2021/04/11

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(3)10倍速映像

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#10

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(2)接写
2020年11月上旬・午後22:27〜23:40 

サムライコマユバチの一種Cotesia sp.)終齢幼虫の群れが集団で営繭する様子を今度はマクロレンズで微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
初めからこの手法で記録したかったのですが、1台しか無いカメラと三脚のやりくりが大変でした。 

各幼虫は、口から白い絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡いでいます。 
1匹の幼虫が繭塊の表面からこぼれ落ちました。 
ウジ虫様の寄生バチ幼虫は脚が退化しているので、歩行・徘徊が苦手です。 
繭塊から離れてしまうと、おそらく自力では戻れないでしょう。 
繭塊から脱落した幼虫の穴は後に他の仲間によって埋められます。 

寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫は虫の息ながらも未だ生きているようで、ときどき微かに頭部が動いています。(画面下が被寄生幼虫の頭部) 
この寄生バチは、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂に分類されます。 
しかし別種の寄生バチ♀によって繭塊に次々と産卵されて、二次寄生される可能性があります。 
▼関連記事(5年前の撮影)
それを防ぐために寄主の毛虫が死ぬまでボディーガードとして振る舞うように行動を支配(寄主の行動操作)しているかどうか、興味深いところです。 
例えば他の虫が近づいたり繭塊を這い回ったりすると、ナシケンモン幼虫は暴れて撃退するでしょうか? 
飼育下で実験のために二次寄生蜂を用意するのは無理なので、試しにアリやアブラムシなどを這い回らせてナシケンモン幼虫の反応を調べたら面白そうです。 
せめてピンセットで毛虫をつついてみて、反応性を調べるべきでしたね。 
しかし本来、被寄生ナシケンモン幼虫は最終的に丸い球状の繭塊で完全に包まれるはずなので、ボディーガードの行動は期待されていない気がします。 
被寄生ナシケンモン幼虫は筋肉組織も既に食い荒らされているでしょうし、体外も体内も寄生バチの絹糸によってがんじがらめに固定されていますから、ほとんど動けないのではないか、と私は予想しています。 

 「ナシケンモン:寄生されて蛾になれず死んでしまうエレジー」 

翌日に撮った繭塊の写真を以下に掲載しておきます。
未だ営繭を続けている幼虫が写っていました。



2021/04/09

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(2)接写

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#9

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(1)
2020年11月上旬・午後22:12〜22:21・ 

サムライコマユバチの一種Cotesia sp.)終齢幼虫の群れが口から白い絹糸を吐いて寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫の周囲で繭塊を作る様子をマクロレンズで接写してみました。 
フワフワで柔らかそうです。

たまたま同時に撮影していた別の飼育ネタ(微速度撮影)を泣く泣く終了させて、ハンディカムから高画質のメインのカメラに切り替えて撮影しました。

2021/04/07

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(1)

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#8

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】
2020年11月上旬・午後16:45〜21:15・室温22.0℃ 

ベニバナボロギクの葉裏で巣を作りかけたまま力尽きたように静止していたナシケンモンViminia rumicis)の幼虫から遂に寄生蜂の幼虫が一斉に脱出を始めました。 
この日はたまたま他の飼育ネタを撮影していたので、三脚もメインのカメラも使えません。 
仕方がないので、慌ててハンディカムで手持ち撮影することにしました。 
適当に時間を空けて1分間撮影した映像をつなぎ合わせ、タイムラプス風のステップビデオにしました。 
コマユバチ幼虫が寄主の体表を食い破って脱出する瞬間を撮り損ねたのが残念です。

白っぽい(薄黄色)蛆虫のような寄生蜂の終齢幼虫が寄主の背側から何十匹も一斉に脱出して蠢いています。 
各個体は脱出地点(寄主の体表)で後端を固定すると、口から白い(薄い黄色?)絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡ぎ始めました。 
寄主のナシケンモン幼虫がしがみついていたベニバナボロギクの葉がどんどん萎れてくるので、撮影しやすいよう切り落として卓上に置きました。(向かって左が寄主の頭部です) 
これからコマユバチ幼虫の群れは合同で繭塊を紡ぐのですが、重力の向きが変わったせいで繭塊の形状に影響を与えてしまった(不自然な形になった?)かもしれません。 

脱出したコマユバチ終齢幼虫は30〜40匹?
体内を散々食い荒らされ体表のクチクラを一斉に食い破られても、寄主のナシケンモン幼虫は「虫の息」ながら依然として生きていました。 
葉裏の主脈に口を付けるように静止していますが、ときどき緩慢に動いています。 
途中から採寸代わりに1円玉(直径2cm)を横に並べて置いてみました。

初めは寄主の右側から脱出したコマユバチ幼虫の方が多いように思ったのですが、どうでしょう?(左右非対称に脱出?) 
それぞれの寄生蜂(コマユバチ科サムライコマユバチの一種?)幼虫の下部から次第に薄黄色のフワフワした絹糸で覆われてきました。 
繭塊の土台から作っていくようです。 
寄主ナシケンモン幼虫の姿が寄生蜂の繭塊に覆われて見えなくなってきています。 
コマユバチ幼虫の体も自ら紡ぐ繭塊の中にほぼ埋没しつつあります。 

もしピンセットなどで寄生蜂の終齢幼虫を寄主から引き剥がして単独で放置したら、自力で個別の繭を紡げるのですかね? 

繭塊が少しずつ大きくなると、寄主の体表を離れて左右にもはみ出して営繭しているコマユバチ幼虫の数が増えました。 
ナシケンモン幼虫がしがみついていた葉の向きを私が途中から撮影のために変えてしまったので、重力環境の変化が繭塊の形状に影響を与えてしまったかもしれません。 
もし葉が自然に垂れ下がったままコマユバチ幼虫群に営繭させたら寄主の体全体を覆う球状の繭塊になったはずです。 

三田村敏正『繭ハンドブック』のp90に、ナシケンモンを寄主とするコマユバチ科サムライコマユバチの仲間(Cotesia sp.)が作った繭塊が紹介されていました。 
同種かどうか分かりませんが、私が今回観察したのもおそらくサムライコマユバチの一種なのでしょう。
▼関連記事(13年前の撮影) 
ツガカレハ(蛾)幼虫に寄生していた蜂の造繭@接写

『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』という凄い本を読んだばかりなので、興味深いです。 
本をただ読むだけと自分の目で観察するのでは大違いです。
今回のトピックと一番関係の深いのは、中松豊「内部寄生の謎:危険な体内環境を支配する」と題した第6章です。
アワヨトウという蛾の幼虫に寄生するカリヤサムライコマユバチの生活史を詳しく研究した結果をまとめた総説です。
カリヤサムライコマユバチの寄生様式を専門的に分類すると、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂になります。 
カリヤサムライコマユバチ幼虫は脱出の際、足場を作るためにアワヨトウ幼虫の体内で糸を吐くが、これはアワヨトウ幼虫の体を内側から縛り、動けなくするという機能も兼ねていた。(p127より引用)
おおまかなストーリーを既に知っていた私が、本書を読んで一番驚いたのはこれでした。
寄生バチ幼虫が一斉に脱出する前に寄主の幼虫が動けなくなるのはてっきり体内の筋肉組織を食い荒らされたせいだと私は思い込んでいたので、とても勉強になりました。
少し長くなりますが、コマユバチ幼虫が寄主から脱出する方法について更に詳しい解説を引用します。
ここまで詳細な脱出過程の記述を他の本で読んだことがありません。
 カリヤサムライコマユバチ幼虫は、アワヨトウ幼虫から脱出する際、アワヨトウ幼虫の体液を一斉に飲む。そうするとアワヨトウ幼虫の体の体積は減って、ハチ幼虫の体の体積は増える。そのため、カリヤサムライコマユバチ同士の距離が近くなり、この機会を捉えて一斉に糸を吐き出す。このアワヨトウ幼虫体内に縦横無尽に走る糸の隔壁が、カリヤサムライコマユバチ幼虫のアワヨトウ幼虫から脱出する際の足場となる。
 普段アワヨトウ幼虫の体液のなかでカリヤサムライコマユバチ幼虫は浮遊生活をしているが、これから脱出するにあたってアワヨトウ幼虫の皮膚を大あごで切り裂かなければならない。そうすると、足場のない水中で皮膚に圧力をかけるのが難しい。しかしサムライコマユバチは前述の糸でつくった隔壁を足場として、大あごを立ててアワヨトウ幼虫の皮膚に圧力をかけ、さらに頭を前後に振ることによって物理的に切断していく。(p126より引用)
下線を引いた「寄主の体液を一斉に飲む」という点も初耳でした。
今回ナシケンモン幼虫が営繭準備のために巣を作り出したということは終齢幼虫のはずです。
それなのに正常な(寄生されていない)終齢個体より体長が小さかった理由がこれで分かりました。

私が更に驚愕したのは、寄主幼虫の皮膚を内側から一斉に食い破って大量の寄生バチ幼虫が脱出してくるのに体液が1滴も漏れない理由も解明されていたことです。
カリヤサムライコマユバチ幼虫が脱出する際、最後の幼虫脱皮をおこない、自身は3齢幼虫となって外へ出ていくが、アワヨトウ幼虫体内に残された2齢の脱皮殻が、破れた皮膚の栓となって、アワヨトウ幼虫の体液が外に漏出しないよう防いでいる。(同書p129より引用)
次に機会があれば、寄主幼虫の死骸を解剖して、皮膚の裏側に埋め込まれたコマユバチ幼虫の抜け殻を探してみるつもりです。



 ↓【おまけの動画】 
同じ素材を5倍速と10倍速に早回しにした映像をブログ限定で公開しておきます。 
せっかちな方はこちらをご覧ください。 
手持ちのハンディカムで撮ったので手ブレがあります。

 



2021/04/01

赤い羽化液を排泄するアカタテハb

 

アカタテハの飼育記録#12

前回の記事:▶ アカタテハの羽化b【10倍速映像】
2020年10月下旬・午後15:37および15:47 

無事に羽化した後で抜け殻(羽化殻)に掴まって休んでいたアカタテハVanessa indica)の新成虫bを動画に撮り続けると、蛹便(羽化液)を排泄しました。 
それまで斜め下を向いていた腹端を少し後ろ(背側)に引きながら、暗赤色の液体をポタポタと7滴垂らしました。 
肝心の排泄孔が腹端が翅に隠れて見えなかったのが残念です。 
スッキリしたアカタテハbはすぐに腹部を元の姿勢に戻しました。 
カメラを下に向けると、下に敷いておいた白紙に血痕のような蛹便が滴り落ちていました。 蛹便の色は種によって違います。 
アカタテハの蛹便は真っ赤でした。 

10分後にも再び羽化液をポタポタと7滴排泄。 
今度は前回よりも薄い液体で、赤みがかったピンクの透明でした。 
排泄の瞬間は腹端を後ろに引くので、どうしても翅の影に隠れてしまいます。 
 触角と縮めた口吻をかすかに動かしています。 

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