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2022/02/11

川にかかる倒木に集まるカワウのコロニー:2週間の日周活動【野鳥:微速度撮影】

 

2021年11月上旬〜中旬 

大雨の増水で川岸が侵食されて河畔林のニセアカシア(別名ハリエンジュ)高木が川を跨ぐように倒れると、カワウPhalacrocorax carbo hanedae)の群れが新たな止まり木として利用するようになりました。 
その長い倒木2本を対岸から5分間隔のインターバル撮影で丸14日間、監視してみました。 
トレイルカメラ(無人センサーカメラ)に搭載されているタイムラプス撮影機能がようやく役に立ちました。
暗くなると自動的に赤外線の暗視カメラで撮影し、カワウの目が光って見えます。 
高画質の4K動画でお楽しみ下さい。 
早過ぎるときはYouTubeの再生速度を落として下さい。

カメラを設置した日の午後は私を警戒してカワウは一斉に飛び去ってしまい、戻って来ませんでした。 
カワウは翌日の夜明け前に戻って来ると、左(下流側)の倒木に止まりました。 
多数のカワウが同じ倒木にほぼ等間隔で並んで止まると、その体重で倒木がしなり、画角内に上手いこと収まってくれます。 
同じような長い倒木が2本並んでいるのに、一方はカワウに人気がありません。 
右側(上流側)の倒木は川岸からの倒れ方が中途半端なので、大型の水鳥の止まり木としては斜めで使いにくいのでしょう。 

驚いたことに、カワウの群れが昼間だけでなく夜も同じ倒木に止まっていました。 
従来の観察からカワウの集団ねぐらはてっきり別な場所(下流の河畔林)にあると思っていたので、意外な発見でした。 
この状態はカワウのコロニーと呼んでも良さそうですが、いつまで続くか分かりません。 

ときたま1羽のダイサギArdea alba)も飛来して、長い倒木で休んでいました。 
しかし、あまり長居はしません。 (@2:16 - 2:17, 2:21 - 2:23, 2:38,  )
初めはカワウに遠慮して右側(上流側)の倒木に止まりましたが、やがてカワウと並んで左側(下流側)の倒木に止まるようになりました。 

タイムラプス映像で倒木上の離合集散を見ると、カワウの日周活動が垣間見えました。 
朝の短時間だけ全員が止まり木を離れて採餌(川で魚食)に出かけるものの、それ以外は日がな一日、止まり木でのんびり休んでいるようです。 
寒くて餌が少ない冬は活動性が低く、ひたすら省エネモードなのかもしれません。 
余談ですが、「烏合の衆」の「烏」はウではなくカラスのことらしいです。

風雨が吹き荒れる嵐の日も最低気温が0℃まで下がる日も、トレイルカメラはタフで問題なく作動してくれました。 
此岸の木から垂れ下がる蔓が目障りなのは、カメラを設置したときから分かっていたのですけど、高枝バサミが無いと取り除けませんでした。 

2021/12/24

シソの葉を蚕食するナシケンモン(蛾)終齢幼虫【30倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#15

前回の記事:▶ アカジソの葉を食べるナシケンモン(蛾)終齢幼虫

2021年9月下旬・午後12:20〜15:30頃

アカジソ(赤紫蘇)の葉裏に隠れて食休みしていたナシケンモンViminia rumicis)の終齢幼虫が葉縁に顔だけ出して食事を始めました。 
シソの葉を蚕食する様子を微速度撮影してみました。 
30倍速の早回し映像をご覧ください。 

2021/12/03

タヌキのうんちレストランに集まる虫たちの活動【10倍速映像】

 

2021年8月下旬・午後14:30〜15:00頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が山道に残した溜め糞でリサイクル活動する昆虫たちを微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 主に糞食性センチコガネPhelotrupes laevistriatus)の動向に注目しています。
関連記事(同日に撮影:等倍速映像)▶ タヌキの溜め糞を食べ下に潜り込むセンチコガネ
新鮮な獣糞を食べるセンチコガネがやがて画面の左下に移動しました。 
最後は糞と地面の間に潜り込みました。 
センチコガネは地中に穴を掘って糞の欠片を埋め、そこに産卵するのだそうです。
糞塊がときどきグラグラと勝手に動くのは、下に潜り込んでいる糞虫の仕業です。 
地殻変動しても、上にいる昆虫は無頓着でした。 
キンバエやニクバエの仲間はもちろん獣糞に集まる常連です。 

他には肉食性と思われるハネカクシも糞の内外を徘徊していました。
関連記事(同日に撮影)▶ タヌキの溜め糞で徘徊するアカバトガリオオズハネカクシ
大谷剛『昆虫―大きくなれない擬態者たち』という本によると、
 死体に集まるシデムシ、動物の糞に集まるセンチコガネ・マグソコガネ・ダイコクコガネなどの糞虫、両方にやってくるハネカクシやエンマムシなども、鞘翅があればこそ汚い粘つく汁の中を平気で動き回れるのである。鞘翅には多少粘つくものが付着しても飛ぶのに何の支障もない。(中略)死体・糞のニッチは甲虫の独壇場だ。(p80より引用)
この点は納得ですけど、鞘翅を持たない蟻(種名不詳の微小な赤アリ)もタヌキの溜め糞に群がっていました。 
アリは清潔好きだと思っていたので、かなり意外でした。 
おそらく体表に強力な抗菌加工が施されているのでしょう。 
微小な獲物を探しているのか、それとも糞に含まれる未消化の種子が目当てなのかな? 
アリの巣穴の真上にタヌキがたまたま排便したのでアリが右往左往しているという訳ではありません。 
というのも、タヌキの溜め糞は長期間同じ場所にあるからです。

こうして獣糞を日々食べて処理してくれる虫たちのおかげで、自然界は糞だらけにならずに済んでいるのです。(生物分解)
タヌキの溜め糞をめぐる生態系もなかなか面白いですね。
 

【追記】
溜め糞の横に生えていた白いキノコが気になり、写真に撮りました。
キノコについて何も知らないので、これから勉強しないといけません。
傘が完全に開いた様子を見れませんでした。
ナガエノスギタケだとしたら嬉しいのですが、どうでしょうか?
動物の排泄跡(溜め糞やトイレ)からアンモニアを分解して発生する、アンモニア菌というグループのキノコがいるそうです。





2021/10/17

アリの群れに襲われても耐え忍ぶ、ど根性アズマヒキガエル【10倍速映像】

前回の記事:▶ 切り株で獲物を待ち伏せるアズマヒキガエルがアリを捕り損ねた

2021年7月下旬・午前9:50〜10:14頃・晴れ 

アズマヒキガエルBufo japonicus formosus)が虫を捕食する瞬間を動画に記録しようと、真横にそっと回り込んでから三脚を立てました。 
ところが20分近く長撮りしても、空振りに終わりました。 
切り株の断面は水平ではなく、やや斜めに傾いています。 
そこに座ったヒキガエルは目の前のミズナラ幹をじっと凝視しています。 
瞬きもせず喉をかすかにヒクヒクさせているだけです。 
たまにアリが幹を徘徊しても、ヒキガエルは無反応でした。 
この撮影アングルでは遠近感が分からないのですが、おそらくヒキガエルの顔の正面にアリが来なかったり、ヒキガエルの舌の射程範囲の外だったのでしょう。 

やがて切り株から微小のアカアリ(種名不詳)がヒキガエルの体に次々とよじ登ってくるようになりました。 
ヒキガエルは皮膚が厚くて触覚が鈍いのか、ほとんど無反応でした。  
顔に来た蟻が目や口元を這い回っても平気です。 
アリは群れの仲間を動員してヒキガエルを攻撃しているのでしょうか? 
しかしヒキガエルの体に噛み付いたり蟻酸を掛けたりしているようには見えません。 
どうやらアリは、ヒキガエルの眼球から涙を吸汁したり、湿った唇を舐めたりして、水分を摂取しているだけのようです。 
ヒキガエルの閉じた口の隙間から唾液の小さい泡が出ています。 
アリに目尻を舐められたアズマヒキガエルはさすがに目を瞑るようになりました。 
カエルの瞬膜は眼球の下から現れて上に閉じます。 
ヒキガエルは左右の目を独立に瞬きできると分かりました。 
ヒキガエルの鼻孔内にアリが侵入することはなかったものの、鼻孔をヒクヒク動かすようになりました。 
喉をヒクヒクさせる動きが激しくなったのは、ストレスや苛立ちの現れでしょうか? 
右脇腹も呼吸で波打っています。 

煩わしいアリをヒキガエルが前脚で払い落とそうとしないのは不思議で仕方がありません。
よほど面の皮が厚くて鈍いのかな?
口元のアリをパクっと食べようとしないのは何故でしょう? (※追記参照)
まるでアリ責めの拷問を受けているようですが、ヒキガエルは身震いしたりアリを手で払い除けたりする行動が全く見られず、ただひたすら耐え忍ぶだけでした。(ガマん大会?) 
脂汗(ガマの油)を流すどころか、修行僧のような佇まいで平気の平左。 

 一部の鳥には蟻浴という習性があります。
アリ塚の上にわざと居座ってアリを怒らせ、羽毛に蟻酸をかけてもらい、ダニなどの体外寄生虫を駆除することがあるそうです。 
このヒキガエルもまさか蟻浴中だったのでしょうか? 

ヒキガエルの体表には毒液(ブフォトキシン)が分泌されているはずなのに、アリ避けの効果は全くありませんでした。 
ブフォトキシンは強心配糖体という心臓毒なので、おそらく脊椎動物にしか毒性を発揮しないのでしょう。
アリは昆虫(無脊椎動物) ですから、その心臓に影響しないのも納得です。

遂に アズマヒキガエルは度重なるアリの攻撃に堪りかねて右前脚で顔のアリを拭い、少し左に体の向きを変えました。 
切り株上でノソノソと歩いて前進を始め、終いには切り株から池の岸辺に飛び降りました。 

ヒキガエルの体長を採寸できず残念でした。 
かなり大型の個体で、目測では成人の拳より大きかったです。 

撮影中の私はカメラの近くで見守っていたものの、ヒキガエルの体に集る微小な蟻に全く気づきませんでした。 
なぜヒキガエルが急に逃げたのか理由が分からなかったのです。 
横に居る私の存在が気になり、警戒したヒキガエルが逃げたのでしょうか? 
あるいは、日向に長居するとヒキガエルの皮膚が乾燥するので、水辺に戻ったのかな?と思ったりしました。 
それとも、私が体中に振りかけた虫除けスプレーの匂いがきつ過ぎたせいで、ミズナラの幹に虫が近寄らなくなってしまい、ヒキガエルが狩場を変えたのか?と思ったりしたのです。 
撮れた映像を見て初めて、アリの群れから執拗に陰湿な攻撃を受けていたと真相を知りました。
ヒキガエルが立ち退いた後で切り株を現場検証しても、アリの巣は見つかりませんでした。 


↑【おまけの動画】 同じ素材でオリジナルの等倍速映像です。


※【追記】
西田隆義『天敵なんてこわくない―虫たちの生き残り戦略』という本を読むと、トノサマガエル(捕食者)とヒシバッタ(被食者)の関係について研究結果が詳しく書いてあり、興味深く読みました。
 カエルに限らず多くの捕食者は、採餌の効率が高くなるようにさまざまな工夫をしている。その一つが、小さすぎたり、大きすぎる餌を無視するというものだ。(p133より引用)

今回の動画で微小なアリが口元に来てもヒキガエルは食べようとしなかった理由は、小さ過ぎて腹の足しにならないからと考えられます。 



2021/09/22

死んだアメリカザリガニに群がり解体運搬するクロクサアリ♀【10倍速映像】

 

2021年7月上旬・午後15:35〜16:08頃・くもり 

大雨の後で氾濫した湿地帯の水が引くと、アメリカザリガニProcambarus clarkii)の死骸が多数散乱していました。 
その中で、クロクサアリLasius fuji)のワーカー♀が群がっていた2匹の死骸a,bに注目し、三脚を立てて微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。
関連記事(6年前の撮影)▶ アメリカザリガニの死骸に群がるクロヤマアリ♀【微速度撮影】
シーン1:(@0:00〜) 
アメリカザリガニの死骸aは腹を向けて地面(遊歩道)に転がっていました。 
クロクサアリ♀は死んだザリガニの外骨格の隙間から潜り込み、体内の柔らかい組織を細かい肉片に解体してせっせと巣に運んでいます。
シーン2:(@1:20〜) 
少し離れた地点で、アメリカザリガニの死骸bは側面を向けて地面(遊歩道)に転がっていました。 
クロクサアリ♀は泥だらけの地面をなるべく歩きたくないようです。 
画面左で斜めに通る枯れ草の茎を餌の運搬通路(高速道路)として使っています。 

2021/04/23

アカタテハの羽化c【10倍速映像】

 

アカタテハの飼育記録#13

前回の記事:▶ 赤い羽化液を排泄するアカタテハb

2020年10月下旬・午後14:15〜14:45頃・室温21.2℃・湿度44% 

カラムシの群落で採集してきたアカタテハVanessa indica)の垂蛹4個のうち、垂蛹cに変化が現れました。 
翅芽の赤色が透けて見えるようになったので、羽化が近いようです。 
羽化の一部始終を動画で記録したので、10倍速の早回し映像をご覧ください。 

蛹の胸背が割れて羽化が開始。 
中脚を突っ張って開口部を広げていました。 
退化した前脚はこのとき使っていません。 
触角の次は左右1対の口吻が蛹から抜け出ました。 
突っ張っていた中脚が抜け出ると、前屈して垂蛹の後端や食草にしがみつきながら、腹部を引き抜きました。 
次に翅芽が抜け出たものの、未だシワクチャです。 
抜け殻にしがみついたまま体をときどき左右に揺すり、翅を伸展させていきます。 
今回はカメラに対して背側を向けているので、翅表の伸びる様子を観察できるのは貴重です。 
左右1対の口吻を何度もくるくると伸縮させると、ゼンマイ状の1本の管に融合します。 

今回は腹端が見えないアングルになってしまい、赤い蛹便(羽化液)の排泄まで見届けられませんでした。 


最後の垂蛹dは体内寄生されていました


 

↑【おまけの映像】 
等倍速のリアルタイム映像をブログ限定で公開しておきます。

2021/04/17

繭塊から続々と羽化するサムライコマユバチ【10倍速映像】寄主ナシケンモン(蛾)幼虫

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#12

前回の記事:▶ 繭塊の外で蛹化したサムライコマユバチ:寄主ナシケンモン(蛾)幼虫
2020年11月中旬・午後22:00〜翌日の午後12:45・室温〜21℃ 

前回の動画から3日後。 
寄主から脱出して繭塊を紡いでから11日後。 
円筒形の透明プラスチック容器(直径7.5cm、高さ8cm、綿棒容器を再利用)に閉じ込めておいた繭塊から、いよいよサムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)成虫の羽化が始まりました。 
プラスチック越しの撮影は不鮮明になるので、予め密閉容器の蓋代わりにサランラップを張っておきました。 
ところが、いざ接写しようとすると室内の照明がサランラップに反射して白飛びしてしまい、セッティングに苦労しました。 

10倍速の早回し映像をご覧ください。 
フワフワの白い繭塊の中から黒っぽい寄生バチが頭から苦労して這い出してきます。 
繭の絹糸を大顎で噛み切りながら脱出路を切り開くのか、それとも絹糸を分解する消化酵素を吐き戻しているのか、不明です。
(1匹ずつ蜂の口元をもっと拡大して接写するべきでしたね。) 
無事に羽脱した新成虫は繭塊の表面に留まって身繕いしてから徘徊を開始。 

もっと多数の個体が一斉に羽化してくるかと期待したのですけど、かなり間隔を空けて五月雨式の羽化でした。 
自然界でも夜に羽化が始まるのだとしたら、撮影用の照明が眩しいせいで羽化が抑制されてしまったのかもしれません。 
長撮りした素材から羽化のシーンだけを抜粋し、成虫がこれから脱出してくる部位を赤い丸で示しました。 

羽化がいつもスムーズに行くとは限りません。 
脱出孔から仰向けに出てしまった個体は、繭塊表面の絹糸に翅が絡まってしまい、長時間もがいていました。 
疲労困憊でときどき休みながらも、ようやく自力で脱出することが出来ました。 
揺り籠があわや死のトラップと化すところでした。 
翅が繭の絹糸に絡まってシワクチャになっても、脱出直後には自然と真っ直ぐ伸びるのが蜂の羽化に特有です。 
チョウなどの鱗翅目なら羽化不全(翅の奇形)になるはずです。 

後半(@2:40〜)は等倍速の映像です。 
私にはサムライコマユバチ成虫の性別が見分けられません。 
枯葉の上で休んでいた新成虫が別個体と遭遇しても、2匹は交尾せずにすぐ別れました。 
翌日になると、密閉容器内で多数の寄生バチが歩き回っていました。 
ときどき容器内を飛び回る個体もいます。 

 

↑【おまけの動画】 

等倍速の映像と長撮りしたタイムラプス映像(10倍速)ノーカット版をブログ限定で公開しておきます。 


2021/04/11

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(3)10倍速映像

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#10

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(2)接写
2020年11月上旬・午後22:27〜23:40 

サムライコマユバチの一種Cotesia sp.)終齢幼虫の群れが集団で営繭する様子を今度はマクロレンズで微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
初めからこの手法で記録したかったのですが、1台しか無いカメラと三脚のやりくりが大変でした。 

各幼虫は、口から白い絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡いでいます。 
1匹の幼虫が繭塊の表面からこぼれ落ちました。 
ウジ虫様の寄生バチ幼虫は脚が退化しているので、歩行・徘徊が苦手です。 
繭塊から離れてしまうと、おそらく自力では戻れないでしょう。 
繭塊から脱落した幼虫の穴は後に他の仲間によって埋められます。 

寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫は虫の息ながらも未だ生きているようで、ときどき微かに頭部が動いています。(画面下が被寄生幼虫の頭部) 
この寄生バチは、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂に分類されます。 
しかし別種の寄生バチ♀によって繭塊に次々と産卵されて、二次寄生される可能性があります。 
▼関連記事(5年前の撮影)
それを防ぐために寄主の毛虫が死ぬまでボディーガードとして振る舞うように行動を支配(寄主の行動操作)しているかどうか、興味深いところです。 
例えば他の虫が近づいたり繭塊を這い回ったりすると、ナシケンモン幼虫は暴れて撃退するでしょうか? 
飼育下で実験のために二次寄生蜂を用意するのは無理なので、試しにアリやアブラムシなどを這い回らせてナシケンモン幼虫の反応を調べたら面白そうです。 
せめてピンセットで毛虫をつついてみて、反応性を調べるべきでしたね。 
しかし本来、被寄生ナシケンモン幼虫は最終的に丸い球状の繭塊で完全に包まれるはずなので、ボディーガードの行動は期待されていない気がします。 
被寄生ナシケンモン幼虫は筋肉組織も既に食い荒らされているでしょうし、体外も体内も寄生バチの絹糸によってがんじがらめに固定されていますから、ほとんど動けないのではないか、と私は予想しています。 

 「ナシケンモン:寄生されて蛾になれず死んでしまうエレジー」 

翌日に撮った繭塊の写真を以下に掲載しておきます。
未だ営繭を続けている幼虫が写っていました。



2021/04/07

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(1)

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#8

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】
2020年11月上旬・午後16:45〜21:15・室温22.0℃ 

ベニバナボロギクの葉裏で巣を作りかけたまま力尽きたように静止していたナシケンモンViminia rumicis)の幼虫から遂に寄生蜂の幼虫が一斉に脱出を始めました。 
この日はたまたま他の飼育ネタを撮影していたので、三脚もメインのカメラも使えません。 
仕方がないので、慌ててハンディカムで手持ち撮影することにしました。 
適当に時間を空けて1分間撮影した映像をつなぎ合わせ、タイムラプス風のステップビデオにしました。 
コマユバチ幼虫が寄主の体表を食い破って脱出する瞬間を撮り損ねたのが残念です。

白っぽい(薄黄色)蛆虫のような寄生蜂の終齢幼虫が寄主の背側から何十匹も一斉に脱出して蠢いています。 
各個体は脱出地点(寄主の体表)で後端を固定すると、口から白い(薄い黄色?)絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡ぎ始めました。 
寄主のナシケンモン幼虫がしがみついていたベニバナボロギクの葉がどんどん萎れてくるので、撮影しやすいよう切り落として卓上に置きました。(向かって左が寄主の頭部です) 
これからコマユバチ幼虫の群れは合同で繭塊を紡ぐのですが、重力の向きが変わったせいで繭塊の形状に影響を与えてしまった(不自然な形になった?)かもしれません。 

脱出したコマユバチ終齢幼虫は30〜40匹?
体内を散々食い荒らされ体表のクチクラを一斉に食い破られても、寄主のナシケンモン幼虫は「虫の息」ながら依然として生きていました。 
葉裏の主脈に口を付けるように静止していますが、ときどき緩慢に動いています。 
途中から採寸代わりに1円玉(直径2cm)を横に並べて置いてみました。

初めは寄主の右側から脱出したコマユバチ幼虫の方が多いように思ったのですが、どうでしょう?(左右非対称に脱出?) 
それぞれの寄生蜂(コマユバチ科サムライコマユバチの一種?)幼虫の下部から次第に薄黄色のフワフワした絹糸で覆われてきました。 
繭塊の土台から作っていくようです。 
寄主ナシケンモン幼虫の姿が寄生蜂の繭塊に覆われて見えなくなってきています。 
コマユバチ幼虫の体も自ら紡ぐ繭塊の中にほぼ埋没しつつあります。 

もしピンセットなどで寄生蜂の終齢幼虫を寄主から引き剥がして単独で放置したら、自力で個別の繭を紡げるのですかね? 

繭塊が少しずつ大きくなると、寄主の体表を離れて左右にもはみ出して営繭しているコマユバチ幼虫の数が増えました。 
ナシケンモン幼虫がしがみついていた葉の向きを私が途中から撮影のために変えてしまったので、重力環境の変化が繭塊の形状に影響を与えてしまったかもしれません。 
もし葉が自然に垂れ下がったままコマユバチ幼虫群に営繭させたら寄主の体全体を覆う球状の繭塊になったはずです。 

三田村敏正『繭ハンドブック』のp90に、ナシケンモンを寄主とするコマユバチ科サムライコマユバチの仲間(Cotesia sp.)が作った繭塊が紹介されていました。 
同種かどうか分かりませんが、私が今回観察したのもおそらくサムライコマユバチの一種なのでしょう。
▼関連記事(13年前の撮影) 
ツガカレハ(蛾)幼虫に寄生していた蜂の造繭@接写

『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』という凄い本を読んだばかりなので、興味深いです。 
本をただ読むだけと自分の目で観察するのでは大違いです。
今回のトピックと一番関係の深いのは、中松豊「内部寄生の謎:危険な体内環境を支配する」と題した第6章です。
アワヨトウという蛾の幼虫に寄生するカリヤサムライコマユバチの生活史を詳しく研究した結果をまとめた総説です。
カリヤサムライコマユバチの寄生様式を専門的に分類すると、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂になります。 
カリヤサムライコマユバチ幼虫は脱出の際、足場を作るためにアワヨトウ幼虫の体内で糸を吐くが、これはアワヨトウ幼虫の体を内側から縛り、動けなくするという機能も兼ねていた。(p127より引用)
おおまかなストーリーを既に知っていた私が、本書を読んで一番驚いたのはこれでした。
寄生バチ幼虫が一斉に脱出する前に寄主の幼虫が動けなくなるのはてっきり体内の筋肉組織を食い荒らされたせいだと私は思い込んでいたので、とても勉強になりました。
少し長くなりますが、コマユバチ幼虫が寄主から脱出する方法について更に詳しい解説を引用します。
ここまで詳細な脱出過程の記述を他の本で読んだことがありません。
 カリヤサムライコマユバチ幼虫は、アワヨトウ幼虫から脱出する際、アワヨトウ幼虫の体液を一斉に飲む。そうするとアワヨトウ幼虫の体の体積は減って、ハチ幼虫の体の体積は増える。そのため、カリヤサムライコマユバチ同士の距離が近くなり、この機会を捉えて一斉に糸を吐き出す。このアワヨトウ幼虫体内に縦横無尽に走る糸の隔壁が、カリヤサムライコマユバチ幼虫のアワヨトウ幼虫から脱出する際の足場となる。
 普段アワヨトウ幼虫の体液のなかでカリヤサムライコマユバチ幼虫は浮遊生活をしているが、これから脱出するにあたってアワヨトウ幼虫の皮膚を大あごで切り裂かなければならない。そうすると、足場のない水中で皮膚に圧力をかけるのが難しい。しかしサムライコマユバチは前述の糸でつくった隔壁を足場として、大あごを立ててアワヨトウ幼虫の皮膚に圧力をかけ、さらに頭を前後に振ることによって物理的に切断していく。(p126より引用)
下線を引いた「寄主の体液を一斉に飲む」という点も初耳でした。
今回ナシケンモン幼虫が営繭準備のために巣を作り出したということは終齢幼虫のはずです。
それなのに正常な(寄生されていない)終齢個体より体長が小さかった理由がこれで分かりました。

私が更に驚愕したのは、寄主幼虫の皮膚を内側から一斉に食い破って大量の寄生バチ幼虫が脱出してくるのに体液が1滴も漏れない理由も解明されていたことです。
カリヤサムライコマユバチ幼虫が脱出する際、最後の幼虫脱皮をおこない、自身は3齢幼虫となって外へ出ていくが、アワヨトウ幼虫体内に残された2齢の脱皮殻が、破れた皮膚の栓となって、アワヨトウ幼虫の体液が外に漏出しないよう防いでいる。(同書p129より引用)
次に機会があれば、寄主幼虫の死骸を解剖して、皮膚の裏側に埋め込まれたコマユバチ幼虫の抜け殻を探してみるつもりです。



 ↓【おまけの動画】 
同じ素材を5倍速と10倍速に早回しにした映像をブログ限定で公開しておきます。 
せっかちな方はこちらをご覧ください。 
手持ちのハンディカムで撮ったので手ブレがあります。

 



2021/04/05

夜明け前に塒から飛び立つダイサギの群れ【10倍速映像】:「情報センター仮説」の直接検証

前回の記事:▶ ヒマラヤスギ樹上に塒入りするダイサギの群れ(冬の野鳥)
2020年11月中旬・午前5:43〜6:07(日の出時刻は午前6:22)・晴れ 

前回の観察から2日後の夜明け前からダイサギArdea alba)が群れで寝ている集団ねぐらの様子を見に来ました。 
快晴のため、無風でも放射冷却現象で気温がかなり下がりました。 
水たまりが凍ったり地面に霜柱ができるほどではありませんが、下草に白い霜が降りていました。 
ダイサギが塒を離れて朝食採餌に出かける様子の一部始終を動画で記録してみましょう。 
気温が下がる早朝にレンズの結露を防ぐため、鏡筒にUSBレンズヒーターを巻いてモバイルバッテリーから給電しました。 
朝日に対して順光のアングルになるように三脚カメラを設置。 

手持ち夜景モードに切り替えたカメラに動画撮影を任せ、私は木陰に身を隠しました。 
あいにくこの現場には本格的なブラインドを張れそうな場所が無くて、隠し撮りするのに苦労します。 
暗いうちは良いのですが、明るくなると私の姿を見つけた途端に警戒心の強いダイサギは塒から飛び去ってしまいそうです。 
しかし、今回ダイサギは警戒声を発せず黙って塒から1羽ずつ飛び去り、他個体がつられて連鎖的に(一斉に)飛び去ることもありませんでした。 
したがって、私の撮影行為自体がダイサギに及ぼした影響は小さいはずです。 

離塒の間隔を分かりやすくするために、10倍速の早回し映像に加工しました。 
(等倍速の映像も下に掲載しています。)
動画編集時にコントラストを少し上げました。 
実際の空より少し暗くなるものの、白鷺が際立ちます。 

ヒマラヤスギ高木のあちこちの枝で白鷺の群れが互いに少し離れて寝ています。 
針葉樹林の黒いシルエットにまるで白い花が咲いたようです。 
未だ真っ暗な時刻に中程の高さの枝から1羽のダイサギが飛び立ったものの、すぐに舞い戻って来ました。 
寝ぼけて夢遊病のように飛び出してしまった個体なのか、あるいは暗くても私の存在に気づいた個体が警戒したのかもしれません。

やがて目覚めた個体から順に樹上で背伸びをしたり翼をバサバサと羽ばたいたり、身震いしたりしています。 
続いて朝の羽繕いを始めました。 

結論を先に述べると、朝日が昇る(午前6:22)前の午前6:06にはダイサギの全個体(計13羽)の離塒りじが完了しました。 
1羽ずつばらばらに離から飛び去ったことが重要なポイントです。 
しかも塒から飛び出す方角はまちまちでした。 
塒の上空で旋回してから採餌場へ飛び去る個体もいます。 
相次いで塒を離れた場合でも、先行する個体を慌てて追いかけるのではなく、別方角へ飛び去りました。 
おそらく空腹に耐えられなくなった個体から順に離塒するのでしょう。 
大型の鳥ダイサギが飛び去ると、それまで止まっていたヒマラヤスギの枝がしばらく揺れています。 

夜が明けると、周囲ではカラスが鳴き始めました♪。 
毎朝午前6:00には大音量でサイレンがウーーーー♪と鳴り響きます。 
ダイサギはこのサイレンの音を合図にして一斉に離塒している訳ではありませんでした。 
サイレンが鳴る前にも後にも個々に集団塒のヒマラヤスギ樹上から飛び去っていました。 

ヒマラヤスギ林を占拠していた白鷺の群れが居なくなると、ハトやカラスなど他種の野鳥が飛来して止まり木として利用するようになりました。 
まるでダイサギが居なくなるのを待ちかねていたようです。 
ただの偶然かもしれませんが、猛禽でもないのに大型のダイサギを恐れていたのですかね? 

撮影地点で測定した気温は、午前5:44で気温4.7℃・湿度54%。 
午前6:10には気温2.4℃・湿度76%まで下がりました。 

さて、種々の鳥類がなぜ群れで集まり塒をとるのか?という鳥類生態学の問題に対して、これまで幾つかの仮説が提唱されてきました。 
その一つの「情報センター仮説」をここでは検討します。 
少し長くなりますけど、上田恵介『鳥はなぜ集まる?:群れの行動生態学』という本の第2章「ねぐらはエサの情報センター」から引用します。
エサを見つけられなかった鳥が餌探しに成功した鳥のあとをついてエサ場に行くのではないだろうかというのがワードとザハビの「情報センター仮説」です。(中略) ワードとザハビの論文が出されるなり、これにすばやく反応して研究をおこなったのが、オックスフォード大学のJ・R・クレブスでした。彼は留学していたカナダの、オオアオサギのコロニーでこの仮説が正しいかどうかを調べたのです。  彼はこう考えました。もしサギたちがコロニーを情報の交換場所に使っているならコロニーを飛び立つ時に、サギたちはバラバラに飛び立っていくのではなく、前日に十分エサをとった鳥のあとを、エサがとれなかった鳥がついていくように飛び立つだろうと予測しました。彼は朝、飛び立つサギたちの飛び立ち間隔を調べ、それをサギたちがもしランダムに飛び立ったらどうかという理論値と比較してみました。するとオオアオサギたちは、バラバラに飛び立っているのではなく、ある個体が飛び立つとそのあとを何羽かの個体がついていくように飛び立つ傾向にあることを発見しました。 よく引用されるクレブスの仕事です。しかし先に飛び立った鳥が前日にエサを十分に食べた鳥かどうかはわかっていませんし、グループで採食に行くということ自体、情報センターを仮定しなくてもサギたちにとって十分有利なので、彼のこのデータはあくまでも状況証拠にしかすぎません。直接的には個体識別した鳥をねぐらとエサ場で観察すればよいのですが、それがなかなかむずかしいのです。(p20-21より引用)
ちなみに原著論文はこちらです。
Krebs, J. R. (1974). Colonial nesting and social feeding as strategies for exploiting food resources in the Great Blue Heron (Ardea herodias). Behaviour, 51(1-2), 99-134.
原著論文の要旨だけでもよく読むと、筆者のクレブスはオオアオサギの塒ではなく繁殖期のコロニー(巣の集まり)から朝に飛び立つ個体を調べていました。 
私にとってこの区別は結構重要に思えるのですが、孫引きした総説や鳥の入門書では区別せずにさらっと流している(混同している)ことが多いです。 
鳥の巣と塒は基本的に別物です。

今回私が観察したダイサギは冬季の集団塒から1羽ずつバラバラに飛び去ったので、サギ類では定説になっているはずの「情報センター仮説」(the Information-Centre Hypothesis;ICH)はあっさり否定できそうです。 
ただし、私の観察したダイサギの群れは文献の生データよりも個体数(13羽)が少なすぎる点が問題となる(証拠として弱い)かもしれません。
定量データ(離塒間隔)の統計処理もしていないので、クレブスの研究の厳密な追試ではありません。 
しかし塒から個別に飛び去った証拠映像があれば反例として充分ではないかと思います。
クレブスの時代(1970年代)にはビデオカメラを野外で気軽には使えなかったので苦肉の策として統計処理に頼ったのではないでしょうか?
次回の撮影では、離塒したダイサギの各個体がどの方角に飛び去ったか餌場の方角をしっかり確認するために、もっと広角で記録する必要がありそうです。

そもそも冬にこの地域の川や池には魚影が薄い(ダイサギの餌となる獲物の密度が低い)ので、個々のダイサギが広い餌場を必要とします。
つまり昼間にダイサギは群れを作らず単独で採食します。
仮に仲間について行っても分け前が更に減るだけですから、喧嘩になるでしょう。
夕方になるとダイサギは各自の餌場から再び集団塒に戻って来るのですが、ダイサギの冬塒で「情報センター仮説」が成り立たないのは当然かもしれません。

 

↑【おまけの動画】 
長撮りしたオリジナル素材の長編動画(21:05)をブログ限定で公開します。 

4日後にも定点観察で追試しました。


体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#7

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫が繭を作る場所を探索【10倍速映像】
2020年11月上旬 

ナシケンモンViminia rumicis)の被寄生終齢幼虫は食草だったベニバナボロギクの葉裏に落ち着くと、営繭用の巣を作り始めました。 
微速度撮影したので200倍速の早回し映像をご覧ください。 
白い絹糸を口から吐いて周囲の葉を綴り合わそうとしています。 
三田村敏正『繭ハンドブック』によると、ナシケンモンは
餌植物の葉を綴って繭を作る。(中略)繭層は非常に薄く、中の蛹が透けて見える。(中略)繭全体が葉でくるまれていることもある。 (p61より引用)
ところが巣作りが遅々として進まず、休んでいる時間の方が長いです。 
寄生されていない正常個体の営繭行動を私は未だ観察したことがないのですが、もしかすると、オトシブミのように葉裏から葉脈に噛み傷を付けて萎れさせ、巣材を加工しやすくしているのか?と初めは思ったりしました。 
ベニバナボロギクの葉がみるみる萎れていくのは、至近距離から照明を当てているためのようです。 
対策として、途中で花瓶の水を追加しました。 

ナシケンモンの幼虫は自身の体の周りの葉裏に辛うじて少量の絹糸を張り巡らしただけで動かなくなりました。 
あまりにも異例尽くめなので、この時点になると体内寄生されてることを確信しました。 
絹糸腺は寄主の生存に不可欠な器官ではありませんから、おそらく寄生蜂の幼虫にほとんど食われてしまい、巣作りや営繭に必要な絹糸を吐けなくなったのでしょう。 
この個体の徘徊運動がギクシャクとぎこちないのは前からですが、葉裏に静止している間もピクピクと不規則に蠕動しています。 
筋肉組織や運動神経系も寄生蜂の幼虫にどんどん食い荒らされているのでしょう。 

体内寄生虫が寄主の行動を操作して自らの生存に都合の良い構造物(巣)を作らせる「延長された表現型」の事例はいくつか知られています。 
しかし、今回の観察例もそうなのかどうかは疑問です。 
せいぜい、寄主が力尽きる前に全身を植物にしっかり固定させているぐらいだと思います。
比較のために、寄生されていない正常個体の営繭行動を観察するのが次の宿題です。

    

↑【おまけの映像】 
 同じ素材で早回し速度を半分の100倍速に落とした動画をブログ限定で公開します。 

2021/04/03

体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫が繭を作る場所を探索【10倍速映像】

 

 ナシケンモン(蛾)の飼育#6

前回の記事:▶ ニセアカシアの葉を食べる体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫【10倍速映像】
2020年11月上旬・午後16:40頃 

前日から食欲が無かったナシケンモンViminia rumicis)の被寄生終齢幼虫bは、落ち着き無く徘徊するようになりました。 
図鑑に書いてある終齢幼虫の体長より小さいのですが、繭を作れる安全な場所を探索しているのでしょう。 
 一緒に飼っているフクラスズメ幼虫による食害で丸坊主にされたカラムシにも登ったものの、気に入らなかったナシケンモン幼虫は引き返して降りてきます。 
カラムシの葉や実には全く口を付けませんでした。 


2021/03/30

アカタテハの羽化b【10倍速映像】

 

アカタテハの飼育記録#11

前回の記事:▶ 自発的に蠕動を繰り返すアカタテハ垂蛹の謎
2020年10月下旬・午後15:00頃・室温21.8℃・湿度43%(羽化終了時) 

翌日、アカタテハVanessa indica)垂蛹bの変態が更に進み、翅原基の色が赤く透けて見えるようになりました。 
いよいよ羽化が始まりそうです。 微速度撮影で記録したので、10倍速の早回し映像をご覧ください。 
照明に使っていたUSBリングライトの配線が絡まって撮影の邪魔になったので、途中で一時消灯しました。 
再点灯した10分後に蛹の胸部が割れて羽化が始まったのは、もしかすると光刺激に何か関係あるのかもしれません。 

前回の個体aが羽化した時と違い、この個体bは腹端もスムーズに蛹から抜けでることができました。 
しわくちゃに畳まれていた翅がみるみるうちに伸び切ったものの、翅頂が画角の下に少しはみ出てしまい残念。 
タテハチョウ科の成虫は前脚が退化しているため、昆虫なのに4本脚に見えます。 

左右の口吻をジッパーのように閉じてゼンマイ状の1本の管に融合する作業に手間取っているようで、何度もくるくると伸縮させています。 
マクロレンズで口吻の形成過程を接写すれば良かったですね。 


 
羽化直前のアカタテハ垂蛹b
羽化直後のアカタテハ新成虫b(口吻は未だ2本)
口吻は未だ2本


 

↑【おまけの映像】 
後半の翅が伸び切った後の口吻の融合シーンは、実は微速度撮影ではなく普通に撮りました。 
等倍速のオリジナル素材をブログ限定で公開しておきます。 


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