2010/12/28
キボシアシナガバチの狩りと肉団子作り
2010年6月中旬
山道沿いの茂みで探索飛行していたキボシアシナガバチ(Polistes nipponensis)が羊歯の葉裏に回りこんだと思ったら電光石火、獲物を捕らえていました。
残念ながら狩りの瞬間は死角で撮れませんでした。
獲物は芋虫で、ハバチ類の幼虫かもしれません。
羊歯の葉に食痕がありました。
葉の表で獲物を少し噛みほぐすと肉団子を咥え巣に飛び去りました。
時期的に未だ創設女王が独りで狩りも行っているのかもしれません(単独営巣期)。
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給餌,
捕食
ヤマトアザミテントウ?
2010年6月中旬
山の斜面に生い茂ったイタドリの葉で見つけたテントウムシ。
葉上を徘徊した後、縁から飛んで隣の葉に移りました。
現場では草食性のニジュウヤホシテントウかと思ったのですが、帰って少し調べてみると近縁種が色々といるみたい。
左右の黒紋が中央でつながる点がオオニジュウヤホシテントウとは異なるらしい。
ヤマトアザミテントウ(Epilachna niponica)ですかね?
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甲虫(鞘翅目)
ナミテントウの幼虫
2010年6月中旬
テントウムシの幼虫を発見。
多分ナミテントウ(Harmonia axyridis)の幼虫だと思います。
葉の縁にたまった朝露を飲んだ?
葉の種名は分かりませんが、表面に白い綿状のものが少し付いています。
アブラムシ由来のワックスかもしれません。
餌となるアブラムシを探し回っているのでしょう。
【追記】
小畑晶子『幸せを運ぶテントウムシ』によると、
テントウムシは、英語ではladybird beetle(この場合のladyは聖母マリアをさすという)、ドイツ語ではdie Marienkäferとよばれ、ともに「聖母マリアの甲虫」という意味である。 (『虫たちがいて、ぼくがいた:昆虫と甲殻類の行動』第1-3章p31より引用)ladyの由来をこの本で初めて知ったので、備忘録として残しておきます。
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甲虫(鞘翅目)
2010/12/27
エビガラスズメ♂(蛾)の飛翔準備運動
2010年10月下旬・気温14℃
エビガラスズメ♂(Agrius convolvuli)が鉄柱に止まっていました。
前翅長45mm。触角の様子から♂と思われます。
「(本種の)成虫は触角や前翅の模様がはっきりしてるのが♂」とのこと。スズメガの中には刺激すると威嚇のため鳴く蛾がいるらしいので試してみたのですが、これは少し手荒に触れても鳴きませんでした。
そのうち地面に落下してしまいました。
重そうな体で地面を少し歩き、その場で羽ばたきます。
せっかくの機会なので後翅も広げてお見せします。
手乗りさせ飛翔シーンを動画に撮ろうと涼しい扇風を手に受けつつ待ち構えたものの、しばらくすると疲れたのか羽ばたく元気が無くなりました。
飛翔前に体温を上げるための準備運動と思われますが、指で胸背に触れてみても飛翔筋はそれほど熱を帯びておらず拍子抜け。
空中に放り投げても飛べずに力なく落ちました。
本種は暗くなってから訪花するらしいので、明るい時間帯は活動性が低いのだろうか。
危機が迫ってもすぐに飛んで逃げられないのは致命的では?
羽化直後だったのだろうか。
【追記】
エビガラスズメは日本にいるスズメガの中で、いちばん長い口をもっている。(『花の虫さがし』p57より)
【追記2】
『花と昆虫の大研究:進化と多様性のひみつをさぐる!』によると、
多くのスズメガの口吻の長さは、体長とおなじか少し長いぐらいですが、エビガラスズメは体長(約4.5cm)の2倍以上で、10cmをこえる口吻をもっています。(中略)
日本ではエビガラスズメの口吻とぴったりあうほど長い花筒をもつ花はありません。なぜ、こんなに長い口吻をもつようになったのでしょう。エビガラスズメの分布は調べてみると、アジアとアフリカの熱帯地方を中心に、ヨーロッパやオーストラリアなどの広い地域です。熱帯地方では距の長いランなどの花をおとずれるようです。こうした地域で長い口吻をもつように進化した後に、日本に分布を広げてきたようです。(p32-33より引用)
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チョウ・ガ(鱗翅目),
飛翔
イチモンジチョウのペレット吸汁
2010年6月中旬
イチモンジチョウ(Limenitis camilla)が二頭、林道上の汚物に集まり吸汁していました。
初めは獣糞かと思いましたが、よく見ると野鳥が吐き出したペレットのような気がしてきました。
マクロレンズに切り替えると一頭は逃げてしまいましたが、伸びた口吻を顔の正面から接写できました。
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チョウ・ガ(鱗翅目),
飲水,
食糞性
ヨウロウヒラクチハバチ♂の勇姿
2010年6月中旬
ヨウロウヒラクチハバチ♂(Leptocimbex yorofui)が日当たりの良い草の葉に止まって辺りを見渡していました。
ご尊顔を拝むと大顎が非常に発達しています。
飛び立っても大体同じ場所にすぐ舞い戻ります。
肝心の縄張り防衛行動の映像は残念ながらうまく撮れませんでした。
通りかかった同種の別個体(♂?)を追いかけて空中戦を仕掛けたのを目撃しています。
撮影後に採集しました。
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ハチ・アリ(膜翅目)
ナルコユリで吸蜜するトラマルハナバチ
2010年6月中旬
山中でトラマルハナバチ♀(Bombus diversus diversus)が道端のナルコユリを訪花していました。
細長い花なので、盗蜜行動が見られるかと思いましたが、長い口吻で底の蜜腺まで届いているようです。
白い花筒の中で蜂の長い舌が動く様子が透けて見えます。
次々に訪花しては、花にぶら下がったまま身繕い。
後脚に赤いダニのような粒々が幾つも付着しています。
名著『マルハナバチの経済学』(文一総合出版)表紙の写真と同じシーンが撮れて満足♪
せっかくなので、花を採集して構造を分解したり蜜腺までの深さを測定したりすれば良かったですね。
『マルハナバチ・ハンドブック』p42によると、蜜はストロー状の舌の毛管現象によって吸い上げられ、蜜胃へと導かれます。
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訪花
コジャノメ♀の日光浴
2010年6月中旬
翅裏の眼状紋を接写し始めたら、ジャノメチョウには珍しく?翅を広げて表側も見せてくれました。
コジャノメ♀(Mycalesis francisca perdiccas)だと思います。
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チョウ・ガ(鱗翅目)
ヒノマルコモリグモを曳くクロクモバチ
2010年6月中旬
獲物を運搬中のクモバチを発見。
蜂は獲物の歩脚を咥え、後ろ向きに引きずって歩きます。
用水路沿いの道を横切り、潅木に覆われた斜面をどんどん登って行きます。
細い枝の上も構わず渡って運びます。
落ち葉の中に何度も獲物を落としては探しに戻ります。
行き先を偵察しているのだろう。
毒針で麻痺させられた獲物は歩脚や触肢が弱々しく動くだけ。
闇クモ画像掲示板で問い合わせたところ、獲物のクモは写真鑑定でヒノマルコモリグモ♀(Arctosa ipsa)と教えて頂きました。
蜂の体は真っ黒なのに単眼の周囲だけ白いのが目立ちます。
右中脚の付け根にタカラダニらしき赤い虫が付着していました。
今回もクモバチの巣まで追跡できませんでした。
薄暗い潅木の茂みの中を這いつくばるように接写しながら蜂のスピードに付いていくのは至難の業でした。
蜂を警戒させないよう望遠で狙うべきだったかもしれない。
同定してもらうため、蜂を採集して持ち帰りました。
残念ながら今回もクモは落ち葉に紛れて見失ってしまいました。
落ち葉の下の既存坑に運び込んで素早く産卵したのだろうか。
蜂類情報交換BBSにて問い合わせたところ、蜂はクロクモバチ属の一種と教えて頂きました。
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貯食
木の葉を舐めるクロスジノメイガ(蛾)
里山で蛾が木の葉に止まり、伸ばした口吻で葉の表面をペロペロ舐めていました。
コケガ亜科で鱗粉の擦れた個体かなと当たりをつけて調べても分からず、虫我像掲示板にて問い合わせたところ、正解はツトガ科のクロスジノメイガ(Tyspanodes striatus striatus)と教えていただきました。
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食事
ヨツボシカメムシ
ヨツボシカメムシ(Homalogonia obtusa)と教えて頂きました。
イネ科雑草の茎に止まっていました。
登り切ったら飛び立つかな?と期待して接写してみたものの、思い通りには動いてくれません。
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セミ・カメムシ・サシガメ(半翅目)
室内に集結したキイロスズメバチ
2008年8月上旬
室内に迷い込んだキイロスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)がなぜか天井下に何匹も集結していました。
近くで駆除されたコロニーが避難してきたのだろうか。
本種は発達期に手狭になった巣から引越すことが知られているので、その偵察隊だろうか。※
それとも単に外回りのワーカーが暑くてサボってるのかな?
※【追記】
『スズメバチの科学』p26によると、
引っ越しが見られる7月から8月になると、その候補地を探索する働き蜂たちが家の周りを盛んに飛んだり、あるいは中に入ってきたりすることが目立つようになる。
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ハチ・アリ(膜翅目)
2010/12/26
フタモンアシナガバチ♂の群飛
2010年10月下旬
秋も深まりアシナガバチも恋の季節です。
物置小屋の軒下付近を蜂が何匹も飛び回っていて、ちょっとした蚊柱のようです。
まさに「蜂の巣を突いたような騒ぎ」ですが、近くにフタモンアシナガバチ(Polistes chinensis antennalis)の巣があるのだろうか。
どうやら集団お見合いのように♂が新女王を待ち構えて交尾しようとしているようです。
しかし目に付いた個体は♂ばかりでした。
近くに並ぶ石柱に止まった♂は日溜まりで休む間もなく慌しく飛び立ちます。
石柱に止まった♂の行動を注意深く観察すると、別なハチの飛来に反応して迎撃しています。
スロー再生すると(1/5倍速)、触角の先がカールしていたので♂同士と判明しました。
スクランブル発進で石柱に衝突するほどの慌てっぷりです。
新女王との求愛交尾に適した縄張りを防衛する行動なのだろうか。
それとも飛んでくるハチは全て♀とみなして交尾のため素早く飛びかかるのだろうか。
残念ながら交尾中のペアは見当たりませんでした。
とりあえず軒下で群飛する蜂を一網打尽に採集して性別を確認したかったのですが、生憎この日は捕虫網を持参してませんでした。
気温測定を忘れた…。
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配偶行動,
飛翔
スジグロシロチョウ♀の産卵
2010年6月下旬
スジグロシロチョウ♀(Pieris melete)が食草のアブラナ科植物(種名不詳)の回りを飛び回り、葉に止まっては腹部を曲げて葉裏に産卵していました。
一個ずつ産み付けるのか、産卵シーンをじっくり撮りたくても忙しなく飛んで移動してしまいます。
♀が飛び去った後に葉をめくってみると、一粒の卵を発見。
採集・飼育しようか迷ったのですが、忙しくてとても世話する余力がないので諦めました。
【追記】
あまり深く考えずにモンシロチョウと思い込んでいたのですが、YouTubeのコメント欄にて永盛拓行さんより「卵の形状からスジグロシロチョウではないか」とご教示頂きましたので訂正します。
ちなみに撮影地は渓流の脇で、明らかに山地でした。
モンシロチョウの卵はきれいな砲弾形であるのに対してスジグロシロチョウの卵は先端が急に細くなるそうです。(参考サイト)
『謎とき昆虫ノート』第4章:いつでもチョウを! p92 より
モンシロチョウではアブラナ科植物に含まれている特有の成分(シニグリン)をたしかめて産卵することが分かっている。
関連記事(同所で11年後に撮影)▶ 食草の葉表に次々と産卵するスジグロシロチョウ夏型♀
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チョウ・ガ(鱗翅目),
産卵
オオノコメエダシャク(蛾)幼虫
林道横の低潅木(樹種不明)で綺麗なオオノコメエダシャク(Acrodontis fumosa)の幼虫が枝の下面に止まっていました。
近くにもう一匹発見。
おそろしく派手な模様は警戒色なのだろうか。
いかにも尺取虫らしく、 Ωを上下逆にした形状で枝下にぶら下がっています。
口から吐いた絹糸で枝に固定されています。
採寸代わりに左手人差し指を写し込む。
近くの葉が揺れただけで、頭部を左右に激しく振って威嚇しました。
しかし幼虫の体に指で触れてもそれ以上反応しませんでした(擬死?)。
数日後も同じ場所でじっとしていたので(映像なし)、脱皮前の眠なのだろうか。
今年は忙しくて飼育する余力が無いので、採集せず帰りました。
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チョウ・ガ(鱗翅目)
ミカドジガバチ?の交尾
2010年6月下旬
林縁でジガバチが交尾を始めました。
クリの葉に止まって腹部を互いに絡みつかせていました。
マウントした♂は背後から♀の首筋を噛んでいるようです。
交尾器が連結すると、♀の長い腹部はS字状に湾曲しています。
高所に止まっているので葉や枝の死角になってしまい、もどかしい。
腕を精一杯伸ばし、バリアングル液晶画面を見ながら苦しい体勢で撮影を続けました。
初めは低潅木に止まって交尾を始めたのですが、接写しようと無粋に近づいたらマウントしたまま飛んで移動してしまったのです。
山地で撮ったのでヤマジガバチかなと思ったのですが、蜂屋の「ヒゲおやじの投稿掲示板」で問い合わせてみると、必ずしもそうとは言えないそうです。
ミカドジガバチかもしれないと教えて頂きました。
【追記】
北隆館『原色昆虫大図鑑III』より
ミカドジガバチ
Ammophila aemulans
(注:近年はHoplammophila aemulansに変更?)
♀は体長26mm内外。体は黒色。腹部第1背板両側および後縁、第2腹背板、後脚腿節基部は赤色、中胸側板上に銀白色の顕著な毛斑がある。点刻は不規則で粗布し、中胸背板中央部後方には斜足する皺を、前伸腹節基部の三角状部には斜足皺を多数に有する。頭楯前縁は幅広く載断され、両側は小突起となる。腹部第2節は比較的に短大。♂では腹部第3、4両節も赤色部。顔面下半分および頭楯上には黄銀色毛を密生し、頭楯は下方に向かって三角形状に突出し、その先端は鋭く尖る。本州、九州、対馬から知られ、また朝鮮およびウッスリーにも産する。樹上の空洞などに小石や木片を運んで営巣する点が全く他のジガバチと違う。幼虫用の食物としてウスキシャチホコ、クワゴモドキシャチホコ、を狩ることが知られている。
【追記2】
岩田久二雄『自然観察者の手記(3)』を読むと、第五部に「坑掘りを忘れたミカドジガバチ」と題した章がありました。
従来の砂掘りジガバチはすべて前跗節に長い丈夫な熊手状の剛毛を備えているのだが、ミカドの前跗節では形式ばかりの剛毛しか見られない。小石運びや泥壁づくりには熊手は不必要だからである。(p39より引用)
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ハチ・アリ(膜翅目),
配偶行動
板壁の節穴から出入りするジガバチモドキの一種
2010年6月中旬
物置小屋の板壁に小さな節穴が開いています。
黒い蜂が出入りしていたので、しばらく監視してみました。
穴から触角だけ動いて見えるも、なかなか外に出て来ません。ようやく穴から出した顔は銀色でした(1:50, 2:50)。
かなり神経質に辺りを警戒した挙句、ようやく出巣しました(3:25)。
蜂はホバリングしつつ他の節穴を調べて回るが、結局元の節穴に戻りました(3:34)。
横からのアングルで帰巣シーンを接写できました。
節穴の中は意外と広いようで、接写しても蜂の姿は見えません。
蜂が留守の間に、二匹のアリ(種名不詳)が何か黒い粒を咥えて節穴から出てきました(映像なし)。
その後も働きアリが節穴に出入りしているのを目撃。
アリの略奪行為(空き巣)だろうか。
それとも本来ここは樹上性アリの巣で、既存坑に営巣する(借坑性)蜂が物色していただけなのだろうか。
また、蜂が在巣のときにアリが節穴に迷い込むと、中の蜂が追い払ったのも見ています。
この蜂は初めて見ました。
採集できませんでしたが、蜂類情報交換BBSにて動画から切り出した写真を投稿してみると、ジガバチモドキ属の一種と教えて頂きました。
クモを狩る蜂の仲間だそうです。
節穴をノギスで採寸すると、直径2㎜。
※ 複眼の内側にU字型のへこみがあればジガバチモドキ類で、ジガバチ類と区別できる。(『狩蜂生態図鑑』p122より)
【追記】
ジガバチモドキの生活史に関する素晴らしい動画を見つけました。
『ジガバチモドキの観察』@科学映像館サイト
1962年?の古い映像ですが、緻密な観察記録であまりにも完成度が高く、とても感銘を受けました。
22分間という長さも忘れて見入ってしまいました。
皆さんも是非ご覧ください。
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ハチ・アリ(膜翅目)
交尾嚢を付けたウスバアゲハ♀
2010年6月中旬
草むらにウスバシロチョウ(ウスバアゲハ;Parnassius citrinarius)♀が止まっていました。
下腹部に交尾嚢(sphragis;交尾板、交尾付属物)が不着しているので、交尾済みの個体ということになります。
交尾に成功した♂が♀に粘液で作った貞操帯を付けて次の♂(ライバル)と物理的に交尾できないようにしているのです。
一時捕獲して交尾嚢をしっかりお見せしようと思ったのですが、殺気を感じたのか逃げられてしまいました。
【追記】
上村佳孝『昆虫の交尾は、味わい深い…。 (岩波科学ライブラリー)』によれば、
チョウやガの♂の交尾器では「バルバ」と呼ばれる把握器が発達していて、交尾器自体が翅を広げたチョウのように見える。このバルバで、♀の交尾器を左右からギュッと把握する。ウスバシロチョウのあの見事な交尾栓も、バルバを鋳型にして♂の精液が固まり、ちょうど鯛焼きのごとく形成されるようだ。 (p23より引用)いつか交尾の一部始終と交尾栓の形成を観察・撮影してみたいものです。
【追記2】
渡辺守『チョウの生態「学」始末』という名著によると、交尾嚢の浮気防止効果は100%ではないそうです。
ウスバシロチョウ類では、交尾後、♀の腹部末端に交尾孔を隠すように交尾栓が♂の分泌物によって構成され、♀が再交尾を受け入れようとしても受け入れられないようにする物理的妨害の役割をもっていると考えられていた。しかし近年の研究により、ジャコウアゲハの場合、再交尾相手となった♂は、形成されている交尾栓の隙間から交尾嚢へとペニスを挿入して交尾を成功させていることがわかった。したがって、単婚的と信じられていた種であっても、時と場合によって、再交尾している可能性がある。(第5.5章より引用)
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配偶行動
芋虫を捕食するコハナグモ
2010年6月中旬
林道を歩いていたら、長い糸で宙吊りになったままコハナグモ(Diaea subdola)が芋虫(尺取虫?)を食べていました。
面白い被写体なのですが、風で揺れてピントがなかなか合いません。
格闘中に樹上から転げ落ちたのでしょうか。
長い糸を吐いて枝からぶら下がっている幼虫を時々見かけるので、上からその糸を伝ってクモが降りてきて獲物を捕らえたのだとしたら面白いなー。
クモの糸はあの細さと軽さで自重の何倍もの荷重に耐えられる優れた素材です。
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ニホンカモシカとの対峙
2010年6月下旬
細い山道を静かに登っていたら、上から激しい鼻息とドドドドドと地響きのような足音が近づいて来ました。
もしや熊かと思い、腰に携帯している護身用(クマ対策)の唐辛子スプレーに手を伸ばしかけたらニホンカモシカ(Capricornis crispus)と判明。
向こうも気づいて立ち止まりました。
頻りにこちらの匂いを嗅いで警戒しています。
緊張のにらみ合いの末、くるりと向きを換えると鋭い鼻息とともに横の茂みに走り去りました。
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獲物を梱包するマネキグモ(蜘蛛)
2010年6月下旬
若い杉の木立の横に張られた条網(ちょうど目線の高さ)で細長い体つきのクモが獲物をラッピングしていました。
馴染みのあるオナガグモにしては第一脚が太く、初めて見るクモです。
獲物は既に糸で簀巻きにされていて正体不明。
先に捕まえた獲物の小さな包みを触肢で抱えながら、第4脚で交互に糸を引き出しています。
太い第一脚で上下の糸に掴まっています。残る第2、3脚で獲物を保持し、回しながら梱包していきます。
ラッピングが済むと一個にまとめた包みを咥え、杉の葉下の隠れ家に運びました。
このとき頭に載せて運ぶのが本種の特徴らしいです。
条網に梳いた糸が見えます。
粘着糸が縮れたものかな?
撮影後にクモを一時捕獲して調べてみると、マネキグモ♀(Miagrammopes orientalis)亜成体と判明(体長8㎜)。
次回は名前の由来となった手招き動作を見てみたいものです。
【参考図書】
『観察の本7:クモたちの狩り(下)地中や水中のクモ』p6〜13「マネキグモの狩り」
ニホンカワトンボの情事
2010年6月下旬
渓流でニホンカワトンボ(Mnais costalis)の交尾を初めて観察しました。
縄張りを守っていた♂を撮っていたら♀が通りかかりました。
すかさず飛び立った♂が把握器で♀の首根っこを捕まえ、岸の葉上にエスコート。
そのまま♀が腹部を曲げて交尾器を結合しました。(移精)
♀は翅を立てたまま。
一方、♂はときどき翅を広げます。
しばらくすると♂がハート型の連結を解いて少しだけ飛んで移動し、♀と向き合いました。
翅をときどき開閉しています(求愛ディスプレイ?)。
♀は静止したまま余韻に浸っている?...と油断していたらペアが別れて飛び去るシーンを撮り損ねてしまいました。
最後に一瞬だけ画面を横切ったのが♀かもしれません。
ニホンカワトンボ♂は♀の産卵まで付き添って交尾後ガード(尾つながりによる♀の警護)を行わないようで、少し驚きました。
なんとも淡白な関係です。
♂は渓流の枝に止まり、翅を開閉しつつ縄張り防衛の任務に戻りました。
本種♂は非常に興味深い繁殖戦略を示すそうです。
今回の映像に登場する♂は翅が橙色型の一匹だけですが、このタイプは縄張り争いで強く、ご覧のように交尾相手を得ることができます。
集団中には翅が♀と同じく透明型の♂(喧嘩には弱い優男)も居て、彼らはスニーカー(間男)戦略で♀を得ると、それまでに交尾したライバル♂の精子を掻き出してから交尾に及ぶらしい(精子競争)。
彼らの熾烈なラブゲームの様子をいつか動画に撮ってみたいものです。
【追記】
- ヒガシカワトンボ(ニホンカワトンボの旧名)の交尾で♂は把握器で♀の頭部をつかみ、♀は生殖門を♂の第2生殖器にあてている。この姿勢で交尾に先立って、ほかの♂の精子の掻き出しが行われる。
- カワトンボの交尾は50〜150秒であるが、はじめから80%くらいの時間は精子の掻き出しに費やされる(注意深く観察すると♂がペニスを動かしているのが見える)。
『日本動物大百科8昆虫Ⅰ』p70-71より
【追記2】
中公新書の浅間茂『カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 』によると、
(ニホンカワトンボの)橙色の翅を持った♂は縄張りを持ち、他の♂が侵入するとすぐに追い払う。この♂は胴体の紫外線反射が強い。良い場所に縄張りを持っている♂ほど紫外線反射が強い。無色の翅を持つ♂は縄張り争いの留守を狙い、橙色の翅を持つ♂の縄張り内で産卵している♀を横取りして交尾する。この♂の紫外線反射は弱い。♀のふりをして交尾の機会を待つ♂といえる。♀の紫外線反射はほとんど見られない。縄張り行動は褐色の翅と♂の体の紫外線反射が関わっている。 (p41より引用)
この本はとても面白く、私も紫外線で色々な生物の生態動画を撮ってみたくなりました。
マルボシヒラタヤドリバエの交尾後ガード
2010年6月下旬
側面しか撮れず残念。
一寸のハエにも五分の大和魂BBSにて問い合わせてみると、写真鑑定で寄生バエのマルボシヒラタヤドリバエ(Gymnosoma rotundatum)と教えていただきました。
♀の背中に♂がずっとマウントしているだけで、交尾器は結合していません。
このまま飛んで逃げたので、おそらく♂が交尾後ガードしているものと思われます。
本種の♀はシラホシカメムシ類に産卵し、孵化した幼虫はこれを捕食寄生するそうです。
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配偶行動
ヒメベッコウの巣から羽化したホシツリアブとヤドリクモバチ
2010年6月下旬
ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の繭#8に寄生していたツリアブが遂に羽化しました。
室温26℃。
前回の反省を生かし、足場として丸めたティッシュを予め容器内に入れておきました。
翅が充分に伸展して徘徊行動も動画に記録できたら、同定に必要な翅が破損する前に標本にしました。
いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂BBS」で写真鑑定してもらうと、これもホシツリアブ(Anthrax distigma)と教えて頂きました。
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ホシツリアブ蛹の蠕動
2010年6月下旬
ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の育房から採集した謎の前蛹#8を飼育していたら、いつの間にか蛹になっていました。
この個体は採集時に繭を破ってしまったので剥き出しの状態で飼育しているのですが、怪我の功名で、変態の過程がよく分かります。
頭頂部に鋭い突起をもち、明らかにツリアブの仲間と分かります。
次第に黒化してきました。
蛹には剛毛が生えています。
様々な狩り蜂に寄生する天敵で、後にホシツリアブ(Anthrax distigma)と判明しました。
(つづく)
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ホシツリアブ前蛹の蠕動
2010年5月下旬
ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の泥巣から採集した6個の繭のうち、#8は採集時に不注意で繭が破けてしまいました。
剥き出しになった前蛹は、以前に飼育観察したヒメクモバチの前蛹とは見るからに違います。
この時点で寄生されていることを疑いました。
案の定、飼育を続けるとホシツリアブ(Anthrax distigma)が羽化しました。
(つづく)
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発生
ホシツリアブの羽化と蛹便排泄
2010年6月下旬
翌日、ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の繭から脱出した後もツリアブの蛹は激しく蠕動を繰り返します。
自然状態なら、寄主が作った泥巣の育房を必死で壊して脱出口を空けているところです。
予感(虫の知らせ)がしたので、それまでより大きな密閉容器に蛹を移しました。
頭頂部に生えた6本の鋭い突起にぶつかる手ごたえが全く無いので、羽化しても大丈夫と判断したのだろう。
頭部と翅原基が前日より黒くなったと思ったら、少し目を離した隙に成虫が羽化してしまいました。
羽化の瞬間が撮れずに残念。
成虫はタッパー容器の壁に掴まって翅が伸展するのを待っています。
完全に伸び切ると体内で余った羽化液(蛹便)を排泄しました(@2:25)。
油断すると壁からすぐに滑り落ちてしまいます。
暴れているうちに自分が排泄した蛹便で翅が汚れてしまいます。
容器内に足場として丸めたティッシュを入れてやりました。
やがて活発に歩き回ったり軽く飛ぶようになりました。
羽化当日は翅の黒紋が薄いので、成熟するまで数日間容器内で飼育していたら翅先が擦り切れてしまいました。
一寸のハエにも五分の大和魂BBSにて写真鑑定してもらうと、ホシツリアブ(Anthrax distigma)とご教示頂きました。
『ファーブル昆虫記』(「ツリアブ幼虫の死のキス」の章)で読んだ通りの劇的な脱出法を目の当たりにして感動しました。
(つづく)
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排泄
ホシツリアブ蛹の蠕動・脱出
里山の参道に佇むお地蔵さんの背中にヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の泥巣を見つけました。
羽化孔が一つ開いているのはおそらく昨年のもので、自分が生まれた泥巣の隣に育房を増設したのではないかと想像しています。
5月中旬に育房を壊すと、中に蛹が透けて見える繭もありました。
育房内に貯食物は殆ど残っておらず、クモの固い大顎だけ見つかりました。
採集した6個の繭をピルケースで個別に飼育開始。
繭を紡いでから前蛹の段階で休眠越冬し、春になってから蛹化したのでしょう。
6月上旬、無事にヒメクモバチ♂が一匹羽化しました。
しかし残りの繭は寄生されていました。
2010年6月下旬
この繭#1内で蛹が激しく蠕動しています。
破けた穴からツリアブ類の蛹に特有の鋭い突起が覗いて見えます。
耳を澄ますと、この頭部に生えた刺で繭を破く音が聞こえます。
本来、ヒメクモバチの繭は泥巣の狭い育房内に収まっているので繭は固定されているはずで、脱出はもっと容易なのでしょう。
寄主が繭を紡ぐのを待ってからツリアブの幼虫が一気に食べ尽くしたのです。
翌日ホシツリアブ(Anthrax distigma)が羽化してきます。
(つづく)
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キタテハが落ちた熟柿を集団吸汁
2010年10月下旬
路上に落ちた熟柿にキタテハ(Polygonia c-aureum)秋型が計3頭集まって果汁を飲んでいました。
この日は常連のスズメバチの姿はありませんでした。
翅を開閉しながら口吻を伸ばし、甘い汁を吸っています。
翅裏には白いコンマ模様があります。
前脚が退化して短くなっているのがタテハチョウ科の特徴。
胴体に密生した毛が暖かそうです。
鳥に突つかれたのか、翅がボロボロに破損している個体もいました。
横を走る車の風で飛ばされないよう必死にしがみ付いて耐える様子がなんとも健気です。
▼関連記事(9年後に撮影)
熟柿の果汁を吸いながら争い排尿するキタテハの群れ
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食事
ヤマナメクジの徘徊・脱糞(20倍速動画)
2010年7月上旬 気温25℃
森の中にある祠の北側の板壁でナメクジを発見。
ヤマナメクジ(Incilaria fruhstorferi)でしょうか。※
究極のスローライフを堪能するため、計40分の動画を20倍速の早回しでお届けします。
大量の粘液を分泌しながら前進し、這い回った跡が梵字みたいです。
頭部を左右に振り、板壁表面のコケを歯舌でこそげるように摂食しているのかもしれません。
途中で脇腹(頭部の直下)にある排泄口から脱糞するのでご注目ください。
移動するにつれ、尾端に糞塊が付着しました。
徘徊中の働きアリが体に触れるとナメクジは触角を引っ込めました。
撮影中にクロスズメバチの一種が軒下を探索飛行するも、ナメクジを狩ることはありませんでした。
※【追記】
『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』p232によると、
「地域及び成長段階で、体色に変化が見られる。全国のヤマナメクジの種類が同じなのか違うのか、まだわかっていない。」
ヤマナメクジの接写
2010年7月上旬
板壁を這い回るヤマナメクジ(Incilaria fruhstorferi)の尾端に黒いものがずっと付いているので、ハエやアブが止まって吸血しているのかと思いました。
しかし良く見ると自ら排泄した糞塊でした。
別撮りで早回し用に長時間撮影した動画を後で見直したら、右脇腹にある排泄孔から脱糞していました。
移動とともに糞が尾端に付着したのです。
ゆっくりと伸縮する頭部触角を接写してみます。
最後に採寸代わりに右手人差し指を並べて写し込む。
それほど大きな個体ではないですね。
たぶんヤマナメクジだと思うのですけど、もし違ってたらご指摘願います。
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ヒメジョオンで吸蜜するジガバチ
2010年7月上旬
林縁に咲いたヒメジョオンでジガバチの一種が花蜜を摂取していました。
数日前にここでミカドジガバチ?の交尾を観察したばかりなので、もしかして同じ個体なのかなと想像したものの、まさかねー。
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杉林の野ネズミ
2010年7月上旬
里山の杉林を歩いていたら、何か白っぽい小動物が杉の大木の根元に素早く隠れた気がしました。
カメラを構えたまま動かざること山の如しで息を潜めて5分ほど待つと、野ネズミがひょっこり登場しました。
同定用に高解像度の静止画(+ストロボ)を撮るべきか迷いましたが、今回はじっと我慢。
横の林道を車が通り過ぎると、ようやく安心したように走り去りました。
もしかしてこの樹洞に野ネズミの巣があるのだろうか。
アカネズミかヒメネズミだと思うのですが、私にはよく分かりません。
アブラムシを飼うムネアカオオアリ
2010年7月上旬
道端に生い茂ったススキの茎にアブラムシ(種名不詳)が吸汁していました。
その甘露を目当てにムネアカオオアリ(Camponotus obscuripes)も集まっていました。
未だアブラムシが小さくて、蟻が甘露を舐めているところは観察できませんでした。
働きアリ同士が口移しで栄養交換らしき行動を示しましたが、残念ながらアングルがいまいち。
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