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2024/02/16

授乳期の幼獣4頭を連れて夜の林内を遠足するニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma) が巣外で幼獣4頭と過ごしています。
ある一夜の様子をまとめました。
私の見る限り、ヘルパー♂は子育てに関与せず、母親♀独りで幼獣4頭の世話をしています。 
(ヘルパー♂の個体識別がしっかりできてないかもしれない、という不安が私には常につきまといます。)

シーン1:6/10・午後18:56・気温23℃・日の入り時刻は午後19:04。 
日没直前の夕方から♀が巣外活動を始めました。 
2つの巣口LRの中間地点で佇んでいます。 
身震いしてから手前の巣穴Lに入りました。 


シーン2:6/10・午後18:56(@0:18〜) 
別アングルで設置したトレイルカメラが起動したときには、なぜか暗視モードではなく自然光下での撮影になっていました。 
ほぼ真っ暗で何も見えませんが、強引に明るく加工すると、♀が巣穴Lに出入りしていました。 
巣口Lで周囲を警戒しています。 


シーン3:6/10・午後19:21・気温23℃(@0:34〜) 
♀が1頭の幼獣を巣L外のアクセストレンチに連れ出していました。 
自分で毛繕いしてから、前足で幼獣を引き寄せ、尻の辺りを舐めてやります。 
続けてもう2頭の幼獣が続々と自力で巣外に這い出てきました。 
♀が自分の体を掻くために仰向けになると、近くにいた幼獣2頭が乳首に吸い付こうと集まってきます。 


シーン4:6/10・午後19:26・気温23℃(@1:34〜) 
計4頭の幼獣が覚束ない足取りで巣外をうろついています。 
そのうち1頭の上に♀が軽く座ったのは、アロマーキング(臭腺による匂い付け)の行動でしょうか?(@1:59〜) 
ところが、別個体の幼獣が♀の股の間をくぐったときには、アロマーキングしませんでした。 


シーン5:6/10・午後19:25(@2:34〜) 
別アングルの広角映像に切り替えます。 
5倍速の早回し映像で見ると、♀は林床で餌を探しながら、幼獣を引き連れて少しずつ右奥の林縁に移動していることが分かります。 
幼獣たちを営巣地(セット)周辺の環境に少しずつ慣らしているようです。 
幼獣3頭は♀について歩くのですけど、残る1頭の幼獣が巣口Lに取り残されたままです。 
ようやく自力で♀の元へ向かいました。 


シーン6:6/10・午後19:25(@3:22〜) 
もしかすると♀は幼獣4頭を引き連れてそのまま別の巣穴へ引っ越しするのではないか?と思ったのですが、しばらくするとアナグマ母子の群れはセットに戻ってきました。 
♀は4頭の幼獣を引率して巣口Lに帰ろうとしています。 


シーン7:6/10・午後19:33・気温27℃(@3:22〜) 
別アングルの監視映像に切り替えます。 
幼獣4頭が互いにもつれ合うように遊んでいる間に、♀が後ろ向きで入巣Lしました。 
直後に巣内から幼獣を呼ぶ鳴き声を発しました。(ジェジェジェビーム♪@4:39〜) 
それを聞いたからと言って、幼獣たちはおとなしく従って自発的に帰巣する訳ではありませんでした。 


シーン8:6/10・午後19:35・(@4:46〜) 
再び巣外に出てきた♀が1頭の幼獣を捕まえて首筋を咥えると、引きずるようにアクセストレンチを後退し、強引に巣穴Lへ連れ戻しました。 
この行動は初見です。 
幼獣がもっと小さかった頃は、幼獣の首筋を咥えた♀が頭から入巣していました。 

遊び足りない幼獣3頭はまだ広場に残ったままです。 


シーン9:6/10・午後19:36・(@5:05〜) 
♀が左の巣穴Lから顔を出すと、辺りを見渡してからすぐ巣内に引っ込みました。 
カメラ目線になった時に右目が左目よりも少し小さいので、♀と分かります。 


シーン10:6/10・午後19:36・(@5:20〜) 
♀が巣口Lから顔だけだして辺りを見渡し、迷子の幼獣がいないか確認しています。 
その後は出巣Lして左に向かいます。 


シーン11:6/10・午後19:42・(@5:51〜) 
採餌のため、♀単独で二次林内を右に向かいます。 


シーン12:6/10・午後21:56・気温20℃(@5:51〜) 
採食から戻ってきた♀が巣口Lで身震いしてから入巣L。 


シーン13:6/10・午後21:55(@6:20〜) 
同じ帰巣Lシーンを別アングルの広角ショットでご覧ください。 


シーン14:6/10・午後21:57(@6:33〜) 
巣口Lに出て来た2頭の幼獣に♀が対他毛繕いしてやっています。 
そのまま一緒に入巣Lしました。 


シーン15:6/10・午後22:59(@6:44〜) 
巣穴Lから伸びるアクセストレンチに座って自分の体を掻いている♀の方へ幼獣1頭が登って行きます。 
♀が出迎えて幼獣の体を舐めてやっている間に、 次の幼獣が巣口Lから登ってきました。 


シーン16:6/10・午後23:18・気温23℃(@7:08〜) 
単独で出巣Lした♀が身震いしてから、獣道を左へ向かいました。 
その様子を別アングルの広角ショットでもご覧ください。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


2024/02/14

巣外で4頭の幼獣に授乳するニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬 

もはやニホンアナグマMeles anakuma)の母親♀が幼獣の首筋を咥えて連れ出さなくても、幼獣は自力でなんとか歩いて巣外に出てこれるようになりました。 
これまで♀は幼獣を1頭ずつ巣外に連れ出して毛繕いしてやっていましたが、巣外で複数の幼獣にまとめて授乳するようになりました。 

気温の表示はほとんどが異常値です。 
暗視動画を連続撮影すると、トレイルカメラ自体が熱くなるせいです。


シーン1・6/10・午後19:22・(@0:00〜) 
手前の巣穴Lから出て外の地面に座った母親♀の乳首に幼獣2頭が吸い付いていましたが、じきに離れました。 
♀は授乳しながら自分の体を左の前足と後足で掻きました。 
もう1頭の幼獣が巣口Lから自力でアクセストレンチを登り、母親のもとになんとか辿り着こうとしています。 


シーン2・6/10・午後19:24・(@1:00〜) 
計4頭の幼獣が母親にまとわりついていました。 
♀が仰向けになって体を掻いたり毛繕いしたりすると、腹面に乳房が張っていることが分かります。 
仰向けになった♀の乳首に幼獣が吸い付く決定的瞬間が撮れました。(@1:40〜) 
アナグマ♀の授乳シーンは初見です。 
♀は自分の身だしなみを整えるのに忙しくて、結構手荒に幼獣を扱っています。 


シーン3・6/10・午後19:23・(@2:00〜) 
別アングルで設置した旧機種のトレイルカメラでも授乳シーンが同時に撮れていました。 


シーン4・6/10・午後21:58・(@3:00〜) 
約2時間半後、アクセストレンチに座って待つ♀の元に巣口Lから幼獣が登ってきます。 
♀が迎えに行って、幼獣の尻を舐めてやりました。(対他毛繕い) 
幼獣は♀の腹の下に潜り込み、母乳を飲んでいるようです。 

他の幼獣がキャンキャン♪鳴き騒ぐので、様子を見に♀は巣穴Lに戻りました。 
母親の乳首に吸い付いていた幼獣も、一緒に引きずられるように入巣L。 


シーン5・6/10・午後22:57・気温19℃(@3:47〜) 
約1時間後、♀が巣口Lで幼獣が出てくるのを待ち受けています。 
糞尿で汚れた尻の辺りを中心に丹念に舐めてやります。 
幼獣を仰向けにひっくり返して、腹面を舐めるのも忘れません。 


シーン6・6/10・午後23:00・(@4:47〜) 
♀がアクセストレンチに移動して自分の体で痒い部分を左後足で掻いています。 
幼獣が覚束ない足取りで巣口Lからアクセストレンチを登って来ると、そのまま♀の腹の下に潜り込み母乳を飲み始めました。 
続いて2頭目の幼獣が巣穴Lから外に出てきました。 


シーン7・6/10・午後23:03・(@5:47〜) 
カメラの起動が遅れ、母子の合流シーンを撮り損ねてしまいました。 
♀が幼獣を跨いだ直後に軽く座って尻を幼獣に擦り付けました。(アロマーキング@5:50〜) 

その後♀は地面に座り込んで自分の体をボリボリと右後足で掻いています。 
近くをうろついていた幼獣が♀の乳首に吸い付きました。 


シーン8・6/10・午後23:02・(@6:47〜) 
別アングルで撮れた映像に切り替えます。 
巣穴Lの周囲に生えたマルバゴマキ灌木の茂みに隠れてアナグマ家族の姿がよく見えないので、5倍速の早回し映像でお届けします。 
暗視動画で見ると、母親♀の目の大きさが左右で少し違うことが分かります。(右目<左目) 

シーン9・6/11・午前1:54・(@6:59〜) 
日付が変わった6/11は、東北地方南部で梅雨入りが宣言された日です。 
撮れた映像では雨は降っていませんでした。

アクセストレンチに座り込んだ♀の乳首に腹を空かせた3頭の幼獣が殺到しています。 
仰向けで授乳しながら♀は幼獣に対他毛繕いしたり、自分の毛繕いをしたりしています。 

残る1頭の幼獣はどうしているのか、安否が少し心配になります。 


シーン10・6/11・午前1:53・(@7:59〜) 
別アングルで同時に撮れていた映像に切り替えます。 


 シーン11・6/11・午前1:55・(@8:59〜) 
新機種トレイルカメラの暗視映像に戻ります。 
♀と幼獣3頭が組んず解れつしながら、ひたすら授乳と対他毛繕いを続けています。 


シーン12・6/11・午前1:55・(@9:59〜) 
別アングルに設置した旧機種のトレイルカメラで同時に撮れていた映像に切り替えます。 
アナグマ母子の姿が周囲の灌木の茂みに隠れてよく見えないので、5倍速の早回し映像に加工しました。 


シーン13・6/11・午前1:57・(@10:11〜) 
新機種トレイルカメラの映像に戻りました。 
幼獣2頭が母親にまとわりついています。 

手前の巣口Lからもう1匹の幼獣がアクセストレンチを登ってきました。 
この幼獣は、いつの間にか左の死角から巣口Lに転がり落ちてしまったようです。 
それとも巣L内でずっと寝ていた幼獣個体がようやく目覚めて(空腹に耐えかねて)外に出てきたのかな?
(別アングルの映像を見ると謎が解けました。)


シーン14・6/11・午前1:57・(@11:11〜) 
別アングルで同時に撮れていた暗視映像に切り替えます。 
5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン15・6/11・午前1:58・(@11:23〜) 
アクセストレンチをよちよち登ってきた幼獣が兄弟姉妹の体を乗り越えようとしたら、滑ってコテンと横転してしまいました。(@11:38〜) 
幼獣の一挙手一投足がなんともかわいらしいですね。
転んだ幼獣個体も鳴き声ひとつ上げず、なんとか兄弟姉妹をかきわけて、母親の乳首に吸い付くことが出来ました。(@12:00〜) 
その体を♀が丹念に舐めてやっています。 


シーン16・6/11・午前1:57・(@12:23〜) 
別アングルで同時に撮れていた暗視映像に切り替えます。 
5倍速の早回し映像でお届けします。 

 幼獣1頭がアクセストレンチから巣口Lに転がり落ちた(滑り落ちた)ものの、自力でなんとか這い上がります。 


シーン17・6/11・午前1:59・(@12:35〜) 
♀は3頭の幼獣に同時に授乳しながら、対他毛繕いしてやっています。 


シーン18・6/11・午前1:59・(@13:35〜) 
別アングルで同時に撮れていた暗視映像に切り替えます。 
5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン19・6/11・午前2:00・(@13:47〜) 
トレイルカメラ新機種の映像に戻ります。 
幼獣3頭を巣外に放置したまま、母親は先にさっさと帰巣Lしてしまいました。(@14:35〜) 
残された幼獣が自力で入巣Lするまで見届けられなかったのが残念です。
幼獣がもう自力で歩けるほど成長したので、♀が幼獣を咥えて運ばなくなったことが分かります。 


シーン20・6/11・午前2:00・(@14:47〜) 
別アングルで同時に撮れていた暗視映像に切り替えます。 
5倍速の早回し映像でお届けします。 


シーン21・6/11・午後23:15・(@14:59〜) 
昼間は寝て、同じ日の晩遅くに再び授乳シーンが撮れていました。 
今度は右の巣穴Rの近くの地面で、♀が幼獣1頭に対して授乳および対他毛繕いをしています。 
カメラの電池が消耗して、断片的な映像しか撮れなくなりました。 


シーン22・6/12・午前0:57・(@15:07〜) 
日付が変わった深夜にも、巣穴Rの近くの地面で♀が幼獣1頭に対して授乳および対他毛繕いをしていました。 


シーン23・6/12・午前1:01・(@15:20〜) 
右の巣穴Rの入口付近で、♀が幼獣2頭に対して授乳および対他毛繕いをしています。 


シーン24・6/12・午後23:53:・(@15:34〜) 
明るい日中は巣内で寝て、同じ日の晩遅くに再び授乳シーンが撮れていました。 
幼獣3頭を引き連れて♀が巣穴Lの外に出てきました。 
♀はアクセストレンチに放尿マーキングした匂いを嗅いでから、その横の地面に座り込みました。 
アクセストレンチをゆっくり登ってきた幼獣が♀に追いつくと、舐めてやります。 
幼獣の1匹は♀の腹の下に潜り込んで乳首を吸おうとしています。 


シーン25・6/16・午後18:24・(@16:34〜)日の入り時刻は午後19:06。 
4日後、日没前なのに早くも母子全員が巣穴Rの外に出て来ました。 
幼獣4頭が同時に外出するのは初見です。 
実はそれまで同時に3頭の幼獣しか巣外で見かけなかったので、残る1頭は死んでしまったのではないかと心配していました。 
幼獣4頭の無事が確認できて一安心。 
ヘルパー♂の姿が見えませんが、母子勢揃いの微笑ましい光景でした。 

母親♀は近づいてきた順に幼獣の体を舐めてやります。 
♀は自らコテンと寝転び、横臥で自分の体を掻きました。 
そのまま仰向けになると、幼獣に授乳を始めました。 
一方、1頭の幼獣が巣口Rに取り残されたまま、アクセストレンチを登れないでいます。 
発育が少し遅れた個体なのでしょうか? 


シーン26・6/16・午後18:25・(@17:34〜) 
巣口Rに取り残されたままの幼獣個体がいます。 
巣口Rから伸びるアクセストレンチには多数の落枝や蔓が転がっていて、体の小さな幼獣にとってはかなり歩きにくそうです。 
歩行能力が比較的高い幼獣個体は、奥の灌木林へ探検に出かけます。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 

ニホンアナグマ♀の乳首の数をネット検索で調べても、いまいち正確な情報が得られませんでした。
アナグマ – おもしろ哺乳動物大百科 83 食肉目 イタチ科 というサイトによると、乳頭数は3対です。 
ただし、このまとめサイトでは、ニホンアナグマとヨーロッパアナグマを一緒くたに扱っています。

ヨーロッパアナグマ はオスメスともに3対の乳首があるが、メスのほうがより発達している。 (wikipediaより引用)


熊谷さとし『フィールドワーカーのための動物おもしろ基礎知識』という入門書のp205で乳頭式の定義を記してあったのですが、ニホンアナグマの乳頭式については記述がありませんでした。

ニホンアナグマ♀の乳頭が3対あるとすると、最大で6頭の幼獣を同時に授乳することができます。
私が観察しているアナグマ♀は4頭の幼獣を出産し、育てています。
成獣の個体識別も覚束ないのに幼獣の個体識別は難しすぎて私にはとても無理です。
もしかすると、この♀は幼獣を3頭+1頭と2グループに分けて別の時間帯に授乳しているような気がします。
4頭の幼獣を同時に授乳するのは肉体的な負担が大きいからでしょう。
幼獣1頭を巣外にしばらく放置した事件がきっかけで、授乳リズムが1頭だけずれたのかもしれません。
あるいは幼獣を性別によって育て分けているのだとしたら、より一層興味深いです。

熊谷さとし氏の著作では、ニホンアナグマのヘルパーは若い♀が務めると書いてあります。

 子別れの際、成長した子どもを全部追い出さず、1頭だけ残して翌年の子どもの世話をさせる、ということもある。
 キツネやオオカミ、イノシシ、ヨーロッパアナグマなど、多くの動物に見られる行動で、ヘルパー制度と呼ばれている。
 (中略)動物のヘルパーは、妊娠中の母親にエサを運んできたり、子どもの遊び相手をしたり、さらに♀のヘルパーは、母親に代わって弟や妹たちにお乳をやることもあるという。
 この制度は、母親の子育ての負担を軽減し、目配りが行き届くために、より子どもたちの安全が守られ、またヘルパー自身が親になったときの訓練にもなる、という素晴らしい制度なのだ。
 もっとも、この制度には経済力が優先する。(中略)「確実にエサが確保される」という食べものが豊かな場所でなければ、このような行動を観察することはできない。
 俺が観察している(ニホン)アナグマのファミリーは、毎年ではないけれど、この制度を導入している。 (熊谷さとし『フィールドワーカーのための動物おもしろ基礎知識』(2006)p204より引用)

手元にあるもう1冊の本、熊谷さとし『日本の野生動物 2―身近に体験! タヌキを調べよう』(2006)によると、
 アナグマもほんとうは、秋になるとタヌキのように「子別れ」をして、子どもは親からはなれるはずなのだが、母親は♀を1頭だけ手もとにのこし、翌年の子どもの世話をさせることがある。(中略)ヘルパーは子守ばかりでなく、妊娠中の母親に食べものを運ぶこともする。
ヘルパー制度は、母親の子そだてを楽にして、子どもの安全を守るほか、ヘルパーに子どもが生まれたときの子そだての訓練にもなる。(p25より引用)

私が観察しているニホンアナグマでは、ヘルパーが妊娠中の母親に食べものを運ぶ行動は一度も見られませんでした。(トレイルカメラが撮り漏らしたのかもしれません。)

もしも母親♀だけでなくヘルパー♀(1歳仔の娘)も幼獣に授乳できるとなると、私が撮った動画の解釈は大幅に再検討する必要があります。
しかし、妊娠・出産していないヘルパー♀の乳腺が発達して授乳が可能になることは生理的にあり得るのでしょうか?(調べてみると、動物でも想像妊娠はあるらしい。)
ニホンアナグマのヘルパーは若い♂(1歳仔の息子)であるというのが最近の研究結果らしいので、この点で熊谷さとし氏の古い?見解はひとまず忘れることにします。
混乱の原因は、若い時期のアナグマは体型に分かりやすい性差がないことにあります。
私も股間の陰茎を見て初めてヘルパーが♂だと分かりました。
逆に♂がヘルパーだとすると、「自分が子育てするときのための訓練になる」という説明はできなくなります。




【アフィリエイト】 



【追記】
鈴木欣司『アナグマ・ファミリーの1年』(2000年)によると、
アナグマの巣を出たばかりのときの子どもの数は、3頭が普通です。お乳の数は全部で6個ありますが、専用の乳を吸うのではないようです。(p19より引用)

私の観察するニホンアナグマ♀が4頭の幼獣を産んだのは、平均よりも多産の部類に入るようです。 

4頭とも無事に育ちましたし、生息環境に餌が豊富なことを示しています。


2024/02/09

ニホンアナグマ♀が未だ歩けない幼獣を夜の巣外に放置したのは躾のためかネグレクトか?【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬 ・6/6・午後22:18〜22:41

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma) の育児放棄という衝撃映像が撮れました。
トレイルカメラの電池が消耗しているために、細切れの映像になっています。 

母親♀が幼獣の首根っこ(というか今回は頭皮?)を咥えて、手前の巣穴Lから外へ引きずり出しました。 
いつものように巣口LRの中間地点に幼獣を下ろすと、その毛皮を念入りに舐め始めました(対他毛繕い)。 
小声でウキャキャキャキャ…♪という鳴き声が聞こえるのは、幼獣が発しているようです。 
ただし、画面に写っている幼獣の鳴き声とは限らず、巣内で待っている残りの幼獣3頭が鳴いている可能性もあります。 
※ 幼獣の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

次にトレイルカメラが起動したときには、なぜか母親♀の姿はなく、巣口Lから奥に伸びるアクセストレンチ上に幼獣が放置されていました。 
母親♀は一体どこに行ったのでしょうか?
野生動物の母親♀が育児放棄するとは驚きました。
巣外に放置された幼獣は未だ自力で歩けません。 
辺りをキョロキョロ見ているだけで、おとなしくじっとしています。 

このときの外気温は不明ですが、添い寝して温めてやらないと低体温症になるのではないか?と心配になります。 
夜の森でもしも肉食性のホンドテンやホンドギツネ、フクロウ※などに見つかったら、アナグマの捨て子は獲物として捕食されてしまうはずです。 
※ 近くのスギ防風林で昼間にフクロウの鳴き声を聞いています。@2024年3月上旬

育児放棄からの死亡も一種の子殺しと考えられますが、そんなことになったら、きわめて異例です。
アナグマ家族の食糧事情が急に悪化して母親の乳の出が悪くなり、口減らしのための子殺しが必要になったのか?などと良からぬことを考えてしまいます。

母親と一緒のときは甘えて鳴いていたのに、巣外に放置された幼獣は母親を呼ぶ声を全く発しなくなったのが意外です。 
下手に鳴いたら天敵の捕食者を呼び寄せてしまいますから、母親とはぐれて独りになっても鳴かないように本能でプログラムされているのかもしれません。
(ところが、わずか4日後に反例が出てきてしまいました。
その後も幼獣が腹這いのまま身動きする度にトレイルカメラのセンサーが反応して、短時間だけ録画してくれます。 

しばらくすると、幼獣は自力で這って向きを変えました(カメラに対して正面から横向きに)。(@1:05〜) 
覚束ない足取りで必死に匍匐前進しているようです。 
巣穴Lの方から嗅ぎ慣れた匂いがするはずなのに、幼獣は巣口Lには向かって行きませんでした。
ヘルパー♂が予め掘ったアクセストレンチと呼ばれる溝に沿って緩斜面を下れば入巣Lできるはずなのに、迷子の幼獣はアクセストレンチから横に逸れてしまいました。 

ようやく母親♀が巣穴Lの外に出て来たので安心しました。(@1:21〜) 
巣口Lで幼獣を見つけると、体を舐めてやります。 
幼獣は嬉しそうに鳴きました。 
♀の乳首にすぐ吸い付かなかったので、空腹ではなかったようです。

未だ歩けない幼獣を20分間も巣外に独り放置していた理由は何でしょう?
 幼獣4頭の子育てでてんてこ舞いの母親♀が何かのきっかけで巣穴に戻ったきり、巣外に出した幼獣1頭の存在をうっかり忘れてしまったのでしょうか? (過失)
育児経験の浅い若い♀なのかもしれませんが、根拠はありません。 
それとも、巣内で何か酷い悪さをしたやんちゃな幼獣に対してしつけやお仕置きのために(罰として)巣外にしばらく放置したのでしょうか? 
それなら、初めに幼獣に対して対他毛繕いしてやらない気がします。
幼獣の自立心を養うためなのかな?
我々ヒトが乳幼児に対してこんな子育てをすると、昔ならともかく今時はネグレクトの罪で通報され親が罰せられます。
しかし、アナグマの子育てにヒトの価値観で口出ししても仕方がありません。 
こういうときにヘルパー♂がどこで何をしているのか、気になります。

迷子になっていた幼獣を巣穴にすぐ連れ戻すかと思いきや、母親♀はその場で自分の体を掻いています。 
母子が身を寄せ合っています。 
母親♀の腹面に乳首が見えました。 
元気を取り戻した幼獣は、巣穴Lの方へ歩こうとしています。 
♀が立ち上がって身震いしたものの、すぐにまた幼獣の傍らに座りました。 

残念ながら記録された映像はここまでです。
母親が幼獣を巣穴Lに連れ戻すまで見届けられませんでした。
深夜(午後23:38)にカメラが起動したときには巣外にアナグマ母子の姿はなく、小雨が降っていました。(その映像は割愛) 


2024/02/07

白鳥の北帰行(冬の野鳥)

 

2023年3月下旬・午前9:10頃・晴れ 

雪解けが進む田園地帯で数日前まで採食していたコハクチョウの大群が忽然と居なくなっていました。 
田んぼの餌(落ち穂など)を食べ尽くして、餌場を変えたのでしょうか? 

刈田の上空から白鳥の鳴き声がするので見上げると、白鳥の群れが見事なV字編隊を組んで北に飛び去るところでした。 
群れの個体数を数えてみると、計20羽と大きな群れでした。 
ちょうど私の頭上を通り過ぎたので、飛び去る白鳥を見送るために動画を撮りながら振り返りました。 (白鳥が旋回した訳ではありません。) 
北へ向かって飛び去ったので、日本での越冬を無事に終えた白鳥がシベリアなど北の繁殖地へ帰るところなのかもしれません。 

飛びながら散発的に鳴き交わしています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
鳴き声を声紋解析すれば、オオハクチョウかコハクチョウか識別できるかな? 
渡りの際に2種の白鳥が混群の状態で編隊飛行することは無いと思われますが、どうやって確かめたら良いでしょうか?

2024/02/05

幼獣を巣外に連れ出して念入りに毛繕いしてやるニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】下の世話

 



2023年6月上旬

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が幼獣を巣の外に連れ出して対他毛繕いする様子をまとめました。 


シーン1:6/5・午後22:33・(@0:00〜) 
晩に♀が奥の巣口Rから1頭の幼獣を外に連れ出していました。 
母親♀が幼獣の肛門の辺りを重点的に舐めてやっています。 
幼獣の間は糞尿を垂れ流しなのでしょう。 
幼獣がキュンキュン♪(またはキャンキャン♪)と鳴く声がかすかに聞こえます。 
幼獣は自力では未だ歩けず、なんとか這い回ろうとするだけでした。 
母親♀が方向転換した際に、腹に乳首が見えました。

もっと長く撮りたかったのに、残念ながらトレイルカメラの電池が消耗していて、録画が途中で打ち切られてしまいました。 
この後も細切れの映像になります。 


シーン2:6/6・午後22:12・(@0:26〜) 
翌日も晩に母親♀が巣口LRの中間地点に幼獣を置いて、尻の辺りを重点的に汚れた毛皮を舐めてやっています。(対他毛繕い) 
幼獣を隣の巣穴へ運ぶ途中で休憩してるのかな? 

低音でグルルル…♪と鳴く声が聞こえました。(@0:36〜) 
これは母親♀が発している声だと思います。 
素人の耳には、繁殖期に聞いた♂の求愛声(ジェジェジェビーム)と似ている気がします。 

幼獣が母親の腹の下に正面から潜り込もうとしているのは、授乳目当てなのでしょう。 
なんとか四足で立っていた幼獣がコテンと横に転びました。(@0:48〜) 
母親♀は幼獣の首筋を咥えて運ぶと手前の巣口Lから伸びるアクセストレンチに置いて、幼獣の毛皮を念入りに舐めています。 
幼獣の奇妙な鳴き声(カエルみたい?)がときどき聞こえます。 


シーン3:6/8・午後18:53・(@1:20〜)日の入り時刻は午後19:03。 
2日後の日没前の夕方。
アナグマが手前の巣穴Lから外に出てきました。 
薄暮の撮影は赤外線の暗視モードではないため消費電力が少なくて、動画を長く撮れるのは助かります。 
アナグマは巣口Lの匂いを嗅ぎ回ってから、また巣穴Lに戻りました。 
しばらくすると、アクセストレンチを後退しながら幼獣1頭を咥えて外に引きずり出しました。 
この個体は♀ではなくヘルパー♂のような気もするのですけど、個体識別に自信がありません。 

巣口LRの中間地点で幼獣を地面に置くと、汚れた毛皮をていねいに舐めてやります。 
その合間に♀自身が痒い体を自分の足で掻きました。 
母親♀が前脚を使って結構手荒に幼獣を転がしたり向きを変えたりしながら、対他毛繕いを続けます。 
幼獣はほとんど為されるがままで、おとなしくしています。 
母親の腹の下に潜り込んで乳首を探したり、巣穴の方へ歩いて戻ろうとしたりするときがあります。 


シーン4:6/8・午後21:22・(@4:07〜) 
暗くなった晩に起動したときには、いつの間にか再び♀が幼獣を外に出していました。 
幼獣に対他毛繕いをする様子が4秒間だけ写っていました。 


シーン5:6/9・午後14:30・気温19℃(@4:11〜) 
翌日の真昼間に別アングルで設置してある新機種のトレイルカメラが起動しました。 
明るい昼間なのに、なぜか暗視モードで起動しました。

林縁の広場に座っている♀が幼獣を連れていました。 
覚束ない足取りで動き回る幼獣を♀は前足で倒して毛繕いしています。 
しまいには、幼獣の首根っこを咥えて連れ戻し、二次林の奥へ運んで行きました。 
幼獣を連れてどこか別の巣穴へ引っ越すのかと思いきや、途中で座って幼獣に対他毛繕いしています。 
フルカラーで撮れなかったのが残念です。 
夜だけでなく明るい昼間も♀は幼獣を外に連れ出して毛皮を舐めてやることが分かりました。

次にカメラが起動したときには、♀が幼獣を咥えて右の巣穴へ帰巣Rするところでした。 
本格的な引っ越しではなくて一安心。

今度は正常のフルカラー録画に戻っていました。 
新機種のトレイルカメラは風揺れなどの誤作動で無駄撮りすることは少なく、電池の持ちが良いものの、旧機種よりも撮り漏らしが多い印象です。 
トレードオフの関係にあるので、センサーの感度の閾値をどう設定するか、悩ましいところです。 

※ 幼獣の鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
以前、母親♀は頻繁に幼獣を運んで2つの巣穴L⇔巣穴Rを交互に引っ越しを繰り返していました。
次第に巣穴LRの中間地点に幼獣を下ろして過ごす時間が長くなりました。
別の巣穴へ引っ越すのが目的で幼獣を巣外に連れ出すのではなく、幼獣への毛繕いが目的であることがはっきりしてきました。
おそらく、いわゆる「下の世話」(排泄後のケア)なのでしょう。
幼獣は便意や尿意を催しても、未だ自力で巣外に出て排泄することができません。
幼獣を地上(巣外)の環境刺激に少しずつ慣らす目的もあるはずです。


2024/01/31

ヨモギの茂みに隠れて騒がしく兄弟喧嘩をしていたホンドタヌキの幼獣が巣穴に隠れた

 



2023年6月上旬・午後12:45頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の営巣地をトレイルカメラで監視しています。 
カメラの電池を交換するために森を抜けて休耕地へ向かっていると、林縁の原っぱでヨモギの茂みが一部だけ不規則に揺れていることに気づきました。 
風による振動にしては不自然です。 
クズの蔓もヨモギの群落に覆いかぶさるように伸びています。 
初めは鳥の鳴き声しか聞こえませんでしたが、耳を澄ますと、時々なんとも形容し難い奇妙な鳴き声や唸り声もかすかに聞こえてきました。 
※ 鳴き声が聞き取れるように動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

おそらく巣外に出てきたタヌキの幼獣が草むらに隠れて格闘遊び(兄弟喧嘩?)をしてはしゃいでいるのではないか?と想像しました。 

離れたところからしばらく長撮りしても、タヌキの幼獣はヨモギ群落の外に姿を現してくれませんでした。 
親の言いつけをしっかり守っているのか幼獣の生まれついた本能なのか知りませんが、明るい昼間は天敵(捕食者)に襲われる心配があるので、草むらに隠れて過ごすようです。 
例えば、ノスリなどの猛禽類が休耕地で獲物を狙っているかもしれません。 

関連記事(11日前の撮影)▶ 夕暮れの樹上で鳴く♪ノスリ(野鳥) 


別の用事を済ませてから20分後。 
ヨモギの茂みを揺らしていた生き物の正体を突き止めるために、動画を撮りながらゆっくり近づいてみました。 
(獣ではなく野鳥の可能性も考えられます。) 
ヒメジョオンの白い花が咲き乱れる休耕地の草むらには、獣道が何本も縦横に形成されていました。 
私が近づくと外で遊んでいたタヌキ幼獣は慌てて巣穴に逃げ込むだろうと予想したものの、雑草の草丈が高くて逃走シーンは見えませんでした。 

ヨモギの群落を回り込んでからタヌキの巣口aにズームインすると、穴の奥から2頭の幼獣が顔だけ出して、つぶらな瞳で私を不思議そうに見上げていました。 
巣口の手前に生えたクズの蔓が邪魔で、どうしても前ピンになってしまいます。 
私が横に少し動くと、ホンドタヌキの幼獣は警戒して巣穴の奥に逃げ込んでしまいました。
人懐っこく外に出て来られる方が困ってしまうので、ヒト(怪しい侵入者)を恐れてくれて一安心。
あれほど元気に騒いでいたのに、私と対峙している間、幼獣は鳴き声を全く発しませんでした。 
巣口でミドリキンバエ?が飛び回っています。 
親ダヌキの姿を全く見かけませんでしたが、採餌に出かけているのか、日中は巣穴の奥でぐっすり寝ているのでしょう。
近くにあるもう一つの巣穴bには近寄らず、写真を撮っただけで私はタヌキの営巣地から撤退しました。 




この後も無人カメラでの監視をしばらく続けたのですが、何も撮れなくなってしまいました。
私の干渉を嫌がってタヌキの家族が巣穴を放棄して出て行った訳ではありません。
初夏は植物の成長が旺盛で、原っぱにあるタヌキの巣穴が雑草ですっかり覆い隠されてしまったからです。
タヌキ成獣の体高よりも雑草の草丈の方が高くなりました。
風が吹く度に草木が揺れてカメラのセンサーが誤作動することが多く、無駄撮りばかりになります。
かと言って、営巣地の草刈りをする訳にはいきません。
あれこれ試行錯誤したのですけど、タヌキ営巣地の撮影は泣く泣く諦めました。
ドローンを飛ばして上空から空撮するか、高木に登って樹冠にトレイルカメラを設置するしかなさそうですが、高所からでは暗視カメラの赤外線が届かなくなりそうです。
長い空白期間の後、落葉した冬になってから再開します。
巣口b

2024/01/30

深夜の原っぱで遊ぶホンドタヌキの幼獣を親が1頭ずつ巣穴に連れ戻す【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬 

休耕地に営巣したホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の家族を自動センサーカメラで見張っています。 


シーン1:6/1・午後23:14・気温18℃・小雨(@0:00〜) 
小雨がぱらつく深夜に、親タヌキが1頭の幼獣aを口に咥えて原っぱを右に運び、奥の巣穴に運び入れました。 
手前に生い茂るヨモギの群落が邪魔ですけど、手前にある別の巣口で複数頭の幼獣が待っていて(冒頭の赤丸に注目)、ミャーミャー♪と猫のような鳴き声を発しました。 
親タヌキがすぐにまた巣穴から外に出てきて、原っぱで夜遊びしている幼獣たちの元へ向かいました。 
せっかく巣穴に連れ戻した幼獣aが、その間に巣口に出てきてしまっています。 
親が次の1頭bの首筋を咥えて奥の巣穴へ搬入します。 
原っぱに残された幼獣2頭c,dが相次いで駆け出し、自力で親ダヌキを追いかけて行きました。 
この映像を見る限り、少なくとも計4頭の幼獣が育っていることになります。 


シーン2:6/1・午後23:29・気温18℃・小雨(@1:04〜) 
約13分後、奥の巣口付近の原っぱで、1頭の幼獣が元気に飛び跳ねています。 
独りで深夜の原っぱを探索しているようです。 
別個体の幼獣が巣口に居残っている姿も草葉の陰からちらっと見えています。 


シーン3:6/1・午後23:30・小雨(@2:03〜) 
気温24℃と表示されているのは異常値(暗視動画の連続撮影によるカメラの放熱)です。
原っぱで独り遊んでいた幼獣を親タヌキが連れ戻しに来ました。 
首筋を咥えられた幼獣はおとなしく巣穴へと運ばれて行きます。 

ようやく幼獣全員を巣内で寝かしつけてから、親が独りで右へ立ち去りました。 
餌を探しに出かけたのでしょう。(探餌徘徊) 


※ タヌキ幼獣の鳴き声が聞き取れるように、動画の編集時に音声の一部を正規化して音量を強制的に上げています。 


2024/01/28

ニホンアナグマ幼獣の首筋を咥えて1頭ずつ巣穴の外へ連れ出す♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 




2023年6月上旬

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が幼獣を運んで、2つの巣穴の間で行ったり来たり引っ越しを繰り返す様子をまとめました。 


シーン1:6/1・午後21:24・(@0:00〜) 
ある晩に♀が身震いしてから奥の巣穴に入りました。 
やがて1頭の幼獣を口に咥えて巣穴Rから外に出て来ました。 
幼獣が育って体重が増したようで、手前の巣穴Lへ運ぶ途中で♀は何度も地面に置いて休んでいます。(R➔L) 
首筋を咥えられた幼獣は暴れたりしないで、おとなしく運ばれて行きます。 

カメラに正面を向いた際に、左右の目の大きさが違う(右目<左目)という特徴から、♀と見分けられます。 
見る角度によりますが、首筋に白斑があるのも、この♀の特徴です。 


シーン2:6/1・午後21:26・(@0:41〜) 
♀は空荷で奥の巣穴Rに引き返しました。 
次に出巣Rした際には、また別の幼獣を咥えていました。 
そのまま手前の巣穴Lへ運搬します。(R➔L) 


シーン3:6/1・午後21:29・(@1:10〜) 
♀が空荷で入巣Rすると、次の幼獣の首筋を咥えて出巣Rしました。 
3頭目の幼獣を連れて巣穴Lに引っ越し。(R➔L) 


シーン4:6/2・午前0:27・(@1:42〜) 
深夜に日付が変わりました。
小雨がぱらぱらと降っていても気にせずに、♀が幼獣の引っ越しをしたので驚きました。(雨天決行!) 
手前の巣穴Lから幼獣を引きずって外に出ると、重い幼獣を途中で地面に下ろして身震いしました。 
奥の巣穴Rには幼獣を咥えたまま後ろ向きで入ったようです。(L➔R) 
♀が空荷で出巣Rし、手前の巣穴Lに戻ったところで録画終了。 


シーン5:6/2・午前0:29・(@2:27〜) 
次にトレイルカメラが起動すると、小雨がぱらつく中を♀が幼獣を運搬中でした。(L➔R) 
空荷の♀が巣穴RからLへ戻る途中で身震いして、雨で濡れた毛皮の水気を切りました。 
しばらくすると、♀が手前の巣穴Lから後ろ向きで幼獣を外に引きずり出しました。 
かなり手荒に扱っても、幼獣は鳴き声一つ立てません。(L➔R) 

1分半の録画時間で2回連続の幼獣運搬が撮れたのは初めてかもしれません。 
引っ越しに慣れて一連の動きが無駄なくスムーズになったのでしょうか。 


シーン6:6/2・午前0:31・(@3:24〜) 
空荷で入巣Lした♀が次の幼獣の首筋を咥えてアクセストレンチを後ろ向きで外に出て来ました。 
重い幼獣を一旦地面に置いてから咥え直し、奥の巣穴Rへ運び入れました。(L➔R) 

♀は夜中に計4頭の幼獣を続けて運んだことになります(L➔R)。 


シーン7:6/5・午後22:39・(@4:10〜) 
3日後の晩に、また引っ越しシーンが撮れていました。 
♀が入巣R直後に幼獣を咥えて外に引きずり出しました。(R➔L?) 
カメラの電池が消耗していて、尻切れトンボで録画終了。 


シーン8:6/5・午後22:41・(@4:22〜) 
次にカメラが起動したときには、巣穴Rへ向かう♀の後ろ姿が写りました。 
巣口Rで待っていた幼獣を咥えて外に引きずり出したところで、録画終了。(R➔L?) 


シーン9:6/6・午前1:43:・(@4:22〜) 
日付が変わった未明。 
引っ越しの途中で地面に一旦下ろした幼獣の尻の辺りを♀が舐めてやっていました。 (対他毛繕い)
幼獣を運んで奥の巣穴に辿り着く前に録画終了。(L➔R) 


シーン10:6/6・午前1:44:・(@4:46〜) 
カメラの電池切れでわずか5秒間しか撮れなかったものの、幼獣を運んだ♀の入巣Rまでなんとか見届けることができました。(L➔R) 


シーン11:6/6・午後19:21・(@4:51〜) 
なぜか電池が復活しました。 
基本的にアナグマは昼間、巣内で休みます。

晩になると♀が幼獣を咥えたまま手前の巣穴Lに向かって後ろ向きに引きずっていました。(R➔L) 
最後は巣口Lで向きを変え、前から入巣Lしました。 
…と思いきや、♀が巣口Rの方を振り返りました。 
ケケケケ♪またはキュキュキュキュ♪のような騒がしい鳴き声がかすかに聞こえます。 
繁殖期に夜這いに来た♂が♀に求愛する鳴き声(ジェジェジェビーム♪)とは違います。 
どうやら巣口Rで待っている幼獣が鳴いているようです。 
幼獣同士で兄弟喧嘩しているのか、それとも母親を呼んでいるのか、どちらでしょう?
巣口Rで待っている幼獣の姿は見えないものの、巣口Rから飛び出ている枯草が中に引っ込みました。 

しばらくして出巣Lした♀は、身震いしてから入巣R。 
巣口Rで待っていた幼獣を咥えようとしたところで、録画終了。 


シーン12:6/6・午後19:23・(@5:37〜) 
♀が幼獣の首筋を咥えて手前の巣穴Lに運び入れました。(R➔L) 
このとき♀は頭から入巣Lしています。 


シーン13:6/6・午後19:24・(@5:47〜) 
次の幼獣を手前に引きずって運ぶ間にも、幼獣が鳴き叫ぶ声が聞こえます。(R➔L) 
まさに運ばれている幼獣が珍しく鳴いているのかもしれませんが、幼獣の口は動いていません。 
画面には写っていない別個体の幼獣が鳴いているのだろうと私は推測しています。 


シーン14:6/6・午後19:26・(@6:05〜) 
♀が身震いしてから奥の巣穴に戻ると、巣口Rに待機していた幼獣を咥えて外に連れ出しました。(R➔L?) 


シーン15:6/6・午後23:55・(@6:35〜) 
4時間半後の深夜に、再び♀が幼獣を運んで引っ越しました。(L➔R?) 
運搬中の♀が横向きになった際に、腹部に乳房がちらっと見えたような気がします。 


シーン16:6/7・午後19:23・(@6:40〜) 
翌日の晩に撮れた引っ越しシーンです。 
幼獣を運ぶ途中の♀が地面に座って痒い体を足で掻いていました。 
入巣Rする際に身震いしました。(L➔R) 


シーン17:6/8・午後14:50・気温25℃・(@6:59〜) 
別アングルに設置した新機種のトレイルカメラに珍しく引っ越し?シーンが撮れてしました。 
しかも明るい昼間の時間帯です。 
♀が入巣Rしてしばらくすると、同じ巣穴Rから後ろ向きで外に出て来ました。 
口には幼獣を咥えています。 
♀は幼獣を巣口Rに置いて、対他毛繕いを始めました。 
明るい自然光下で幼獣の姿を見たのは初めてかもしれません。 
親は茶色なのに、幼獣は白っぽい毛皮でした。 
幼獣でも顔には一丁前に白黒の縞模様がすでに描かれています。 

 ※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】 
幼獣の個体識別は難易度が高すぎて私にはとても無理ですが、連続して最大4回の引っ越しが観察されたので、♀が育てている幼獣の数は計4頭と考えています。
(トレイルカメラの撮り漏らしがあれば、もっと多くなります。)

隣接する2つの巣穴の間で幼獣を行ったり来たり移動させているだけですし、どうも「引っ越し」と呼ぶのは適切ではなさそうです。 
幼獣を連れた引っ越しの方向が日によって一定しないので(L⇔R)、♀の目的が分かりません。 
そもそも巣穴Lと巣穴Rは内部でつながっているのか、独立しているのか、知りたいところですが、今のところ確かめようがありません。 
同じ育室で幼獣と長期間暮らしていると巣材(寝床)にダニやノミなどの寄生虫が発生し、引っ越しを余儀なくされるのかもしれない、と考えたこともあります。 
それなら使い古した巣材を外に出して捨てたり天日干ししたりするはずです。

育室をときどき引っ越すこと自体に意味があるのではなく、幼獣を短時間でも外に連れ出して外界の環境に少しずつ慣らすのが目的のような気がしてきました。(幼獣の外気浴、日光浴) 
雨天でも小雨なら容赦なく幼獣を外に連れ出します。
ヒトの育児でも乳児を乳母車に乗せて外に散歩に出かけますよね。 
この育児にヘルパー♂は関与しないようで、ワンオペの♀はてんてこ舞いです。
4頭の幼獣を連れて順番に外出させようとしても、元の巣穴に幼獣を戻してしまうと大変です。
どの個体が外出済でどの個体が未だなのか、ワンオペの母親には分からなくなってしまう可能性があります。
そのような混乱を避けるための工夫として、引っ越しのていを取っている、と考えれば辻褄が合います。
あるいは長距離の引っ越しに備えて予行練習(トレーニング)をしているのかな? 

「いきもの.com」というサイトでユーラシアアナグマの生態についてまとめられていました。
ニホンアナグマよりも詳しく調べられている近縁種なので、参考のために引用させてもらいます。
 一般的に生まれる子供の数は乳首の数の半分と言われていますが、ユーラシアアナグマの場合も、3対の乳首に対し、平均産仔数は3頭です。 赤ちゃんは生後4~5週で目を開き、8~10週でセットから出るようになります。 生後2.5カ月には離乳し、約1歳で性成熟に達します。
セットには複数の家族群がいることもあります。 この時、それぞれの家族は別々の部屋を利用します。 また、面白いことにセットは親世代から子世代に引き継がれることがあります。


後半の下線部を読んで驚愕しました。

もしもこれが私が観察するニホンアナグマのセットについても当てはまるのなら、これまでの私の解釈は全て抜本的に見直す必要があります。

1頭ずつ違う色の首輪を装着するなどして、厳密に個体識別したいところですけど、素人には無理な相談です。



つづく➔ 大量の落ち葉を掻き集めて引っ越し先の巣穴に運び入れるニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

2024/01/24

田植え後の水田で採食するカルガモ(野鳥)

 

2023年6月上旬・午前10:35頃・晴れ 

田植えの済んだ水田に1羽のカルガモAnas zonorhyncha)が飛来、着水しました。 
(映像はここから。) 
ときどき嘴を開閉して鳴き声を発しているようですが、風が強い上に遠くて聞き取れません。 
仲間を呼んでいるのでしょうか? 
(私の見る限り、周囲にカモ類は全くいないようです。) 

しばらくすると、田んぼの水面を遊泳しながら嘴を水中に突っ込んで採食を始めました。 
採食の合間にもときどき鳴いています。 

やがて、キジ♂(Phasianus versicolor)が母衣打ちをする絶叫♪がケンケーン♪と辺りに響き渡りました。(@1:10〜) 
縄張りを宣言するキジ♂の声量は圧倒的です。 

稲作で除草剤や殺虫剤をなるべく使わないようにする有機農業にアイガモ農法という試みがあります。 
私は未だ実際に見たことはありませんが、アイガモの雛鳥や若鳥を田植え後の水田に放ち、自由に遊泳・採食させることで、雑草や害虫の発生を抑えることが期待できます。 
アイガモの糞はそのまま水田の肥料となり、育ったアイガモは鴨肉として食べる、という一石二鳥どころか、三鳥、四鳥もあるアイデアです。 
しかし手間の割には肝心の除草効果が安定しないなどの課題が浮かび上がってきたそうです。 

水田で採食する野生のカルガモの数が多ければ、アイガモ農法と同じ原理で除草効果が期待できます。
しかし、野鳥は自由気ままに飛び去ってしまうのが問題です。
(だから合鴨農法では飛べない雛や若鳥を使うのです。)
実は今回、カルガモが採食する田んぼの隣の区画では、最先端のアイガモ・ロボットが黙々と稼働していました。 


2024/01/19

ホンドタヌキ幼獣が巣穴の近くで夜に鳴く声♪【トレイルカメラ:暗視映像】






2023年5月下旬〜6月上旬 

休耕地の原っぱに営巣したホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の巣穴近くに自動センサーカメラをローアングル設置して監視しています。
鳴き声が聞こえたシーンをまとめてみました。

シーン1:5/30・午後20:44・(@0:00〜) 
晩に親ダヌキらしき影が奥の草むらを右の巣穴の方へ移動して行きます。 
しばらくすると、キャン♪(またはキョン♪)という短くて甲高い鳴き声が間近から一声聞こえました。(@0:28〜) 
これまで溜め糞場で聞いたことのあるタヌキ成獣の鳴き声(早春の求愛声)とは違います。 


シーン2:5/30・午後21:06・(@0:31〜) 
黒っぽい毛皮の幼獣が少なくとも2頭、夜の原っぱを探検しています。 
巣穴からはあまり離れず、雑草の根元の匂いを嗅ぎ回ってようです。 
トレイルカメラの近くまで来てくれないのがもどかしいですけど、親ダヌキの言いつけを守っているのでしょうか。 

キョン♪という短い鳴き声が再び聞こえました。(@1:05〜) 
ホンドタヌキ幼獣の鳴き声で間違いなさそうです。 


シーン3:5/30・午後22:24・(@1:26〜) 
なぜかレンズが少し曇っています。 
夜も更けて気温が下がると、湿度が上がって夜霧が発生したようです。 
地表近くに設置したトレイルカメラは、夜霧や朝霧にたびたび悩まされることになります。

奥の草むらで白く光る眼が動いています。 
タヌキ幼獣が再びキョン♪と鳴き声を発しました。(@1:30〜) 


シーン4:6/1・午前0:21・(@1:37〜) 
2日後の深夜には晴れていました。 
巣口付近で親ダヌキの白い目が光っています。 
しばらくすると、子ダヌキがギャーギャー♪鳴き騒ぐ声がしました。(@1:55〜) 
今までの鳴き方とは違います。 
最後にキュン♪と一声鳴きました。(@2:09〜) 
もしかすると、帰巣した親ダヌキが餌乞いする幼獣に給餌したのかな?と想像を逞しくしてみたものの、定かではありません。 
それとも、幼獣の兄弟喧嘩を親ダヌキが仲裁したのかな? 

※ 鳴き声が聞き取れるように、動画の一部を編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


2024/01/18

早春の雪山に響き渡るキツツキのドラミング音♪(冬の野鳥)

 

2023年3月下旬・午前7:30頃・晴れ 

未だ雪が残る里山に早朝登山した後、下山中に遠くの森からキツツキの仲間が嘴で幹を叩くドラミング音が聞こえました。 
キツツキの姿は見えませんが、ドラミングの音程や響き方が色々でした。 
音程が低いドラミングと高いドラミングが聞こえました。 
叩く木の材質や樹洞の有無によってドラミング音が違うのでしょう。 
同一個体のキツツキが森を飛び回ってドラミングする場所を変えたというよりも、複数個体がドラミング合戦で縄張り争いをしているような気がします。 

キツツキは♂も♀もドラミングをするらしいのですが、♂が囀りさえずりの代わりにドラミングして♀にアピールする求愛目的もあるそうです。 
当地ではアカゲラ、アオゲラ、コゲラと3種類の啄木鳥が生息しています。 
ドラミング音を声紋解析すればキツツキの種類を区別できるのでしょうか? 
今回は残念ながらノイズが多いので、声紋解析は諦めました。 
遠くで救急車のサイレン♪が鳴っていますし、様々な鳥の鳴き声(囀りさえずり)も賑やかに聞こえます。 


※ ドラミング音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

2024/01/14

夕暮れの樹上で鳴く♪ノスリ(野鳥)

 

2023年5月下旬・午後18:25頃・晴れ(日の入り時刻は午後18:57) 

タヌキの営巣地にトレイルカメラを設置した後、離れた林縁にブラインドを張って望遠で隠し撮りすることを試みました。 
暗くなるまで(日没の30分後まで)粘ったものの、残念ながらタヌキの行動は直接観察できませんでした。 
しかし、その間に他の生き物の活動を垣間見ることが出来ました。 

午後にカラスからモビング(擬攻撃)されて逃げ回る猛禽の鳴き声がときどき聞こえたものの、ブラインド内からは姿が見えませんでした。 

夕方になって1羽のノスリButeo japonicus)が休耕地に隣接する防風林に飛来すると、林縁に一際そびえ立つ高木の横枝に止まりました。(樹種不明:落葉性広葉樹) 
止まり木で西日を浴びながら眼下に広がる休耕地や田畑を眼光鋭く見回し、ピーエ、ピーエ♪と甲高い声で何度も鳴いています。 
毎日朝夕に鳴く囀りさえずり)のような縄張り宣言なのか、それともブラインドに隠れている私のことなどお見通しで、警戒声を発しているのでしょうか? 
ノスリは鳴き声のバリエーションが乏しくて、なかなか意図が読み取れません。

この辺りでノスリを何度も見かけるので、もしかすると近くにノスリの営巣木があるのかもしれません。 
4年前に私は河畔林で営巣するノスリを定点観察していたことがあるのですが、今回はタヌキの観察を優先しているため、ノスリがタヌキの幼獣を狩って捕食するのではないか?と気が気ではありません。 
(そんなシーンが撮れたらすごいスクープ映像です。)
しばらくすると、ノスリは自発的に飛び去ってくれて、一安心。(映像なし) 


※ 風で木の葉がザワザワ♪揺れているため、ノスリの鳴き声が聞き取れるように動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
近くで小鳥(ホオジロ?)がチチチチ…♪と鳴き続けているのは、見慣れないブラインドを不審がって警戒声♪を発しているのかもしれません。

ノスリが止まっていた高木の樹種を調べに行かないといけません。
なんとなくハンノキかな?と予想。

2024/01/08

コンクリートの橋桁に巣作りを始めたイワツバメ♀♂(野鳥)

 

2023年5月下旬・午後12:35頃・晴れ 

河原の橋の下にツバメの群れが高速で出入りしていました。 
カメラでズームインしてみると、いわゆる普通のツバメではなく、イワツバメDelichon urbica)という白黒の種類でした。 
どうやら橋桁の下に泥巣の土台を作り始めた基礎工事の段階のようです。 
私が近くからカメラを向けて撮影しても、イワツバメはさほど気にせずに造巣作業を続けています。 

ファーブル昆虫記』では人家に泥巣を作る蜂(ドロバチ類)の習性と比較するために、ツバメの造巣行動も観察しています。 
私はいわゆる普通のツバメの造巣行動もまだ観察できていません。 
この川の流域にイワツバメが生息することは気づいていたのですが、まさか巣作りを観察できるとは、千載一遇のチャンスです。 

関連記事(4年前の撮影)▶ 飛んでいるイワツバメを見つけた!(野鳥) 


実は、同じ流域の別な橋で橋桁の垂直な壁面(高所)になすりつけた泥汚れを過去に見た記憶があります。
てっきり悪童が泥団子を橋脚に投げつけて遊んだ跡なのかと当時は思ったのですけど、今思えばあれもイワツバメが作った泥巣の痕跡だったのでしょう。(※追記参照)

この橋の下をよく調べると、進捗状況の異なるイワツバメの泥巣が2箇所に作られていました。 
造巣を始めたばかりの♀♂ペアに注目します。

橋の下は鉄筋コンクリートの橋桁や橋脚に囲まれているため、イワツバメの鳴き声♪が反響しています。 
他にはカワラヒワも鳴いています♪。 
私の背後から川のせせらぎ♪も聞こえます。 





飛来したイワツバメは垂直のコンクリート壁面に塗りつけた泥玉を足掛かりとして辛うじて止まると、嘴に咥えた巣材の泥を新たに塗りつけ、泥巣の形を整えています。 
橋桁のコンクリートの壁面だけでなく、天井部の隅にも泥の巣材を塗り付けようとした形跡がありました。 
 『やまがた野鳥図鑑』でイワツバメの造巣習性を調べてみると、理由が分かって納得しました。
集団繁殖する種で、校舎の軒下や橋げた、歩道橋下などに営巣し、付近の上空を群れで飛んでいる。  「岩燕」と書く。もともとは山地の岩棚に営巣していたのだろう。建造物を岸壁などに見立てて巣作りするケースが増えている。イワツバメはツバメと違って天井ぎりぎりに巣を設け、その出入り口は狭い。中にはたくさんの羽毛が入っているようだ。(p91より引用)

イワツバメが泥巣aに飛来し、飛び去る様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
垂直な壁面に危なっかしく止まっている際には、キツツキと同じく硬い尾羽根の先端で体を支えていることが分かり、興味深く思いました。 

1回の巣作り作業は短時間で終わり、またすぐに飛び去ります。 
おそらく近くの川岸で巣材の泥を採取して来るのでしょう。 





2羽のイワツバメが相次いで飛来して、作りかけの泥巣に並んで止まることがありました。 
てっきり♀♂つがいが協力して巣作りしているのかと思ったのですが、イワツバメは集団でコロニーを形成するらしいので、2羽の♀が隣合うようにそれぞれの泥巣を作っているのかもしれません。 
私はイワツバメで性別の見分け方を知りません。 
ツバメと同じく尾羽根の長さに注目するのかな? 
バードリサーチニュースの生態図鑑でイワツバメを参照すると、素人には識別が難しそうです。
・羽色は雌雄同色.(中略)オスは肩羽および背から頭上にかけての藍色光沢が強い傾向にある. 
・さえずりは「ピチュルピチュルピチュル」と早口に長く繰り返す.繁殖期は飛翔中や巣内でよくさえずり,この声はオスのみが出すと思われる.地鳴きは「ジュリ,ジュリ」と鳴く. 
・繁殖システムは一夫一妻.つがい関係は毎年異なるものが多く…(後略) 
・巣: 建造物や岩場の崖,トンネルの出入り口などの雨の当たりにくい場所に営巣するが,近年は自然物への営巣は少ない.建造物は人家よりも橋桁や高架下,学校や病院などを好む.一般的にコロニーを作って繁殖し,一度作られた巣は長期間にわたって利用される.コロニーを放棄することもあるが,放棄されたコロニーが数年後に再び利用される例もある.巣材は泥が中心で,壁や庇の下に深い椀形で出入り口の狭い巣を作る.泥はコロニーから約200m離れた水田や約50m離れた水溜りから運んでいることが観察されている.(中略)多くの個体が古巣を補修して繁殖をおこなうが,新たに巣を作る場合の造巣日数は21.1±3.8日(n=14)であった (西 2009).

せっかくなのでイワツバメの造巣過程を微速度撮影しようと思い、急いで三脚を取りに家へ戻りました。 
ところが2時間後(午後14:45頃)に戻ってきて微速度撮影をいざ始めたら、イワツバメの親鳥は全く来なくなってしまいました。 
短いですが、10倍速の早回し映像を最後にお届けします。 (@3:16〜)
こんなことなら、三脚なしの手持ちカメラで動画撮影を続けるべきでした。
黒く濡れた泥は、新しく作られたばかりの部分です。 
巣材の泥が乾いた部分は白っぽく見えます。 









同じ橋桁で少し離れた地点にもう1つ別な泥巣bを見つけたので、後半はそちらを微速度撮影しました。 
初めに見つけた泥巣aよりも造巣作業がずっと進んでいて、素人目にはほぼ完成しているようです。 
長撮り監視しても、巣内で雛が顔を出すことはありませんでした。












さて、どうしてイワツバメは造巣を途中で止めてしまったのでしょうか? 
一日の中でも特定の時間帯にしか造巣行動をしないのかな? 
巣材の泥が乾いて強度が増すまで待っているのではないか?と推測しました。 
それとも、私が橋の下に設置した三脚カメラを警戒して営巣地に近寄らなくなってしまったのでしょうか? 
一応、橋の下に生えた雑草の茂みに三脚を隠したつもりで、微速度撮影中の私はカメラから離れて時間を潰していました。 
次回は迷彩ブラインドを持参して、三脚カメラ全体を本格的にカモフラージュ(隠蔽)するべきかもしれません。 
しかし、ツバメはカラスなどの天敵(捕食者)を避けるためにわざわざ人家の近くに営巣するシナントロープです。 
この橋の下も昼間はヒトがジョギングやイヌの散歩のため結構頻繁に往来しています。 
イワツバメも他の野鳥に比べてヒトに対する警戒心は薄いと思うのですが、どうなんでしょう? 

作りかけの泥巣の真下には、コンクリート基質に付着できなかった巣材の泥玉が大量に散乱していました。 
巣内で孵化した雛が排泄した糞なのか?と一瞬思ったのですが、よく見ると白く乾いた泥玉(巣材)でした。 

泥巣aの直下



泥巣bの直下




この時期の私は忙しくて、定点観察に連日通うのは無理でした。 
後日、現場入りしてみると、残念ながらイワツバメの営巣は失敗していました。 
まさか橋の下に作られたイワツバメの巣をわざわざ高所作業車を使ってまで駆除するヒトは居ないはず…と信じたいです。 
イワツバメがコロニーを作ったぐらいで橋脚の機能や強度に悪影響は無いはずです。 
糞害を嫌う潔癖症のヒトは居るかもしれません。 

どうやら橋脚のコンクリート表面が滑らか過ぎて、巣材の泥がしっかり付着できず、重さで自然に剥落してしまったようです。 
橋桁を建造する際に、この点を何か改善してもらえれば(コンクリートの表面を一部ザラザラに加工する等)、イワツバメにとって優しい営巣環境ができるはずです。 
ツバメの仲間は蚊やハエ、羽アリなどを飛びながら捕食してくれる益虫です。 
「害虫が大発生した!」と騒いで殺虫剤を毎年大量に撒かないといけない事態になるのは、近年ツバメが住宅難(営巣地不足)から数を減らしているのが一因です。 
イワツバメを含めた生物多様性を確保すれば、生態系のバランスが適度に保たれて害虫の大発生は抑えられるはずです。



※【追記】
半年前の冬に撮っていた写真を掘り出しました。

2022年12月上旬
同じ川の流域で少し下流に架けられた別の橋の下をくぐって通り抜ける際に見つけたものです。
コンクリート護岸に鳥の糞がまとまって大量に落ちていたので上を見上げると、コンクリートの橋桁の裏面にイワツバメが作ったと思われる古巣を見つけました。

もっと昔に撮った未公開写真があるはずなので、探しています。




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