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2021/02/04

ヒメジョオンの花蜜を吸うウラナミシジミ♂

 

2020年10月中旬・午後13:50頃・晴れ 

里山を抜ける峠道の道端に咲いたヒメジョオンウラナミシジミ♂(Lampides boeticus)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。
口吻を伸ばして吸蜜しながら、閉じた翅を互いにゆっくり擦り合わせています(自己擬態行動)。  
吸蜜後は少し飛んで手前のクズの葉表に移動しました。 
翅を半開きにして日光浴しながら交尾相手の♀を待ち伏せしているのでしょう。 (♀に翅表の青を誇示?) 
…と思いきや、クズの蔓を伝い歩きして死角に隠れてしまいました。 


 

2021/01/11

マツムラハラブトハナアブ♀の身繕い【ベイツ型擬態】

 

2020年9月下旬・午前11:30頃・晴れ 

里山の林道脇に材木(縦半分に切られた丸太)が放置されていて、そこに蜂のような昆虫が飛来し、周囲を飛び回り始めました。 
てっきり借坑性の蜂が営巣地を探索中(穴があったら入りたい)なのかと思いきや、材木に止まった姿をよく見ると、マツムラハラブトハナアブ♀(Mallota rubripes)でした。 
おそらくオオマルハナバチ♀(Bombus hypocrita)をモデルとした見事なベイツ型擬態です。 
多少は虫を知ってるつもりの私もすっかり騙されました。 
オオマルハナバチと本当に激似です。 

マツムラハラブトハナアブ♀は、木のベンチの上で化粧を始めました。 
左右の複眼が接していないことから♀と判明。 
後脚同士を擦り合わせたり、腹背を掻いたり、翅を脚で擦ったりしています。 
更に、前脚同士を擦り合わせたり、前脚で顔を拭ったりしています。 
身繕いを念入りに済ませるとベンチから飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

実はこの直前に私はベンチに腰掛けて休み、おやつに持参したリンゴの皮を剥いて食べようとしていたところでした。 
マツムラハラブトハナアブ♀は食べかけのリンゴに興味を示しませんでした。

2020/12/08

オオイタドリに訪花するオオトラカミキリの飛翔

 

2020年8月下旬・午前9:10頃・晴れ 

堤防路沿いに咲いたオオイタドリの群落でオオトラカミキリXylotrechus villioni)が訪花していました。 
スズメバチにベーツ型擬態しているのか、黄色と黒の縞模様をした憧れのカミキリムシです。 
今回が嬉しい初見です。 
後食行動で花蜜や花粉を食べに来たのかと思ったのですが、映像をよく見直すと、吸蜜はしていないようです。 
ネット検索しても本種の後食メニューについて情報を得られませんでした。 
オオイタドリの花穂を落ち着き無く歩き回っているので、飛行移動中にたまたま立ち寄った(不時着?)だけなのかもしれません。 

慌てたように翅を広げて飛び立つと、横に生えているススキの茎に止まり、登り降りしています。 
どんどん茎を上に登ると花が咲き始めたススキの穂から再び飛び去り、行方を見失いました。 
飛び立ちのシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

オオトラカミキリ♀はモミの木に産卵するそうです。 
確かに、現場の近所で農家の庭にモミの大木を見た記憶がうっすらと…? (要確認) 

※ 動画編集時に今回はコントラストではなく彩度を少し上げました。 
夏の日差しが強過ぎるため、いつものようにコントラストを上げると影が黒く潰れてしまうのです。

 

2020/08/27

ノイバラの花を舐めるフタガタハラブトハナアブ♀



2020年6月上旬・午前10:55頃

ノイバラの群落でフタガタハラブトハナアブ♀(Mallota eristaliformis)が訪花していました。
口吻を伸縮させてノイバラの花蜜や花粉を舐めています。
左右の複眼が接していないので♀ですね。
顔を正面からしっかり見せてくれなかったものの、「カオグロ」オオモモブトハナアブではありません。

本種はマルハナバチにベイツ型擬態したハナアブ類のひとつと考えられています。
『札幌の昆虫』という図鑑p214〜215では、「マルハナバチに擬態するハナアブの仲間」として見開き2頁を丸々割いて標本写真および生態写真を掲載しています。


フタガタハラブトハナアブの場合で擬態のモデルとなったマルハナバチを考えると、体毛が全体的に黄色ですから、当地ではクロマルハナバチ♂またはコマルハナバチ♂が考えられます。
しかし♀に比べて雄蜂♂の出現期は短い上に、雄蜂♂は敵を刺す毒針を持ちません。
ですから、鳥などの捕食者側にこれを忌避する学習が果たして成立するのか、私は疑問です。
つまり、我々マニアックな虫好きが勝手に「マルハナバチと似ている」と言っているだけかもしれず、本当にベイツ型擬態なのかどうか実験的な検証が必要だと思います。
例えば、体毛が黄色ではなくもっと茶色になればトラマルハナバチ♀と似るかもしれませんが、ヒトと鳥類では色覚も微妙に違います。


▼関連記事(8年前の撮影)
化粧するフタガタハラブトハナアブ♀



2020/08/23

ノイバラの花を舐めるツマグロコシボソハナアブ♀



2020年6月上旬・午前11:00頃・晴れ

農道沿いに咲いたノイバラの群落で、細い体型の見慣れない黒いハナアブが訪花していました。
広げた翅をかすかに上下しながら花蜜や花粉を口吻で舐めています。

まるで毒針を持つ狩蜂(有剣類)のように腰が細いので、もしかすると狩蜂にベイツ型擬態しているのかもしれません。
透明な翅に黒い縁紋が目立ちます。
左右の赤い複眼が接していないので♀のようです。
調べてみると、ツマグロコシボソハナアブ♀(Allobaccha apicalis)と判明しました。

そこへ1匹のセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が飛来するとツマグロコシボソハナアブ♀は少し飛んで逃げ、隣の花に移動しました。
おかげで今度は側面から撮れました。
見れば見るほど狩蜂にそっくりで格好良く、とても気に入りました。
再びセイヨウミツバチが乱入して、追い払われてしまいました。
どうもミツバチは蜜源植物でライバルとなるハナアブに対して占有行動しているようです。
だとすれば、ミツバチの目には狩蜂に擬態する作戦は通用しないことになります。
ベイツ型擬態は、鳥などの捕食者に対する自衛手段なのでしょう。

採餌活動に忙しいミツバチはハナアブのことなんか眼中に無くて、ツマグロコシボソハナアブ♀の方が勝手に怖がって逃げ出したように思うかも知れません。
しかしミツバチとの二度の小競り合いを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、一回目のミツバチは空中で狙いを定めて訪花中のツマグロコシボソハナアブ♀に飛びかかっている(威嚇)ように見えます。
二回目のニアミスは確かに、ミツバチはハナアブのことなんか眼中に無さそうです。




2020/08/21

ノイバラの葉上で身繕いするキスジトラカミキリ



2020年6月上旬・午前11:10頃・晴れ

平地の農道沿いに咲いたノイバラの群落で初見のカミキリムシが葉上で身繕いしていました。
左の中脚と後脚を擦り合わせています。

マクロモードのカメラをそっと近づけても逃げません。
風揺れに耐えかねた私がノイバラの棘だらけの茎を左手で掴みながら動画を撮ろうとしたら、異変(殺気)を感じたキスジトラカミキリは急に花から落下して、どこに行ったか見失ってしまいました。
身の危険を感じて、擬死落下で緊急避難したのかもしれません。

いかにも蜂にベイツ型擬態したカミキリムシで、モデルは例えばコアシナガバチPolistes snelleni)ではないでしょうか。
図鑑で名前を調べてみると、キスジトラカミキリCyrtoclytus caproides caproides)と判明。

ちなみに本種の正式な学名はCyrtoclytus caproides caproides (Bates, 1873)で、最後の括弧内は命名者および命名年を表します。
ベイツ型擬態で有名なHenry Walter Bates(1825年〜1892年)が直々に発見して命名したのですかね?
だとしたら、胸熱です。
1873年はベイツが油の乗った活動時期に当たります。

ところで、この個体の性別は♀♂どちらでしょう?
触角の長さで♂>♀のはずですが、森林総合研究所の「日本産カミキリムシ画像データベース」サイトに登録された標本写真を見比べると、どうも本種は触角の長さに性差は小さいようです。




2020/03/02

ベニバナボロギクを訪花するヤドリバエ(Pentatomophaga latifascia)



2019年9月下旬・午前11:16

平地で広い田畑を横切る農道沿いに咲いたベニバナボロギクの群落で見慣れないハエが訪花していました。
黒い翅を広げて花に静止していますが、背側からしか撮れず口吻の状態が見えませんでした。
口吻を伸ばしても蜜腺に届かない気がします。
花粉を舐めていたのか、あるいは単に休んでいただけかもしれません。

そっと回り込んで側面から撮るべきか、それともハイスピード動画に切り替えるべきか…と私がもたついていたら、飛び立つ瞬間を撮り損ねてしまいました。
未採集、未採寸。
ハエ類に疎い私には所属する科も分からないので、どなたかこの格好良いハエ(アブ?)の名前をご存知でしたら教えてください。

黒い体に黄色い縞模様があり、狩蜂にベーツ擬態しているようです。
現場ではなんとなくカノコガAmata fortunei)という蛾を連想したのですが、落ち着いて写真を比較するとむしろスカシバ(蛾)の方が似てますね。



【追記】
いつもお世話になっている「みんなで作る双翅目図鑑」サイトの「画像一括閲覧ページ」を眺めていたら、とてもよく似た写真を見つけました。
Tachinidaeヤドリバエ科 Phasiinae ヒラタヤドリバエ亜科のPentatomophaga latifascia(和名なし)のようです。

茨城@市毛さんから以下のコメントを頂きました。
本種などが含まれるPhashinaeヒラタヤドリバエ亜科は,主にカメムシに寄生します.Shima(2006)のヤドリバエの寄主目録には,クサギカメムシチャバネアオカメムシが記録されています.なお,備考に本種は寄主の腹部に卵を粘着させると書かれています.

確かにこの辺りでクサギカメムシは幾らでも見かける普通種です。

【参考ブログ】田中川の生き物調査隊:ヤドリバエの一種



ハエsp@ベニバナボロギク訪花吸蜜?

2020/02/20

シマヘビ幼蛇の威嚇



2019年9月下旬・午後14:00・晴れ

川沿いのコンクリート護岸の上にじっと横たわっているヘビを発見。
一瞬、マムシと見間違えて焦りましたが、よく見るとシマヘビElaphe quadrivirgata)の幼蛇でした。
おそらく幼蛇の期間は毒蛇にベーツ擬態しているのでしょう。

舌も出し入れしていない静止状態で日光浴しています。
私が近づいても身動きしないので、死骸なのかと疑い始めました。
拾った棒で幼蛇の胴体の中央部に軽く触れると、鎌首をもたげて棒に向き直りました。
舌を素早く出し入れして、周囲の空気の匂いを嗅いでいます。

尾端を左右に細かく震わせているのは威嚇行動なのだそうです。
このときガラガラヘビのような威嚇音を発したかどうか気になりますが、川の水音で聞きとれませんでした。

再び棒で体に触れると、噛み付いて反撃したりせずに慌てて逃げ出しました。
蛇行する体表の模様が「まだらの紐」のようで美しいですね。
舌を出し入れしながら、コンクリート護岸の段差を難なく乗り越えると、草むらに姿を消しました。


・(シマヘビの)幼蛇は体色が淡黄色。縦縞はないか不鮮明で、赤褐色の横縞が入る。
・危険を感じると尾を激しく振るわせ、地面を叩いて威嚇する。 (wikipediaより引用)


2020/02/17

アカザカズラの花蜜を舐めるサッポロヒゲナガハナアブ♀



2019年9月下旬・午後15:45頃

民家の庭(家庭菜園?)からブロック塀を乗り越えて外に垂れ下がっている蔓植物に白い花穂が満開に咲いていました。
私はその名前を知らなかったのですが、昨年アカザカズラ(別名オカワカメ)と教えてもらいました。
観賞用だけでなく、知る人ぞ知る野菜として食用にも供されているのだそうです。
(私もいつか食べてみたいものです。)
今年はこの植物の訪花昆虫に興味を持って定点観察にときどき通っていたら、ようやく花が咲いて辺りには独特の良い芳香が微かに漂っていました。

まず目に付いたのはサッポロヒゲナガハナアブ♀(Chrysotoxum sapporense)です。
一瞬クロスズメバチの仲間かと見間違えたので、ベイツ型擬態なのでしょう。
左右の複眼が離れているので♀のようです。
白い花穂を歩き回りながら、口吻を伸ばして花粉や花蜜を舐めていました。
翅の前縁端に褐色の斑紋があります。


▼関連記事(1年前の撮影)
カキドオシの花粉を舐めるヒゲナガハナアブ♂




サッポロヒゲナガハナアブ♀@オカワカメ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀@アカザカズラ訪花吸蜜

アカザカズラ(オカワカメ)花穂@ブロック塀
アカザカズラ(オカワカメ)花穂+葉+蔓@ブロック塀
アカザカズラ(オカワカメ)花穂@ブロック塀・全景

ちなみに、2週間前の9月中旬に撮った蕾の写真もついでに載せておきます。
アカザカズラ(オカワカメ)蕾@ブロック塀
アカザカズラ(オカワカメ)蕾@ブロック塀・全景

2020/01/24

田んぼの稲穂を鳥害から守る目玉風車



2019年9月上旬・午後17:40頃

稲穂が実る田んぼの畦道に木製の小さな風車が並んで設置され、風が吹くとクルクルと回っていました。
スズメPasser montanus)など種子食性の野鳥に食害されないように怖がらせる防鳥グッズのようです。

ホームセンターなどで売られている商品なのか、自作なのか、不明です。

2枚の回転翼の内側は白、外側は赤色のペンキで塗り分けられていて、先端付近には銀色の大きな目玉模様が描かれています。
目玉模様の外側はアイシャドウのように黒く縁取られています。
風向きが変わっても自然に風車の向きが変わるように、垂直尾翼も付いています。
その垂直尾翼にも銀色に光る目玉模様が貼られていました。
無風のときには大きくて光る目玉(眼状紋)による忌避効果を期待しているのでしょう。
風車が回っているときは、ギラギラ光る模様が激しく動くことで鳥を脅かす作戦のようです。
電源などの動力も不要です。

これでちょっとした風力発電もしていたら一石二鳥ですね。
あの手この手の創意工夫に感心します。
鳥が馴れてしまうまでの有効期間はどれぐらいなのでしょう?

風車の周囲に野鳥が居ないのは、時間帯が遅かったせいかもしれません。
念の為に明るい昼間に撮り直すつもりが忘れてしまいました。


2019/09/29

イタドリの花で吸蜜するトラフシジミ春型【HD動画&ハイスピード動画】



2019年6月下旬

平地の川沿いの原っぱに咲いたイタドリの群落でトラフシジミRapala arata)春型が訪花していました。
翅をしっかり閉じて吸蜜しています。

閉じた後翅を互いに擦り合わせ、尾状突起を触角のように動かしています。
鳥などの捕食者に急所の頭部を狙われないように偽の頭部を体の後方にも作って惑わせているのです。(自己擬態)
黒い尾状突起の先端は白くて目立ちます。
ところが自己擬態のモデルとなった本物の触角は全体が黒でした。
必ずしも完全に体の前後が対称に見えなくても、尾状突起が触角っぽく見えればそれで良いのでしょう。

翅表を撮るために飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:40〜)
ところがトラフシジミは吸蜜に夢中で、物を投げつけてもなかなか飛んでくれません。
仕方がないのでイタドリの葉を掴んで揺すり、強引に飛び立たせました。
羽ばたいた瞬間に垣間見た翅表はメタリックブルーでした。(天気が曇りなので映像では藍色に見えます)
トラフシジミの翅表を見たのは初めてかもしれません。
更に1/4倍速のスローモーションでリプレイしても、性標の有無は見分けられませんでした。


ちなみにセマダラコガネAnomala orientalis)およびクロヤマアリFormica japonica)♀も一緒にイタドリで訪花していました。


トラフシジミ春型@イタドリ訪花吸蜜

2019/08/14

ムラサキツメクサの蕾に産卵するツバメシジミ♀【HD動画&ハイスピード動画】



2019年5月下旬

堤防沿いの道端に咲いたムラサキツメクサ(=アカツメクサ)の群落でツバメシジミ♀(Everes argiades hellotia)を見つけました。
蕾に止まって休んでいるように見えたので、飛び立つ瞬間を240-fpsのハイスピード動画で記録しようと撮り始めました。(@00:00〜3:16)
後翅に見落としそうなぐらい小さな尾状突起があるので、ヒメシジミではなくツバメシジミです。
閉じた翅の僅かな隙間から見えた翅表が茶褐色ですから、♀と判明。

映像を見直してみると、なんとツバメシジミ♀は腹端をムラサキツメクサの蕾に擦り付けて産卵していました。
本種の食草はシロツメクサなど各種マメ科植物とのことで、納得しました。
古い図鑑ですが、保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIIチョウ編』でツバメシジミの産卵行動について調べると、

母蝶は食草の新芽・つぼみ・花などに1個ずつ産卵する。(p196より引用)


産卵後のツバメシジミ♀は飛び立つと、辺りの草むらをしばらく落ち着きなく飛び回りました。
ようやくイネ科の草の葉に止まると、翅を半開きにして休息。
後翅の尾状突起をまるで触角のように交互に動かすことで、頭部が逆向きにも付いているように見せかけています。
こうすれば、もし捕食者に襲われても本当の頭部に致命傷を負う確率を減らすことができます。
シジミチョウ科でよく見られるこの現象・行動は、自己擬態と呼ばれています。
この個体も、後翅の尾状突起付近が破損しているのは鳥に襲われたビークマークかもしれません。
(鳥が昆虫を狩るときには、頭部などの急所を狙います。)

ムラサキツメクサの花蜜を吸うシーンは残念ながら撮れませんでした。


ツバメシジミ♀@イネ科葉
ツバメシジミ♀@イネ科穂
ツバメシジミ♀@イネ科穂

2019/04/17

ウラナミシジミ♀が後翅を擦り合わせる訳とは?



2018年10月中旬

水路沿いに咲いたセイタカアワダチソウの群落でウラナミシジミ♀(Lampides boeticus)を見つけました。


▼前回の記事(2ヶ月前の8月中旬に撮影)
尾状突起を破損したウラナミシジミの飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

東北地方をフィールドとする私にとってウラナミシジミは去年まで一度も見たことのなかった珍しい蝶なのですが、今年になってこれが早くも2頭目の出会いとなります。
本種はツマグロヒョウモンと同じく南方系で渡りをする蝶ですから、今年の夏の猛暑や地球温暖化を利用して北進中なのでしょう。



この個体は訪花中ではなく、翅を閉じて蕾に止まり休んでいました。
飛び立つ瞬間を動画撮影しようと私がしつこくちょっかいをかけたら、左右の後翅を擦り合わせる行動を始めました。
地味な動きですけど、これは自衛のための自己擬態行動なのでしょう。


福田晴夫、高橋真弓『蝶の生態と観察』によると、

ウラナミシジミ類などの後翅には、糸のような尾状突起がある。このつけ根には赤斑や黒点などがあり、翅を閉じてとまると、ある種の昆虫の頭部に見えるのかもしれない。後翅をすり合わせるようにして動かすと、1対の尾状突起は、ちょうど昆虫の触角のように動くので、捕食者が偽の「頭部」を攻撃すると、蝶はそれを与えて反対側に飛び、難をのがれることになる。この場合、尾状突起の先端が白色となりめだちやすいことは注目される。 (p104より引用)


(ウラナミシジミの)後翅の後端には黒い斑点が2つあり、2つの斑点の間には細い尾状突起が突き出ている。この黒い斑点と尾状突起は複眼と触角に似ていて、頭部に似た模様をもつことで身体の方向や頭部の位置について敵の目をあざむいていると考えられている。(wikipediaより引用)


ところが、この個体は右の尾状突起が破損していて左側しか残っていませんから、擬態の効果は半減してそうです。
右後翅の肛角部付近の眼状紋を狙って鳥が嘴でつついたのかもしれませんが、通常のビークマークは左右対称に破損するはずです。
更に、前翅も縁がギザギザに損傷していることが長旅の苦労を偲ばせます。
欲を言えば、翅の状態がきれいな(尾状突起が無傷の)個体で撮り直したいものです。

やがて少し飛んで近くのセイタカアワダチソウの葉に止まり直しました。
今度は翅を全開にして日光浴です。
残念ながら私には翅表を見せてくれず、下面しか撮れませんでした。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→飛び立ち


ウラナミシジミ♀:翅裏@セイタカアワダチソウ蕾
ウラナミシジミ♀:下面@セイタカアワダチソウ葉+日光浴

2018/12/17

蜂に擬態したサッポロヒゲナガハナアブ♀がニラを訪花



2018年9月中旬

川沿いの民家の花壇に咲いたニラの群落で蜂にそっくりなハナアブが訪花していました。
ホバリング(停空飛翔)で飛び回り、ニラの白い花に着陸すると口吻を伸ばして花蜜や花粉を舐めます。
採集できませんでしたが、映像から切り出した静止画と見比べて、おそらくサッポロヒゲナガハナアブ♀(Chrysotoxum sapporense)だろうと突き止めることが出来ました。

参考サイト:ヒゲナガハナアブ族 - Hoverflies world(Diptera,Syrphidae) ハナアブの世界

見事なベイツ型擬態です。
腹部の横縞模様が黄色と黒だけでなく、焦げ茶色も混じっていることから、なんとなくモデルはコアシナガバチPolistes snelleni)ですかね?

クロアリやキンバエの仲間も一緒にニラを訪花していました。



ちなみに、近縁種を春にも観察しています。
▼関連記事カキドオシの花粉を舐めるヒゲナガハナアブ♂

サッポロヒゲナガハナアブ♀:背面@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:背面@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:側面@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:顔@ニラ訪花吸蜜
サッポロヒゲナガハナアブ♀:側面@ニラ訪花吸蜜

鳥追いカイトは田んぼのスズメ対策に有効か?(野鳥)



2018年9月上旬
▼前回の記事(8月中旬)
水田を鳥害から守る鳥追いカイト(フクロウ型の凧)


実りの秋になり、黄金色の稲穂が広がる田園地帯のあちこちに設置された鳥追いカイト(凧)の数が増えていました。
収穫前の鳥による米の食害を防ぎたいのでしょう。
プリントされたデザイン(擬態)がタカとフクロウの2種類ありました。



幾つもの凧を田んぼに設置すると決して安い買い物ではないので、気になるのはその有効性です。
鳥追いカイトの防除効果を厳密に試験する際には、圃場に処理区と無処理区(無防除区)とを設ける必要があります。

カイトを上げていない区画で田んぼに隣接する民家の辺りにスズメPasser montanus)が群がっていました。
チュンチュン♪と賑やかに鳴き交わしながら、庭木のカエデの木と田んぼの端を往復するように飛び回っています。
民家のトタン屋根にも群れの一部が止まっています。
いざというときにすぐ避難できる場所を確保しつつ、稲穂を食べに来たのでしょう。

田んぼには稲穂以外にもイヌビエがたくさん生えています。
スズメがイヌビエの実も食べるのかどうか、証拠映像を未だ撮れていません。(イネの実の方が好み?)

さて次に、私がその場で向きを変えると、広大な田んぼの反対側の区画に設置された鳥追いカイトが幾つも見えました。
長い釣り竿を立て、その先から糸でカイトが吊り下げられています。
風が吹くと煽られたカイトが右に左に動き回ります。
ヒトに擬態した昔ながらの案山子に比べれば、激しい動きがある分だけ鳥追い効果がありそうです。

カイトの下面にはフクロウやタカと言ったスズメの天敵となる猛禽類の絵柄がプリントされていました。
しかしカイトの上面は意外にも白紙でした。(日焼けして退色したのではなさそうです。)
上空から田んぼに飛来する野鳥に対して脅かすには、コストをけちらずにカイトの上面にもリアルなプリントをした方が良いと思うのですが…。
それでも鳥追いカイトの周囲にはスズメの群れは見当たりませんでした。

この映像だけ見ると、まるで商品CMのように、確かに鳥追いカイトにスズメを追い払う効果がありそうに思えます。
しかし、この比較はフェアではありません。
鳥追いカイトが設置された区画は広大な田んぼの中央部にあり、近くにスズメの避難場所がありません。
スズメの性質からすると、元々あまり来ない(食害が少ない)区画である可能性があるのです。
民家に近い田んぼの端にもカイトを設置して、スズメが来なくなることを実証しなければいけません。

おそらく田んぼの区画によって違う農家が管理・栽培しているのでしょう。

藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』によれば、

(イネの)登熟期の被害はスズメ、ハト、カルガモによるものですが、スズメによるものがもっとも大きく、重要です。(中略)広く開けた水田地帯では、それほど大きな被害を受けることは少ないようです。しかし、人家の近くや電線の下、樹木の近くなどの水田では大きな被害が発生します。これらの場所では、スズメの逃げ場が確保されているからだと思われます。(p190より引用)

スズメの被害は、登熟した穀類の種子ばかりでなく、田んぼや畑に播種された種子にも発生します。
登熟:穀物や豆類の種子が次第に発育・肥大して、炭水化物や蛋白質が集積されること。(p60より引用)


もう一つの問題として、スズメの群れが稲穂の茂みに完全に隠れてしまうと、私にも見つけられなくなり、動画が撮れないのは当然です。
もしかすると、鳥追いカイトに慣れてしまったスズメの群れが、カイトのお膝元でもこっそり稲穂を食害しているかもしれません。
無人の監視カメラを田んぼのあちこちに設置したら面白そうです。
鳥追いカイト自体にGoProのような小型のCCDカメラを付ければ、カイト目線の映像が撮れるでしょう。

毎日、夕方になったら田んぼの凧を回収するのかな?

無風で凧が動かない日は防除効果が無くなるのでしょうか?
逆に台風が来る前には予め凧を取り外しておく必要がありそうです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

2日に分けて同じ田んぼで撮った映像をまとめました。

2018/10/24

水田を鳥害から守る鳥追いカイト(フクロウ型の凧)



2018年8月中旬

夏の水田に見慣れない物体が出現しました。
フクロウの絵柄をプリントした(擬態)、結構大きな凧(カイト)が朝の風に揺れていました。
長い釣り竿(?)を田んぼに突き刺し、その先に凧を糸で繋いでいます。

これから水田に稲穂が実る季節になると、これを食害するスズメなどが現れます。
害鳥を追い払うために案山子かかしの改良版を農家が試しに設置したのでしょう。
フクロウは猛禽類ですから、小鳥が本能的に怖がると期待した鳥害対策グッズのようです。
風が吹くと凧は自然に動くので、馴れが生じにくい(防鳥効果が持続する)のでしょうか?
ネット通販でも同じ商品や類似商品を見つけました。
私の素人考えでは、もっと高く飛ばした方が広範囲に効果がありそうな気がするのですけど、開発者が実験的に検討した結果この高さが最適なのでしょうか。

商品をたくさん買ってもらいたいから竿や糸を短くしてるのかな?と邪推してしまいます。
この田んぼを高所から見下ろす撮影ポイントがあれば、鳥追い効果の有無をいつか検証してみたいものです。
(ドローンは長時間飛ばせませんし、ドローンの存在自体が「鳥追い」になってしまうでしょう。)

カイトに小型の監視カメラを取り付けて飛ばしたら面白そうです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


鳥追いカイト梟(フクロウ:野鳥)@水田
鳥追いカイト梟(フクロウ:野鳥)@水田


【追記】
藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』によると、
外国では、凧が鳥を追い払うためによく用いられています。(中略)アドバルーンの下に凧をぶら下げて、畑の上に揚げるという試みもなされています。これは、上空を旋回するワシタカをまねたものと考えることができるかもしれません。(中略)私たちは、ダイズを加害するキジバトに対して凧(ゲイラカイト)の効果を調べたことがあります。その結果は、マネキンよりは劣るものの、相当高い効果が得られました。p150-151より引用)



▼関連記事
鳥追いカイトは田んぼのスズメ対策に有効か?(野鳥)


2018/10/06

後翅を擦り合わせるウスイロオナガシジミ



2018年7月中旬

里山の林道脇の雑木の葉表に乗ってウスイロオナガシジミAntigius butleri)が休んでいました。
閉じた翅を互いにゆっくり擦り合わせて後翅の尾状突起を触角のように動かしています。
鳥類などの天敵は急所の頭部を狙ってくるので、身体の前後を誤認させる自己擬態で身を守っているそうです。
舞台となった葉の樹種はおそらくハルニレではないかと思います。

てっきりミズイロオナガシジミかと思ったのですが、帰宅後に調べてみると実は初見のゼフィルスでした。

▼関連記事(9年前の撮影)
ミズイロオナガシジミ
飛び立ちのハイスピード動画など、もっとじっくり撮るべきでしたね。


ウスイロオナガシジミ:翅裏@ハルニレ?葉上
ウスイロオナガシジミ:翅表@ハルニレ?葉上

2018/06/10

キンケハラナガツチバチ♂は捕まえると腹端のトゲで刺そうとするが痛くない



2017年11月中旬

8年前にキンケハラナガツチバチ♂(Megacampsomeris prismatica)を初めて撮影したブログ記事で、私は次のように書きました。

♂なので毒針はもちませんが、腹端に刺が3本生えていて捕まえるとこれでチクチク刺してくるのだそうです。
今度見つけたら試してみよう。

セイタカアワダチソウに訪花していた♂雄蜂を見つたので、長年の懸案だったテーマを実験してみましょう。
持っていたビニール袋を使ってキンケハラナガツチバチ♂を生け捕りにしました。
♀と比べて♂の大顎は貧弱なのか、ビニール袋を食い破れません。



家に持ち帰り、袋からハチを取り出しました。
右翅と脚を指で摘んだ状態で保定すると、長い腹部を曲げて腹端にある3本の鋭い突起で刺そうとしてきました。
しかし全く痛みはなく、こけ脅しでした。
腹端トゲの材質が柔らかく、いくら指に突き立てても皮膚を貫通して出血するほど刺さりません。
これは以前、キンケハラナガツチバチ♂標本の腹端トゲに触れた時も感じたことで、だからこそ私は恐怖心を抱かずに生きた雄蜂で実験できたのです。

つまり同種(あるいは近縁種)の♀による刺針行動を♂が擬態しているのでしょう。(刺針行動擬態と勝手に呼ぶことにします。)
もし鳥などの捕食者がキンケハラナガツチバチ♀の毒針に刺された経験があれば、雄蜂♂が痛くなくても刺す素振りをするだけでその恐怖の記憶が蘇り、捕まえた雄蜂を咄嗟に離してしまうことは有り得そうです。
比較対象として、キンケハラナガツチバチ♀の毒針を使った刺針行動も動画に撮ってみたいものです。
ちなみに、腹部が黄色と黒の縞模様なのは多くのハチ類に共通したミューラー型擬態です。



♂に特有の腹端トゲの正式名称を知らないのですが(ご存知の方は教えて下さい)、もしかすると♀と交尾する際に何か重要な役割があるのかもしれません。

例えばトンボの♂は腹端には把握器があり、♀の首根っこを掴んで尾繋がり状態になるのが交尾への第一歩です。
しかしキンケハラナガツチバチ♂の腹端トゲは動きません。

あるいは♂同士が争うときに、この三叉棘を武器として使うのでしょうか?
3本のトゲの物理的な強度をもう少し上げて刺す武器として進化させるのは難しくない(明らかに生存に有利)と思うのですが、武器としてなまくらな状態のままなのは何故でしょう?

繭から羽化脱出するときに普通の蜂は大顎で食い破るのですが、キンケハラナガツチバチ♂はこのトゲを使って繭を内側から破いたり引き裂いたりするのかな? 
しかしこの仮説は、♂にしか無い理由を説明できるでしょうか?
ツチバチの♂成虫は♀よりも腹部が長いので、繭の段階から性的二形があったりして?
ツリアブ科の中にはハナバチや狩蜂の巣内に労働寄生して育つものがいます。
そのようなツリアブは蛹の頭頂部に生えている鋭い突起を使って寄主♀が(泥などで)巣を封じた隔壁を中から破って外に脱出してから羽化するのです。
▼関連記事 
竹筒トラップに寄生したエゾクロツリアブ?の羽化

♀の毒針は産卵管が変化したもので伸縮自在です。
一方♂の腹端トゲ(三叉矛)は、腹端のクチクラが棘状に変形した構造で、伸縮しません。

余談ですが、顔を接写してみるとキンケハラナガツチバチ♂の大顎は左右非対称でした。
左の大顎だけが開閉しています。
どの個体もそうなら、機能的にどんな意味があるのでしょうね?
実は腹端トゲに刺されるよりも、大顎に噛まれたくなかったので、今回の実験では翅を摘んだのでした。
(実は噛まれても痛くないのかな?)


【追記】
大谷剛『昆虫―大きくなれない擬態者たち』という本を読むと、まさにこの問題を扱った章「雄バチは雌バチに擬態している」がありました。
ツチバチの雄バチの標本を見ると、尻の先端にとがったものが三本も見えるではないか。(中略)改めてツチバチの♂を見ると、どれも必ずにせの針(一本ではなく三本というところが面白い)がある。♀は本物をもっているから、ちゃんと針はひっこめることができる。雄バチのものは尻先の突起物でひっこめることはできない。
 つまり、♂の尻先の突起物は毒針の擬態なのだが、鋭くとがっているので、尻を曲げて押し付けられると、かなり痛いのだ。これで痛いと思ってあわてて放り出すとすれば、単なる擬態よりも効果的だから、「ベイツ型擬態」というより「ミュラー型擬態」に近いことになる。(p74より引用)

私の知る限り、擬態に関する本でこの問題を取り上げたのは大谷氏だけで、貴重な記述です。

しかし私の実体験では、(少なくともキンケハラナガツチバチにおいて)雄蜂♂の3本棘に刺されても痛くないと断言できます。

ツチバチの捕食者が鳥類や哺乳類の場合、羽毛や毛皮に覆われた体表を貫いて突き刺して痛みを与えることはまず無理だろうと思います。

他のツチバチ類の雄蜂♂でもいずれ試してみるつもりです。

更に、ツチバチ♂を生き餌として鳥や動物に与えてみて、3本棘による痛みで忌避するかどうか、実験で確かめることが必要です。

 




キンケハラナガツチバチ♂@捕獲+刺針行動擬態
キンケハラナガツチバチ♂@捕獲+刺針行動擬態
キンケハラナガツチバチ♂@捕獲+刺針行動擬態

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