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2021/02/10

崖に産卵するミドリヒョウモン♀暗色型

 

2020年10月中旬・午後12:55頃・晴れ
▼前回の記事 
カワミドリで訪花吸蜜するミドリヒョウモン♀暗色型【HD動画&ハイスピード動画】
さっきまで花蜜を摂取していたミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)が峠道横の斜面に移動し、産卵を始めました。 
半開きの翅を開閉しながら、落ち葉で覆われた崖のあちこちに腹端を擦り付けています。 
少し飛んだり歩いたりしてあちこちに移動しながら、卵を1粒ずつ産み付けるようです。 
産卵基質にこだわりは無いようで、枯れた茎や小枝、小石、枯葉などの表面に産卵しています。 
一度だけ生きた植物に産卵しました。 
草本植物(種名不詳)の芽生えの細い茎に白い卵を1個産み付ける様子がはっきりと捉えられていました。(@0:35) 
ミドリヒョウモン幼虫の食草であるスミレの芽生え(双葉)かもしれませんが、私には見分けられません。
 
▼関連記事 
スギの樹皮に産卵するミドリヒョウモン♀
崖を横に少し歩いて移動し、陽だまりで日光浴しながら小休止。 
すぐにまた腹端を前屈して産卵を再開しました。

2021/02/07

ナスの葉に産卵するオオタバコガ♀(蛾)

 

2020年10月中旬・午前11:25頃・晴れ 

郊外農村部のナス(茄子)畑でオオタバコガ♀(Helicoverpa armigera armigera)という地味な蛾が飛び回っていました。 
あちこちのナスの葉に止まって怪しい挙動です。 
かなり粘って追い回し、産卵の決定的瞬間をようやく動画で記録することが出来ました。 
他所の畑には勝手に入り込めませんから、公道の境界ギリギリから撮影。

1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、ナスの若葉の表側に止まり、腹端を擦り付けて卵を産み付け、飛び去りました。 

インターネットで検索すると、オオタバコガの幼虫は広食性で、悪名高い農業害虫なのだそうです。
「高知農業ネット」サイトに掲載された情報を引用すると、
 (オオタバコガの)寄主範囲は広く、なすの他、トマト、ピーマン、オクラ、えんどう、ばら、キャベツ、レタス、きく、スイートコーン、カーネーション、宿根かすみそう、トルコギキョウなど多くの作物を加害する。
 卵は新鞘先端部などに1卵ずつ産みつけられ、塊で産みつけられることはない。1雌当たりの平均産卵数は400~700個である。
葉に限らず茎に食い入ったり果実を食い荒らしたりする農業害虫らしい。

2021/01/24

池でジュンサイの茎に単独で産卵するヤンマ♀と近くで警護する♂【トンボの名前を教えて】

 

2020年9月下旬・午前11:15頃・晴れ 

山中の沼の水面付近で、おそらくヤンマ科の一種と思われる数匹のトンボが激しく飛び回っていました。 
1/5倍速のスローモーションでまずはご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
ジュンサイの楕円形の浮葉が並ぶ水面の上空を♀が単独でホバリング(停空飛行)しています。 
水面に打水産卵するのではなく、腹部をだらんと垂らしながら低く飛んで、腹端で水面の産卵適地を探っているようです。 
やがてヤンマ♀は水面下に伸びるジュンサイの細い茎に着陸し、茎の組織内に卵を産み始めました。 
産卵中は翅の羽ばたきを止めました。 

その間、産卵する♀の近くで♂が警護のためホバリングしていました(配偶者ガード、交尾後ガード)。 
ライバル♂が♀に近づくと追い払います。 

配偶者の♂が少し離れた隙にまた別のライバル♂が飛来して、産卵中の♀を素早く抱えて飛び上がりました。 
これも1/5倍速のスローモーションでまずはご覧ください。 
♂は儀式的な求愛行動もなく、強引に♀を連れ去ろうとしたものの、うっかり空中で♀を離してしまいました。(♀による交尾拒否?) 

誘拐未遂を逃れた♀はジュンサイの葉に舞い戻り、産卵行動を再開しようとしましたが、結局はすぐに飛び去りました。 
♂に邪魔(ハラスメント)されない静かな産卵場所を探して移動したようです。 
水面から飛び立つ瞬間に自らの羽ばたきで水飛沫が上がったのが印象的です。 

映像からこのトンボの名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。 
日差しが強く水面からの照り返しも眩しくて、私にはトンボの特徴がよく見えませんでした。 
しっかり横を向いてくれなかったのも不運でした。 
馴染みのあるギンヤンマではなさそうです。 
私がもう少し粘って同定用の良い写真が撮れれば良かったのですけど、先を急がないといけない用事があったので、長居できませんでした。 
次回は、ヤンマの恋の三角関係をハイスピード動画で撮るのも面白そうです。
ヤンマsp♀@池:ジュンサイ茎+産卵
ヤンマsp♀@池+♂@警護ホバリングvsライバル♂
ヤンマsp♀@池:ジュンサイ茎+産卵+♂@交尾未遂

2021/01/15

スギの樹皮に産卵するミドリヒョウモン♀

 

2020年9月下旬・午前11:30頃・晴れ 

里山の林道脇に立つスギ(杉)の幹にミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)が興味を示して何かしています。 
垂直の幹に止まり、腹端を樹皮に押し付けていました。 
産卵行動です。 
幼虫の食草はスミレのはずなのに、杉の幹に産卵するとは意外でした。 
産卵中の♀は翅を半開きにしたまま静止しています。 
飛び去った後、樹皮に産み付けられた卵が1粒ちらっと見えました。 
杉の幹を下から上に飛んで移動しながら樹皮のあちこちに卵を産み付けています。 
幹に止まるとミドリヒョウモン♀の翅裏は目立たない保護色となるので、何度も見失いそうになりました。 
スギ樹皮の表面が緑色の粉を吹いているのは地衣類なのでしょうか?(あるいはカビの胞子?) 
やがてスギの枝葉に隠れて蝶を見失ってしまいました。  
スギの幹にはフジの蔓が巻き付いていたものの、今回ミドリヒョウモン♀はフジに産卵することはありませんでした。 

スギの樹皮はミドリヒョウモンの幼虫の食草ではないので、素人考えでは餌不足による幼虫の共倒れを防ぐために1粒ずつ分散して産み付ける必要はないような気がします。 
越冬卵が野鳥に全て捕食されるのを避けるためのリスクヘッジなのかな? 

幹のかなり高い地点まで(目測で6〜7m)ミドリヒョウモン♀は繰り返し卵を産み付けていました。 
ここは北国でも豪雪地帯です。 
ミドリヒョウモン♀が「虫の予感」を発揮して卵が冬の雪に埋もれる高さを避けているのだとすると、この冬はよほどの積雪量が予想されるのかもしれません。(予報は的中!) 
ロマンあふれる似たような仮説はオオカマキリでも提唱されたことがあるのですが、残念ながら科学的には後に否定されたと聞いています。 
 
ミドリヒョウモンではどうなのか、駄目元で誰か調べたら面白いかもしれません。 
しかし、ヒョウモンチョウの卵はカマキリの卵鞘よりはるかに小さくて見つけにくいので、フィールドで調べるのは至難の業(ほぼ不可能)でしょう。 
雪の降らない暖地では立木に産卵するにしても地上からの高さは低くなる、という傾向があるのかな?
母蝶♀が産卵する瞬間を観察するしかありません。 
私も厳冬期に現場を再訪して最高積雪量と産卵地点との関係を調べたいところですが、あまりにもアクセスが悪い山奥なので無理そうです。 
山スキーを履いて行くだけでなく、雪中野営する本格的な冬山装備が必要です。 
採卵して根雪に埋めると生存率(孵化率)が下がるという飼育実験は(やろうと思ったら)出来そうです。

そもそも私はミドリヒョウモン♀が食草のスミレに産卵するのを一度も見たことがありません。
▼関連記事(7年前の撮影) 
石垣に産卵するミドリヒョウモン♀暗色型 
ミドリヒョウモン♀の産卵と交尾拒否
それにしても立木の幹に産卵するとは驚きで、スクープ映像が撮れた!と興奮しました。 
この日の山行で一番の収穫でした♪ 
ところが、いそいそと帰宅して図鑑や本を色々と調べてみると、私が知らなかっただけで既に報告されており、拍子抜けしました。 

 『フィールドガイド日本のチョウ』p197によれば、
(ミドリヒョウモンの)♀は樹木の樹冠部に産卵する。
久保快哉 編『チョウのはなしII』によると、
ミドリヒョウモンは秋になって食草のスミレがありそうな樹林の中にやってくると、あたりの立木の樹皮などに卵を産むのです。春になって孵化した幼虫は、木を伝ってスミレにたどりつくのですが、わずか2mmくらいの仔虫にとって、ときには10m以上もの道のりは苦難の旅立ちといえましょう。(p13より引用)
 

 『日本動物大百科9昆虫II』によると、
1卵ずつ産む産卵様式は大型ヒョウモンチョウ類でも見られるが、このグループでは卵は食草に産みつけられるのではなく、食草の自生する生息場所内の立木、枯れ枝、小石、コケ類、その他に産みつけられる。(p48より引用)

2021/01/12

日光浴中のヒメスズメバチ♂にセスジハリバエが奇襲産卵?!

 

2020年9月下旬・午前10:55頃・晴れ 

里山の細い登山道でヒメスズメバチ♂(Vespa ducalis)が日光浴していました。 
ほっそりした体型で触角が長いので雄蜂♂と分かります。 

そこへ突然、セスジハリバエTachina nupta)が飛来し、ヒメスズメバチ♂を背後から襲撃しました。 
1/5倍速のスローモーションによるリプレイをご覧ください。(@0:49〜) 
ハエの羽音を聞いたヒメスズメバチ♂は翅をやや開いて警戒姿勢になりました。 
寄生性のセスジハリバエの性別を私は外見で見分けられません。
 (1)もし♀だとすると、セスジハリバエ♀がヒメスズメバチ♂に体当りした瞬間に、ヒメスズメバチ♂の体表に素早く産卵したのでしょうか? 
しかし、セスジハリバエの寄主は確か鱗翅目(蝶や蛾)の幼虫のはずです。 
ヤドリバエ科の寄生バエがスズメバチに寄生するという話を私は見聞きしたことがありません。 
(2)別の解釈を苦し紛れに考えてみると、全身のカラフルな斑紋・配色が少し似ているので、セスジハリバエ♂が大型のヒメスズメバチ♂に誤認求愛したのでしょうか? 
(3)セスジハリバエ同士で縄張り争いがあり、見かけが少し似ていたヒメスズメバチはそのとばっちりを受けたのかもしれません。 
(4)単なる偶然の衝突? 
しかし、ハエはぶつかる前に標的を見定めるように一瞬ホバリングしていました。
(5)小鳥が天敵の猛禽類をモビング(擬攻撃)するように、ハエも気に入らないスズメバチをモビングして追い払うのでしょうか?

背後から 不意打ちを食らったヒメスズメバチ♂は慌てて逃げ出しました。 
飛ばずに下草の陰に潜り込むと、身繕いを開始。 
前脚を舐めて濡らし、長い触角を拭っています。 
私が少し近づくと、再び日向に這い出てくれました。 
体表に寄生バエの白い卵(またはウジ虫)は見当たりません。  

やがてヒメスズメバチ♂は元気に飛び去りました。 
もし捕虫網で捕獲して飼育すれば、やがてセスジハリバエの卵が孵化して寄主の体を食い尽くしたかな? 
ハエの羽化まで確認すれば、センセーショナルなスクープ(大発見)になったかもしれません。  

実はスズメバチとセスジハリバエの組み合わせは過去にも観察しています。
▼関連記事(5年前の撮影) 
ノダケの花蜜を吸うコガタスズメバチ♀とセスジハリバエ
このとき、訪花中のコガタスズメバチのワーカー♀は目障りなハエを押し出したり払い除けたりしていました。
ところが小競り合いの度に、敏捷で図太いハエはすぐにノダケの花に舞い戻りました。 
なんとも思わせぶりな行動なので、ひょっとすると本当にセスジハリバエの寄主はスズメバチなのかもしれない、という妄想が膨らみます。
少なくともセスジハリバエはスズメバチをあまり恐れずに強気な態度で接する様が印象的でした。


【追記】
文献検索で以下の重要な情報がヒットしました。
セスジハリバエ♀は寄主の体表に直接産卵しないらしい。
今回私が見たのは別種のヤドリバエなのかな?

舘 卓司, セスジハリバエ幼虫の奇妙な寄生行動(双翅目:ヤドリバエ科), 日本昆虫学会, 2015.09, 
セスジハリバエ Tachina nupta Rondaniは旧北区に広く分布し,日本のヤドリバエの中でも普通種の一つである.福岡市では,成虫は少なくとも春と秋に二回見ることができる多化性である.本種は待機型幼虫を産卵(仔)する間接型寄生であり,ヨトウガ類(ハスモンヨトウなど)に単寄生することが知られている.

2020/12/07

キタキチョウ♀の産卵を邪魔する♂の求愛ハラスメント

 

2020年8月中旬・午前11:55頃・晴れ 

峠道の横に自生する、マメ科草本植物にキタキチョウ♀(Eurema mandarina)が止まって産卵していました。 
おそらくメドハギと思われますが、花が咲いていないので、いまいち自信がありません。 
キタキチョウ♀の産卵シーンは嬉しい初見です。
▼関連記事(1年前の撮影) 
ネムノキ幼木に飛来した産卵前のキタキチョウ♀【HD動画&ハイスピード動画】
腹端を曲げて食草の葉裏に1粒ずつ産卵しています。 
少し飛んでは位置を変え、次々に産み付けています。 
鈴木知之『虫の卵ハンドブック』に書いてある通りでした。
(キチョウの)♀は食草の新芽や新葉に、1卵ずつ細長い紡錘形の卵を産む。(p99より引用)
探雌飛翔中の♂が産卵中の♀を目ざとく見つけて乱入しました。 
♂に産卵を邪魔(ハラスメント)された♀が飛んで逃げ、激しい乱舞となりました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:56〜) 
キタキチョウの性別は、翅の黄色が濃い方が♂で、薄い(白っぽい)方が♀です。 
求愛から交尾には至らず、♂はすぐに諦めて飛び去りました。 
♀が♂に交尾拒否の意思表示をどのように示したのか、それともただ逃げ回っていただけなのか、映像を見ても私には分かりませんでした。

2020/12/03

スキバツリアブ♀:産卵前の尾端接地行動

 

2020年8月中旬・午前11:00頃・晴れ 

里山の細い山道を下山中に多数のスキバツリアブ♀(Villa limbata)と出会いました。(標高380m地点) 
寄生種が多いということは、自然度が高い環境と言えます。 
踏み固められた山道の上を低空で忙しなく飛び回り、頻繁に着陸して腹端を地面に付けています。 
これは産卵行動なのでしょうか? 
腹端を地面に擦り付けながら少し前進することもありました。 
ツリアブの仲間は産卵前に♀が腹端の砂室に砂粒を取り込んで卵を予め砂でまぶしておく習性があるそうです。 (※追記参照)
確かに横から見ると、着陸したとき腹端に砂を取り込んでいるようです。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
▼関連記事(8年前の撮影) 
ビロウドツリアブ♀がホバリング飛行しながらお尻を地面にチョンチョン
wikipedia英語版でツリアブ科のページを参照すると、イタリアで撮影された同属のツリアブ♀(Villa sp.)による動画が公開されています。 
その見事な生態映像では、同じ場所に留まって腹端を地面に何度も擦り付けていました。 
今回私が観察したスキバツリアブ♀は頻繁に場所を変えたので、尾端接地行動ではなく産卵行動そのものなのかもしれません。 
しかし、私がいくら目を凝らしても寄主となるハナバチ類の巣穴をこの山道に見つけられませんでした。 
暑い盛夏には巣口を閉じてしまう種類のハナバチなのかもしれません。 
おそらくスキバツリアブ♀は匂いで寄主の巣口を探り当てて産卵し、孵化した幼虫は自力で巣穴に潜り込むのでしょう。 
春や秋など季節を変えて探してみれば、この山道に営巣するコハナバチやヒメハナバチの巣穴が見つかるかな? 

※【追記】
他の方のブログなどでは「尾端接触行動」と呼んでおられますが、「接触行動」では曖昧なので、「接地行動」と呼ぶことを勝手ながら提唱します。


【追記2】
1年後にハイスピード動画でじっくり記録することに成功しました。


2020/11/30

コウヤツリアブ♀の産卵飛翔【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年8月中旬・午前10:25頃・晴れ
▼前回の記事 
軒下で寄主の巣穴を探し回るハラアカヤドリハキリバチ♀
郊外にある木造平屋建ての民家の軒下でコウヤツリアブ♀ (Anthrax aygulus)がホバリング(停空飛翔)していました。 
木の梁のあちこちに小さな虫食い穴が開いています。 
そこに借坑性の蜂(ドロバチ類やオオハキリバチなど)が営巣しているようです。 
労働寄生種であるコウヤツリアブ♀は、寄主の巣穴に産卵するため飛来したのです。 
寄主の巣口の手前でホバリングしながらときどき腹端をチョンチョンと標的に触れて(?)繰り返し産卵しています。 

コウヤツリアブ♀の産卵行動を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:52〜) 
腹端の白い部分がホバリング中にヒラヒラしている(ように見える)のが気になりますが、どういうことかよく分かりません。 
コウヤツリアブ♀は停飛しながら寄主の巣口を何度も覗き込み、狙いを定めると腹端を振り子のように大きく前方に振って卵を勢い良く射出していました。 
着陸してじっくり産卵した方が体力の消耗もはるかに少ないはずなのに、ホバリングの名手は産卵中もホバリングを止めません。 

ようやく産卵が一段落すると、板壁に止まって小休止。 
寄主の巣穴や材の割れ目が見えない位置に止まったので、次に卵を産む標的をじっくり調べているのではなく、ただの休息だと思います。 
すぐにまた飛び立つと、次の寄主の巣穴に対してホバリング産卵を再開しました。 

同定用にストロボ写真も撮りたかったのですが、動画撮影を優先していたら寄生ツリアブに逃げられてしまいました。 
動画のスナップショットだけでもなんとか翅の黒い斑紋の特徴からコウヤツリアブ♀と同定することができました。 

労働寄生者(寄生ツリアブやハラアカヤドリハキリバチ♀)が軒下で狼藉を働いている間に、寄主の蜂は一度も戻って来ませんでした。 
したがって寄主の正体は不明です。

2020/04/29

キボシカミキリ♀♂の交尾行動(交尾器のクローズアップ)



2019年10月下旬・午後16:23〜16:34(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
キボシカミキリ♀が桑の幹を移動しても追従する♂(配偶者防衛行動)


キボシカミキリ♀♂(Psacothea hilaris hilaris)2ペアの交尾行動をマクロレンズで接写することができました。
薄暗い夕方なので、補助照明の白色LEDを点灯しています。
本来キボシカミキリの配偶行動は夕方から夜にかけて活発に行われるらしいのですが、照明が眩しくても幸い交尾行動に影響はなさそうです。

ヤマグワの樹皮を大顎で齧って傷つけて産卵加工している♀を撮っていると、前傾姿勢で大顎に力を込める♀の腹端で産卵管(焦げ茶色の細い筒状)が少し伸縮していました。
♀の口元には樹皮を削り取った木屑が付着しています。
♀の背後からマウントした♂がときどき♀の背中を口髭で舐めて(リッキング)います。
やがて♂が腹端を強く曲げて交尾器を伸ばし始めました。
茶色い♀産卵管の末端から♂交尾器を挿入したようです。
初めて見るキボシカミキリの♂交尾器は黄色くて細長く、ねじれていました。
1分足らずで♂が交尾器を引き抜くと、長いペニス(腹部の長さとほぼ同じ)は直ちに縮んで腹端に格納されました。
交尾に挑むマウント姿勢が浅い気がしたのですが、これほどペニスが長いのであれば納得です。
交尾中も♀は構わずに産卵加工を続けています。
交尾が済んでも♂は♀の元を離れずに交尾後ガードを続けます。

2組目のカップルでは交尾開始を見逃してしまいました。
この♂の交尾器は白かったです。
ペニスの色の違い(黄色/白色)は撮影角度や照明の有無によるものか、それとも移精の有無によるものか、どちらでしょう?


キボシカミキリは♂同士で精子競争があるそうです。
深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

 キボシカミキリの♂は、精子置換(sperm displacement)を行う。交尾の最初の段階で、短い間交尾器で接続する行動を反復し、このときに♂は♀体内にある先に交尾していたライバル♂の精子を、生殖器の先の逆だった鱗状の構造によって掻き出して除去している(sperm removal)。このあとに交尾器での長時間の接続を行い自分の精子を注入する。この掻き出しにより98%の精子が除去されるという。甲虫の♀が複数♂と交尾したとき最後に交尾した♂の精子が受精に有利とされている (『カミキリムシの生態』第5章p175より引用)



しかし撮影時の私はそこまで深い知識が無かったために、何回目の交尾行動なのかじっくり観察していませんでした。
つまり、今回撮れた映像が精子置換行動なのか、それとも射精を伴う本当の交尾行動なのか、不明です。
交尾器の挿入時間が短くてすぐに引き抜いてしまうのが意外でした。
(カメラの眩しい照明のせいで交尾を中断した可能性は?)
特定の♀♂ペアの動向を長時間ひたすら注目するべきでしたが、私にはその余裕がありませんでした。
桑の木のあちこちで繰り広げられる♀♂複数ペアの交尾行動を、目移りしそうになりながら夢中で接写していたのです。

つづく→キボシカミキリ♂同士の喧嘩(配偶者防衛に成功)




2020/04/27

桑の幹を移動するキボシカミキリ♀に追従する♂(配偶者防衛行動)



2019年10月下旬・午後16:17〜16:31(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
ヤマグワの樹皮を産卵加工するキボシカミキリ♀

川岸に生えた1本のヤマグワの幹のあちこちでキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)の様々な配偶行動が繰り広げられるので、初めて観察する私は目移りしてしまいます。

この記事では、幹を徘徊する♀に注目して、交尾後の3ペアの映像をまとめました。
♀がゆっくりと幹を登ったり降りたり移動しています。
落ち着くと鋭い大顎で樹皮を齧って産卵加工を始めました。
産卵に適した場所をどうやって探り当てるのでしょうね?

幹を徘徊・探索する♀の背後を触角の長い♂がぴったりと付いて歩いています。
油断なく交尾後ガードを続けているのです。
♀が産卵を無事に終えるまで自分の精子が受精に使われたという保証がないので、♀が浮気しないように見張っている必要があるのです。

深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

(キボシカミキリでは、)♂が♀と交尾後、さらに産卵中も♀に前脚を掛け、ガードしている♂の配偶者防衛行動が見られる。 (『カミキリムシの生態』第5章p175-176より引用)

マクロレンズで接写したシーン2では、初め♀の体軸に対して♂は斜めにマウントして交尾後ガードしていました。
♀が幹を上に上るに連れて、♂は♀と同じ向きにマウントする姿勢になりました。


カミキリムシでは♀の体表構造(毛の生えた向きなど:しぐま註)によりマウント方向が決まるという報告は無く、キボシカミキリの場合は♂による腹部末端の位置の調節ほか、♀が歩きだし、♂が追従することによってマウント方向が確定するものと考えている。 (同書p170より)

接写してみて初めて気づいたのですが、どうやら♂は♀の背中をずっと舐めているようです。
この行動はリッキングと呼ばれるそうです。

・♂は♀を捕捉したのち各段階で♀背面を口ひげで舐める行動(licking)を繰り返す。 (同書p160より)
様々なカミキリムシにおいて♂のlicking(口髭で舐める行動)は♀を「なだめる」効果があるとされている。♀が♂の口髭による背面への接触を認識し、拒否的行動を止めるということである。このlicking行動は、♂が接触化学感覚子の密集した口髭で触って♀の体表のコンタクトフェロモン成分を能動的に受容する行動(active sensing)でもあると考えられる。 (同書p162より)


キボシカミキリ♂@交尾後ガード+リッキング


シーン3では、♂をつれた♀が幹の根際を下に下りていきます。
ところが♀は向きを変え、幹の裏側に回り込んでしまいました。



つづく→キボシカミキリ♀♂の交尾行動(交尾器のクローズアップ)


2020/04/25

ヤマグワの樹皮を産卵加工するキボシカミキリ♀



2019年10月下旬・午後16:10〜16:40(日の入り時刻は午後16:41)


▼前回の記事
寄主ヤマグワに飛来したキボシカミキリ♂の探雌行動

寄主植物であるヤマグワの木に集まってきたキボシカミキリPsacothea hilaris hilaris)の♀は何をしているのでしょう?
口元を接写すると、固い桑の樹皮を大顎で一心不乱に齧っています。
齧った樹皮を餌として食べて(飲み込んで)いるのか、という点を知りたいのですけど、接写してもよく分かりませんでした。
接写のための補助照明として白色LED(外付けストロボに付属)を点灯しても特に行動への影響はなさそうでした。

平凡社『世界大百科事典』でキボシカミキリを調べると、

成虫は5月ごろから出現し,イチジク,クワ類の葉を食し,また,これらの木の樹皮をかじって傷をつけ,その中に産卵管をさし入れて1個ずつ卵を産みつける。

このようにカミキリムシ♀が樹皮を齧る行動を正式な専門用語で「産卵加工」と言うらしいのですが、私を含め何も知らない素人には「産卵した後に卵を加工するのか?」という誤解を生む気がします。
例えば「産卵前加工」とか「産卵基質加工」と呼ぶのが適切ではないかと思うのですが、長年業界で使われてきた用語を変更するのは難しいのでしょう。

深谷緑『キボシカミキリの配偶行動と生態情報利用、体サイズ』によると、

キボシカミキリ♀は、樹皮に顎で穴を開け(産卵加工)、この穴に1卵ずつ丁寧に卵を産んでいく。 (『カミキリムシの生態』第5章p175より引用)

そもそもカミキリムシ♀がどうして産卵加工をするかと言うと、

寄主植物にはカミキリムシ幼虫を体内に住まわせるメリットは何もないから、カミキリムシ側の一方的な侵略に対して寄主植物側は有害な樹液を滲出させるなど何らかのディフェンスを行う。このディフェンスから卵を保護する手段の一つが産卵加工だ。 (同書・第3章p101より引用)

この解説は新鮮でした。
樹液(忌避物質)を局部的に枯渇させたり堰き止めたりする目的なのだとしたら、一部のイモムシなどが摂食行動の前にやるトレンチ行動と似てますね。

キボシカミキリ♀が産卵加工の重労働に励んでいる間、♂がぴったり付き添っています。
複数ペアを撮影したのですが、体格は♀>♂で、触角の長さは♀<♂でした。
多くの場合、♂は♀の背後から覆いかぶさるようにマウントしているものの、交尾器は結合していません。
♀の背で前後逆あるいは斜めにマウントしている♂もいました。(定位の問題)
♂の触角は直線状で長いのに対して、♀の触角は緩やかに弧を描くように曲がっていました。


カミキリムシでは、♂が父性を確保するために、交尾後も長時間♀から離れず、産卵中もマウントを続ける、いわゆるpair-bondingを行う。(同書・第7章p259より引用)

長時間かかる産卵加工の一部始終を微速度撮影したかったのですが、日が暮れて暗くなってしまいました。
残念ながら赤外線カメラ(暗視カメラ)など夜間の撮影の準備をしてこなかったので、肝心の産卵シーンも今後の宿題です。


つづく→




2020/04/01

水路底のコケに連結打泥産卵するアキアカネ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】



2019年10月上旬・午前11:25頃

平地の農耕地(田畑)を流れる用水路で連結した赤とんぼの♀♂ペアが産卵していました。
収穫の済んだこの時期、農業用水路に水はほとんど流れていません。

同定のために撮った写真をよく見ると、アキアカネ♀♂(Sympetrum frequens)のようです。
♂の腹背は橙赤色でいわゆる赤とんぼでしたが、♀は腹部が淡褐色のままの個体でした。

水路の底を連結態で低く飛びながら、緑の苔(種名不詳)に覆われた石を目掛けて繰り返し産卵しています。
この場合は、連結「打水」産卵ではなく連結「打泥」産卵と呼ぶべきかもしれません。

「打苔」産卵という用語は無いみたいです。




アキアカネ♀♂の連結打泥産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:27〜)
♀が全身を使って振り子のように前方の目標物に腹端を打ち付けて産卵しています。
湿った苔だけでなく水際の泥や小石にも産卵していました。
水面ならどこでも良い連結「打水」産卵とは明らかに違います。
なぜか最後はとんぼ返りして飛び去りました。


一方、ノシメトンボ♀は空中で苔の上から卵を放出していました。(打空産卵)

▼関連記事
スギゴケ?の上で連結打空産卵するノシメトンボ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】


アキアカネ♀♂:側面@水路底:苔+連結打水産卵
アキアカネ♀♂:背面@水路底:苔+連結打水産卵

2020/03/12

産卵の合間に連結態のまま休むミヤマアカネ♀♂【ハイスピード動画】



2019年9月下旬・午前11:15頃

川の本流に注ぐ浅い水路で複数のミヤマアカネ♀♂(Sympetrum pedemontanum elatum)ペアが連結打水産卵していました。(映像公開予定)

尾繋がり(連結態)のままコンクリート護岸に静止ししている♀♂ペアを見つけました。
疲労困憊で休んでいるのでしょうか?
飛び立つ瞬間を狙って撮った240-fpsのハイスピード動画を撮ってみました。
♀は腹端を水中に浸しているのですが、産卵中なのかどうか不明です。

しばらくすると♂が先に羽ばたき、♀を空中に引き揚げました。
続いて♀も羽ばたいたので、死んではいませんでした。
その後は普通通り、連結打水産卵を再開しました。

少し離れたコンクリートブロックに連結態(尾繋がり)のまま休憩している別の♀♂ペアを発見。
♀の腹端が死角で見えないのが残念です。(産卵中?)
しばらくすると♀が羽ばたいて離陸を試みるものの、♂は疲れ切っているのか無反応でした。
♀にしてみればペアを解消して元気な♂と組み直したいかもしれません。
やがて♂が先に羽ばたき、♀を引き揚げるように離陸しました。
連結打水産卵を再開したはずですが、見失いました。

wikipediaでミヤマアカネを調べると、まさに今回観察したことが記載されていました。

産卵の途中で「キ」の字に連なったまま植物などにつかまり休息することも多い。


▼関連記事(9日前に別の水路で撮影)
用水路で連結打水産卵するミヤマアカネ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】


2020/03/06

夕方の池で連結産卵するギンヤンマ♀♂



2019年9月下旬・午後16:25頃

林に囲まれた夕方の溜池でギンヤンマAnax parthenope julius)の連結ペア♀♂が産卵していました。
この時間帯でギンヤンマの産卵行動を観察したのは初めてです。
薄暗い上に逆光でトンボを撮ったので、ほとんどシルエットしか見えません。
ストロボを焚いて写真に撮ろうか迷ったのですが、閃光に驚いて逃げられてしまうと困ります。
岸からでは被写体にフラッシュが届かない距離だろうと判断し、諦めて動画撮影を続けました。
動画編集時に彩度を少し上げたらようやくギンヤンマに特徴的な体色が見えるようになりました。

枯死したガマやヨシなど抽水植物の枝(茎?)にしがみつき、下側の♀が腹端だけを水中に浸して植物組織の中に産卵しています。
頻繁に飛び立つと少し移動してから別の茎に止まり直し、あちこちで同様に産卵を続けます。
♀の腹端が着水すると、池の水面に波紋が広がります。

連結態で飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、必ず♀が♂よりも先に羽ばたき始めることが分かりました。
産卵時の主導権は、やはり♀が握っているようです。

しばらくすると、ようやく一箇所に落ち着いてじっくり産卵するようになりました。
それまでは、産卵基質の状態が気に入らなかったのでしょう。(未産卵?)
そこへ単独のギンヤンマ(あぶれ♂)が飛来しました。(@1:41;探雌飛翔)

(※ 黄昏飛行と呼ぶには未だ時間帯が早いでしょうか?)
あぶれ♂が♀♂ペアの上空でホバリング(停飛)すると、連結態の♂がその場で軽く羽ばたいて、あぶれ♂を撃退しました。
産卵に専念している♀は、特に交尾拒否行動をしませんでした。
トンボの♂は交尾しても♀が産卵してくれるまでは、自分の精子で確実に受精したという保証がありません。
尾繋がりしている状態であれば、ライバル♂に♀を奪われる心配は無くなります。(交尾後ガード)
逆に、あぶれ♂の存在が産卵警護の必要を生むのでしょう。
交尾後もライバル♂が居なければ、♂は連結態を解除して(次の♀を探しに行き)♀は単独で産卵することもあります。

▼関連記事
池で単独産卵するギンヤンマ♀
ギンヤンマ♂♀の連結産卵

一方、水面を泳ぎ回るアメンボが近づいても産卵中のギンヤンマ♀♂は気にしません。

あぶれ♂がもう来なくなっても、ギンヤンマの翅が小刻みに震えています。
日が落ちて気温が下がり、胸部の飛翔筋を震わせて離陸前の準備運動をしているのかもしれません。
(風で翅がはためいているだけかな?)


ギンヤンマ♀♂@池:枯茎+連結産卵
ギンヤンマあぶれ♂@池+探雌飛翔

2020/03/05

ネムノキ幼木に飛来した産卵前のキタキチョウ♀【HD動画&ハイスピード動画】



2019年9月下旬・午後14:20頃・晴れ

岩だらけの河原の砂地に生えたネムノキの幼木の周囲をキタキチョウ♀(Eurema mandarina)が忙しなく飛び回っていました。
ネムノキは本種幼虫の食樹植物の一つです。
葉に一瞬止まって品定めしたものの、すぐに離れたので産卵はしていないようです。
このネムノキがよほど気になるようで、何度も舞い戻って来ます。

むしろ、どうして産卵しないのだろう?と不思議に思いました。
キタキチョウ♀の飛翔シーンを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:03〜)

撮影後にネムノキの葉をよく調べて卵の有無を確認すべきでしたが、すぐに他の被写体に気を取られてすっかり忘れてしまいました…。


キタキチョウ♀@ネムノキ幼木+飛翔

2020/02/22

河原の砂地に産卵するウラギンヒョウモン♀



2019年9月下旬・午後14:17・晴れ

岩がゴロゴロした河原でウラギンヒョウモン♀(Fabriciana adippe)が翅を軽く開閉しながら歩き回り、腹端で地表の状態を探っています。
立ち止まると腹端を砂地に軽く突き立てるようにして産卵を始めました。
飛んだり歩いたりして少し移動してから再び砂地で産卵しています。
河原に咲いたカワラハハコなどに訪花するのではなく、産卵を繰り返していました。

ウラギンヒョウモン幼虫の食草はスミレ類のはずです。
春になったらここにスミレが生えてくるのでしょうか?
ぜひとも確認しに来ないといけません。
川沿いに生えるスミレとして、例えばケイリュウタチツボスミレという種類があるそうです。
しかし、この現場は渓流とは言えず、上流域から中流域に移行する辺りだと思います。

私は未だウラギンヒョウモン♀が食草のスミレに産卵するシーンを観察したことがありません。
花が咲き終わると私にはスミレが見分けられなくなるのが問題です。

▼関連記事(3年前の撮影)
農道の枯草に産卵するウラギンヒョウモン♀

ウラギンヒョウモン♀翅裏@河原砂地+産卵
ウラギンヒョウモン♀翅表@河原砂地+産卵
ウラギンヒョウモン♀翅裏@河原砂地+産卵

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