ラベル 貯食 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 貯食 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2023/04/22

給餌したドングリを次々に持ち去り地中に埋める野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年10月中旬

里山の斜面に立つカラマツ大木の根元に泥汚れがあり、イノシシがヌタ打ちした後に体を擦り付けた痕跡ではないかと予想してトレイルカメラで長期間見張っています。 
しかし当地ではイノシシの生息数が少ないこともあり、待てど暮らせどイノシシが期待した行動をしてくれません。 
イノシシを待ちながら、ついでに別なプロジェクトを始めることにしました。 

秋になると様々な野生動物や野鳥が木の実(堅果)を運び、冬の食料として貯食します。 
トレイルカメラの前に堅果を大量に給餌すれば、持ち去る様子を観察できるはずです。 
元々はカケスの貯食行動を調べた本を読んで、私も真似してやってみようと思ったのがきっかけです。 

 

実は前の年(2021年)に予備的な実験を行ったのですが、失敗に終わりました。 
拾い集めたドングリを籠に入れて林床に放置しておくだけでは、やがて落ち葉が積もって埋もれてしまいました。(ドングリが落ち葉に隠されて野鳥や動物が見つけられなくなる?) 
そして台風が来ると、籠ごと吹き飛ばされてしまいました。 
監視カメラは設置しませんでしたが、ドングリが持ち去られた形跡はありませんでした。 
野生動物や野鳥が普段から探餌活動している場所を給餌場に選ばなかったのも問題でした。 
こういう細かなノウハウは本にも書いてませんから、自分で試行錯誤するしかありません。

給餌したドングリが雨で濡れると発芽したりカビが生えたりするので、対策が必要です。 
このカラマツ大木は多雪地帯の山地に特有の樹形で、根元が強く湾曲しています。 
オーバーハングした幹が庇のようになって、その下の地面には雨や落ち葉がかかりません。
乾いた地面を少し掘って窪みを作り、ドングリを並べて置いてみます。 

森の堅果をせっせと貯食する代表である野ネズミやニホンリス、カケスが泥カラマツの周囲で活動していることも、それまでの監視映像で分かっています。 
トレイルカメラに写ったことはありませんが、カケス以外の鳥としてはゴジュウカラやヤマガラも秋に木の実を貯食します。
通りかかったイノシシやタヌキがドングリを食べてくれる可能性もありそうです。 

7日前に同じ山系の山道に落ちていた大量のドングリを拾い集めました。 
ドングリの形状から樹種はミズナラのようです。 
密閉容器ではドングリが蒸れて腐ったり発芽したりしてしまうので、蓋を少し開けて保管しました。 
落果を採集した時点でシギゾウムシ幼虫による脱出口があるものは除いたつもりだったのに、1週間後にミズナラ堅果を現場に持参するとビックリ。 
ほとんどのドングリがシギゾウムシに寄生されていて、老熟幼虫がドングリの中から穴を開けて外に脱出していました。

 

虫に食われたドングリを使っても野生動物の貯食行動には影響しないだろうと思い、そのまま給餌することにしました。 
(虫食いドングリを野鳥や動物が忌避して貯食しないのなら、それはそれで面白い現象です。) 
ドングリから脱出していた5匹のシギゾウムシ幼虫は、林床に捨てました。 
(ドングリを採集した地点と同じ山なので、放虫しても問題ないと考えています。) 
シギゾウムシの老熟幼虫は自ら地中に潜って蛹化するはずです。 
その様子を野外で微速度撮影したかったのですが、今回は時間がありませんでした。
関連記事(9年前の撮影)▶  
ドングリから脱出したコナラシギゾムシ?終齢幼虫の歩き方 
コナラシギゾウムシ?終齢幼虫の徘徊運動【微速度撮影】
現場(泥カラマツ下)で拾ったドングリ1個を追加し、カラマツの根元に計33個のドングリを山状に積み上げました。 
国内外来種を勝手に種子散布すると問題ですけど、この餌場は雑木林にありますから、同じ山から拾ってきたミズナラやコナラの堅果を撒いても不自然ではありません。
前置きが長くなりましたが、餌場に何がやって来るのか楽しみです。



シーン1:10/11
持参したドングリ(ミズナラ堅果)のスライドショーと、昼間の給餌直後に撮った現場の様子です。 
画面の上から下に向かって下る斜面になっています。 


シーン2:10/12・午前1:27 (@0:18〜) 
深夜に野ネズミ(ノネズミ)が右から登場しました。 
シシガシラなどが生えた右上の斜面をチョロチョロと徘徊して餌を探しています。 
カラマツの背後を左に回り込んでから、下に降りてきました。 
遂に野ネズミがカラマツ根元のドングリ餌場を見つけました。(@1:01〜) 
興奮して匂いを嗅ぎ回っていたら、うっかり鼻で押したドングリが1つ斜面を転がり落ちてしまいました。(@1:03〜) 
その後を野ネズミが慌てて追いかけます。 
「どんぐりころころどんぐりこ♪ お池にはまってさぁ大変!」 
斜面の下に池はありませんが、水溜りがあります。
林床を少し転がっただけで止まったドングリを野ネズミは無事に拾って口に咥えると、左に運び去りました。 

これでドングリ餌場の存在を知った野ネズミが繰り返し通ってくるかと思いきや、不思議なことにこの日は貯食活動を止めてしまいました。 
ドングリが転がり落ちるというアクシデントのため、気が散って餌場の場所を記憶できなかったのかな? 
どこか安全な隠れ家で時間をかけてドングリを食べたのかもしれません。 


シーン3:10/13・午後21:58(@1:15〜) 
夜行性の野ネズミは翌日の夜10時まで現れませんでした。 
カメラが起動したときには既に餌場に来ていて、カメラを凝視したままフリーズしています。
やがて警戒を解くと、細長いミズナラ堅果を1個選び、横向きに咥えてから左下に持ち去りました。 


シーン4:10/13・午後22:00(@1:36〜) 
数分後、餌場に戻って来た野ネズミは赤外線LEDの点灯に驚いたのか、左下に大きくピョーンと跳んで逃げました。(@1:37〜) 
宝の山を見つけた「喜びの舞い」だとしたら面白いのですが、どうでしょうか。
すぐにまた餌場に戻ると、ドングリを1個横向きに咥え、右に運び去りました。 

私には野ネズミの個体識別どころか種類(アカネズミかヒメネズミか)も見分けられません。
分かる人がいたら教えて下さい。
同一個体が餌場に通っていると仮定して、行き先が毎回まちまちなのは、林床のあちこちにドングリを貯食しているからでしょう。 
投資や貯蓄のリスクヘッジを生まれながらにして知っている野ネズミは賢いですね。 
山中で私のようにドングリを1箇所にまとめて貯蔵しておくと、何者かに盗まれて全部失ってしまうリスクがあります。 
その代わり、野ネズミは1個ずつバラバラに隠した場所をすべて長期記憶しておく必要があります。 
1シーズンで何千個、何万個という莫大な量の堅果の貯食場所を覚えるとしたら、野ネズミの脳は驚くべき記憶容量があることになります。
逆に野ネズミの記憶力が完璧でないからこそ、埋めた場所を忘れたドングリが春になると芽を出し、種子散布に貢献できるのです。


シーン5:10/13・午後22:02(@1:59〜) 
野ネズミが餌場に戻って来るまでのシーンが写っていました。 
カラマツ幹の背後から根元を右に回り込みながら現れ、迷うことなく給餌場に到着。 
ドングリの山からじっくり吟味すると、ようやく1個を選び、今度は左下へ持ち去りました。


シーン6:10/13・午後22:06(@2:48〜) 
餌場に戻った野ネズミがドングリを1つ咥えて左下へ運搬。 


シーン7:10/13・午後22:09(@2:55〜) 
今度は右下へドングリを運搬。 


シーン8:10/13・午後23:23(@3:19〜) 
1時間15分も間隔が開きました。 
どこか隠れ家や巣穴で休んでいたようです。 
別個体の野ネズミが餌場に来るようになった、という可能性も考えられます。 
餌場でドングリを1個選ぶと口に咥えて右へ搬出。
(前回と同じ経路だったので、やはり同一個体と考えるのが自然でしょう。)
と思いきや、すぐにまた右下からドングリを持ったまま戻って来ました。 
林床を右往左往して、結局は左下にドングリを運びます。 


シーン9:10/13・午後23:25(@3:46〜) 
餌場に戻った野ネズミがドングリを1個左下へ運び去ろうとしたところ、途中でドングリが滑ってうっかり落としてしまいました。 
斜面を少し転げ落ちたミズナラ堅果を拾い直し、改めて左下へ運び去りました。 
真っ暗な深夜でも野ネズミは至近距離ならドングリがどこにあるのか見えるのでしょうか?
それとも匂いで探り当てるのかな? 


シーン10:10/14・午前1:52(@4:02〜) 
日付が変わりました。 
またどこかで休憩していた野ネズミが、右から餌場に戻って来ました。 
ドングリを右へ搬出。 


シーン11:10/14・午前4:37(@4:20〜) 
休息していた野ネズミが餌場に再登場。 
尻尾が左を向いているので、左からやって来たようです。 
今度はドングリを左下に運び去りました。 


シーン12:10/14・午前4:39(@4:40〜) 
ドングリを持って左下に素早く駆け下りました。 


シーン13:10/14・午前4:41(@4:53〜) 
ドングリを餌場から右下に運搬。 


シーン14:10/14・午前4:44(@5:06〜) 
今回、野ネズミは珍しく餌場に居座り、1個のドングリを齧り続けています。 
ドングリの表面に歯がツルツルと滑って上手く咥えられないのではなく、どうやらその場で食べているようです。 
シギゾウムシ幼虫によって酷い食害を受けた虫食いドングリは貯食に適していませんから、その場で食べてしまうのでしょう。 
それまでも安全な場所に運んでからドングリを幾つか食べていたはずですが、カメラに慣れたので給餌場で食べるようになった、という可能性もありそうです。 
2個目のドングリを拾い上げたところで、録画が終わってしまいました。 
ドングリを持ち去るシーンが撮れていません。 


シーン15:10/14・午前4:47(@6:06〜) 
ドングリを咥えた野ネズミが画面の右からやって来ました。 
林床に浅い穴を掘ると、持ってきたドングリを地中に埋めました。 
遂に野ネズミの貯食行動を動画で記録できたのですが、画面の右外に見切れてしまっているのが残念です。 
その後も野ネズミは画面の右端でウロチョロして、埋めたドングリを落ち葉で隠してるようです。(尻尾しか見えない) 


シーン16:10/14・午前4:48(@7:06〜) 
餌場に戻った野ネズミが今度はドングリを左下に持ち去りました。 
と思いきや、すぐに戻って来て左の斜面を駆け上がりました。 
カラマツ幹の背後を通って、右上へピョンピョン駆け上がります。 

野ネズミは完全に夜行性です。 
餌場にドングリはまだ残っているのに、未明の貯食行動はこれが最後でした。 
ちなみに、日の出時刻は午前5:43。 


シーン17:10/14・午後20:16(@7:24〜) 
昼間はよく寝てから、夜の初出勤です。 
迷わず餌場に来ていたので、場所を記憶していた同一個体と思われます。 
ドングリを左下に搬出。 


シーン18:10/14・午後20:23(@7:38〜) 
今度はドングリを右に持ち去ったと思いきや、ドングリを咥えたまま画面右下から戻って来ました。 
夜の林床を右往左往してから、左下に持ち去りました。
野ネズミの頭の中では毎回どういう思考・判断で貯食場所を決めているのでしょう? 


シーン19:10/14・午後20:26(@8:02〜) 
今回は珍しく餌場で長居しています。 
ドングリの吟味にやや手間取ったものの、右に持ち去りました。 


シーン20:10/14・午後20:27(@8:33〜) 
今度はドングリを左下に運び去りました。 ところがすぐに餌場に空荷で戻って来ました。 
貯食する時間は無かったはずですから、おそらく運搬中にドングリをうっかり紛失してしまったのでしょう。 
入れ違いで別個体が餌場に来た可能性も考えられます。
次に運ぶドングリの吟味に手間取っている間に、録画が終わってしまいました。 
その場で虫食いドングリを食べているのかもしれませんが、よく見えません。 


シーン21:10/15・午前4:31 (@9:33〜) 
日付が変わりました。 
実はシーン20の後、餌場に通う野ネズミの身に危険が迫ったのですが、それについては別の記事にして書きます。(映像公開予定) 

ほとぼりが冷めると、野ネズミは夜明け前に貯食活動を再開しました。 
餌場に戻ると、左下にドングリを持ち去りました。 


シーン22:10/15・午前4:32 (@9:42〜) 
ドングリを右に運搬。 


シーン23:10/15・午前4:35 (@10:10〜) 
餌場で選んだドングリを持って斜面を右に運び、林床に穴を掘ってドングリを地中に埋めました。 
今度は画角内で貯食行動を披露してくれました! 
ドングリを埋め戻したり落ち葉で丹念に隠したりする隠蔽作業に手間取っているようですが、残念ながら尻切れトンボで動画は終わり。 


シーン24:10/15・午前4:37 (@11:10〜) 
餌場に戻っていた野ネズミが居座っています。 
次に運ぶドングリの選択に手間取ってるというよりも、虫食いドングリをその場で食べてるのでしょう。 
目の前にあった2個目のドングリをヒョイと拾い上げると、これも食べ始めました。 


シーン25:10/15・午前4:40 (@12:09〜) 
ようやく餌場から離れ、左下に駆け下りました。 
ドングリ運搬の有無は不明で、空荷で立ち去ったようにも見えます。 

夜明け前の活動はこれが最後でした。 
夜行性の野ネズミは明るくなる前に必ず帰巣します。 
ちなみに日の出時刻は午前5:44。 


※ 一部の暗い映像は、動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。 



野生動物に給餌する行為はやり過ぎると様々な問題を引き起こすので、注意が必要です。 
この点については、プロジェクト連載の最後に改めて総括・反省します。 
実際に自分でやってみて初めて分かることもありました。 
「節度を持ってほどほどに(細々と)やる」のが肝心で、決して皆さんに大々的な給餌を推奨している訳ではありません。 
何か悪い影響や問題が生じたらいつでもすぐに給餌を止められるように、給餌に謎の使命感を持って(良かれと思って)のめり込み過ぎないようにしましょう。

2023/03/29

木の実を安全に隠す場所を決めかねて朝の杉林道を右往左往するニホンリス【トレイルカメラ】

 



2022年9月下旬・午前7:07・晴れ・気温16℃ 

朝のスギ林道にニホンリスSciurus lis)が登場しました。 
どうやらドングリなど小さな木の実(堅果)を口に咥えて運んでいるようです。 

冒頭から林道上に立ち止まり、スギの落ち葉を掘っていました。 
やや遠くてよく見えないのですが、木の実を地中に隠そうとしている(貯食)ようです。
スギ林の林床にリスが好む木の実は落ちていませんから、落ち葉を掘り返して採食するはずがありません。 
結局リスは地中に埋めるのを諦めたようで、木の実を咥えたまま対面のスギ大木を勢い良く走って登りました。 
ところが、すぐに杉の幹を駆け降りると、林道を手前に走って横断しました。 
林道脇の法面を駆け上がったのかと思いきや、画面の左下から再登場。 
対面のスギ大木に戻ると、幹を少し登っただけで、すぐに地面に降りました。 
やたらとスギの木に戻るのは、捕食者を警戒して必ず安全な大木を経由して移動するようにしているのかな? 
この森でリスを狩る捕食者を想像できないのですけど※、夜ならフクロウが野ネズミを狩っていました。 
※ 天敵の可能性としては、猛禽、キツネ、ホンドテン、ヘビなどがリスを捕食しそうです。


松原卓二『りすぼん』によると、
猛禽類(ワシ、タカ、フクロウなど)、テン、ネコなどが天敵です。(p111より引用)

あるいは、リスがスギの樹上に木の実を隠すことがあるのかもしれません。
最後はスギ大木の反対側に回り込み、藪の生い茂る奥の斜面を右に走り去りました。 

チョロチョロと落ち着き無く走り回るニホンリスの動向を1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:47〜) 
スロー再生時にリスの口元をしっかり見たくて、画面に1.2倍のデジタルズーム(拡大)を施しました。 
ドングリなどの木の実(堅果)を拾ったリスが安全な貯食場所を探しあぐねて右往左往している、というのが私の解釈です。 
この林道では野ネズミが夜な夜な餌を探し歩いているので、リスが林道の地中にドングリを埋めただけでは野ネズミにすぐ嗅ぎつけられて横取りされてしまうでしょう。(労働寄生、盗み寄生) 
リスは冬眠しませんから、雪国の冬が来る前に大量の木の実を貯食する必要があります。
森の中で安全な隠し場所をひとつずつ探すのも、そして貯食した場所をすべて記憶するのも骨が折れそうです。
リスが遠くに運んで食べ忘れた少数の木の実だけが春になると芽を出して育ちますから、ドングリなど堅果の種子散布にリスは一役買っていることになります。


2023/03/17

カラマツの幹を駆け下りてクルミを運ぶニホンリスの謎【トレイルカメラ】

 

前回の記事:▶ ニホンリスの垂直跳び 


2022年9月下旬・午前10:22および11:00 

里山で雑木林の斜面に立つ泥カラマツを自動撮影カメラで監視しています。 
癖のある旧機種で撮影したせいで、明るい昼間なのに、画面全体が不自然なピンク色になってしまいます。 
動画編集時に自動色調補正を施して、なんとか不自然さを減らしました。 
(冒頭シーンは別日に辛うじてフルカラーで記録できた日中の現場の様子です。)

幹に泥汚れのついたカラマツの樹上からパラパラと樹皮の欠片?が落ちてきました。 
何事かと思いきや、湾曲したカラマツの幹をニホンリスSciurus lis)が駆け下りてきました。 
口に何か丸くて白っぽい果実を咥えていて、そのまま斜面を駆け上がりました。 
木の実をどこかへ貯食する(隠す)のでしょう。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:18〜)、リスが運んでいたのは、カラマツの松ぼっくり(球果)ではなく、オニグルミの堅果のように見えます。 
問題なのは、現場近くで自生するオニグルミの木を見かけたことがないということです。 
過去にニホンリスがクルミの堅果をわざわざ遠くから運んでカラマツの樹上に隠しておいた(貯食)のでしょうか? 
ちなみに、松ぼっくりはリスの大好物とされていて、エビフライのような特徴的な食痕になることがフィールドサインの本にはよく紹介されています。 
しかし私は未だ山中で海老フライ状になった松ぼっくりをなぜか一度も見つけたことがありません。 
実は、トレイルカメラを固定している樹種はシナノキです。 
カラマツと隣接して生えるシナノキの丸い果実をリスが運んでいる可能性もありそうですが、木の実の大きさが違う気がします。
シナノキの果実も堅果らしいのですが、動物散布ではなく風散布されると知ってびっくり!


38分後の午前11:00に、再びニホンリスが登場しました。(@0:37〜) 
小雨がぱらついています。 
前回と全く同じルートでカラマツの湾曲した幹を駆け下り、そのまま雑木林の斜面を走って登りました。 
いつの間にか同一個体が戻ってきたのかな? 
今回はスロー再生しても(@0:48〜)木の実を運搬しているようには見えず、おそらく空荷でした。 




 
 ↑【おまけの動画】 

2022年9月下旬・午前6:13(日の出時刻は午前5:30) 

5日後の早朝に現れたリスは空荷でした。 
トレイルカメラの画角が少し違いますが、画面の上から林床の斜面を左に駆け下りました。 

前の動画とつなげてから公開しようと思ったのですが、ファイル形式が微妙に違っていたので連結できませんでした。



2023/03/02

タヌキの溜め糞を崩し、後ろ向きに転がして巣穴に運ぶセンチコガネ

 

2022年9月中旬・午後12:00頃・晴れ・気温33℃ 

溜め糞場sを長期監視するトレイルカメラの電池を交換するために、里山のスギ林道にやって来ました。 
枯れたスギ落ち葉および落枝の上に、水気の多い緩い軟便がこんもりと残されていました。 
監視カメラの映像をその場でチェックすると、この位置に排便したのはアナグマではなくホンドタヌキNyctereutes viverrinus)と判明。 

タヌキの糞塊で1匹のセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)がせっせと働いていました。 
頭楯の前縁が半円形なので、オオセンチコガネではなくセンチコガネと見分けられます。 
柔らかい糞塊をほぐして小さな塊に切り分けると、前脚で糞玉を手前に掻き寄せるように転がしながら後ろ向きに(後ずさり)運んでいました。 
どうやら糞塊のすぐ横のスギ落ち葉の下にセンチコガネの巣穴があるようです。 
しばらく待つと、センチコガネが再び巣口から顔を出し、次の糞玉を採取しに向かいます。
糞塊上で奮闘しているセンチコガネが腹面を向けてくれました。 
腹面は鈍い青緑色の金属光沢があります(構造色)。 
この搬入(糞ころがし)を何度も繰り返す結果、タヌキの溜め糞は次第に地中へ埋められて食べ尽くされてしまいます。
 
関連記事(2ヶ月前の撮影@同地点)▶ タヌキの溜め糞場から糞の欠片を後ろ向きに転がして運ぶオオセンチコガネ

ハエ類は緑と青のキンバエ(種名不詳)やオオマダラヒロクチバエ、キバネクロバエ?の他、メタリックに輝く微小のハエも溜め糞場に来て、獣糞を舐めていました。(吸汁) 
♀のハエは溜め糞に卵を産み付けるはずですが、ハエの産卵シーンは未だ見たことがありません。 

アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)およびサビハネカクシOntholestes gracilis)が糞塊を徘徊し、ハエなどの獲物を狩るチャンスを虎視眈々と狙っています(獲物を待ち伏せ)。 
アカバトガリオオズハネカクシがミドリキンバエ?の狩りに失敗した直後にセンチコガネの後を追って巣穴に侵入することもありました。 
しかし肉食性のハネカクシも硬い甲冑で身を守る糞虫には歯が立たないはずです。 
まさかセンチコガネの卵や幼虫を捕食するのかな? 
いつかファイバースコープを使って、センチコガネの巣内を観察してみたいものです。 (巣穴に差し込んでも先端のレンズがすぐに汚れてしまって撮影は無理なのかな?)

ムネアカオオアリ♀やもっと微小なアカアリ(種名不詳)も溜め糞場sに来ていました。 

タヌキの溜め糞には多種多様な虫が訪れ、複雑な食物連鎖の生態系が成立していることがよく分かります。 

2023/02/26

スギ林道でクルミの実を運ぶニホンリス【トレイルカメラ】

 



2022年9月中旬・午前

里山のスギ林道に設置した監視カメラに写ったニホンリスSciurus lis)の記録です。 
秋の晴れた午前中に活動していました。 
リスは林道上を駆け回ってもタヌキとアナグマの溜め糞場sには興味を示さず、ひたすら己の採餌行動に励んでいるようです。 


シーン1:9/15・午前10:25・気温22℃・晴れ 
林道の左から右にピョンピョン跳びはねるように走り去りました。 


シーン2:9/15・午前10:29・気温23℃ (@0:11〜) 
5分後にリスが再び現れ、画面左下隅を右下方向に走り去りました。 


シーン3:9/18・午前7:20・気温22℃・晴れ (@0:21〜) 
3日後の朝にもリスが登場しました。 
林道を横断して手前に駆け抜けました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると、口に何か黒っぽくて丸い物体を咥えていました。(@1:08〜1:14) 
どうやら近くに自生するオニグルミの大木から果実(堅果)を運搬している途中だったようです。 

リスがクルミを運ぶシーンがトレイルカメラに写ったのは、これで2回目です。
関連記事(3週間前に別の地点で撮影)▶ 夏の朝にクルミの実を運ぶニホンリス【トレイルカメラ】


シーン4:9/18・午前7:23・気温23℃ (@0:27〜) 
2分後にリスが再登場。 
画面の右端で、リスがスギの落ち葉の下に顔をつっこんでから、すぐに右へ走り去りました。 
スギ林の林床でリスが餌を探すとは考えにくいです。 
後ろ姿でよく分かりませんが、まさか先程運んでいたクルミをスギ落ち葉の下に隠した(貯食)のかな? 

2023/01/08

夏の朝にクルミの実を運ぶニホンリス【トレイルカメラ】

 

2022年8月下旬・午前6:25頃・小雨 (日の出時刻は午前5:00) 

里山の林道でヌタ場と思われる水溜りがある区間をトレイルカメラで見張っていると、早朝にニホンリスSciurus lis)が登場しました。 
水溜りの横でリスがオニグルミの堅果を抱えていました。 
現場周辺でオニグルミの木は生えてないので、そこで見つけた落果を拾ったのではなく、どこからか運んできたようです。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると、ヌタ場の泥の中からクルミを掘り出していました。 
運搬中にうっかり落としたクルミを拾い直したのかな? 
昨秋に貯食した記憶を頼りにクルミの実を掘り出したという可能性も考えられますが、水気の多いヌタ場にクルミを埋めたら発芽しているはずです。

林道脇の法面からヌタ場に張り出しているシナノキの湾曲した枝にリスが跳び乗りました。 
口にクルミの実を咥えています。 
枝を伝って手前に走り、カメラの死角に消えました。 
雑木林の斜面のどこかに埋めて隠すのでしょうか? 
まだ真夏なので、冬に備えて貯食するには時期が早い気がします。 
おそらく安全な場所に移動し、クルミの殻を割って中身を食べるのでしょう。 
オニグルミの堅果を運ぶリスをトレイルカメラで撮れたのは初めてです。

水溜りの水面を見ると小雨がポツポツ降っていますし、下草にもときどき雨粒が当たって揺れています。 
癖のある古い機種で撮っているので、明るい時間帯なのに色調が変です。 
動画編集時に自動色調補正を施して、モノクロ調に修正しました。 



2022/12/08

麻酔したオオエグリシャチホコ幼虫を運ぶジガバチ♀

 

2022年8月上旬・午後15:40頃・くもり 

里山の細い山道を下山中に、ジガバチの一種♀を発見。 
こんな湿った薄暗いスギ林でジガバチと出会うのは珍しく思いました。 
獲物として狩ったばかりの緑色の芋虫を地面に放置したまま、ジガバチは低空で辺りを飛び回っています。 
巣穴の場所を探して偵察しているのでしょう。 
スギの落ち葉や落枝が敷き詰められた林床を歩き回り、獲物の運搬ルートを探索しているようです。 

サトジガバチ(Ammophila sabulosa nipponica)またはヤマジガバチ(Ammophila infesta)ですが、採集して標本を精査しないと見分けられません。 
山地で見つけたからヤマジガバチ、とは必ずしも決めつけられないのだそうです。 
近くを流れる沢の水音♪が聞こえます。 

獲物を山道に放置したまま、ジガバチ♀はなかなか戻って来ません。 
イモムシを置いた場所を忘れてしまったのか、あるいは横で突っ立っている私を警戒して近づけないのかな? 

獲物の青虫は横倒しになったまま全く動きません。 
ジガバチ♀が狩りの直後に毒針を刺して全身麻酔しているのです。(麻酔というよりも麻痺状態と呼ぶべきでしょう) 
歩脚を数えると、胸脚3対、腹脚4対、尾脚1対というイモムシには基本的な作りでした。 
体側に白線が走り、その上側が黄緑、下側が青緑に色分けされています。
おそらくオオエグリシャチホコPterostoma gigantinum)の幼虫だと思うのですが、どうでしょうか? 
私がイモムシを採寸しようか迷っていたら、ジガバチ♀が戻ってきました。 
このときピンセットで獲物を保定して運搬を邪魔すれば、ジガバチ♀は毒針による麻酔手術を再演してくれるはずです。 
しかしザックの奥からピンセットを取り出す暇がありませんでした。

私がじっと動かずに撮影を続けると、ようやくジガバチ♀が右から歩いて獲物に辿り着きました。 
麻痺した獲物の仰向けにした胸部第3節(T3)付近を大顎で挟むとその場で静止しました。 
獲物を噛みほぐして体液を啜る噛みほぐし(maceration)ではありません。 
大顎を開いて獲物を離し、再び地面に置くと、行く先の偵察を再開。 
振り向いたジガバチ♀が触角で獲物の頭部に触れて無事を確認しました。 
触角を拭って身繕い。 
獲物の背側から大顎で胸部第2節(T2)辺りを軽く噛んでも、全身麻痺した獲物は全く無反応でした。 
ジガバチ♀が触角を前脚で拭って身繕い。 
蜂が大顎で獲物の腹端付近を軽く噛みました。 

仰向けにした獲物のT3付近を大顎で挟むと、遂に運び始めました。 
それまでは長い休息時間だったのか、私を警戒していたのかな? 
細長い獲物に跨がると、大顎で咥えた獲物の腹背を引きずりながら前に歩きます。 
途中で獲物を咥える場所を少し下に持ち替えました。 
自分の腹端よりもオオエグリシャチホコ幼虫の腹端が少し前に来るようにすると、重心のバランスが運びやすくなるようです。 

ほぼ一直線に進んで山道を横断すると、路肩の崖を下ったところで行方を見失ってしまいました。 
杉林の林床は薄暗いせいで、素早く走り去る蜂にオートフォーカスのピントが間に合いません。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、最後ジガバチ♀は獲物を抱えたまま急斜面を飛び降りていました。 
腹部を高々と持ち上げて前傾姿勢になり、羽ばたいて崖を飛び降りたのです。 
営巣地を突き止められず、残念でした。 
じっくり観察に徹すれば追跡できそうですが、私はどうしても撮影したくなってしまいます。 

2022/11/01

トレイルカメラが捉えたオオセンチコガネの糞転がし行動【5倍速映像】

 

2022年7月下旬・午後13:45頃・晴れ
前回の記事:▶ タヌキの溜め糞場から糞の欠片を後ろ向きに転がして運ぶオオセンチコガネ

タヌキの溜め糞場sから私が立ち去る動きに反応して、横に設置してあるトレイルカメラが起動しました。 
その動画にたまたま、オオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)の行動が引きの絵で記録されていました。 
赤い矢印の地点に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の糞塊に注目してください。 

赤紫の金属光沢に輝くオオセンチコガネが林床の巣穴から出て来ると、近くの糞塊を崩し、欠片を後ろ向きに転がして巣穴に運び入れました。 
5倍速の早回し映像でまずはご覧ください。 
つづいて等倍速でリプレイ。 
溜め糞をせっせと片付ける糞虫の活動を、次回は本格的に微速度撮影してみたくなりました。

変温動物の糞虫が動き回っても、トレイルカメラが動体検知することはありません。 
しかし恒温動物が獣道を通りかかった際に溜め糞上の糞虫の行動がついでに記録されることがあると分かりました。



2022/10/26

タヌキの溜め糞場から糞の欠片を後ろ向きに転がして運ぶオオセンチコガネ

 

2022年7月下旬・午後13:20頃・晴れ 

里山のスギ林道でタヌキとアナグマが共有している溜め糞場sに行くと、新鮮な糞が3ヶ所に点々と残されていました。 
溜め糞には様々な食糞性昆虫やそれを捕食する昆虫が群がり、ひとつの生態系(食物連鎖)を形成しています。 
監視カメラに記録された映像を見直すと、糞塊の一つ(杉の木に一番近い地点の軟便)はニホンアナグマの糞と分かったのですが、今回はホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した健康そうな固形糞塊に注目します。 

背面が鮮やかなピンク色の金属光沢に輝くオオセンチコガネPhelotrupes(Chromogeotrupes) auratus auratus)が1匹で「糞転がし」をせっせと繰り返していました。 
腹面はメタリックグリーンです。
タヌキの新鮮な固形糞をオオセンチコガネは先の尖った頭楯で崩して適当な大きさに千切ると、後退しながら前脚で糞玉を引き込むように転がして運びます。 
『ファーブル昆虫記』に登場するフンコロガシは逆立ちの姿勢になり後脚で糞玉を押して運びますが、オオセンチコガネの運び方とはまるで違います。
オオセンチコガネが糞を転がしやすいよう球形に整形することはありません。 

糞玉が大き過ぎてうまく転がせないと分かると、頭楯で突き崩して細かくします。 
せっかく糞玉を細分化したのに、繊維質が多くて気に入らず、その場に捨て去ることがありました。 
オオセンチコガネは運ぶ糞の質を選り好みすることが分かりました。 
そもそも、アナグマの糞よりもタヌキの糞を選んで持ち去っています。
糞玉よりも自身が先に巣内に入る結果、巣口が糞玉で塞がれることになります。 

林道上に散乱するスギの落葉や落枝が障害物となり、糞を転がすのに苦労しています。 
特に、太い落枝を乗り越えて糞玉を運ぶのは無理なようです。 
現場の林道は緩やかな坂になっているのですが、地面に敷き詰められた落ち葉の摩擦のおかげで、運搬中の糞玉が勝手に坂を転がり落ちてしまうことはありませんでした。 
オオセンチコガネは行く手を後脚で地ならし(整地)してから糞玉を運ぶことがあります。 
地ならしというか、障害物を予めどけていました。 

糞塊の近くのスギ落葉の下にオオセンチコガネの巣穴があるようで、そこに糞玉を繰り返し搬入していました。 
他種の糞虫に横取りされないように餌を独り占めにして、巣内でゆっくりと自分で食べたり産卵したりするのでしょう。 
オオセンチコガネの巣穴はあまり深くなさそうです。 
スギ落葉の下に糞玉を軽く隠しているだけのような気がします。 
後でちゃんと調べようと思いつつ、長時間の動画撮影で満足してしまい、巣穴の発掘調査をすっかり忘れてしまいました。 

巣穴への糞玉搬入は1匹が繰り返し行っていましたが、♀♂つがいの性別に応じた分業があるのかな? 
となれば、今回観察したオオセンチコガネ個体の性別が知りたくなります。 
舘野鴻『うんこ虫を追え(たくさんのふしぎ2022年6月号)』は児童書の扱いですが、見事な精密画でオオセンチコガネの飼育記録と謎解きを綴った素晴らしい名著です。 
p10にオオセンチコガネの♂と♀の違いを図解してありました。 
今回の個体は頭楯の先が尖っているのでオオセンチコガネと分かります。 
その頭楯が黒いので♀かと思ったのですが、タヌキの糞が付着して黒く汚れているだけかもしれません。 
前脚の跗節の形状にも性差があるらしいのですが、いずれにせよ採集して体をきれいに洗ってから細部を精査する必要があります。 
今回は動画撮影を優先した結果、採集できませんでした。
(最後は巣穴に潜って外に出てこなくなりました。) 

謎の甲虫(エンマコガネなど小型の糞虫?)が糞玉に取り付いていても、オオセンチコガネは取り除いたり追い払ったりせずに、どんどん運んで行きます。 
異変を感じたエンマコガネ?は、途中で諦めて糞玉から離脱しました。 
先客のエンマコガネにしてみれば、餌資源をオオセンチコガネに横取りされた訳ですから、労働寄生の被害者になります。 

運搬作業中のオオセンチコガネは、ときどき糞玉から一旦離れて巣口の位置を確かめに戻ります。 
目指す巣穴を確認してから、糞玉の運搬を再開します。 
せっかく糞玉を巣口のすぐ横まで運んだのに、巣口の位置を忘れたのか、迷子になりました。 
辺りをウロウロと徘徊し、ようやく正しい巣口を探し当てたようです。 
向きを変えて無事に糞玉を巣穴に搬入しました。 
ところで、短距離とは言えオオセンチコガネは自分の巣の位置をどうやって記憶しているのでしょうか? 
これはナビゲーション(帰巣本能)の問題です。
確か太陽や星座を利用しているという話を昔読んだ覚えがあります。(要確認) 
鬱蒼と育ったスギ林の林床は昼間も暗くてあまり日が射さないのに、果たして天体からの情報を利用できるのか、疑問です。 
もしも私がオオセンチコガネの真上から覆いかぶさるように撮影・観察して天上の視界を遮ると、帰巣できなくなるでしょうか? 

巣穴から再び出てきたオオセンチコガネが自分の体よりも大きいタヌキ糞塊の下に潜り込んで脚で持ち上げ、試しに回しています。 
運ぶ荷物の大きさや重さを体感で認識するのでしょう。 

オオセンチコガネの体表に微小の白いダニ(種名不詳)数匹、取り付いています。 
吸血のため糞虫に体外寄生しているのではなく、ヒッチハイクして獣糞を渡り歩いているダニだとなにかの本で読んだ記憶があります。 (要確認)

路上のスギ落葉や枯れた茎に引っかかり、糞玉をうまく転がせません。 
見ている私ももどかしくなり、邪魔な落葉を運搬路から取り除いてやりたくなります。 
苦労してなんとか障害物を乗り越えました! 

実はオオセンチコガネの他に、藍色のセンチコガネ(頭楯の先が丸い)もタヌキ糞塊の中に潜んでいました。 
オオセンチコガネの♀♂つがいのパートナーが巣口をガードしているのかと初めは思ったのですが、よく見ると別種でした。 
なぜかセンチコガネは糞の運搬作業(糞転がし)をほとんど行いませんでした。 
しばらく様子を観察すると、赤紫のオオセンチコガネと紫のセンチコガネは別々の巣穴に糞玉を運び入れていることが判明しました。 

午前中の早い時間帯から入山して見に行かないと、夜に排泄されたタヌキの糞が跡形もなく地中に埋められてしまうことがよく分かりました。 
(気温の高い夏は特に糞虫が活発。)
溜め糞場の周囲の邪魔な落枝や落葉などを全て取り除いて整地してやると、糞虫の作業効率が更に高まり、あっという間に地中に埋められてしまいそうです。 

私がフンコロガシの撮影に熱中していると、後半に近くの杉林でバキバキ♪と樹皮を剥ぐ音が聞こえて気になりました。 
まさかツキノワグマが皮剥ぎしているのでしょうか? 
振り向きたいのを我慢して、気配を消して撮影を続けます。 
幸い、謎の大型獣(イノシシかも?)とニアミスすることはありませんでした。
(フィールドでは護身用のクマよけスプレーを肌身離さず携帯しています。) 
 ※ 後半のクマ剥ぎシーンだけ動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 








左:センチコガネ、右:オオセンチコガネ
オオセンチコガネの腹面は緑色の金属光沢(構造色)

2022/06/28

トウモロコシの穂を持ち去り刈田に貯食するハシブトガラス(冬の野鳥)

 

2021年12月上旬・午後15:25頃・晴れ 

夕方の刈田で1羽のハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が畦道に佇んでいました。 
足元の地面に置いていた立派なトウモロコシの穂を丸ごと1本横に咥えて飛び去りました。 
途中で合流した別個体も同じく嘴にトウモロコシを咥えて運んでいます。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
トウモロコシの皮は全て剥かれており、どうやら近くの飼料用トウモロコシ畑から穀粒付きの穂を丸ごと盗んできたようです。 
私から充分に距離を取ると、畦道に各々が少し離れて着陸しました。 
安全な場所でトウモロコシの穀粒を啄んで食べるかと思いきや、再びトウモロコシを持って飛び去りました。 
少し飛んでは畦道に着陸、を繰り返して、私からどんどん遠ざかって行きます。 
私(ヒト)を警戒して逃げているというよりも、ご馳走を食べている姿を仲間に見られたくないのかな? (仲間に見つかると横取りされる?)
トウモロコシを持って一緒に逃げていた仲間からも離れたいようです。 

1羽は遂に刈田の端っこまで来ました。 
刈田に残された稲藁の下にトウモロコシの穂を丸ごと隠しました!  
後で食べるために餌を隠す貯食行動です。 
上に藁を被せて念入りに隠蔽しています。 

貯食が済んだハシブトガラスは空荷で飛び立ちました。 
そのまま流し撮りすると、近くの電線に止まり、嘴を足元の電線で拭いました。 
途中から別行動になったせいで、もう1羽の個体がトウモロコシをどこに隠したのか不明です。 
晴れているものの、山の影になった刈田はもう日陰です。

2022/04/05

タヌキの溜め糞場にクルミの実を埋めて貯食する野ネズミ【暗視映像:トレイルカメラ】

 

2021年12月中旬・午前1:45頃・霧 

深夜の河畔林にうっすらと霧が発生しています(トレイルカメラのレンズに結露?)。 
林床をチョロチョロと1匹の野ネズミ(ノネズミ)が何か丸くて大きな物を口に咥えて運んでいました。 
どうやらオニグルミの実(堅果)を運搬しているようです。 
これが山中ならトチノキの実という可能性も考えられますが、この河畔林でトチノキを見かけたことはありません。
関連記事(5年前の撮影)▶ トチノキの種子に残るアカネズミ?の食痕
タヌキの溜め糞場を横切ると、その端にクルミを置きました。 
画角の下端で分かりにくいのですが、溜め糞の横の地面を掘り始めたようです。 
やがてクルミを取りに戻り、掘った穴に埋めました。 
雪国の野ネズミが冬に備えて貯食する決定的瞬間が撮れて、感動しました。 

トレイルカメラが録画できる上限(1分30秒)まで撮っても、野ネズミが立ち去るところまでは記録できませんでした。 
おそらく巣穴が近くにあるのでしょう。 
同じ画角で長期間の監視を愚直に続ければ、同一個体の野ネズミが貯食したクルミを掘り起こして食べに来るシーンが撮れるかもしれません。 
しかし当地は豪雪地帯の雪国なので、野ネズミは雪の下にトンネル網を張り巡らせて安全に貯食物を取りに来ると予想されます。(トレイルカメラでの撮影は不可能) 

それにしても、野ネズミはどうして不潔な溜め糞場に貯食するのでしょうか? 
溜め糞場の上を平気で歩いて横切りましたし、穴掘りする間にクルミの実を一時的に溜め糞の上に置きました。 
どうも野ネズミには溜め糞場が不潔だという衛生観念が無いようです。 
真冬の深夜でも溜め糞場は凍らずに柔らかいまま(穴を掘りやすい)のかな? 
それとも貯食物を盗まれないための行動(労働寄生対策)なのかもしれません。
タヌキの糞便臭でクルミの匂いを掻き消そうとする作戦なら面白いですね。 
あるいは逆に、糞便臭で貯食した位置を記憶するのでしょうか?

冬が来る前に野ネズミはドングリやクルミの実をあちこちに大量に貯食します。
その一部は春までに食べられずに放置され、発芽します。 
その結果、植物が広範囲に分布を広げることになるのです。 
オニグルミの種子散布という観点から考えると、肥料の近くの地面に穴を掘って埋めてくれる野ネズミは非常にありがたい存在です。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2022/01/29

池畔の巣穴からドングリを運んで貯食し直す野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2021年10月中旬
前回の記事:▶ 水場の周囲を夜な夜な活動するノネズミ(その2)【トレイルカメラ:暗視映像】
池畔の崖に開いた横穴にトレイルカメラ(無人センサーカメラ)を設置して、これまで里山の水場を監視してきました。 
どうやら、その横穴は元々は野ネズミ(ノネズミ)が掘った巣穴だったようです。 
隠しカメラの周囲をチョロチョロと動き回る夜行性の野ネズミが頻繁に撮れました。 
しかしあまりにも至近距離過ぎて、野ネズミが何をしているのかよく分かりませんでした。 
そこで、トレイルカメラを設置する位置を変えて、逆のアングルから池畔の崖の横穴を見下ろすように狙ってみました。 

元々は雑草や幼木の枝葉や木の細い根っこが巣口を塞ぐように生い茂っていたのですが、レンズの視界を遮らないように取り除きました。 
トレイルカメラを置くためには横穴内の地面をある程度は水平にする必要があり、そのために平らな石(※)を土台として埋め込みました。 
ノネズミの巣穴とはつゆ知らず、巣口の環境を私はこれだけ改変してしまいました。 
巣口をトレイルカメラで塞がれたノネズミはかなり困ったはずです。 
非力なノネズミは、巣口を塞ぐトレイルカメラを力任せにどかす(外に押し出す)ことは出来なかったようです。 
わずかな隙間からすり抜けていたのかもしれません。 
実はトンネルの構造はかなり複雑です。 
崖に左右2つの巣口が開いていて、ノネズミは別の巣口から出入りしていた可能性もあります。 
左下の巣口には植物が茂っていたり落ち葉が詰まっていたりして、画面では隠されて見えます。 

以下の記録は一夜に起きた出来事です。 
アカネズミApodemus speciosus)または樹上性のヒメネズミApodemus argenteus)だと思うのですが、今のところ私には動画で見分けることができません。 
どなたか見分けられる達人がいらっしゃいましたら、教えて下さい。 

シーン1:午後17:42(日没時刻は午後16:56) 
予想通り、トレイルカメラを撤去した横穴から野ネズミが出て来ました。 
赤外線の暗視カメラでは目が白く光って見えます。 
巣口付近を探索していた野ネズミが、突然何かに驚いて右へ逃走。 

シーン2:午後21:25 
再び野ネズミが巣穴から現れました。 
同一個体がいつの間にか戻っていたのか、複数個体が巣穴で暮らしているのか、今のところ分かりません。 
巣口の土をかじって拡張工事をしているようです。 
私が巣口の床に敷いた平らな土台石(※)が邪魔なようです。 
一旦は巣穴の奥に入ったものの、しばらくするとまた巣口に出てきました。 
巣口の周囲の崖で忙しなく跳んだり走り回ったりしました。 
次に土台石の下の隙間から何かを掘り出すと口に咥え、巣穴内の右に運んで行きました。(@1:20) 
よく見るとドングリの実(堅果)でした。 
越冬準備の貯食行動ですね。 
野ネズミはドングリを貯食する場所を変更しているようです。 
私が勝手にカメラの土台石(※)を巣口内に置いたせいで、元々の貯食部屋を塞いでしまったのかもしれません。
池畔にはミズナラの木が生育していますが、枝から落ちたドングリが崖を転がり落ちて自然に横穴の巣口へ落ちたとは考えられません。

シーン3:午後21:27 
すぐにまた野ネズミが巣穴から出てきました。 
私が穴の中に置いた土台石の下を掘ろうとしています。 
邪魔な石をどかしたいのでしょう。 
諦めた野ネズミは巣から出て右に走って消えました。 


不思議なことに、外出から戻って来た野ネズミの帰巣シーンが一度も撮れていません。 
素早い野ネズミの入巣は一瞬でセンサーカメラの起動が間に合わないのかもしれませんが、おそらく画角外にも複数の出入り口があるのではないかと私は予想しています。 (トンネル内部でつながっている)
例えば、煙草の煙を大量に穴へ吹き込んだら、全ての出入り口の場所を突き止められるかな?
(酷い異臭で煙責めされた野ネズミが身の危険を感じて巣穴から逃去したら元も子もないので、この作戦は却下。) 

トレイルカメラのアングルを変えただけで、野ネズミの様子がだいぶ分かってきました。 
まさに百聞は一見に如かず。 
もっと早くやるべきでしたね。 
しかし、どこまで自然な行動が記録されているかどうか、あまり自信がありません。 
トレイルカメラの発するかすかな異音を野ネズミが警戒している可能性があります。 
このトレイルカメラは安物のせいか、動画撮影中にミミ、ミミ、ミミ、…♪とファックスのような電子ノイズが常時混入します。 
動画再生時に音量ボリュームを上げてもらうと聞こえます。 
同じ機種の2台目でも同じ症状でした。 
野ネズミにとっては非常に耳障りな超音波を発しているのではないか?と心配です。 


ランダムに記事を読む