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2014/08/03

ヒレハリソウの花で盗蜜するオオマルハナバチ♀



2014年6月中旬

里山の麓に咲いたヒレハリソウ(=コンフリー)の群落でオオマルハナバチBombus hypocrita)のワーカー♀が忙しなく訪花していました。
他のマルハナバチ類に比べて、この群落に訪花するオオマルハナバチの個体数は少ない印象を受けました。

採餌の様子をよく観察すると、正当訪花ではなく常に花筒の外から根元を噛んで穴を開け蜜腺を直接吸う穿孔盗蜜を行っていました。
この採餌法は正当訪花と異なり受粉に全く関与しない(雄しべ・雌しべに触れない)ため、後脚の花粉籠は空荷です。
(映像の前後半で別個体かもしれません。)

オオマルハナバチは舌が短く盗蜜の常習犯であることで知られます。
これまで私がコンフリーの花で実際に穿孔盗蜜を観察できたのはクロマルハナバチ♀コマルハナバチ♀に次いで3種類目になります。

中舌の長さは、同一のカーストを比較すればナガマルハナバチ亜属で顕著に長く、ユーラシアマルハナバチ亜属、コマルハナバチ亜属、オオマルハナバチ亜属と徐々に短くなる。(『日本産マルハナバチ図鑑』p166より)


2014/07/29

ヒレハリソウで採餌戦略(正当訪花/穿孔盗蜜)を切り替えるクロマルハナバチ♀



2014年6月上旬

里山の麓に咲いたヒレハリソウ(=コンフリー)の群落でクロマルハナバチ♀(Bombus ignitus)が訪花していました。
後脚の花粉籠は空荷です。
花から花へ忙しなく飛び回り採餌する同一個体を追いかけて見ていると、花筒の外側から根元に穴を開けて吸蜜する穿孔盗蜜から正当訪花へと採餌戦略をスイッチしました!
割合としては正当訪花が多いようです。
前年に観察した個体は同じくコンフリーの花で盗蜜ばかりしていたので、採餌法の違いに面食らいました。
今回の個体は盗蜜の常習犯ではなく初犯なのかな?

▼関連記事
ヒレハリソウの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀
「舌が短く盗蜜癖がある」と称されるクロマルハナバチも一筋縄ではいかないようです。
蜂の採餌プログラムには個体差があり学習や確率過程が組み込まれているのでしょうか?

時期的に未だ単独営巣期の創設女王かもしれません。
ワーカーより女王の方が体長も舌長も大きいので、正当訪花でも蜜腺まで舌が届くのでしょう。

なお、タニウツギを訪花する際にも1匹のクロマルハナバチが採餌戦略を切り替えるのを観察しています。

▼関連記事
タニウツギで採餌戦略(正当訪花/穿孔盗蜜)を切り替えるクロマルハナバチ♀



2014/07/24

ヒレハリソウの花で盗蜜するコマルハナバチ♀



2014年6月上旬

コマルハナバチBombus ardens ardens)のワーカー♀だと思うのですがどうでしょう?
里山の麓(林縁の草むら)に咲いたヒレハリソウ(=コンフリー)の群落で忙しなく飛び回り訪花していました。
花筒の外から根元に穴を開け吸蜜するという穿孔盗蜜を行っているので、ヒレハリソウの受粉には寄与していません。
したがって、後脚の花粉籠に付けている少量の白い花粉団子は別な花から採餌してきたものでしょう。
コマルハナバチは体が小さいので花筒に潜り込めそうな気もするのですけど、舌が短くて正当訪花では蜜腺まで届かないのでしょう。

コマルハナバチの盗蜜行動は初めて見ました。


2014/06/25

ホウチャクソウの花で盗蜜するマドガ(蛾)



2014年5月下旬

この春フィールドで最も興奮した新発見を報告します。

低山の草地に咲いたホウチャクソウの花にマドガThyris usitata)という小さな昼蛾が何頭も来ていました。
吸蜜シーンをよく見ると、白い花筒の外側に止まり、口吻を花弁の根元の隙間に差し込んで花蜜を吸っています。
これはまさしく盗蜜行動で、花の受粉には寄与しません。
これまでハチや鳥が盗蜜する例をいくつか観察してきました。
しかし長い口吻を有する 鱗翅目(チョウやガの仲間)が盗蜜する例はこれまで見聞きしたことがなく(※追記参照)
、驚愕の発見でした!
ホウチャクソウの同じ群落でマドガが何頭も飛び回り、その全てが盗蜜の常習犯でした。
マドガのような小蛾類は花筒の入り口に頭を突っ込んで正当訪花しても口吻が蜜腺まで届かず、やむを得ず盗蜜するのでしょう。

正当訪花でホウチャクソウから吸蜜するにはスズメガ科ぐらい長い口吻が必要になりそうです。
花弁が一部枯れかけて(萎れかけて)いる花からもマドガは気にせず盗蜜しています。

あまりにも多数のマドガが集まっていたので、
マドガ♀がホウチャクソウに産卵するのか、と初めは疑いました。
しかし調べてみると、マドガ幼虫の食草はキンポウゲ科のボタンヅルでした。


周りで咲いている花は他にも沢山あるのにケナシヤブデマリなど)、ホウチャクソウに集まるということは、マドガにとってよほど魅力的な蜜源なのでしょう。

現場でしばらく粘っても、この日はマドガ以外のめぼしい昆虫は現れませんでした。(※※)
さて、ホウチャクソウに正当訪花する送粉者は誰でしょう?
以前の観察から私はその答えを知っています。
マルハナバチ類の中でも特に長い舌を持つトラマルハナバチがホウチャクソウと共進化してきて送粉を担っていると思われます。

▼関連記事
・トラマルハナバチ♀がホウチャクソウを訪花
・ナルコユリで吸蜜するトラマルハナバチ
その訪花シーンは『マルハナバチの経済学』という本の表紙になっています。



※ 当時は勉強不足だったのですが、実は鱗翅目こそ盗蜜の常習犯でした。

例えばNewton special issue『植物の世界 第2号:ナチュラルヒストリーへの招待』で盗蜜行動を解説した記事のp118によれば、
チョウやガの仲間は、長い口吻を細いすき間にさしこんで盗蜜する。 
・長い口吻をもつチョウは、雄しべや雌しべにふれることなく蜜を吸うことができる。とくに蜜を浅いところに分泌する花はチョウやガに対しては無防備であり、ほとんどの場合一方的な掠奪を受けるのみである。



※※ 今回の撮影中に小さなアリが花筒を徘徊し、中に潜り込みました。(@5:12〜)
花蜜が目当てだとしたら正当訪花したことになります。



映像の最後で(@10:24〜)ホウチャクソウの花を開いて調べています。
花筒を潰して広げ、雄しべと雌しべの位置関係など内部の構造を示しました。



【追記】
「盗蜜する蛾」をネット検索してみると、ginguchiさんのブログでフヨウの花で盗蜜するツメクサガを報告されていました。

【追記2】
盗蜜者は花に穿孔して盗蜜するnectar robberと花を傷つけず送受粉せずに盗蜜するnectar thieveに分けられるそうです。
これに従えばマドガはnectar thieveになりますね。

2014/06/20

タニウツギで採餌戦略(正当訪花/穿孔盗蜜)を切り替えるクロマルハナバチ♀



2014年5月下旬

平地の水辺に近い所に咲いたタニウツギの群落でクロマルハナバチBombus ignitus)と思われる♀が訪花していました。
採餌行動をよく見ると、毎回花筒の外側から花弁の根元を突き刺して花蜜を吸っています。
これは穿孔盗蜜と呼ばれる行動で、花の受粉に関与しません。
舌の短い種類として知られるオオマルハナバチ♀がタニウツギの花で穿孔盗蜜するのは以前観察しましたが、クロマルハナバチも盗蜜の常習犯とは知りませんでした。

更に興味深いことに、同一個体が一度だけ正当訪花(花筒に頭から潜り込んで吸蜜し、その代わりに受粉を助ける)しました(@1:32〜1:35)。
ところがまたすぐに穿孔盗蜜に戻りました。
同一個体が正当訪花/穿孔盗蜜の採餌戦略を切り替える決定的瞬間を映像に記録することができました。
花筒の大きさに応じてスイッチするのでしょうか。
盗蜜行動は学習の産物なのかどうかも知りたいところです。

この個体は盗蜜ばかりしているのに、後脚の花粉籠には褐色の花粉団子を付けているのも不思議です。
タニウツギ以外の花の花粉なのかな?
(タニウツギの花粉は白いと思うのですが…?)
蜂を採集して花粉籠に付いた花粉を顕微鏡で調べれば、花の種類を突き止められるかもしれません。


穿孔盗蜜
正当訪花

2013/10/23

ユリズイセンの花で盗蜜するエントツドロバチ♀



2013年8月中旬

民家の庭先に咲いたユリズイセンエントツドロバチ♀(Orancistrocerus drewseni)が訪花していました。
正当訪花ではなく盗蜜していたので慌ててカメラを向けたのですが、すぐに飛び去ってしまいました。
穿孔盗蜜というよりも、園芸品種であるユリズイセンの花が開くと花弁と花弁の間に隙間が自然にできてしまうため、花筒の根元から蜂が吸蜜できてしまうようです。

関連記事→「ユリズイセンに訪花するフタモンアシナガバチ♀2つの採餌戦略(正当訪花/盗蜜)



2013/10/19

ユリズイセンに訪花するフタモンアシナガバチ♀2つの採餌戦略(正当訪花/盗蜜)



2013年8月中旬

前回の観察記録はこちら→「フタモンアシナガバチ♀がユリズイセンの花で盗蜜!?

交差点横の花壇を翌日に再訪しました。
驚いたことに、今度はユリズイセンに正当訪花して吸蜜しているフタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)のワーカー♀がいました。
花の奥に潜り込んだまま、なかなか出て来ません。

正当訪花
正当訪花

少なくとも2匹のワーカーが繰り返しユリズイセンを訪花しており、もう一匹の個体は前回と同じく盗蜜していました。
花筒の根元を外側から噛み破り穿孔盗蜜しているのか、あるいは別種の蜂が噛み切った盗蜜跡を利用して吸蜜しているのか、どちらでしょう?

盗蜜
盗蜜
盗蜜
盗蜜

この夏あちこちの花壇でユリズイセンを気にして見て歩くと、色々な品種があるようです。
満開に咲くと大きく開いた花弁の根元に隙間が自然に生じることが分かってきました。
花筒の形状をなさなくなるのです。
こうなれば舌の短い蜂もわざわざ穿孔盗蜜する必要はなく、花弁の隙間から容易に蜜腺を吸えることでしょう。
つまり咲きかけのユリズイセンを訪花するフタモンアシナガバチの行動は、穿孔盗蜜ではなく「花弁(花びら)や蕚(がく・花被片)の間から蜜を吸い取る」タイプの盗蜜行動なのかもしれません(wikipediaより)。
雄しべに触れずに吸蜜するので花の受粉には関与せず、盗蜜と呼ぶのは問題なさそうです。
ユリズイセン(アルストロメリア)は南米原産の園芸種ですから、たとえ蜂が受粉してくれなくても人工受粉などにより見栄え重視で品種改良されてきたのかもしれません。

(追記:おそらくユリズイセンは球根で増やすのでしょう。)
全く別の花壇で後日に撮影。隣り合う花弁の間に根元にも隙間ができる。


この日私が観察していた限りでは、盗蜜個体が正当訪花に切り替える例もその逆も見られませんでした。
(つまり、盗蜜の常習犯がいるのです。)
同一個体が時と場合に応じて2つの採餌戦略をスイッチするのか、個体差や日齢、体長の違いによるものなのか、経験や学習の成果なのか、同じコロニー出身なのか、など知りたいことがたくさんあります。※
そのためには先ず蜂を生け捕りにして採寸したり個体標識したりする必要があります。
こんな人通りの多い場所で目立つことをやり始めたら間違いなく「何してるんですか?」と尋ねられ、虫嫌いの人だと大騒ぎして蜂の駆除業者に通報されそうです。
これからも定点観察に通いたいので、そんな事態はなんとしても避けたいところです。
個体識別のマーキングは泣く泣く諦めました。
いかにも花壇に咲いた綺麗な花を撮っている風を装ってさり気なく観察するだけにとどめます。

※ ちなみに、オオマルハナバチでも春に咲くタニウツギの花で穿孔盗蜜する個体と正当訪花する個体が2種類います。

関連記事→「オオマルハナバチ♀の盗蜜行動

2013/10/13

フタモンアシナガバチ♀がユリズイセンの花で盗蜜!?



2013年8月中旬

交差点の花壇に咲いたユリズイセンフタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)のワーカー♀が訪花していました。
ところがこの蜂は開いた花筒の奥に素直に潜り込んで吸蜜しません。
もちろん巣材集めでもありません。
花筒の根元付近を外から食い破り、蜜腺を直接舐めているようです。
これはまさしく穿孔盗蜜と呼ばれる行動です。
盗蜜はハナバチと顕花植物との共進化の文脈で語られることが多いので、アシナガバチ(カリバチの仲間)も盗蜜を行うとは知らずとても意外でした。(※追記参照)
確かにアシナガバチの舌はさほど長くないため、正当訪花するのでは蜜腺に舌が届かないことがあるのでしょう。
注意して見ると、ユリズイセンの花の根元に盗蜜された古い傷跡が残っています。

撮影中にカメラのバッテリーが切れてしまい心残りでしたが、後日に再訪して更に詳しい観察ができました(映像公開予定)。
観察を重ねるうちにこれが本当に盗蜜行動と呼んで良いのかどうか若干の疑問が生じてくるのですけど、それは追々ブログに書いていきます。
この日は「衝撃のスクープ映像が撮れた!」と非常に興奮しました。

次の観察記録はこちら


※【追記】
1982年発行の『日本蜂類生態図鑑』PL46-3にフタモンアシナガバチが筒状の白い花の根本で外側から盗蜜している生態写真が掲載されていました。植物の名前が書いていないのが残念です。






2013/09/18

ヒレハリソウの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀



2013年7月下旬

畦道の脇に咲いたヒレハリソウ(別名コンフリー)の群落にクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。
未だ蕾が多く咲きかけの花でしたが、2匹以上の個体が花から花へと忙しなく飛び回っていました。

採餌行動をよく観察すると、正当訪花するのではなく花の根元を外側から噛み切って蜜腺を直接舐めていました。
これはまさに穿孔盗蜜と呼ばれる行動です。
後脚の花粉籠は空荷で、確かに花の受粉には関与していないことが分かります。
花にしてみれば困った話ですけど、狭い花筒の奥まで潜り込めず舌も短いクロマルハナバチは正当訪花しても吸蜜できないので、コロニーを養うためには仕方がありません。

蜂が飛び去った後の花には盗蜜痕の穴が開いていました。
思い返してみると、昔から似た様な傷跡をコンフリーの花によく見かけていた気がします。

クロマルハナバチの盗蜜行動を自分で動画に撮れたのはこれが2例目になります。

関連記事→「ヘクソカズラの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀
こうして少しずつ事例を撮り貯めれば、どのような形状の花にハナバチが盗蜜するのか傾向が見えてくるでしょう。

余談になりますが、一昔前は食べられる野草として、庭に生えたコンフリーの葉で天麩羅を作って食したものでした。
子供は遊びながらのおやつと称してコンフリーの花を抜き取り根元の花蜜を吸っていました。
ところが近年になってヒレハリソウはアルカロイドを含む有毒植物であると判明しました。
確かにコンフリーの花の甘い蜜を夢中になってたくさん吸っていると喉の奥がイガイガ・チクチクしてくるので、いつも程々のところで止めた記憶があります。

「嘘付いたら針千本飲ます」とはこんな感じなのかと子供心に強い印象が残っています。
蜂はヒレハリソウで吸蜜しても平気なようですが、汚染されたハチミツを多量に摂取したヒトの中毒事故もあり得るらしい。
参考:食品安全情報PDF





2013/09/13

ハナトラノオの花で盗蜜するクマバチ♀



2013年7月下旬

民家の花壇に咲いたハナトラノオ(=カクトラノオ)にキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が数匹、訪花していました。
朝は蜜量が多いのか、のんびり時間をかけて吸蜜しています。

ところがよく観察してみると、花の根元を外側から食い破って穿孔盗蜜していました。
後脚の花粉籠が空荷である点も受粉に関与しないことを物語っています。
筒状の花の入り口から潜り込むには体が大き過ぎる上に口吻が短いので、クマバチはハナトラノオに正当訪花しても蜜を吸えないのです。

途中で花壇に飛来したスズメバチとクマバチがニアミスしました。
スズメバチは訪花吸蜜せず、獲物を探索中のようです。




【追記】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
花蜜を求めて花を訪れるハナバチのなかには、花口から頭をつっこんで吸蜜することをせず、花筒の側部を口器でつき破って蜜を吸い取る行動がみられる。これは「盗蜜」と呼ばれ、クマバチでは古くから知られているが、マルハナバチでもよくみられる。  (p149より引用)





2013/09/01

ヘクソカズラの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀



2013年7月中旬

民家の庭木にヘクソカズラの蔓が巻き付いていて、クロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀複数個体が訪花していました。
蜂はヘクソカズラの悪臭を苦にすることも無く、花から花へせっせと飛び回っています。
採餌の様子をよく観察すると、花の根元を外から噛み切って蜜腺を直接舐めていました。
これはまさに穿孔盗蜜と呼ばれる行動です。
蜂が飛び去った後の花には盗蜜痕の穴が開いていました。
後脚の花粉籠に白い花粉団子を付けている個体もいますが、ヘクソカズラ以外の花から集めてきたことになります。

(クロマルハナバチは)マルハナバチの中でも舌が短く、花筒が短い花を好む。花筒に穴をあける盗蜜を行い、他のハチがあけた穴を二次利用することもある。(wikipediaより)

「ヘクソカズラ、盗蜜」でネット検索してみると、「ヘクソカズラ考」と題した興味深いブログを見つけました。
花の構造も写真付きで解説してくれています。
私も後日、ヘクソカズラの花弁を縦に裂いてみると、確かに毛が中に密生していることを確認しました。
この毛がアリによる盗蜜を防ぐために発達した物なら、正当訪花する真の送粉者は何者なのでしょうか?
ハエを誘引するにしては中途半端な悪臭のような気がします。(腐臭を発する植物が知られています。)※追記参照
別な日にヘクソカズラに訪花するヒメハナバチまたはコハナバチの一種を目撃しました。(映像なし)
そもそもアリが花に潜り込んでも受粉を助けてくれるのなら一向に構わない気がします。
むしろクロマルハナバチやクマバチによる穿孔盗蜜への対策を進化させるべきでしょう。


※【追記】
石井博『花と昆虫のしたたかで素敵な関係 受粉にまつわる生態学』によると、悪臭を放つヘクソカズラはハエ類を誘引する産卵基質擬態花ではないと明記してありました。
ヘクソカズラの嫌な匂いは、葉や茎を潰したときに出るものです。したがってヘクソカズラ特有の臭い匂いは送粉とは関係ありません。ヘクソカズラの花は比較的多くの花蜜を分泌しており、ハナバチ類やチョウの仲間がよく訪れます。(p170脚注より引用)

2013/08/24

オオバギボウシの花で盗蜜するクマバチ♀



2013年7月上旬

民家の庭先に咲いたオオバギボウシの群落にキムネクマバチ♀(Xylocopa appendiculata circumvolans)が訪花していました。
よく見ると、このクマバチは白い花の細長い(狭い)筒の中に頭を決して突っ込まずに、花筒の根元を外から食い破って蜜腺を舐めていました。
このような採餌行動は穿孔盗蜜と呼ばれ、花の授粉に寄与しません。
花粉に触れないため、この個体の後脚にある花粉籠は空っぽでした。

花弁の盗蜜跡を調べて写真に撮れば良かったですね…。

関連記事→「クマバチ♀の盗蜜行動@タニウツギ





2013/07/06

タニウツギの花で盗蜜するハキリバチの一種



2013年5月下旬

タニウツギに訪花する蜂の中に、盗蜜を行なっている不届き者がいました。

花弁の根元を外から食い破って蜜腺から直接吸うため、花の受粉には寄与しません。
残念ながら手前の花の死角に隠れてしまい、蜂の姿がはっきり見えません。
しかも撮れたのはこの一回だけでした。
腹部下面に花粉を集めるスコパ(花粉刷毛)が見えたので、ハキリバチの仲間の♀ではないかと思います。

近くではクマバチ♀もタニウツギの花から盗蜜していました。

いつもお世話になっている蜂が好きBBSにて問い合わせたところ、青蜂@管理人さんより以下の回答を頂きました。

動画で盗蜜しているハキリバチは、腹部の刷毛の色や出現時期などがヤマトハキリバチっぽいですね。これだけで特定できるわけではありませんが・・・。

ハキリバチの盗蜜行動はよくあることなのか、ネット検索してみたら、こちらの「種不明その8」に新屋さんが撮られた盗蜜の写真が載っていました。(しかも花がちょっとタニウツギっぽい?)



2013/07/01

タニウツギの花で盗蜜するクマバチ♀の盗蜜行動



2013年5月下旬

タニウツギに訪花するキムネクマバチXylocopa appendiculata circumvolans)を観察しました。
よく見ると、蜂は花の中に頭を決して突っ込まずに、花筒の根元を外から食い破って蜜腺を舐めていました。
このような採餌行動は盗蜜と呼ばれ、花の授粉に寄与しません。
花粉に触れないため、この個体の後脚にある花粉籠は空っぽでした。




ところが後日、同じタニウツギに訪花するクマバチでも穿孔盗蜜しない個体がいました。



2013年6月上旬

麓のタニウツギの花が散った後でも、山中の花は未だ咲いていました。
このキムネクマバチ♀は花に頭を突っ込んで花蜜を吸っています。(正当訪花
花季の終わりで蜜量が少ないのか、訪花しても一瞬調べるだけで忙しなく次の花に移動しています。
また、後脚の花粉籠に白い花粉団子を付けています。
あまりにも忙しない訪花なので、同一個体を240 fpsのハイスピード動画でも撮ってみました(映像後半のスローモーション)。

クマバチの生まれつきの体の大きさや舌の長さの微妙な違いによって異なる吸蜜戦略をとるのかもしれません。
それとも、営巣状況に応じて臨機応変に今回の採餌は盗蜜に専念しようとか今回は花粉を集めようとか同一個体が切り替えているのでしょうか。

ちなみに、タニウツギに訪花するオオマルハナバチでも盗蜜行動をする個体としない個体が見られました。

関連記事→「オオマルハナバチ♀の盗蜜行動


2013/06/04

桜の花蜜を吸うカワラヒワ(野鳥)



2013年5月上旬

民家の庭で満開に咲いた桜にカワラヒワCarduelis sinica)が2〜3羽、食事に来ていました。

嘴でどうやら花の根本を啄んでいます。
花弁は食べずに落としました。
おそらく花蜜を吸っているのでしょう。
カワラヒワは基本的に種子食の鳥なので、ちょっと意外な採食シーンでした。


【追記】
こんなやり方で花蜜を吸われると、桜にしてみれば受粉の役に立たず貴重な蜜だけ盗まれていることになります(盗蜜行動)。
カワラヒワは嘴が太いので仕方がないのでしょう。
一方、ヒヨドリやメジロは花の中に素直に嘴を突っ込んで吸蜜するので、受粉を助けています。(共生関係)



2012/07/25

オオマルハナバチ♀の盗蜜行動@タニウツギ



2012年6月上旬


道端のタニウツギに訪花するオオマルハナバチを観察しました。

オオマルハナバチ♀aによる通常の吸蜜


映像の初めに登場する個体♀aは、花に頭を突っ込んで花蜜を吸っています。(正当訪花
この♀aは胸部が花粉まみれになっています。

オオマルハナバチ♀bによる盗蜜行動

一方、2匹目の個体♀bは食事の作法が違いました。なんと、花の根元を毎回食い破っています。
後脚の花粉籠は空なので、目当ては花粉ではなく花蜜でしょう。
これはまさしく盗蜜と呼ばれる行動です。
花とハナバチは共進化してきたのですが、特定の送粉者だけを花蜜でもてなすために複雑な構造を持つに至った花の裏をかき、蜜のみを奪って受粉には関与しない吸蜜行動のことです。
マルハナバチも「隙あらば楽をしよう」と狡猾に振る舞うようです。
念願だった穿孔盗蜜の決定的な映像が撮れて感無量です♪後で思うと、タニウツギの花筒に盗蜜痕の有無を確認すれば完璧でしたね。
2匹の蜂が訪花していたタニウツギは少し離れたところに生えた別の木です。

『マルハナバチ・ハンドブック』p30によると、
オオマルハナバチはがっしりした顔つきで、盗蜜癖があります。
『日本の真社会性ハチ』p238によると、
オオマルハナバチの口吻は短いため花弁に穴をあけて吸蜜する。


オオマルハナバチが同じタニウツギの花に対して異なる吸蜜戦略を採っていたのが興味深く思いました。
花の微妙な大小によって臨機応変に吸蜜行動を切り替えるのでしょうか?
2匹目の♀が盗蜜ばかり行ったことで、これは否定されます。
採食戦略に個体差があるのでしょうか?
あるいは盗蜜は学習の賜物なのだろうか?(一度成功すると味を占めて盗蜜ばかり行うようになる?)
盗みの味は蜜の味…。


個人的な仮説としては、次のように推測しました。
  • 今回観察した一匹目は営巣初期のワーカー。
  • 頭の小さいワーカーは花の奥まで舌が届くので、盗蜜する必要が無い。
  • 盗蜜行動していた個体は単独営巣期の創設女王。
  • 大柄な女王は「頭でっかち」で、通常の方法では花の奥に舌が届かず、盗蜜に手を染めるようになった。

オオマルハナバチ♀の吸蜜行動を観察した後で片端から捕獲して個体識別のマーキングを施し、頭部の幅や舌の長さをノギスで採寸すれば、この仮説が正しいかどうか分かるはずです。
タニウツギ花筒の深さや入り口の直径も採寸する必要があります。

マルハナバチの働きバチは、生まれた時期によって体の大きさや舌の長さが異なります。(『セイヨウオオマルハナバチを追え:外来生物とはなにか』p6より)






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