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2024/02/19

捕らえた甲虫を吸汁するオオイシアブ♂

 

2023年6月上旬・午後14:00頃・晴れ 

里山の細い山道の横に立つコナラの幹にオオイシアブ♂(Laphria mitsukurii)が下向きに止まっていました。 
よく見ると何か小さな獲物を抱え、胸背に口吻を突き刺して吸汁しているようです。 
獲物は黒い小さな甲虫ですが、私には種名どころかおおまかな分類(科)も見分けられませんでした。 
餌食となった甲虫は、虫の息で脚を動かしています。 

私がちょっと動いたら、警戒したオオイシアブ♂は少し飛んで別の木に止まり直しました。 
今度は向きを変えて後ろ姿になりました。 
その場で腹端を持ち上げたので脱糞するかと思いきや、予想は外れました。 
腹端の交尾器の形状がよく見えるようになりました。 
腹端の形状が今後の参考資料になるかもしれないので、写真を最後に載せておきます。 

飛び立った瞬間を1/10倍速のスローモーションでリプレイしてみると、クロアリ(種名不詳)のワーカー♀が近寄ってきたので、獲物を奪われないよう自発的に飛び去っていました。 
オオイシアブ♂が止まり木で腹部を持ち上げたのも、通りすがりのアリが体に登ってこないようにするためだったのかもしれません。

ムシヒキアブ科の仲間で♂が♀に共食いされないように求愛給餌する可能性がありそうとのことなので、気をつけて探すようにしています。

オオイシアブの性別の見分け方を今回の調べ物で初めて知りました。 
今回の個体は胸部に橙色の剛毛が密生していることから♂と分かります(♀では黒い)。 
過去の記事も遡って性別を追記しておきます。 

関連記事(1、2年前の撮影)▶ 

2024/02/08

タヌキの溜め糞場で激しい空中戦を繰り広げるキイロコウカアブとコウカアブの群れ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年6月上旬・午後13:10頃・くもり 

平地のスギ防風林にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場wbcに定点観察に来てみると、互いに少し離れて3つ並んでいる溜め糞のうち1つ(wbc-2)だけ異様な活況を呈していました。 
黄色と黒の昆虫2種類が糞塊の上すれすれを高速でブンブン群飛していたのです。 
てっきり私は、溜め糞場で黒いハエを狩ろうとスズメバチが集まってきたのかと初めは思いました。 

関連記事(2、3、11年前の撮影)▶  


昼間でもかなり薄暗いスギ林床でよく目を凝らすと、黄色っぽい昆虫はスズメバチやベッコウバエではなくキイロコウカアブPtecticus aurifer)のようです。 
同じ溜め糞場で以前、下草に止まっているキイロコウカアブを撮っています。
黒い昆虫を写真鑑定した結果、おそらくコウカアブPtecticus tenebrifer)と思われます。 
性別までは見分けられませんでした。 
採集用の捕虫網を持参していれば、しっかり同定できたかもしれません。 
しかし、網をひと振りで仕留めないと、皆逃げてしまって戻ってこないでしょう。 
黄色と黒の体色が同種の性的二型だと群飛の説明がしやすいのですが(求愛飛翔)、同じミズアブ科でも体色の異なる別種のコウカアブでした。 
各種が複数個体で溜め糞の上すれすれを低空で飛び回っています。 

私が溜め糞wbc-2に近づいたせいでコウカアブ類が警戒して溜め糞から飛び立ったのかと思ったのですが、私がその場で長時間静止していても糞塊に着陸せずに群飛を繰り広げています。 
耳を澄ますと、ブンブンという羽音だけでなく空中で互いにバチバチと激しくぶつかる衝突音が頻繁に聞こえます。 
2種共に♀は産卵目的で獣糞に来ますから、ニッチが重なる同属2種間で熾烈な縄張り争いがあるのでしょうか? 
それとも、交尾相手の♀を溜め糞場で待ち伏せしている♂が飛来した♀を空中で捕獲しようと、必死で飛び回っているのでしょうか?(求愛のための群飛) 
溜め糞の周囲で交尾中の♀♂ペアを見かけませんでした。
彼らにとっても暗過ぎて、高速飛翔中に障害物を回避できないだけかもしれません。(空中衝突不可避)
コウカアブ類の成虫は肉食性ではありませんから、狩りのための探餌飛翔ではありません。 

キイロコウカアブとコウカアブの群飛を240-fpsのハイスピード動画でも無理して撮ってみました。(@0:50〜) 
確かに空中で互いに突進してぶつかり合っていることが分かりました。 
ライバルを縄張りから追い払おうと肉弾戦を挑んでいるのか、それとも誤認求愛の結果で衝突しているのか、素人目には見分けられません。 
現場はただでさえ暗いのに、ハイスピード動画モードに変えてフレームレートを4倍に上げると、単純計算で明るさが1/4に落ちてしまいます。
黒っぽい溜め糞を背景にすると、黒いコウカアブは見えにくいです。 
黄色いキイロコウカアブはまだ辛うじて目立ちます。 

溜め糞wbc-2の表面ではいつものように、クロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の成虫および幼虫が徘徊していました。 
キンバエ類と並んで、うんちレストランの常連客です。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施して暗い映像を明るく加工しました。 
※ アブの羽音や衝突音が聞き取れるように、音声を正規化して音量を強制的に上げています。


明らかに光量不足の薄暗いフィールドで生態動画を撮りたいとき、補助照明を使うべきでしょうか? 
写真撮影の場合はフラッシュを焚けば済む話ですが、問題は動画撮影です。 
赤外線の暗視カメラを使うほどではない、薄暗い条件が一番厄介です。 
特にハイスピード動画モードに切り替えてフレームレートを4倍に上げると、単純計算で明るさが1/4に落ちてしまいます。
私はいつも照明を使わずにカメラ本体の設定を変えてなるべく明るく写るようにしてから撮影し、編集時に更に明るく加工するようにしています。 
しかし、そのやり方では、どうしても画質が粗くなってしまいます。 

よほど明るい強力なライトを使わないと効果がありませんし、何よりも人工的な光を照射すると生き物の自然な行動が撮れなくなってしまうという懸念があります。 
野鳥や野生動物なら新たな眩しい光源に警戒してそれまでの行動を中断して逃げてしまいますし、昆虫には正または負の走光性があるので、照明自体が行動観察に悪影響を及ぼしてしまいます。 
時間をかけて照明に少しずつ慣らしてやるのが定石の撮影テクニックですけど、そんな悠長なことは言ってられない場合があります。(すぐに撮りたい場合) 
※ 昆虫にはあまり見えない赤色光のライトを使ってみるのがよさそうですが、我々ヒトが見た時にどうしても不自然な色味になってしまいます。

きれいに撮れない(見栄えが悪い)薄明薄暮の生態動画は誰も撮りたがりませんから、ある意味では未開拓のフロンティアかもしれません。 
BBCの動物カメラマンが使っているような超高感度のカメラやサーモグラフィカメラを私も使ってみたいのですけど、あまりにも高価で手が出ません(高嶺の花)。 
そうした軍事用カメラの需要が高まっている昨今、民生品の値段も下がってくれないかな〜?と密かに期待しています。

2024/01/27

スギ防風林でタヌキの溜め糞場に群がるクロボシヒラタシデムシの幼虫と成虫【10倍速映像】

 

2023年5月下旬・午前11:00頃・くもり 

平地でスギ防風林でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残したと思われる溜め糞場phを新たに見つけたので、ときどき定点観察に通っています。 
スギの根元と倒木に挟まれた地面に新鮮な糞が追加されていました。 

横に三脚を立てて、糞食性昆虫の活動を8分間微速度撮影してみました。 
スギ植林地の林床はかなり薄暗いので、カメラの設定で明るさを上げました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
一番多いのはクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の幼虫で、成虫も少し来ていました。 
他にはキンバエ類や微小なハエ(種名不詳)も集まっています。 

後にこの地点にもトレイルカメラを設置して、タヌキが排便に通っていることを確かめました。(映像公開予定



手前にスギ倒木。(右下隅にちらり)

2024/01/11

セイヨウタンポポの花蜜を吸って飛び去るビロウドツリアブ【ハイスピード動画】

 

2023年5月上旬・午後12:40頃・晴れ 

山麓の山道に咲いたセイヨウタンポポビロウドツリアブ(=ビロードツリアブ;Bombylius major)が訪花していました。 
ともに普通種ですけど、この組み合わせは初見です。 

長い口吻で吸蜜している間も高速で羽ばたき続けていますが、舌状花の花弁に足を掛けているので、ホバリング(停空飛翔)ではありません。 
そのまま次の花へと飛び去りました。 
アイドリングの羽ばたきを止めないのは燃費が悪い気がするのですけど、カロリー収支が赤字にならずやって行けてるのが不思議です。 
訪花中に外敵に襲われたり交尾相手が飛来した際にいつでも素早く飛び立てるように、アイドリングしているのでしょうか。

240-fpsのハイスピード動画撮影を優先したら、高画質のFHD動画に切り替える前に逃げられてしまいました。 
撮影後に頭花の総苞片が反り返っているセイヨウタンポポと確認しました。

2024/01/03

シャクの花蜜を吸うセスジハリバエ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年5月中旬・午後15:45頃・くもり 

ニセアカシアを主体とする河畔林の林床に咲いたシャクの群落でセスジハリバエTachina nupta)が訪花していました。 
風で激しく揺れるシャクの花序にしがみついたまま、口吻を伸縮させて花粉や花蜜を舐めています。 
この白い花を、あやうくドクゼリと間違いそうになったのですけど、同じセリ科でもこの植物はシャクのようです。 

樹々が展葉した林床は薄暗い上に、激しい風揺れに悩まされました。 
虫撮りには最悪の条件です。
ハエ類は敏感なので、私が手でシャクの茎をつまんで揺れないように押さえようとすると逃げてしまいます。 
「シャクに触わるなぁ…。」 

セスジハリバエがシャクの花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:51〜) 
スーパースローで見ると、ひどい風揺れも気にならなくなります。 
ところがハイスピードモードに切り替えたら風が収まり、ハエがなかなか飛んでくれなくなりました。 (マーフィーの法則) 
それでも愚直に撮り続けたら、身繕いのシーンが撮れました。 
左右の前脚を互いに擦り合わせています。 
ようやく花序の上で方向転換してから、隣の花序に飛び移りました。
足を伸ばせばなんとか渡り歩ける距離なのに、わざわざ飛んで移動しました。
足場が風で揺れるので、バランスを取るために羽ばたいているのでしょう。

カワラヒワCarduelis sinica)の鳴く声が聞こえますね。

2023/12/23

ミツバツチグリの花蜜を吸うビロウドツリアブ

 

2023年5月上旬・午後13:30頃・晴れ 

つづら折れの山道に沿って咲いたミツバツチグリの群落でビロウドツリアブ(=ビロードツリアブ;Bombylius major)が訪花していました。 
吸蜜中も休みなく高速で羽ばたき続けていますが、花弁に足を掛けているので、ホバリング(停空飛翔)ではありません。
 ビロウドツリアブの高速羽ばたきをハイスピード動画で撮ろうとしたら、逃げられてしまいました。 

遠くで登山客が熊よけ鈴をリンリン♪と大音量で鳴らし続けています。

2023/12/21

セイヨウタンポポの花蜜を舐めるセスジハリバエ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年5月上旬・午前11:20頃・晴れ 

山麓の道端に咲いたセイヨウタンポポの群落でセスジハリバエTachina nupta)が訪花していました。 
花の上でクルクルと自ら向きを変えながら、花蜜や花粉を舐めています。 
伸ばした口吻を深く差し込んでいることが分かります。 
花から飛び立つ瞬間を狙って、240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:06〜) 

この組み合わせは初見です。 
タンポポの総苞片が反り返っていたので、帰化植物のセイヨウタンポポでした。

2023/12/20

蚊柱が立つ夕暮れの小川【トレイルカメラ:暗視映像】ユスリカの群飛

 

2023年5月上旬・午後18:34・気温17℃(日の入り時刻は18:39) 

小川に架かる天然の丸木橋を自動センサーカメラで見張っていると、暗くなった夕方に蚊柱がたまたま写っていました。 
流れが淀んでいる水面の上に蚊柱が立っています。 
蚊柱とは、ユスリカの仲間が配偶者を見つけるために群飛する行動のことです。 
夜も更けるとユスリカが活動停止するのか、蚊柱は写らなくなりました。(薄明薄暮性?) 

変温動物の昆虫がいくら動いてもトレイルカメラのセンサーは反応しないはずなので、そもそも今回なぜカメラが起動したのか不明です。 
恒温動物の鳥やコウモリがカメラの前を素早く飛んで横切ったのか、風で揺れる枝葉のせいで誤作動しただけかもしれません。 
激しく群飛するユスリカをサーモグラフィカメラで撮影すれば、実は定説に反して気温よりも高く発熱していることが明らかになるかもしれません。 
…とロマンを掻き立てる妄想をしましたが、それならトレイルカメラでこの後も連続してユスリカ群飛の動画が撮れていたはずです。
それが無かったということは、熱血昆虫説はあっさり否定されそうです。

関連記事(9年前の撮影)▶ 蚊柱のハイスピード動画 


2023/12/18

草地でハタネズミの死骸を見つけた!

 

2023年5月上旬・午後15:10頃・晴れ 

川沿いの農道(堤防路)で見慣れない野ネズミが仰向けに死んでいました。 
トレイルカメラの映像でよく見ているアカネズミやヒメネズミに比べて顔つきが丸っこい印象です。 
調べてみると、ハタネズミMicrotus montebelli)のようです。 


平地(特に農地の近く)で野ネズミを見つけた場合、ハタネズミも考慮に入れる必要があると学びました。 

素人目には外傷が認められず、死因が不明です。 
殺鼠剤でも撒かれたのでしょうか? 
死後間もないらしく、死臭もありません。 

腐肉食の掃除屋は1匹のニクバエ科(種名不詳)しか来ていませんでした。 
現場では気づかなかったのですが、撮れた写真を拡大すると、死んだハタネズミの耳に小さなアリ(種名不詳)が数匹群がっていました。 (※追記参照)
拾った棒切れで死骸を裏返してみても、死骸の下にシデムシ類は潜り込んでいませんでした。 

死骸を採寸するために15cm定規を並べて置くと、ニクバエがそれに止まって前脚を擦り合わせました。(身繕い) 
ハタネズミ死骸を裏返して腹面を向けると黄色くて長い門歯が目立ちます。 
耳介が小さくて目立ちません。

このとき私は強行軍の後で疲労困憊していたので、ハタネズミの死骸をせっかく見つけたのに、写真と動画で記録しただけです。 
今思えば貴重な死骸を解剖して胃内容物を調べたり、頭骨標本を作成したりしたかったのですが、とても余力がありませんでした。

ハタネズミの死骸をそのまま放置するにしても、トレイルカメラを横に設置しておけば、カラスやトビなどのスカベンジャー(あるいは近所のネコ?)が 死骸を食べに来る様子を録画できたかもしれません。


※【追記】
飯島正広、土屋公幸 『リス・ネズミハンドブック』でハタネズミを調べた際に、次の記述を読んで震え上がりました。
耳介に着いているダニの1種であるツツガムシによってリケッチア症が媒介されるので注意が必要だ。(P45より引用)
当地はツツガムシ病という死に至る風土病がかつて猖獗を極めた最上川流域の某地区に近く、私が子供の頃はツツガムシ病について大人から散々脅かされてきたものです。
野ネズミの死骸を素手で触れてはいけません。

2023/11/24

シバザクラの花蜜を吸うビロウドツリアブ

 

2023年4月下旬・午後12:45頃・晴れ 

郊外の道端に咲いたシバザクラ(芝桜)の花壇でビロウドツリアブ(=ビロードツリアブ;Bombylius major)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 

シバザクラの花には分かりやすい蜜標があります。 
それを目がけて細長い口吻を差し込み、吸蜜します。 
ツリアブの仲間はホバリング(停空飛翔)の名手ですけど、吸蜜中は芝桜の花弁に足を掛けていた(着陸していた)ので、今回は吸蜜ホバリングではありません。 

ハイスピード動画に切り替えようとしたら私の背後を車が通りかかり、ビロウドツリアブは怖がって逃げてしまいました。 

複数個体のビロウドツリアブが忙しなく飛び回り、互いに追いかけあっている様子を目撃しました。 
シバザクラの花壇で♂同士の縄張り争いがあって、訪花に来る♀を待ち伏せしているのかもしれません。 
証拠映像が撮れずに残念でした。

2023/09/30

キバナノアマナの花蜜を吸うビロウドツリアブ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年3月下旬・午後14:40頃・晴れ 

平地の河畔林で根雪がすっかり溶け去ると、枯れ草に覆われた林床には見慣れない黄色い花が点々と咲いていました。 
早春に咲くスプリング・エフェメラルのひとつと思われますが、帰宅してから調べてみるとキバナノアマナという名前と知りました。 
(ヒメアマナの可能性は? ) 
ピッキオ『花のおもしろフィールド図鑑 春』でキバナノアマナを調べると、
北日本に多く、比較的自然の残った所で見かけます。(p281より引用)







ビロウドツリアブ(=ビロードツリアブ;Bombylius major)がキバナノアマナに訪花していました。 
長い口吻で吸蜜している間も羽ばたきを止めませんが、よく見ると黄色い花弁に足を掛けていました。 
ツリアブの仲間はホバリング(停空飛翔)が得意ですけど、今回は吸蜜ホバリングとは言えません。 
すぐに飛び立てるように、アイドリングのように羽ばたき続けているのでしょう。

ビロウドツリアブの高速羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:40〜) 
花から花への飛翔(ホバリング)中は前脚と中脚を揃えて前方に伸ばし、後脚は左右に広げていました。 

「訪花中も羽ばたきを止めない」と断定したいところですが、ひとつの花に長居するときは羽ばたきを止めていました。
生き物の観察では仮説を立てても例外や反例がすぐに出てきてしまいます。
小刻みな羽ばたきがじわじわと減衰して止まりました。 
ストロボ効果で高速羽ばたきが止まって見えるのではなく、本当に翅を休めています。 
花筒の奥の蜜腺にはなかなか口吻を挿入しなかった(手こずっていた?)ので、花粉を延々と舐めていたのかもしれません。 
複数個体を撮影。 





吸蜜の合間にビロウドツリアブは林床で日光浴していました。 
別個体が縄張りに侵入すると迎撃して軽い空中戦を繰り広げたことから、♀が飛来するのを待ち伏せしている♂ではないかと思います。 
せっかく面白い行動だったのに、動画では撮り損ねてしまいました。 




雪国の冬は何ヶ月も虫が撮れないので、ブランクが開けた早春には毎年どうしても、虫撮りが下手糞になっています。
反射神経や予測が鈍っているのです。 
コツを取り戻すまでにしばらく練習やリハビリが必要です。 

2023/08/31

雪山でニホンノウサギの糞粒に産卵するフユユスリカ♀?

 

2023年1月中旬・午後14:10頃・くもり 

スノーシューを履いて雪深い里山を探索していると、林内の雪面にニホンノウサギLepus brachyurus angustidens)が残した糞粒を見つけました。 
初めて歩く場所ですが、前後にピンクのリボンが目印として木に結び付けられていたので、おそらくスギ植林地の斜面を抜ける林道が雪に埋もれた地点のようです。 
7個の丸い糞粒がポロポロとまとめて排泄された中には、形がやや歪な糞も混じっています。 
雪面に足跡が無いのにアカマツの木の下に糞だけがまとめて残っているということは、明け方など雪面が固く凍結していた時間に排便したのでしょう。 

現場では全く気づかなかったのですが、動画の直前に撮った写真を見直すと、1匹のフユユスリカ♀?が糞粒の表面に腹端を付けて産卵していました。 
私が動画を撮ろうと無遠慮にズカズカと近づいたら、フユユスリカ♀は糞粒から雪面に降りてしまいました。 
翅があるのに気温が低くて飛べないようです。 


雪山で獣糞に産卵するユスリカの一種♀を見つけたのは、これが2例目です。 
獣糞の種類は特に選り好みしないようです。
いよいよ面白くなってきました。
ハエ類などライバルとなる虫は越冬中なのに、寒さに強いユスリカだけが獣糞を独り占めしているようです。
今回も謎のユスリカを採集してないので、しっかり同定できていません。 
雪国の冬(積雪期)に見かけたからと言って、フユユスリカ属の一種とは限らないかもしれません。
次回は気温もしっかり測りたいものです。

雪山登山中に便意を催したら、しばらくは埋めずに放置しておいて、ユスリカが人糞トラップに誘引されるかどうか調べてみるのも面白そうです。

ユスリカに気づかず、ピントが甘くて残念

2023/08/30

ケカビの生えていない新鮮なタヌキ溜め糞に集まる晩秋のハエ類:ベッコウバエ♂、ハクサンベッコウバエ、キバネクロバエ

 

2022年11月中旬・午後13:15頃・晴れ 

里山のスギ林道で定点観察しているホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場sを見に行くと、大小の糞塊が2個残されていました。 
気温の低い晩秋には、溜め糞に集まるハエ類はめっきり少なくなっていました。 
来ている少数の昆虫も低温のせいで動きが非常に緩慢です。 

古い糞塊には白いケカビが発生しています。 
その上に追加された泥状の新鮮な糞(下痢便)にベッコウバエ♂(Dryomyza formosa)とハクサンベッコウバエNeuroctena analis)が1匹ずつ同じ向きに乗っていました。 
手前の別な小糞塊にはタヌキが食べた果実の種子が未消化のまま大量に含まれていました。 
そちらの小糞塊にキバネクロバエMesembrina resplendens)が1匹で来ていました。(@0:57〜) 

興味深いことに、ケカビの生えた古い糞塊にハエ類は集まっていませんでした。 
これが偶然の事象なのかどうか、今後も注意して見ていくつもりです。 
溜め糞を長期間のインターバル撮影したタイムラプス動画で記録すれば、分かりそうです。
ケカビが生えると獣糞の匂いや味、栄養価も変わるはずですから、ハエ類が来なくなっても不思議ではありません。 
糞の表面にモサモサのケカビが生えると、ハエが物理的に着陸しにくくなるのでしょうか?
その一方で、ケカビの生えた獣糞を好む糞虫もいます。 

関連記事(別地点で同年の秋に撮影)▶ ケカビの生えたタヌキの溜め糞を食べるセンチコガネ 

蓼食う虫も好き好きというか、ニッチの棲み分けが見事です。 
数日経つとケカビは自然に消滅し、溜め糞の生物分解は次の遷移段階へ移ります。 

2023/08/05

雪上のタヌキ溜め糞に群がるフユユスリカ?の謎

 

2022年12月下旬・午後14:00頃・晴れ

スノーシューを履いて山麓近く(標高〜320m地点)のスギ植林地を探索していたら、ザラメ雪の上にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場opを新たに見つけました。 
周囲の雪面にはスギの落枝や落ち葉が散乱していて、タヌキの足跡も多数残っていました。
新鮮な糞の中に植物の種子が少し混じっています。 
糞の下の雪が少し溶けて、雪を茶色に染めています。 
スギ林床には日がほとんど射さないので、太陽熱ではなく排泄直後の糞の体温のせいで雪が少し溶けたのだと思われます。 

この日は他の地点の溜め糞場も見て回ったのですが、根雪が積もった後なので、糞虫類はおろかハエ類も全く来ていませんでした。 
ところが、ここではタヌキの糞塊にユスリカの仲間が数匹集まっていたので、非常に驚きました。 

このユスリカは、獣糞の表面から吸汁しているのでしょうか? 
口元をマクロレンズで接写すべきでしたね。 
平凡社『日本動物大百科9昆虫II』を紐解いてユスリカ類について調べると、
成虫は摂食をしないものと考えられていたが、花の蜜の吸汁、飼育下で蜂蜜溶液などをなめるという事実の観察から、この考えは訂正された。実際、成虫の口器の形態は、液状の物質を摂取していることを明確に裏づけている。(p126より引用)
動画を注意深く見直すと、糞上を歩き回るユスリカが先の尖った腹端をチョンチョンと糞に付けていました。 
ユスリカ♂の触角はブラシ状に発達しているはずですから、♀が産卵しているのだと謎が解けました。 
孵化した幼虫が冬の間にタヌキの糞を食べてゆっくり育つのでしょう。

溜め糞の周囲の雪面を徘徊する個体もいますが、雪上は気温が低くて風もやや強いので、飛べないようです。 
現場で気温を測るべきでしたね…。 
厳冬期の雪上生活に適応するために翅を退化させた昆虫もいますけど、今回見つけたユスリカには翅があるので、晴れて暖かい日には普通に飛び回るのでしょう。

ネット検索で調べてみると、フユユスリカ属という名前からして魅力的なグループがいるそうです。

参考サイト:
フユユスリカは、フユユスリカ属に分類される体長4~5mmほどの小さなユスリカの仲間で、名前のとおり、冬になると川から羽化して成虫となります。

近藤繁生「深泥池のビワフユユスリカ(新称) Hydrobaenus biwaquartus について」ため池の自然 No. 37(2003) によると、
フユユスリカは、エリユスリカ亜科フユユスリカ属Hydrobaenus に含まれるユスリカで、わが国では、現在およそ30種の成虫が記録されている(佐々, 1998) が、幼虫については 4 種が知られているにすぎない(山本, 2001)。本属の幼虫は一般的に貧栄養の湖や河川の沿岸帯に生息し、休眠のため 2 令で繭を形成することが知られている。

 

ただし、今回はユスリカを採集してないので、しっかり同定した訳ではありません。
雪国の冬季(積雪期)に見かけたからと言って、フユユスリカの一種とは限らない? 
他の季節にタヌキの溜め糞場でユスリカを見かけないのは、一体なぜでしょう? 
ハエ類など優占種に追い払われてしまうのかな? 
フユユスリカが特に耐寒性を獲得した秘密も不思議です。 
捕食者(捕食性昆虫)の居ない冬季は生存に有利なのでしょう。 

ここ数年、タヌキの溜め糞場に集まる虫たちを重点的に観察してきたので、当地で見れる登場メンバー(「うんちレストラン」の常連客)はほぼ見尽くしただろうという自負がありました。 
それでもなお、観察する時期や時間帯を変えれば驚くような発見が未だ残っていて、自然観察は奥が深いとつくづく痛感しました。 

後日、この地点にトレイルカメラを設置して、本当にタヌキが排便に通ってきていることを確かめました。 









【追記】
どうやらタヌキ以外の動物の糞にも集まるようです。


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