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2016/12/03

ヌルデミミフシ(虫瘤)



2016年8月下旬

峠道の横に生えたヌルデの灌木で葉に虫こぶ(虫瘤、虫えい)が形成されていました。
これはヌルデシロアブラムシ(Schlechtendalia chinensis)が寄生してできたヌルデミミフシと呼ばれる虫こぶです。
枝によって色づき方が違うのは、形成時期にズレがあるからですかね?

次回は虫えいをカットして内部を調べてみよう。



2016/12/01

ミズナラに形成したナラメリンゴフシ【虫こぶ】経過観察#6



2016年7月下旬

虫瘤ナラメリンゴフシの定点観察記録#6


山間部の道端に生えたミズナラ幼木の枝先に形成されたナラメリンゴフシを9日ぶりに見に行きました。

全体的にすっかり木質になり、これ以上変わることはなさそうです。
乾いて少し萎んだかもしれません。
草刈りのとばっちりでいつミズナラごと伐採されるか分からないので、虫こぶを採集して持ち帰りました。

虫えいを切断して内部の構造(断面)を観察してみる?

シリーズ完。



2016/10/23

ミズナラに形成したナラメリンゴフシ【虫こぶ】経過観察#5



2016年7月中旬

虫瘤ナラメリンゴフシの定点観察記録#5


山間部の道端に生えたミズナラ幼木の枝先に形成されたナラメリンゴフシの様子を見るため、15日ぶりに足を運びました。
虫こぶはコルク質に変化し、乾いて固くなっていました。

今回も小蜂(ナラメリンゴタマバチ?;Biorhiza nawai)の姿はありません。

つづく→#6



2016/10/02

サーターアンダギーと化したナラメリンゴフシ【虫こぶ】



2016年7月上旬

虫瘤ナラメリンゴフシの定点観察記録#4


山間部の道端に生えたミズナラ幼木の枝先に形成されたナラメリンゴフシの様子を見るため、9日ぶりに足を運びました。

梅雨のせいか、表面が柔らかく脆くなっていました。
湿ったサーターアンダギー(揚げドーナッツ)を連想しました。
なんか美味しそうですね。
虫こぶ上を徘徊する小蜂(ナラメリンゴタマバチ?;Biorhiza nawai)も居なくなったようです。

つづく→#5



2016/09/14

ミズナラに形成したナラメリンゴフシ【虫こぶ】経過観察#3:



2016年6月下旬

虫瘤ナラメリンゴフシの定点観察記録#3


山間部の道端に生えたミズナラ幼木の枝先に形成されたナラメリンゴフシの様子を12日ぶりに見に行きました。
虫こぶの表面が茶色で、触るとブヨブヨしわしわになっていました。
腐ったリンゴのフカフカ、シワシワした感触と少し似てるかもしれません。
多少手荒く扱っても中から蜂が飛び出して来ることはありませんでした。
表面に多数の穴が開いているのはナラメリンゴタマバチ(Biorhiza nawai)の羽化孔なのかな?
虫こぶ上を微小な昆虫が徘徊しています(正体不明)。

つづく→#4



2016/09/09

シリアゲコバチ♀の探索飛翔【ハイスピード動画】



2016年6月下旬

冬に使う雪囲い用の材木を保管している軒下の資材置き場で寄生蜂のシリアゲコバチ♀(Leucospis japonica)が寄主の巣を探して飛び回っていました。
飛翔シーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
やがて杉の材木に止まって産卵を始めました。
産卵シーンを寄りの絵で撮ろうとしたら逃げられてしまい残念。

▼関連記事:6年前の撮影
シリアゲコバチ♀の産卵:スロー再生


2016/08/10

ミズナラに形成したナラメリンゴフシ【虫こぶ】経過観察#2:ナラメリンゴタマバチの羽化?



2016年6月上旬

虫瘤ナラメリンゴフシの定点観察記録#2


山間部の道端に生えたミズナラ幼木の枝先に形成されたナラメリンゴフシの様子をちょうど1週間ぶりに見に行きました。

虫こぶ(虫えい、虫瘤)は表面の桃色が褪せていました。
リンゴというよりもジャガイモっぽく見えます。
触ってみると表面の張りが失われ、ブヨブヨのしわしわでした。
奥が硬くて木質の感触がありました。
虫こぶを圧しても中から蜂が飛び出して来ることはありませんでした。
虫こぶの表面を徘徊している超微小の虫こそが、虫こぶから羽化したナラメリンゴタマバチ(Biorhiza nawai)なのでしょうか?
それとも寄生蜂なのかな?
採集するか、もしくは現場で微小蜂をマクロレンズで接写すべきだったのに、横着してしまいました。
『虫こぶハンドブック』p23によれば、「5〜6月に雌雄(ともに有翅)が羽化」するらしい。
写真を拡大して初めて気づいたのですが、虫こぶの表面に小さな穴が多数開いています。
おそらくこれがナラメリンゴタマバチの羽化孔なのかもしれません。(非力なタマバチが内部から食い破れるのだろうか?)

それとも虫こぶの上部に初めから凹んでいた開孔部から羽化するのでしょうか?

つづく→#3



2016/08/03

ヤドリバエの卵を付けたツマジロカメムシ



2016年6月上旬

山間部のガードレール脇に生えたタニウツギの灌木でツマジロカメムシMenida violacea)を見つけました。
葉上を歩き回り今にも飛び立ちそうな予感がしたので、飛翔シーンを撮ろうと粘ってみたものの、空振りに終わりました。

途中でクロオオアリ♀とニアミスしても互いに無関心でした。

背中の小楯板に目立つ白点は寄生者(ヤドリバエ類)に産み付けられた卵だと思われます。

身繕いで落としたくても足が届かない場所にあります。
ヤドリバエの幼虫が孵化して捕食寄生する様子を観察するのも面白そうですが、寄主となったカメムシ成虫を飼育法(餌は?)が分からないことには難しそうです。




2016/07/24

ミズナラに形成したナラメリンゴフシ【虫こぶ】#1



2016年6月上旬

虫瘤ナラメリンゴフシの定点観察記録#1


山間部の道端に生えたミズナラの幼木で枝先に大きな虫こぶ(虫えい、虫瘤)を見つけました。
大きさはピンポン球ぐらいで表面はやや桃色に色づいて張りがあり、上部は割れていました。
帰ってから調べてみると、虫こぶの名前はナラメリンゴフシと判明。
ナラメリンゴタマバチ(Biorhiza nawai)の両性世代がナラ類の芽に形成した虫こぶらしい。

『昆虫コレクション』p67によると、

(ナラメリンゴフシは)日の当たるところは赤くなり、よく目立つ。

虫こぶを採集して飼育してみようか、切って中を調べてみようか、しばし悩みました。

私が枝を切ってしまうと水揚げに失敗するリスクがあります。
もし枝が枯れると虫こぶの成長が止まってしまうのか、中のタマバチも死んでしまうのかどうか、知識がうろ覚えで分からなかったのです。
色々と忙しくて手が回らないので、このまま現場に残して通りかかる度に定点観察してみることにしました。

つづく→#2:ナラメリンゴタマバチの羽化?



2016/05/14

キアシナガバチの古巣で越冬するキアシブトコバチ♀

2015年12月上旬

キアシナガバチ巣の定点観察@軒下#7


冬になりコロニーが解散したキアシナガバチPolistes rothneyi)の古巣を軒下から採集しました。
寄生蛾の幼虫に食害された形跡は無く、珍しく綺麗な状態で大きく育っていました。
育房を数えると72室。



この古巣を密閉容器に保管して室内に放置していたら、年が明けたある日(2016年1月下旬)、容器内に小さな蜂が死んでいることに気づきました。
寄生蜂が季節外れに羽化したのなら面白いのですが、写真に撮ってみるとキアシブトコバチBrachymeria lasus)でした。
本種の寄主はアシナガバチではなく鱗翅目で、樹皮下などで成虫越冬するそうです(『ハチハンドブック』p25より)。
冬越しのためにアシナガバチの古巣に潜り込んでいたとしても不思議ではありません。

古巣を採集したときに、もっとしっかり育房内を調べるべきでしたね。

腹面から見ると腹端に産卵管のようなものがあるので♀ですかね?
腹端の黄色い水滴?は糞が乾いた物かな?

▼関連記事
コガタスズメバチの古巣で越冬していたキアシブトコバチ

その後、春になってもキアシナガバチの古巣から寄生蛾の成虫は羽化してこなかったので、やはりこのコロニーは珍しく寄生を免れたようです。


シリーズ完



2016/05/03

コガタスズメバチの古巣で越冬していたキアシブトコバチ



2015年12月上旬
▼前回の記事
越冬休眠していたフタモンアシナガバチ新女王の覚醒


コガタスズメバチ巣の定点観察@祠・軒下#6


採集してきたコガタスズメバチVespa analis insularis)の古巣の外被を慎重に解体して中を調べていると、とても小さな蜂が一匹出てきました。
キアシブトコバチBrachymeria lasus)のようです。
寄生蜂の一種ですがスズメバチ類を寄主としている訳ではないので、コガタスズメバチの生活史と直接の関係はありません。
隠れ家を壊されたせいで休眠から覚醒し、飛ぶ元気はないものの辺りを歩き回ります。
方眼紙の上に自発的に乗ってくれて、採寸の手間が省けました。

『ハチハンドブック』p25によると、キアシブトコバチは樹皮下などで成虫越冬するらしい。

▼関連記事
群飛・集合するキアシブトコバチの謎
したがって、スズメバチの古巣に潜んで冬越ししても不思議ではありませんね。
私は本種の性別判定法を知らないのですが、越冬するのは♀だけなのですかね?
それとも♂も越冬して、春になったら交尾するのかな?
残念ながら、飼育下での越冬には失敗しました。
以下は標本写真。




ちなみに断熱効果に優れた古巣内で越冬していた居候としては他に、キアシナガバチ(Polistes rothneyi)新女王も1匹だけ見つかりました。(映像なし。以下に標本写真)
スズメバチの空き巣は千客万来ですね。

シリーズ完。



2016/02/26

キイロスズメバチの巣に侵入する寄生ハエ?



2015年10月中旬

キイロスズメバチ巣の定点観察#11


ハエ(またはアブ)の仲間が飛来しキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)の巣に止まると外被の上を歩き回りました。
これは果たして偶然ですかね?
寄生バエの一種だとすれば面白いのですが、同定用の写真を撮る間もなく飛び去ってしまいます。
例えばベッコウハナアブの仲間は♀がスズメバチの巣に産卵することが知られています。

▼関連記事
寄主モンスズメバチの巣の近くに産卵するムツボシベッコウハナアブ♀
越冬用の隠れ家を探索中にキイロスズメバチの巣(外被)に迷い込んだクサギカメムシとは違い、今回の双翅目は明らかに巣口に興味を示して接近したように思います。(気のせいかもしれませんが、侵入意図が見て取れました。)
巣口に近づく怪しいハエを門衛が追い払ったのでしょうか。

※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。

好蟻性昆虫が非常に繁栄しているのに対して好蜂性昆虫の種類がいまいち少ないのは、社会性蜂の多くの種は(ミツバチを除いて)一年限りの営巣のためでしょう。
あまりよく調べられていないだけですかね?

シリーズ完?


2016/02/08

寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀と寄主ヒメクモバチの攻防:その2



2015年10月上旬

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#11


シーン1:午前10:50

寄主のヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)♀bが在巣のときに、境界標の左の縁から寄生蜂が泥巣に近づいてきました。
寄主と正面から向かい合い、ヒメクモバチが追い払いました。
しかし激しい闘争行動と呼べるようなものではなく、軽く突進する素振りを見せるだけでした。
ヒメクモバチは穏健な性格なのでしょうか。
もしかすると、コクロオナガトガリヒメバチ♀の姿形が寄主に擬態していてヒメクモバチ♀の目には紛らわしく見えるのかもしれません。

それとも、コクロオナガトガリヒメバチは白い触角を激しく動かすことで寄主を幻惑しているのかな?
寄生蜂は境界標の角を曲がった死角に隠れるだけで、執念深くチャンスを窺っています。
しばらく境界標の天辺を徘徊してから、寄生蜂は飛び去りました。




シーン2:午前10:52

寄主のヒメクモバチ♀bが吸水に出掛けた隙に寄生蜂がまた飛来しました。
泥巣の近くを徘徊している間に母蜂が泥巣に戻って来たので、絶好の産卵機会を逃しました。
ヒメクモバチ♀に睨まれた寄生蜂は境界標の天辺に登ってから、あっさり飛び去りました。
泥巣をガードしている間に、寄生蜂は未練がましく周囲を飛び回っています。
寄生蜂に挑発を繰り返されても深追いせず、泥巣から動かないのは賢明な防衛戦略と言えるでしょう。
しつこい天敵がようやく居なくなると、ヒメクモバチ♀は巣材集めのため地面に歩いて降りました。
泥玉を持って登り、造巣作業を続けています。
次は飛び去り、おそらくまた水を飲みに出掛けたようです。



シーン3:10倍速映像

シーン1、2と同時並行に微速度撮影した映像(@2:59〜)にも寄生蜂との攻防が写っていました。
引きの絵では小さな蜂は見えにくいのですけど、コクロオナガトガリヒメバチ♀は触角に白い部分があるのでなんとか見分けられます。



この日の総括:

この日は寄生蜂の産卵が見られず、前回ほど泥巣に執着して近づかなくなったのは何故でしょう?
寄主の巣作りの進捗状況を見に来ているだけかもしれません。
寄主ヒメクモバチの育房内で胚発生が進み、寄生蜂の産卵に適さなくなったのでしょうか?
母蜂の造巣ペースを見定め、次の貯食物が新しい育房に搬入されるまで待っているのかもしれません。
寄生蜂が人懐こくカメラの三脚に乗って来ることもありました。(映像は撮り損ね)

一方ヒメクモバチ♀も寄生蜂の存在に気づいているのにも関わらず、平気で巣を留守にしたり造巣活動を続けているのは不思議です。
もしこの日初めて観察していたとすれば、我が子を危険に晒す投げやりの態度にも見えたでしょう。
前回の観察(5日前)ではしつこい寄生蜂のせいで母蜂は泥巣に釘付けになり、ひたすらガードしていました。
造巣どころではなく、泥巣のガードを優先していました。

▼関連記事
寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀の産卵および寄主ヒメクモバチとの攻防

シリーズ完。


2016/02/02

宿主キイロスズメバチ♂から脱出したハリガネムシ



2015年10月中旬

キイロスズメバチ巣の定点観察#7


巣の下で弱々しく徘徊していたキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)♂を生け捕りにして持ち帰りました。

▼前回の記事 
体内寄生されて弱ったキイロスズメバチ♂
毒瓶は使用していませんが、翌日には採集容器内で息絶えていました。
死骸の傍らでハリガネムシの一種が蠢いていて仰天しました!
生きているハリガネムシを見るのはこれが初めてです。
宿主から脱出したハリガネムシ(おそらく成虫)の色は乳白色で、表面は艶があります。
ちなみに円形プラスチック容器の直径は3cm。
ハリガネムシは宿主の体長の何倍あるでしょうか。
やがてハリガネムシはとぐろを巻きました。
活発に動いている方が頭部なのでしょうか。
頭部に目はあるのかな?と思い、マクロレンズで強拡大しても眼点などは見つかりませんでした。
できれば宿主の腹端から脱出する様子を見たかったですね。

キイロスズメバチの営巣地の横には渓流が流れていました。
ハリガネムシの生活史から、次のようなストーリーが考えられます。
ハリガネムシに寄生された中間宿主の水生昆虫や直翅類(コオロギやカマドウマなど)をキイロスズメバチのワーカー♀が狩って、その肉団子を給餌された蜂の子が体内寄生されたまま成虫♂まで育ったと思われます。
スズメバチの成虫の主食は巣内の幼虫から貰う栄養交換液であって、固形の獲物を自らは食べられません。
また、雄蜂は狩りを行いません。
したがって、ハリガネムシに寄生されたのは成虫の時期ではなく、その前からに違いありません。
もし中間宿主内のハリガネムシが成虫だったら肉団子にする際に噛み殺されてしまったはずです。
ハリガネムシの小さな幼虫が運良くキイロスズメバチ♂幼虫に飲み込まれたのでしょう。

キイロスズメバチが蛹になっても変態が完了するまでハリガネムシは身を潜めていて、成虫になってから一気に成長したと思われます。
巣の外に捨てていた多数のキイロスズメバチ幼虫も同じくハリガネムシに体内寄生されていたのかもしれない、と想像しました。
(もちろん、キイロスズメバチ幼虫の大量遺棄事件とハリガネムシの寄生は無関係である可能性もあります。)

もし私が採集しなければ、ハリガネムシに寄生されたキイロスズメバチ♂はヨロヨロと渓流に向かい、入水自殺したでしょうか?
川沿いで待ち構えていれば、そのような宿主操作による異常行動が観察できるのかな?

成虫になったハリガネムシは宿主の脳にある種のタンパク質を注入し、宿主を操作して水に飛び込ませ、宿主の尻から出る。(wikipediaより)

ハリガネムシに寄生された昆虫は生殖能力を失うらしい。
死んだキイロスズメバチ♂を解剖して精巣の状態を調べるべきでしたね。(乾燥標本にしてしまったので無理かも…?)
今回は動揺してしまったので(正直言って確かにグロい!)、次回の宿題です。

ハリガネムシを記念にエタノール液浸標本として保存してみることにしました。
するとハリガネムシはコイル状に丸まりコンパクトになりました。
死んで乾燥すれば針金のようにカチカチに硬くなるらしい。

▼関連記事 
カマドウマ♀に寄生したハリガネムシの最期

エタノール漬けにした後で思ったのですが、脱出したハリガネムシを水槽で飼うことは可能ですかね?
1匹だけでは交尾・産卵行動を見るのは無理ですけど、水中で泳ぐシーンだけでも動画に撮れば良かったですね。(ハリガネムシは皮膚呼吸なのかな?)

『スズメバチの科学』を紐解いてみると、スズメバチの天敵のひとつとしてセンチュウが紹介されていました。
しかし、p65に掲載された写真「キイロスズメバチの体内から現れたセンチュウ」はハリガネムシの間違いではないでしょうか?



陰山大輔『消えるオス:昆虫の性をあやつる微生物の戦略 (DOJIN選書)』p43によると、
ハリガネムシ(線虫とは分類学的には少し異なる類線形動物門に属する寄生虫)も宿主の行動を操作して水辺に向かうことが知られており…(後略)。




つづく→#8:キイロスズメバチ♀による外被の増築と巣口の拡張【6倍速映像】





2016/02/01

体内寄生されて弱ったキイロスズメバチ♂



2015年10月上旬

キイロスズメバチ巣の定点観察#6


巣の下の壁際でキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)♂が地面を弱々しく徘徊していました。
日光浴しているようにも見えますが、飛べなかったり歩行がぎこちなく前脚が震えています。
交尾を済ませ寿命が近いのでしょうか?
それとも体内寄生による神経症状なのかな?

撮影後に捕獲し、持ち帰りました。
スズメバチ好きとしては、手元に置いておくための雄蜂の標本を一匹ぐらい欲しかったからです。
そして翌日、私の予想は的中しました!
捨てずに良かった。
この雄蜂を採集したのは「虫の知らせ」だったのかもしれません。
果たして獅子身中の虫の正体は…?

つづく→#7:宿主キイロスズメバチ♂から脱出したハリガネムシ


2016/01/26

寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀の産卵および寄主ヒメクモバチとの攻防



2015年10月上旬

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#7


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)が作った泥巣bに招かざる客の到来です。
真っ直ぐに伸びた長い産卵管を有する黒いヒメバチの一種♀が境界標を思わせぶりに徘徊しています。
産卵するチャンスを虎視眈々と窺っている寄生蜂だとしたら、7年前の記憶が鮮明に蘇りました。

▼関連記事(2008年9月下旬撮影)
コクロオナガトガリヒメバチ@ヒメベッコウ泥巣
そのときヒメクモバチ(Auplopus carbonarius)に寄生する蜂として名前を教えてもらったコクロオナガトガリヒメバチ♀(Picardiella tarsalis)の写真(@「日本産ヒメバチ目録」サイト)にそっくりです。

たまたまホスト(寄主)が油断して泥巣を留守にした隙に、寄生蜂が泥巣の下部を触角で探りながら丹念に調べていました。
初めは境界標の側面でマイマイガ幼虫の死骸を調べていたのですが、寄主は鱗翅目ではなく本命はヒメクモバチの泥巣にありました。



「山形県」の刻印(窪み)を利用して泥を詰め込んで作った巣の中で、「形」の字の第6画後半に強い興味を示しています。
ここにヒメクモバチの育房があるようです。

(育房内には母蜂が狩ってきたクモが貯食され、麻酔されたクモの表面に卵が産み付けられているはずです。もしかするとヒメクモバチの幼虫が既に孵化していてクモを食べているところかもしれません。)
寄生蜂♀は腹端を前方に曲げ、産卵管を前に向けると産卵姿勢になりました。
厚く泥塗りされ乾いた巣にこんな華奢な蜂が細い産卵管で突き刺し産卵するとは驚きです。
産卵シーンを背面ではなくできれば側面から撮りたいのですが、私が下手に動くと気配を感じて寄生蜂が逃げてしまいそうで我慢しました。
まさに産卵中に母蜂が空荷で帰宅しました。(@2:20)
境界標の下から登ってきたヒメクモバチ♀bは寄生蜂を見つけても特に激しい攻撃は加えないのが意外でした。
ヒメクモバチ♀が近寄ると寄生蜂が慌てて逃げました。
母蜂は泥巣全体を心配そうに見回ります。
一方、追い払われた寄生蜂は境界標の泥巣がある面の角を曲がった側面に止まっています。
ホスト♀が横を通ると寄生蜂は飛んで逃げるものの、またすぐに舞い戻って来て境界標の天辺の角に静止しました。

マクロレンズを装着して寄生蜂を接写してみました。
しっかり背面を接写するのはアングルが確保できず無理でした。
触角の中央部、腹端、および後脚の先が白色で、残りは全身黒色の蜂です。
泥巣をガードしているホストの顔も接写すると、触角の根本が白く見えました。
寄生蜂の居る上を向いたまま油断なくじっとしています。
(※ マクロレンズで接写したパートのみ動画編集時に自動色調補正を施してあります。)


ほとぼりが冷めると、寄生蜂は境界標の側面から慎重に泥巣へ忍び寄りました。
泥巣上のヒメクモバチ♀bは後ろを向いていて、恐るべき天敵の存在に気づいていません。


「志村〜、後ろ、後ろ〜!!」
ヒメクモバチ♀はなんとなく警戒しているのですが、なぜか寄生蜂とは逆方向へ泥巣を離れてしまいました。
その間に寄生蜂が泥巣の下部に到達し、触角で探っています。
ようやく異変に気づいたヒメクモバチ♀が駆け寄ると、寄生蜂は慌てて飛んで逃げました。
産卵未遂と思われます。
ヒメクモバチ♀は泥巣上で油断なく警戒を続けています。

逃げたと思った寄生蜂はちゃっかり境界標の天辺に居ました。
触角を拭い身繕いしています。
産卵のチャンスを虎視眈々と待っている印象。
急に飛び立つと、境界標の横に生えた灌木(常緑樹)の葉に止まりました。
しばらく休んだり身繕いしてから飛んで境界標へ戻りました。
その間、寄主のヒメクモバチ♀bが警戒して泥巣をガードしています。

7年越しに寄生産卵の決定的瞬間を撮影できて感無量でした。

寄生蜂と寄主が境界標で繰り広げる小競り合いも何度か観察しました。
ヒメクモバチがいくら寄生蜂を追い払っても、しばらくするとまた戻って来ます。
個体識別のマーキングを施していませんが、おそらく同一個体のコクロオナガトガリヒメバチ♀なのでしょう。
ヒメクモバチ♀は天敵の寄生蜂を撃退する有効な対抗手段や防衛戦略を持ち合わせていないようです。
寄生蜂は素早く飛んで逃げてしまうため、殺すこともできません。
もしこの泥巣を採集して蜂の子を飼育すると、果たしてヒメバチが羽化してくるでしょうか?(ヒメクモバチの寄生率を調べる)

母蜂(ヒメクモバチ♀b)がこの日は全く造巣活動せずに泥巣をひたすらガードしていたのは寄生蜂対策だったようです。
息詰まるような神経戦が続き、天敵が心配でおちおち外出できないのでしょう。
もし仮に寄生蜂を採集・除去したらヒメクモバチ♀bは安心して造巣を再開してくれるかな?
それとも別個体の寄生蜂が侵入して来るだけでしょうか?
逆に、泥巣をガードする寄主のヒメクモバチ♀bを除去すれば寄生蜂が産卵する様子をじっくり観察できるかもしれません。
(除去実験は頭をよぎっただけで、今回は自然の成り行きに任せ見守りました。)

つづく→#8:ヒメクモバチは夜どこで寝るのか?【暗視映像】




2016/01/10

群飛・集合するキアシブトコバチの謎



2015年9月下旬

山麓にある神社の境内を通りかかると、祠の軒下に小さな蜂が何匹も飛び回っていました。
祠の板壁を忙しなく登ったりしています。
キアシブトコバチBrachymeria lasus)でしょうか?
引きの絵にすると蚊柱ほどではありませんが何匹も集まっていることが分かると思います。
初めて見る現象で、一体何事だろうと非常に興味深く思いました。

秋に群飛する蜂として、アシナガバチ類の♂が交尾相手の新女王を待ち構える群飛を連想しました。

▼関連記事
フタモンアシナガバチ♂の群飛と誤認交尾【HD動画&ハイスピード動画】
フタモンアシナガバチ♂の群飛
今回は先を急ぐ用事があってじっくり腰を据えて観察できなかったのですが、この付近で交尾しているキアシブトコバチの♀♂ペアは見当たりませんでした。
残念ながら私はキアシブトコバチの性別も見分けられません。

群飛の理由として次に考えたのは、たまたま寄主がここに集団発生した結果、キアシブトコバチ♀が産卵のため殺到している、という可能性です。
キアシブトコバチ♀は鱗翅目の蛹に内部寄生します。

▼関連記事
キアシブトコバチの羽化

しかし祠をぐるっと一周調べても、蝶や蛾の蛹は見当たりませんでした。
そもそも本種は単寄生なのか多寄生なのか疑問に思いインターネット検索で調べてみました。
・Takatoshi UENOさんによる「水田の天敵昆虫と害虫」というブログの記事「九州の田んぼの益虫(天敵)」より

キアシブトコバチは単寄生(1つの寄主に1個体のみ育つ)であり、同属の寄生蜂でも種により寄生様式が異なるのである。
イネツトムシ(イチモンジセセリ)をはじめ、各種チョウ目害虫の蛹に内部寄生する。寄主蛹の中央部にまん丸い穴をあけて成虫が脱出してくる。
・jkioさんのブログ記事「キアシブトコバチ」より

寄生バチのなかまですが、寄主が一種類ではなくて、いろいろな虫(鱗翅目、膜翅目、双翅目)の蛹に寄生します。内部単寄生といって、一つの蛹の内部に一卵だけ産み付けます。キアシブトコバチは、寄生バエにまた寄生する多重寄生もやってのけます。

多寄生ならこの日一斉に羽化した可能性も考えられますが、単寄生なので却下。

最後に思いついたのは、集団越冬に備えて群飛しているのかもしれない、という可能性です。
調べてみると、キアシブトコバチは樹皮下などで成虫越冬するらしい。(『ハチハンドブック』p25より)


冬越しの準備にしては気が早い(時期尚早)ようにも思いますけど、例えばテントウムシが晩秋に大集合する様子は季節の風物詩です。

▼関連記事
飛べ!ナミテントウ【ハイスピード動画】
キアシブトコバチも集合フェロモンを発しているのだろうか?と想像しました。


イッカク通信」で樹皮の裏に集団越冬するキアシブトコバチの写真が掲載されていました。

これら数十匹のハチたちは一匹のチョウ幼虫からあらわれたものなのだろうか。そうであればそれらがまとまってやってきたことになる。別のチョウ幼虫からそれぞれ出てきたのであればそれが集まってきたことになる。
と鋭い疑問を投げかけておられます。
蜂類画像一覧でも興味深い報告を見つけました。

築6年のお宅の南面硝子と障子の間にこの時期だけ10匹づつくらい来ては硝子と障子にぶつかり音をたてるそうです。2005年11月 長野県

撮影後に同定のため有り合わせのビニール袋で採集を試みたのですけど、逃げられました。
私はこの体型の小蜂といえばキアシブトコバチしか知らなかったのですけど、日本未記録の近縁種(Brachymeria sp.)も居るそうです。
後日この神社を再訪した時にはもうキアシブトコバチ(の一種)の姿はなく、静まり返っていました。
ごく限られた期間に起こる出来事だったのかもしれません。

※ 薄暗い条件で撮った映像なので、動画編集時に自動色調補正を施しています。



【追記】
南部敏明『田んぼとハチ』によると、
(アシブトコバチ科の中で)もっともふつうに見られるのはキアシブトコバチで、ガの多くの種類に寄生する。ガの幼虫に産卵し、幼虫が蛹になってからその中から出て来る。秋の晴れた日に、日の当たった神社などで待っていると、この仲間が次々に飛んでくる。この発生源は付近の雑木林が主体となっていると思われるが、田んぼもその一端を担っているだろう。
(『田んぼの虫の言い分―トンボ・バッタ・ハチが見た田んぼ環境の変貌 (人間選書)』第3章p163より引用)
私が見た群飛とまさに同じで心強い記述ですが、残念ながらそれ以上の謎解きはされていません。



2015/12/27

ノダケの花蜜を吸うコガタスズメバチ♀とセスジハリバエ



2015年9月下旬

農業用水路沿いの草むらに咲いたノダケの群落でコガタスズメバチ♀(Vespa analis insularis)とセスジハリバエTachina nupta)が訪花していました。
テーブル状の同じ花序で歩き回りながら吸蜜しています。
目障りなハエをスズメバチが押し出したり払い除けたりする小競り合いも何度か見られましたが、敏捷で図太いハエはすぐに舞い戻ります。
最後に花から飛び立ったコガタスズメバチが黒いカメラに向かってホバリングしてきたので少し焦りました。
ハエのせいでコガタスズメバチは少し苛立っていたのかもしれません。
羽音がいかにも恐ろしげですけど、ゆっくり後退すれば刺されることはありません。(スズメバチを手で払い除ける動きはくれぐれも厳禁です)



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