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2020/02/21

倒立姿勢で暑い日差しを避けるナツアカネ成熟♂♀



2019年9月中旬・午後14:05頃・晴れ

道端で立ち枯れした草の天辺に多数の赤とんぼがずらっと並んで止まっていました。
横から見ると、ナツアカネ♂が(Sympetrum darwinianum)倒立のような見事なオベリスク姿勢で止まっていました。
腹部の尾端を高々と持ち上げるのは、日差しが強くて暑い夏によく見られる体温調節(避暑)の行動です。
尾端を太陽に向けて体に直射日光が当たる面積を極小にしようとするそうです。
実際に非接触式の赤外線温度計でナツアカネ♂が止まっている枯草の温度を測定してみると、直射日光を浴びているためか40.8℃もあって驚きました。
それほど暑いのならなぜ我慢せずに日陰に入らないのか、いつも不思議でなりません。
頭部をグリグリ動かし、周囲を油断なく監視しています。
獲物となる昆虫や交尾相手の♀が縄張りに飛来するのを待ち伏せしているのでしょう。

次に登場するのは、隣の枯草の天辺で休んでいた♀です。(@0:47〜)
この個体は一度飛び立ってもすぐに同じ場所に舞い戻ってきました。(縄張り占有行動)
しばらくすると翅を深く下げて休みます。
右前翅の先端が欠けていました。
腹端を斜め上に向けた状態で♀が止まった枯草の温度を測ると33.5℃でした。

たった2匹を調べただけですけど、予想通り周囲の温度が高ければナツアカネのオベリスク姿勢の角度が増すようです。(比例関係?)
撮影時刻の太陽の高さの角度も調べる必要がありそうです。
現場で私自身の影を写真で撮影しておくべきでしたね。
ちなみに国立天文台:暦計算室のホームページを参照すると、この日の山形市における太陽の南中時刻は午前11:34で、高度54.7°と公表されています。
気温やアスファルトの路面温度も測るべきだったのに忘れてしまいました。

※ 撮影後に各個体を捕虫網で一時捕獲し、ナツアカネ♂♀であることを確認しました。

それにしても、同種の♀がすぐ隣で休んでいるのに、なぜナツアカネ♂は交尾を挑まないのでしょうか?
存在を見落としているだけなのか(灯台下暗し)、それとも暑過ぎる昼下がりの時間帯は配偶行動をする気にならないのかな?


ナツアカネ成熟♂@枯草天辺+オベリスク姿勢
ナツアカネ成熟♀@枯草天辺+オベリスク姿勢

2020/02/15

連結打水産卵するミヤマアカネ♀♂とあぶれ♂の攻防



2019年9月中旬・午前11:25頃


▼前回の記事
用水路で連結打水産卵するミヤマアカネ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】

ミヤマアカネSympetrum pedemontanum elatum)は成熟すると体色が性的二型になります。
成熟♂はいわゆる「赤とんぼ」で赤色ですが、♀は地味な黄土色です。
フィールドでも♀♂がはっきり見分けられるので、様々な配偶行動の観察に適しています。

ミヤマアカネ♀♂が連結打水産卵を続けている水路の岸には、交尾相手を見つけられていない「あぶれ♂」が縄張りを張っていました。
岸で枯れた草の葉や穂先など見晴らしの良い場所に止まったあぶれ♂は、複眼が発達した頭部をグリグリ動かし、周囲を油断なく見張っています。
あぶれ♂がスクランブル(緊急発進)で迎撃に飛び立っても、大体同じ場所にすぐ舞い戻ります。
産卵ペアとあぶれ♂との攻防を、まずは1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。
その後で等倍速(リアルタイム映像)でリプレイ。

しばらく様子を観察していると、あぶれ♂は産卵ペアを縄張りから追い払えていません。
産卵ペアは少し逃げるだけで平気で産卵を続けています。
尾繋がり状態になった♀の強奪は不可能なのでしょう。(尾繋がりは最強の交尾後ガード)
しかし産卵ペアが居なくなると、あぶれ♂の縄張りに平和が戻りました。
あぶれ♂は縄張り警戒中に何か動く物が視界に入るだけでどうしても反射的に飛び立つような体の仕組みになっている(♂の悲しいさが)だけのような印象を受けました。
素人目には、無駄に体力を消耗しているようで気の毒です。
あぶれ♂の縄張りの範囲を長時間きちんとマッピング調査すれば、何か面白いことが分かるかもしれません。

産卵を終了した♀♂がペアを解消した瞬間、あぶれ♂にも♀を得るチャンスが巡ってくるのですかね?
(それとも♀は一度しか交尾しないのか?)


ミヤマアカネあぶれ♂:側面@用水路:岸枯草:穂先
ミヤマアカネあぶれ♂:顔@用水路:岸枯草:穂先
ミヤマアカネ♀♂@用水路+連結打水産卵vsあぶれ♂@岸枯草:穂先
ミヤマアカネ♀♂@用水路+連結打水産卵vsあぶれ♂@岸枯草:穂先

2020/02/11

池のトンボを捕り損ねたハクセキレイ♂(野鳥)



2019年9月中旬・午前11:16

河川敷に掘られた人工池の畔をハクセキレイ♂(Motacilla alba lugens)が駆け回り、獲物となる虫を探していました。
ときどき素早く飛び立つと、フライングキャッチ(空中での狩り)を試みています。
前方のコンクリート護岸にトンボ(種名不詳)が着陸した途端にハクセキレイ♂が目ざとく駆け寄り、飛びかかりました。
1/5倍速のスローモーションでまずはご覧下さい。
トンボが岸から前に飛び立つのを予測してハクセキレイ♂が先回りするように襲いかかっている点が興味深く思いました。
しかしトンボの方が一枚上手で、素早く急上昇して見事に緊急避難。
残念ながらハクセキレイ♂は空中でトンボを捕まえることが出来ませんでした。(フライングキャッチ失敗)
一瞬の攻防でしたが、「生きるか死ぬか」という命がけの真剣勝負で見応えのある空中戦でした。

その後、ハクセキレイ♂は人工池の向こうに広がる芝生で餌を探し歩き始めました。


ハクセキレイ♂(野鳥)@河川敷:池畔+探餌徘徊

2020/02/09

ウスバキトンボ♀の腹部奇形?



2019年9月中旬・午前10:53

川沿いの草むらでウスバキトンボ♀(Pantala flavescens)が枯れた草の茎に止まっていました。
静止姿勢がどうも奇妙で、腹部がやや反り返っている海老反り姿勢でした。
腹端がヒクヒク上下に動いています。
羽化直後あるいは羽化不全個体なのかと思ったのですが、この枯れた茎の下部にヤゴの抜け殻(羽化殻)は見つけられませんでした。
もし腹部の奇形(先天性の異常)なら、水質汚染などが疑われます。
この♀個体の腹部が背側に反り返ったままだと、♂との交尾および産卵行動に支障を来す可能性が高く、だとすれば次世代を残しにくいでしょう。

トンボは交尾の際に♀が細長い腹部を腹側に丸く曲げて尾繋がりした♂の副性器に腹端を結合する必要があるのです。


▼関連記事(1年前の撮影)
水たまりで単独打水産卵するウスバキトンボ♀?【HD動画&ハイスピード動画】

ウスバキトンボ♀:側面@枯草茎+腹部海老反り姿勢:奇形?
ウスバキトンボ♀:背面@枯草茎+腹部海老反り姿勢:奇形?

2020/02/08

用水路で連結打水産卵するミヤマアカネ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】



2019年9月中旬・午前11:20頃

川の本流に注ぐ浅い水路でミヤマアカネSympetrum pedemontanum elatum)の♀♂ペアが何組も産卵していました。
石垣で護岸された用水路の両側には雑草が繁茂しているため、水面に草が張り出して適度な日陰を作っています。
連結した♀♂ペアは、主に岸の水際で連結打水産卵を繰り返していました。
珍しく水路の中央部でも産卵したのは、橋の下で影になっていたからですかね?

ミヤマアカネ♀♂の連結打水産卵を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:24〜)
空中でホバリング(停空飛翔)してから狙いを定め、振り子のように♀を前方に振り出す勢いで産卵しています。
♀♂ペアの羽ばたく影が水面に写る様子や、打水産卵する度に水面に広がる波紋も美しいですね。
連結飛翔しながら落ち着き無くあちらこちらと産卵場所を変えていました。
スローモーションを見直すと、単純に「打水産卵」とは言い切れないことが分かりました。
水際に狙いを定めてもときどき狙いが外れてしまうのか、水中ではなく石垣護岸の陸地に打泥産卵したり、苔に産みつけたりすることもありました。
あるいは、♀は意図的に色々な場所に産卵してリスクを分散しているのかもしれません。

私が見た限り、この用水路内に小魚は居ないので、産卵直後に食卵されるおそれはなさそうです。
一方、すぐ近くで小魚が群れている支流では、産卵するミヤマアカネ♀♂はほとんど居ませんでした。

つづく→連結打水産卵するミヤマアカネ♀♂とあぶれ♂の攻防


▼関連記事(2年前の撮影)
ミヤマアカネ♀♂連結打水産卵からの♀単独打水産卵


ミヤマアカネ♀♂@用水路+連結打水産卵
ミヤマアカネ♀産卵地@用水路・全景
ミヤマアカネ♀産卵地@用水路・全景

2020/02/04

ミヤマアカネ♀♂の交尾



2019年9月中旬・午前11:10頃

交尾中のミヤマアカネ♀♂(Sympetrum pedemontanum elatum)が川沿いのコンクリート護岸の斜面に止まっていました。
私が近づこうとすると警戒し、尾繋がりのまま少し飛んで移動しました。
(冒頭は飛翔シーンの1/5倍速スローモーション。)
交尾ペアは更に少し飛んで移動すると、水際に生えた垂直に伸びた枯れ茎に止まり直しました。

♀は腹端を♂の副性器に結合していて、2匹はトンボに特有のハート型の交尾姿勢になっています。(※追記参照)
♀は全体重を♂に預けていて、6本足で♂の腹部にしがみ付いています。
♂は交尾中も頭部をグリグリ動かして周囲を油断なく見回していました。

背後に見える小川には小魚の群れが泳いでいました。


※【追記】
昆虫学者はこれを環状交尾態と呼ぶ。
(『虫たちの謎めく生態:女性ナチュラリストによる新昆虫学』第10章:トンボのタンデム飛行は恋のさやあて p215より引用)



ミヤマアカネ♀♂:側面@交尾:枯茎
ミヤマアカネ♀♂:背面@交尾:枯茎
ミヤマアカネ♀♂@交尾:枯茎・全景

2020/01/28

池の枯草に離着陸を繰り返すシオカラトンボ成熟♂【HD動画&ハイスピード動画】



2019年9月上旬・午後15:40頃・晴れ

池の水中から伸びたまま枯れた細い茎(枝?)のてっぺんにシオカラトンボOrthetrum albistylum speciosum)の成熟♂が止まっていました。
辺りを油断なく見張っています。
獲物の昆虫や交尾相手の♀を待ち伏せしているのでしょう。
たまに飛び立ってもすぐに舞い戻って来ます。
飛行中の縄張り占有行動(または狩り)については、動画に撮れませんでした。
トンボの動きが速過ぎる上に水面の照り返しが眩しくて、すぐに見失ってしまうのです。
石垣の岸辺を黒っぽい小魚が泳ぎ回っていました。

シオカラトンボ♂が枯れ茎から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:36〜)
急に上空を見上げてから素早く飛び立ちました。
しばらくすると戻ってきたものの、なぜか一度着陸を躊躇して通り過ぎ、アプローチからやり直しました。
同じ枯れ茎に前回とは逆向きに着陸することもありました。

(シオカラトンボの)成熟♂は水辺に静止して縄張り占有し、♀が近づくと飛びかかって交尾する。(図鑑『日本のトンボ』p471より引用)


シオカラトンボ成熟♂a:側面@池:枯草天辺
シオカラトンボ成熟♂a:顔@池:枯草天辺
シオカラトンボ成熟♂a@池:枯草天辺・全景

2020/01/21

連結打空産卵するノシメトンボ♀♂ペアとあぶれ♂の小競り合い【HD動画&ハイスピード動画】



2019年8月下旬・午前10:40頃


▼前回の記事
スギゴケ?の上で連結打空産卵するノシメトンボ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】

雨上がりで湿ったスギゴケ群落で連結打空産卵しているノシメトンボSympetrum infuscatum)の♀♂ペアを撮影していると、あぶれ♂(独身♂)がときどき飛来してちょっかいをかけます。
しかし、それほど激しい縄張り争いや♀の強奪は起こりませんでした。
連結ペア♀♂は華麗に身をかわすと、少し場所を変えるだけで平然と産卵を続けています。
同様のシーンは240-fpsのハイスピード動画でも捉えられていました。(@0:40〜)

♂は♀の首根っこを掴んでしまえば、ライバル♂に奪われる心配は無いのでしょう。
交尾後も連結態で産卵する種類のトンボは、♂が♀を交尾後ガードしているのです。
(♀が単独で産卵する間、♂が少し離れたところで見守り警護する種類のトンボもいます。)

ノシメトンボのあぶれ♂は疎らに生えた背の高い草のてっぺんに止まって周囲を見張っているようです。
縄張りへの領空侵犯があるとすかさずスクランブル発進して追い払いに来るのでしょう。
次回はあぶれ♂の行動に注目して撮影してみるつもりです。

それにしても、湿った苔に産み付けられた卵から孵化してもヤゴが育つのか、呼吸可能なのか、心配になります。
もっと水量が多くないとこんなコケ群落に産卵しても無駄死にではないか?と思ってしまいます。
卵の捕食者は水中よりも苔群落の方が少なくて安全なのでしょう。
トンボについて未だ色々と勉強不足なので、ヤゴの飼育をしてみたいものです。


2020/01/19

警戒心の薄い鈍感なオナガサナエ成熟♀【ハイスピード動画】



2019年8月下旬・午後14:05頃


▼前回の記事
離着陸を繰り返すオナガサナエ成熟♀【HD動画&ハイスピード動画】

道端の笹薮で見つけたオナガサナエMelligomphus viridicostus)の成熟♀が飛び立つシーンを240-fpsのハイスピード動画で撮ろうとしたら、とても鈍感なので驚きました。

笹の枯れ葉に止まって個体を飛び立たせようと私が右手の指をそっと伸ばしても逃げません。
それどころか、腹端や翅に繰り返し触れたり押し上げたりしても飛び立たないのです。
かなりしつこく指で翅を擦り上げるように触れたら、ようやく前方に飛んでくれました。
さすがに同じ場所には戻って来ませんでした。

少し飛んだだけで近くの笹の葉に止まり直したので、同一個体でもう一度やってみましょう。
指でオナガサナエ♀の翅や後脚に触れても、やはりなかなか飛んでくれませんでした。
ようやく飛び立つと、同じ場所には舞い戻って来ませんでした。

オナガサナエと出会ったのはこの日が初めてだったので、たまたま(個体差)なのかと思いました。
酷暑で夏バテ(衰弱)しているのでしょうか?
帰宅してから調べてみると、オナガサナエは鈍感なのだそうです。

(オナガサナエの)成熟個体は河川中流域の河原の石の上や枝の先などにじっと静止していることが多い。本種は警戒心が薄く、かなり至近距離に近づくまで逃げないことが多い。wikipediaより引用)


こんなおっとりした性質が弱肉強食の自然界で淘汰されずに残っているのが不思議です。
鳥などの捕食者に襲われたらひとたまりもないでしょう。
物陰に隠れたり擬態している訳でもありませんし、一体どうやって身を守っているのかな?


2020/01/16

川辺りで激しく縄張り争いするハグロトンボ♂



2019年8月下旬・午前10:05頃

平地を流れる川の支流(正式用語は「側方流」?)で多数のハグロトンボ♂(Calopteryx atrata)が激しい空中戦を繰り広げていました。
メタリック・グリーンに輝く長い腹部が♂の特徴です。(♀は黒色)
あまりにも激しく飛び回るので、途中で見失ってしまうことも多く、流し撮りに苦労しました。

2匹の♂同士が空中で争ったり相手を追い回したりして縄張りの端に来ると、今度は隣の縄張りの主♂が参戦し、三つ巴の争いになります。
止まった場所を中心とした縄張りにライバル♂が領空侵犯すると直ちにスクランブル発進し、縄張り争いの連鎖反応が目まぐるしく繰り広げられます。

激しい縄張り争いに疲れたのか、川岸に生えたタニウツギ灌木の葉に3匹の♂が止まりました。
休戦状態でも漆黒の翅を素早く開閉して誇示しています。
強く反り返った腹端を持ち上げるのも威嚇誇示なのかな?(腹端下面が白いことに注目:後述)

図鑑『日本のトンボ』p47によると、

(ハグロトンボの)成熟♂は日中、川辺の植物や石に静止して縄張り占有する。気温の高い日には、時おり翅をパッと開く
今回は気温を測り忘れました。

1匹の♂が川岸のヨシの葉に止まっていると、隣の縄張りから飛来しました。
するとヨシの葉の上に止まったまま腹端を高々と持ち上げ、黒い翅を羽ばたかせました。
これは侵入したライバル♂に対する威嚇誇示なのでしょう。
その傍で侵入♂は挑発的にホバリング(停空飛翔)します。
すると縄張りの主は堪らずヨシの葉から飛び立ち、追いかけっこが始まりました。
近くに居たもう一匹の♂も参戦し、狂乱状態になります。
あちこちで争いの連鎖が勃発するので、どこにカメラを向けたら良いのか目移りしてしまいます。

ハグロトンボ♂の空中戦を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@2:40〜)
清流の水面に映る影の羽ばたきも美しいですね。
2匹の♂が羽ばたきながら空中でかなり接近し、互いに向き合いつつ一瞬ホバリングしていました。
一方が逃げ出すと他方が追いかけます。
一体どうやって勝敗が決まるのか、私には分かりませんでした。

コンクリートのブロックで護岸された水際では2匹のハグロトンボ♀が並んで休んでいました。(@4:05)
ハグロトンボ♀は腹部も含めて全身が真っ黒です。
左の♀個体が翅を閉じたまま静止している間、右の♀個体は真っ黒な翅をパッパっと開閉してアピールしています(誇示行動)。
翅に偽縁紋が無いので、アオハダトンボ♀ではありません。
産卵中の♀は見ていません。
この小川には小魚の群れが泳いでいるので、もしハグロトンボ♀が水中に産卵したら、ほとんど魚に捕食されてしまうでしょう。
だからハグロトンボ♀は植物の組織内に産卵するのでしょう。
♂は縄張り争いに明け暮れるばかりで、近くに居る♀と交尾しようとしないのは、とても不思議でした。
おそらくこの辺りは最強の♂の縄張りで、♀を囲ってがっちり警護しているのかもしれませんが、私は見落としました。


ハグロトンボ♂を片端から捕獲して個体識別のマーキングを施してから放ち、縄張り争いを長時間観察したら面白そうです。
目立つ色で翅にペイントしてしまうと、ハグロトンボの行動(種の認識)に悪影響を及ぼしてしまうかな?
(胴体にペイントしたら大丈夫?)

人工的な色を塗るのではなく翅に小さな切れ込みを入れて個体標識するという手もあります。

今回はてっきりハグロトンボ♂だと思い込み、撮影しただけで採集していません。
しかし映像を見直すと、本当にハグロトンボ♂なのか、気になる点がありました。
葉に止まったときなど、上に反り返った腹端の下面(腹面)が白い個体が居ました。
これはアオハダトンボ♂(Calopteryx japonica)の特徴です。
ここには2種のトンボが混棲しているのでしょうか?
しかし図鑑『日本のトンボ』によれば、アオハダトンボは準絶滅危惧種NTらしく、山形県南部に分布するという記録は無いようです。
今回同じ水域で見かけた♀は間違いなくハグロトンボでした。
撮影した8月下旬はアオハダトンボ成虫の出現期(6〜7月)にしては遅く、ハグロトンボ成虫の出現期(7〜8月)に合致しています。

この同属2種は出現期をずらして棲み分けをしているのでしょう。
今回は強い日差しが反射した結果、ハグロトンボ♂の腹端が白く見えただけ、という可能性もありそうです。(苦しい言い訳?)
来季は念の為にトンボを採集してしっかり同定するつもりですが、秋の台風で川がひどく増水したので棲息環境が破壊されてしまったかもしれません。
川底から湧き水が出て、年間を通して水温が安定していることがハグロトンボのヤゴの生育に必要なのだとか。(参考:月刊かがくのとも2014年6月号・吉谷昭憲『はぐろとんぼ』)



ハグロトンボ♂@タニウツギ葉+翅開閉誇示
ハグロトンボ♂2@タニウツギ葉+翅開閉誇示(左の個体は上に曲げている腹端腹面が白いのでアオハダトンボ♂かも?!)
ハグロトンボ♀2@小川岸+翅開閉誇示

2020/01/13

湿地帯のカヤツリグサ群落で連結打空産卵するノシメトンボ♀♂



2019年8月下旬・午前10:50頃(雨の翌日で晴れ)

▼関連記事
スギゴケ?の上で連結打空産卵するノシメトンボ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】

雨上がりの河川敷でノシメトンボ♀♂(Sympetrum infuscatum)が産卵していたスギゴケ?群落の奥(川に近い地帯)にはカヤツリグサなどが生い茂った草地が広がっていて、そこでも数組の♀♂ペアが連結打空産卵していました。

あぶれた♂が枯草の茎のてっぺんに止まって休んでいます。
縄張りを占有して♀を待ち伏せしているはずなのに、近くで産卵しているカップルの邪魔をしたり♀を強奪したりすることはありせんでした。

カヤツリグサの種類を調べたかったのですが、履いていた靴を泥だらけにしてまで湿地帯に踏み込む根性が無くて諦めました。
夏のフィールドでは長靴やサンダル履きの方が良い場合もあります。


ノシメトンボ♀♂2@連結打空産卵:カヤツリグサ群落


2020/01/09

ハナトラノオの蕾に離着陸を繰り返すシオカラトンボ成熟♂の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】



2019年8月下旬・午後14:55頃

平地の花壇でハナトラノオ(別名カクトラノオ)の蕾にシオカラトンボOrthetrum albistylum speciosum)の成熟♂が止まっていました。
真っ直ぐ垂直に伸びた茎に並んだハナトラノオの蕾は、上の方から順に咲いていくようです。

シオカラトンボ♂は大きな複眼の付いた頭部をときどきグリグリと動かし、油断なく周囲を見張っています。
ここで縄張りを張っているようで、飛び立っても同じ花穂にすぐ舞い戻って来ます。

飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:15〜)
翅をやや深く下げて休んでいる間に、前脚で複眼を拭っています。
飛翔中に折り畳んでいた脚を伸ばして着陸します。


シオカラトンボ成熟♂:側面@ハナトラノオ蕾。上空を見上げた瞬間
シオカラトンボ成熟♂:背面@ハナトラノオ蕾

2020/01/04

連結打空産卵中にほとんど羽ばたかないノシメトンボ♀の事例【ハイスピード動画】



2019年8月下旬・午前10:46


▼前回の記事
スギゴケ?の上で連結打空産卵するノシメトンボ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】

湿地帯のスギゴケ上空で連結打水産卵するノシメトンボ♀♂(Sympetrum infuscatum)を240-fpsのハイスピード動画で撮っていたら、興味深いカップルがいました。

♀がほとんど羽ばたいていないのです。
良く言えば省エネ飛行と言えるかもしれません。
しかし♂の負担が増しているはずです。
♀のやる気が無いのか、早くこの♂と別れたくて(ペアを解消したい)サボタージュしているのでしょうか?
それとも産む卵が体内に残っていないのかな? 

ところが、スローモーション映像をじっくり見直すと、♀の腹端から白い卵がひと粒ずつ正常に投下されていました。
このノシメトンボ♀は、疲労や空腹で弱っている個体なのかもしれません。


つづく→連結打空産卵するノシメトンボ♀♂ペアとあぶれ♂の小競り合い【HD動画&ハイスピード動画】


2019/12/31

池で単独産卵するギンヤンマ♀



2019年8月下旬・午後13:25頃

ギンヤンマ♀(Anax parthenope julius)が公園の池で単独で産卵していました。
池から生えた枯枝に掴まり、腹端だけを水中に浸しています。
腹端の産卵管で探っているものの、細い枯枝(枯死植物)の樹皮にうまく突き刺せないようです。
翅が黒っぽく染まっていないということは、老熟個体ではなくて産卵経験が浅い個体なのでしょう。
側面から見ると、脚の腿節は赤褐色で、複眼および胸部は鮮やかな黄緑色でした。

枯枝から急に飛び立つと、近くで縄張りを張っていたシオカラトンボ♂が背後から追いかけて来ました。
ギンヤンマ♀は少し飛んでから、池の岸の草むらに止まり直しました。
岸から垂れ下がったイネ科の草の葉にしがみ付くと、水面に浮いているイネ科の落葉に産卵管を突き刺そうとしています。
すぐにまた飛び去りました。
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。

今回、単独産卵中の♀を警護する♂の姿を近くで見かけませんでした。


図鑑『日本のトンボ』でギンヤンマの産卵について調べると、

産卵(Oviposition) 交尾を終えたペアは連結態のまま水面に飛来し、浮葉植物の葉や浮いた枯死植物などに産卵する。♀単独での産卵も行う。 (p207より引用)

▼関連記事(6年前の撮影)
ギンヤンマ♂♀の連結産卵


ギンヤンマ♀@池:枯枝+単独産卵
ギンヤンマ♀@池岸:イネ科草葉+単独産卵

2019/12/29

離着陸を繰り返すオナガサナエ成熟♀【HD動画&ハイスピード動画】



2019年8月下旬・午後14:00頃

川から少し離れた堤防上の路肩で見慣れないトンボが枯草の茎の天辺に静止していました。
図鑑で調べてみると、オナガサナエMelligomphus viridicostus)の成熟♀でした。
頭部をグリグリと動かし、辺りを油断なく見張っています。
ここで縄張りを張り、餌となる小さな昆虫が飛来するのを待ち伏せているようです。

飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に切り替えてみました。(@0:16〜)
首をねじってから、その方向に力強く羽ばたいて離陸しました。
すぐに左へ急旋回し、同じ枯れ茎に舞い戻って来ました。
着陸の寸前まで脚を胴体に縮めていることが分かります。
止まる向きも同じでした。
空中での狩りは失敗だったようで、獲物は捕らえていませんでした。

次はカメラを三脚に固定してハイスピード動画を撮りながら、私がトンボに近づいて飛び立たせました。
オナガサナエ♀は前方に急速発進して逃げ、少し離れた笹の葉に止まり直しました。

しつこく同一個体の撮影を続けます。
ハイスピード動画を撮りながら、笹を揺らして強制的に飛び立たせてみました。
するとオナガサナエ♀はすぐ隣の葉先に止まり直しました。



つづく→警戒心の薄い鈍感なオナガサナエ成熟♀【ハイスピード動画】

オナガサナエ成熟♀c@枯茎天辺
オナガサナエ成熟♀c@枯茎天辺

オナガサナエ成熟♀c@笹葉

2019/12/27

スギゴケ?の上で連結打空産卵するノシメトンボ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】



2019年8月下旬・午前10:45頃・晴れ

河川敷の一角に苔の大群落が広がっていて、そこでノシメトンボ♀♂(Sympetrum infuscatum)の連結ペアが多数集まり、低く飛びながら産卵していました。

前日の晩に久しぶりの雨が降ったのに、河川敷に水溜まりはできていませんでした。
連日の酷暑で、よほど地面が乾いていたのでしょう。
私は苔について勉強不足なのですが、ノシメトンボが卵を産んでいたのはスギゴケですかね?
もし間違っていたらご指摘願います。
ふわふわしたコケの表面に触れてみたら、それほど湿り気を感じませんでした。
この日の天気は秋晴れで(秋の空)、風も適度に吹いて過ごしやすい撮影日和でした。

240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:10〜)
スローモーションを見て分かったのですが、♀が腹端で苔の表面を打つ産卵法ではありませんでした。
空中で♀が腹端から白い卵をパラパラと放出していました。
ノシメトンボの産卵法は、連結打空産卵です。


打空産卵:Non-contact flying oviposition
例:ナツアカネ

生殖弁による産卵のなかには空中で腹端を振るだけで産卵する「打空産卵」も行われています。その多くは水面上ではなく、岸近くの草原や湿原の上で行う産卵です。卵はやがて雨で流されて徐々に水中に達して孵化します。(『トンボのすべて』p85より引用)



ノシメトンボの産卵法について保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIトンボ編』(1969年)という50年前の古い図鑑で調べると、

 一般的には開放的な水面に♂♀が連なって産卵するが、時として池畔の雑草の上などにも、水面ですると同じように尾端を打って産卵行動をすることが観察されている。(p185より引用)
…と明らかに間違った記述(連結打水産卵)でした。


最新のトンボ図鑑では打空産卵が定説になっています。

誰がいつ真相に気づいたのか? どうやって定説を覆し学会を説得したのか? という科学史に私は興味があります。
産卵中に決定的瞬間の証拠写真が偶然撮れたのですかね?
1枚の写真だけでは白い点のような卵が空中に写っていても、にわかには信じてもらえない気がします。
その点、素人でもハイスピード動画が手軽に撮れるようになった現代では一目瞭然で、説得力がまるで違います。(百聞は一見に如かず)
それとも、ノシメトンボ♀の産卵弁の構造を解剖学的に検討すれば打水産卵ではなく打空産卵と正しく推測できるのでしょうか?


過去に私がノシメトンボの産卵を観察したのは全て田んぼの稲穂の上でした。
秋の田んぼは水が抜かれていて、まるで湿地のようです。
本種は水のある場所には産卵しないとのことで、納得しました。

▼関連記事
ノシメトンボの連結打空産卵 (5年前の撮影@田んぼの稲穂の上)
ノシメトンボ♀♂の交尾と連結打空産卵 (3年前の撮影@田んぼの稲穂の上)


つづく→連結打空産卵中にほとんど羽ばたかないノシメトンボ♀の事例【ハイスピード動画】



【追記】
一年後に同じ河川敷の少し離れた別の場所で、ノシメトンボが変わった産卵法をしていました。


50年以上前の古い図鑑『原色日本昆虫生態図鑑IIトンボ編』(1969年)の記述が間違っていないことが分かりました。
時として池畔の雑草の上などにも、水面ですると同じように尾端を打って産卵行動をする
普通種のトンボでも、行動を見ていくと一筋縄ではいかず奥が深いです。

ノシメトンボ♀♂@連結打空産卵:スギゴケ?+飛翔
ノシメトンボ♀♂@連結打空産卵:スギゴケ?+飛翔
ノシメトンボ♀♂@連結打空産卵:スギゴケ?+飛翔
スギゴケ?
スギゴケ?
スギゴケ?群落@河川敷・全景
スギゴケ?群落@河川敷・全景
スギゴケ?群落@河川敷・全景


2019/12/24

スイレンの葉で離着陸を繰り返すナツアカネ未成熟♂【HD動画&ハイスピード動画】



2019年8月中旬・午後12:15頃

睡蓮池でナツアカネSympetrum darwinianum)の未成熟♂がスイレンの葉の縁に止まっていました。
翅を深く下げて休んでいる間も、頭部をグリグリ動かして辺りを油断なく見張っています。
獲物を待ち伏せしているのでしょう。
私が撮影アングルのため少し岸に近づいてもトンボは逃げませんでした。

しばらくすると、ナツアカネ未熟♂は腹端を太陽に向けてやや持ち上げました。(@1:04)
これはオベリスク姿勢と呼ばれる避暑(体温調節)の行動で、体に日光が当たる面積を少なくしています。
スイレンの葉に落ちたトンボの影の長さの変化に注目して下さい。
(しかし影の長さは最小になっていませんでした。)
気温を測れなかったのが残念です。

急に飛び立ったものの、すぐに元の場所に舞い戻って来ました。(@1:20)
空中で獲物を捕らえ損ねたようです。
着陸直後に体の向きを太陽に対して微調節しました。

スイレンの葉に離着陸を繰り返す様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:28〜)
離陸後すぐに脚を胴体に引きつけて飛翔時の空気抵抗を減らしています。
辺りを一回りしてから戻って来ると、格納していた脚を出して着陸します。
動画に撮りながら足で蹴るふりをして何度飛び立たせてもすぐに同じ場所に舞い戻って来ます。(縄張り占有行動)


ナツアカネ未成熟♂:背面@スイレン葉
ナツアカネ未成熟♂:側面@スイレン葉
ナツアカネ未成熟♂:側面@スイレン葉
ナツアカネ未成熟♂:側面@スイレン葉+避暑:オベリスク姿勢

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