2012/01/24

ウスモンフユシャク♂は準備運動なしで飛べる【冬尺蛾】



2011年12月中旬・気温1℃

山中の建物外壁に止まっていた冬尺蛾♂(前翅長14mm)。
ウスモンフユシャク♂(Inurois fumosa)かな?と予想をつけ、虫我像掲示板にて確認してもらいました。
どこかにぶつけたのか、左前翅中央の鱗粉が剥げて薄くなっています。

指で軽く触れると少し壁を登ってから急に羽ばたいて逃げました。
冬尺蛾と言えば翅を退化させた♀の適応戦略が話題になります。
私はむしろ♂が低温下でも飛べる秘密に興味を覚えます。
夏から秋にかけて見られる大型の蛾(ヤママユガ科やスズメガ科など)は胸部の飛翔筋をしばらく震わせて入念に準備運動してからでないと飛び立てないのに対して、この冬尺蛾♂は危険に際して直ちに飛び立つことが出来ました。
先程の蛾が近くの壁に止まったので、今度は試しにハイスピード撮影(220 fps)してみました。
飛び立つ瞬間をスローモーションで見ると、体に触れられたウスモンフユシャク♂は脚で壁を蹴り、空中で羽ばたきます。
一回の羽ばたきでフレームアウトしてしまいました。
やはり準備運動なしで飛べるようです。


配偶行動が始まる(♀を求めて飛び回る)夕刻まで壁に止まって休んでいたのでしょう。
実は、少し離れた白壁に無翅の♀(同属であるウスバフユシャクの一種;Inurois sp.)も見つけました。
関連記事→「ウスバフユシャクの一種♀を見つけた!(無翅の冬尺蛾)
♂♀は互いの存在には気づいていないようで静止していました。
もし求愛交尾したら♀の方も同種と判明したのですが、私が触れたせいで♂も♀も壁から居なくなってしまいました。
暗くなるまで粘って待つか、いっそのこと採集して飼育下で配偶行動を観察すればよかったと後悔…。

2012/01/23

有翅型タマバチの一種が雪面を歩行



2011年12月下旬・気温2℃@雪面

雪山のベンチ(標高〜570m地点)に積もった新雪の上をゆっくり歩いていた虫です。
体重が軽いと脚が雪に潜らず、ラッセル不要で羨ましい…。
きっとタマバチの一種だと思うのですが、有翅型を見つけたのは初めてかもしれません(種名不詳)。





採集してみると、体長〜3mm。
翅脈がシンプルと言うか著しく退化傾向にある点が興味深く思いました。
特に後翅は痕跡程度の翅脈しかありません。



【追記】
「あおもり昆虫記」サイトにて、素人目には似たようなタマバチの写真を見つけました。

2012/01/22

オオフタオビドロバチ♂蛹が脚をピクピク



2011年6月上旬
オオフタオビドロバチ飼育記録

2010年軒下に竹筒トラップを仕掛けてオオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatumの営巣活動を観察してから、育房内の前蛹を採集・飼育しています。
室内飼育と言ってもプラスチックのピルケース内で放置しているだけです。
本種の幼虫は育房隔壁の裏打ちで絹糸を使う以外は繭を紡がないので、蛹を直接観察できるのです。
前蛹の状態で越冬した後に、ようやく蛹化しました。
これは育房4bから得た蛹です。
羽化直前で黒化が進み、既に翅も伸展しています。
脚だけがピクピク痙攣しています。
触角第一節の前面が黄色であることを確認できました。
体全体が薄皮を被ったような印象です。
腹端に見える突起が何なのか気になります。
後に成虫♂が羽化してきました。


公開し忘れていた昔の動画です。
終齢幼虫→前蛹→蛹→成虫と蜂の子が育つ過程をまとめた動画を編集してから…というつもりが、別件で忙しくなったりHDDが壊れたりですっかり面倒臭くなりました。
このままではお蔵入りになりそうなので、この映像一つだけでもリリースします。
やはり鉄は熱いうちに打たないと駄目ですね。



2012/01/21

アズマキシダグモ♀亜成体の雪原逃走



2011年12月下旬・気温2℃@雪面

雪山(標高〜550m地点)で新雪の上にアズマキシダグモを一匹発見。
思いのほか軽快な動きで、雪の斜面を逃げて行きました。


一時捕獲すると体長7mm、8本の歩脚は全て健在です。
腹面に未発達の外雌器らしきものがあり、♀亜成体のようです。
クモ生理生態事典 2010』によると、本種は「落葉中で亜成体で越年する」とのこと。







2012/01/20

飼育ジョロウグモ♀に牛乳を与えてみる



2011年12月中旬

実はこのジョロウグモNephila clavata)♀成体(体長21mm)は、飼育中のコカマキリ♀に与える生き餌として採集してきたクモです。
ところがコカマキリの食欲が全く無くなり、狩りをしなくなって命拾いしました。
外は根雪になり、逃がすと寒さで忽ち死んでしまう事態になりジョロウグモの処遇に困りました。
一方、コカマキリ♀には冬の代用食として牛乳を与え始めました。
さすが完全食品だけあって、延命効果は抜群です。
関連記事はこちら→「飼育コカマキリ♀に牛乳を与える【冬の代用食】
ついでにクモにも牛乳をお裾分けしたらどうかと思いつきました。
以前、徘徊性のイオウイロハシリグモ♀を飼っていたときに、冬になってからハチミツを水に溶かして与えてみたことがあります。
関連記事はこちら→「飼育イオウイロハシリグモ♀:こっちの水は甘いぞ♪

ジョロウグモ♀は狭い容器内で粗末な網を張って占座しています。
牛乳に浸した綿棒でクモの口元に雫を付けてみました。
網の振動を感知してクモが逃げ回るので何度か失敗したものの、ようやく上手くいきました。
(ちなみに、映像の冒頭で容器の底に付着している白い液体は牛乳ではなくジョロウグモの排泄した糞です。)

口器を接写すると、牛乳の雫を少しずつ嚥下していました。
消化液を口から出し入れしているようです(クモ特有の体外消化)。
果たして牛乳はお口に合いましたでしょうか?


しかしコカマキリ♀とは異なり、ジョロウグモ♀はその後も綿棒を嫌がって逃げる素振りが続きました(牛乳嫌い?)。
数日後は牛乳を吐き戻すようになり、残念ながら翌日死んでいました。
牛乳がジョロウグモの死期を早める結果になったのか否か、この一例だけでは分かりません。
コカマキリでは問題なかっただけに意外でした。
ジョロウグモにも乳糖不耐症があるのだろうか?

【追記】
『クモを利用する策士、クモヒメバチ: 身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い』p108によると、
だいたいの造網性クモは、飼育下で本来の造網行動ができないような状況を強いられると、本来の網型によらず共通してランダムに糸を引き渡し、糸さえあればぶら下がってとりあえず落ち着く。(中略)そのようなトリッキーな状況では、円網性種を筆頭に、餌を与えても捕虫しないことが多い。




クモに様々な薬物を経口投与して造網行動への影響を調べる※という古典的な実験があり、薬理学や動物行動学の本によく載っています。
いつか私も再現実験してみたいと思っているのですが、カフェインやアルコール以外の薬物(LSDやコカインなど)は当然一般人の手に入りません。
今回は造網性クモへ経口投与する実験の練習になったと前向きに考えることにします。

その後、オニグモ幼体(亜成体♀?)にも同様に牛乳を綿棒で給餌してみました。
ところがオニグモの腹面は毛深く、雫を弾いてしまい失敗。
生き物相手では一筋縄では行きません。
何事も実際にやってみないと分からないものだと実感しました。

【参考動画】



↑ハエトリグモに牛乳の雫を乗せた板を差し出すと、飲んでいます。(飲まない個体もいる)

「クモは肉食なのであるが、人間が人工飼育で飼う場合は、鶏卵や牛乳の水溶液・蜂蜜・各種ビタミンをスポイトなどで与えればこれを吸収して育つことができるようだ。」(出典はこちら。)

飼育の難しいクモ幼体も牛乳を人工飼料として育つのであれば、とても楽になるのですが…。


※ 造網性クモに薬物投与する研究の記録映像が残っていないか探してみたのですが、YouTubeに公開されていたのは↓これだけ。



一見もっともらしく始まるものの、後半でパロディ(フェイク?)と分かります。
逆に、パロディが作られるほど有名な実験ということです。

【追記】
私が正にやりたかった実験を行った素晴らしい記事がデイリーポータルZで公開されています。
クモを酔わせてどうするつもり」と題した記事で、野外で採集したコガタコガネグモにカフェインやアルコールを経口投与して造網への影響を調べています。
クモ好きの方は必見です!

2012/01/19

冬の川で漁をするダイサギ【野鳥】



2011年12月中旬

雪がちらつく中、一羽の白鷺が冷たい川に入り佇んでいます。
町中を流れる河川でコンクリート護岸されており、水質もあまり良好とは言えません。
手前で雪かきの男性がスノーダンプで川に雪を捨てていました。
逃げられるんじゃないかと冷や冷やしましたが、町中の鳥は人に慣れているのか無頓着。

白鷺の足は黒く、嘴は黄色でした。
同定に迷いましたが、「眼下にある口角の切れ込みが眼より後ろまで食い込む」ことを写真で確認できて、ダイサギArdea albaだろうと判明。

ダイサギは長い脚で川の中をゆっくり歩いています。
流れの中央部に歩み寄ったかと思いきや、長い首を振って見事に水中の魚を採りました。
結構大きな獲物です。
暴れる魚を一呑みすると、3回水を飲んで喉を潤しました。

欲が出てもっと接近して撮ろうとしたら、急に飛び立ちました(映像なし)。
空を旋回してからどこかへ飛び去りました。
長い首をS字に曲げて飛びます。








2012/01/18

飼育コカマキリ♀に牛乳を与える【冬の代用食】



2011年12月中旬

今季はコカマキリ♀(Statilia maculata)を4匹も飼育していました。
寿命で次々と死んでいく中、♀bの一匹だけが元気に生き残っています。
この個体は9月下旬に成虫を採集して以来、飼育下で5個も卵鞘を産んでくれました。
最も多産かつ長寿の個体ということで、どうしても情が湧いてきました。
しかし冬になると雪国では生き餌を安定して確保するのが極めて困難になります。
ハエ類すらも見当たらなくなりました。
インターネットで検索してみると、カマキリの代用食として牛乳を与えている人がいらっしゃいました。
確かに栄養豊富かつ手軽(入手が容易・安価)で、なかなか良さそうです。
早速私も試してみることに。

毎日給水していた方法と同じで綿棒に浸してからコカマキリ♀bの口元に近づけると、初回は少し嫌がる素振りを見せたものの、すぐに吸い付いて雫を飲み始めました。
(関連記事→「飼育ウスバカマキリ♀への給水
皆さんはスポイトやストロー、注射器、筆など、各自がやり易い方法で与えれば良いと思います。
冷蔵していた牛乳をそのまま与えると体温が下がるので、常温まで戻してから給餌するようにしています。
一日一回満腹するまで飲ませます。
(うちのコカマキリは満腹するともう嫌がって綿棒から顔を背けたり仰け反ったり鎌で押し退けたりします。)
牛乳は腐るので綿棒は使い捨てにします。

果たして寿命がどれだけ伸びるか実験です。
驚くべきことに、この記事を書いた現在(年を越して1/18)もコカマキリ♀bは毎日の牛乳だけで生き続けています。
外は根雪となりカマキリ成虫は当然死に絶えているはずです。
室温は15℃前後、朝の最低室温は約12℃。
ただし活動性は低く、終日止り木で静止しているだけです。
足腰もめっきり弱くなりました。


ご存知の通り、牛乳は栄養素のバランスに優れた完全食品と言われています。
孵化直後のカマキリ若齢幼虫も小さな生き餌の確保に苦労します(飼育経験の未熟な私はいつも失敗)。
もしカマキリ幼虫も牛乳だけである程度まで大きく育ってくれるのなら非常に助かります。


【追記】
最後は牛乳も飲まなくなり、このコカマキリ♀bは1/30遂に大往生を遂げました。
死ぬ一週間ぐらい前に一度だけ、ようやく採れた一匹のハエを飼育容器に投入してみたのですが捕食しませんでした。


餌を牛乳だけにしてから糞にも変化があり、粘り気の強い便を排泄するようになりました。


【参考動画】



↑この方は脱脂綿に牛乳を含ませて給餌しています。


『机の上で飼える小さな生き物』という飼育指南書 p104 によると、
「カマキリがミルクを飲むことは一部の専門家の間ではよく知られていることらしい。」

2012/01/17

ニホンリスが森を走る



2011年12月中旬

杉林の斜面をチョロチョロ動く小動物を発見。
急いでカメラを構えズームしてみるとニホンリスSciurus lisでした。
杉の木の根元に静止していたリスが幹を登り始めました。
…と思いきや、すぐに下りて斜面を駆け上がりました。
あっと言う間に藪へ姿を消しました。
現場では割りとじっくり見れたという体感でしたが、映像を見直すと一瞬の出会いですね。
嬉しくて時の流れが少し遅く感じたという奴です。

ここは2010年夏に樹上でニホンリスを目撃した地点から少し登った場所です。
いつか営巣行動を観察してみたいものです。



2012/01/16

ウスバフユシャクの一種♀を見つけた!(無翅の冬尺蛾)



2011年12月中旬・気温10℃

山中の建物で白壁に止まっている冬尺蛾♀を発見。
日当たりの良い西面で、地上150cmの位置でした。
完全な無翅型を見つけたのは初めて。
翅の痕跡すら残っていません。
腹端に毛束があり、夕刻になると♂を誘う性フェロモンを放出する(コーリング)そうです。

虫我像掲示板にて質問したところ、ウスバフユシャクの一種Inurois sp.)♀で産卵前の個体とご教示頂きました。
有翅♂と交尾中の現場を押さえないと、♀を同定するのは難しいようです。
「産卵前は縦長でもこもこしてますが産卵後はお腹がへこみ、全体が丸くなります」とのこと。

軽く触れたら壁を登り始めました。
壁面がツルツルしていていかにも登り難そう。
案の定、動画撮影中に滑落。
地面で姿を見失ってしまいました。

冬尺蛾の交尾を未だ見たことが無いのですけど、一般に暗くなってから行われるらしい。
近くで見つけた冬尺蛾♂(同種なのか不明)と一緒に捕獲して求愛交尾行動を観察できないかと思案していたので残念。
この♀だけでも採集できれば、飼育下で産卵行動を観察できたかもしれません。


いずれにせよ、この白壁に止まったままでは仮に♂と交尾出来ても食草と異なる無機質な壁面に産卵することになり、孵化した幼虫が困ることになります。


【参考文献】(掲示板で教えてもらった冬尺蛾の総説)
「冬に出現する尺蛾 : 新・フユシャク類の採集」
やどりが (152), 2-28, 1993-02-25
全文PDFが無料ダウンロードできます。)



2012/01/15

野生ニホンカモシカの反芻行動



2011年12月上旬・気温9℃
野生ニホンカモシカを追う:後編

映像冒頭でカモシカが立ち止まってこちらに尻を向け、立木に顔を擦り付けています。
縄張り宣言の眼下腺マーキングと思われます。
こちらに向き直り鼻孔を広げて風の匂いを嗅いでいます。
(このとき鼻水が垂れました。)
少し歩くと腰を下ろして地面に座り込みました(座位休息)。
横目で油断無くこちらの様子を窺っています。

座ったまま、先程食べた食事の反芻を始めました。
手前の潅木が邪魔で肝心の口元が初めはよく見えません。
下草を採食していた可能性もあります。

もぐもぐ顎を動かしつつ、ときどき耳を動かしたり首を振ったりして、顔に五月蝿くたかる虫を追い払っています。
近くの林道を下から車が徐行して登って来ました(@動画7:35)。
その間、カモシカは反芻を止め車の音に耳をそばだてました。
ここは林道から死角になっています。
静けさが戻るとカモシカはリラックスして眠そうに反芻を再開。

観察し易い撮影アングルを求めて少しだけ接近しました。
カモシカは座ったまま顔だけこちらに向けています。
やがて警戒が解けると横向きで反芻を続けます。
瞼が重くなり目がトロンとして眠そうです。
うたた寝しているのかもしれません。

約30分間の反芻行動の末に、カモシカがゆっくりと立ち上がりました。
首を曲げて右脇腹を舐めています(掻いている?)。
ゆっくり堂々と藪の奥に歩き去りました。


夢中で長々と動画を撮りましたが至福の時間でした。
野生動物がこれほど警戒を解いてくれたことに驚きです。
(野鳥観察よりずっと楽だと感じました。)
カモシカは好奇心が強い動物と言われています。
付かず離れず静かに追跡する私の姿がカモシカから常に丸見えだったことが逆に安心感を与えていたのかもしれません。

これ以上は深追いせず、観察を終了しました。
荷物を背負ったまま足場の悪い急斜面を追跡し、手持ちカメラで長時間(昼過ぎに発見してから丸一時間)息を殺して撮り続けたので、腕や腰の筋肉がヘトヘトです。
カメラの手ブレ補正もなぜか誤作動を始める始末。
私の集中力も限界でした。
せめて一脚を持参していれば少しは楽だったかも。
特別天然記念物の野生ニホンカモシカと濃密な時間を過ごせた幸運に感謝して、満ち足りた気分で下山しました。
今思うと、カモシカが座っていた場所まで行って糞や角研ぎ、マーキングなどの痕跡を探してみても面白かったかもしれません。


カモシカの反芻行動を実際に見たのは初めて。
『科学のアルバム:ニホンカモシカ』p45によると、
腹がいっぱいになったカモシカは、見晴らしの良い大きな岩や倒木の上に登って、食べたものを反芻します。カモシカは、ウシと同じように胃が四つの部分に別れており、食べたものを反芻するのです。反芻は、食べたものの量と質にもよりますが、二時間から、それ以上かけてします。
(下線部は今回の観察と異なる点。)


三部作シリーズ完。




2012/01/14

無翅型タマバチの一種が壁を徘徊



2011年12月中旬・気温10℃

山中で建物の白壁をアリのような虫が数匹(3匹以上)徘徊していました。
日当たりの良い西面でした。
よく見るとアリではなく無翅型のタマバチの一種でした。
よく冬の雪面でよく見かけるタマバチと同種かもしれません。
採寸しながら撮り始めたらすぐに脚を滑らせてしまいました。
壁から滑落しても、しばらくするとまた登ってくるようです。
やがて、壁面で上から降りて来る個体と下から登って来る個体の二匹が出会いました。
触角で互いに触れた後、上の個体が右前脚で蹴り落としたように見えました。


未採集ですが、もし名前が分かる方がいらっしゃいましたら教えて下さい。
いつか♀の産卵シーンを観察してみたいものです。


【追記】
ハンマーさんのブログで「コナラの冬芽に産卵するナラメリンゴタマバチ」の見事なお写真を拝見すると、なんとなく似ている気がします。


2012/01/13

ニホンカモシカの採食メニュー@晩秋



2011年12月上旬
野生ニホンカモシカを追う:中編「道草を食うカモシカ」

カモシカは雑木林の斜面を少しずつ下りながら若い針葉樹の葉を口にしました。
ハイイヌガヤかな?と思うのですが、写真を撮り損ねました。(※追記2参照)




撮影中は立ち止まり、距離が開くとそっと接近する作戦で追跡しました。
この時期の山は落葉して多少は見通しの良い状態ですから初めての私でも追跡できたものの、葉の生い茂った夏などはすぐ見失ってしまうだろうと想像できます。
私が動くとカモシカは物音を敏感に察知して坂の途中で立ち止まり、こちらの様子を見ています。
やがて斜面をゆっくり歩いて移動して行きます。

手前の潅木が邪魔でうまく撮れてませんが、常緑低木のエゾユズリハの葉も採食しました。(追記3参照)
もしかしたらエゾユズリハの実も食べていたのかもしれませんが、その点は不明です。
(食痕をじっくり見て歩く余裕がありませんでした。)



幼木の細い枝に顔を擦り付けるような行動も示しました。
ニホンカモシカに特有の眼下腺マーキングかもしれません。
残念ながら、やはり手前の潅木が邪魔ではっきり見えませんでした。
あるいは角研ぎ行動だったのかもしれません。


ゆっくりと坂を下りる途中で再び常緑の葉を口にしました。
厳しい冬を迎える前にたくさん食べて脂肪を蓄えないといけません。
顔に集まる虫を払うためか、ときどき耳を動かしています。
斜面で追いすがる私の方がカモシカの下になると、今度は一転して坂を登り始めました。

他にも斜面にへばりつくように生えた羊歯の葉も採食したのを目撃しています(映像なし)。
シシガシラもしくはオサシダと思うのですがどうでしょう?



後編:反芻行動につづく。)

【追記】
ピッキオ編『森のいろいろ事情がありまして』によると、カモシカには上の門歯が無いために毟り取ったような食べ方になるそうです。




※【追記2】
西口親雄『森はナゾがいっぱい』によると、
イヌガヤは、葉が柔らかくて、毒がない。いまでもカモシカの冬の主食になっている。おそらく中生代のイヌガヤ属も、草食恐竜の餌になっていたと思う。イヌガヤの葉は、毒もないし、硬い針もない。恐竜にたいして無防衛のようにみえるが、じつは、イヌガヤの枝葉は、食べられても、食べられても、地ぎわから再生してくる。この再生力が、草食動物にたいする対処法なのである。しかしそのため、イヌガヤは高木(森の支配者)にはなれない。  (p51より引用)


【追記3】
浅川満彦『野生動物の法獣医学: もの言わぬ死体の叫び』という本を読んでいたら、放牧牛が摂食し中毒になる植物の例としてワラビとエゾユズリハが挙げられていました。
(エゾユズリハは)葉や果実に様々なアルカロイドを含み、牛が摂取すると、食欲不振や第一胃の運動停止などを起こし、ひどければ死に至る。(p72より引用)

カモシカもウシ科ですから、エゾユズリハの葉を食べて無事とは思えません。

少量なら食べても大丈夫なのでしょうか? 




2012/01/12

ハシボソガラスの地上採食【野鳥】



2011年12月上旬

堤防の道端で一羽のハシボソガラスCorvus corone)が地面を嘴でほじくっていました。
何か長いものを咥えてから飛び去りました。
ミミズあるいは何か植物の根だろうか。





2012/01/11

野生ニホンカモシカとの出会い(鼻息で威嚇)



2011年12月上旬
野生ニホンカモシカを追う:前編


山道を下っていると、前方の杉の木陰に妙なシルエットが見えてドッキリ。
何か大型獣が杉の幹の後ろに隠れていて、下半身(胴体と脚2本)だけが見えます。
その場で立ち止まりしばらく撮影しても全く動きがありません。
薄暗いので切り株を見間違えたのかと自信がなくなり、撮り続けながら近寄ってみるとカモシカの顔が見えました!
こちらを凝視しています。
身じろぎ一つしないで立ち尽くした後、ようやくカモシカの耳が動いて虫を追い払いました。
緊張が少し解けたのか一度横を向いてから、威嚇するようにこちらを睨み鼻息を荒く何度も吐きました。
方向転換して後ろ向きになり、こちらを振り返りつつ斜面を駆け下りて行きました。

滅多に無い機会なので、追跡開始。
先程までカモシカが居た杉木立に辿り着くと、その先の斜面で振り返っていました。
鼻孔を大きく広げて風の匂いを嗅いでいます。
こちらに背を向けて先に進んでも安全かどうか逡巡している模様。
ときどき耳を動かし、大きく身震いしました。
息詰まる長い対峙の末、ようやく斜面をゆっくり下り始めました。
こちらも撮りながら移動すると、落ち葉を踏みしめる音にカモシカが驚いて立ち止まりました。
鼻息荒く威嚇してきます。



延べ撮影時間11分間の素材を編集して、動きの無い(退屈な)部分をカットしました。


中編:採食行動につづく)

【追記】
『森の賢者カモシカ:鈴鹿山地の定点観察記』p80 によると、
余裕がある場合には、逃げる方向を確かめるようにまず周辺を見渡し、そのあとで逃げる。侵入者が急に出現した場合にはダッシュで逃避する。逃避には「フィ」と聞こえる鋭い警戒声をともなうことが多い。興奮がさめやらないのか少し逃げ、立ち止まったあとでも警戒声を続けることもある。








2012/01/10

ハシブトガラスがツルウメモドキの赤い実を採食【冬の野鳥】



2011年12月上旬

河川敷の遊歩道で木の下を通りかかったら樹上にハシブトガラスCorvus macrorhynchos)を発見。
葉の落ちた枝から何か赤い木の実を啄んでいます。
採食の合間にきょろきょろ辺りを見渡してカァーカァー♪鳴きました。
直接レンズを向けると頭の良いカラスは警戒して逃げてしまいます。
そこで顔と体はわざと逆を向いたままレンズだけをこっそりカラスに向け、カメラのバリアングル液晶を覗きながら隠し撮りしました。
それでもこちらの企みに気づいたのか、最後は枝から飛び立ちました。

樹種が分からなかったので樹木関係の掲示板にお邪魔して写真を見てもらったところ、ツルウメモドキとご教示頂きました。
別の木に巻き付いた蔓植物でした。


▼関連記事(10年後の撮影)

2012/01/09

ヤマガラの警戒声♪【野鳥】



2011年12月上旬

里山の尾根で落葉した樹上にカラ混群が止まって鳴き交わしていました。
好奇心旺盛なヤマガラが一羽、明らかに私の様子を見にわざわざ近くまでやって来ました。
この鋭い鳴き方は警戒音なのだろうか。


一緒に居たシジュウカラまたはヒガラらしき野鳥は撮り損ねました。



2012/01/08

クサギカメムシ幼虫の身繕いと歩行



2011年11月上旬

クサギカメムシの幼虫と思われるカメムシが一匹、室内の壁で身繕いしていました。
両前足を揃えて左右の触角を交互にしごく様子がなんとも可愛らしい。
化粧が済むと壁面をとことこ移動し始めました。





2012/01/07

キジ♂が地上で採食【野鳥】



2011年12月上旬

堤防のコンクリート階段を歩きながら採食しているキジ♂(Phasianus versicolor)を発見。
この時期はもう昆虫の活動は無いので、おそらく地上に落ちた植物の種子を啄んでいるのでしょう。
次第に階段を下りて最後は枯れ草の茂みに姿を消しました。
急いで追いかけてキジが隠れたと覚しき場所を探してみたのですが、もう見つけられませんでした。
キジも鳴かずば撮られまい。






2012/01/06

コノシタウマ♂の雪面徘徊



2011年11月下旬

晴れた雪道を歩いている小さなカマドウマの仲間を発見。
産卵管が無いので♂成虫と思われます。
(あるいは、もしかして幼虫で越冬するのだろうか?)
雪上で静止している間に採寸してから定規で体に触れたら跳んで逃げました。
採集して調べてみると、コノシタウマ木の下馬;Diestrammena elegantissima)という種類のようです。



2012/01/05

電柱からトビを追い払うハシブトガラス【野鳥】



2011年11月下旬

トビMilvus migrans)らしき一羽の猛禽が田園地帯に立つ電柱の頂に止まって辺りを睥睨しています。
(※自信なし。ノスリなど別種の猛禽類かも。見分けられる方は教えて下さい。)
私は少し離れた位置に立ち、警戒させないよう体は逆を向いてカメラのバリアングル液晶を覗き込みながら撮影開始。



トビがその場で向きを変えたと思ったら、すぐ近くの電線に一羽のハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が舞い降りました。
眼下の道を車が通過しても気にしません。
カラスが遠くを向いて鳴き始めました。
仲間を呼んでいるのだろうか。
ときどきカラスが電線に嘴を擦り付ける行動を取ります。
そして挑発的に少しずつトビににじり寄るカラス。
緊張が高まり、二羽同時に飛び立ちました。
空中で小競り合いの末、トビは飛び去りました。
カラスは電線に戻ってカーカー♪と鳴き、あたかも勝鬨の声を上げているようです。

もう少し近づいてからハシブトガラスの撮影を再開。
しかし、こちらを警戒して電線からすぐに飛んで行ってしまいました。



ハシブトガラスの方が後から来たのに図々しく軽い嫌がらせを行い、猛禽類を追い払ったように見えました。
これは単独で行なったモビング(擬攻撃)と呼べるのだろうか。
野鳥の力関係を伺わせる興味深い一期一会でした。


2012/01/04

ホソヘリカメムシの雪上徘徊



2011年11月下旬

少し雪の積もった車道をホソヘリカメムシRiptortus pedestrisが歩いていました。



2012/01/03

コアシナガバチの古巣から羽化した寄生ヒメバチ

2011年9月下旬

軒下@9月下旬
物置小屋の軒下にコアシナガバチPolistes snelleniが営巣していました。
しかし、何者かが蜂の巣に寄生しているようです。
崩れた育房に見慣れない褐色の蛹が剥き出しで多数付着しています。
(現場では何となく寄生ハエの蛹かと思ったのですが、定かではありません。)
今季は蜂の巣を定点観察しに通う余力がありませんでした。

11月上旬、コロニーが解散してもぬけの殻となった古巣を採集しました。
密閉容器に保存して室内に放置。
毎年色んな寄生虫が羽化してきて、簡単ながらなかなか面白いテーマなのです。



11月下旬
コアシナガバチ古巣を収めた密閉容器内に小さな黒いハチが一匹止まっていました。
寄生蜂が羽化したようです。
素直に考えれば寄主はコアシナガバチと思われますが、ヤドリバエまたは後日多数羽化してくるカザリバガ科マダラトガリホソガの一種Anatrachyntis sp.)※に寄生した可能性もあります。
(その場合、二次寄生と称してよいのだろうか。)


※ 続報はこちら→「コアシナガバチの古巣から室内羽化したマダラトガリホソガの一種(寄生蛾)

容器越しに観察しやすいよう蓋の代わりにサランラップを張りました。
寄生蜂は容器壁面に静止しつつ、ときどき長い触角を震わせています。
顔が白い以外は黒を基調としたハチです。
やがて方向転換して容器内を元気に徘徊し始めました。
コアシナガバチの古巣は寄生虫に食い荒らされ(虫食い穴だらけ)次第に細かく崩れていきます。


結局、コアシナガバチの古巣から寄生蜂が計2匹が羽化しました。
後から羽化した個体bは、先に羽化した個体aより小柄で腹端が白い気がします。
個体差なのか性差なのか。


寄生蜂a標本(翅脈を記録しようとしたら前翅破損)

寄生蜂b標本(aより小柄で腹端が白い。)

コアシナガバチに寄生する蜂についてインターネットで調べてみました。

アシナガバチヤドリヒメバチLatibulus nigrinotum)はフタモンアシナガバチ、キボシアシナガバチおよびコアシナガバチを寄主とするらしいのですが、標本写真を見比べると私の得た寄生蜂とは明らかに別種のようです。

同属のLatibulus hokkaidensisは トガリフタモンアシナガバチおよびコアシナガバチを寄主としますが、北海道にしか分布しないようで除外。下記参考文献のLatibulus argiolusとシノニム(同種)なのだろうか?

また、キボシアシナガバチに寄生するヒメバチArthula flavofasciata標本写真と見比べると全く違います。

日本産ヒメバチ目録」をサイト内検索してみると、アシナガバチを寄主とするヒメバチは以上の3種しか記載がありません。

素人目に翅脈からおそらくヒメバチ科だろうと思うのですが、ヒメバチ以外でコアシナガバチに寄生するハチとして、ノミコバチ科のハチノスヤドリコバチ(Elasmus japonicus)が知られています。
しかし成虫の標本写真などを見つけられず、よく分かりません。
森林生物データベースに「(コアシナガバチ)巣房内のハチノスヤドリコバチ」と題した写真が掲載されています。
ステージが明記されていませんが、これが蛹だとすると色が違いますね。




【参考文献】

1. アシナガバチヤドリヒメバチ(新称),Latibulus nigrinotum(Hymenoptera, Ichneumonidae)の寄主の新記録
茨城県自然博物館研究報告 (4), 97-100, 2001-03(PDFファイルはこちら)

2. Bionomics of Elasmus japonicus (Hymenoptera, Elasmidae), a Parasitoid of a Paper Wasp, Polistes snelleni (Hymenoptera, Vespidae) 
昆蟲 62(2), 377-383, 1994-06-25(PDFファイルはこちら)

3. Biology of Latibulus argiolus (Hymenoptera, Ichneumonidae), a Parasitoid of the Papar Wasp Polistes biglumis (Hymenoptera, Vespidae)
昆蟲 51(3), 426-434, 1983-09-25 (PDFファイルはこちら)


【追記】
「蜂が好き情報交換BBS」で問い合せたところ、以下の回答を頂きました。

松浦誠著「社会性カリバチの生態と進化」によると、アシナガバチの巣に寄生するヒメバチとして Arthula formosanaLatibulus sp. が挙げられていましたが、しぐま様のブログでご指摘の通り、日本産ヒメバチ目録の画像とは全く違った種のようです。
巣の崩れ具合は、多数羽化してきたマダラトガリホソガの一種(Anatrachyntis sp.)によるものなのでしょうね。そうなると、そちらに寄生していたものである可能性が高くなってきますが、種の特定となると、残念ながら私にはお手上げです。


2012/01/02

エサキモンキツノカメムシの雪上徘徊



2011年11月下旬・雪面気温11℃

軽く雪の積もった車道を元気に歩くエサキモンキツノカメムシを発見。
本種は成虫で冬越しするようです。
雪道で遭難しないうちに安全な越冬地を見つけてね。





2012/01/01

ミルンヤンマ♂

新年明けましておめでとうございます。
これからも「Σ こんちゅーぶ!」をよろしくお願いします。
辰年ということで、干支に因んだDragonflyネタからお届けします。

2011年10月下旬


林縁の枝先にトンボが止まっていました。
動画を撮ろうとしても薄暗い夕方でストロボ必須なので断念。
素手で捕獲すると大して暴れることもなく、地面に置いても逃げずにじっとしています。
体長72mm。
帰ってから調べてみると、日本特産種のミルンヤンマ♂と判明。
嬉しい初物です。
ミルンとは耳慣れない謎の名前ですが、明治時代に来日した英国人地質学者ジョン・ミルン氏に因んで命名されたそうです。



【追記】
井上清、谷幸三『トンボのすべて:第2改訂版』によると、
 トンボは飛び出すとあまり止まらない「飛翔型」と止まっている比率の高い「静止型」に分かれますが、「飛翔型」のトンボはぶら下がって止まります。それは胸の筋肉が大部分翅を動かす方に使われ、肢でからだを支えることにあまり配分されていないためと考えられています。 (p88より引用)

ミルンヤンマなどヤンマ科の種の止まり方は大概「ぶら下がり型」なのだそうです。


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