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2016/07/12

桐の枝で営巣地を探すクマバチ♀



2016年5月中旬

里山でキリの高木に訪花するキムネクマバチXylocopa appendiculata circumvolans)を長時間観察していると、たまに採餌以外に不思議な行動をする個体がいました。
桐の花ではなく枝に興味を示し、調べながら飛び回っています。
穿孔営巣に適した材を探している♀なのでしょうか?※

桐の花はメインの送粉者としてクマバチを当てにしているようです。

▼関連記事
桐の花で採餌するクマバチ
もしクマバチが桐の木に穿孔して営巣するとなると、桐とクマバチは互いにより深く依存した共生関係になりそうです。

※ もし映像の個体が雄蜂♂ならば、解釈がまるっきり変わってきます。


2016/07/09

完成した揺籃を切り落とすルイスアシナガオトシブミ♀a



2016年5月中旬


▼前回の記事
ルイスアシナガオトシブミ♀bの揺籃作り【10倍速映像】

里山に生えたハルニレの若い灌木で、ちょうど作り終えた揺籃をルイスアシナガオトシブミ♀(Henicolabus lewisii)が切り落とそうとしていました。
この♀aに対して、♂は揺籃の完成間際まで交尾後ガードを続けていました。
♀aはハルニレの葉柄ではなく、最初の工程で葉を両裁して残った主脈を噛んでいます。
風が吹いたせいで、肝心の揺籃がポトリと落ちる瞬間がピンぼけになってしまいました。
枝の真下の地面(茂み)を探してなんとか揺籃aを見つけ出し、採集しました。
手のひらに乗せて転がし、ちっぽけな虫けらの作り上げた芸術作品をお見せします。

今回、ルイスアシナガオトシブミ♀aは揺籃作りの材料として未だ葉緑素が少なくて赤っぽい若葉を選んだ点が興味深く思いました。
確かに柔らかそうですけど、なんとなく青々とした(緑色の)葉の方が生まれてくる幼虫にとって栄養価が高いような気がします。
母親オトシブミ♀は気にしないのですかね?


3日後の揺籃


採集した揺籃aをそのまま容器に入れて室内飼育しているのですけど、この記事を執筆中の現在(7月上旬)も未だに成虫が羽化してきません。
揺籃が乾燥し過ぎないように注意したつもりですが、もっと水気を与えるべきだったかもしれません。
カビの発生が怖くて霧吹きなどはしませんでした。
揺籃を切って中を調べてみるべきか、もう少し静観すべきか、悩みどころです…。(※追記参照)

以下は、採集したルイスアシナガオトシブミ♀aの標本写真です。(掲載予定)


※【追記】
小松貴『虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)』p182-183によれば、
(オトシブミの)落ちた葉巻は地面の湿気を吸ってやわらかくなり、カビも生えやすくなっていきますが、中の幼虫にとっては快適な状態となります。
幼虫は、湿気で腐りかけた葉のほうがやわらかくて食べやすく、また消化しやすいので都合がいいようです。逆に乾燥しすぎると、葉巻の中で休眠に入ってしまい、再び雨などで湿り気を帯びるのを待つといわれています。



2016/07/03

ルイスアシナガオトシブミ♀bの揺籃作り【10倍速映像】



2016年5月中旬・午後15:32〜17:34
▼前回の記事
ハルニレの葉裏で交尾するルイスアシナガオトシブミ♀♂

里山に生えたハルニレの幼木で若葉を巻いて揺籃を作っているルイスアシナガオトシブミHenicolabus lewisii)♀が数匹いました。
その中の一匹♀bに注目して、微速度撮影で作業の一部始終を記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。
ただし、映像のラスト22秒間のみ5倍速に落としました。(♀が揺籃を切り落とし始め、受け止めて揺籃と♀bを採集するまで)
この日は風が絶え間なく吹く悪条件でしたので、マクロレンズによる接写は早々に断念しました。
山の陰に日が沈み夕方になると風が止んで助かりました。
余談ですが、野外に持ち運べる風除けのための衝立があれば虫を楽に接写できるのになーといつも夢想します。
巨大なテントを立てても良いのでしょうが、被写体が暗くなったり中が暑くなったりと、色々と副作用がありそうです。
大名行列のように助手を何人も引き連れて出かけ、被写体を取り囲むように円陣を組んで長時間立たせるのも現実的ではありませんね。
閑話休題。

ルイスアシナガオトシブミ♀bが加工に適したハルニレ葉の吟味を終え、葉の根本(短い葉柄の少し上)で両裁型の加工を始めました。
残った主脈に傷をつけると葉が垂れ下がりました。
体重を利用しているのでしょう。
次に♀bは垂れ下がった葉の下方に移動しました。
いつの間にか♂が来ていて、作業中の♀の背後からマウントしていました。
交尾器が結合しているのか、それとも交尾後ガードでマウントしているだけなのか、接写しない限り分かりませんね。
♂を背負ったまま♀はハルニレ葉裏の主脈に噛み傷をつけているようです。
動きがあまり無くて退屈ですが、♀は葉が適度に萎れるのを待っているのでしょう。

しばらくすると、別のライバル♂が上から登場しました。(@3:30)
♀をめぐって♂同士が闘争を始めました。
♀はその喧騒から離れて黙々と作業と続けます。
交尾後ガードしていた♂も含めて、♂は2匹とも落下してしまいました。(喧嘩両成敗@3:48)
『オトシブミハンドブック』p26-27によると、

(ルイスアシナガオトシブミの)♀をめぐる♂同士の闘争では、向かい合って長い前脚を振り上げ合ったり、レスリングのように組み合う行動が見られる。
興味深い♂の闘争シーンを微速度撮影ではなくリアルタイムのマクロ動画でじっくり記録したかったです。
残念ながら撮影中はこの闘争シーンに気づきませんでした。
おそらく他の虫のことに気を取られていたのだと思います。

独り残された♀は垂れ下がった葉の主脈を中心に葉裏が表になるように二つ折りにします。
そして葉先から巻き上げ始めました。
この辺りで♀は産卵したはずですが、接写しないと産卵行動の詳細が分かりませんね。

再び♂が飛来して辺りを徘徊し始めました。(@4:57)
揺籃製作中の♀をランダムウォークで探し当てると♂は直ちにマウントしました。(@5:15)
先程争っていた♂の一方が戻って来たのでしょうか。
♂を背負ったまま♀bは葉の巻き上げ作業を続けます。

オトシブミ♀が揺籃を巻く向きを考えて撮影アングルを決めないと、♀が作業する裏側ばかり撮ることになります。
画面に写っているのは、交尾後ガードで♀に付き添いウロウロと徘徊する♂ばかりかもしれません。
しかしフィールドの現場では他の茂みがあったり斜面だったりと諸事情により、三脚を立てて撮影できるアングルに制限があるので仕方がありません。

明らかに産卵が済んだ揺籃作りの後半になっても♂がしつこく交尾後ガードを続けている点が不思議に思いました。
素人目には♂はただ♀の作業を邪魔しているだけのように見えますし(お邪魔虫)、♂の立場で合理的に考えれば次の交尾相手の♀を探しに出かけた方が良さそうな気がします。
ライバル♂から♀を守るだけでなく、労働寄生種のオトシブミ♀に托卵されないように献身的に警護する意味もあるのでしょうか?
葉の巻き上げが完了するとようやく♂が交尾後ガードを止めて♀から離れました。
マウントを解除しても♂はしばらく揺籃上をウロウロ徘徊しています。

完成した揺籃を切り落とす最後の工程を微速度撮影と同時並行で別アングルでも撮影しました。
真下に受け皿を置いて、完成した揺籃を採集します。
揺籃がポトリと落ちる肝心の瞬間がピンぼけになってしまいました。

カメラのバッテリー交換に手間取ったせいです。
『オトシブミハンドブック』p26-27によれば、ルイスアシナガオトシブミの♀は完成した揺籃を切り落とす場合と切り落とさない場合があるらしい。
実際にこのハルニレ幼木で探すと、切り落とされず枝に残ったままの揺籃も見つけました。


3日後の揺籃

採集した揺籃をそのまま容器に入れて室内飼育しているのですけど、この記事を執筆中の現在(7月上旬)も未だに成虫が羽化してきません。
揺籃が乾燥し過ぎないように注意したつもりですが、もっと水気を与えるべきだったかもしれません。
カビの発生が怖くて霧吹きなどはしませんでした。
揺籃を切って中を調べてみるべきか、もう少し静観すべきか、悩みます…。

以下は、採集したルイスアシナガオトシブミ♀bの標本写真です。(掲載予定)


2016/06/08

繭を紡ぐホシカレハ(蛾)終齢幼虫【10倍速映像】



2016年5月上旬〜中旬

ホシカレハの飼育記録#2



▼前回の記事
柳の枝で繭を紡ぐホシカレハ♀(蛾)終齢幼虫

採取したオノエヤナギの枝を持ち帰り、飼育下でホシカレハGastropacha populifolia angustipennis)♀の終齢幼虫の営繭を微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
ホシカレハ幼虫は周囲の葉を引き寄せると絹糸で綴り合わせいます。
ときどき休憩したり方向転換しながら繭を紡いでいきます。
撮影中の室温は約22℃。

余談ですが、採取した柳には別種の蛾の幼虫(青虫)が紛れ込んでいて、柳の葉を食べたり徘徊したりしています。
また、葉が萎れ始めると多数のアブラムシが逃げ惑い始めるのもちょっと面白かったです。

焦って採集したので柳の枝の水切りに失敗し、葉がみるみるうちに萎れてしまいました。
見栄えは悪いですけど、繭作りやその後の変態には影響ないはずです。
繭が完成する前に初日だけで微速度撮影を止めてしまいました。
柳の葉に隠れた中で営繭するので何をやっているのかよく見えず、あまり面白くないのです。

繭を紡ぎ始めてから2日後、どうやら繭が完成したようです。
繭の表面からピンセットとハサミを使って柳の葉を少しずつ取り除いてみたら、繭が毛羽立ってしまいました。
その作業中に、蛹が繭内で暴れる気配はありませんでした。
ヤドリバエや寄生蜂に寄生されているのではないかという不安を抱えつつ、このまま見守ります。
ホシカレハの繭に埋め込まれた黒毒毛に触れると皮膚が痒くなったりかぶれるので要注意。

繭の黒点は幼虫時代の毒針毛で、触ると痛みや発疹を生じるといわれている。(『繭ハンドブック』p37より)


幼虫と繭は先端の鋭い棘を持ち、接触時痛みを感じ、軽い発赤や丘疹を生ずる。短時間で治癒。(みんなで作る日本産蛾類図鑑サイトより)


つづく→#3:羽化の微速度撮影



完成後の繭@方眼紙
羽化に備えて繭の上端に脱出口が用意されている?

2016/06/07

柳の枝で繭を紡ぐホシカレハ♀(蛾)終齢幼虫



2016年5月上旬

ホシカレハの飼育記録#1


湿地帯に生えたオノエヤナギの木で大きく育った灰色の毛虫を見つけました。
枝先で周囲から柳の葉を何枚も引き寄せて絹糸で綴り、繭を紡いでいます。
絹糸で繭の足場が粗く作られているだけで、未だ繭を作り始めたばかりのようです。
この日は風がやや強く吹いて枝が揺れるので、左手で枝を掴んで固定しながら撮影しました。



撮影当日はてっきりカレハガの幼虫だろうと予想したのですが、後日に羽化した成虫を見てホシカレハGastropacha populifolia angustipennis)♀の終齢幼虫と判明しました。

柳の種類を見分けるのが昔から苦手で敬遠していたのですけど、後日に枝葉を採集して検討した結果、オノエヤナギだろうとなんとか分かりました。

(オノエヤナギは)冬は雪が積もるような寒冷地に多く、北日本で数が多い。葉は細長く、カワヤナギなどに似るが、表面にしわが目立ち、裏面に葉脈が隆起して細かい毛が密生することが特徴である。葉脈は表面でくぼみ、裏面に隆起する。(『樹液に集まる昆虫ハンドブック』p75より)


葉裏


ホシカレハ幼虫の食餌植物として、ヤナギ科のハコヤナギ属が知られています。
この個体はオノエヤナギ(ヤナギ属)の葉を食べて育ったと考えるのが自然ですが、確かにハコヤナギの幼木も現場近くの湿地帯で見かけています。
繭を紡ぐ場所を探し求めて、わざわざオノエヤナギの木を登って来たのでしょうか?
今回は低い枝に居たので見つけることが出来ました。
英語版ウィキペディアによれば、本種(の欧州産亜種)は柳類の葉も普通に食べるようです。

The larvae feed on Populus and willow species.

撮影後に柳の枝ごと切り落としてホシカレハ幼虫を採集し、急いで持ち帰りました。
飼育下でじっくり営繭を観察します。
映像の後半(@2:23〜)は飼育下で接写したものです。

つづく→#2:営繭の微速度撮影


2016/02/22

巣口付近で激しく争うキイロスズメバチ



2015年10月中旬

キイロスズメバチ巣の定点観察#9


この日は、妙な事件が起こりました。

シーン1:撮影開始時刻13:00

キイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)が出入りする巣口に狙いを定めて撮影していると、帰巣したワーカーに門衛が突然飛びかかりました。(@0:27)
大顎で噛み合う喧嘩になり、一匹が落下。
残った方は興奮したように羽ばたきながら外被上を徘徊してから入巣。
門衛が勝ったのかどうか、定かではありません。
喧嘩の原因は何だったのでしょうか?
他のコロニー出身の蜂が迷い込んだのでしょうか?
つづいて門衛?が巣内から♀を追い出しました。
巣口で誰何する門衛がピリピリと殺気立っているとしたら、その原因として特にこの時期はオオスズメバチによる襲撃が考えられます。
実はそれを半ば期待して様子を見に来たのですが、この日オオスズメバチの襲撃はありませんでした。
この時期はワーカーの数に対して外役に出ない生殖虫(新女王と雄蜂)の割合が増えてコロニーの食糧事情が悪化し、苛烈な口減らしが行われているのでしょうか?

先日は、幼虫の餓死あるいは子殺しが疑われる事件も観察しています。
▼関連記事 
巣の外に捨てられたキイロスズメバチ幼虫の謎【子殺し?】
狩りや採餌に出撃したのに空荷で帰巣するワーカー♀を許さず門衛が追い返しているのかな?(ノルマが厳しい)
喧嘩騒ぎの一方で、巣口の左下では別個体のワーカー♀が外被をせっせと増築しています。


シーン2(@1:01〜):撮影開始時刻13:44

巣口で2匹の蜂が激しく喧嘩しています。
一方的に噛んでいるようで、やられている蜂はほとんど反撃しません。
映像では性別をしっかり見分けられないのがもどかしい限りです。
(同定用にストロボ写真を撮るべきでしたが、動画撮影を優先しました。)
もし交尾行動なら♂がマウントを試みるはずですが、そのような展開にはなりませんでした。
巣に侵入を試みた雄蜂(または他コロニー出身の♀)が撃退されたのかな?
アシナガバチでよく見られるような優位行動がスズメバチにもあるのでしょうか?
権勢の衰えた創設女王に対してワーカー♀がクーデターを蜂起したのでしょうか?
無抵抗で動かない相手の体を2匹の門衛?が噛み続けています。
喧嘩に毒針は使わず、大顎で噛み付くだけでした。
鎧のように固いクチクラは噛み切れないらしく、致命傷を与えられないでいます。
やがて2匹とも外被からもつれ合うように落下しました。(@3:24)
死闘を繰り広げている間に、その横では平然と造巣作業が続いています。

※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。


つづく→#10:巣に侵入したクサギカメムシを追い払うキイロスズメバチ♀



2016/02/21

キイロスズメバチ♀による外被の増築と巣口の拡張【6倍速映像】



2015年10月中旬

キイロスズメバチ巣の定点観察#8


10日ぶりに様子を見に行くと、
キイロスズメバチ
Vespa simillima xanthoptera)のワーカー♀は依然として外被を増築していました。
本種のコロニーを見つけてもすぐに駆除されてしまい、晩秋に観察するのは初めてなのですが、こんな遅い時期まで巣を増築するとは驚きました。
コロニーの活動を微速度撮影してみました。
6倍速の早回し動画をご覧ください。
軒下は薄暗いのですが、ときどき日が照ると下のトタン屋根の照り返しで巣も明るく映ることがあります。
巣口では常に門衛が内側から見張りをしています。
ワーカー♀が活発に出入りして、外被上のあちこちで巣材を付け足しています。
巣口を大顎で削り取って拡張する工事も行われていました。

巣穴はいつも同じ大きさではなく、活動が活発な日中は大きく、夜間は小さくなる。(『都市のスズメバチ』p16より)



※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。

つづく→#9:巣口付近で激しく争うキイロスズメバチ


巣の真下から撮影
巣口の左斜め上の♀は巣材を抱えている。
側面からの撮影
帰巣する蜂の飛翔シーン(右上)

2016/02/08

寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀と寄主ヒメクモバチの攻防:その2



2015年10月上旬

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#11


シーン1:午前10:50

寄主のヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)♀bが在巣のときに、境界標の左の縁から寄生蜂が泥巣に近づいてきました。
寄主と正面から向かい合い、ヒメクモバチが追い払いました。
しかし激しい闘争行動と呼べるようなものではなく、軽く突進する素振りを見せるだけでした。
ヒメクモバチは穏健な性格なのでしょうか。
もしかすると、コクロオナガトガリヒメバチ♀の姿形が寄主に擬態していてヒメクモバチ♀の目には紛らわしく見えるのかもしれません。

それとも、コクロオナガトガリヒメバチは白い触角を激しく動かすことで寄主を幻惑しているのかな?
寄生蜂は境界標の角を曲がった死角に隠れるだけで、執念深くチャンスを窺っています。
しばらく境界標の天辺を徘徊してから、寄生蜂は飛び去りました。




シーン2:午前10:52

寄主のヒメクモバチ♀bが吸水に出掛けた隙に寄生蜂がまた飛来しました。
泥巣の近くを徘徊している間に母蜂が泥巣に戻って来たので、絶好の産卵機会を逃しました。
ヒメクモバチ♀に睨まれた寄生蜂は境界標の天辺に登ってから、あっさり飛び去りました。
泥巣をガードしている間に、寄生蜂は未練がましく周囲を飛び回っています。
寄生蜂に挑発を繰り返されても深追いせず、泥巣から動かないのは賢明な防衛戦略と言えるでしょう。
しつこい天敵がようやく居なくなると、ヒメクモバチ♀は巣材集めのため地面に歩いて降りました。
泥玉を持って登り、造巣作業を続けています。
次は飛び去り、おそらくまた水を飲みに出掛けたようです。



シーン3:10倍速映像

シーン1、2と同時並行に微速度撮影した映像(@2:59〜)にも寄生蜂との攻防が写っていました。
引きの絵では小さな蜂は見えにくいのですけど、コクロオナガトガリヒメバチ♀は触角に白い部分があるのでなんとか見分けられます。



この日の総括:

この日は寄生蜂の産卵が見られず、前回ほど泥巣に執着して近づかなくなったのは何故でしょう?
寄主の巣作りの進捗状況を見に来ているだけかもしれません。
寄主ヒメクモバチの育房内で胚発生が進み、寄生蜂の産卵に適さなくなったのでしょうか?
母蜂の造巣ペースを見定め、次の貯食物が新しい育房に搬入されるまで待っているのかもしれません。
寄生蜂が人懐こくカメラの三脚に乗って来ることもありました。(映像は撮り損ね)

一方ヒメクモバチ♀も寄生蜂の存在に気づいているのにも関わらず、平気で巣を留守にしたり造巣活動を続けているのは不思議です。
もしこの日初めて観察していたとすれば、我が子を危険に晒す投げやりの態度にも見えたでしょう。
前回の観察(5日前)ではしつこい寄生蜂のせいで母蜂は泥巣に釘付けになり、ひたすらガードしていました。
造巣どころではなく、泥巣のガードを優先していました。

▼関連記事
寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀の産卵および寄主ヒメクモバチとの攻防

シリーズ完。


2016/02/06

山形県に泥を塗るヒメクモバチ♀【10倍速映像】



2015年10月上旬・午前10:22〜12:02

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#10


ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)♀bの採土および造巣活動を10倍速の微速度撮影で記録してみました。
前回は境界標の根元から採土している様子が写っていませんでした。

▼関連記事
泥巣を閉鎖するヒメクモバチ♀b【10倍速映像】
今回はもう少し引きの絵で撮影します。
母蜂は境界標に刻印された山形県の「形」の字の第7画目の書き始め部分(右上)の窪みに巣材の泥をせっせと詰めています。
境界標の直下での採土と側面での造巣の往復運動をひたすら繰り返しています。
採土ポイントは毎回決まっているようです。
境界標に侵入してきたアリをヒメクモバチ♀が追い払うシーンが写っていました(@0:45〜0:50)。

この日は水を飲みに出かける頻度が高い印象です。
採土前にほぼ毎回水を飲みに出かけることもあるようです。
すぐ喉が渇くほど気温が高くはありません。
水不足なのでしょうか?
前回と同じ水場(暗渠のドクダミ葉)に行ってみると、水を飲みに来たヒメクモバチ♀bを目撃しました。
人懐こく私のズボンの裾に乗ってきました。(動画撮り損ね)

水場から帰巣する前に寄り道して別な場所から採土するのではなく、いつもの場所(境界標の直下)から巣材集めする点も前回と違いました。

▼関連記事
巣材集めの合間に吸水するヒメクモバチ♀

ご覧の通り山形県に泥を塗る不届き者の蜂ですけど、洒落の分かる知事さん辺りが鶴の一声で「県の蜂」に指定してくれたら嬉しいなー!…なんてね。
ヒメクモバチは『ファーブル昆虫記』にも登場する由緒正しい蜂です。
ヒトを刺しに来ることはありませんし、大人しくて可愛らしい蜂ですので、成虫や泥巣を見つけても目の敵にしないで暖かく見守ってくださるようお願いします。


※ このジオラマモードで微速度撮影するのは便利なのですけど、チルトシフト効果で画面の上下部分をわざとぼかされてしまいます。
余計なエフェクト無しでも微速度撮影できるようメーカーさんには仕様の変更を強く要望します。
チルトシフト効果を入れずに録画したほうがバッテリーも長持ちするはずです。

つづく→#11:寄生蜂コクロオナガトガリヒメバチ♀と寄主ヒメクモバチの攻防:その2



2016/02/05

ヒメクモバチ♀bの採土と巣作り



2015年10月上旬・午前10:14〜10:20

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#9


前夜は泥巣b上に姿が見当たらなかったので、母蜂♀bの身に何かあったのかと心配でした。
翌日の午前中に様子を見に行くと、無事な姿を見れて一安心。
夜間はどこか別の場所で寝ていたのでしょう。

4日前とは打って変わり、この日ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)♀bは活発に造巣活動に励んでいました。
朝露が残っている午前中に集中して造巣活動するのでしょうか?
境界標に刻印された山形県の「形」の字の第7画目の書き始め部分(右上)の窪みに巣材の泥をせっせと詰めています。

蜂が働いている横で境界標の右側面にザトウムシの一種が居ました。
モエギザトウムシですかね?(当てずっぽうで自信なし)
蜂は気づいていないのか無害だと知って無視しているのか、ザトウムシを追い払わず吸水に出掛けました。

次に帰って来た蜂が泥巣を「形」作る行動レパートリーを1ラウンド全て動画に記録できました。
境界標の根元から採土し、吐き戻した水と混ぜて泥玉を作ると、腹端の背側を鏝のように使って巣材を伸ばして泥巣に追加します。

つづく→#10:山形県に泥を塗るヒメクモバチ♀【10倍速映像】



2016/02/03

条網を移動するオナガグモ(蜘蛛)



2015年10月上旬・午前9:23〜9:28


▼前回の記事
条網を綱渡りする夜のオナガグモ【蜘蛛:暗視映像】


真夜中に見かけたオナガグモAriamnes cylindrogaster)と翌朝に再会しました。
前夜とほぼ同じ位置に居て、枝間に張り渡した水平の条網で綱渡りしていました。
身繕いしているのか糸屑を食べているのか不明です。
やがて条網上で方向転換しました。
それまで持っていた白い糸屑を条網の三叉路合流点に付けたように見えました。
最後は松葉のように体を伸ばして静止しました。

何をしていたのかよく分かりませんが、糸疣に注目すると条網を張る造網行動(または条網の張り替え)なのかもしれない、という気がしてきました。

クモ生理生態事典 2016」でオナガグモの移動法に関して次のような記述がありました。

糸上を前進する時には第1・2脚で糸をたぐり,第3脚で糸を丸める.この時,右1脚で確保された糸は左2脚へ送られ左3脚で丸められる. 方向転換の時は前方と後方の糸を糸いぼの箇所でつなぎ,転換して,前部で糸を切断してから,新しい糸を糸いぼから出しながら前進する. 上方へ進む時には糸いぼから前へ糸がつながっている点が水平の糸上を進む時と異なる点である〔新海明AT49/50〕.
これを読んで、オナガグモが綱渡り中に糸屑のようなものを持っている理由が判明しました。
不要な糸を丸めるのは良いとして、なぜ食べてタンパク質を再利用しないのでしょう?
欲を言えば、もう少し拡大してスローモーションで接写したかったです。

いつかオナガグモが条網でクモ狩りを行うシーンを観察してみたいものです。
鳴らした音叉で条網に触れるとオナガグモがどんな反応するか、興味があります。(駆け寄ってくるのかな?)

獲物のクモが条網を歩いて来る振動と音叉の振動とは周波数が違う気がします。
今回の個体は手の届かない高所に居たため、指を咥えて眺めているしかありませんでした。



2016/01/31

キイロスズメバチ♀の巣作り



2015年10月上旬

キイロスズメバチ巣の定点観察#5


巣口の真下からキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)コロニーの活動を狙ってみました。
外被が画面上では縦に長い楕円球に見えます。
巣口ではワーカー♀が活発に出入りして、外被上ではあちこちで増築作業をしています。

この時期にも尚、キイロスズメバチが巣を拡張しているとは知りませんでした。

キイロスズメバチのワーカー♀が巣内から幼虫を引きずり出して外に捨てる瞬間は残念ながら撮れませんでした。

唐突に部外者のキアシナガバチが外被に着陸し、慌ててすぐに飛び去った事件が興味深く思いました。(@1:30)
実は、近所にあるキアシナガバチのコロニーが繁殖期を迎えたらしく、この軒下を群飛していました。(映像なし)
家屋の板壁や材木に止まって休む個体もいますが、巣材集めではありません。
新女王と交尾するために雄蜂が飛び回ったり、新女王が越冬場所を探しているのでしょう。

つづく→#6:体内寄生されて弱ったキイロスズメバチ♂



2016/01/29

巣の外被を増築するキイロスズメバチ♀【微速度撮影】



2015年10月上旬・午後12:25〜14:26

キイロスズメバチ巣の定点観察#3


翌日の昼過ぎ、軒下でキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)が巣の外被を増築している様子を微速度撮影してみました。
夜の静けさとは打って変わって昼間のコロニーは活発です。
50倍速の早回し映像をご覧ください。
多数のワーカー♀が各自の判断で外被上のあちこちで巣材を鱗状にせっせと付け足しています。
巣口では門衛が中から見張っています。

ところで、軒下で巣が固定されている垂木をウロウロと歩き回っている黒っぽい昆虫が気になります。
スズメバチの巣に寄生するハネカクシやゴキブリだとしたら面白いのですけど、越冬場所を探しているカメムシかな?

※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。

おまけの動画1:60倍速映像


おまけの動画2:10倍速映像(オリジナル)


同じ素材で早回し速度を変えたバージョンをブログ限定で公開します。

つづく→#4:巣の外に捨てられたキイロスズメバチ幼虫の謎



2016/01/23

網に付けたアメリカセンダングサの花を除去するオニグモ♀



2015年10月上旬

花を食べる造網性クモの謎#5:オニグモで試すと?


道端に張られた正常円網(垂直円網)に見慣れないオニグモの仲間を見つけました。
こちらに腹面を向け、網の中央部に下向きで占座しています。

さて、最近アメリカセンダングサの花を食べるイシサワオニグモ♀を発見したばかりなので、他の種類のクモではどうだろう?と比べてみたくなりました。
丁度近くに生えていたアメリカセンダングサ(どこにでも見かける帰化植物です)の頭花を摘んで、この網に投げつけてみました。
花を給餌する前に円網の写真を撮ればよかったですね。
円網の甑は丸く穴が開いていました。

給餌してすぐ大失敗に気づきました。
クモの体長に対して花の柄が長過ぎましたね。
見たこともない巨大な獲物に警戒しているのか、クモは慎重に触れて正体を確かめようとしています。
虫とは違い花は動かないので、クモは一度甑に戻りました。(下向き占座@0:44)
すぐにまた下りて行くと、今度は花の柄の先端に向かい、歩脚の先で恐恐と調べています。
ようやくクモが側面を向けてくれました。(@1:30)
茎の先端に対してなぜか捕帯でラッピングしようとしたので驚きました。(@1:45)
こんな巨大な獲物の全体を梱包ラッピングできるかな?
それまでクモは一度も花に噛み付いていません。
やがてクモは茎や葉の周囲の糸を噛み切り始めました。(@2:33)
捕帯でラッピングしかけた白い糸屑は手繰り寄せると殆ど消えてしまったので、自分で食べてしまったようです。

花周囲の糸を切りながらも網全体の張力のバランスが崩れて崩壊しないように、最低限の縦糸などを張り直していますね。
クモがうっかり花を手離してしまい、その拍子にようやく背中を向けてくれました。(@4:32)
腹背中央部の前方に白い斑紋が目立ちます。
まるで誰かが白い油性ペンマーキングしたのかと思ったくらいです。
腹部下面には1対の白点の斑紋があります。
苦心惨憺して、ようやく花全体を網から外し捨てました。(@5:26)
と思いきや、地面に落ちる前に花が網の下部に再び付着してしまいました。
クモはそれをちゃんと分かっていて、対処に向かいます。
今度こそ完全に異物を取り除きました。(@6:52)
その結果、円網が大きく破損してしまいました。
使い物にならなくなった部分の網を取り壊しています。
撮影後半はクモにピントを合わせにくく、苛々した私は甑に戻る前に撮影を打ち切ってしまいました。
画面の奥には防火水槽が見えます。

クモがアメリカセンダングサの花を食べてくれなかったのは残念です。
茎が長過ぎてクモが一度も花の部分に触れなかったので、食物として認識しなかったのは当然でしょう。
我ながら酷い嫌がらせをしてしまいましたが、巨大な異物を網から丹念に取り除いて排除する様子は健気でした。



捕帯で梱包ラッピングしかける。

とにかく腹背上部の白紋が気になったので、どうしても種名が知りたくなりました。
きちんと写真を撮るために、動画撮影直後に採集しました。
小さなプラスチック容器で体に触れると網から糸を引き緊急落下。(映像なし)
地面で擬死していたクモを捕獲しました。
『クモの巣図鑑』をパラパラと見比べて、ヘリジロオニグモ♀なのかと思いました。
念の為にいつもお世話になっている「クモ蟲画像掲示板」にて問い合わせてみると、くも子さんより色彩変異型のオニグモAraneus ventricosus)で未発達の♀だろうとご教示いただきました。
ヘリジロオニグモは切れ網を作り生息地は海岸部らしく、今回の撮影地は内陸(山地に近いほぼ農村部の郊外)であることからも納得です。
『日本産コガネグモ科ジョロウグモ科アシナガグモ科のクモ類同定の手引き』(谷川明男著)という素晴らしいPDF資料を紹介してもらいました。
私には未だ少しレベルが高いようで、精進します。

つづく→#6:網に付いたアメリカセンダングサの花を食べずに捨てるイシサワオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】



【追記】
くも子さんより以下のコメントを頂きました。
○果糖効果がポジティブの例にコガネグモも入っている。(果糖効果の実験をやるなら、幼体26.5%より成体66.7%を選択した方がよさそう…私見)しぐまさんの実験、次にオニグモでやるなら、幼体でなく成体でやると別の結果がでるかも?


外雌器

2016/01/13

軒下で大きく育つキイロスズメバチの巣:増築中



2015年10月上旬・午後15:42〜15:52

キイロスズメバチ巣の定点観察#1


山麓に佇む木造家屋の南西に面した軒下にキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)の巣を見つけました。
この時期に営巣中のコロニーは初見です。
ワーカー♀は外被を増築中でした。
10月になっても未だ活発に巣を拡張していることに驚きました。

下から見上げると巣の外被は楕円球でした。
薄暗い軒下で屋根の棟木と垂木の接続部に吊り下げられています。
スズメバチの古巣を除去した痕跡が隣の垂木に見えるので、毎年のように代々ここで営巣しているのかもしれません。
外被中央に一つだけある巣口に蜂が何匹も出入りしています。
常に門衛が中から巣口を守っていますが、たまに門衛が居なくなると巣内に白い繭が見えました。
後半は、外被右下で造巣中のワーカーを狙って撮影します。
巣材を使い切ると、入れ替わるように別個体が近くで造巣を始めます。

キイロスズメバチは攻撃性が高いとされているので不安でしたが、巣の真下でカメラのストロボを焚いても怒って攻撃してくることはありませんでした。
動画撮影時には気づかなかったのですけど、写真を見直すと雄蜂がときどき外被を徘徊してるようです。(♂は触角が長く腹部の体節も♀より1節多い)
このコロニー出身の♂なのか、それとも交尾相手の新女王を求めて他のコロニーから訪問してきた♂なのでしょうか?

営巣地の目の前はスギの大木が2本立ち、横に沢が流れている自然豊かな環境です。
キイロスズメバチ♀はこの杉の木から巣材の樹皮を採取してくるのではないかと予想したものの、実際には確かめられませんでした。

※ 軒下で撮った薄暗い映像を動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→#2:巣の外被で寝るキイロスズメバチ♀【暗視映像】


全景
全景
別アングル
♀♂
♀♂

2016/01/10

夜に垂直円網の下部を取り壊すアカオニグモ♀b【蜘蛛:暗視映像】



2015年9月下旬・午後19:28〜23:20

アカオニグモ♀の定点観察#19


同じ日の夜に再訪すると、アカオニグモ♀b(Araneus pinguis)は円網の中心部(甑)に占座していたので驚きました。
こちらに背面を向け甑で下向きに占座しています。
いつ見ても隠れ家に潜んでいて滅多に円網に出てこない♀aとは対照的です。

獲物を待ち伏せる位置の違いは何か理由があるのか、気になります。

  • 単なる気質(大胆⇔臆病)の個体差?
  • 発生ステージ(幼体→亜成体→成体)の違い? 体長は♀a>♀b。
  • 空腹状態の違い? 天敵に襲われるリスクを承知の上で、網に虫がかかったら直ちに駆けつけられるよう臨戦態勢で待ち伏せているのか?
もし私が網に生き餌を給餌したら、アカオニグモ♀bはその場(甑)で捕食するのか、それとも隠れ家に持ち帰るのか、興味があります。
試しに実験してみたかったのですけど、現場では虫が調達できませんでした。
予め捕獲した獲物を持参する必要がありそうです。

♀bは腹背が未だ黄色っぽいのでは亜成体なのですかね?(体長は未採寸、外雌器の状態も未確認)
『まちぼうけの生態学:アカオニグモと草むらの虫たち』p5によると、
♀は成熟するにしたがい、おなかの色が黄白色から赤色へかわる。♂のおなかの色は黄白色のまま。
また、同書p16によれば、
あたりが暗くなってから、アカオニグモは隠れ場所からでてきた。食べるところのなくなったカメムシを地上に落とすと、網の中心で頭を下にして、動かなくなった。




その後、私も網の手前に座ってひたすら待ち続け監視していたのですが、油断していたらいつの間にかアカオニグモ♀bが網を取り壊し始めました。
円網の下側の一部だけ(アナログの時計盤に見立てると5時〜7時)扇状に畳んで、切れ網のようになりました。
網全体を一気呵成に取り壊すのではなく、クモはなぜか残った網の中心で上向きに休んでいます。
こうした破網のやり方(下側を先に取り壊す)は別個体♀aでも見ているので、アカオニグモ(またはもっと広くコガネグモ科)に特有の習性なのかもしれません。

▼関連記事
アカオニグモ♀a(蜘蛛):垂直円網の失敗作?【暗視映像】

つづく→#20:音叉でアカオニグモ♀bを騙してみよう【暗視映像】



2016/01/08

巣材集めの合間に吸水するヒメクモバチ♀



2015年9月下旬・午後13:56〜14:11

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#4


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)の採土場が分かったところで、次は水飲み場を突き止めようと思いました。

母蜂は2〜3回連続して境界標の根本から採土すると、必ずどこかに水を飲みに遠出することが分かりました。
泥巣から飛んで行く蜂を追いかけると、参道を約10m下った地点の草むらに着陸しました。
ここは里山から沢の水を排水する暗渠が参道を横切って埋設されています。
排水溝は枯れていて水は流れていないものの、苔などが生えていて湿っています。
蜂はドクダミの葉に付いた朝露を舐めていました。

飲水後に帰巣する蜂を追いかけても、いつも見失ってしまいます。
蜂よりも私の方が先に営巣地に着いてしまうのです。
水場から帰巣した蜂は必ず泥玉を咥えていることから、別の採土場に寄り道してきているに違いありません。
2回続けてほぼ同じ場所から吸水するシーンを観察できました。
水場の近くの参道沿いに境界標が2本並んでいて、それぞれに別のヒメクモバチ♀a,bが営巣しています。

ほぼ休みなく泥巣の閉鎖を続けてきた♀bが、やがて作業を止めてしまいました。
外出しても空荷で帰巣し、泥巣上で点検や身繕いを繰り返すだけになりました。
疲れて休んでいるのでしょうか?
働く時間帯が決まっているのかもしれません。
巣材の土は無尽蔵にありますけど、晴れて気温が上がると水場の朝露が蒸発してしまい、巣作りが出来無くなるのかもしれません。
(少し飛んでいけば川も流れていますし、水なら他の場所へ探しに行けば良さそうなものですが…。)
もし私が営巣地の近くに水場を作ってやったら蜂は利用してくれるでしょうか?
水を入れた皿を置いたり、近くの木の葉に霧吹きしたりしても、一度身についたルーチンワークの行動パターンは変わりそうもない気がします。
それでも、ヒメクモバチ♀の行動にどれぐらい融通性があるのか実験してみなければ分かりません。

育房の閉鎖が完了したのであれば、続けて隣に新しい育房を増設するはずです。
しかし蜂に動きが無いため、諦めてこの日の観察を打ち切りました。

つづく→#5:境界標の泥巣上で身繕いするヒメクモバチ♀a




【追記】
『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』第13章 清水晃「クモを狩るハチたち」を読んで驚いたのですが、中米コスタリカ産のヒメクモバチ属の一種Auplopus semialatusは原始的社会性の暮らしを送っているそうです。
そのような社会性の進化を考える上で、
巣づくりに先立って水を吸い、それを素のうに入れて巣場所まで運ぶ行動がきわめて重要になる。この行動こそが、自分が羽化した泥壺状の巣(母巣)の再利用を可能にすることは疑いの余地がない。つまり、母巣は水を用いてリフォームすることのできる親世代の貴重な遺産となるのである。羽化した♀たちは、この遺産を引き継ごうとして、羽化後も母巣にとどまろうとするだろう。〈散らばらなかった社会〉の出現である。クモバチ科では、水を利用した泥球づくりはヒメクモバチ属およびその近縁の属(ヒメクモバチ亜族)にのみ見られる。 (p286〜287より引用)

私も日本産のヒメクモバチで巣材の再利用を観察したことがあります。
当時は巣材を盗む労働寄生なのかと思っていました。

▼関連記事(7年前の撮影)

2016/01/07

営巣地の直下で採土するヒメクモバチ♀b



2015年9月下旬・午後13:20〜13:35

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#3


ヒメクモバチ♀b(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)が繰り返す造巣行動をしばらく眺めていると、採土は近場で済ませていることをようやく突き止めました。
境界標の根本の地面を掘って泥玉を採取していたのです。
高さ40cmの境界標を上下に往復するだけなので、造巣作業が捗ります。

本種の営巣地と採土場を共に突き止めたのは2回目です。
2009年は泥巣から約3m離れた崖から巣材を集めていました。

▼関連記事
ヒメクモバチの採土と泥玉作り1

今回、母蜂の造巣行動を邪魔しないように少し離れた位置から撮影していたので、蜂が境界標の根本に降りた所で手前に茂った灌木の葉に隠れていつも見失っていたのです。
灯台下暗しとは正にこのことですね。

微速度撮影と同時並行してハンディカムで撮りました。

映像の冒頭で、ヒメクモバチ♀は境界標のすぐ左で常緑の灌木の葉に乗って小休止していました。
吸水および採土を済ませた直後のようで、小さな泥玉を咥えています。
歩いて境界標の側面を登ると泥巣を塗り潰す作業を行います。
造巣後は歩いて地面に降りました。
境界標の真下の
落ち葉の下に潜り込むと、地面を大顎で掘り返し採土しているようです。

採土と造巣を数回繰り返す毎に、境界標から飛んで外出することがあります。
これは水を飲みに出かけているのです。(映像公開予定)
飲んだ水を吐き戻しながら、土塊をよく噛み解して滑らかな泥玉を作り、巣材とするのです。
吸水の直後はいつも帰巣する途中、どこか別の場所で採土して来ます。(どこか突き止められませんでした)

つづく→#4:巣材集めの合間に吸水するヒメクモバチ♀


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