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2021/04/19

羽化したサムライコマユバチ♀♂の大群:寄主ナシケンモン(蛾)幼虫

 

 ナシケンモン(蛾)の飼育#13

前回の記事:▶ 繭塊から続々と羽化するサムライコマユバチ【10倍速映像】寄主ナシケンモン(蛾)幼虫
2020年11月中旬・午後15:35頃 

繭塊から羽化を始めてから2日後。 
密閉容器内で夥しい数のコマユバチ科サムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)成虫が活動していました。 
微小な蜂とは言え、たった1匹の寄主からこれほど多数の成虫が羽化するとは驚きです。 
単独の寄生蜂♀が多数の卵を寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫の体内に産み付けたのです(多寄生)。 

蜂は全身が黒色で、脚だけが黄土色(跗節は黒色)でした。 
繭ハンドブック』p90に同じくナシケンモンに体内寄生するサムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)が掲載されています。 
写真が小さいのが残念ですが、それを見ると脚の色が赤っぽいので、素人目には別種のような気がします。
 (これからの図鑑は全て電子書籍にして、フルカラーの写真を自由に拡大できるようにして欲しいです。) 
腹側から見たときに腹端に短い真っ直ぐな産卵管があるのが♀だと思うのですけど、逆に映像では♂が見当たりません。 
背側からでは、翅に隠れて腹端(産卵管の有無)が見えなくなってしまいます。 

容器内で求愛・交尾している♀♂ペアが見当たりません。 
羽化直後に交尾を済ませるのだとしたら、見逃してしまったようです。 

体重の軽い微小なサムライコマユバチはプラスチック容器の垂直な壁面もサランラップ蓋の裏面も逆さまになって平気で歩き回ることが可能です。 
たまに飛び回る個体もいます。 
蓋の代わりに張ったサランラップ越しに接写したのですが、サランラップの表面に静電気で付着した綿埃が見苦しいですね…。 
蜂がサランラップを食い破って脱出することはありませんでした。 

円筒形の容器内に閉じ込められても蜂の大群が一方向に多く集まっているのは、明るい窓からの日光に引き寄せられているようです。 
昼行性ですから、正の走光性があるのは当然です。 

シリーズ完。 

以下の写真は、動画の前日に撮ったものです。(羽化開始の翌日) 
コマユバチを同定するために、標本を接写した写真を掲載予定。 
少なくとも羽化した総個体数と性比だけでも、きちんと調べます。


 

2021/04/17

繭塊から続々と羽化するサムライコマユバチ【10倍速映像】寄主ナシケンモン(蛾)幼虫

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#12

前回の記事:▶ 繭塊の外で蛹化したサムライコマユバチ:寄主ナシケンモン(蛾)幼虫
2020年11月中旬・午後22:00〜翌日の午後12:45・室温〜21℃ 

前回の動画から3日後。 
寄主から脱出して繭塊を紡いでから11日後。 
円筒形の透明プラスチック容器(直径7.5cm、高さ8cm、綿棒容器を再利用)に閉じ込めておいた繭塊から、いよいよサムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)成虫の羽化が始まりました。 
プラスチック越しの撮影は不鮮明になるので、予め密閉容器の蓋代わりにサランラップを張っておきました。 
ところが、いざ接写しようとすると室内の照明がサランラップに反射して白飛びしてしまい、セッティングに苦労しました。 

10倍速の早回し映像をご覧ください。 
フワフワの白い繭塊の中から黒っぽい寄生バチが頭から苦労して這い出してきます。 
繭の絹糸を大顎で噛み切りながら脱出路を切り開くのか、それとも絹糸を分解する消化酵素を吐き戻しているのか、不明です。
(1匹ずつ蜂の口元をもっと拡大して接写するべきでしたね。) 
無事に羽脱した新成虫は繭塊の表面に留まって身繕いしてから徘徊を開始。 

もっと多数の個体が一斉に羽化してくるかと期待したのですけど、かなり間隔を空けて五月雨式の羽化でした。 
自然界でも夜に羽化が始まるのだとしたら、撮影用の照明が眩しいせいで羽化が抑制されてしまったのかもしれません。 
長撮りした素材から羽化のシーンだけを抜粋し、成虫がこれから脱出してくる部位を赤い丸で示しました。 

羽化がいつもスムーズに行くとは限りません。 
脱出孔から仰向けに出てしまった個体は、繭塊表面の絹糸に翅が絡まってしまい、長時間もがいていました。 
疲労困憊でときどき休みながらも、ようやく自力で脱出することが出来ました。 
揺り籠があわや死のトラップと化すところでした。 
翅が繭の絹糸に絡まってシワクチャになっても、脱出直後には自然と真っ直ぐ伸びるのが蜂の羽化に特有です。 
チョウなどの鱗翅目なら羽化不全(翅の奇形)になるはずです。 

後半(@2:40〜)は等倍速の映像です。 
私にはサムライコマユバチ成虫の性別が見分けられません。 
枯葉の上で休んでいた新成虫が別個体と遭遇しても、2匹は交尾せずにすぐ別れました。 
翌日になると、密閉容器内で多数の寄生バチが歩き回っていました。 
ときどき容器内を飛び回る個体もいます。 

 

↑【おまけの動画】 

等倍速の映像と長撮りしたタイムラプス映像(10倍速)ノーカット版をブログ限定で公開しておきます。 


2021/04/13

繭塊の外で蛹化したサムライコマユバチ:寄主ナシケンモン(蛾)幼虫

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#11

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(3)10倍速映像
2020年11月中旬・午後22:35頃・ 

寄主から脱出して繭塊を作ってから8日後。 
サムライコマユバチの一種(Cotesia sp.)幼虫の中で繭塊から一旦こぼれ落ちた者は、繭塊に戻れず、裸でまま蛹化していました。 
単独では自分の繭を正常に紡げないのかもしれません。

フワフワした白い繭塊の中で発生(完全変態)が進行している様子を見ることはできませんが、裸の蛹なら直接観察することが可能です。 
寄生蜂の蛹は全体が薄い黄色ですが、黒い複眼が目立つようになりました。 
長い触角も見えます。 
蛹の心臓(背脈管)の拍動が透けて見えるかと期待して動画に撮ってみたのですけど、動いていませんでした。 
側面を向いていた隣の個体も接写すべきでしたね。 

裸の蛹は、繭塊どころかベニバナボロギクの葉からもこぼれ落ちています。 
もしこれが自然界なら、繭塊に覆われていない裸の蛹は死亡率が上がるはずです。 
アリに見つかって捕食されたり、二次寄生バチ♀に真っ先に産卵されたりしてしまうことでしょう。 
また、微小な寄生バチの蛹は繭に覆われていないと乾燥に弱いはずです。 
密閉容器に入れているのですが、無事に成虫が羽化するでしょうか? 

寄主のナシケンモン幼虫はさすがにもう死んだようで、全く動きません。(右が頭部) 


 

2021/04/11

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(3)10倍速映像

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#10

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(2)接写
2020年11月上旬・午後22:27〜23:40 

サムライコマユバチの一種Cotesia sp.)終齢幼虫の群れが集団で営繭する様子を今度はマクロレンズで微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
初めからこの手法で記録したかったのですが、1台しか無いカメラと三脚のやりくりが大変でした。 

各幼虫は、口から白い絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡いでいます。 
1匹の幼虫が繭塊の表面からこぼれ落ちました。 
ウジ虫様の寄生バチ幼虫は脚が退化しているので、歩行・徘徊が苦手です。 
繭塊から離れてしまうと、おそらく自力では戻れないでしょう。 
繭塊から脱落した幼虫の穴は後に他の仲間によって埋められます。 

寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫は虫の息ながらも未だ生きているようで、ときどき微かに頭部が動いています。(画面下が被寄生幼虫の頭部) 
この寄生バチは、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂に分類されます。 
しかし別種の寄生バチ♀によって繭塊に次々と産卵されて、二次寄生される可能性があります。 
▼関連記事(5年前の撮影)
それを防ぐために寄主の毛虫が死ぬまでボディーガードとして振る舞うように行動を支配(寄主の行動操作)しているかどうか、興味深いところです。 
例えば他の虫が近づいたり繭塊を這い回ったりすると、ナシケンモン幼虫は暴れて撃退するでしょうか? 
飼育下で実験のために二次寄生蜂を用意するのは無理なので、試しにアリやアブラムシなどを這い回らせてナシケンモン幼虫の反応を調べたら面白そうです。 
せめてピンセットで毛虫をつついてみて、反応性を調べるべきでしたね。 
しかし本来、被寄生ナシケンモン幼虫は最終的に丸い球状の繭塊で完全に包まれるはずなので、ボディーガードの行動は期待されていない気がします。 
被寄生ナシケンモン幼虫は筋肉組織も既に食い荒らされているでしょうし、体外も体内も寄生バチの絹糸によってがんじがらめに固定されていますから、ほとんど動けないのではないか、と私は予想しています。 

 「ナシケンモン:寄生されて蛾になれず死んでしまうエレジー」 

翌日に撮った繭塊の写真を以下に掲載しておきます。
未だ営繭を続けている幼虫が写っていました。



2021/04/09

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(2)接写

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#9

前回の記事:▶ 寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(1)
2020年11月上旬・午後22:12〜22:21・ 

サムライコマユバチの一種Cotesia sp.)終齢幼虫の群れが口から白い絹糸を吐いて寄主のナシケンモンViminia rumicis幼虫の周囲で繭塊を作る様子をマクロレンズで接写してみました。 
フワフワで柔らかそうです。

たまたま同時に撮影していた別の飼育ネタ(微速度撮影)を泣く泣く終了させて、ハンディカムから高画質のメインのカメラに切り替えて撮影しました。

2021/04/07

寄主ナシケンモン(蛾)幼虫の体外に脱出して繭を紡ぐサムライコマユバチ終齢幼虫の群れ(1)

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#8

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】
2020年11月上旬・午後16:45〜21:15・室温22.0℃ 

ベニバナボロギクの葉裏で巣を作りかけたまま力尽きたように静止していたナシケンモンViminia rumicis)の幼虫から遂に寄生蜂の幼虫が一斉に脱出を始めました。 
この日はたまたま他の飼育ネタを撮影していたので、三脚もメインのカメラも使えません。 
仕方がないので、慌ててハンディカムで手持ち撮影することにしました。 
適当に時間を空けて1分間撮影した映像をつなぎ合わせ、タイムラプス風のステップビデオにしました。 
コマユバチ幼虫が寄主の体表を食い破って脱出する瞬間を撮り損ねたのが残念です。

白っぽい(薄黄色)蛆虫のような寄生蜂の終齢幼虫が寄主の背側から何十匹も一斉に脱出して蠢いています。 
各個体は脱出地点(寄主の体表)で後端を固定すると、口から白い(薄い黄色?)絹糸を吐きながら上半身を振り立てて繭を紡ぎ始めました。 
寄主のナシケンモン幼虫がしがみついていたベニバナボロギクの葉がどんどん萎れてくるので、撮影しやすいよう切り落として卓上に置きました。(向かって左が寄主の頭部です) 
これからコマユバチ幼虫の群れは合同で繭塊を紡ぐのですが、重力の向きが変わったせいで繭塊の形状に影響を与えてしまった(不自然な形になった?)かもしれません。 

脱出したコマユバチ終齢幼虫は30〜40匹?
体内を散々食い荒らされ体表のクチクラを一斉に食い破られても、寄主のナシケンモン幼虫は「虫の息」ながら依然として生きていました。 
葉裏の主脈に口を付けるように静止していますが、ときどき緩慢に動いています。 
途中から採寸代わりに1円玉(直径2cm)を横に並べて置いてみました。

初めは寄主の右側から脱出したコマユバチ幼虫の方が多いように思ったのですが、どうでしょう?(左右非対称に脱出?) 
それぞれの寄生蜂(コマユバチ科サムライコマユバチの一種?)幼虫の下部から次第に薄黄色のフワフワした絹糸で覆われてきました。 
繭塊の土台から作っていくようです。 
寄主ナシケンモン幼虫の姿が寄生蜂の繭塊に覆われて見えなくなってきています。 
コマユバチ幼虫の体も自ら紡ぐ繭塊の中にほぼ埋没しつつあります。 

もしピンセットなどで寄生蜂の終齢幼虫を寄主から引き剥がして単独で放置したら、自力で個別の繭を紡げるのですかね? 

繭塊が少しずつ大きくなると、寄主の体表を離れて左右にもはみ出して営繭しているコマユバチ幼虫の数が増えました。 
ナシケンモン幼虫がしがみついていた葉の向きを私が途中から撮影のために変えてしまったので、重力環境の変化が繭塊の形状に影響を与えてしまったかもしれません。 
もし葉が自然に垂れ下がったままコマユバチ幼虫群に営繭させたら寄主の体全体を覆う球状の繭塊になったはずです。 

三田村敏正『繭ハンドブック』のp90に、ナシケンモンを寄主とするコマユバチ科サムライコマユバチの仲間(Cotesia sp.)が作った繭塊が紹介されていました。 
同種かどうか分かりませんが、私が今回観察したのもおそらくサムライコマユバチの一種なのでしょう。
▼関連記事(13年前の撮影) 
ツガカレハ(蛾)幼虫に寄生していた蜂の造繭@接写

『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』という凄い本を読んだばかりなので、興味深いです。 
本をただ読むだけと自分の目で観察するのでは大違いです。
今回のトピックと一番関係の深いのは、中松豊「内部寄生の謎:危険な体内環境を支配する」と題した第6章です。
アワヨトウという蛾の幼虫に寄生するカリヤサムライコマユバチの生活史を詳しく研究した結果をまとめた総説です。
カリヤサムライコマユバチの寄生様式を専門的に分類すると、飼い殺し型の内部捕食性多寄生蜂になります。 
カリヤサムライコマユバチ幼虫は脱出の際、足場を作るためにアワヨトウ幼虫の体内で糸を吐くが、これはアワヨトウ幼虫の体を内側から縛り、動けなくするという機能も兼ねていた。(p127より引用)
おおまかなストーリーを既に知っていた私が、本書を読んで一番驚いたのはこれでした。
寄生バチ幼虫が一斉に脱出する前に寄主の幼虫が動けなくなるのはてっきり体内の筋肉組織を食い荒らされたせいだと私は思い込んでいたので、とても勉強になりました。
少し長くなりますが、コマユバチ幼虫が寄主から脱出する方法について更に詳しい解説を引用します。
ここまで詳細な脱出過程の記述を他の本で読んだことがありません。
 カリヤサムライコマユバチ幼虫は、アワヨトウ幼虫から脱出する際、アワヨトウ幼虫の体液を一斉に飲む。そうするとアワヨトウ幼虫の体の体積は減って、ハチ幼虫の体の体積は増える。そのため、カリヤサムライコマユバチ同士の距離が近くなり、この機会を捉えて一斉に糸を吐き出す。このアワヨトウ幼虫体内に縦横無尽に走る糸の隔壁が、カリヤサムライコマユバチ幼虫のアワヨトウ幼虫から脱出する際の足場となる。
 普段アワヨトウ幼虫の体液のなかでカリヤサムライコマユバチ幼虫は浮遊生活をしているが、これから脱出するにあたってアワヨトウ幼虫の皮膚を大あごで切り裂かなければならない。そうすると、足場のない水中で皮膚に圧力をかけるのが難しい。しかしサムライコマユバチは前述の糸でつくった隔壁を足場として、大あごを立ててアワヨトウ幼虫の皮膚に圧力をかけ、さらに頭を前後に振ることによって物理的に切断していく。(p126より引用)
下線を引いた「寄主の体液を一斉に飲む」という点も初耳でした。
今回ナシケンモン幼虫が営繭準備のために巣を作り出したということは終齢幼虫のはずです。
それなのに正常な(寄生されていない)終齢個体より体長が小さかった理由がこれで分かりました。

私が更に驚愕したのは、寄主幼虫の皮膚を内側から一斉に食い破って大量の寄生バチ幼虫が脱出してくるのに体液が1滴も漏れない理由も解明されていたことです。
カリヤサムライコマユバチ幼虫が脱出する際、最後の幼虫脱皮をおこない、自身は3齢幼虫となって外へ出ていくが、アワヨトウ幼虫体内に残された2齢の脱皮殻が、破れた皮膚の栓となって、アワヨトウ幼虫の体液が外に漏出しないよう防いでいる。(同書p129より引用)
次に機会があれば、寄主幼虫の死骸を解剖して、皮膚の裏側に埋め込まれたコマユバチ幼虫の抜け殻を探してみるつもりです。



 ↓【おまけの動画】 
同じ素材を5倍速と10倍速に早回しにした映像をブログ限定で公開しておきます。 
せっかちな方はこちらをご覧ください。 
手持ちのハンディカムで撮ったので手ブレがあります。

 



2021/04/05

体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#7

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫が繭を作る場所を探索【10倍速映像】
2020年11月上旬 

ナシケンモンViminia rumicis)の被寄生終齢幼虫は食草だったベニバナボロギクの葉裏に落ち着くと、営繭用の巣を作り始めました。 
微速度撮影したので200倍速の早回し映像をご覧ください。 
白い絹糸を口から吐いて周囲の葉を綴り合わそうとしています。 
三田村敏正『繭ハンドブック』によると、ナシケンモンは
餌植物の葉を綴って繭を作る。(中略)繭層は非常に薄く、中の蛹が透けて見える。(中略)繭全体が葉でくるまれていることもある。 (p61より引用)
ところが巣作りが遅々として進まず、休んでいる時間の方が長いです。 
寄生されていない正常個体の営繭行動を私は未だ観察したことがないのですが、もしかすると、オトシブミのように葉裏から葉脈に噛み傷を付けて萎れさせ、巣材を加工しやすくしているのか?と初めは思ったりしました。 
ベニバナボロギクの葉がみるみる萎れていくのは、至近距離から照明を当てているためのようです。 
対策として、途中で花瓶の水を追加しました。 

ナシケンモンの幼虫は自身の体の周りの葉裏に辛うじて少量の絹糸を張り巡らしただけで動かなくなりました。 
あまりにも異例尽くめなので、この時点になると体内寄生されてることを確信しました。 
絹糸腺は寄主の生存に不可欠な器官ではありませんから、おそらく寄生蜂の幼虫にほとんど食われてしまい、巣作りや営繭に必要な絹糸を吐けなくなったのでしょう。 
この個体の徘徊運動がギクシャクとぎこちないのは前からですが、葉裏に静止している間もピクピクと不規則に蠕動しています。 
筋肉組織や運動神経系も寄生蜂の幼虫にどんどん食い荒らされているのでしょう。 

体内寄生虫が寄主の行動を操作して自らの生存に都合の良い構造物(巣)を作らせる「延長された表現型」の事例はいくつか知られています。 
しかし、今回の観察例もそうなのかどうかは疑問です。 
せいぜい、寄主が力尽きる前に全身を植物にしっかり固定させているぐらいだと思います。
比較のために、寄生されていない正常個体の営繭行動を観察するのが次の宿題です。

    

↑【おまけの映像】 
 同じ素材で早回し速度を半分の100倍速に落とした動画をブログ限定で公開します。 

2021/04/03

体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫が繭を作る場所を探索【10倍速映像】

 

 ナシケンモン(蛾)の飼育#6

前回の記事:▶ ニセアカシアの葉を食べる体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫【10倍速映像】
2020年11月上旬・午後16:40頃 

前日から食欲が無かったナシケンモンViminia rumicis)の被寄生終齢幼虫bは、落ち着き無く徘徊するようになりました。 
図鑑に書いてある終齢幼虫の体長より小さいのですが、繭を作れる安全な場所を探索しているのでしょう。 
 一緒に飼っているフクラスズメ幼虫による食害で丸坊主にされたカラムシにも登ったものの、気に入らなかったナシケンモン幼虫は引き返して降りてきます。 
カラムシの葉や実には全く口を付けませんでした。 


2021/03/26

アカタテハ蛹の体内寄生チェック

 

アカタテハの飼育記録#9

前回の記事:▶ 巣の無い無防備なアカタテハ垂蛹の威嚇行動
2020年10月下旬・午後20:30頃・室温21.3℃・湿度54% 

野外のカラムシ群落で新たに採集してきた3個のアカタテハVanessa indica)垂蛹が体内寄生されているかどうかチェックしてみました。 
蛹を指で軽く摘んでみると、身を捩って暴れ威嚇します。 

 ▼関連記事(1頭目の正常個体aの記録) 

2個の垂蛹bとc(画面の左および中央の個体)は正常に蠕動威嚇しました。
それに対して、右端の個体dはしつこくいじっても無反応でした。 
外見では全く正常なのですが、おそらくこの垂蛹dはハエやハチに体内寄生されて死んでいる(虫の息)だろうと判断し、密閉容器に隔離することにしました。

この触診による予想は後に的中します。
計4頭のアカタテハ垂蛹を採集して飼育した結果、被寄生率は1/4=25%でした。

つづく→#10:


2021/03/18

ニセアカシアの葉を食べる体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫【10倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#5

▼前回の記事 
体内寄生で運動機能が侵されたナシケンモン(蛾)の終齢幼虫
2020年10月下旬・午後・室温19.3℃・湿度42% 

ナシケンモンViminia rumicis)の幼虫は好き嫌いの少ない広食性らしいので、近所で適当に採取してきたヨモギ(キク科)およびニセアカシア(マメ科)を与えてみました。 
食餌植物リストに含まれているヨモギの葉に食いついたものの、チビチビとしか食べてくれません。(映像なし) 

被寄生終齢幼虫は次にニセアカシア(別名ハリエンジュ)の小枝に移動すると、小葉を味見。 
すると、これまでに与えた食餌植物の中で一番気に入ってくれたようです。 
チビチビと食い散らかすのではなく、しっかりと蚕食するようになりました。 
ベニバナボロギクやヨモギの葉よりも癖が無くて(含まれる毒が少ない)美味しいのかもしれません。 

後半は微速度撮影したので、10倍速の早回し映像をご覧ください。(@3:13〜) 
細い枝の下面にしがみついて食事するナシケンモン幼虫が上半身を精一杯伸ばしても小葉の下までは口が届かないために、食べ残した葉の下半分は捨てる(切り落とす)ことになります。 
ニセアカシアの葉は薄いので、葉縁にしがみつくと幼虫の体重を支え切れないのでしょう。 
腹脚で枝先にしがみついたまま上半身をねじり、胸脚で掴んだ小葉を食べています。
ナシケンモンの越冬態は蛹らしいので、今季中に営繭を観察できるはずです。 


 

2021/03/17

セイタカアワダチソウの花を舐めるヤドリバエ科Gonia属の一種

 

2020年11月中旬・午後14:00頃・晴れ 

山間部の道端に咲いたセイタカアワダチソウの群落で寄生バエが訪花していました。 
撮影中はてっきりセスジハリバエだと思い込んでいたのですが、違和感を覚えてよくよく調べ直したら別種で、Gonia属の一種と判明しました。
▼関連記事(1年前の撮影) 
セイタカアワダチソウの花蜜を吸うセスジハリバエ
セイタカアワダチソウの花穂を歩き回りながら口吻を伸縮させて花粉や花蜜を食べています。 
隣接する花穂には飛ばずに伝い歩きで移動していました。 
左右の複眼がかなり離れていて、独特の顔つきです。 
すぐ横の車道を車が通りかかると飛び去ってしまいました。

2021/03/16

体内寄生で運動機能が侵されたナシケンモン(蛾)の終齢幼虫

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#4

▼前回の記事 
体内寄生されたナシケンモン(蛾)の終齢幼虫がベニバナボロギクの葉を蚕食【10倍速映像】
2020年10月下旬・午後

飼育下のナシケンモンViminia rumicis)の終齢幼虫が食草のベニバナボロギクを徘徊する動きがどうも鈍く、ぎこちない気がしてなりません。 
ピクッピクッと奇妙なリズムで動き、蠕動運動でスムーズに前進していません。 
採集時にもそう思ったのですが、体内寄生されていることを確信しました。 
寄生バチの幼虫に体内組織を徐々に食い荒らされて、遂に筋肉や運動神経系も侵されたのでしょう。 

比較対象として、9年前に野外で撮影した個体は、スムーズに蠕動・前進していました。 
(ただし、体内寄生されていない正常個体であることの確認はしていません。) 

 ▼関連記事(9年前の撮影:気温12℃) 

『イモムシハンドブック』によれば、ナシケンモン幼虫の体長は終齢で32〜40mmとのこと。 
この個体は体長〜23mmと発育が悪い状態でした。 

ベニバナボロギクの花や実は全く食べませんでした。 
つついて刺激すると擬死するのですが、回復するまでの時間も長い印象です。(映像なし) 

※ 動画編集時にいつものようにコントラストではなく彩度を少し上げました。 

つづく→#5:


2021/03/15

オニノゲシの葉で身繕いするコマユバチの仲間?

 

2020年10月下旬・午後15:20頃・くもり 

道端に自生するオニノゲシの群落で見慣れない小さな蜂が化粧していました。 
晩秋はフィールドで見かける虫がめっきり減ったので、身繕いシーンをマクロレンズで接写してみました。 
オニノゲシの葉縁の鋸歯に止まり、両足を擦り合わせています。 
その後はオニノゲシの葉を徘徊し始めました。 

たぶん寄生蜂だろうと予想はつきます。
なんとなくコマユバチ科の一種ではないか?という気がするのですが、真面目に検討した訳ではありません。 
未採集、未採寸。 
性別も不明ですが、♀なら寄主探索行動ですし、♂なら探雌行動のはずです。 
脚は鮮やかな橙色で関節部分は黄色なのが目を引きます。 

寄主となりそうな芋虫・毛虫の類はもとより、アブラムシすらオニノゲシの群落で見つかりませんでした。 

オニノゲシの花期が終わり、実が膨らんでいる状態でした。 
白い綿毛も一部で出来ていました。 
つまり、蜂がもともと吸蜜目的で訪花したとは考えられません。

このオニノゲシの群落で寄生蜂を2種類も見つけたのは果たして偶然でしょうか? 
寄主を調べないことには、謎解きの端緒も掴めません。 
 ▼関連記事(同日に同じ場所で撮影) 

2021/03/14

体内寄生されたナシケンモン(蛾)の終齢幼虫がベニバナボロギクの葉を蚕食【10倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#3

▼前回の記事 
ベニバナボロギクの茎を登り移動するナシケンモン(蛾)幼虫b
2020年10月下旬・午後15:00頃

採集の翌日、飼育下でナシケンモンViminia rumicis)の終齢幼虫bがベニバナボロギクの葉を食べる様子をマクロレンズで微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像でご覧ください。 
葉の縁にしがみついたまま食休みしていた幼虫が覚醒すると、寝ぼけたまま口器をモグモグ動かしました。 
寝起きですぐに食餌を開始。 
前進しながらベニバナボロギクの葉の縁を食べ進みます。 
ところが、食べかけの葉を完食しないうちに方向転換して、別の葉に移動してしまいました。

今度は食餌を中断して口元を胸脚で拭う仕草をしました。(@1:10) 
植物が食害を防ぐために忌避物質を分泌しているのかと思って葉の傷口をよく見ても、タンポポやノゲシ類で見られるような白い乳液は滲み出していませんでした。 

ナシケンモン幼虫bは、またもや食べかけのまま別の葉に移動しました。 
終齢なのに、食欲があまり無いようです。 
 後に判明したのですが、この個体は体内寄生されていました。 



   
【おまけの動画】 
初めに紹介した動画の後半部分のオリジナル素材で早回ししない等倍速映像をブログ限定で公開しておきます。

2021/03/10

ベニバナボロギクの茎を登り移動するナシケンモン(蛾)幼虫b

 

 ナシケンモン(蛾)の飼育#2

▼前回の記事 
ベニバナボロギクの葉を食べるナシケンモン(蛾)終齢幼虫b
2020年10月下旬・午後14:50頃・くもり 

食べかけた葉を完食する前にナシケンモンViminia rumicis)の終齢幼虫bは茎(花柄)を上に登り始めました。 
気温が低い訳ではないのに、なぜか動きが緩慢でぎこちない気がします。 
後に判明したのですが、この個体は体内寄生されていました。 
体内を少しずつ食い荒らされた影響で、運動機能(筋肉組織または運動神経系)が侵されていたのではないかと想像しました。
ただし、寄生されていない正常個体の動きと比べてみないことには、「寄生のせいで動きが異常」とは言い切れません。

その後もしばらく観察を続けたのですが、ベニバナボロギクの花には口を付けませんでした。 
撮影後に食草と一緒に幼虫を採集して持ち帰り、飼育を始めました。 

2021/03/08

ベニバナボロギクの葉を食べるナシケンモン(蛾)終齢幼虫b

 

2020年10月下旬・午後14:40頃・くもり 

郊外の農道脇に咲いたベニバナボロギクの群落でナシケンモンViminia rumicis)の終齢幼虫を見つけました。 
葉の主脈に上向きにしがみつき、ゆっくり葉を蚕食しています。 
下の葉に黒い糞が2個落ちていました。 
新しい葉(食痕あり)に移動して食餌を始める際に、葉を咥えた(抱えた)ままグイーっと手前に引き寄せる行動をしました。 
楽な体勢で食事するためでしょう。 

ベニバナボロギクの赤い花が咲き終わった後にできた実から綿毛の種子が風で飛んでいました。 
ナシケンモン幼虫は、栄養価が高い実や種子を食べずに葉を食べているのが興味深く思いました。 
ベニバナボロギクは食害から種子を守るために、何か毒物を実に溜め込んでいるのかもしれません。 
ベニバナボロギクはキク科植物なので、幼虫の食べ痕から白い乳液(防御物質)が滲むかと期待したのですが、幼虫の口元をマクロレンズで接写しても何も出ていませんでした。 
幼虫は食前に乳液の分泌を抑えるためのトレンチ行動をしたのでしょうか? 
私も試しに手で隣のベニバナボロギクの茎や葉、花柄などを千切ってみたのですけど、微量の透明な液体が滲んだだけで、やはり白い乳液を分泌しませんでした。 
同じキク科でも乳液の有無は属によって違うのかもしれません。 
タンポポ(タンポポ属)やアキノノゲシ(アキノノゲシ属)には白い乳液を含み、ベニバナボロギク(ベニバナボロギク属)には無い? 

※ この時点でナシケンモン幼虫bは終齢で、しかも体内寄生されていたことが後に判明します。 

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