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2013/02/11

オオフタオビドロバチの泥巣に寄生するヒメカツオブシムシ幼虫

2012年12月下旬

オオフタオビドロバチ?泥巣の発掘

雪山へ冬尺蛾を探しに登った際に、建物の軒下にドロバチの泥巣を見つけました。
そう言えば夏に少しだけオオフタオビドロバチの営巣を観察したんだっけ…と思い出し、泥巣を発掘してみることにしました。

オオフタオビドロバチ?泥巣@軒下

オオフタオビドロバチ?泥巣の発掘1

オオフタオビドロバチ?泥巣の発掘2

オオフタオビドロバチ?泥巣の発掘3:育房内に前蛹

オオフタオビドロバチ?泥巣の発掘4:終了後に巣の跡を採寸

エントツドロバチの初期巣を乗っ取った(再利用?)と思われる変則的な泥巣です。
マイナスドライバーで慎重に削っていくと、中央の育房からはオオフタオビドロバチと思われる前蛹が出てきました。
採集して飼育下で越冬させます。

オオフタオビドロバチ?前蛹(背面)@方眼紙

オオフタオビドロバチ?前蛹(側面)@方眼紙

オオフタオビドロバチ?前蛹(腹面)@方眼紙

ドロバチの巣から得られたヒメカツオブシムシ幼虫


興味深い本題はここからです。
隣の育房には羽化不全のキアシオナガトガリヒメバチ成虫の死骸が見つかりました。
このヒメバチは各種のドロバチに寄生することが知られています。
蛹から羽化する前に何らかの理由で死んでしまったようで、頭部が取れてしまっています。

キアシオナガトガリヒメバチ死骸。
よく見ると育房内部にヒメカツオブシムシ幼虫が潜む(写真中央)。
ヒメカツオブシムシ幼虫@方眼紙

ヒメカツオブシムシ幼虫(腹面+胸脚)@方眼紙



2012年12月下旬・室温19.5℃

更に、極寒の発掘現場では気づかなかったのですが、泥巣の育房や破片を全て持ち帰ると、見慣れない茶色の毛虫が出てきました。
尾端に長い毛束を引きずって歩きます。
方眼紙に乗せて採寸すると体長〜4.5mm(尾端の毛を含まず)。
歩脚は胸部の3対のみ(胸脚)なので、おそらく甲虫の幼虫だろうと見当をつけました。。
調べてみるとヒメカツオブシムシAttagenus japonicus)の幼虫と判明しました。
害虫駆除のサイトによると、本種は衣類や文化財、食品などに加害する悪名高い害虫らしい。

幼虫期間が非常に長く、越冬も幼虫で行う。野外ではスズメやハトなどの鳥の巣から発生している。
ドロバチの育房に潜んで貯食物や蜂の子(特に羽化直前のキアシオナガトガリヒメバチ)を食い荒らして成長したようです。
ヒメカツオブシムシの元気な幼虫1匹の他に、白っぽい死骸のような脱皮殻のようなものも数匹得られました。

ヒメカツオブシムシ幼虫(死骸?脱皮殻?)@方眼紙

ヒメカツオブシムシ幼虫(死骸?脱皮殻?)腹面胸脚@方眼紙


元気なヒメカツオブシムシ幼虫を密閉容器に隔離し、それまで食べていたと思われるキアシオナガトガリヒメバチの死骸および試しに鰹節も少し与えて飼育してみます。
成虫まで育ってくれると嬉しいなー♪


今回の事例のような場合、「ヒメカツオブシムシはオオフタオビドロバチの泥巣に寄生する」と表現して良いのでしょうか?
虫の死骸を食べるscavengerと言うのが正しいのかもしれません。
どのタイミングで泥巣に産卵したのか、育房内にどうやって侵入したのか興味があります。
しかし、いざ実際に野外で調べようとすると至難の業でしょう。


【参考】
平凡社『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』p126より
  • ヒメマルカツオブシムシは野外では鳥の巣内の羽毛や古いハチの巣内の昆虫の死骸などを食べている。
  • アカマダラカツオブシムシは野外では、マメコバチの巣筒やマイマイガの卵塊などに見られる。
  • シャーレで飼育していて、餌を切らしたまま忘れて3年ほど放置しておいても、自分の脱皮殻を食べながら生きながらえており、絶食や乾燥には強いものが多い。
 


【追記】
泥巣には生きたガザミグモ♂も潜んでいたのですが、写真などは割愛。
冬越しの飢餓状態で腹部がぺったんこでした。


【追記2】
兵藤有生、林 晃史『招かれざる虫: 食べものにつく害虫の科学推理ノート』によると、
(ヒメカツオブシムシの)幼虫は囓る力が強く、かつお節や煮干しなどの乾燥した動物質の中で生息する。さらに、絹・羊毛の主成分であるケラチンやフィブリンも消化してしまうので、衣類や蚕繭、動物剥製の害虫としても知られている。自然条件での発育所要期間は約10ヶ月。成虫の寿命は20日間ほど。♀は、その一生のあいだに40~80個粒を産卵する。幼虫で越冬して、成虫は年1回、5~6月ころに発生。幼虫は、乾燥や飢餓に著しく強く、成熟幼虫は絶食状態で半年から1年は生存することが知られている。(p114より引用)


【追記3】
林長閑『甲虫の生活―幼虫のくらしをさぐる』を読むと、カツオブシムシ類の幼虫の毛について興味深いことが書いてありました。
ヒメマルカツオブシムシやヒメカツオブシムシは、繊維に含まれるケラチンという物質を消化できることから、毛織物は勿論のこと筆やブラシまで被害をうける。
 ヒメマルカツオブシムシは野外では鳥の巣、古くなったハチの巣などの中に棲み、羽毛や虫の死骸を食べる。他のカツオブシムシとともに自然界の掃除屋である(中略)
 褐色の毛に包まれた幼虫は体長が約3ミリ、ずんぐり肥っている。体の後方の左右に筆先のような毛の束が並んでいる。敵が近づくとこの毛を扇のようにパッと開く。他の昆虫がこの毛にふれると、たちまち毛が抜けて昆虫の体にからみつくことが知られている。(中略)他のカツオブシムシの幼虫にも類似した毛があるので、同じような作用が考えられる。(p161−162より引用)

2012/12/13

イブキヒメギス♀のカニ道楽



2012年9月上旬

渓流の横でイブキヒメギス♀(? Eobiana japonica)がサワガニGeothelphusa dehaani)を食べていました。
さすがに自分で生きたカニを襲って捕食したのではなくて、死骸を見つけて食べているのでしょう。
首を傾げて美味そうにカニ味噌を食べています。
夢中で食べている間にカニの甲羅が表を向いてしまいました。
ヒメギスは困ったように死骸の周りを一周してから身繕い。
カニの甲羅の縁を咥えて運び、強引に裏返しました。
獲物を咥えて持ち運ぼうとするのは珍しいと思いました。
どこか安全な場所に運んでからゆっくり食べるつもりなのでしょうか。
食べにくいので顔を突っ込んだら結果的に(意図せず)運搬しているように見えただけかもしれません。

ヒトを含む脊椎動物の口器は上下に開閉するのに対して、昆虫の口器は左右に開閉します。

カニを食べるときはヒトと同じでやはり黙々と(無心で)食べるのかと思いきや、鳴かない♀でした。
上向きに緩くカーブしたサーベル状の産卵管をもちます。
ヒメギスにしては胸部側面の白線がありません。








2012/11/28

死んだウサギの骨髄に群がるムネアカオオアリ



2012年8月下旬

山裾の路上にニホンノウサギLepus brachyurus
)と思われる死骸が転がっていました。
車に轢かれた(輪禍)のかと思い近づいてみると、なぜか首無しの死骸でギョッとしました。
ミステリー(猟奇事件)ですね!
フクロウやトビなどの猛禽類に捕食されたのでしょうか?(※追記参照)
それにしても獲物(ご馳走)が路上に放置されているのは解せません。
どうやら血抜きされているようで、現場に血痕はありません。
つまり殺害現場から運ばれてきたか、あるいは死後に斬首されたと思われます。
猟師の落し物でしょうか?
それとも誰か頭骨コレクターが新鮮な死骸から断頭して持ち去ったのだろうか?


死後間も無いようで、真夏の炎天下でも亡骸は未だ腐臭を発していませんでした。
夏毛は褐色のはずですが、こんなに白っぽいのは不自然です。

アルビノなのかな?
私は未だ野生のニホンノウサギを雪山で冬毛の個体しか見たことがありません。

『日本動物大百科1:哺乳類I』p62によると、
(ニホンノウサギは)積雪量の多い山形県では9月下旬から耳や足の部分から白化を始め、11月下旬の積雪の始まるころまでに体全体が真っ白になる。


白兎ということで、飼いウサギの可能性は?※

参考→夏毛のニホンノウサギのロードキル


※ 帰化種アナウサギ(飼いウサギ)は家畜やペットが逃げ出したものが各地で野生化している。『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』p107より


宮崎学『森の写真動物記〈7〉草食獣 (森の写真動物記 7)』p8によると、
ノウサギは冬になると、毛がまっ白に生えかわるのが特徴ですが、なかには茶色のままのものもいます。中央アルプスには、この両方のタイプがみられます。これは中央アルプスには、むかしから雪が少なかったことを物語っています。雪が多ければ、白いほうが天敵にみつかりにくく有利ですが、雪が少なければ、逆にめだってしまいます。ですから、今後、地球温暖化がすすめば、茶色タイプのノウサギがふえていくかもしれません。

 

千葉彬司『北アルプス動物物語―山岳博物館長とウンコロジーと』という別の本によれば、
 北アルプスのノウサギは、冬になると毛色が茶褐色から白へ変わる。冬になっても白くならないものを、このあたりでは「ナベ」と言っているが、9割がたは白くなる。 白くなるのもいっぺんに白くなるのではなく、徐々に変わる。(p83より引用)
今回の現場は中央アルプスでも北アルプスなくて山形県の豪雪地帯ですが、ノウサギの毛色に2タイプあり得るという情報は参考になりました。

冷静に考え直してみると、この事件はノウサギの毛色の個体変異と自然淘汰というごく当たり前の生物現象なのかもしれませんね。






死骸があると真っ先に駆けつけるキンバエの仲間は左右の複眼が接した♂と離れた♀の両方が来ていました(種名不詳)。
蛆虫(ハエの幼虫)が未だ発生していないことも、新鮮な死骸であることを物語っています。
斬首された断面にムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー(働き蟻)が群がっています。
肉よりも首の骨の骨髄が気に入ったようです。
よほど栄養豊富なのでしょう。
ムネアカオオアリの胸部は元々赤いのですが、まるで死体から返り血を浴びたようで凄まじい光景です。
毛皮の上で身繕いしている蟻もいます。
仕事熱心なワーカーは骨髄の破片(肉片?)を大顎に咥えて巣に持ち帰り始めました。
キンバエが産卵しようと傷口(切断面)に近づくと追い払いました(獲物の占有行動)。
ムネアカオオアリ以外にも遥に小型で褐色の蟻も来ています(種名不詳)。

分解者(scavenger)の活動で死骸が土に還るまでの様子を微速度撮影したかったのですが、生憎この日はインターバル撮影の準備をしておらず断念。







※【追記】
水野仲彦『野鳥のくらし:卵から巣立ちまで』という名著を読んでいたら、フクロウの観察記録の中に「フクロウの巣中の食べ残しの犠牲者たち」と題した白黒写真が掲載されていました。(p192-193)
鳥やモグラ、ネズミと計7つの死骸が並べられていて、全て頭が無い点が私の興味を引きました。
雛に給餌するために巣へ運んでくる前に、親鳥♂が獲物の頭部を食べてしまうのだそうです。
これをヒントに今回の私のケースを推理してみました。
山林でウサギを狩ったフクロウがその場で頭部を食べたものの、重過ぎて巣まで運搬できず途中で落としてしまったのかもしれません。
(大型のクマネズミのサイズならば、フクロウは問題なく給餌したり丸呑みできるらしい)
実際に現場近くの山麓に広がる杉林でフクロウが鳴いているのを聞いたことがあります。




【追記2】
熊谷勝『カラー自然シリーズ66:ハヤブサ』という本を読んでいたら、ハヤブサ類の仕業である可能性も出てきました。
・♂親はさいしょに、するどいくちばしでえものの首をきりおとします。
ほかのワシタカ類が、するどい爪で締め殺すのに対して、ハヤブサのなかまは首を切断して、えものを殺します。(中略)ハヤブサは、えものを殺すと、さいしょにもぎとった首筋から、栄養のある内臓をひきだして食べます。 (p12より引用)
私のフィールドでハヤブサを見たことは未だありませんが、6年後からチゴハヤブサを観察し始めました。


【追記3】
テレビの動物番組(ガリベンガーV)でウサギの研究者による講義を見ていたら、ウサギの毛換わり(モルティング)について詳しく知ることが出来ました。
・ウサギの毛換わりは、体力の消耗が激しいので徐々に行う。 
・夏毛から冬毛に変わる時は、耳→足→大腿部→胸→背中→頭部の順に白くなる。 
・冬から春になると、逆の順番(頭部→背中→胸→大腿部→足→耳)で茶色の毛に生え変わる。
私が見たウサギの死骸で背中の毛だけ茶色で手足が白かった理由が、ようやく分かりました。(換毛の途中にしても季節が合わない気がします。)


【追記4】
高橋喜平『ノウサギの生態』によれば、
 越後の十日町地方でノウサギが夏毛から冬毛にかわる時季、すなわち体毛が白化しはじめる時季は10月である。(中略)10月初旬に毛の短い部分から白化しはじめ、白化が完了するのは11月下旬である。ちょうど、この白化が完了する頃に初雪をみるのである (p74より引用)
1958年と少し古い資料ですが、やはり8月下旬に白化が始まっている個体は異例と言わざるを得ません。


【追記5】
郷土出版社『置賜ふるさと大百科』によると、
置賜地方ではここ数年来、冬になっても白くならない個体のノウサギの捕獲例が多いと地元のハンターから聞くことがある。
 日照時間や気温などの変化に原因があるのではないかと考えられるが、もしかすると地球温暖化の影響なのかもしれない。(p49-50より引用)




2012/06/14

クロヤマアリ集団によるコアシダカグモ♀亜成体の運搬・解体ショー【微速度撮影】

2012年5月中旬

前編からのつづき。)
クロヤマアリが集団でコアシダカグモの一種(♀亜成体?)の死骸を解体しながら巣へ運んでいく様子を微速度撮影してみました。

まずは5倍速の早回し映像でご覧ください。






山道は地面に枯葉などの障害物が多くて、アリにとってみれば半端ない悪路です。
重い獲物をそのまま引きずるには摩擦抵抗が大き過ぎますし長い歩脚があちこちに引っかかって邪魔です。
クモの節間膜を噛み切ることで、獲物はどんどんバラバラ死体になります。
アリさんマークの引越し社♪

アリが獲物を解体するのは洞察による協力ではなく結果論だろうか?
寄って集って獲物の体をあちこち力一杯引っ張れば千切れるような気もします。
しかしクモの節間膜を噛み切っていますから、やはり意図的な解体か…。
もし、獲物に引っかかった障害物に気づいて工兵のようにこれを排除したり道を整地していれば大したものです。

【追記】
『いつか僕もアリの巣に』p60より
働きアリは大きな昆虫をばらばらにして巣に持ち帰る。これは外敵が多い野外での労働をなるべくスムーズに短縮させる知恵。一匹で解体できない場合は作業に必要な仲間を招集する。(リクルート行動)


同じ素材で10倍速の早回し映像も作製してみました。
せっかちな方はこちらをご覧ください。





同定のためアリを2匹採集しました。
素人目にはクロヤマアリFormica japonicaのワーカー♀と思うのですが、どうでしょう?

標本a側面

標本a腹背

標本a顔

標本b側面

標本b顔



2012/04/29

ハシボソガラスが蛙の死骸を拾い食い【野鳥】



2012年4月中旬

一羽のハシボソガラスCorvus corone)が地上で食べ物を探しています。
まず嘴で地面の枯れ草を掻き分け虫を探します。
次にトコトコ歩いて用水路まで来ると、水中から何かを拾い上げました。
しかし食べられる物ではなかったらしく、地面に置いて立ち去りました。
そのまま菜園に移動し、我が物顔で闊歩して物色。
マルチシートの隙間で遂にカエルを見つけ拾い食いしました(@2:12)。
映像を見る限り、カエルは暴れたりしないので死骸のようです。
冬眠に失敗して凍死したカエルかもしれません。
ハシボソガラスは獲物を咥えたまま少し歩くと飛び立ちました。

とにかくカラスは見ていて一挙手一投足が面白いですね。




2011/09/29

タヌキの死骸を土に還す者たち



自然の営みとはいえ、かなりグロい映像です。お食事前、お食事中の方は決して視聴されないことをお勧めします。


2011年9月上旬

道端でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の新鮮な死骸が横たわっていました。
おそらく夜に車にはねられ輪禍の犠牲となった(ロードキル)と思われます。
未だ腐臭はありません。
外性器もよく見えず、勉強不足の私にはタヌキの性別は分かりませんでした。
成獣の♀ならあるはずの乳首が見当たらないので、若い個体か♂なのかもしれません。
左前足の膝の辺りに外傷が認められますが、古傷なのかも。
早速、キンバエやニクバエの仲間が集まり始めました。
タヌキ死体の開いた口に一番よく集まるようです。


死体に集まる虫の種類やウジ虫の発育状態などから法医昆虫学者は被害者の死亡時刻を推定できるのだそうです。
人気TVドラマCSIに登場するグリッソム主任の得意とする捜査手法ですね。






千載一遇のチャンスなので、死骸が土に還るまでの過程を定点観察することに。
・分解にともなって、遺体を利用する生きものが次々と入れ替わっていく現象は「遷移」とよばれます。 (大園享司『生き物はどのように土にかえるのか: 動植物の死骸をめぐる分解の生物学』より引用) 
・分解者の活動が、温度に依存しているため、日平均気温を積算した積算温度が遺体の分解の速さとよく合致する。 (同書p44-45より)

出来る限り頻繁に通ってみたのですが、連日暑いこともあって生物分解の進行の早さに驚きました。
ハエが産んだ大量の卵がすぐに孵化し※、幼虫(蛆虫)が強力な消化液で腐った肉や内臓を一気に食べてくれます。
(※このハエの仲間は直接幼虫を産み付ける卵胎生だったかも?…うろ覚え。)
死体はぺしゃんこになり、文字通り骨と皮だけになりました。
毛皮から抜けた毛が四散しました。
ご馳走を食べて成長した蛆虫は周囲の土に潜って蛹になるようです。
私が観察したのはハエだけで、なぜか掃除屋シデムシの仲間は見つけられませんでした。


できれば綺麗に白骨化したタヌキの死体を採集して標本にするつもりでした。
残念ながらやがて誰かに死体を悪戯されるようになり(カラスが啄いて裏返した?)、最後は持ち去られてしまいました。
いつか誰にも邪魔されない所でひっそりと、仏画の九相図のように動物の死体が生物分解されていく一部始終を微速度撮影で記録してみるのが私のささやかな夢です。





2011/08/27

コジャノメの死骸を運ぶクロヤマアリ



2011年8月下旬

峠道の歩道で瀕死のヒメジャノメを一匹のアリが引きずって巣へ運んでいました。

【追記・訂正】
改めて見直すとこれはヒメジャノメではなくてコジャノメMycalesis francisca perdiccas)ですかね?


念のため撮影後に蟻を採集してみました。
素人目には普通種のクロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀だと思うのですがどうでしょう。



2011/03/29

ミールワームによるニワトリ骨のクリーニング実験



2007年4月中旬

鳥や動物の骨格標本を作るテクニックの一つにミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシ幼虫;Tenebrio molitor)を使う方法があるそうです。
骨に付着した肉片を隅々まできれいに食べて掃除してくれるらしい。
鶏の水炊きを食べた後の骨を材料に実験開始。
使った手羽元(ウィングスティック)の骨は肩から肘の上腕骨
(ちなみに手羽先は肘から先の部分です。)
予想に反して、与えた途端にミールワームが殺到するようなことはありませんでした。 


一晩置いたら骨の両端に群がって軟骨を齧っていました。
途中経過を調べるために取り出した骨を水洗いしてから写真に撮ります。
腐敗臭ではないが、骨髄から漂う血の匂いが少し生臭い。
専門サイトで読んだ通り、骨を水で濡らした方が食い付きが良いようです。
初めから濡らして与えれば時間短縮できたと思います。
まさに骨の髄までしゃぶり尽くします。


2011/03/25

ミミズの死骸を食べるオオヒラタシデムシ幼虫



2007年7月下旬

フナムシや三葉虫を連想する不思議な外見の生物です。
道端で干からびかけたミミズの死骸を齧っていました。
暑い日差しの下で腐臭に耐えながら接写しました。
ダンゴムシほど上手でないものの、触ると丸まって防御姿勢を取ります。
虫我像掲示板にて質問したところ、「ヒラタシデムシの仲間の幼虫であることは確実で、オオヒラタシデムシNecrophila japonica)の幼虫である可能性が高い」と教えてもらいました。
こうした死体掃除屋も自然界ではとても大切な存在です。



2011/03/19

アゲハチョウ死骸とアリ集団



2008年5月中旬

林道の湿った轍(わだち)に美しい変死体が二つ転がっていたので急遽、現場検証しました。 
第一被害者:カラスアゲハ♂ 。
第二被害者:初めクロアゲハかと誤認したが、オナガアゲハ♂と専門家から教示あり。 
共に蛹で越冬するので春型(第一化)でしょう。
吸水中に交通事故にでも遭ったのか野鳥に襲われたのか? 
アリ(種名不詳)の集団が早速群がってました。

2011/03/18

オオゾウムシの死骸に集まるアリ



2008年5月上旬

山道でオオゾウムシSipalinus gigas)の轢死体にアリ(種名不詳)が沢山たかっていました。
アリの名前も調べられるようになりたいのですが、未ださっぱり分かりません...。
オオゾウムシの体はものすごく堅く、誤って靴で踏んでもなかなか潰れないのですが、車に轢かれて無残な姿に。


2011/03/14

ニホンカモシカの白骨化死骸から吸汁するイチモンジチョウ



2008年6月下旬

山道で見つけたニホンカモシカCapricornis crispusの死骸。
なぜか右後脚一本だけが残り白骨化が進んでいます。
イチモンジチョウLimenitis camillaが二頭集まり、死肉から吸汁していました。
汚物に集まる「不潔な虫」でも蝿と違って、なぜか蝶は殺虫剤を向けられることはありません。
完全に見た目やイメージによる差別ですよねー。
天邪鬼の私はキンバエもモルフォ蝶に劣らず見た目が美しいと思ってしまいます。

ニホンカモシカの死骸に集まり交尾するクロボシヒラタシデムシ♀♂



2008年6月下旬

峠道の路肩に白骨化した野生動物の死骸を発見。
なぜか片足一本しか残っていません。(※追記参照)
若干の腐臭が漂います。
イノシシとは蹄が違いますし、この辺りで鹿(ニホンジカ)は見たことがないので、ニホンカモシカCapricornis crispus)だろうと推理しました。
残った体毛もカモシカっぽい。
蹄の形状から右足でしょうか(二本の蹄が左右で長さが異なり外側が長い※)。

※左右逆に推理していたのを訂正しました。
【参考書】『動物の足跡学入門:形とつき方から推理する』 熊谷さとし



解剖学の知識があれば、前脚なのか後脚なのかも分かるのでしょう。
カモシカの写真と見比べた結果、素人目には後脚のような気がします。 


有名な死体掃除屋であるクロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)が集まっていました。
地面が舗装されていなければ埋葬していたと思われます。
交尾中のペアもいました。
マウントしているものの、交尾器を結合してないので厳密には「交尾中」ではないかもしれません。




※ 【追記】 
死骸の後ろ足が一本しか見つからなかったという現場の状況がミステリアスで気になっていました。
宮崎学、小原真史『森の探偵―無人カメラがとらえた日本の自然』という本を読んでいたら、どうやら冬に死んだカモシカがスカベンジャー(自然界の死体処理班)に食べられる過程でこうなったのだろうと推理できました。

気温の低い冬は、死体が鮮度のいい状態が続くから、死体を食べる野鳥や動物たちは、ひとつの死体に一斉に集まってきます。(中略)落ちついて食べたい動物たちは皆肉片を持ち去ろうとしますが、自分より大きな死体を運ぶことはできないので、死体を前足とか後ろ足などのパーツにわけて骨つきのまま持ち去ったりするわけです。クマタカやイヌワシ、カケスやカラスなどもチャンスがあれば食べに来ますから、小さな嘴で突いた穴を起点に動物たちがパーツ分けをすることもあります。この繰り返しで現場から死体の痕跡がほとんどなくなるわけです。(中略)ということは、死体の状態から逆算して死んだ季節も分かるということでしょうか。はい、死体を処理する生物たちがはっきりと分かれる夏と冬は推理がしやすいですね。春や秋などの中間的な季節の死体も、そのときどきの気温や湿度などで処理に当たる生物の出番が微妙に変化しています。シーズン毎にちゃんと分解に適した生物たちが登場するので1年中死体処理は粛々と行なわれていきます。 (p152-153より引用)


2011/03/11

ヤマカガシの死骸に集まる蝿



2008年6月下旬

路上でヤマカガシRhabdophis tigrinus)が車に轢かれていました。
蛇の死骸に早速キンバエやニクバエの仲間が集まっていて五月蝿い。

ヒミズの路上死骸とキンバエ



2008年6月中旬

林縁の路上で動物の死骸を発見。
一見モグラに似てますが鼻が尖り前脚がシャベル状に発達していないことからヒミズUrotrichus talpoides)だと思います。
(もし間違っていたら御指摘下さい。ヒメヒミズは高山にしか分布しないらしい。)
半地中生活者で日光の当たる所には出てこないらしい(和名の由来は「日見ず」)。
ネズミと異なり外耳(耳介)もありません。 


死体掃除屋の軍団は金蝿(ミドリキンバエ?/キンバエ?)しか来ていませんでした。
産卵中なのかな? 
先日、山中で見つけた野ネズミの死骸にはヨツボシモンシデムシ成虫が下に潜り込んでいた(映像なし)のを思い出して、これも引っ繰り返してみました。
しかし腹側には何も見つかりません。
下が土ではなくて舗装されている点が影響しているのかもしれません。
目立った外傷は認められず。
「死んだヒミズは臭いが強く、死骸を食べる動物は少ないといわれる」らしいが、死臭も特に感じませんでした。
よほど新鮮な死体だったのだろうか。 


ただの猟奇趣味と誤解されると困るので、参考図書を上げておきます。
その気になれば路上の死体も自然観察の立派な材料です。
余裕があればいつか骨格標本作りにも挑戦してみたいものです。
野外に長期間放置して死骸がスカベンジャーの活動で土に帰る様子を微速度撮影(timelapse)で記録するのもやってみたい課題です。


【参考】 
『僕らが死体を拾うわけ:僕と僕らの博物誌』どうぶつ社・盛口満 
『死物学の観察ノート:身近な哺乳類のプロファイリング 』PHP新書・川口敏

2011/03/04

アオダイショウの死肉を食すオオヒラタシデムシ幼虫



2008年7月中旬

路上で車に轢かれたアオダイショウElaphe climacophoraの死骸を発見。
ニクバエの仲間(種名不詳)が一匹とオオヒラタシデムシNecrophila japonica)の幼虫が数匹集まっていました。

ヒメギス♂の死骸に群がるムネアカオオアリ集団



2008年7月中旬

ムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀が死んだヒメギス♂(Eobiana engelhardti subtropica)に群がっていました。
協同で巣に運ぶ訳でもなく、解体作業中のようでした。
あまり作業に加わらず、近くで身繕いしているだけの個体も居ます。
解体の様子を微速度撮影で収めたら面白かったのですが、夕刻で余裕がありませんでした。

2011/02/26

ヒミズ死して屍拾うものあり(後編):ヒミズ死骸にキイロスズメバチが飛来



2008年9月中旬

死んだヒミズUrotrichus talpoides)の肉を目当てにキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)も繰り返し飛来しました。
キンバエは一目散に逃げ出したのに、ヨツボシモンシデムシは平気で死骸の運搬作業を続けます。
キイロスズメバチにとって、甲虫は狩りの対象にならないのだろうか。
結局、キイロスズメバチは肉団子を作ることなく飛び去りました。
新鮮な死肉ならばスズメバチも巣に持ち帰るのだろうか。


【追記】
三枝聖『虫から死亡推定時刻はわかるのか?―法昆虫学の話』によると、
スズメバチのなかまが、死体の腐敗分解で生じたアルコールに誘引されることもあるので、死体発見現場で遭遇することもまれではない。 (p51より引用)

ヒミズ死して屍拾うものあり(中編):ヒミズ死骸とヨツボシモンシデムシ



2008年9月中旬

4時間後に戻って来たらヒミズUrotrichus talpoides)の死骸が地面を動いていたので一瞬ギョッとしました。
ヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)の仕業でした。
死骸の下に仰向けに潜り込み、歩くように足を動かすことで重い死骸を少しずつ運びます。
数匹居るが、協調して運搬しているのだろうか?
(運ぶ方向の意思統一は?)
交尾を始める♀♂ペア(@1:50〜)や赤いダニにまみれた個体などが見られました※。

※ モンシデムシ類に専門に寄生するダニが知られており、シデムシの競合相手であるハエの卵や蛆などを食べることで双利共生しているらしい。

腐臭がするので接写するときは息を止めました。
耳を澄ますと時々ヨツボシモンシデムシがキュウキュウと鳴く声が聞こえます。
ラストは、ヨツボシモンシデムシの群れによって運ばれて行く死骸を5倍速再生の早回し映像にしてみました。(@6:24〜)
いつか動物の死骸が地中に埋葬されるまでの一部始終を微速度撮影で長時間動画に撮ってみたいものです。
また、本種は幼虫が育つまで親が世話(育児)することで有名らしい。 


後編につづく


【追記】
動物の死体は実は栄養に富んだ餌源で、ハエの幼虫(ウジ)や別の甲虫など、競争者が多く、とくにハエが卵を産むと、あっという間にウジが死体を食いつくしてしまう。死体を埋めるのは、そういう競争者から死体を隠すためである。(丸山宗利『昆虫はすごい (光文社新書)』p132より 引用)



【追記2】
ヨツボシモンシデムシの生活史を驚異の精密画で克明に描いた絵本『しでむし』の解説編p35によると
シデムシの成虫や幼虫の体には、必ずといっていいほどオレンジ色のダニがくっついています。このダニは、シデムシの体液を吸っているわけではなく、シデムシをタクシーのような移動手段として利用しているのです。ダニの狙いは死体。かれらもここで繁殖します。とても足が速く、シデムシが死体にたどりつくと、さっさと下車します。生まれたダニの子どもたちは成虫だけでなく、巣をはなれる終齢幼虫にものっかっていきます。そのままさなぎのへやへも同行、新しく羽化したシデムシの成虫は、幼なじみのダニとまた旅をはじめます。



【追記3】
小松貴『絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)』によると、
 シデムシには大ざっぱに、ただ死肉に集まって場当たり的に食い散らかすだけのヒラタシデムシ類と、死体を地中に埋めてしまうモンシデムシ類に大別される。(中略)モンシデムシ類は死体を地下にあっという間に埋めてしまうため、伝染病を媒介するハエ類の発生を大幅に抑える役割も果たしている。(p61より引用)

ヒミズ死して屍拾うものあり(前編):ヒミズ死骸に群がるキンバエ



2008年9月中旬

林道に転がっていたヒミズUrotrichus talpoides)の死骸に早速キンバエ(種名不詳)が群がっていました。


中編につづく

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