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2018/04/16

互いに離れてトンネル天井からぶら下がるコウモリ小群の寝起き【暗視映像】(名前を教えて)



2017年9月中旬・午後16:52

コウモリが昼塒としているトンネル(山麓に埋設された水が流れるボックスカルバート@山形県)の探検を続けます。
入り口に比較的近い地点で、1頭ずつ離れて3頭cdeが天井からぶら下がっていました。

左の個体cは1本足でぶら下がり覚醒しています。
落ち着きのない様子からおそらく超音波を発して怪しい侵入者(私)を伺っていると思われますが、もちろん私の耳には鳴き声は聞こえません。
顔つきがなんとなくキクガシラコウモリっぽいですかね?(当てずっぽうで自信なし)
耳が大きいものの、ニホンウサギコウモリの耳とは明らかに違います。
赤外線の暗視モードでしばらく撮影しても飛び立たないので、隣の個体を観察することにします。

右の個体dは翼で顔を覆って寝ていました。
天井のつなぎ目に爪をかけて1本足でぶら下がっています。
私が正面にゆっくり回り込んだら気づいて覚醒しました。
この個体は耳が比較的小さくて丸いです。
ブルブル震えていますが、両足でぶら下がる体勢になりました。
下腹部に陰茎のような突起物が見えたので、♂かもしれません。

近くにもう一頭e居たのに、いつの間にか飛び去ってしまったようです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



大沢夕志、大沢啓子『身近で観察するコウモリの世界―町を飛ぶ不思議な野生動物 (子供の科学★サイエンスブックス)』によると、

コウモリといえば、洞窟にぶら下がっているものとみんな思っている。
でも、洞窟にすむといっても天井からぶら下がっているだけではない。種類によって好みの場所はいろいろだ。(中略)
少しずつ離れている方が好き(カグラコウモリ)

という訳で、私が見つけたコウモリの候補としてカグラコウモリの可能性もありそうです。
素人の私には形態的に見分けられないので、もし暗視映像で同定できる達人がいらっしゃいましたら、ぜひご教示して下さい。



【追記】
1頭だけ、あるいは数頭で寝るのが好きなコウモリもいる。バラバラにいる方が目立たないし、寄生虫にもとりつかれにくいなど、この方が有利な点もある。 (同書p54より引用)

2018/04/14

トンネル天井の隅から飛び立つコウモリ【暗視映像】



2017年9月中旬・午後17:30(日の入り時刻は午後17:43)

水が流れるトンネル(山麓に埋設されたボックスカルバート@山形県)の奥にコウモリの昼塒がありました。
トンネルは通り抜けが可能なのですけど、真っ暗なトンネルの中央部でコロニー(群塊)を見つけたので(動画公開予定)、一度引き返してトンネルの反対側から入洞し直しました。

入口近くで一頭が2本の後ろ足でぶら下がっていました。
この個体iは単独で天井と壁面の角(隅っこ)に居ました。
壁にしがみついているようにも見えます。
トンネルの断面は四角形(長方形)ではなく、角が面取りされ八角形になっているのです。

コウモリは背中しか見えず、顔を拝む前に警戒して飛び去ってしまいました。
したがって種類を見分けられませんでした。
耳が長くないので、ニホンウサギコウモリは除外できそうです。

後半は飛び立つ瞬間を1/10倍速のスローモーションでリプレイ。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2018/04/12

昼塒のトンネル天井で身繕いするコウモリ【暗視映像】(名前を教えて)



2017年9月中旬・午後17:46(日の入り時刻は午後17:43)

水が流れるトンネル(山麓に埋設されたボックスカルバート@山形県)を更に奥へ進むと、天井でバラバラに(少し間隔を開けて)ぶら下がっていたコウモリが次々に飛び立ちました。
ところが一頭だけ逃げずに身繕いしている個体wがいます。
こちらに背を向け、片足(右後脚)で天井からぶら下がっていました。
私が赤外線の暗視動画を撮りながら回り込んでも、なぜか全く怖がりません。
尾膜や翼を一心不乱に舐めて身だしなみを整えているようです(甘噛みしてる?)

なにしろ生きた野生コウモリを観察するのが初めての私は、何がどうなっているのかよく分からずに色々と想像しました。
・もしかすると、しがみついている幼獣を母親が舐めているのですかね?
・左の後脚を怪我していて、舐めて治そうとしているのかな?

後半にようやく顔をしっかり拝めたものの、私には何という種類のコウモリか分かりませんでした。
どなたか見分けられる方がいらっしゃいましたら、是非教えて下さい。
この個体wの性別も不明です。(陰茎は確認できず)

そろそろ日没後の採餌活動時刻が始まるはずですが、最後まで逃げなかったので飛び立つ瞬間の映像も撮れませんでした。
野生のコウモリに手で触れて強引に飛び立たせる訳にもいきません。(コウモリに触れるのは法律で禁じられていますし、病原菌に感染する恐れもあります)
この個体wと別れ、私はトンネルの探検を続けます。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2018/04/10

ユビナガコウモリ♂?:昼塒で寝起きからの飛び立ち【暗視映像】



2017年9月中旬・午後17:39(日の入り時刻は午後17:43)@山形県

ボックスカルバートのトンネルを更に探検すると、洞内を飛び回っている個体が映像の冒頭で画面を横切ります。
低い天井(高さ約170cm)にもう一頭見つけました。
この個体nも単独で天井から片足(右足)でぶら下がっています。
そっと近づくと私に気づいて顔がこちらを向きました。

横顔は、つぶらな瞳が可愛らしい。
耳の形など顔の特徴がなんとなくユビナガコウモリMiniopterus fuliginosus)かな?と思うものの、素人の当てずっぽうで自信がありません。
もし間違っていたらご指摘願います。

折り畳んだ翼から突き出て見えるのは前肢の第一指(親指)です。
なにしろコウモリの観察は初めてなので、こういう基本的なことから勉強です。


長い指の骨は、うちわの骨のような役割をして翼の膜を支えている。ただし、親指だけは翼の前に突き出している。 (『身近で観察するコウモリの世界―町を飛ぶ不思議な野生動物 (子供の科学★サイエンスブックス)』 p26より引用)
ユビナガコウモリの名前の由来は親指ではなく、前肢の第3指(中指)の第2指骨が著しく長いそうです。(この映像で確認できるのか?)

赤外線の暗視動画を撮りながら私がゆっくりコウモリの腹面に回り込むと、腹部に細長い突起物が見えました。
これは♂の陰茎なのでしょう。
『コウモリ識別ハンドブック 改訂版』によると、雌雄の見分け方は

♂の陰茎(ペニス)には陰茎骨があり、常に体外に出ているので幼獣や亜成獣であっても季節を問わず、雌雄の判別は容易である。(p9より引用)

最後は翼を広げて飛び立つ瞬間を1/10倍速のスローモーションでリプレイ。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2018/04/08

昼塒で寝ていたニホンウサギコウモリ?の覚醒と飛び立ち【暗視映像】



2017年9月中旬・午後16:50(日の入り時刻は午後17:43)

山麓に埋設されたボックスカルバートの長いトンネルを探検してみると(†)、野生コウモリの昼塒を見つけました。(@山形県)
コウモリの鳴き声はヒトには聞こえない超音波のはずなのに、トンネルの奥から甲高い鳴き声(ヒトの可聴域)が反響しています。
トンネルの入り口から奥に進むと、初めはコウモリが一匹ずつ天井や壁面からぶら下がっていました。

この個体bは耳が三角形で大きく、ウサギのようです。
一番分かりやすい特徴を持っていたのですが、ニホンウサギコウモリPlecotus sacrimontis)ですかね?
もし間違っていたらご指摘願います。


ニホンウサギコウモリは、小さな声の超音波を使っても聞こえるように大きな耳を持っている。獲物が発する小さな音を直接聞いて獲物の居場所を知ることもできる。   (『身近で観察するコウモリの世界:町を飛ぶ不思議な野生動物 』p72より引用)


コンクリート壁面の割れ目に右後足だけで下向きにぶら下がっていました。
私が近づいた時にはすでに覚醒していました。
顔をよく撮ろうとしたら警戒され、飛んで逃げて行きました。
後半は飛び立つシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ(@0:26〜)。

『コウモリ識別ハンドブック』によればニホンウサギコウモリの「幼獣は成獣に比べて体色が黒っぽい」らしいのですが、残念ながら暗視映像では体色の情報が得られません。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

† コウモリの繁殖期(子育て)が終わったと思われる時期(秋)を見計らい、離塒前の時刻(日没前)に入洞しました。
私もいきなり野生コウモリのねぐらに突入するほど無神経(無鉄砲)ではありません。
昼間に真っ暗な洞内で寝ているコウモリに対する光の影響を最小限に留めるために、懐中電灯も赤色LEDを使い、しかも手のひらで隠しながら弱い赤色光で進路を照らすようにしました。
赤外線の暗視カメラで動画撮影しながらトンネル(幅260cm、高さ170cm)の奥へゆっくり進みます。
寝ているコウモリを見つけたら赤色マグライトを消灯して暗視カメラのモニターのみを頼りにそっと近づくようにしました。
トンネルの底には水が流れていますがこの時期は水深が浅く、長靴のくるぶしにも達しませんでした。


コウモリの調査のために已む無く洞窟に入る場合は、時間は「朝一番に入るのがおすすめ」らしい。
塒入りした直後の時間帯がコウモリへの影響が最も少ないのでしょう。
(『身近で観察するコウモリの世界:町を飛ぶ不思議な野生動物 (子供の科学★サイエンスブックス)』より)


2018/03/29

ハクセキレイ♀♂の群れがケヤキ並木に塒入り(野鳥)



2017年8月上旬・午後18:50〜19:12 (日の入り時刻は18:49)


▼前回の記事
ハクセキレイ♀♂繁殖期後の集団塒(電柱とケヤキ並木)(野鳥)

15日ぶりの定点観察です。
ハクセキレイ♂♀(Motacilla alba lugens)の塒入りの仕方に細かい点で今までとは違いがありました。
ねぐらの位置は厳密に決まっている訳ではなく、集団塒はおおよその場所が決まっているだけで臨機応変に(気紛れに?)日々少しずつ移動・分散していることが分かってきました。
ここはハクセキレイにとって「安定な塒」とは呼べないのかもしれません。

日の入り時刻の直後、電柱Neの側面のボルトに一羽のハクセキレイ(おそらく♂)が止まっていました。
就塒前集合で一番乗りした個体です。
この電柱は前回の観察ではに使われた集団塒の一つでしたが、なぜか今回はあまりハクセキレイが集まらなくなりました。
大通り沿いの電柱や電線に集まったのは就塒前集合のみで、日が暮れると最終的には1羽も居なくなり、全員が葉の茂ったケヤキ並木の街路樹に塒入りしました。

群れの一部が就塒前集合として使っている場所も電柱/電線以外で新たに見つかりました。
大通りの面した某店舗の緑色の屋根に一度集まってから、その下のケヤキの樹冠に次々と飛び込んでいました。
歩道に植栽されたケヤキ並木は、電線に枝葉が触れないように定期的に剪定されていて、電線よりも少し低い位置にあります。
美しい夕焼け空を背景に塒入りしたハクセキレイをよく見ると、♂だけでなく♀も一緒に居ました。
日が暮れても大通り沿いの外灯に照らされて充分に明るく、暗視カメラではない普通のカメラでも動画撮影しやすくて助かりました。
電柱Neの横のケヤキにも少数のハクセキレイが塒入りしています。
車道を飛んで横断し、2つのケヤキ塒を移動する個体も居ました。

辺りが暗くなってからも水銀灯で照らされた駐車場で小走りに地上採食する個体が数羽いました。
なかなか塒に帰りたくなくて夜遊びしているやんちゃな(?)個体に注目してずっと見ていると、やがて地上から飛び上がって近くの電柱Neやケヤキの樹冠に塒入りする瞬間を見届けることができました。

ちなみに、背後から絶え間なく聞こえるやかましい鳴き声はムクドリのものです。(近くでムクドリの大群も塒入り)
ハクセキレイはムクドリに圧倒されたのか、鋭くたまにしか鳴きませんでした。
後半は、室外機のファンの騒音も耳障りですね。
こうした都市部の喧騒や街灯の強い照明をものともせず、ハクセキレイは毎晩この辺りで眠るのです。
むしろ、ヒトの生活圏に近いところの方が天敵に対して安全だと判断しているのでしょう。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
(実際はもっと暗いのですが、ハクセキレイの雌雄♀♂を見分けるために彩度を上げました)

空に半月(月齢8.7)が見えました。
撮影の合間に測定した気温の変化は、
午後18:43で27.5℃、湿度54%。
午後18:52で27.5℃、湿度54%。
午後19:09で26.9℃、湿度56%。



つづく→



2018/03/11

高圧線鉄塔に塒入りするムクドリの大群(野鳥)



2017年8月上旬・午後18:52〜19:48 (日の入り時刻は18:49)

ムクドリSturnus cineraceus)の繁殖期が一段落したのでしょう。
昨年もねぐらとして使われた同じ高圧線鉄塔#30に夕方になると大群で集団就塒するようになりました。※

日没直後に通りかかると、高圧線鉄塔#30だけでなく、すぐ横の交差点の電柱および電線にも多数のムクドリが鈴なりに並んで鳴き騒いでいました。
最大の集団塒である高圧線鉄塔#30には既に多数の個体が集結していました。
場所取りのために騒々しく鳴き交わしながら、一部の個体は鉄骨の周囲で未だ元気にホバリング(停空飛翔)しています。
大通りでは水銀灯が既に点灯しています。

30分間ほど経って完全に暗くなってから現場を再訪すると、ムクドリの飛翔活動は収まり落ち着いていました。
塒内の場所取りを終えたムクドリは相変わらず高圧線鉄塔#30とそれに隣接する電柱、電線に分散したままでした。
高圧線鉄塔#30以外は就塒前集合なのかと思いきや、違いました。(この一帯で多少分散したまま夜を過ごすようです)
肉眼では夜空を背景にしてもムクドリのシルエットが見えるのですが、このカメラに暗視機能は無いので夜空の月(月齢8.7)しか映像に写っていません。
それでも「ムクドリは暗くなっても寝静まることはなく相変わらずやかましく鳴き騒いでいた」、という状況を記録(録音)するために撮影しました。
たとえ暗視可能な赤外線カメラを持参していたとしても、高所過ぎてカメラの赤外線が全く届かず、何も写らなかったでしょう。
月明かりや星明りでも動画が撮れる超高感度ビデオカメラや野鳥の体温を可視化するサーモグラフィー・カメラが欲しいものです。(高嶺の花)

前年の観察とは異なり、この日のムクドリが近くのケヤキ並木には集団就塒しなかったのが少し不思議です。
しかし、少し離れたヒマラヤスギの並木からは夜ムクドリ小群の鳴き声が聞こえたので(暗くて姿は見えず)、一部はここにも塒入りしたようです。
ムクドリの集団就塒は細かい点になると決して本に書いてあるほど単純ではない、とつくづく痛感しました。

ちなみに、この翌日に東北南部の梅雨明け宣言が出されました。
(平年より8日遅く、前年より4日遅い)

※ 塒の使用状況をまめにチェックしていた訳ではありませんが、10日前(7月下旬)の夜にも通りかかった際に、この鉄塔#30からムクドリのすさまじい鳴き声を耳にしています。


つづく→


2018/03/05

オオハラナガツチバチ♀とキンケハラナガツチバチ♀の塒入り



2016年10月中旬・午後16:56(日の入りは午後17:04)

日没間際の薄暮に川沿いの農道を散歩。
道端に咲いたセイタカアワダチソウの群落でツチバチの仲間♀が茎に静止していました。
隣り合う株の茎に大小2匹の♀がしがみついていました。
かなり薄暗い上に逆光になっていて、ピントがなかなか合いません。

同定のため撮影後に採集しようと背の高い茎を手前に引き寄せても、ツチバチ♀は逃げたりしませんでした。
帰ってから調べてみると、1匹はキンケハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris prismatica)で、2匹目は大型のオオハラナガツチバチ♀(Megacampsomeris grossa matsumurai)でした。

もしこれが1匹だけだったら、地中から羽化してきたばかりの個体なのか?、あるいは虫カビに感染して弱っていたのか?という可能性も考えたでしょう。
しかし複数個体だったので、おそらくこのまま一夜を過ごすつもりのねぐらなのでしょう。
近縁種(同属)のツチバチ♀は似たような場所に塒入りする習性があるのかもしれません。
昼間は単独で活動する狩蜂ですが、夕方になると集団就塒するのだとしたら興味深いことです。
辺りをもっと重点的に探し回れば、寝ているツチバチ♀をもっと見つけられたかな?
夕方に吸蜜のために訪花したセイタカアワダチソウの群落でそのまま寝てしまっただけで、今回2匹が集まっているように見えたのは偶然かもしれません。

蜂の寝相といえば大顎で植物の茎を噛んだ体勢が知られています。

▼関連記事
大顎で植物を咥えた姿勢で眠るサトジガバチ♀
残念ながら今回は寝相をしっかり確認できていません。
蜂の口元を確認しようと私が下手に茂みに踏み込むと逃げられそうな気がしたので、とにかく採集を優先しました。
ちなみに、この日の日の入り時刻は17:04。


オオハラナガツチバチ♀@セイタカアワダチソウ茎+就塒
キンケハラナガツチバチ♀@セイタカアワダチソウ茎+就塒

以下は標本の写真。(後で撮ったら貼ります)
死骸から目に見えて虫カビが発生することはありませんでした。
つまり、虫カビによる斃死の可能性は無いと考えています。


2018/01/11

夜ヤナギハナガサの花蜜を吸うミツモンキンウワバ【蛾:暗視動画】



2017年8月下旬・午後18:42〜18:47(日の入り時刻は午後18:17)

日没後、街中の電柱の直下に咲いたヤナギハナガサ(別名サンジャクバーベナ)の小群落で訪花している夜蛾がいました。

初めは驚かせないように赤外線の暗視動画で撮影します。
一見するとホバリング(停空飛翔)しているようですが、吸蜜中は脚を花にかけたまま半開きの翅を高速で羽ばたいています。
気温の下がる夜にすぐ飛び立てるように、体温を上げるためのアイドリング(暖機運転)なのでしょう。
夜風が吹いてヤナギハナガサの集散花序が激しく揺れても、蛾は花にしがみついて吸蜜を続けます。

次にハンディカムの補助照明(白色LED)を点灯しました。
蛾は眩しい白色光に驚いて逃げたり逆に誘引されたり(走光性)もせずに、ヤナギハナガサの花蜜に夢中でした。

同定のためにストロボを焚いて写真に撮ると、イチジクキンウワバと迷いましたがミツモンキンウワバCtenoplusia agnata)と判明。



2018/01/10

ハクセキレイ♀♂繁殖期後の集団塒(電柱とケヤキ並木)(野鳥)



2017年7月中旬・午後18:57〜20:09(日の入り時刻は午後19:01)

ここ数年、定点観察を続けているハクセキレイMotacilla alba lugens)の集団塒があるケヤキ並木を久しぶり(約4ヶ月ぶり)に見に来ました。
繁殖期が終わったらハクセキレイは夏の集団塒から居なくなるのかどうか(解散する?)、宿題が残っているのです。


▼関連記事のまとめ
ハクセキレイ(野鳥)の集団塒:定点観察2017年
ハクセキレイ(野鳥)の集団塒:定点観察2016年

冒頭に登場するのは、大通り沿いの某店舗の屋上に止まっていたハクセキレイ♂です。
塒入りが始まる前に、辺りによく響く声で鳴いていました。
屋根から飛んで大通り沿いの電線に止まり直しました。(就塒前集合場所に一番乗りの個体)
このように日没が近くなると各自が少しずつ集団塒に合流するのです。


この日の観察でまず意外だったのは、集団塒の位置がなぜか大通りに沿って少しだけ東に移動していたことです。
日没時刻の直前にハクセキレイが集まり始めた電柱は、従来の集団塒の一つである電柱Nの一つ東隣りの電柱Neでした。
カメラをズームインしてみると、背中の黒い♂だけでなく背中が灰色の♀も集まっていました。
繁殖期は♂しかここに塒入りしなかったので(♀は夜も巣に留まり抱卵・抱雛するらしい)、雌雄が集団塒に同居している点も大きな違いです。(性比の偏りが回復した)
やはり繁殖期が終わったとみなして良いでしょう。
恥ずかしながら私は未だハクセキレイの成鳥♀と若鳥の区別があやふやなので、灰色の個体は巣立ったばかりの幼鳥や若鳥である可能性もあります。

(幼鳥は全体にぼやけた灰色で、胸の黒斑が小さいらしい。)

これまでの観察から、「この群れは就塒前集合で、どこか近くにある集団塒にやがて移動するのだろう」と予想しました。
この予測は一部外れることになります。
昨年のハクセキレイは大通り沿いの赤い三角屋根に就塒前集合していたのですけど、今回そこには一羽も集まりませんでした。

しばらくすると、電柱Neのほぼ真下(東側)に植栽されたケヤキ街路樹の茂みに移動を始めました。
多数の個体が一気に飛び込む集団就塒ではなく、五月雨式に飛び込んでいます。
ケヤキの葉が生い茂っているため、外灯に煌々と照らされていてもハクセキレイが樹幹のどこに隠れたのか分からなくなってしまいました。(個体数をカウントできず)
しかし群れの一部の個体は夜になっても電柱Neの中段付近に居残っていました。(少なくとも17羽。なぜか電柱の最上部には不在 少ない。)
電柱を登るための太いボルトに止まっている個体も居ます。
昨年の観察では、春になってケヤキの葉が茂ると電柱よりもケヤキの樹冠に塒入りするようになりました。
樹幹の方が葉に身を隠しやすくて安心なのだろうと当時はすんなり理解したのですが、今回の塒入りでケヤキ並木よりも電柱を選択した個体の存在は謎です。

ケヤキ樹幹の塒が満員状態とは思えませんし、たとえそうであっても、現場はケヤキの並木道なので、他にもケヤキの木は等間隔で立っています。
真夏の寝苦しい夜は、ケヤキ樹冠よりも電柱の塒の方が風通しが良くて涼しかったりするのでしょうか?

ちなみに昨年のハクセキレイが塒入りしていたケヤキ並木は、通りを挟んで反対側の街路樹でした。

私が近くで撮影しているからハクセキレイは警戒してケヤキ樹幹に全個体が塒入りしなかったのだろうか?と考えたりもしました。

しかし、30分ほど現場を離れ戻って来ても、一部のハクセキレイは電柱に居残ったままでした。
日がすっかり沈んで空が真っ暗になると、鳴き声も聞こえなくなり辺りは静かになりました。
電柱Neの塒で未だ起きている個体は尾羽を上下に動かしています。
尾羽も動かさずじっとしている個体は寝静まっているのでしょう。

素人考えでは「電柱の中途半端な高さ(中段付近)よりも最上部で夜を過ごす方が天敵から襲われるリスクが低いのでは?」と心配になりますが、ハクセキレイなりの事情や理由が何かあるのでしょう。

この群れがいつ集団塒を少し東に移動したのか、そして理由も気になります。
何者か(捕食者やヒト)に追い立てられ、危険を感じたのでしょうか?
今季は他の撮影で忙しくて、定点観察の空白期間が生じてしまいました。
昨年の定点観察で、ハクセキレイの塒入りについては大体分かったつもりでいました。(本で得た知識をなぞっただけ)
ところが今回は細かい点で就塒行動に幾つか新展開がありました。
野鳥の生態は本に書いてあるよりも奥が深く一筋縄では掴めない(混沌としている?)、と改めて実感しました。

撮影の合間に測定した気温の変化は、
午後19:17で28.4℃、湿度61%。
午後19:27で28.2℃、湿度64%。
午後20:11で27.9℃、湿度63%。


撮影を終えて帰宅すると、夜からやや強い雨が降り出しました。
夏は気温が高いので、ハクセキレイは夜に雨が降って濡れても気にせず朝まで耐え忍ぶのでしょう。
もしも雨宿りが可能な場所に集団塒を変えるのなら、それはそれで面白い行動です。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもっと暗いのですが、ハクセキレイの雌雄を見分けるために彩度を上げました)



つづく→15日後の定点観察

20:08 pm
20:10 pm

2018/01/05

夜道でアブラゼミ♂を拾う



2017年8月中旬・午後19:36

夜の歩道でアブラゼミGraptopsaltria nigrofuscata)を2匹見つけました。
右側の一匹は死んで仰向けに転がっています。
発音器官の腹弁が見えるので、♂ですね。
寿命なのでしょう。

左側の個体を手掴みで拾い上げると、ビービー、ジージー♪と鳴き騒ぎ、激しく羽ばたいて暴れました。
このままだと歩行者や自転車に踏み潰されそうなので、近くの街路樹の幹に移してやろうとしました。

ところがアブラゼミ♂はすぐに飛び立ち、また歩道に落下してしまいました。


セミの雑学をまとめたインターネット記事(執筆・監修:Mr. Fox)によると、

死んだセミの簡単な見分け方: セミが道端で死んでいると思い、近づいたらいきなり暴れだして驚いた経験は誰もがお持ちでしょう。いわゆる「セミ爆弾」と言われるこのトラップですが、実は見分け方があります。ひっくり返っているセミの脚が閉じている場合は死んでいる確率が高いので安全で、脚が開いている場合は生きている確率が高く、近寄ると急に暴れることがあるので要注意です。

怪しい出典ですけど、確かに今回路上でひっくり返って死んでいた右側の個体は、脚を閉じていました。


2017/12/14

イチョウ並木に塒入りするハクセキレイの群れ(野鳥)



2017年7月下旬・午後19:03〜19:12 (日の入り時刻は18:57)

最近新たにハクセキレイMotacilla alba lugens)の集団塒を見つけました。
市街地の大通りに沿って植栽されたイチョウの街路樹です。
この大通りはすぐ近く(〜150m)で川を横切るので、昼間はその川沿いや市街地で暮らしているハクセキレイが夕方になるとこのねぐらに集まって来るのでしょう。
塒入りの様子を見に行くと、一番ピークであるはずの日没直前には間に合いませんでした。

青々と生い茂ったイチョウの枝葉に飛び込む前に、その手前でホバリング(停空飛翔)する個体がいます。
画質が荒いのは薄暗いせいです。
左手にある高い建物の屋上とイチョウ並木を興奮したように行ったり来たり飛んでいます。
近くで見ている私の存在を警戒しているのかな?
イチョウの真上の電線にも1羽止まっていますし、就塒前集合の名残りなのでしょう。
塒入りした後もしばらくの間は、イチョウの枝から枝へ元気に飛び回ります。

注目すべき点は、集団塒には♂(背中が黒色)も♀(背中が灰色)も居ることです。
おそらく繁殖期を終えた♀が塒に合流しているのでしょう。
これまで私が観察してきた別の集団塒では、繁殖期の間はハクセキレイの♂しか居ませんでした。

大通りを流れる車のテールランプやヘッドライトが光り、商店街のネオンサインが輝いています。
こんなに人工的な都市環境でもハクセキレイは平気で夜を過ごすようです。
むしろ天敵が少なくて安心するのかもしれません。
忙しい現代人は野鳥の動向に無関心です。
ちなみに月齢は28.0で、月は既に沈んだ後でした。

『まるごと発見!校庭の木・野山の木〈2〉イチョウの絵本』によれば、

国土交通省の調査(道路緑化樹木の統計)では、全国に街路樹などとしてもっとも多いおよそ60万本が植えられている。(p39より引用)



※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもっと薄暗い)
ハクセキレイのプライバシーを守るために、一部の背景にモザイク処理をしました。



つづく→1ヶ月後



車道の反対側からストロボを焚いたらハクセキレイは警戒し、群れの一部は塒から(隣のイチョウの木へ?)移動した。

2017/12/09

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【後編:10倍速映像:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:12〜5:25 (日の出時刻は午前4:49)

▼前回の記事
朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【中編:野鳥】

高圧線鉄塔#30および下の電柱、電線で一夜を過ごしたムクドリSturnus cineraceus)の大群が、夜明けとともに集団塒内で上下に移動したり、少しずつ塒から飛び去る様子を、10倍速の早回し映像に加工してみました。

黒い点々のように見えるムクドリの塒内分布や時間変化に何か法則やパターンが見出せたら面白いですね。

鉄塔の背景となる西の空を流れる雲の動きも味わい深いです。


動画編集した結果、無音となり、せっかくの音声情報(ムクドリの鳴き声)が失われてしまいました。

シリーズ完。



【おまけの映像】
早回し速度を少し落とした6倍速映像をブログ限定で公開します。
このバージョンには、ムクドリの鳴き声などの音声も含まれています。




2017/12/08

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【中編:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:50〜5:27(日の出時刻は午前4:49)
▼前回の記事
朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【前編:野鳥】

長撮りした定点動画の、日の出直後からのつづきになります。
ムクドリSturnus cineraceus)の群れが集団塒内で木の葉落としのように下へ下へと移動しているのは、左右に走る高圧線の一番上に止まっているハシボソガラスがムクドリを鉄塔から追い出そうと圧力をかけているのでしょうか?
画面には写っていませんが、鉄塔の左側の高圧線にもカラスが止まっていました。
ところが、しばらくするとカラスは高圧線から飛び去りました。
カラスが居なくなってもムクドリの群れの全体的な動きに変化は無かった(鉄塔の上部に戻らなかった)ので、カラスの存在は別に気にしていなかったようです。

画面右下に少しだけ見えているケヤキ並木の樹冠に、相変わらず群れの一部が次々に飛び込んで行きます。
もしかすると、葉の茂った枝で毛虫を捕食するなどの採餌活動があるのかもしれませんが、未確認です。
ケヤキ並木に集合していた群れが何かに驚いて一斉に飛び立ち、再びすぐ上の電線や鉄塔に戻りました。(@6:01)
ほとぼりが冷めると、また群れの一部が続々とケヤキ並木の樹冠に飛び込み始めました。
早朝から集団塒内で上下に飛び回る移動は、本格的な離塒に備えて各自が朝の準備運動をしているのかもしれません。
休みなくひたすら鳴き続けるムクドリの大群は我々の耳にはただうるさいだけですけど、例えば夜の間にはぐれてしまった家族群が互いの鳴き声を個体認識して、家族群を単位として少しずつ再集合している可能性も考えられます。

(もちろん常識的に考えれば、繁殖期が終われば家族は解散してしまう気がします。)

鉄塔#30から右に伸びた一番上の高圧線に止まっていた2羽のハシボソガラスが急に飛び立ち、鳴きながら鉄塔の最上部に止まり直しました。(@6:53)
これに驚いたムクドリの群れが鉄塔の天辺から一斉に飛び立って少し下の鉄骨に避難しました。
そのハシボソガラスもお山の大将のように鉄塔の頂上部を占拠する訳でもなく、すぐに飛び去ってしまいました。
いかにも性格の悪いカラスらしい行動(ムクドリに対するただの嫌がらせ)ですね。
ムクドリのことはあまり眼中になくて、2羽のカラス同士で追いかけっこのように遊んでいるだけのような印象も受けました。

ムクドリが集団塒から出て行く際は、夕方に見られるような派手な(誇示的な)群飛をやりませんでした。

▼関連記事 
日没と同時に就塒前群飛を始めるムクドリ(野鳥)の大群 
ムクドリ(野鳥)大群の飛翔乱舞
小群あるいは単独で四方に散って行くだけで、まとまりがありません。
日中の活動域は各所に広く分散しているのでしょう。
鶴の一声のようにリーダーが合図して一斉に離塒するのでも無さそうです。



菅原光二・丸武志『カラー版自然と科学:ムクドリ』によると、
 夜があけると、ムクドリたちはす早くねぐらをとびたちます。大群となるねぐらでも、ムクドリたちはほとんどいっせいにといえるほど短時間に、いくつもの群れにわかれ、つぎつぎにねぐらからでていきます。 
 ムクドリは、行動範囲がとてもひろく、ねぐらから40キロぐらいまででかけるものがいます。(中略) 
 ねぐらの場所は、えさ場の変化や落葉、はんしょく場所などにえいきょうされて季節とともにかわります。 (p34-35より引用)


水野仲彦『野鳥のくらし―卵から巣立ちまで』でムクドリの項目を読むと、

 朝のねぐら離れも見事で、羽音と鳴き声でゴーッという音を立てて黒煙が吹き出るように次々と舞い上がり、採食地へと飛び去って行く。(p16より引用)
先人の観察記録ではどれも、ムクドリの離塒は一斉に飛び立つと書いてあり、私の観察結果とは違います。
おそらく私が見ている集団塒は、規模が小さい(個体数が少ない)のでしょう。



野鳥が群れで塒を取る理由の一つとして、塒内で互いに餌場の情報交換をするために集まるのだという説があります。

翌朝に採餌場へ飛んで行く際に、餌の豊富な採餌場を知っている個体について行くというのです。
しかし今回、五月雨式の離塒を眺めていると、そんな「情報センター仮説」がムクドリに成り立つとはとても思えませんでした。
仮説を否定するにしろ、科学的にきっちり実証するのが困難だというのも実感できました。
ムクドリの大群を一網打尽にして多数の個体にGPSや電波発信機を装着して行動を逐一追跡すれば、はっきりするでしょう。


【参考図書】
上田恵介『鳥はなぜ集まる? 群れの行動生態学』 第2章:ねぐらはエサの情報センター


遂にムクドリが一斉に飛び立ちました。(@15:12)
その直前に響いた空気銃のような乾いた発砲音が引き金になったようです。
誰か近所のヒトが喧しいムクドリを追い払おうとしたのか?と思ったりもしたのですが(被害妄想?)、たまたま近くを走る車のマフラーから破裂音がしただけかもしれません。
今までで最大規模の集団離塒が数回に分けて波状に行われました。
飛び立った群れの一部は上空で旋回しただけで、すぐに鉄塔へ戻って来ました。
依然として数多くの個体が集団塒に居残って鳴き騒いでいます。
空腹の個体から先に飛び立ったのか、それとも餌場が遠い個体群から順に塒から飛び去るのでしょうか?


午前5:09頃、東の山から太陽が昇り、高圧線鉄塔#30も朝日を浴び始めました。(盆地のため、地平線から朝日が昇る公式な日の出時刻から少し遅れます)

愚直に長撮りを繰り返したのですが、途中で私のうっかり操作ミスで空白の時間帯があります。(午前5:11に1分10秒間の痛恨のタイムロス。動画では@20:57)
肝心の離塒シーンを一部撮り損ねてしまいました。


下の電線に鈴なりになっていたムクドリの群れが、今までとは逆に上の高圧線鉄塔に移動を始めました。
群れ全体の数が減ると心細くなって、再集合するのでしょうか?
集団塒に残っている数が減ると、ムクドリの鳴き声がかなり静かになりました。

最後は鉄塔や電柱、電線にズームインしてみて、ムクドリが集団塒に一羽も残っていないことを確認しました。(@34:19-)
鉄骨には、白い鳥糞が付着して若干汚れていました。
しかし、集団就塒していたムクドリの数に対して意外に糞の汚れは少ないのではないか、と私は思います。

ちなみに撮影地点でときどき測定した気温データは、以下の通りです。
午前4:53 気温20.1℃、湿度89%
午前5:03 気温20.0℃、湿度90%
午前5:16 気温20.1℃、湿度100%
午前5:26 気温20.0℃、湿度90%


ムクドリの群れが完全に飛び去った後で、すっかり静まり返った鉄塔#30の真下に立ち寄ってみました。(@35:13-)
もちろん立入禁止の区画なのですが、柵の隙間から覗いてみると、意外にも真下のコンクリート地面は鳥の糞であまり汚れてはいませんでした。
糞の色があまり目立たないだけかもしれません。
その一方で、鉄塔の近辺で群れの一部が塒にしていた電柱や電線の真下には白い鳥糞が大量に散乱していました。
雨が降れば路上の鳥糞は洗い流されるのでしょうけど、近隣住民は深刻な糞害に悩まされているのかもしれません。
ただし不思議なことに、この場所(高圧線鉄塔#30周辺)にムクドリが毎日塒入りするとは限りません。
集団塒の場所を頻繁に(気紛れに?)変えているのは、ムクドリもヒトとのトラブルを学習してあまり長居しないようにしていたりして…?


※ 終盤だけ、動画編集時に自動色調補正を施しています。(@34:19-)

つづく→後編:10倍速映像


鳥糞で汚れた鉄骨
高圧線鉄塔の直下
電柱の直下に大量の鳥糞
電線の直下に大量の鳥糞

2017/12/07

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【前編:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:12〜4:50(日の出時刻は午前4:49)

街中にそびえ立つ高圧線鉄塔#30にねぐらとしてムクドリSturnus cineraceus)の大群が賑やかに鳴いているのを前夜に確認しています。(映像公開予定)
この鉄塔に
昨年の夏から秋にかけてムクドリの大群が塒入りするのを観察していますが、気紛れなのか、毎日塒として使われるとは限りません。

早朝にムクドリが集団塒から飛び去る(離塒りじ)までの一部始終を撮影するために、夜明け前の深夜から再訪しました。
晴れた夜空にほぼ満月が出ていました。(月齢17.7)

現場で撮影アングルや画角を決めるのが難しく、苦労しました。
前夜にロケハンしたものの、どうしても高圧線や電線が邪魔になってしまいがちです。
個人的には国策として電柱の地中化を早く進めて欲しいのですけど、電柱や高圧線鉄塔を利用している野鳥を観察している身としては、ジレンマもあります。
道端に三脚を立て、鉄塔の東から狙うことにしました。
朝日が昇ると順光になるはずです。
広角レンズが欲しくなりました。

映像の冒頭はほとんど真っ暗で、遠くからムクドリの鳴き声だけが聞こえます。
住宅地でこんなに喧しく一晩中鳴き続けるのでは、確かに近所迷惑ですね。(騒音公害)
白々と夜が明けて次第に明るくなると、高圧線の鉄塔だけでなく、その直下の電柱および電線にもムクドリが鈴なりに群がっていることが分かります。
日の出を待ちかねた個体が、この集団塒内を飛んであちこち移動し始めました。
群れ全体として見ると、鉄塔に居た個体が木の葉落としのように下へ下へ(低い電線に)移動しているようです。

ハシボソガラスCorvus corone)はムクドリよりも早い時刻に離塒するようで、どこか近くのねぐらから三々五々と飛来したカラスが高圧線に止まりました。
カラス同士で鳴き交わしていますが、ムクドリの大群に遠慮しているような印象を受けました。(多勢に無勢)
一方ムクドリは、カラスの存在をあまり気にしていないようです。


後半になると、画面右下のケヤキ並木の樹冠に飛び込む個体が続々と増えてきました。
この動きは昨年の夕方にムクドリが塒入りするときに見た群れの運動と似ています。(今回ムクドリはなぜかこのケヤキ並木に塒入りしませんでした。)
しかしケヤキ並木に集まっていた群れが何かに驚いて飛び立ち、近くの電線や鉄塔に避難しました。(@34:43)
(もしかすると、通行人や走行車に対する驚きや警戒ではなくて自発的な衝動に駆られた飛翔行動かもしれません。)

ちなみに撮影地点でときどき測定した気温データは、以下の通りです。
午前4:07 気温22.5℃、湿度70%
午前4:19 気温21.2℃、湿度77%
午前4:44 気温20.2℃、湿度87%


つづく→中編


2017/11/08

夜明けに咲くハスの開花運動【180倍速暗視映像】



2017年7月下旬・午前3:31〜8:11 (日の出時刻は4:36)

明け方に咲くハス(蓮)の開花運動を微速度撮影するために、夜明け前から蓮池に出かけました。
この撮影テーマについては予め勉強しておいた方が良かったと後で痛感するのですが、自分で試行錯誤するのも楽しいかな?と思い、敢えてあまり情報を入れずにほぼぶっつけ本番で挑みました。



広い蓮池のどの蕾に注目して撮り始めるべきか、暗闇でまず迷いました。
照明機材を使わずに未明の暗いうちから撮影を開始するとなると、岸から近い蕾を選ぶ必要があります。

それから朝日が昇ったときに逆光にならないように、撮影する方角を考えました。

岸のすぐ近くで咲きそうな一つの蕾に注目し、まず側面から赤外線の暗視カメラで1分間隔のインターバル撮影を始めました。
朝日が昇り明るくなるとともに周囲の赤外線ノイズが増え、ビデオカメラのピントが合わなくなりました。
そこで暗視モードから通常光モードに切り替えてインターバル撮影を続けます。
終了後は連続写真から30fpsの設定で早回し動画(1800倍速)に加工したのですが、これでは早過ぎたので編集し直して180倍速に落としました。


インターバル撮影と同時に蓮池の岸に別のカメラの三脚を立てて、見下ろすアングルで10倍速の微速度撮影を始めました。
後半から被写体を3つの蕾のうちの1つに絞りました(ズームイン)。
(しっかり予習していれば、初めからどの蕾に注目すべきか分かったはずです。)
撮影後は編集し直して180倍速映像に揃えました。
カメラ2台で同じ蕾の開花を別アングルで記録したことになります。

ぶっつけ本番で撮ったにしては、完成した映像の出来栄えに満足しています。


「ハスが開花の際にポン!と音を立てる」という俗説は、やはり迷信でした。
蓮池で夜を明かしても、一度もそのような破裂音は聞こえず、 静かに開花しました。

「ハス博士」大賀一郎氏の訃報に接した毎日新聞の社説「余録」によると(昭和40年6月17日)、
ハスが開花する時にポンと音がするという俗説についても、博士は上野公園不忍池などで徹夜で調べて、とうとうこの俗説はウソだということを証明した。明け方にハス池のコイが水面近くに飛んでいる蚊をとりにきて、ハネ上がる音をハスの開花とまちがえたのだそうだ。


ハスの花の独特な芳香が濃密に漂い、むせ返りそうでした。
個人的にはエキゾチックでどことなくケミカルな匂いで、あまり好みではありません。

咲き終わった後もしばらく撮り続けると、様々な昆虫が早速訪花を始めました。
朝から快晴で日差しが強く、大きな花弁がすぐに萎れてきました。
映像の最後で早くも閉花運動が始まっているようですが、尻切れトンボになってしまいました。
昼過ぎにはもう花が閉じてしまうのだそうです。
ハスの閉花運動の撮影は今後の宿題です。
暑い昼間に長時間撮影するとなるとまた別の問題があり、カメラが直射日光によってオーバーヒートしないように日傘などを用意する必要がありそうです。


復習としてインターネット検索したところ、次の文献がとても参考になりました。
加藤文男『大賀ハス (縄文ハス)の花の開閉について』によると (福井市自然史博物館から公開されたPDFファイルへのリンク)、

・ハスの花の開閉は花弁の基部の内側の生長度が外側のそれより盛んになれば開き、逆に弱くなれば閉じる。さらに花弁の基部の生長度の違いは、生長を促すホルモン(生長ホルモン)の濃度のかたよりによって生ずると考えられる。しかし、ハスの場合どのような外因または内因によって、上述のような生長度の違いがひき起こされるのか、明確ではない。(p125より引用)
・開花がハス自体のもつ周期性(バイオリズム)によることも考えられる。
ハスの花は4日間、毎朝開閉を繰り返してから散るのだそうです。
今回撮影したのは、花の開き方から見て3日目の花だろうと分かりました。(一番美しいとされる、浅い椀状開花)
蓮池の各蕾の開花日はばらばらなのです(開花して何日目か?)。


十亀好雄『ふしぎな花時計:身近な花で時間を知ろう』によれば、
ハスの花の開閉観察 エイジング(加齢)との関係で、初めて咲く花は、その日の午後7時ごろに五分咲き程度に開花して、10時ごろには閉花してしまいます。翌2日目は午前7〜8時ごろに全開して午後0時ごろに閉花し、3日目も再び早朝に完全開花して正午ごろに半閉花します。そして、4日目の早朝に3回目の完全開花をしてその日の午後に散っていきます。風が強く吹いたり暑いときには3日間ぐらいで終わったり、気温が低めで涼しいときには1週間ぐらい開閉運動を続けます。 (p64より引用)

野外での微速度撮影は大変なので、室内で楽できないかと考えました。
ハスの蕾を採取して水差しにしたら、室内でも開花してくれるでしょうか?
ネット検索すると、ハスは水揚げが悪く、残念ながら生け花の専門家でもきわめて難しいそうです。

3:30 am(開花日の異なる3つの蕾)。以降は左の蕾に注目。
6:02 am
8:13 am(閉花開始?)
8:15 am(左から順に開花3日目、4日目、1日目)


【追記】

北村文雄『蓮:ハスを楽しむ』という本を読んでびっくりしたことの一つは、童謡「ひらいたひらいた」に関するトリビアです


ひらいた ひらいた 
なんの花が ひらいた 
レンゲの花が ひらいた 
ひらいたと思ったら 
いつのまにか つぼんだ
この歌詞に登場するレンゲの花とは、てっきりレンゲソウ(ゲンゲ)だと今まで私は思い込んでいたのですが、蓮華の花、つまりハスの花なのだそうです。
これは、ハスの花の生態をよく表している、わらべうたです。(同書p13より引用)



↑【おまけの映像】
注目した蕾の周囲の環境については、開花前後のスナップショットをブログ限定で公開します。

折れた茎の断面にレンコン様の穴

科学のアルバム『水草のひみつ』によると、

ハスの葉の付け根部分の断面。葉の先まで管が通っています。(p37より引用)


つづく→開花初日のハス蕾の開閉運動(壺状開花)【180倍速映像】

2017/10/15

夜明けの電線にハシボソガラスのつがい(野鳥)



2017年6月中旬・午前4:20 (日の出時刻は4:15)


道端の電線に2羽のハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が仲良く並んで止まっていました。
しかも直下の路肩には大量の鳥の糞が落ちていてひどく汚れていました。
日の出直後で、電柱のLED外灯は未だ点灯したままです。
電柱の下部の一番低い電線に止まっているカラスは目覚めていてキョロキョロ辺りを見回しています。
しかし私が見上げていてもカラスは鳴かずにおとなしくしてたので口の中の色を確認できず、成鳥なのか巣立った幼鳥なのか、見分けられませんでした。

つがいがこの電線をねぐらとして夜を過ごしたのでしょうか?
ただし、路上の糞がハシボソガラスのものとは限りません。
糞を採取してDNA鑑定でもしない限り、分からないでしょう。
もしかすると近くにカラスの巣があって、この電線は親鳥のお気に入りの排糞スポットなのかもしれません。
いくらなんでも、塒は樹上などもっと安全な場所を選ぶ気がします。
夜明けとともに塒から出てきて、たまたま電線で休んでいたのかな?


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


2017/08/25

街中の側溝で鳴くケラ♂の謎:#2【暗視映像】



2017年5月下旬・午後22:00頃
▼前回の記事
街中の側溝で鳴くケラ♂の謎:#1【暗視映像】

夜道を歩いていると、また新たに街中でケラ♂(Gryllotalpa orientalis)が鳴いている側溝(幅100cmの融雪溝)を見つけました。

まずは赤外線の暗視カメラで撮影してみます。
次に白色LEDを点灯してもケラ♂は平気でジーーー♪と単調に鳴き続けていました。
ケラの姿は見つけられなかったものの、鳴き声のする方向から察するに、地上の植生内ではなく、護岸の石垣の隙間に潜んでいるようです。

撮影直後の気温は24.7℃、湿度44%。
実はここは泣く子も黙る税務署前でした。
お上に毟り取られてオケラになった納税者の怨嗟の声なのか?と想像したら、ちょっと可笑しくなりました。
もしここがギャンブル施設だったらより一層面白かったですね。(出来過ぎの話)


昼間に撮った現場の状況。右岸の石垣で鳴いていた。

こんな自然度の低い環境でケラが鳴いているのは、あまりにも不自然に思いました。
前回の記事で述べたように、田植え前に水入れされた田んぼから水路を流されてきてようやく辿り着いた個体なのではないかと私は予想しています。
数日後の夜に再訪しても鳴き声はしなくなっていました。
飛んでどこか新天地へ移動したのなら良いのですが、人知れず死んだのかもしれません。
この側溝は両脇が石垣になっているので、コンクリート三面張の水路より遥かにマシですね。(おそらく脱出可能)
側溝の上流が本当に田んぼに繋がっているのかどうか、突き止める必要があるのですが、難航しています。

ケラと同じく田んぼで暮らすことの多いタガメの本を読んでいたら、似たような話が書いてありました。
市川憲平、北添伸夫『田んぼの生きものたち:タガメ』によると、

「田んぼから突然水がなくなります。稲刈りの準備のために、落とし口を開いて、田んぼの水を落としたのです。(中略)落とし口から側溝へと流されるタガメも少なくはありません。コンクリート製の側溝の壁は垂直で、飛ぶことのできない幼虫は脱出できず、雨が降ると川まで流されてしまいます。」(p32より引用)

田の落水とともに、コンクリートの溝に流されたタガメは、雨が降ると下流に流れていきます。コンクリートの溝には、かくれるところがほとんどないからです。(p34より)



2017/08/16

街中の側溝で鳴くケラ♂の謎:#1【暗視映像】



2017年5月下旬・午後22:30頃・晴れ

夜道を歩いていると自然度の低い市街地でも道端の側溝からジー♪というケラGryllotalpa orientalis)の単調な鳴き声が響いてくることがあります。
田園地帯の畦道ならケラが鳴いていても別に不思議なことではありません。
しかし土や草もろくに無い人工的な水路で果たしてケラが生息できるのでしょうか?
やはり数日後にはその鳴き声は聞こえなくなってしまいます。
また、側溝からケラの鳴き声が聞こえる地点は毎年違うのです。
実は去年の同じ時期に気になり始めた現象なのですが、去年は証拠映像を撮り損ねてしまいました。

今年は団地の横の側溝の中から二夜連続でケラが鳴いていました。
まず赤外線の暗視動画で鳴き声を記録してみます。
ケラは♀も鳴くそうなので、性別は不明です。
北海道大学出版会『バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑』によると、

(ケラの)♀にも翅に発音器があるが、♂ほど発達していない。(中略)湿った草地や田畑などの土中にすみ、灯火に飛来する。♂は長くジーーーと鳴き、♀は短く断続的に鳴く。(p312より引用)


続けて白色LEDを点灯してもケラ♂は眩しい光を気にせず鳴き続けました。
残念ながらケラがどこに隠れているのか姿は見つけられませんでした。
天気は晴れ。
温度計を忘れてしまいましたけど、雨上がりのため体感の気温は高くなかったです。
幅50cmの側溝には水が流れておらず、暗渠の蓋が金網になっている部分の下には雑草が生い茂っていました。
先程まで降っていた雨の水滴が雑草に付着して光っています。
一方コンクリートで蓋された部分では光合成できないため草は生えていないはずです。
夏は大雨が降らない限り、この側溝は干上がってしまうのでしょう。
もしかするとケラが辛うじて生息できる安全な環境なのかもしれません。
しかし後日にまた再訪すると、ケラの鳴き声は聞こえなくなっていました。
この枯れ水路(支流?)を辿ると水の流れる側溝(融雪溝)につながっていました。

私が推理したシナリオは以下の通りです。(あくまでも個人的な作業仮説です)
ケラが道端の側溝で鳴き始めるのは、ちょうど近隣の田んぼに水を入れ代掻きした(今年は5月中旬)後である点に注目しました。
春まで田んぼの地中で暮らしていたケラが突然の増水に流されて農業用水路から更に下流の融雪溝に流されて来たのではないでしょうか?
ここ雪国では冬の除雪作業に備えて融雪溝が町中に縦横無尽に張り巡らされているのです。
各家庭が雪かきしたその雪を捨てて融かしたり大きな川まで流すための水路です。
ケラは泳ぎも達者らしいので、なんとか溺れずに水から上がれた地点でケラが途方に暮れて鳴いている、という推理です。
当然、そんな人工的な場所に単独で漂着しても繁殖できず、すぐに死に絶えてしまいます。

ケラの鳴き声が聞こえた側溝から上流にどんどん辿っていけば、私の予想では水田に行き着くはずです。
ところが実際に調べようとしたら、意外に難しいミッションでした。
側溝が交差点の下を暗渠(地下水路)でくぐる時にどの方角から流れているのか(交差点を直進するのか曲がるのか分岐しているのか)、素人には外から分からないのです。
役所で尋ねれば側溝や融雪溝の詳細な地図を閲覧させてもらえるのかな?

逆に、生きたケラに超小型の電波発信器やGPSを括り付けて田んぼから流れ出る用水路に放流し、街中の側溝まで辿り着けることを証明できればエレガントです。
必ずしも生体を使わなくても、小さな浮きや追跡機器を流してみるだけで充分かもしれません。
この方法論は、ポリネシア人の起源について南米渡来説を立証するために海洋人類学者のヘイエルダールが自作のイカダで南太平洋を漂流した壮大な実験(コンティキ号の冒険)と同じ発想です。
しかし水入れした田んぼから小型GPSを水路に流してもすぐに途中で引っかかったり紛失したりして、文字通りお金をドブに捨てる実験になるだけかもしれません。
もし私の仮説が正しいと分かれば、春に田んぼから流れ出る排水口に網や柵などを適切に設置すれば、ケラの犠牲を少なくすることができそうです。
ケラは未だ絶滅危惧種には指定されていませんし、田んぼで野鳥などの天敵に捕食される数に比べたら微々たるものかもしれません。(調べてみなければ分かりません)

別なシナリオも考えられます。
ケラは夜の灯火に向かって飛んでくるらしいので、自力で配偶者を探したり分布を広げようとしたり試行錯誤している最前線なのかもしれません。

路上を歩いてきたケラが側溝の金網から落ちた可能性もありますね。(側溝の横は団地の駐車場のケヤキ並木で、貧弱な自然が申し訳程度に残っています。)
今はケラが越冬から目覚めて活動を始める時期だとすれば、各地で鳴き始めるのは当然でしょう。
このシナリオBをどうすれば否定(または実証による肯定)できるのか、今のところアイデアが思いつきません。
何か良い案がありましたら教えてください。

先述のように、もし全ての田んぼの出水口にケラが入り込まないようにしっかり対策した結果として街中の側溝で鳴くケラが居なくなれば、シナリオAで間違いないでしょう。(言うは易く行うは難し)

つづく→#2



2017/07/18

ハシボソガラスの風乗り遊びと屋上への就塒前集合(野鳥)



2016年10月上旬・午後16:19~17:08(日の入り時刻は午後17:10)
▼前回の記事(連載の都合で順序を逆にしました)
早朝に集団離の屋上から飛び去るハシボソガラスの群れ(野鳥)

ハシボソガラスCorvus corone)の塒入りをもう一度撮影しようとやって来ました。
今度は三脚を使います。
この日は晴れるとの天気予報が外れ、午前中まで雨でした。
曇り空で小雨が少しぱらついていたので、念のために傘を持参。
風が強く、カメラの三脚が振動するほどでした。
(撮れた動画を編集時に手ぶれ補正処理すれば、風による振動は取り除けます。)

本格的な塒入りが始まるまでの暇つぶしとして、雲の流れをちょっとだけ微速度撮影してみました。
10倍速映像を御覧ください。(@0:32~0:40)
画面の左から右へ強い西風が吹いていることが伝わると思います。
カラスが屋上に集結し始め、小規模な群飛も始まりました。

群飛とは別に、屋上から飛び立った個々のカラスが強風を利用して遊んでいることに気づきました。
ウィンドサーフィンのような風乗り遊びをしているようです。
逆風の風上に向かって飛び立つと一気に上昇し、空中を強風に流されていきます。
いかにも楽しそうで、翼と遊び心のあるカラスを羨ましく思いました。
よくまあコントロールを失って失速・墜落事故を起こさないものだと感心します。
あるいはカラスにとっては遊びどころか真剣で、屋上の左の部分に移動して集まりたくても強風のために苦戦しているだけかもしれません。
しかし、いざとなれば屋上を歩いて移動すれば良いはずなので、私の解釈は「遊び(ウィンドサーフィン)」派です。

▼関連記事
台風の強風で遊ぶハシボソガラスの群れ【野鳥】
風速計が欲しくなりました。


マイクに入る風切り音のせいで、カラスの鳴き声はほとんど聞き取れません。
ときどき屋上からカラスが一斉に西へ(風上へ)飛び立ち、威嚇誇示をします。
群飛してもすぐに屋上へ戻って着陸します。

カラスたちは飽きもせずに、某施設の屋上から離着陸と小規模な群飛を繰り返しています。
この群飛を目がけて、近郊のあちこちから更に多くのカラスの群れが続々と合流してくるのでしょう。
北から(画面の奥から)アプローチするカラスが一気に高度を下げて屋上に着陸する様子が面白いですね。
洋上の空母に着艦する戦闘機を連想しました。

屋上の左に垂直に立てられたアンテナポールの先端の座をめぐってお山の大将遊びが繰り広げられました。(@10:45-11:13)(※追記参照)
参加した3羽が追いかけっこのような空中戦になり、最後は風に流されていきました。

映像の最後は、屋上からほとんどのカラスが飛び立ちました。(@15:03)
今までで最大規模の群飛になり、なかなかの迫力です。(壮観!)
確かに威圧感があり、圧巻でした。
撮影後、カラスは屋上からどこか別な場所へ塒を変更したのではなく、結局はこの屋上に戻って夜を過ごしました。
実はカメラのバッテリーが切れてしまい、尻切れトンボになってしまいました。
スペアのバッテリーを忘れてくるという痛恨のミス!
翌日の夜明け前に再訪して、屋上の塒から飛び去るまでを観察しています。(前回の記事


つづく→


最近、松原始『カラスの教科書』を読んで、カラスの塒について認識を改めさせられました。

ねぐらというのは昔考えられていたほど不可欠なものではなく、秩序だったものとも限らないようだ。(中略)東京でPHSを使って追跡した例では、若いカラスたちは都内各所のねぐらを転々とし、どうかすると夜中に「やっぱ、あっち行くわ」とねぐらを変え、餌場も今日は新宿、明日は池袋と好き勝手に動いているらしい。しかも、どう考えても集団ねぐらではない場所で数羽、もしくわ単独で眠っている例も見つかっている。
おそらく東京ではフクロウに襲われる心配もなく、餌場なんてどこにでもあり、目を覚ませばそのへんで何か食えるに決まっているのだから、わざわざ規律正しく集団行動を取る必要もないのだろう。(p69より引用)
ねぐらは常に固定したものではなく、ねぐら自体が移動する事があるから、これをきちんとフォローしてないと見落とすことがある。カラスがどのねぐらに入るかも、ガチガチに決まったものではない。少なくとも、東京の場合はかなりルーズなようだ。そもそも繁殖個体は集団ねぐらに戻らない例があるし、少数でコッソリ寝ている個体もいる。そういう「目立たずに寝ている個体」がどれくらい存在するのかは、まったくわからない。(p253-254より引用)
「ねぐらには流行りすたりがある」 (p254より)



※【追記】

中村眞樹子『なんでそうなの 札幌のカラス』という本を読んでいたら、似たような行動の詳細な観察記録を見つけました。
風乗りはどちらかというと季節限定で、夏はあまり見られず、秋から冬にかけての方が多いようです。札幌ではこの時期に北西の風が強く吹くからでしょうか。 場所は高層マンションやビルの避雷針付近でよく見られます。テレビアンテナ付近もいいのですが、最近はアンテナ自体が減ってきました。ねぐらが近くにある場所ほど見られる確率が高く、好んで行うのは圧倒的にブトです。(中略)カラスは、あの細長い避雷針の先端を狙って何羽も集まり、一番てっぺんにとまろうとするのです。でも、とまった後に独り占めすることはありません。 多い時だと10羽以上で1本の避雷針の先を争いながら風に乗って楽しんでいるように見えます。果たして、この風乗りに何か意味があるのか、それともただの遊びなのかはカラスに聞いてみないと分かりません。(中略)とまっている時間は短いのですが、そのカラスは実に満足気です。強風のことが多いので、すぐに舞い上がり、また次の個体がとまります。これを何度も繰り返しています。(中略)風乗りをしているカラスを双眼鏡で見ると、尾羽や翼を細かく動かしてバランスをとっているのが分かります。尾羽がなくても飛べないわけではありませんが、舵を取るのは主に尾羽です @p113より引用)
この屋上の左に垂直に立てられた長いポールを、私はよく知りもせずに何か特殊なアンテナかと思ったのですが、確かに避雷針なのかもしれません。
波乗り遊びと避雷針(アンテナポール)の先端を奪い合う遊びは、ひとまず別々に考えるべきだと思います。
後者の遊びが強風時にしか見られないのは一体なぜでしょう?
無風だと難易度が下がってあまり面白くないのかもしれません。
私も素人ながら大胆な仮説を思いつきました。
強風時に飛ぶと羽根に静電気が溜まり(帯電)、逆立つようなゾワゾワする感覚がカラスもちょっと気持ち悪いのではないでしょうか?
避雷針に止まるとアース効果で体から静電気を放電できて気持ち良いのかもしれません。
だとすると、避雷針に着地した瞬間にバチッと足先から高圧電流が流れて衝撃があるはずです。
この遊びをカラスは嫌がりもせずに自発的に繰り返しているということは、軽い感電の刺激を楽しんでいるのかもしれません。






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