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2018/01/19

チャイロスズメバチの巣に近づく謎の寄生?ハエ【ハイスピード動画】



2016年9月下旬
▼前回の記事 
肉団子や巣材を巣に搬入するチャイロスズメバチ♀【ハイスピード動画】

神社の破風板(南側)の裏に営巣したチャイロスズメバチVespa dybowskii)のワーカー♀が飛んで巣に出入りする様子を240-fpsのハイスピード動画で撮っていたら、ちょっと興味深いシーンが記録されていました。

地味なハエ(種名不詳)が単独で飛来し、破風板に着陸しました。
チャイロスズメバチの巣口へ向かってまっしぐらに、少しずつ歩いて接近したのが思わせぶりです。

もちろん、ただの偶然でハエの気紛れな行動かもしれません。
スズメバチ類の巣に寄生・産卵するアブ(ベッコウハナアブ類)が知られているので、もしかするとこのハエの目的もそうなのか?と期待が高まりました。
ところがハエは巣内には侵入せず、やがて破風板から飛び去りました。
高所で遠い上にハイスピード動画は画質が粗いために、ハエの行動の詳細がよく見えないのは残念です。

もしかすると、破風板に産卵したのかもしれません。
孵化したハエの幼虫(ウジ虫)が自力で寄主の巣に侵入する可能性も考えられます。

(諺で「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と言いますが、虎穴に入らなくても寄生ハエは目的を達成できる?)

ただし、今回のハエの見かけは明らかに既知のベッコウハナアブ類ではありませんでした。
たとえば普通のニクバエの仲間だとすると、肉食性であるチャイロスズメバチの巣内から食べ残しなど掃除屋(scavenger)にとって魅力的な屍臭(腐臭)がしたのかもしれません。

ちなみにドロバチ類の巣に寄生・産卵するニクバエ(ドロバチヤドリニクバエ)も知られています。

破風板に多数集結しているチャイロスズメバチの門衛は、このハエに対して特に警戒したり追い払ったり獲物として狩ったりしませんでした。
「ハエなど眼中にない」という感じです。
もし襲いかかってもハエの方が俊敏で、易々と逃げられてしまうでしょう。

最後は1/8倍速のスローモーションから1倍速に戻してリプレイ。(@1:48〜)


つづく→屋根裏の巣に出入りするチャイロスズメバチ♀の羽ばたき【ハイスピード動画】

2018/01/12

ワレモコウの花を舐めるキンバエ♀



2016年10月上旬

墓地の片隅に咲いたワレモコウで、おそらくキンバエ♀(Lucilia caesar)と思われる美しいメタリックグリーンの蝿が訪花していました。
花蜜や花粉を舐めています。
花から花へ飛び立つ直前に前脚を擦り合わせました。
横の車道を大型トラックが通り過ぎてもハエは逃げませんでした。

複数個体(2匹?)を撮影。

似たような見かけの蝿は他にもいるらしいのですが、採集して標本を精査しないとキンバエと確定できません。(参考サイト:キンバエの同定 by 廊下のむしさん)
しかし翅脈の写真から、少なくともイエバエ科のミドリイエバエではなくクロバエ科のキンバエまたはその仲間だろうということは分かりました。(参考サイト:平群庵昆虫写真館


少し角度が変わるだけで青い金属光沢(メタリックブルー)に見えるようになる。

今回、ワレモコウという花を初めて知りました。

2018/01/02

交尾中のルリイロハラナガハナアブの一種♀♂



2017年8月中旬

河畔林から河川敷に伸びてきたフジ(藤)の蔓の葉に乗って交尾中の虻を発見。
これは、以前に観察したことがあるルリイロハラナガハナアブ(またはルリイロナガハナアブ)の一種Xylota sp.)だと思います。


▼関連記事(5年前の撮影)
ルリイロハラナガハナアブの一種の交尾と連結逃走


背側に続いて側面から撮ると、2匹は互いに逆を向き結合部の腹端を上下に小刻みに揺らしていました。
この行動は5年前の映像にも記録されていたので、精子を送り込む運動なのでしょう。
マクロレンズを装着して、背面から接写してみます。
右の個体は左右の複眼が接しているので♂、左の個体は複眼が離れているので♀と判明。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



撮影後に、ありあわせのビニール袋を素早く被せて、この♀♂ペアを採集しました。
以下は採集した標本の写真。

2017/12/25

苔に産卵するガガンボ♀【名前を教えて】



2016年11月下旬

山麓を流れる用水路でコンクリート上に生えた緑色のコケ(種名不詳)でガガンボの一種が腕立て伏せのような屈伸運動をひたすら繰り返していました。
これは♀の産卵行動なのか?と思いついて興味を持ったものの、背側からのアングルでは腹端の様子が分かりません。

ときどき屈伸運動を一瞬だけ止めて、腹端をコケの中に押し込みました。
スロー再生すると、腹端をコケに突き立てているのがよく分かります。

そっと回り込んで、逆からも撮影しました。
今思うと、どうせなら側面から撮るべきでしたね。
残念ながら、翅に隠れて腹端の様子があまり見えません。

同定するために採集したかったのですけど、逃げられてしまいました。(無念!)
このガガンボと苔の名前が分かる方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。
ガガンボには翅に独特の縞斑紋があります。

辺りには雑木林の落ち葉が散乱していて、タヌキの溜め糞がすぐ側にありました。
実はこの溜め糞を撮ろうと私が近づいたら、このガガンボに気づいたのです。

産卵していた苔ごと採集して、卵の状態を接写すればよかったですね。
ガガンボの卵は見たことがありませんが、おそらくかなり微小なのでしょう。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


ガガンボの仲間の産卵行動を観察したのはこれで三回目です。
どれも同定できていないのが残念です。

種類によって産卵場所がそれぞれ異なるのでしょう。

▼関連記事
地面に産卵するガガンボ♀
ミカドガガンボ♀?の打水産卵

翅の模様にピントが合う前に逃げられました。



2017/12/20

ナガボノシロワレモコウの花を舐めるニクバエの一種



2016年9月下旬

風媒花とみなされているヘラオオバコが実は虫媒花でもあるのでは?と疑問を抱くようになり、訪花昆虫を注意して見て回るようになりました。

▼関連記事のまとめ
ヘラオオバコは虫媒花ではないか?:ヘラオオバコを訪花する虫の謎


線路沿いの咲いたナガボノシロワレモコウの群落でニクバエの一種と思われる黒くて毛深いハエが訪花していました。
花粉を舐めているようです。



口吻の動きから、花蜜も分泌していそうに見えませんか?
ヘラオオバコの花が咲く直前の蕾の時期から袋掛けしておいて、虫が来なくても結実するかどうか実験してみたくなります。
袋は風も妨げてしまうので、風通しの良い網を被せて栽培しないといけない気がします。


採集していませんが、映像でこのハエの名前が分かる方は是非教えて下さい。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



【追記】

私は初めこの花をヘラオオバコかと思い込んでいたのですが、訂正しておきます。


2017/12/16

アカジソの花蜜を吸うホソヒラタアブの一種



2016年9月下旬

皆さんはシソの花を見たことがありますか?

天ぷらにすると美味しいですよね。
さて、シソの花の送粉者は誰でしょうか?

山麓の畑の隅に咲いたアカジソ(赤紫蘇)の薄い紫色の花にホソヒラタアブの一種が来ていました。
花蜜や花粉を舐めています。





2017/11/20

ハチに擬態したシロスジナガハナアブ♀は捕獲すると刺す真似をするか?



2017年7月下旬

室内で虫の羽音が聞こえるので振り返ると、窓際をシロスジナガハナアブ♀(Milesia undulata)が飛び回っていました。
いつの間にか室内に侵入したようです。
本種はハチにベイツ型擬態している例として考えられています。
擬態のモデルとなった蜂は、なんとなくコアシナガバチPolistes snelleni)ではないかと個人的には考えています。

とりあえずプラスチック容器で捕獲

ベイツ型擬態のシロスジナガハナアブ:腰に白い部分がありハチの細い腰を彷彿とさせる。一定の場所を占有し、近づく虫や人を駆逐するような行動をとることがある。飛び方や羽音もハチに似て、一瞬たじろぐ。 (wikipedia「擬態」の項目で写真の説明より引用)


7年前に初めてこのアブを撮ったときに、面白い話を教えてもらいました。
▼関連記事
シロスジナガハナアブ♀の身繕い
本種のベーツ擬態は外見だけにとどまらず、捕まえると尾端を押し付けるようにしてまるでハチが刺すような真似をするのだそうです。


ずっと気になっていたので、この機会に早速、実験してみました。
捕獲したアブをビニール袋に移してから炭酸ガスで麻酔し、指で翅をつまみました。
本種はハナアブの仲間で吸血性ではありませんから、口器で指を刺される心配はない…はずです。

▼関連記事
シロスジナガハナアブがドクダミに訪花
汗を舐めるシロスジナガハナアブ♀

麻酔から醒めるとアブは逃れようと必死に暴れ始めます。
確かにときどき腹部を屈曲させています。
ハチが腹端の毒針で刺す行動に似ていなくもありません。
しかし意外にも、それほど頻繁にはやりませんでした。

ハンディカムで動画に撮りながらだと片手しか保定に使えないので、苦労しました。(三脚を使えば良かった…。)
翅ではなくてアブの足を摘んだ方が良かったかもしれません。
ときどき胸部の飛翔筋を高速振動させる音がビー♪と響きます。
やがて疲れたのか諦めたのか、あまり暴れなくなりました。

果たしてこれが本当に「行動の擬態」と呼べるのかどうか、疑い深い私は未だ信じきれません。
ハチ類の一部が狩蜂に進化する過程で腹部にくびれが生まれ、そのおかげで♀の腹端にある毒針で刺す動きに自由度が生まれたと考えられています。
シロスジナガハナアブが腹部を深く屈曲させるにはアシナガバチの前伸腹節のような腰のくびれが足りないように思います。

▼関連記事
キアシナガバチの刺針攻撃:♂♀比較
翅をつままれたら脚と腹部ぐらいしか自由に動かせませんから、どんなハナアブでも腹部を繰り返し屈曲しそうな気がします。
比較対象として、蜂に擬態していないハナアブではどうなのか、検討する必要がありますね。
もし蜂にベーツ擬態するアブだけが腹部をハチのように曲げるのなら、確かにハチが毒針で刺す真似をしている行動擬態と言えそうです。
そんなに難しく考えなくても、腹部を少し屈曲することで「刺すハチ」に似た外見と相まって鳥などの天敵や捕食者に恐怖の記憶が蘇ってたじろがせる効果があれば、それで充分なのかもしれません。

例えば、何らかの方法でシロスジナガハナアブの腹部を屈曲できないようにすると鳥に捕食されてしまう率が上がるのか、調べれば良さそうです。(言うは易く行うは難し)
これを実証しようとすると、擬態モデルのハチに刺された経験のある鳥を準備するところから大変そうです。


【参考図書】
上田恵介・有田豊『黄色と黒はハチ模様:ハチに擬態する昆虫類』 (『擬態:だましあいの進化論〈1〉昆虫の擬態』p62-71に収録) によると、

クロスズメバチの巣を好んで襲うハチクマは例外にして、鳥がスズメバチやアシナガバチを食べている場面を見かけることは滅多にない。毒針を持つ蜂を、鳥が避けるのは、一般的な傾向である。とすると、針はないが、ハチの姿をまねることで、鳥に襲われないようにして生存価を高める擬態形質が進化しうる。(p62より引用) 

”虻蜂取らず”はアブの戦略 
針を持たないのにハチの姿をまねている昆虫というと、まず双翅目のアブ類が挙げられる。(p62より) 
こうしたハチ擬態はどのようにして進化してきたのだろう。人が見て”そっくりである”ということと、その昆虫がモデルであるハチに本当に擬態しているのかどうかは別の問題である。これはその擬態種の形態を進化させた淘汰圧がなにかによって異なってくる。(p69より)
ハチ擬態をする昆虫の野外での生態はまだよく調べられていないし、実際にこうした擬態が捕食者にどの程度の効果があるのかもよくわかっていない。(p71より) 


以下は標本の写真。




2017/10/30

セマダラコガネを捕食吸汁するシオヤムシヒキ♂



2017年7月下旬・午前8:17

アベリア(別名ハナツクバネウツギ、ハナゾノツクバネウツギ)の生け垣で、シオヤムシヒキ♂(旧名シオヤアブ;Promachus yesonicus)が葉の上に止まっていました。
腹端に白い毛束があるので♂ですね。
抱えている獲物はセマダラコガネAnomala orientalis)でした。
その胸背(頭部?)から吸汁しているようですが、口器の状態はよく見えませんでした。
シオヤムシヒキ♂は腹部をヒクヒクさせて腹式呼吸しています。
最後は獲物を抱えてどこかに飛び去ってしまいました。

アベリアに訪花していたセマダラコガネを狩ったのでしょうか?
それとも横の芝生で狩ったのかもしれません。
いつか狩りの瞬間を観察してみたいものです。(飼育すれば見れるかな?)



2016/12/17

寄主の巣を探索するエゾクロツリアブ♀の停空飛翔【ハイスピード動画】



2016年8月下旬


▼前回の記事
エゾクロツリアブ♀の産卵飛翔【ハイスピード動画】

同一個体のエゾクロツリアブ♀(Anthrax jezoensis)を追いかけると、産卵地点のすぐ近くで板壁に開いた節穴を物色するかのように、そのすぐ手前でホバリング(停空飛翔)していました。
その様子を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
マメコバチなど借坑性の寄主の巣を探索しただけで、産卵してないと思います。






2016/12/09

エゾクロツリアブ♀の産卵飛翔【ハイスピード動画】



2016年8月下旬

雪囲い用の材木を冬まで保管してある軒下の資材置き場でエゾクロツリアブ♀(Anthrax jezoensis)が停空飛翔(ホバリング)していました。
これは産卵行動だ!とピンと来たので、240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
実はこの直前には、近くの板壁の節穴に興味を示していたのです。(映像公開予定

杉の丸太の切り口に小さな穴のように朽ちた部分があり、エゾクロツリアブ♀は飛びながらその穴を重点的に調べています。
おそらくその穴の奥に寄主のマメコバチ?が営巣しているのでしょう。(蜂の出入りは確認していません。)
背後から撮った映像では、飛んでいるエゾクロツリアブ♀と産卵標的との距離感が分かりにくいですね。
エゾクロツリアブ♀はしばらくホバリングしてから狙いを定め、飛びながら腹端を前方に勢い良く振り出して卵を射出します。
白くて小さな粒が穴の奥に飛んでいくのが一度だけしっかり見えました。(@2:08)
産卵そのものはトンボみたいに何度も連続するのではなく、ひと粒ずつ大事に産むようです。
1回産む度に、産卵の成否を確認しているのかもしれません。
ときどき丸太の断面(産卵地点から少し離れた位置)に着陸して翅を休めています。
私は休息だと解釈したのですが、飛び立つまでに次に産む標的をじっくり調べているのかもしれません。(後述する論文の著者による解釈)

後半は私が横にそっとずれて、側面からの撮影アングルを確保しました。
これで産卵標的とエゾクロツリアブ♀との距離感がはっきり見えるようになりました。
停空飛翔中は後脚を後ろに向けていますね。
後脚を垂らして飛ぶアシナガバチの飛行姿勢とはまるで異なります。
その一方で、前脚は前方に揃えています。
ホバリング中に産卵標的との距離は近づいたり遠ざかったりと、安定しません。

色々と調べていたら興味深い文献を見つけました。

Wijngaard, Wopke. "Control of hovering flight during oviposition by two species of Bombyliidae." Netherlands Entomological Society (2012): 9.(無料公開のPDFファイル
同じツリアブ科で2種の産卵行動を300-fpsのハイスピード動画に撮って詳細に比較した論文です。
エゾクロツリアブと同属の近縁種(Anthrax anthrax)とビロウドツリアブ♀(Bombylius major)が登場します。
今回私が観察したエゾクロツリアブはこの論文に記述されたAnthrax anthraxの産卵行動と同じでした。

この仲間のツリアブは産卵前に、卵がべたつかないように砂粒でコーティングするのだそうです。
そのために腹端を砂やゴミなどに擦り付ける行動をするらしく、「sand chamber」と呼ばれる部位に砂を貯えておくらしい。
今回の映像にその行動は写っていない…ですよね?
欲を言えば産卵行動をマクロレンズで接写したかったです。





2016/10/13

カメラを舐めるオオハナアブ♀



2016年7月中旬

里山の峠道に三脚を立てて別の撮影をしていたらオオハナアブ♀(Phytomia zonata)が飛来して、カメラの本体およびストラップをぺろぺろ舐め始めました。
雨水や私の汗および皮脂が染み込んでいるはずなので、そのミネラル成分を摂取しているのでしょう。
味見してかなり気に入った様子で、軽く追い払ったぐらいではすぐに舞い戻って来ます。
ハンディカムのレンズを近づけても逃げずに、口吻を伸ばして一心不乱に舐めています。

オオハナアブは秋に出会う昆虫だと勝手に思い込んでいたのですけど、今期初見です。





2016/10/05

死んだイモムシに集まるミスジヒメヒロクチバエの翅紋誇示



2016年7月上旬

峠道を法面補強した土留のコンクリート壁面に蔓植物イワガラミが垂れ下がり壁面緑化されています。
その葉陰から覗いている妙な物が気になって葉をめくってみたら、かなり大型のイモムシ(蛾の幼虫)の死骸でした。
死後かなり経過しているようで、腐って全体に黒変しています。
下半身は溶けたように千切れています。
なんとなく、死因は虫カビや寄生などによる病死ではないかと勝手に推測しました。
腐りかけたイモムシの種類を同定するのは無理そうですが、頭楯は真っ黒です。

微小のハエが数匹、死骸に取り付いて身繕いしながら翅紋を誇示していました。
カメラを近づけても逃げない個体を接写してみます。
2匹のハエが死骸の上下に居残っています。
死骸から逃げた個体が近くのイワガラミの葉で前脚を擦り合わせていました。
素人目にはミバエの仲間に見えます。
しかし、死骸を吸汁しに集まるという話は聞いたことがありません。

この日はあまりにも暑くて日射病気味だった私は、マクロレンズを取り出して装着するのも億劫でやりませんでした。
左手で葉をめくりながら右手だけで接写しようとすると、幼虫が絶え間なくブラブラと揺れるので非常に難しいのです。
同定のためにハエだけでも採集すればよかったですね。
もしハエが死骸に産卵したとすれば、芋虫の死骸を採集して飼育すれば次世代が成虫まで育つでしょうか?



いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂」掲示板でハエの写真鑑定を依頼したところ、茨城@市毛さんよりご教示頂きました。

写真のハエは,ミバエ類ではなく,ヒロクチバエ科のRivellia nigricansミスジヒメヒロクチバエかその近縁種のようです.
また、芋虫の死因についてliriomyzaさんより以下のコメントを頂きました。
おそらく,核多角体病(NPV),ウイルス病かもしれません。死骸の一部をスライドグラスに,一滴の水を垂らして,400倍程度で,六角形の多角体が見えれば核多角体病と思います。
wikipediaの解説によれば、
(バキュロウイルス科に属するNPVに感染した)感染虫は、動きが鈍くなり、変色し、内部が崩れて液状化し死ぬ。表面は黒くなってその後破れ、内部の多角体をまき散らすことになる。


【追記】
成田聡子『したたかな寄生:脳と体を乗っ取る恐ろしくも美しい生き様 (幻冬舎新書)』によると、マイマイガ幼虫に感染するバキュロウイルスによる行動制御が遺伝子レベルで詳細に調べられているそうです。
私が今回観察した宿主の幼虫は芋虫タイプであり、マイマイガの毛虫とは明らかに異なりますが、参考のために引用しておきます。
バキュロウイルスは節足動物に感染し、宿主に対する種特異性が高いことで知られています。つまり、マイマイガに感染しているバキュロウイルスは他の種類の昆虫には感染できません。(中略)通常、ガの幼虫の成長はかなり早く数日に一度は脱皮して大きくなりますが、バキュロウイルスに感染している幼虫はいくら食べても一向に体が大きくなりません。食べたエネルギーはすべてウイルスの増殖に使われているからです。 そして、ウイルスが体内で十分に増殖し、次なる宿主に移動する段階になると、現在の宿主であるマイマイガの行動を操ります。 通常、マイマイガの幼虫は昼間、鳥などの天敵に見つからないように地面に近い場所でじっと身を隠しています。そして、夜になると木の上に登って葉を食べます。しかし、バキュロウイルスに感染した幼虫は、昼も夜も関係なく木や葉の上を目指して登り始めます。そして、葉の一番上に登りきると、動かなくなり、何かを待っているかのようにそこでじっと待機します。このとき、幼虫の体内ではバキュロウイルスが幼虫の体を溶かす大量の酵素を生成して、宿主である幼虫をドロドロに溶かしてしまいます。 そうして、体の形を保てなくなった幼虫は、溶けながら、葉の上から下に流れ落ち、ウイルスを大量にまき散らしていきます。そして、葉の上に落ちたウイルスは新たな宿主に葉と共に食べられることで、また感染を繰り返していくのです。p166-167より引用)

研究者は更に、バキュロウイルスがコードする遺伝子の中で、感染したマイマイガ幼虫を木に登らせるという異常行動を引き起こす原因遺伝子を見事に突き止めています。
延長された表現型」が遺伝子レベルで解明された例としてエレガントな研究です。
新書の中で原著論文も紹介してくれているのは親切ですね。
Hoover, Kelli, et al. "A gene for an extended phenotype." Science 333.6048 (2011): 1401-1401.(検索すれば全文PDFが無料ダウンロード可)
ただし、マイマイガを用いた研究の結果がそのまま別種の蛾の幼虫に当てはまるとは限らないので注意が必要です。
ウイルスと宿主の組み合わせによって、ウイルスによる行動制御の仕組みがそれぞれ異なっていると、現在では考えられています。p169より)



渡部仁『微生物で害虫を防ぐ (ポピュラー・サイエンス)』という昆虫病理学の入門書を読んだら、核多角体病についてしっかり勉強することができました。
りん翅目昆虫(チョウやガの仲間)に核多角体病の発生が多いようです。幼虫が病気になると、体節と体節の間の皮ふがふくれてそこが傷つきやすくなり、体が黄色味を帯びてきます。正常な幼虫の体液は無色か、あるいはやや黄味を帯びていても透き通っていますが、病虫は皮ふの傷口から白く濁った牛乳のような体液を流しながら落ち着きなく歩きまわります。やがて病気の末期になると、不思議なことに、昇天を急ぐかのように高い所へと登って行き、そして、木の枝の先あるいは草の葉の先端にはい登り、腹肢を固定してぶら下がって死にます。やがて、死体はどろどろに溶けてしまうのです。樹木の先端に、時々このような病虫がたくさん集まって大きな塊になることがあります。 (p24-25より引用)

 虫の病死体から飛散した多角体は、広く土の表層に分布し、周辺の植物の葉に付着する機会が多いといわれています。昆虫が植物を食害する際に、たまたま葉に付着していた多角体を一緒に食べると、核多角体病が伝染することになります。つまり、食下された多角体は、虫の消化管の中でアルカリ性の消化液によって溶かされ、中からばらばらになって出てきたウイルスが、消化管壁から体の中へ侵入し、いろいろの組織に感染するのです。(p29より引用) 


2016/08/13

オオマルハナバチに擬態したマツムラハラブトハナアブ♀?【名前を教えて】



2016年6月上旬

山麓の農村部の民家の花壇に咲いたキリンソウの群落で、オオマルハナバチにベイツ型擬態したハナアブが訪花していました。
花粉や花蜜を舐めています。


手元にある図鑑『札幌の昆虫』p214-215でマルハナバチに擬態するハナアブの仲間を調べてみると、素人目にはトゲミケハラブトハナアブ♀(Mallota tricolor)が一番似ています。
一方、「ハナアブの世界」サイトに掲載された標本写真を見比べると、マツムラハラブトハナアブ♀(Mallota rubripes)が一番似ている気がします。
今回は採集できなかったので標本はありませんが、もし間違っていたらご指摘願います。
ハラブトハナアブ属の一種(Mallota sp.)としておいた方が無難でしょうか。



▼関連記事(4年後の撮影)
マツムラハラブトハナアブ♀の身繕い【ベイツ型擬態】



【追記】
中公新書:鈴木紀之『すごい進化 - 「一見すると不合理」の謎を解く 』を読んでいたら、とても興味深いことが書いてありました。
今回のハナアブは大型ですから、確かに優れたベーツ擬態になっています。
アブの仲間で擬態のうまさを網羅的に比較した研究では、アブの体サイズが小さいほど擬態が不完全になっていく傾向が見出されました。天敵はどちらかというと体の大きなアブを狙います。体が大きい分だけエサとしての栄養分が多く含まれているからです。そのため、体の大きなアブはできるだけ蜂に姿を似せて天敵からの攻撃を未然に回避する必要があります。一方で、体の小さなアブはそもそも天敵からの攻撃をそれほど受けないので、ハチに似せていく方向に働く圧力がそこまで強く生じません。天敵にしてみれば、エサの候補となりにくい小さい種類はアブであろうがハチであろうがどちらでも構わないため、そもそも識別しようとしないのです。この研究は、天敵からの圧力が弱い種類ほど不完全な擬態が維持されやすいことを示唆しています。 (p218より引用)





2016/08/03

ヤドリバエの卵を付けたツマジロカメムシ



2016年6月上旬

山間部のガードレール脇に生えたタニウツギの灌木でツマジロカメムシMenida violacea)を見つけました。
葉上を歩き回り今にも飛び立ちそうな予感がしたので、飛翔シーンを撮ろうと粘ってみたものの、空振りに終わりました。

途中でクロオオアリ♀とニアミスしても互いに無関心でした。

背中の小楯板に目立つ白点は寄生者(ヤドリバエ類)に産み付けられた卵だと思われます。

身繕いで落としたくても足が届かない場所にあります。
ヤドリバエの幼虫が孵化して捕食寄生する様子を観察するのも面白そうですが、寄主となったカメムシ成虫を飼育法(餌は?)が分からないことには難しそうです。




2016/06/16

柳の葉を舐めるハグロケバエ♂



2016年5月中旬

湿地帯でハグロケバエ♂(Bibio tenebrosus)がオノエヤナギの葉に止まって表面を頻りに舐めていました。
舐めているのは朝露の残りなのかもしれませんが、肉眼で水滴は見えません。
アブラムシの甘露が付着しているのかな?

それとも柳の花外蜜腺があるのでしょうか?
一方、ハグロケバエが訪花している現場は未だ見たことがありません。



2016/06/11

虫の死骸を吸汁するキアシアシナガヤセバエ



2016年5月上旬

湿地帯に生えたオノエヤナギの葉に止まっているスマートなハエが気になりました。
帰ってから名前を調べてみると、図鑑『札幌の昆虫』p193に登場するキアシアシナガヤセバエCompsobata japonica)らしい。

接写してみると、葉の表面を舐めています。
風が強く吹く日で、接写に苦労しました。
常に葉が揺れるので分かり難いのですが、葉そのものを舐めているのではなく、有翅アブラムシやチョウバエなど微小の昆虫を捕食しているようにも見えました。

snowmelt氏のブログ「北のフィールドノート」にキアシナガヤセバチの食性に関する興味深い動画付きの記事を見つけました。

食べるものは、葉の上に落ちている小昆虫の死体だ。
死体は、クモにやられた残りカスの様な気がする。
水場で水を飲む野獣のような姿勢で餌につく。
私の観察と同じ行動ですね。
屍肉食だと思ったのですが、まさか自ら狩りを行い獲物を仕留めた可能性もありますかね?
英語版ウィキペディアによれば、本種が属するマルズヤセバエ科の生態は
Adults are either predatory on small insects (for example Calobata in Britain[1]) or are attracted to excrement or decaying fruit.
無風の日にもう一度撮り直したいところです。

実は、このオノエヤナギの木の周りを同種と思われる多数の小さなハエが群飛していました。
配偶行動に関連するかもしれないこの群飛シーンも動画に撮るべきだったのですが、他のこと(営繭中のホシカレハ幼虫)に気を取られて忘れてしまいました。
複数個体を接写。
未採集、未採寸。
後で思うと、ハエに逃げられても良いから獲物を回収して正体を突き止めるべきでしたね。


2016/06/10

ミズキを訪花するジョウザンメバエ♀?



2016年5月中旬

沢に生えたミズキの高木でジョウザンメバエConops flavipes)が訪花していました。
翅を半開きにしたまま集合花の上を歩き回り、口吻を伸ばして花蜜や花粉を舐めています。

一瞬ハチかと思ったら、ベーツ擬態したハエでした。
全体が黒く、腹部に黄色の横縞が3本入っています。
翅の前半部が黒っぽく、顔(頭楯?)が白い。
見慣れないハエでしたが、手元の図鑑『札幌の昆虫』をめくってみると、p193のジョウザンメバエが似ていると思いました。
p216のニトベナガハナアブにも似ていて悩ましいのですけど、触角の形状が異なるので除外。
「ジョウザンメバエ」でインターネット検索した交尾写真(リンク12)を見ると、素人目には複眼の形状で性別判定できない種類のようです。
口吻の形状に性差があるのかな?
真っ直ぐ長い口吻を持つ個体がマウントしているので♂なのでしょう。(そんな特殊化した形状の口吻は吸蜜専門?)
一方、私が撮った個体の口吻はよく見るハエ型の舐める口器でした。(ということは♀?)
♀は卵巣の発達にタンパク質が必要なので、花粉を摂取できるように舐める口器なのかな?(ド素人の勝手な予想です)
それとも全く違う種ですかね?
もし間違っていたらご指摘ください。
未採集、未採寸。



2016/02/26

キイロスズメバチの巣に侵入する寄生ハエ?



2015年10月中旬

キイロスズメバチ巣の定点観察#11


ハエ(またはアブ)の仲間が飛来しキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)の巣に止まると外被の上を歩き回りました。
これは果たして偶然ですかね?
寄生バエの一種だとすれば面白いのですが、同定用の写真を撮る間もなく飛び去ってしまいます。
例えばベッコウハナアブの仲間は♀がスズメバチの巣に産卵することが知られています。

▼関連記事
寄主モンスズメバチの巣の近くに産卵するムツボシベッコウハナアブ♀
越冬用の隠れ家を探索中にキイロスズメバチの巣(外被)に迷い込んだクサギカメムシとは違い、今回の双翅目は明らかに巣口に興味を示して接近したように思います。(気のせいかもしれませんが、侵入意図が見て取れました。)
巣口に近づく怪しいハエを門衛が追い払ったのでしょうか。

※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。

好蟻性昆虫が非常に繁栄しているのに対して好蜂性昆虫の種類がいまいち少ないのは、社会性蜂の多くの種は(ミツバチを除いて)一年限りの営巣のためでしょう。
あまりよく調べられていないだけですかね?

シリーズ完?


2016/01/31

網にかかった蚊を捕食するイシサワオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】



2015年10月上旬・午前5:24〜5:38・気温11.3℃

イシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)が夜中に網を張り替えることを期待して徹夜で観察していると、夜が少しずつ明けてきました。
退屈のあまり、私は居眠りしてしまったようです。
いつの間にかクモが垂直円網の甑に占座していました。
慌てて赤外線の暗視カメラで撮り始めました。
歩脚で周囲の糸を引き締めて揺すると、すぐ左下に付着していた蚊の存在に気づいたようです。
私が網に生き餌を給餌したのではなく、自然に網にかかった物です。
おそらく私の血を吸おうと飛んできた藪蚊が天然の蚊帳に囚われたのでしょう。
こんな小さな獲物が網にかかってもイシサワオニグモは隠れ家に居ながらにして感知できるとは、信号糸の感度の良さに驚かされます。
梱包ラッピングするまでもない小さな獲物なので、クモはその場で噛み付いていきなり捕食しました。
甑に戻ると再び網を引き締めて揺らし、他の獲物の有無を確認しています。
そのまましばらく下向きに占座。
それまでこの個体は昼も夜も基本的に隠れ家に潜んでいて必要に迫られなければ網に出てこなかったので、甑に堂々と占座する様子は新鮮でした。



隠れ家に戻る様子を撮り逃さないよう通常のカメラに切り替え、三脚に据えて監視記録してみます。
夜明け前でかなり暗いものの、補助照明無しでもなんとか写っています。
※ この中盤(@1:14〜1:55)の映像のみ動画編集時に自動色調補正を施して、自然光下の暗い映像を増感しています。

やがてクモはゆっくりと信号糸を登り、隠れ家に戻りました。

午前5:00および5:30に測った気温はともに11.3℃、湿度100%
ちなみにこの日の日の出時刻は公式発表で5:42。


2016/01/20

ノコンギク?の花を舐めるシロスジベッコウハナアブ♀



2015年10月上旬

郊外に広がるスギ防風林のやや薄暗い林床に咲いた野菊(種名不詳;ノコンギク?)の群落でシロスジベッコウハナアブ♀(Volucella pellucens tabanoides)が訪花していました。
口吻で花蜜や花粉を舐めています。
途中で軽く飛んで隣の花に移動し、最後はどこかに飛び去りました。


▼関連記事(ちょうど1年前の同じ時期に撮影)
野菊を訪花するシロスジベッコウハナアブ♀の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】


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