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2023/10/21

満開の桜に降る雪:花冷えのソメイヨシノ

 

2023年4月上旬・午前7:55頃・雪 

民家の庭でソメイヨシノの花がほぼ満開に咲きました。 
せっかく花見のシーズンが到来したのに、寒の戻りで雪が激しく降り始めました。 
これはこれで風情があるので、桜の花が萎れる前に「花冷え」を動画で記録することにしました。 
冠雪はシャーベット状で、濡れた花弁から雪解け水が滴り落ちます。 

じきに雪は止み、昼前には快晴になりました。 
地温が高いため、地上にうっすらと積もった雪もすぐに溶けました。 

2023/09/10

川沿いの雪原でサイカチの豆果を拾う

 

2023年3月上旬・午後12:50頃・晴れ 

残雪に覆われた河畔林を探索していると、謎の長大な豆果が雪面に散乱していました。 
辺りを見渡すと、川岸にサイカチの大木が自生していました。 
幹には鋭い棘が生えています。 
落葉した枝には豆果が少し残っていて、風でぶらぶらと揺れています。 
採取した豆果を軽く振ると、ジャラジャラ、シャカシャカ♪と乾いた音が鳴ります。 
硬い莢を開くと、中に黒い種子が10個含まれていました。 
大きさもスイカの種ぐらいでした。
雪面のサイカチ落果に15cm定規を並べて採寸



サイカチ豆果の莢が細長く捻れているということは、枝から落ちると回転しながら風に乗って遠くまで飛ばされるのでしょうか? 
川の水に落ちたら、浮いて下流まで流されそうです。 
だとすれば、サイカチの種子散布は風散布型または水散布型と予想されます。 

ここまで書いてからネット検索してみると、サイカチの種子散布について非常にエキサイティングなストーリーがありました。 
絶滅したナウマンゾウがサイカチの種子を散布していたとの説があるそうです。
もしもナウマンゾウの糞の化石が国内で発掘されたら、糞内容物を調べて検証して欲しいものです。

 
【参考サイト】
樹木シリーズ140 サイカチ @あきた森づくり活動サポートセンター
サイカチ @山川草木図譜

サイカチの種皮は固くて水を通さないらしく、種子食性のサイカチマメゾウムシが食い破らないと発芽できないのだそうです。
昆虫写真家であられる安田守氏のブログには、サイカチマメゾウムシの成虫がサイカチの種子から脱出する瞬間を撮った見事な写真が掲載されていました。 
私も保管していたサイカチの種子をチェックしてみたのですが、残念ながらサイカチマメゾウムシは1匹も羽化していませんでした。 
サイカチマメゾウムシを調べるのなら、もっと大量にサイカチの種子を集める必要がありそうです。

ちなみに、サイカチの豆果を鞘ごと水に浸すと界面活性剤のサポニンが抽出されて、水が泡立つそうです。 
次回はそれを実演してみるつもりです。 
サイカチ種子の風散布や水散布の可能性についても、実験してみないといけません。


2023/09/03

雪国で晩冬(2月中旬)に早咲きしたネコヤナギの花

 

2023年2月中旬・午後13:10頃・晴れ 

スノーシューを履いて川沿いの雪原を探索していると、水際に生えたネコヤナギの1株だけが早くも開花していました。 
白くてフワフワの花が咲き始めたばかりで、雄花か雌花か不明です。 
(ネコヤナギは雌雄異株らしいです。)
ネコヤナギは他の柳類よりも早く3月頃から咲くとされています。 
雪国で2月中旬に咲き始めるのはいくらなんでも早過ぎでしょう。 
ヒメハナバチなど花粉を媒介する昆虫(送粉者)は未だ越冬中(羽化していない)ですから、早咲きのネコヤナギは実を付けられないことになります。
急激な地球温暖化の進行で狂い咲きしたのかな?と心配になりますが、開花したのはこの1株だけなので、個体変異なのでしょう。
生物の進化の定義というか原動力として、同種の集団内に様々な変異個体がいるのが普通です。
今後本当に温暖化が更に進むのであれば、早咲きの変異個体が環境に適応して集団内に広まることでしょう。
それと同時に送粉者の昆虫も従来より早くに休眠越冬を終えて羽化してくる必要があります。

次に機会があれば、ネコヤナギが開花する様子を微速度撮影してみたいものです。

後半は、対岸の雪原に見つけた野生動物にズームインしてみました。 
渡河した形跡はありません。






2023/06/14

イタヤカエデの葉は自励振動しやすい?

 

2022年10月上旬および11月上旬

野外でときどき、植物の葉がずっと揺れ続けているのを見かけることがあります。 
風が吹いて植物の群落全体がザワザワと揺れるのは珍しくありませんが、枝葉の中で1枚だけ(あるいはごく小数)揺れるのが気になります。 
幼少時はこれを見て不気味に思ったり怖かったりしたのですが、この現象は自励振動と呼ばれます。 
葉柄に弾性があるために、力が加わると振動するのですが、ある角度で一定の微風を与えると振動が減衰しなくなります。
一定のリズムで強弱をつけた風が吹いている訳ではないという点がポイントです(非振動入力が振動に変換される)。
理屈が分かれば何も怖くありません。

自励振動の動画を撮り溜めたら面白そうと思い、野外で見かけたら撮るようにし始めました。 
まだサンプル数が少ないので偶然かもしれませんが、イタヤカエデの葉がよく自励振動するようです。 


シーン1:10月上旬 
峠道の横に自生するイタヤカエデの木で、枝先についた緑の葉の1枚だけが規則正しく左右に振動しています。 
この1枚だけ、受風面の角度が自励振動の発生条件に合致しているのでしょう。 
その葉には、虫食い穴(食痕)がありました。 


シーン2:11月上旬 
1ヶ月後、山中で(スギ林の林縁で)黄葉したイタヤカエデが秋風に吹かれて自励振動していました。 
枝についたままの黄葉の中で、特定の数枚だけ規則的に揺れ続けています。 

イタヤカエデの葉は特に自励振動しやすい形状なのでしょうか? 
おそらくそうではなくて、色々な向きに葉が付いているために、どれかは風の向きに同期してしまうのでしょう。 
他の植物でも自励振動する例を今後も動画で記録してみるつもりです。 

子供の頃に昔話や民話を読んでいたら、葉っぱの自励振動現象を引き起こす妖怪が登場したと記憶しています。 
今となってはその妖怪の名前を思い出せず、ネット検索しても出てきません。 
何かご存知の方(民俗学者?)がいらっしゃいましたら、教えてください。 
科学が未発達な時代でも、不思議なことがあったら何らかの説明をしないと納得できず不安になります。
民俗学的あるいは宗教学的な説明というのは、不安解消のために必要だったのでしょう。
例えば、皮膚がいつの間にか切れているのに血も出ないという謎の怪奇現象を説明するのに、「かまいたち(鎌鼬)」という想像上の妖怪を作り出したのは秀逸だと思います。


 

▲解説動画 
【身近な科学】地縛霊のせい?勝手に揺れる葉っぱの秘密を解説!【自励振動】 / 米村でんじろう[公式]/science experiments

2023/05/29

ケカビの生えたタヌキの溜め糞を食べるセンチコガネ

 

2022年10月下旬・午後12:45頃・晴れ 

里山の西斜面を直登する細い山道が廃れ、藪が生い茂る獣道となっています。 
ここにホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残したと思われる溜め糞場kがあり、私はときどき通って定点観察しています。 

黒土と化した古い溜め糞場には、糞虫の羽化孔と思われる穴がたくさん開いていました。 
その少し下に、比較的新しい溜め糞がありました。 
地面には枯れた落ち葉が散乱し、その上に排便したタヌキの糞の表面に毛羽立った白カビがびっしり生えていました。 
点々と散らばった獣糞の全てが白カビの菌糸(?)で覆われています。 

そこにセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹だけ来ていました。 
センチコガネは白カビの生えた獣糞の下に頭を突っ込んで、小刻みにグイグイ押しています。 
「糞ころがし」のように巣穴に向かって獣糞を運んでいるのではなく、その場で食糞しているようです。 
そもそもセンチコガネは糞玉を巣穴へ運ぶ際には後ろ向きに転がすはずです。

関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ タヌキの溜め糞を崩し、後ろ向きに転がして巣穴に運ぶセンチコガネ

もしかすると、センチコガネは獣糞そのものよりも、それに生える菌糸やカビの方を好んで食べているのかもしれません。
我々ヒトの衛生感覚では不潔極まりない物ばかり食べても病気にならない悪食のセンチコガネは、よほど強力な抗菌作用をもっているのでしょう。

関連記事(1.5ヶ月前の撮影)▶ 白い菌糸塊?を食べるセンチコガネ

同定のため、動画撮影後に糞虫を採集しました。 
不潔なので、持参したビニール袋を手袋のように使って採取。 
標本の写真を以下に掲載予定。 
センチコガネの性別は? 

この地点にはトレイルカメラを設置しにくいこともあり、本当にタヌキが通う溜め糞なのかかどうか証拠映像を未だ撮れていません。 

秋になると、他の地点の溜め糞場にも白カビが生えるようになります。 
この時期以外では白カビの発生した獣糞を野外で見かけた記憶がありません。 
秋の長雨によるものか、それとも気温が下がって糞虫や蛆虫(ハエの幼虫)の活動が低下することで白カビが優勢になるのかと、素人ながら勝手に推測していました。 
興味深いことに、溜め糞に生えたモサモサの白カビは数日後に消失します。 
さすがにセンチコガネが白カビを全て食べ尽くすとは思えません。
インターバル撮影で獣糞上に生えるカビやキノコ(糞生菌)の遷移(栄枯盛衰)を観察するのも面白そうです。 

相良直彦『きのこと動物―森の生命連鎖と排泄物・死体のゆくえ』という名著を読むと、知らないことばかりで興奮しました。
特に筆者の専門である「排泄物ときのこ」と題した第4章がとても勉強になりました。
ど素人の私は漠然と「白カビ」と呼んでいましたが、専門的にはケカビというらしい。
・(採取した馬糞を培養して1週間後には:しぐま註)たいていケカビ類(Mucor、接合菌)もいっしょに生えていて、糞塊が綿でくるまれたように見えることが多い。(p74より引用)
・ 接合菌のケカビ類はセルロースを分解する能力がなく、糖類のような可溶性炭水化物を必要とする。その胞子は発芽しやすく、菌糸の生長は早い。このような性質によって、糞に糖類やヘミセルロースなど消費されやすい可溶性物質が存在する初期のあいだは、ケカビ類の増殖期となる。(p78より)
・糞には、蛋白質が半ばこわれたペプトン様の物質が含まれていて、それがケカビ相を産んでいるのではないかと(筆者は:しぐま註)想像する。(p82より)
・(京都で見つけたホンドタヌキの糞場で:しぐま註)比較的新鮮なふんにはケカビの1種とスイライカビの1種が生えていた。(p95より)
・タヌキの溜め糞場に生えるキノコ(アンモニア菌類など)についても詳しく書かれています。(p94〜98)

にわか仕込みの知識を踏まえて、私は次のように想像してみました。
秋になってタヌキが熟した柿の実を食べるようになると、糞には未消化の柿の種が含まれるようになります。
タヌキが甘い熟柿を食べると糞に含まれる糖分の濃度が上がり、ケカビの生育に適した条件が整うのではないでしょうか?
獣糞の糖分が消費され尽くされるとケカビは消失し、次の遷移状態に進みます。
タヌキの溜め糞で見つけた白カビを顕微鏡で観察したり培養したりしてケカビとしっかり同定できていないので、あくまでも素人の推測です。
野生動物がせっかく摂取した果肉から糖分を完全に消化吸収できないまま無駄に排泄するのかどうかも疑問で、実際に調べてみないと分かりません。
タヌキの尿に糖が含まれるとしたら、糖尿病に罹患していることになります。
まさか獣糞が甘いかどうか舐めてみる訳にもいきませんし、フィールドで得た試料から糖分をかんたんに検出する試薬のキットが欲しいところです。
高校化学で習った昔懐かしのベネジクト溶液で調べるしかないのかな?




↑【おまけの動画】
"The Life Cycle of the Pin Mould" by the British Council Film Archives
『ケカビの生活史』
モノクロの古い教育映画ですが、ケカビの一生を顕微鏡で丹念に微速度撮影した労作です。


2023/05/22

オニグルミの落果を採集(クルミ拾い)

 

2022年10月下旬・午後16:25頃・晴れ 

川沿いの堤防の下の遊歩道を歩いていると、オニグルミの木から熟して落ちた果実(落果)が落ち葉に混じって散乱していました。 
落果の多くはカラカラに干からびていました。 
シワシワの果皮が残っていてもパリパリに乾燥していたので、かんたんに剥がして中の殻果が得られます。 
初めは落果を足で軽く踏んで路上で転がすようにして果皮を剥いていたのですが、だんだん面倒になり、手で果皮を剥がすようになりました。 
果皮に大量のタンニンを含んでいるので手が真っ黒になりますが、後で手を洗えば平気です。
こうして採集したばかりの核(殻果)の表面が真っ黒に汚れているのもタンニンが付着しているからです。 
きれいに水洗いすれば、「胡桃の実」らしくなります。 
後で思えば、最後にカメラを上にパンして、落葉したオニグルミの木も写すべきでしたね。 

大量に拾い集めたオニグルミの堅果をバンダナに包んで持ち帰りました。 
クルミの実は先端が鋭く尖っているので、ビニール袋に入れると薄いビニールをすぐに突き破ってしまいます。 
丸々とした栽培品種のクルミとは異なり、野生のクルミは痩せていて、両端が尖っています。 
硬い殻を割って中の美味しい種子(子葉)を自分で食べても良いのですが、野ネズミやニホンリスなど野生動物への給餌実験に使うことにします。 


河畔林でオニグルミの落果が大量に残っているということは、貯食する野生動物の生息数が少ないのかな?と思ったりしました。
しかしクルミを採集中に、堅果の殻に残された古い食痕を見つけました。 (写真掲載予定)


【追記】
私は勉強不足でオニグルミしか知らなかったのですが、今季拾い集めた大量のクルミ堅果の中に、ヒメグルミも少し混じっていたようです。
てっきり出来損ないのオニグルミかと思い込んでいました。
それから、カシグルミという木も街なかやフィールドで少数ながら見つけることができました。
カシグルミはテウチグルミと言う別名の通り、その堅果の殻は薄く、ヒトの手でも容易に割ることができるのだそうです。
今まで私は全て「オニグルミ」と決めつけていたのですが、もっと精度を上げて見ていくようにします。
ちなみにサワグルミという種類については、私は未だ縁がありません。

参考サイト:樹の散歩道「クルミいろいろ 何やら名前がややこしい

2023/05/07

スギ林道の溜め糞場に生えたキノコはイバリシメジ?エセオリミキ?

2022年10月中旬 

里山のスギ林道でニホンアナグマMeles anakuma)とホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が共有している溜め糞場sを定点観察しています。 
秋になってキノコが生えてきたので、写真に撮ってみました。 
溜め糞場sのすぐ横でスギの落ち葉の下からキノコの傘が 2つ並んで開いていました。
1本を引き抜いて軸および傘の裏も写真に撮りました。 
以前、同所で得られたスギエダタケは傘が白色でしたが、このキノコは茶色に色づいています。

キノコに疎いながらも、糞尿の分解跡に生えるアンモニア菌というキノコの話は聞きかじっていた私は、てっきりその仲間ではないかと期待しました。 
イバリシメジだと嬉しいのですが、調べてみると素人目にはアンモニア菌とは無関係のエセオリミキと似ています。
間違っていたらご指摘願います。
(似たキノコでモリノカレバタケという種類も図鑑に載っていました。)

重い腰を上げて、これからキノコを少しずつ勉強していくつもりです。
個人的な興味関心の取っ掛かりとしてはアンモニア菌なのですが、それらしいキノコを未だ1種類も見つけられていません。
アンモニア菌はヒトの放尿跡にも生えてくるらしいので、手軽に実験できそうです。
 
ストロボ発光下
自然光下

2023/05/02

ミツバアケビの種子とエライオソーム

2022年10月中旬 

知り合いからお裾分けに貰ったミツバアケビの果実を食べました。 
秋ならではの「山の幸」です。 
果実が熟すとぱっくり割れて、中の果肉が丸見えになります。 
白い果肉は生食できて、上品な甘さがあります。 
大量の種子が含まれているため、これを口の中で選り分けて吐き出しながら食べるのが少し面倒です。 

毒キノコが怖い私は秋の山に行ってもキノコ狩りをしないのですが、アケビは毒草と間違える心配はありませんし、山中でも見つけたらその場で食べてしまいます。 
行儀が悪いと言わず、山を歩きながらアケビの果肉を食べ、種をペッペッと吐き散らすことで種子散布者としてアケビに恩返しをしましょう。 

多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』でミツバアケビを調べると、 
アケビやミツバアケビの種子は硬くりょうがあり、けものの鋭い歯を避けて胃に潜り込む。さらに種子には白いゼリー状の付属物(エライオソーム)があり、糞に出た後、さらにアリに運ばれて分散する。 (p146より引用) 

熟果2個を食べながら吐き出した種子を方眼紙上に並べて数えてみると、計146個ありました。 
つまり、果実1個につき平均73個の種子が含まれていることになります。 
種子散布の参考資料として写真に撮ると、先日フィールドで見つけた獣糞の中に含まれていた種子は確かにミツバアケビのものと判明。 
本で読んだ通り、ミツバアケビの黒い種子の端には白いゼリー状のエライオソーム(種枕しゅちん)が付属しています。 
栄養豊富なエライオソームを目当てにアリが集まり、巣に持ち去ることで種子を二次散布することになります。 


【後日談】
ミツバアケビの種子が乾いてからフィールドに持参し、適当な地面に置いてアリが集まってくるか実験してみました。
ところが置いた場所が悪かったのか、半日経ってもアリは全く来ていませんでした。
昆虫相の減退を最近感じていますが、アリが居ない場所があることにショックを受けました。
山麓の果樹園の傍だったので、殺虫剤を撒いた影響なのか?と邪推してしまいます。
機会があれば再チャレンジしてみるつもりです。

2023/04/19

スギ林道に生えたスギエダタケ(キノコ)を採集してみる

 

2022年10月中旬・午前11:10頃・くもり 

里山の杉林道に残された溜め糞場sを長期に渡って定点観察しています。 
秋になるとスギの落ち葉の下から白いキノコが疎らに生えてくることに去年(2021年)から気づいていました。 
私はキノコについて全くの勉強不足で敬遠していたのですが、今年は一念発起して名前を調べてみることにしました。 
キノコの中には動物の排泄物(糞尿)の周囲から特異的に生えてくる種類(アンモニア菌など)が居るらしく、てっきりその一種だと思い込んでいました。 
溜め糞場をめぐる複雑な生態系の重要な一員であるとすれば、面白いストーリーになりそうです。 

林道に敷き詰められたスギの落ち葉の隙間から点々と生えている白い子実体を1本ずつ採集してみると、易々と引き抜けました。 
白くて薄い傘や茶色の柄を手で裂いてみると、かんたんに裂けました。 
調べてみると、アンモニア菌ではなくスギエダタケというキノコでした。
スギエダタケは毒キノコではなく食べられるそうなのですが、私は試食したことがありません。 
動画の冒頭に写っていたように、スギエダタケ子実体の傘が何者かによって食害を受けていました。 
キノコ食(菌食性)の昆虫または野ネズミの仕業ではないかと予想しています。 


ヤマケイポケットガイド15『きのこ』でスギエダタケについて調べると、
傘は透明感が高く、滑らか。粘性はない。スギ以外の針葉樹の落枝からも発生する。 地面に落ちたスギの枝から生える白いきのこで、きのこの少ないスギ林では貴重な存在。小さいが材の分解力が強く、森の掃除屋といったところ。傘は陽の光が透けそうなほど透明感があり、表に細かい毛が密生している。柄は橙黄褐色でやはり微毛が生えている。 発生時期: 晩秋〜初冬 傘径: 1〜5cm 傘の裏: ひだは白色、上生〜難生、やや密〜やや疎。胞子紋は白色。 柄の高さ: 3〜7cm 可食
奥が深いキノコの世界も、ひとつひとつ地道に名前を覚えるしかありません。

2023/03/26

ヌスビトハギの節果がマジックテープのように服に付着する様を実演してみる(ひっつき虫)【動物散布型の種子】

 

2022年9月下旬・午前11:30頃・晴れ 

山林の下草として咲いていたヌスビトハギの花が散り、節果が熟してきました。 
その表面はザラザラしており、鈎状の微細な突起に覆われているのだそうです。 
野山を歩く我々の衣服や靴にペタペタと付着して遠くに運ばれます。 
つまり、ヌスビトハギの実は俗に言う「ひっつき虫」の一種で、その種子散布の様式は動物散布型です。
マジックテープ(面ファスナー)のように衣服に付着する様子を実演してみました。 
採取した節果をバラバラに分離してからTシャツの腹に付けてみると、粘着して落ちません。
通りすがりの動物や鳥の体表に強固に付着するのではなく、ペリペリと簡単に剥がれる点もポイントです。 

※ 動画の冒頭に、ヌスビトハギの蝶形花を撮った写真(9月上旬)のスライドショーを追加しました。

2023/02/16

ハエが群がる下痢便状の物は溶けたスッポンタケか?

 

2022年9月上旬・午前11:50頃および12:10頃・くもり 

里山の山腹をトラバースする平坦な小径に少量の下痢便が山道に残されてました。 
緑がかった黄土色の液状便です。 
ハエ類が獣糞に集まっていたのに、私が近づいたことで一斉に飛び去ってしまいました。
しばらくその場でじっと待つと、徐々に舞い戻ってきました。 
きれいな緑色や赤緑色の金属光沢に輝くキンバエ類の種類を私は見分けられないのですが、大小様々、♀♂混在のキンバエ類が下痢便に群がり、興奮したように離着陸を繰り返しています。 
ニクバエの一種も1匹だけ飛来しました。(@0:30〜) 
新鮮な下痢便の表面にハエが止まっても、粘性が高く表面張力で軽量のハエは足が沈みません。 
口吻を伸ばして糞の表面から吸汁しています。 

赤緑色のメタリックカラーの個体は、どうやら獣糞が目当てというよりも求愛しているように見えます。 
別個体(メタリックグリーン)の背後から忍び寄りマウントを試みても足蹴にされていました。 
素人目には体色が異なる別種に見えるので、誤認求愛なのでしょうか。 
せっかく面白くなりそうなのに、撮影中はこの行動に気づきませんでした。 

この山道を一度通り過ぎ、20分後にまた戻ってきました。(@1:08〜)
糞の右上の落ち葉に見慣れない小さなハエが来て居ました。 
黒っぽい金属光沢があり(構造色)、林床を歩き回りながらも翅を激しく動かしていました(翅紋誇示?)。 
ツヤホソバエ科の一種ですかね?(当てずっぽう) 
下痢便を占拠しているキンバエの群れに遠慮しているのか、謎の小バエは獣糞に近づくどころか離れて行きました。 

動画撮影中にふと横を見ると、アカバトガリオオズハネカクシ(旧名アカバハネカクシPlatydracus brevicornis)がやって来ました。 
タヌキの溜め糞ではハエ類と並ぶ常連客です。 
しかしカメラを向けた途端に後翅を広げて飛び立ってしまいました。 
アカバトガリオオズハネカクシの離陸・飛翔シーンは初見です。 
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。(@1:40〜) 
直後に等倍速でリプレイ。 
ハネカクシの仲間は鞘翅(前翅)が短いだけで、折り畳んでおいた透明な後翅を広げて飛ぶことができるのです。
「糞便臭に誘引されて飛来したアカバトガリオオズハネカクシが獣糞に着陸」というストーリーを思い描いたものの、どこに行ったのか見失ってしまいました。
自然観察では予測が裏切られてばかりで、なかなか思い通りに行きません。

さて、一体これは何の糞でしょう? 
これまでの調査でアナグマは軟便や下痢便が多いと分かったのですが、こちら側の山系ではトレイルカメラに写ったことがこれまでたった一度しかありません(生息密度がきわめて低いらしい)。 
タヌキの溜め糞という感じではなく、獣道を移動中に腹痛を我慢できず下痢便を漏らしてしまったように見えます。 
同じ地点(22b)に繰り返し通って排便するのなら、トレイルカメラを設置して糞の主の正体を突き止めることが可能です。 
しかし後日何度か通っても、同じ地点に獣糞は二度と残されていませんでした。 
野生動物のフィールドサインに関する本を読んでも、健康時の固形糞の典型的な特徴しか書いておらず、体調が悪いときの下痢便については見分け方が載っていません。 
プロのフィールドワーカーは獣糞の匂いだけでも種類をほぼ嗅ぎ分けられるのだそうです。 
しかし大型の重いザックを担いで山中を歩き回っていると、獣糞の匂いを嗅ぐためにザックをいちいち下ろすのが億劫になってきます。 
この日バテていた私は糞便臭のチェックを怠り、撮影も立ったままで済ませました。 
まだまだ修行が足りません。 
後で思うと、わざわざ地べたに這いつくばって獣糞の匂いを直に嗅ぐ必要はなくて、適当な落枝を拾って獣糞をつついてみてから枝先の匂いを嗅げば済むことでしたね。 

鳥の糞または白いキノコのような塊が下痢(?)の海に浸っているのが気になります。 
もしかして、これは下痢状の獣糞ではなく、スッポンタケなどのキノコ子実体のグレバがドロドロに溶けた跡なのかもしれない、と今思いつきました。
(スッポンタケの)傘の表面に悪臭のする粘液質のものが一面に現れ、悪臭がするようになる。これはグレバで形成された胞子を含むもので、その悪臭は、ハエなどを誘引し、胞子を運ばせるためである。キノコ本体は一日でとろけるように消滅する。(中略)傘はグレバの色で暗緑色に見える。 (wikipedia:スッポンタケより引用)
私はキノコについて全くの勉強不足なので、聞きかじりからの思いつきです。 
スッポンタケの子実体が溶けると、これほど大量の粘液質の物が残るのでしょうか。 
1本だけでなくスッポンタケの群落があったのかな?
現場でもっと興味を持って、謎のペーストを小枝でかき回したりして中を探ってみるべきでしたね。 
獣糞ならば未消化の種子などが含まれていたはずです。 
改めて謎のペーストを見直すと、獣の下痢便にしては均一過ぎますし、少なくとも表面には植物の種子は見えません。

獣糞ではなくスッポンタケの溶けたグレバだとすれば、キンバエやニクバエ以外の食糞性昆虫(アカバトガリオオズハネカクシやツヤホソバエの一種)が匂いに騙されかけても結局やって来なかった理由が説明できそうです。 
いつか山でスッポンタケの子実体を見つけたら、成長と分解の過程を微速度撮影してみたいものです。 
キノコ採りの名人になると鼻が利き、山中で独特のグレバ臭がしただけで辺りにスッポンタケが生えていると分かるのだそうです。

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