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2016/11/29

ゴイサギ幼鳥が群れる池の夜明け

2016年8月中旬

ゴイサギNycticorax nycticorax)は本当に夜行性なのかこの目で確かめようと、定点観察している溜池で深夜から朝まで徹夜の観察をしてみました。
ちなみに、この日は月齢16.3の満月が夜通し照らしていて、月の入り時刻は午前5:31。
日の出時刻は午前4:57。

我々ヒトの肉眼はなかなか暗視性能に優れていて、深夜の月明かりだけでも水鳥のシルエットは充分に見えます。
しかし、普通のカメラでは暗過ぎて闇しか写りません。
ストロボを焚いて写真に撮っても光が届かなそうですし、鳥がたちまち驚いて逃げてしまいそうな気がしたので、使いたくありません。
暗視カメラの赤外線投光機も非力で広い池では届かず、使い物になりません。
仕方がないので夜が明けるまでは池の畔にじっと座り込み、とにかく観察に専念しました。
蒸し暑い夜で、藪蚊の襲来に悩まされました。

溜池の北西より忍び寄ってみて分かったのは、夜でも水鳥の群れに近づくのは至難の業でした。
同じ池を集団塒としているカルガモAnas zonorhyncha)の警戒心がとにかく強く、すぐに私に気づくと大騒ぎして次々に飛び去ってしまいました。
新月の晩に忍者のような黒い服を着て行くべきかもしれません。
あるいは日中からブラインドを張って隠れ、夜の水鳥を待ち構えるしかなさそうです。




そのまま私がひたすらじっとしていると、逃げたゴイサギがときどき戻って来て、溜池の上空を偵察飛行しました。
池の畔に座っている私の姿を認めると、旋回してまた飛び去ってしまいます。
わざわざ私の様子を見に来て、その正体や危険性を確かめようとしているようです。
満月を背景にに飛ぶゴイサギのシルエットはとてもフォトジェニックでした。
これだけでも動画に撮りたかったです。

夜間、飛翔中に「クワッ」とカラスのような大きな声で鳴くことから「ヨガラス(夜烏)」と呼ぶ地方がある。昼も夜も周回飛翔をして、水辺の茂みに潜む。(wikipediaより)

夜も自由自在に飛べるゴイサギは、いわゆる鳥目(夜盲症)ではないことは明らかです。
ゴイサギの目に夜行性を実現するための解剖学的な秘密が隠されているのでしょうか?
ネット検索すると、やはりゴイサギはタペータム(輝板)を持っているようです。(参考ブログ:Backyard Biology)

徐々に水鳥が池に戻って来て、私から離れた池の中央または対岸近くに集まり始めました。
長時間粘って池を見張ってみたところ、本で読んだようなゴイサギの漁り火漁はここでは行われていませんでした。
この池には、水面を照らし魚が集まるような強い照明が無いのです。
そもそも池の状態に問題がありそうです。
雨が少ないせいか溜池の水位がかなり下がり、ほとんど泥沼の状態でした。
かなりドブ臭く、お世辞にも水質が良いとは言えません。
ここに集結する多数の水鳥(カルガモ、ゴイサギ、アオサギ、チュウサギなど)を養えるほど多数の餌や獲物(魚など)がこの池に生息するとはとても思えません。
水鳥がこの池に集まる理由が不思議でなりませんが、餌場というよりも比較的安全な集団塒として利用しているだけかもしれません。

午前2:40、明け方の撮影に備えて私は池の畔を東岸に移動しました。
すると池の水鳥は警戒して一羽残らず飛び去ってしまいました。
その間に柳の大木の下にブラインドを張って隠れました。(詳細は記事を改めて書きます。)
しばらくすると、逃げた水鳥が日の出前に続々と池に戻って来てくれました。
勇敢な初めの一羽が着水すると、それを見た後続の水鳥が安心して次々に飛来します。




動画の撮影時刻は午前4:34〜5:40。
ちなみに、この日の公式な日の出時刻は午前4:57、月の入り時刻は午前5:31。

ようやく夜が明けてきて水鳥が見分けられるほど明るくなると、未だかつて無いくらい多数のゴイサギ幼鳥を一度に観察することが出来ました。
初めて使ってみたブラインドの効果は抜群です。
昼間の定点観察で見ていたゴイサギの群れは氷山の一角でした。
優占種はゴイサギで、他にはアオサギ、チュウサギ、カルガモが居ました。
以前この池で営巣していたヨシゴイの姿は見当たりません。
ゴイサギの群れは幼鳥ばかりで、成鳥は一羽も居ないことが判明しました。
繁殖期を終えたゴイサギ成鳥は幼鳥を残して一足早く暖かい地域に渡りをするのですかね?
ゴイサギは留鳥とされていますが、寒い地域では冬に暖かい地域へ移動するらしい。

池の中を少し歩き回るゴイサギ幼鳥もいるものの、ほとんどの個体が呆然と佇んでいるだけです。
ゴイサギ幼鳥同士の小競り合いがときどき勃発します。
これだけ数が多いと、どの個体を撮るべきか目移りしてしまいます。
ゲッゲッ、ガッガッガッなどの鳴き声が聞こえますけど、どの鳥が鳴いているかよく分かりません。

後半になると水鳥の数がどんどん減っていくのは、池からどんどん飛び立って行くからです。
朝になって集団塒からの自然な離塒なのか、それとも私の存在に気づいて逃げて行ったのか、不明です。
苦しい体勢での長時間撮影に堪りかねて私がブラインドの陰で立ち上がったりしたからです。

つづく→池に飛来し、飛び去るゴイサギ幼鳥








2016/11/21

夜の自販機で円網に横糸を張るズグロオニグモ(蜘蛛)



2016年7月下旬・午後20:05頃

道端に設置されたコカコーラの自動販売機で夜、ズグロオニグモYaginumia sia)が造網中でした。
ちょうど粘着性の横糸を螺旋状に張っているところでした。
垂直円網が完成するとクモは甑を噛み切り、下向きに占座しました。
触肢をよく見ると、成体♂ではありませんね。
同じ自販機のあちこちに複数のズグロオニグモが造網していました。
サイズや発育段階はまちまちです。

日が暮れると自販機パネルのバックライトが点灯します。
照明に誘引される夜行性昆虫を捕食するために造網性クモはここで店開きするのでしょう。
動画に撮るとその蛍光灯がちらついて見難いですね。
次回は造網の一部始終をじっくり撮影してみたいものです。



2016/11/18

ネムノキの開葉運動【微速度撮影】



2016年8月上旬・午前3:40〜6:01

夜間に蒸散を防ぐために閉じていたネムノキAlbizia julibrissin)の葉が夜明けとともに開いていく様子を微速度撮影してみます。
夕方に就眠運動を記録したのと同じ灌木aを反対側から(堤防の東側の枝を)撮影します。

現場に着いてすぐ、未だ暗いうちに赤外線の暗視カメラで閉じた葉の状態を動画に撮っておきます。(午前3:40)
快晴で満天の星空が広がっています。



20秒間隔のインターバル撮影を2時間20分間行いました。
撮影対象の枝の東側に三脚を立てると朝日で影になってしまうので、南側に三脚を据えました。
早朝は完全な無風なので、微速度撮影には最適です。
途中でカメラのバッテリーを交換する羽目になったのは反省です。
バッテリーを十分に充電した状態で撮影を始めるべきでした。
連続写真にEXIFから時刻を焼き込んでから15fpsで動画に変換しました。
ただただ真っ暗なだけの前半部はカットして、2時間分(午前4:00〜6:01)の写真を使いました。
早回し映像にすると、明るくなるにつれてみるみる内に葉が開いている様子がよく分かります。



土手の斜面の上部に生えたネムノキの方が早く朝日を浴びることになります。
上の方の枝から日光を浴び始め、下の枝にはなかなか日が当たりません。
隣で白い花が咲いているネムノキにはマメ科特有の実がついていました。



午前4:02には空がやや明るくなり、星がほとんど見えなくなりました。
ちなみに、この日の公式な日の出時刻は午前4:45
実際は裏山から日が昇るので、もう少し遅くなります。
午前5:02にようやく東の山の稜線から日が昇りました。
照度計がバッテリートラブルのため使えないのが残念。

以下は現場の気象データ。
午前3:39の気温は25℃、湿度52%。
午前3:56の気温は21.6℃、湿度66%。
午前4:15の気温は19.7℃、湿度73%。
午前4:55の気温は18.7℃、湿度80%。
午前5:02の気温は18.9℃、湿度80%。


植物学の用語に私は疎いのですけど、この現象を展葉と呼ぶのは違うらしい。
展葉てんようとは、畳まれて発芽した葉が開くこと。





2016/11/15

真夜中にメマツヨイグサの花蜜を吸うヨトウガの一種【蛾:暗視映像】



2016年8月上旬・深夜3:00過ぎ

真夜中に平地の道端に咲いたメマツヨイグサの花にヤガ科の蛾(ヨトウガの一種?)が乗っていました。
吸蜜中というよりも寝ているのかな?と思い、赤外線の暗視カメラを近づけると、蛾は翅を細かく震わせていました。

補助照明の白色LEDを点灯すると覚醒し、翅を更に激しく震わせ始めました。
飛んで逃げるための準備運動かもしれません。
口吻の状態を確認したくて撮影アングルを変えてもよく分かりません。
花の中央から引き抜いたときには口吻が伸びていました。
蛾は向きを変えると花弁の裏側に素早く回り込んだり、すぐにまた戻ったりする行動を繰り返しました。
眩しい光を嫌ったように見えました。
私がしつこく接写すると、最後は飛んで逃げました。
飛ぶというよりもほとんど落下しただけです。
夜に例えばコウモリに捕食されそうになったらこんな感じで逃げるのですかね?

残念ながら同定用のストロボ写真は撮れませんでした。
映像だけで蛾の名前を見分けられる方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい。
候補としてはヒメサビスジヨトウAthetis stellata)やシロテンウスグロヨトウAthetis albisignata)辺りではないかと思っています。


【追記】
加藤真『夜の送粉共生系』によると、

蛾媒の花は、色は白か淡色、夜間に開花し、通常甘い匂いを発散させ、細長い花筒(または距)に薄い糖濃度の花蜜を分泌する。 (『花の自然史:美しさの進化学』第6章:p81より引用)



2016/11/13

ケヤキ並木に塒入りするスズメ(野鳥)の群れ



2016年7月下旬・午後18:26〜18:57

ムクドリの大群を追いかけて塒入りを観察していると、面白いことに気づきました。
前の晩にムクドリが塒入りした同じケヤキ並木に、この日はスズメPasser montanus)の群れが就塒したのです。
葉の生い茂ったケヤキの樹冠にスズメが数羽ずつ飛び込んだ後も、しばらくは賑やかに鳴きながら枝から枝へ飛んで移動しています。
背後でハシボソガラスが鳴いています。
ちなみに、この日の公式な日の入り時刻は午後18:49。

一方、少し遅れて飛来したムクドリの大群は運動場の反対側にあるヒマラヤスギの並木に塒入りしました。(→関連記事
ここで幾つか不思議に思うことがありました。

第一の疑問は、前の晩に使った塒からスズメをムクドリが追い払わなかったことです。
一説によるとムクドリの大群が夕方に飛び回る就塒前群飛は塒の周辺から天敵を追い払う威嚇の効果があるらしいのに、先客のスズメは全く動じずにケヤキ並木を占領していました。
体格でもムクドリが大きいですし、群れの数でもムクドリがスズメを圧倒しています。
それなのにムクドリは実力行使せず、まるでスズメに遠慮したかのように集団塒を臨機応変に変更したのが興味深く思いました。
鳥の世界で集団塒の占有権は単純に早い者勝ちなのかな?


あるいは次のような少し込み入った仮説も考えられます。
安全性などを総合した塒の価値としての順位はケヤキ<ヒマラヤスギで、前日の晩は例えばカラスがヒマラヤスギを占領した(←この点は未確認)ためにムクドリは仕方なく次善のケヤキを選んだ。
強さの序列はスズメ<ムクドリ<カラスと仮定しても不自然ではないでしょう。
翌日はカラスがどこかへ行ったのでムクドリが安心してヒマラヤスギに就塒することができて、空いたケヤキ並木に弱いスズメが塒入りした、と考えれば一応矛盾なく説明できます。


もしかするとスズメの存在はあまり関係なくて、ムクドリの集団塒は毎晩偶発的に決まるのでしょうか?
ムクドリは必ずしも毎晩同じ塒を使わないようです。
まさか大群で飛びながらリーダー格の個体による「鶴の一声」で群れの意思決定がなされるとは思えません。

第二の疑問は、なぜスズメとムクドリは同じ集団塒で混群になろうとしないのですかね?
塒内での位置を上手く棲み分けできれば、夜間に天敵を発見する探知能力が増すと思うのですが。

更に毎晩継続してムクドリの集団就塒を観察すれば何か分かったかもしれません。
しかし私も忙しくなり、この件はひとまず打ち切りました。
秋になってから観察を再開します。


ネムノキの葉が夜に閉じる就眠運動【微速度撮影】その3:全景



2016年7月下旬

堤防に自生するネムノキAlbizia julibrissin)の小葉が晩に閉じる就眠運動を動画に記録しようと、あの手この手で試行錯誤しています。
この日は新兵器を実戦投入します。
タイムラプス撮影専用のカメラ(Brinno TLC200)を購入したのです。


通常のカメラによる微速度撮影(連載記事その2参照)と同時並行でやります。
少し離れた場所に生えた別の灌木bを選んで三脚を立てました。
なぜか咲いている花が少ない木でした。
三脚の影が被写体に落ちないように注意しました。
明るいうちにまず、葉の開いた状態をハンディカムの動画で記録しておきます。
この冒頭部(〜0:34)のみ動画編集時に自動色調補正を施しています。

日没前後の約2時間半(午後17:16〜19:43)、20秒間隔のインターバル撮影しました。
連続写真に日時と時刻を焼き込む設定にしました。
撮影終了後は15fpsの設定でAVI動画に変換しました。
やや引きの絵(全景)にしてみたら、葉の就眠運動はいまいち分かり難くなってしまいました。
(Night Sceneモードで撮れば少しはましだったかな?)
完全に暗くなってから(微速度撮影終了後)、葉の閉じた状態を赤外線の暗視カメラで記録しました。



ちなみに、この日の公式な日の入り時刻は午後18:51。
実際はそれよりも早く裏山に日が沈んで暗くなります。

次は、夜明けにネムノキの葉が開く運動を撮影してみます。

つづく→ネムノキの開葉運動【微速度撮影】




2016/11/12

ヒマラヤスギ並木に塒入りするムクドリ(野鳥)の群れ



2016年7月下旬・午後18:53〜19:07

▼前回の記事 
ムクドリ(野鳥)小群が前日の就塒前集合場所を経由して塒入り
高圧線の鉄塔B#29に就塒前集合していたムクドリSturnus cineraceus)の大群はヒマラヤスギの並木に塒入りしました。
針葉の茂った梢の枝にかなり密集して騒々しく鳴き交わしています。
群れ全体が塒内でしばらくは落ち着かず、枝から枝へ飛んで移動しています。
着陸直前にホバリング(停空飛翔)しています。
西の夕焼け空を背景にヒマラヤスギ樹冠を飛び回るムクドリのシルエットが美しいですね。

ヒマラヤスギの並木は大小合わせて計10本植栽されていました。

余談ですが、名前とは裏腹にヒマラヤスギはマツ科です。
残念ながら勝手に立ち入れない敷地にあるため、暗くなってからの撮影や観察はできませんでした。

この日の公式な日の入り時刻は午後18:49。

前の晩は運動場(グラウンド)の反対側に位置するケヤキの並木にムクドリは塒入りしました。

▼関連記事 
ケヤキ並木に塒入りするムクドリ(野鳥)の大群
本に書いてあった通り、ムクドリは必ずしも毎晩同じ場所に集団就塒するのではないことが分かりました。
実はこの日の晩に、件のケヤキ並木を集団塒としたのは別の種類の野鳥でした。

つづく→ケヤキ並木に塒入りするスズメ(野鳥)の群れ






ムクドリ(野鳥)小群が前日の就塒前集合場所を経由して塒入り



2016年7月下旬・午後18:57〜18:58
▼前回の記事
日没と同時に就塒前群飛を始めるムクドリ(野鳥)の大群

日没直後に高圧線の鉄塔B#29から一斉に飛び立ったムクドリSturnus cineraceus)の大群の後を慌てて追いかけます。
ムクドリの群飛を見失ったのでまずは前日に就塒前集合した鉄塔A#30に戻ってみました。(鉄塔A#30、B#29は隣接して建てられ、地図上では340m離れています。)
前の晩には鉄塔A#30から真下のケヤキ並木に塒入りしたのです。

ハシボソガラスは居なくなっていたのに、ムクドリは小群しか鉄塔A#30に飛来しませんでした。
前日の記憶が強く残っている一部の群れだけが再集合しているのでしょうか?
それとも遅くまで採餌していた群れが就塒前集合に遅刻したのかも知れません。
鉄塔A#30に止まりかけたもののすぐに飛び立ち、ヒマラヤスギの方へ向かいました。
群れの本体が既にヒマラヤスギに集結しているようです。
リーダー不在の意思決定を目の当たりにして興味深く思いました。
鳴き声によるコミュニケーションがどのぐらい関与しているのでしょうか。


この日のムクドリの集団塒はケヤキではなく、ヒマラヤスギの並木でした。
ケヤキ並木に塒入りしなかった理由も後述します。

この記事のタイトルの付け方が難しい…。
どうもしっくりくるタイトルが思いつきません。
「前日の就塒前集合場所に少しこだわるムクドリ(野鳥)の群れ」

つづく→ヒマラヤスギ並木に塒入りするムクドリ(野鳥)の群れ


夜メマツヨイグサの花でホバリング吸蜜するスズメガの一種【暗視映像】



2016年7月下旬

住宅地の道端に咲いたメマツヨイグサの群落で夜、スズメガ科の一種が訪花していました。
暗闇でホバリング(停空飛翔)しながら吸蜜する様子を赤外線の暗視カメラで撮り始めたものの、すぐに逃げられてしまいました。
同定用の、写真も撮れていません。



Newton special issue『植物の世界―ナチュラルヒストリーへの招待〈第2号〉』p12によると、
淡い光でも目立ち、やわらかな香りを放つこの花(オオマツヨイグサ)には、スズメガの仲間がよく訪れる。花粉は粘着糸でつづられていて、ガに一部でもつくと、ぞろぞろと多量の花粉がからみついていく。



十亀好雄『ふしぎな花時計:身近な花で時間を知ろう』によれば、
マツヨイグサの仲間は、花粉がねばりけのある糸で数珠のようにつながっていて、夜、スズメガなどがやってくるとその体にまとわりついて、たくさんの花粉を一度に運ばせることができるしくみをもっています。(p113より引用)


▼関連記事
メマツヨイグサの花粉は糸を引いて粘る



翌日の晩にも現場を再訪しました。
記録映像として同じ群落のメマツヨイグサを白色LEDで照らしながら撮っていたら偶然、開花の瞬間に立ち会えました。
微速度撮影や早回し映像にしなくてもリアルタイムで蕾がポンと解けて直径5cmほどの黄色い花がみるみる内に広がります。
花の芳香が強く素晴らしいのは、夜行性のスズメガを誘引して花粉を運んでもらうためです。
昨年は切り花を室内に持ち込んで開花の瞬間を撮影しましたけど、野外で直に観察できたのは非常に幸運でした♪

▼関連記事
夜に開花するメマツヨイグサ




【追記】
加藤真『夜の送粉共生系』によると、
アカバナ科のマツヨイグサ類などはスズメガ媒花として適応放散した一群である。日本のスズメガ媒花はひじょうに少ない。(中略)日本産スズメガの種数はけっして少なくはないが、琉球列島を除けばその多くはマルハナバチ媒花の盗蜜者の地位にあると思われる。 (『花の自然史:美しさの進化学』p82より引用)



【追記2】
夜行成果薄明薄暮性の蛾に受粉を依存する植物(ガ媒)の花は、以下の特徴をもつことが多いといわれています。
  • 夜か薄明の時間帯に咲く。
  • 花の色は白科緑、薄色系、または褐色。
  • 花筒か距が発達して細長く、花蜜が奥深くに隠れている。
  • 葯や柱頭が外に向かって飛び出しているものも多い。
  • 強くて甘い香りをもつ。
  • 花蜜の濃度は薄い。 (p65より引用)

2016/11/11

日没と同時に就塒前群飛を始めるムクドリ(野鳥)の大群



2016年7月下旬・午後18:49〜18:51

▼前回の記事
高圧線鉄塔Bに就塒前集合するムクドリ(野鳥)大群の羽ばたき【ハイスピード動画】


郊外に立つ高圧線の鉄塔B#29にムクドリSturnus cineraceus)の大群が就塒前集合しています。
新たな大群が鉄塔に飛来し、着陸しようと試みますが既にもう満員なので、群れ全体が飛び立ちました。

ムクドリの有名な就塒前群飛(murmuration)が遂に始まりました。
誰かヒトが驚かせた訳ではなく自発的に始まりました。
この日の公式な日の入り時刻(午後18:49)と正確に一致していたのが興味深いです。

『カラー版自然と科学50:ムクドリ』p34によると、
ほとんどの群れは、日のしずむまえにねぐらにつきます。しかし、つくとすぐにねる場所のしげみのなかにはいるのではなく、しばらくあたりの樹上や電線でやすんでいたり、上空をとびまわったりします。日がおちて最後にひとしきりとびまわると、そのあとにねぐらのしげみにはいるのです。しげみにはいるまえにとぶ行動は、ねぐら前群飛とよばれています。


ムクドリの大群は上空を旋回してから鉄塔#29に戻りました。
ところがすぐにまた大音量で鳴き交わしながら一斉に飛び立ちました。
壮観です。
集団塒の方へ飛び去り上空を乱舞しているのですが、住宅地なので見通しが悪く、行き先は見届けられませんでした。
高圧線の鉄塔B#29には1羽のムクドリも残っていません。

つづく→ムクドリ(野鳥)小群が前日の就塒前集合場所を経由して塒入り


2016/11/10

高圧線鉄塔Bに就塒前集合するムクドリ(野鳥)大群の羽ばたき【ハイスピード動画】



2016年7月下旬・午後18:34〜18:48
▼前回の記事
ムクドリ(野鳥)が就塒前集合する高圧線鉄塔を前日から変更

郊外に立つ高圧線の鉄塔B#29にムクドリSturnus cineraceus)の大群が続々と集結しています。
飛来したムクドリが鉄骨に着陸する前にホバリング(停空飛翔)する様子を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
持参した一脚が大活躍しました。
基本的に少しずつ鉄塔に近づきながら撮影した映像をつないだものです。
例外として、派手なシーンを動画の掴みとして冒頭(0:00〜3:25)に持ってきました。

ちなみに、この日の公式な日の入り時刻は午後18:49。
この鉄骨が集団塒なのではなく、一時的な待ち合わせ場所(就塒前集合)であることが後に判明します。

つづく→日没と同時に就塒前群飛を始めるムクドリ(野鳥)の大群





2016/11/09

ムクドリ(野鳥)が就塒前集合する高圧線鉄塔を前日から変更



2016年7月下旬・午後18:30〜18:47

▼前回の記事
就塒前集合場所に向かって飛んで行くムクドリ(野鳥)の群れ

ムクドリSturnus cineraceus)が前日に就塒前集合した鉄塔A#30に行ってみたのですが、ハシボソガラスが数羽止まっている居るだけでした。

▼関連記事
ハシボソガラス(野鳥)高圧線鉄塔での決闘

その代わりに高圧線を辿って一本離れた隣の鉄塔B#29にムクドリが続々と集結していました。
怖いカラスをムクドリが忌避し、就塒前集合場所を臨機応変に変更したのかもしれません。
もしムクドリが大群で押し寄せればカラスも退散したはずですが、就塒前集合は少しずつ集まるのです。

私も鉄塔B#29に少しずつ近づきながら撮影します。
送電線の鉄塔はかなり目立つ構造物なので、集合場所として適しているのは明らかです。
鉄塔の上部に数百羽のムクドリが鈴なりに群がり、リャーリャー♪と騒々しく鳴き騒いでいました。
かなり狭い間隔で鉄骨に並んでいます。
鉄骨に着陸する寸前に停空飛翔(ホバリング)しています。
ムクドリの大群がとにかく興奮しており、辺りは騒然としています。

ちなみに、この日の公式な日の入り時刻は午後18:49。

つづく→高圧線鉄塔Bに就塒前集合するムクドリ(野鳥)大群の羽ばたき【ハイスピード動画】



2016/11/05

夜ケヤキ並木の集団塒で寝静まらずに鳴き騒ぐムクドリの大群【野鳥:暗視映像】



2016年7月下旬


▼前回の記事
ケヤキ並木に塒入りするムクドリ(野鳥)の大群

集団就塒を見届けてから少し休んで時間を潰しました。
完全に暗くなってから現場に戻ると、ケヤキ並木ではムクドリSturnus cineraceus)の大群が未だ寝静まらずに鳴き騒いでいました。
集団塒の下の道を歩いてもムクドリは警戒して飛び立つことは殆どありませんでした。
照明は一切使わず、樹の下に忍び寄って赤外線の暗視カメラで撮影してみます。
(恥ずかしながらビデオカメラ内蔵の時計が狂ったままで、撮影時刻が分からなくなってしまいました。)
鳴き声を頼りに探しても、ムクドリが茂みのどこに隠れて鳴いているのか、全く分かりません。

音声をヘッドフォンで注意深くお聞きになった皆さんはお分かりになったかと思いますが、ムクドリの鳴き声に混じって打ち上げ花火の爆裂音が遠くからかすかに聞こえてきます。
偶然この日は花火大会でした。(田舎なので、規模は小さいです。)
花火の打ち上げが始まっても、ムクドリは塒で鳴き騒ぐだけで、花火の爆裂音に驚いて逃去することはありませんでした。
打ち上げ推定地点からの直線距離は約2kmもあり、影響は少ないようです。

数時間後にムクドリが寝静まった様子も撮影すべきでしたが、誘惑に負けて打ち上げ花火を見に行きました。
打ち上げ会場である河原に生息する水鳥の立場になってみれば毎年開催される花火大会は騒音公害(および光害)でしかなく、いい迷惑でしょう。
野鳥への影響を調べるのは今後の課題です。

『マン・ウォッチングする都会の鳥たち』によると

(ムクドリの)冬季の塒についてはよく知られているが、夏や秋の塒は、突発的に出現し、短期間に消失することが多いので、実態がよくつかめないのが現状である。(p178)
ムクドリが夏から秋に塒として利用する樹木は、イチョウやプラタナス、ケヤキといった落葉樹の高木が多い。したがって、秋の塒は落葉後まで利用されることはない。(p181)



打ち上げ花火が無い夜は、ムクドリの集団塒はもっと早くに寝静まるでしょうか?
まさか夜中も寝言のように鳴き騒ぐのでしょうか?
この点を調べるために、頑張って翌日も見に行きました。


つづく→就塒前集合場所に向かって飛んで行くムクドリ(野鳥)の群れ


『カラー版自然と科学50:ムクドリ』p30-31によると、

ねぐらのしげみのなかでは、一晩中リャーリャー、ギャーギャーとなきながらすごしています。ねぐらにむれる鳥は、日本ではムクドリのほかにスズメやカラスなど何種類かがしられています。(中略)ムクドリはこれらの種のなかでもっとも大きな群れとなり、夜をすごすのが見られる鳥です。



日本野鳥の会『ムクドリのなかまたち(みる野鳥記)』p54によると、

(ムクドリの)群れは、だいたい日暮れ前に、ねぐらの近くに集まり、日が落ちると、ねぐらのしげみに入っていきます。そして、ほとんど寝ていないのではないかというくらい、一晩中鳴き続け、夜が明けると、また、食物を探しに出かけていきます。


ケヤキ並木に塒入りするムクドリ(野鳥)の大群



2016年7月下旬・午後18:53〜19:12


▼前回の記事
ムクドリ(野鳥)の大群が高圧線の鉄塔Aに就塒前集合

運動場(グラウンド)の端にケヤキが並んで植栽されています。
葉の生い茂ったケヤキの樹冠にムクドリSturnus cineraceus)の大群が塒入りを始めました。
ここは大通りには面していないので、少し静かな住宅街です。

グラウンドの近くに聳え立つ高圧線の鉄塔A
#30およびその隣の電柱・電線に就塒前集合していたムクドリが、まるで木の葉落としのように数羽ずつ急降下してケヤキの梢に飛び込んで行きます。
リャーリャー♪と大声で鳴き交わして喧しい。
薄暗くなっても塒内でしばらくは落ち着かず、枝から枝へ移動したりときどき一斉に飛び立って大群で並木の上空を低く飛んだりしています。

ムクドリの大群は一斉に塒入りするのではなく少しずつ飛び込むのは、私に見られているから警戒し就塒を躊躇っているのでしょうか?
後日に何度かムクドリの塒入りを観察しても同様でしたので、これがムクドリの流儀なのでしょう。

遂にムクドリの集団塒を突き止めることが出来て、感無量です。
鳥の糞はグラウンドに落ちるからまだ許せるにしても、鳴き声のすさまじい騒音で近隣住民には迷惑そうです。

つづく→夜ケヤキ並木の集団塒で寝静まらずに鳴き騒ぐムクドリの大群【野鳥:暗視映像】


電柱に就塒前集合するムクドリ

2016/11/04

ムクドリ(野鳥)の大群が高圧線の鉄塔Aに就塒前集合



2016年7月下旬・午後18:50〜18:56

市街地に聳え立つ高圧線の鉄塔A#30にムクドリSturnus cineraceus)の大群が集結し、やかましくジャージャー♪鳴いていました。
周囲からムクドリが続々と鉄塔に集まって来ます。
鉄骨にびっしり密集して鈴なりに止まっているムクドリのシルエットが夕焼け空を背景に見えます。
ムクドリが塒入りの前に行う有名な群飛(murmuration)は既に終わっていたようで、見れずに残念でした。
ちなみに撮影時刻はたまたま、ちょうど日の入り時刻(午後18:50)の前後でした。

観察を続けると、この鉄塔が塒ではなく就塒前集合と分かりました。
素人目にはこのまま高い鉄塔で夜を過ごしても充分に安全そうだと思うのですが、ムクドリの考えは違いました。
実はこの映像でもよく見ると就塒行動が一部で始まっているのですけど、その説明は続編で。

つづく→ケヤキ並木に塒入りするムクドリ(野鳥)の大群



【追記】
『カラー版自然と科学50:ムクドリ』p28-29によると、
北国では冬のあいだムクドリの大群はみられません。北海道や東北地方でムクドリの大群がみられるのは、真夏から秋です。(中略)雪のつもるのがおくれた年、北国ではいつもの年よりおそくまでムクドリの大群がのこっているようです。



2016/11/03

ネムノキの葉が夜に閉じる就眠運動【微速度撮影】その2



2016年7月下旬

ネムノキAlbizia julibrissin)の小葉が夜に閉じる就眠運動を動画に記録しようと頑張っています。
前回と同じネムノキの株aの前に三脚を立てて微速度撮影の準備をします。
まず明るいうちに葉の開いた状態の全景を記録しました。
この冒頭部のみ(@0:00〜0:23)動画編集時に自動色調補正を施しています。

日没前後の2時間20分間(午後17:11〜19:30)20秒間隔のインターバル撮影した連続写真にEXIFから時刻を焼き込んでから改めて早回し映像を制作しました。
前回の動画は30fpsでしたが、今回は15fpsに設定したら動きが滑らかになりました。
ちなみにこの日の公式な日の入り時刻は午後18:51。
今回はやや引きの絵にして葉と一緒に花も写し込むようにしました。
前回撮った枝よりも上にあり若い枝なので、葉が閉じる運動性は高いだろうと期待しました。

撮影はカメラに任せて私は同じ木aの日陰側(東側)の枝を見ていました。
すると、葉の先は閉じるのが遅い傾向にありそうに感じました。
根元の小葉からジッパーのように閉じていく様子を想像したのですが、完成した早回し映像を見直してもはっきりしません。(ほぼ同時に一気に閉じています)

日が沈んで完全に暗くなってから微速度撮影を終了し、後半(@0:38〜)は葉の閉じた全景を赤外線の暗視カメラで記録しました。

この日は並行して微速度撮影の新兵器も投入しました。
つづく→ネムノキの葉が夜に閉じる就眠運動【微速度撮影】その3:全景



【追記】
瀧本敦『花を咲かせるものは何か―花成ホルモンを求めて (中公新書)』によると、
オジギソウ、ネムノキ、インゲンマメなどの葉は昼間ほぼ水平に開いて太陽の光をよく受け取るようにしているが、夜になると葉を閉じる。葉の閉じ方は植物の種類によってまちまちで、オジギソウやネムノキでは小葉が上に向かって重なり合って閉じ、インゲンマメの葉は下方に折り畳まれる。また、クローバーの葉は立ち上がって閉じるが、カタバミの葉は下方に折り畳まれる。(中略)シソの葉はこわばったようにすべて下を向いて体を包んでいるように見える(p178より引用)このような植物は昼間、太陽の光を受けて葉を開き、夜暗くなると葉を閉じるものと思っていたヒトが多いと思うが、夜間電灯照明を行っている温室でも夜になるとこれらは葉を閉じるのである。(p179より)



2016/11/02

ムクドリ(野鳥)の群れがシダレザクラに就塒前集合



2016年7月下旬・くもり・午後18:01〜18:29

夕刻になるとムクドリSturnus cineraceus)の群れがシダレザクラに続々と集結してやかましく鳴き騒ぎ始めました。
葉が生い茂った梢に止まると、自分で羽繕いしています。
枝上で並んでも相互羽繕いはしませんでした。
枝上であまりにも近くに来た図々しい個体に対して嘴で突いて追い払うことがありました。(パーソナルスペースの問題?)

鳥の大群という異変に気づいた近所の子供(ヒト)が負けじと大声を張り上げています。

刻々と薄暗くなってくる上に逆光で見づらいのですけど、ムクドリの成鳥だけでなく幼鳥や若鳥も混じっています。
白い部分が無くて全体が黒っぽい灰色の個体は巣立ったばかりの幼鳥で、白黒のコントラストが弱いのが若鳥だと思います。

『ムクドリの子育て日記』p39によれば、

巣立ったばかりのヒナたちは、親鳥といっしょに、エサがあって安全な場所に行く。しばらくのあいだは、親からエサをもらう。そして、だんだんと自分でエサをとることをおぼえていき、6月末から7月には、ひとりだちする(若鳥は、親にくらべて羽の色がうすいが、秋には、成鳥と同じ色になる)。


『ムクドリ (カラー版自然と科学50)』p16-20によると、

ヒナは、親鳥よりあわい羽の色をしています。

混群というほどではありませんが、スズメが少数ながらもムクドリの群れに紛れ込んでいます。
近くの枝に居るスズメをムクドリが排斥することはありませんでした。
このままシダレザクラの樹冠でムクドリと一緒に夜を過ごすのでしょうか?

ところが私が油断して眼を離している隙にムクドリはどこかへ行ってしまいました。
午後18:46に辺りが静まり返ったと思ったら、シダレザクラの樹冠に鳥は1羽も居ませんでした。(そして誰も居なくなった)
移動シーンを見逃したのは痛恨の大失敗。
てっきりシダレザクラで夜を過ごすのかと思いきや、どこかまた別な場所にある集団塒に移動したようです。
つまり、私が見ていたのはムクドリの就塒前集合でした。

ちなみに、この日の公式の日の入り時刻は午後18:58。
昼間は暑くならず、涼しくて過ごし易い一日でした。

悔しいので、日を改めてムクドリの集団塒がどこにあるのか突き止めることにしました。
つづく



2016/10/29

ハクセキレイ(野鳥):ケヤキ樹冠への集団就塒



ハクセキレイ(野鳥)集団塒の定点観察#11


2016年6月中旬・午後18:58〜19:29

19日ぶりの定点観察です。
記事を書く順番と実際の観察日時の順番がずれてしまいました。

塒入り予想時刻の少し前に現場に着くと、月が出ていました(月齢13.0。)。
午後18:53には未だどの塒にもハクセキレイMotacilla alba lugens)は不在でした。
就塒前集合もしていませんでした。
5分後、近くの大型店の屋根でハクセキレイ♂が一羽鳴いていました。
広い駐車場に鳴き声がよく響き渡ります。
駐車場の外灯は既に点灯しています。
鳴き終わると塒のあるケヤキ並木のへ飛び去りました。

しばらくすると、塒となるケヤキ並木の真上を通る電線にハクセキレイ♂♀の群れが集まり始めました。
鳴き交わしながら嘴を電線に擦りつけたり羽繕いしたりしています。
その中に♀も見つけました。
早目に塒入りした個体がケヤキの茂みの中で枝から枝へ飛び回っています。

塒を見下ろす建物の屋根で独り鳴いている♂個体が居ます。
奥にある某店舗のトタン屋根(三角屋根)にはこの日はなぜか就塒前集合していません。
大通りを照らす水銀灯やナトリウムランプも点灯しました。

以前集団塒に使っていた電柱N、Sを見てみましょう。(この2本の電柱は電線2本で結ばれています。)
電柱Nにはハクセキレイは一羽も集まっていませんでした。
一方で通りを挟んで反対側の電柱Sには、2羽の個体が電線に止まっていました。
この後、すぐ近くにあるケヤキの樹冠に飛び込むのでしょう。

この日の観察で一番興味深かったのは、メインの集団塒から離れて通りの反対側にあるケヤキの樹冠に単独で就塒した♂個体を帰りがけに見つけたことです。(@4:53〜)
鳥が止まった横でケヤキの葉は糞で白く汚れていました。
赤外線の暗視動画でなくとも外灯の光でなんとか撮影できました。
カメラで撮られていることに警戒したのか、一匹狼の♂は鳴きながら(警戒声を発しながら?)飛びたつと車道を渡り仲間が居る集団塒に合流しました。
もし私が邪魔しなければ、そのまま独りで寝たのかな?



ちなみに、この日の公式な日の入り時刻は午後19:05。

私の観察スタイルは動画撮影を最優先にするため、ハクセキレイ個体数のカウントまでとても手が回りません。
それでも集団塒を利用するハクセキレイの数が以前よりも少し減ったような印象を受けました。
三角屋根で就塒前集合しなくなった点も気になります。
繁殖期が進んで雛が巣立つと、集団塒を次第に解消するのか、あるいは別な場所に引っ越すのかもしれません。
これは未だ個人的な仮説です。

つづく→#12

記事を書く順番と実際の観察日時の順番が合わなくなってしまいました。
時間軸に沿うと、#10(翌朝の離塒)に続きます。


2016/10/25

ネムノキの葉が夜に閉じる就眠運動【微速度撮影】



2016年7月下旬

「動く植物」も魅力的な撮影テーマです。
ネムノキは夜に小葉が閉じる就眠運動で有名です。
堤防に生えたネムノキ(Albizia julibrissin)の灌木を選んで微速度撮影してみました。



西日が逆光にならないように、土手の上側に三脚を設置し順光で撮るようにします。
なるべく風で枝が揺れないように、茂みの下方の枝を被写体に選びました。(後にこれが問題になります。)
FZ300カメラに内蔵されたインターバルショット機能を初めて使ってみました。

  • 暗い条件下で撮影すると「長秒ノイズ除去」してくれる。
  • インターバル撮影終了直後に動画へ自動変換してくれる。
  • オリジナルの連続写真は消去せずに残してくれる。
時刻を動画内に焼き込みたくて、結局は素材の写真から加工編集し直しました。

日没前後(午後17:07〜19:21)の2時間14分間、20秒間隔でインターバル撮影してみました。
この日の公式な日の入り時刻は午後18:55。
ただし、裏山の陰に日が沈んだ18:21以降は一気に薄暗くなりました。
照度計が欲しいところです。
辺りが暗くなるとAFピント合わせのための赤いLED(補助照明)がインターバル撮影の度に点灯するようになります。
この不自然な光が植物の就眠運動に影響したら困るので、途中からMF(固定焦点)に切り替えました。

撮影しながら観察してみると、ネムノキ木の個体として全ての枝が一斉に葉を閉じるのではないことが分かりました。
同じ木でも日陰(土手の下側、東側)の葉は早く閉じました。
樹冠の若い枝の葉
は早く閉じる傾向あり、根元に近い古い枝の葉は反応が鈍い印象を受けました。
古い枝は小葉が固くなるのかな?
根元の枝は日中も日陰になりがちなので光量のコントラストが低く、閉じにくくなるのでしょうか?
葉を閉じるのに必要なエネルギー(光合成)の蓄えが乏しく、反応が鈍くなるのかな?



完成した早回し映像を見ると、確かに葉が閉じていました。
ネムノキの閉じた葉は、知らない人が見たら水不足(日照り)で萎れたように見えるかもしれません。
しかし今回の被写体に選んだ枝があまり良くなかったようで、小葉の一部がなぜか閉じ切りませんでした。
動画の出来にいまいち満足できなかったので、反省点を活かして後日もう一度挑戦してみます。

つづく→その2






2016/10/12

コガタスズメバチの古巣を餌にヤマトゴキブリの飼育は可能か?



【はじめに(実験の目的)】

昨年、ヤマトゴキブリがコガタスズメバチの巣に深夜侵入を試みている興味深い例を見つけました。

▼関連記事
コガタスズメバチの巣に居候するゴキブリ【暗視映像】
コガタスズメバチの巣材は樹皮ですから、朽木を好んで食べるヤマトゴキブリが居候しつつスズメバチの巣をこっそり食害していても不思議ではありません。
あるいは巣内のスズメバチの食べ残し(虫の死骸)や排泄物が目当てなのかもしれません。

中南米では蟻の巣に居候する「好蟻性ゴキブリ」が知られているそうなので(『裏山の奇人:フィールドの生物学14』p159より)、日本に「好雀蜂性ゴキブリ」が居ても良さそうだと思いました。


しかしゴキブリは物陰に潜む性質がありますから、「野外で夜に徘徊中のヤマトゴキブリが偶然コガタスズメバチの外被ポケットに迷い込んだだけ」という可能性があります。
この問題を検討するために素人でも出来そうな実験として、採集したスズメバチの古巣だけを餌にしてヤマトゴキブリを飼育できるかどうか、試してみることにしました。


【材料と飼育方法】

2016年6月下旬

ヤマトゴキブリ成虫♂(Periplaneta japonica)を室内の廊下で見つけたので、いそいそと生け捕りにしました。
とりあえず水分補給のためニンジンのへただけ給餌しておいて、その間に準備します。

まずゴキブリが勝手に脱出しないように、飼育容器の内壁の上部にバターを塗ります。(バタートラップ)

▼関連記事
ヤマトゴキブリの飼育容器にはバターを塗れ!(終齢幼虫)
最近バターは品薄で高いので、仕方なくマーガリンで代用しました。
(後々、これが問題になります。)
飼育容器の蓋にあるスリット状の通気口にセロテープを貼って塞いでおきます。

2015年12月上旬に軒下から採集したコガタスズメバチの古巣をこの日のために保管していました。
(冒頭で紹介した関連記事に登場する、まさに同一の巣です)
巣の内部構造を調べたときに外皮と巣盤を少し崩しました。
外皮と巣盤の両方を少量ずつ飼育容器に入れてやりました。
ゴキブリの飲水はペットボトルの蓋に入れて与えました。
最初の1日だけ与えたニンジンは取り除きました。
スズメバチの古巣と水だけで果たしてゴキブリは生き延びるでしょうか?

巣を食べる様子を観察できるかな?



この飼育容器にヤマトゴキブリ♂を投入し、様子を見ます。
夜行性の活動を赤外線の暗視カメラで撮影してみました。



バタートラップを過信して、蓋を外して撮影していたら、なんとゴキブリが脱走してしまい焦りました!
餌のスズメバチ古巣が大き過ぎて、ゴキブリがそれを踏み台としてバタートラップを易々と突破したのです。
もっと深い飼育容器を使うか、餌のスズメバチ古巣をもっと小さく砕いて与えるべきでした。
幸いヤマトゴキブリはおっとりした(のんびりした)性格なの
で、すぐに再逮捕できました。


【結果と考察】

飼い始めたものの私も他に色々と忙しくなり、その後じっくり腰を据えた観察ができなくなりました。
ヤマトゴキブリ♂がコガタスズメバチの古巣を食べているところは残念ながら一度も見ていません。
パリパリ♪と齧る音がすればすぐ気づくだろうと思ったのですが、いつ見ても物陰に潜んでいるだけでした。
以前ヤマトゴキブリを普通に飼育したときには、音を立てて朽木の樹皮を食べていたのです。

▼関連記事
朽木を食べるヤマトゴキブリ♀

7月上旬にもう一匹のヤマトゴキブリ♂成虫を追加で投入し、同居させました。
飲み水だけは切らさないように与えていたのですが、7月中旬までに二匹とも相次いで死にました。(私の印象では餓死)



素直に考えれば、「コガタスズメバチの古巣はヤマトゴキブリの餌にはならない」という結論になりそうです。
しかし単に♂成虫の寿命かもしれない(※追記参照)ので、次に機会があればゴキブリが幼虫の段階から飼育してスズメバチの古巣だけで成虫に育つかどうか調べる必要があります。
本種は♀だけで単為生殖が可能らしいので、♀成虫から始めてスズメバチの巣だけを餌に継代飼育ができるかどうか挑戦したかったのですけど、今季はヤマトゴキブリ♀を見つけられませんでした。

スズメバチの新鮮な巣を使えば結果は変わっていたでしょうか?
古巣を保管している間にゴキブリを誘引する匂いが飛んでしまった(揮発)とか、古巣に(目に見えない)カビが生えて栄養価が落ちたとか、可能性を考えだすと切りがありません。

結果の解釈を更にややこしくしているのは、バタートラップの代用にしたマーガリンの問題です。
私は全く知らなかったのですが、「植物性のマーガリンはトランス脂肪酸を含み、ゴキブリやアリも嫌うぐらいなので人体に有害である」という俗説が流布しているそうです。
飼育容器から脱走を試みる度に滑落したゴキブリは足の先や触角に付いたマーガリンを舐めて掃除するので、必然的にマーガリンを摂取することになります。
もし噂通りにマーガリンがゴキブリに対して多少なりとも経口毒性をもつのであれば、私の実験は台無しです。
次回はバタートラップをマーガリンで代用しないように気をつけます。
マーガリンの毒性の有無については私の本来の興味から外れるので、追求する余力はありません。

今年も決着はつきませんでしたが、「野外で夜間観察した事例は、ゴキブリがスズメバチの巣を食べに誘引されたのでは無さそうだ」という考えに傾きつつあります。(大発見かも?という興奮が冷めつつあります。)
それでも、来季以降も片手間にしつこく飼育・実験するつもりです。



※【追記】
辻英明『ゴキブリ、都市を語る ― 同居人と隣人』によると、
ゴキブリの成虫の寿命は長く、初夏に成虫になったヤマトゴキブリやクロゴキブリの両君は秋まで生存します。 (ポピュラー・サイエンス241『都市動物の生態をさぐる:動物からみた大都会』第6章 p157より引用)


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