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2014/02/25

イシサワオニグモ♀(蜘蛛)の円網を霧吹きで可視化してみる



2013年9月下旬

前回の記事はこちら→「イシサワオニグモ♀(蜘蛛)の体外消化

イシサワオニグモ成体♀(Araneus ishisawai)は正常円網の左上にある隠れ家で食事を続けています。
網を可視化するために、持参した霧吹きで水滴を全体に噴霧してみました。
秋晴れで空気が乾燥している(湿度が低い)のか、糸に付着した水滴がすぐに乾いてしまいます。
そのため、可視化の効果は「まあまあ」でした。
雨上がりのクモの巣はフォトジェニックですよね。
※ 動画編集時に自動色調補正を施して網や糸を更にシャープに強調しています。
逆光になった部分は網が全く見えません。
網の背後に大きな黒い布を張り巡らそうかと考えたりもしました。

(そこまでするんだったら、採集して飼育下で観察するべきか…?)
静止画写真の場合はストロボを焚けば済む話ですけど、昼間に動画で記録するのは結構大変です。
現場に強力な照明機材を持ち込まないといけないでしょう。
おそらく前日から網を張り替えていないので、トンボを計3匹給餌した結果、網のあちこちが破けています。
どうせならきれいな状態の網に霧吹きして、美しい幾何学構造をお見せすれば良かったですね。

一方、隠れ家のクモは網の振動を感じているはずなのに霧吹きされても全く無反応で食餌に夢中です。
もしかしたら隠れ家から糸を引いて落下し慌てて逃げるかなと予想しましたが、そこまで臆病ではありませんでした。

実はもう一つ撮影したいテーマとして、造網開始を今や遅しとひたすら待っていました。
霧吹きで濡れた横糸の粘着力が落ちて使い物にならなくなり、網を張り替えてくれるかと期待したのです。(一石二鳥の狙い)
しかし、この日の観察では夕方まで待っても円網を張り替えませんでした。
観察する時間帯が悪いのかもしれません。
朝から大きな獲物(ノシメトンボ♀)を給餌したので、満腹状態のクモはわざわざ網を張り替える動機が薄れるのでしょうか。



つづく→「網に付いた枯葉を取り除くイシサワオニグモ♀(蜘蛛)

2013/03/17

ムモンホソアシナガバチの巣で個体標識してみる



2012年7月上旬

クマザサの葉裏に営巣したムモンホソアシナガバチの定点観察2

前回の観察の翌日に初期巣を再訪すると、ムモンホソアシナガバチParapolybia indica)のワーカーが一匹羽化していました。
羽化直後のアシナガバチは複眼が黒いのですぐに見分けられます。
前日から今日にかけて羽化した長女W1です。

巣を守る創設女王(手前)

羽化直後のハチの複眼は黒い

巣の全景@クマザサ葉裏

初め、創設女王Qは育房を点検して回り、巣柄に蟻避け物質を塗布していました。
羽化直後のワーカーW1はQの邪魔にならないよう常に巣盤上部裏側でおとなしくしています。

個体識別のため、一匹ずつ捕獲して炭酸ガス麻酔下でマーキングを施すことにしました。
創設女王は水色に(Q水)、ワーカー長女は桃色に(W1桃)油性ペンで胸背と腹背の2ヶ所にペイントしました。

創設女王を麻酔下でマーキング(水色)

ワーカーW1を麻酔下でマーキング(桃色)

創設女王Q水の右翅にもインクが付いてしまいました。
飛行に支障を来さないか心配ですが、きっと大丈夫でしょう。
未だしばらくは女王Q水が外役もこなさなければいけません。

インクが乾いたら巣に戻してやり、麻酔からの回復を待ちます。
CO2麻酔から醒めたハチは巣上で身繕いに余念がありません。

標識後に巣へ戻してやる。



怖い蜂が麻酔されている間に落ち着いて育房を数えると29室でした。
卵、幼虫、蛹と全てのステージを育房内に見ることができます。
羽化済みの空になった育房が初期巣で一番初めに作られた育房と考えられます。
裏側に伸びた巣柄の位置関係も矛盾しません。
そこから育房の増築過程をある程度は推定できます。

育房29室。中央付近に羽化済みの育房。卵、幼虫、蛹の各ステージが見える。

動画には撮れていませんがこの後、一匹のアシナガバチが飛来し、巣の手前で定位飛行を行ってからすぐに飛び去りました。
この巣で羽化済みの育房は未だ一つしかありませんから、別の巣のワーカーが偵察にやって来たのでしょうか?

せっかく個体標識してこれから定点観察が面白くなる所なのに、その後この巣はクマザサごと駆除されてしまいました…。
シリーズ完。


2012/09/27

エントツドロバチ♀の集団採土場(蜂を個体標識してみる)



2012年7月中旬・気温25℃

神社の境内で赤土が露出した地面にエントツドロバチ(別名オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseniが何匹も巣材集めに通って来ています。
軒下に固く締まった地面を大顎で削り取りながら、吐き戻した水とこねて泥玉を作り、泥巣を作る材料とするのです。
果たして何匹のエントツドロバチ♀が採土に通っているのか個体識別してみることにしました。
蜂をいちいち捕獲・麻酔・標識するのは面倒ですし、蜂にも負担(ストレス)がかかります。
地面で夢中になって泥玉を作っている蜂を狙って、腹背に素早く油性ペンでちょんと印を付けてみました。

大型の蜂だからこそできる芸当です。
体に触れられた蜂は驚いて飛び去りますが、この程度で反撃したり刺したりすることはありません。



水色と桃色の2色で一匹ずつマーキングに成功しました。
三脚に固定したカメラで動画撮影したのですが、標識作業はうまく撮れませんでした。(カメラのアングルを考える余裕がなく、肝心の手元が腕で死角になってしまった。)

マーキングされた蜂はしばらく姿を見せなくなり、心配になりました。
しばらく待つと採土を再開してくれたので一安心。
♀水色を個体標識する際に手元が狂ってインクがドバっと出てしまいました。
右翅も汚してしまったのですが、幸い飛翔には支障ないようです。

入れ替わり立ち替わり採土場に飛来し、泥玉を作って帰巣するエントツドロバチ達の様子をご覧下さい。

(無駄に長い動画なので、適当に飛ばしながらご覧下さい。)

観察で気づいた点を箇条書きに。

  • 少し離れた位置に着陸しても、結局お気に入りの採土場に歩いて到着。
  • 泥玉が完成すると、地上で羽ばたいたり身繕いしてから飛び立つ。
  • もう採土場に通い慣れて完全に記憶しているためか、泥玉を抱えて飛び去る際に定位飛行を披露する蜂はいない。
  • 採土場で♀同士が出会っても激しい干渉や喧嘩にはならない。一方、例えば採土しているスズバチ同士は出会い頭に激しく喧嘩します
  • 写っている採土場の中でも更に土質の優れた一等地があるような印象。順番待ちしてでもなるべくお気に入りの一等地から採土する傾向?
  • いかにも獲物となりそうな尺取虫が近くの地面を徘徊したときも、採土モードで頭がいっぱいのエントツドロバチは見向きもせず、狩りを行わず。


後半は採寸のため、採土場に一円玉を置いて動画に写し込みました。
映像を見る限り、蜂の体長は♀水色>♀桃色、♀無印とまちまちでした。
幼虫時代の栄養状態(育房内の貯食物の量)で成虫の体格が決まってしまうのでしょう。

♀水色が最も頻繁に採土に訪れています。
各泥巣の営巣段階に応じて巣材の需要が違うのかもしれません。

残念ながら、蜂がどこで営巣しているのか突き止められませんでした。

採土前に蜂がどこで水を飲んで来るのかも不明です。
♀桃色および♀水色の帰巣方向は二匹ともほぼ同じ北北東。

他の方角へ飛んで帰る蜂もいます。
ドロバチは原則として、単独で独立の場所に巣作りしているはずです。
しかしエントツドロバチの場合はそうとも言い切れません。
本種の営巣習性はドロバチにしてはきわめて特殊かつミステリアスです。
亜社会性を示し、羽化した娘バチは母巣にとどまって繁殖する傾向があるらしい。
エントツドロバチは一番身近に多いドロバチですが、個人的に営巣の全貌を観察するのが一番難しい蜂だという気がしています。図鑑に記述された習性を自分の目で一つ一つ実際に確認するだけでも強烈に難しいです。随時給餌を行うため営巣のペースがのんびりしていることも難しさの理由です。

残念ながら飛来する全個体をマーキングする前に夕刻となり時間切れ。
薄暗くなると蜂がぴたっと来なくなりました。
それでも、この日は少なくとも3匹のエントツドロバチ♀が同じ採土場に通っていたことが分かりました。

ただし、全てのエントツドロバチ♀が必ずしも同じ場所に通っている訳ではなく、4mほど離れた地面から採土する個体もいました。(一匹を白色で標識。映像なし)
2箇所の採土場を同時に監視することはできませんが、♀白が監視カメラに映ることはありませんでした。

実は去年も全く同じ場所でエントツドロバチの集団採土を目撃してます。(映像なし)
毎年繰り返されるのは不思議というか不気味ですらあります。
まさか前世の記憶?などと言い出すとオカルトになってしまうので、自分なりに考察してみました。
辺りには幾らでも土が露出しているのに、ここがよほど巣材に好適な土質なのだろうか?
あるいは同じ泥巣から羽化した姉妹の♀が行動圏で飛び回っている間に互いを意識して(真似して)自然と同じ採土場に集まってくるのだろうか?

エントツドロバチの乾燥標本を囮(デコイ)として何匹か適当な地面に置いておけば、仲間が採土に飛来するだろうか?
(蟻に見つかったらデコイの蜂はあっと言う間に持ち去られそうな気がします。)
母蜂がこしらえた独房で育った娘蜂は馴染みのある巣材を近所から匂いなどで探し当てる能力があるのかもしれません。

採土場に集まってくる♀がもし血縁関係にあるのなら、集合フェロモンを放出している可能性もあるかも?






【追記】
後日、何度か定点観察で通ってみたのですが、採土に来ているのは無印のエントツドロバチばかりでした。
5日後に一度だけ♀水色と再会しました。

インクに急性毒性が無いことも分かりました。





2011/04/14

YouTube動画エディタを用いた手ブレ補正

YouTubeに最近導入された動画エディタを試してみました。
予めアップロードした動画を素材にして、ブラウザ上で簡単な映像編集が出来るのです。
もちろん無料のWEBアプリです。
何よりも気になっていた手ブレ補正機能(stabilizer)をテストしてみます。


オリジナル映像↓。



次にこちら↓が手ブレ補正後の映像。



未だ一つのサンプルで試しただけですけど、なかなか良さそうです。
カメラ本体にも光学手ブレ補正機能があるのですが、手持ちで撮った映像がまるで三脚で固定したように安定しました。
(stabilizerのパラメータは初期設定のまま。)
ローカル環境(自分のパソコン)で手ブレ補正のデジタル処理を施すには相当強力なCPUパワーが必要となります。
私はこれまで無料の動画編集ソフトVirtualDubのDeshakerフィルタを用いて手ブレ補正していました。わずか数分の映像でもエンコード処理に数時間かかっていました。
ファイル容量の大きなHD動画ともなると計算(エンコード)時間や消費電力も馬鹿になりません。
これをYouTube/Googleが無料で肩代わりしてくれるのですから、恐るべき(夢のような)サービスと言えるでしょう。
クラウドに力を入れているGoogleの面目躍如。
節電効果もありそうです。


使い方の解説記事は、例えばこちら→
複数の動画を連結したりトランジションやBGMを付けることもできるそうなので、追い追い試してみます。
特に凝った編集をしない人は高価な動画編集ソフトを買い求める必要がなくなりそうですね。


2011/03/27

ウェブカメラの暗視接写テスト:ネコハエトリ亜成体(蜘蛛)



2007年3月中旬

せっかく暗視可能なWebカメラを買ったので(GROOVY GR-CAM130N2)小さな虫を試し撮りしてみました。
赤外線LED8個のリングライト搭載、 最短接写距離は50mmというスペックです。
画質は640 x 480、30fpsでキャプチャしました。
被写体は最近捕獲した体長5mmのネコハエトリ亜成体♂(Carrhotus xanthogramma)。
ハエトリグモは昼行性らしいので夜間の行動観察は余り意味がないかもしれませんが、練習台ということで。 


亜成体で越冬するネコハエトリをこの段階で外見から性別判定するのはなかなか難しいらしいのですが、赤外線カメラで撮ると♂成体に特有の黒いキ印が背腹に浮かび上がって見えることに気づきました。
同一個体を普通のデジカメで撮っても体毛に隠れて?キ印は見えません。


2011/03/24

食事中のヤマオニグモ♀(蜘蛛)



2007年7月上旬

山中に張られた大きな垂直円網で食事中でした。
ヤマオニグモ♀(Araneus uyemurai)と闇クモ画像掲示板にて教えてもらいました。


網を挟んでこちらに腹面を向けていて、あいにく裏側に回り込めませんでした。
クモを驚かせずに背面を撮るために網の横から手鏡をかざしました。
クモ屋さんに教わったこの技を初めて試しましたが、難しくてもっと練習が必要です。




2011/03/09

キアシナガバチ創設女王の個体標識



2008年6月中旬

軒下にキアシナガバチPolistes rothneyi)の初期巣が並んで作られています。
営巣段階はまちまちですが、いつ見ても同時に二匹以上の女王が在巣していることはありません(どれかの巣に一匹の女王しか見ない)。
まるで下手糞なアリバイ工作みたいです。
やがて創設女王は同一個体なのではないかと疑うようになりました。
これを証明するために、女王へ個体識別のマーキングを施すことを決意しました。 


狩りに成功した女王が肉団子に丸めた獲物を巣a(巣房数26室)に持ち帰りました。
巣上でしばらく咀嚼した後に肉団子を育房内の幼虫へ給餌して回ります。
その後は丁寧に身繕い(化粧)し、恒例の巣房点検を始めます。 


後半(4:19~)はマーキング直後の映像。
女王が巣房に頭を突っ込んで点検している間に筆ペンでそっと黄色の胸部小楯板に油性黒インクを数回撫で付けました。


体に触れられると慌てて顔を巣房から出すものの、巣から飛んで逃げたり攻撃したりすることはありませんでした。
余り目立ちませんが、接写すると引っ掻いたような印が見えます。
標識したこの個体を女王aと呼ぶことにします。
果たして結果は如何に?

つづく→シリーズ#11


刺されないように一応それなりに用心した服装で行いましたが、初めてなので緊張しました。
特に危険を感じることも無く、意外に簡単に済みました。
こんなことなら、もっと早く決行すれば良かった。

2011/03/07

キアシナガバチ創設女王を標識




2010年5月上旬

軒下に並んだ二つの巣が誰の物なのか調べるために、巣S9に居たキアシナガバチPolistes rothneyi)創設女王を捕獲して個体識別のマーキングを施すことにしました。
同一個体の女王が隣接する二つの巣(S9、S10)を世話していれば、私の予想通り二巣並行営巣が証明されます。
初期巣の段階で捕獲・標識作業を行うと女王が嫌がって(危険を感じて)巣を捨ててしまうことが多いというのが通説らしいが、駄目元で決行しました。
前年(2009年)のように初期巣が別の女王に乗っ取られる可能性もあるので、なるべく早くから個体識別しておくことが重要なのです。  


麻酔するための炭酸ガスボンベがガス欠となり、充分深く麻酔をかけられませんでした。


水色の油性ペンで胸部と腹部の背中に目印を塗ります。


麻酔から覚める前に巣に戻してやるつもりでしたが、麻酔が浅かったせいで自力で飛び去ってしまいました。
しばらくすると無事軒下に帰ってきました。
少し休むと巣を探し始めたが、どうも見つけられないようです。
軒下は同じ区画の繰り返し構造なので、定位飛行で巣の位置を記憶しても迷子になりやすいのだろう。
麻酔の影響や私を警戒している可能性もありますけど、S6という間違った区画に止まり、巣のあるはずの場所を探しています。
やがて諦めたのか蜂はどこかへ飛んで行ってしまいました。
果たして自分の巣に戻ってくるでしょうか?

つづく→シリーズ#3

2011/02/28

キボシアシナガバチの個体標識



2008年7月上旬

キボシアシナガバチPolistes nipponensis)初期巣の定点観察。
ワーカーがじきに羽化してくるので、個体識別のために創設女王の胸部背中にマーキングを施しました。
100円ショップで買ったアクリル塗料(シルバー)を試しました。
アシナガバチの参考書には爪楊枝で塗ると書いてありましたが、その辺に生えていた笹の新芽を抜き取って楊枝代わりにしてみます。
しかし腰が弱くて使い難い。
もっと堅い草の茎が良さそうです(ナイフで鉛筆削りの要領で先を尖らせる)。
尖った先端部(点)ではなくて面で蜂に軽く触れるように塗りました。
わざわざ捕獲するのが面倒で(却って危険な気がした)、そのままマーキングしました。 


未だマーキングに不慣れなので撮影しながらの作業は難しくて実は少し失敗しました。
女王が警戒して巣の上を動き回るとやり難くなります。
結局カメラを止めてやり直しです。
塗料を体に塗りすぎるとすぐに身繕いで払い落としてしまいます(映像なし)。
前脚で塗料の塊を掻き取り口で拭い捨てたので経口毒性を心配しましたが、どうやら無事のようです。
翅に少し付いてしまったのも失敗。
飛行に影響しては困ります。
女王は明らかに嫌がっているものの、巣を離れて逃げたり攻撃したりすることはなく、こちらが身の危険を感じることは一切ありませんでした。 


※ ワーカーへのマーキングは危険性(攻撃性)が全く異なるそうなので、真似する人はくれぐれもご注意ください。
一時捕獲が必要なようです。 


<参考書>
『日本の昆虫3:フタモンアシナガバチ』文一総合出版・山根爽一
(扱う種は違いますがフィールドワークのバイブルです) 


《追記》 
この塗料は耐久性に欠けることが後日判明し、マーキングに失敗しました。
確立したノウハウというよりも、失敗も含めた素人のフィールドワーク(試行錯誤)日記として御笑覧下さい。


『雄太昆虫記 ぼくのアシナガバチ研究所日記』では白い修正液でマーキングしていました。

つづく→シリーズ#21


2011/02/27

鏡を使ってキボシアシナガバチの巣を観察



2008年6月下旬

キボシアシナガバチPolistes nipponensis)の巣房数を数えようとバリアングルの液晶モニターを見ながらカメラで下から覗きました。
しかし空を見上げる状態になり逆光でよく分かりません。
ストロボを焚くと女王の機嫌が悪くなりそうです。
下向きに作られたアシナガバチの巣を観察するときは、手鏡を使うと便利です。
直接レンズを至近距離に近づけるよりも女王を刺激しないで済むようです。
巣房は約15室でした(巣房の並び方がきれいなシンメトリーでないのでとても数えにくい)。 


女王が己の鏡像に対して(敵と誤認して)大顎で攻撃をしかけるような素振りをみせたのが興味深く思いました。
後日改めて実験したのでお楽しみに。

つづく→シリーズ#13

2011/02/16

羽化直後のキアシナガバチ初ワーカーを個体標識




2010年7月上旬

軒下に営巣したキアシナガバチPolistes rothneyi)のサテライト巣S10から最初のワーカーW1が羽化する様子を観察してから数時間後にまた様子を見に行くと、創設女王Q(水色)も巣S9から巣S10に移っていました。
母娘の初めての対面となります。
ここまで単独で営巣してきた女王蜂にとって喜びもひとしおだと思いますが、特に(感動的な)交流は見られませんでした。
女王とワーカーの体格差はさほど顕著ではないようです。

羽化直後のアシナガバチW1は複眼の色が黒いです。
それに対して創設女王Q(水色)の複眼は褐色です。


在巣の二匹を同時に一時捕獲してCO2麻酔下でW1に個体標識を施しました(油性ペン桃色)。



羽化直後に捕獲してCO2麻酔にかけるのは、もしかすると負担が大きかったかもしれません。
羽化の最中にも胸部にマーキングする機会はあったのですけど、クチクラが固まっているのかどうか心配で躊躇してしまいました(マーキングのせいで羽化に失敗したら元も子もありません)。


麻酔から完全に醒める前に、マーキングしたW1桃を元の巣S10に戻してやりました。
その間、女王Q水は自力で巣S9に帰りました。

【追記】
初ワーカーW桃を改めて見直すと、前伸腹節の黄紋が無くて、セグロアシナガバチっぽく見えます。まさか…?

2011/02/13

手ぶれ補正のデジタル処理(タケカレハ幼虫の接写)



高倍率のマクロ動画を撮影すると手ぶれが一層目立つようになります。
カメラ側の光学手ぶれ補正でもカバーできなくなり、映像を見直すと酔いそうになります。
かといってフィールドでは咄嗟に三脚などを用意する暇もなかなかありません。
そこで動画の揺れを除去するデジタル処理の出番です。
動画編集ソフトVirtualDubでDeshakerフィルターを施してみると見違えるほど映像が安定しました。
ただし私の非力なPCではエンコードに従来の何倍も時間がかかるのが難点です。
三脚取り付けにもたついて撮影チャンスを逃すよりも、手ぶれのひどい映像でも取り合えず撮っておけば後でデジタル補正できることが分かり、気が楽になりました。 


Avisynthを使えば動画素材を二つ並べて披露できることが分かったので、今回はその習作です。
Avisynthは上級者向けのような気がして敬遠していたのですけど、サンプル・スクリプトを参考にしたら簡単に出来ました。
全て無料ソフトなのが味噌です♪ 
是非一度お試し下さい。

2011/02/12

手ぶれ補正のデジタル処理3:風対策として



手ぶれのひどい動画をデジタル修正するのに動画編集ソフトVirtualDub(無料)の専用フィルターDeshakerを愛用しています。
手ぶれだけでなく、例えば虫のマクロ撮影で被写体が風で激しく揺れている映像に対してもかなり有効なことが分かりました。
このサンプルはカメラを一脚で軽く固定して撮りましたが、風に悩まされオリジナル映像を見ると酔いそうになります。
デジタル処理による安定化効果は一目瞭然、本当に凄いです。
Deshaker処理の都合により、シーンの変わり目で1秒間暗転しますが、後でこの部分を編集でカットすれば完成です。


日本語で使い方を解説しているブログはこちら


ツツハナバチの捕獲・麻酔(竹筒トラップ)



2009年5月上旬

今季初めて仕掛けてみた竹筒トラップに営巣している蜂の種類を調べるために、一匹を一時的に捕獲して同定用の写真を撮ることにしました。
おとなしい蜂のようですがそれでも身を守る毒針を持っているらしいので、炭酸ガス(CO2)で一時的に蜂を眠らせました。


麻酔にかかると蜂は舌がだらしなく伸びてしまうようです。実地で試すのは初めてなので作業にもたつき、蜂はすぐに麻酔から醒めて飛んで行ってしまいました。
しばらくすると無事に自分の巣に戻ったようです。


「ヒゲおやじの投稿掲示板」にて写真を見てもらったところ、ツツハナバチOsmia taurus)であると正体を教えて頂きました。
筒の中で作業している蜂の花粉まみれになった顔をアップで見ると、名前(別名ツノツツハナバチ)の由来通り、角が二本生えていました。
本種はシリアゲコバチに寄生されるらしい。

キアシナガバチ標識個体の再捕獲



2009年10月中旬

17日ぶりの定点観察。
営巣末期のキアシナガバチPolistes rothneyi)は集団で巣の上部で身を寄せ合っているだけで何の活動もありません。
そのままでは互いに折り重なって個体識別できないので、今回も簡易ガス室で一斉捕獲しました。
炭酸ガス麻酔下で確認すると、この日の在巣個体は♀ばかり計8匹(桃黄、赤紫、緑水、水白、桃銀、銀、白茶、金青)。
前回マーキングした♀で3匹(桃水、緑黄、金銀)が居なくなっていました。
ワーカーが寿命を迎えたのか、それとも既に越冬に備え新女王の分散が始まっているのだろうか。
気になる点として、どうやら油性ペンの金や銀は塗料が剥げ落ちやすいようです。
今後は使わない方が良いかもしれない。
麻酔から醒めつつある蜂の翅をピンセットで摘むと反射的に腹部を曲げ毒針を出しました。
点検が済んだ蜂は一匹ずつ巣に戻してやります。
最後の一匹は自力で飛んで帰巣しました。
いよいよアシナガバチのシーズンも終わりに近付いています。 


※ ちなみに♀銀は8月下旬にマーキングした個体で、当時はワーカーだと思っていたのでこの時期まで生き残っているのは意外です。
実は新女王なのだろうか。
私には外見では見分けられません。
標識作業の際にうっかり指先を刺された蜂なので、印象深い個体です。

つづく→シリーズ#33

在巣のキアシナガバチを一斉捕獲(炭酸ガス麻酔)



2009年9月下旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)の定点観察を続けていますが、個体識別のため成虫をマーキングしたくても巣から安全に一匹ずつ捕獲する方法が分からず試行錯誤していました。





そんなときYouTubeでこの動画↑(by BRIGHTDOOR1氏)を見て閃きました。
在巣の蜂を一網打尽にするため、ガス室を自作してみました。
1.5Lペットボトルの透明容器をカットし、蓋に穴を開け炭酸ガスのボンベからチューブを通しました。


容器の直径が巣の大きさにピッタリでした。
これを下からそっと近づけると在巣の蜂は警戒したものの、飛んで逃げたり攻撃してくることはありませんでした。
軒下の天井板に押し付けると適度に密閉されて炭酸ガスを注入すれば即効性のCO2ガスで麻酔されます。
全ての蜂がガス室の底に転がり落ちたところで蓋を被せて捕獲完了。
既に標識済みの個体(W桃水、W銀)は早目に取り出して逃がしてやりました。
あとはいつものように12色セットの油性ペンで背中に標識しました(二色の組み合わせ)。


この日は計9匹の♀を新たに標識しました。
在巣の個体は♀のみ計11匹でした。
♂はもう全て巣立ったようです。
処置の済んだ蜂は麻酔から醒めるのを待って一匹ずつ巣に戻してやりました(数匹は自力で帰巣)。
成功したので来年はこの方法で試してみます。
しかし成虫が新たに羽化する度にこの作業を繰り返すことになるので、古株(早生まれ)の蜂に麻酔の副作用(?)が蓄積されるのではないかと少し心配です。

【追記】
この年は軒下に一つしか巣を作りませんでしたが、創設女王が二巣並行営巣する場合があります。
この場合、上述の方法で蜂を一網打尽にしようとすると危険です。
ガス室に閉じ込められ炭酸ガスを吹きかけられると、蜂は麻酔状態になる寸前に反撃体勢となり揮発性の警戒フェロモンを発するようです。
蜂が大人しくなったのを待ってガス室を天板からそっと外すと、ガス室に充満した警戒フェロモンが辺りに拡散します。
その結果、隣のサテライト巣にいる蜂が刺激され一斉に飛び立って攻撃してきます。(一斉蜂起!)
実際に刺されそうになりました。
二巣並行営巣のメリット(防衛力向上)を実感したときでもありました。
誰かに手助けを頼んで二つの巣を同時に麻酔処理すれば安全だと思います。

つづく→シリーズ#32



2011/02/11

キアシナガバチの巣を襲うヒメスズメバチの個体標識



2009年9月上旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)の巣を繰り返し襲うヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)は同時に二匹以上は来ませんが、実際は何匹来ているのか気になりました。
アシナガバチの巣に餌場マークフェロモンを塗りつけて、同じヒメスズメバチの巣の仲間を呼び寄せているかもしれません。
4回目の襲撃中にヒメスズメバチの背中に個体識別のマーキングを施すことにしました。
初めは生け捕りにして麻酔下で作業しようかと思いました。
しかし捕獲する方がむしろ危険な気がしたので、思い切って夢中で獲物を咀嚼しているヒメスズメバチに直接油性ペン(白)で標識しました。


ヒメスズメバチはスズメバチの中でも攻撃性がそれ程高くないと言われています。
胸部の標識には成功したものの、腹部に少しでも触れると露骨に嫌がったので止めました。
このヒメスズメバチ(白)が飛び去ってからも監視を続けると、蛹が無くなるまでの襲撃(5~7回目)は全て同一個体によるものでした。
入れ替わり立ち代り別個体が襲撃するのではないようです。
巣の仲間に狩場の在り処を知らせて協力するミツバチのような伝達能力は無いのでしょう。
単独攻撃でもアシナガバチを制圧できるので、コミュニケーションの必要が無いのかもしれません。


この日は興奮して動画を撮りまくったので、最後はメモリーカードの容量が足りなくなりました。

つづく→シリーズ#30

ソーセージを齧るキアシナガバチ



2009年8月下旬

定点観察中のキアシナガバチPolistes rothneyi)の巣から蜂を安全に生け捕りにする方法を模索しています。
成虫を釣り上げる餌として、この日は魚肉ソーセージの肉片を試してみました。


一匹のワーカー(W桃水)が食い付いてくれ、無事に釣り出すことが出来ました。
その場で肉団子を作り始めるかと見守っていたら、どうもソーセージの肉質が固くて歯が立たないようです。
あちこち噛み付いていたものの、やがて諦めて飛び去りました。
他の個体はこの餌には見向きもしませんでした。


菓子パンのチョコレートと、綿に含ませたスポーツドリンクも試したものの、共に釣り餌として誘引効果はありませんでした(映像なし)。

つづく→シリーズ#22

蜂蜜でキアシナガバチを釣る



2009年8月中旬

コロニーのキアシナガバチPolistes rothneyi)成虫を全て個体識別するのが理想ですが、マーキングしたくても蜂が増えるにつれて巣の上から直接捕獲するのは危険になってきました(エピソード14参照)。
巣の近くで網を振り回して蜂を捕まえるのは効率が悪そうです。
そもそも羽化直後の成虫はしばらく巣を離れません。
在巣の蜂を一匹ずつ安全に(巣に振動を与えず)生け捕りにするために、蜂蜜で釣る方法を思いつきました。
蜂蜜よりも安かったハニーメープルを購入。
原材料の記載は「メープルシロップ、蜂蜜、水飴、香料など」。


棒の先に蜜を塗り、在巣の蜂の口元にそっと差し出してみました。
蜂はなかなか気づいてくれませんが、舐め始めると夢中になり枝によじ登って来ました。
そっと釣り上げた蜂を筒状の容器に捕獲成功。
あとは従来通り、スプレー缶の炭酸ガスで麻酔して油性ペンで胸部と腹部の背中に二箇所マーキングを施します。
標識済みの個体が味をしめたのか懲りずに蜜棒に寄って来ます。
作業の邪魔になるものの、捕獲・麻酔処理による負の学習効果が無い(トラウマになっていない)と分かり一安心。
この日はワーカー5匹(W緑、W金、W青、W紫、W茶)を捕獲・標識できました。
巣に戻してやる前に麻酔が醒めて飛び去ってしまった蜂も自力で帰巣しました。


こうしてある程度は目論見通りだったものの、なぜか糖蜜に全く反応してくれない個体が残ります。
その後も繰り返し試してみたところ、♂は決してこの糖蜜に誘引されないことが判明。
♀で誘引されるのは外役経験のあるワーカーだけと思われます。
釣れない♀は羽化直後で食欲が無いのか未だ花蜜の味を知らないのか、それともワーカーと比べて攻撃性の低い臆病な新女王なのか(差し出した枝から逃げ回る)不明です。
羽化してくる全成虫を片端から標識しないことにはワーカー/新女王の区別も出来ないので、「卵が先か鶏が先か」の問題と同じで悩ましいところ。
餌となる糖蜜の種類を変えてみるなど今後の課題です。
今回のメープルシロップは独特の香りが気に入らなかったのかもしれません。
スズメバチ幼虫が成虫のために吐き戻す栄養液と成分の似たスポーツドリンクVAAM(= Vespa Amino Acid Mixture)も試してみる? 
肉片を使ってみる?

つづく→シリーズ#20


【追記】
『雄太昆虫記 ぼくのアシナガバチ研究所日記』p25でコアシナガバチの好き嫌いを調べていました。
意外な結果になり、好みの順に「醤油>ストロベリーシロップ>メロンシロップ>>オリーブオイル、蜂蜜」とのこと。
セグロアシナガバチではまた違う結果になったらしい。p54
私も醤油で試してみたくなりました。


2011/02/10

キアシナガバチ働き蜂(次女)の捕獲・標識



2009年7月中旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)巣の定点観察
前回の観察から8日も経ってしまった。
その間に二番目のワーカーW2が羽化したようです。
個体識別のマーキングを施すために、巣に止まって休んでいるW2の捕獲に挑みます。
少しでも巣に振動を与えると在巣の女王Q(水色)が激しく威嚇してくるので焦ります。
創設初期と違い、巣盤の下面がもはや平面状ではないので、蜂の上から麻酔管を被せようとしても隙間が出来てしまいます。


それでもなんとか無事に捕まえた蜂を炭酸ガスで麻酔し、背中に個体識別のマーキングを施しました(黄色)。


覚醒するのを待って台に乗せ、自分から巣に登るよう促します。
麻酔直後の蜂を巣の天井部に乗せただけでは滑り落ちてしまうのです。
ちなみに既に外役をこなしているワーカーの場合は定位飛行によって巣の位置を記憶しているので、自力で飛んで巣に戻れます。
この間、外役に出ていた長女W1(桃色)が肉団子を咥えて帰巣し、幼虫に給餌を開始。
W2(黄色)を巣に戻す作業中、在巣の二匹はやや警戒するものの、同じ巣の仲間と認識したようで攻撃を加えることはありませんでした。
女王と比べると新ワーカーはは明らかに体格が小さいです。


コロニーが順調に育って嬉しいのですが、この方法での捕獲に限界(危険)を感じました。
計3匹(Q、W1、W2)を個体標識しただけで諦めることにしました。


《追記》
くれぐれも安易に真似しないようお願い致します。
次々に羽化する新ワーカーを一匹ずつ安全に捕獲する方法を模索した結果、蜂蜜を使う方法を後日編み出しました。

つづく→シリーズ#15

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