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2016/05/09

ナガコガネグモ(蜘蛛)の卵嚢



2015年11月上旬

最上川に注ぐ小さな水門の隅にナガコガネグモArgiope bruennichi)の卵嚢を見つけました。
卵嚢の上端が開いているのは正常なのかな?(出嚢後の古い卵嚢である可能性は?)
採寸代わりに右手の人差し指を並べて映し込みます。
卵嚢を周囲に固定する糸には粘着性がありませんでした。

越冬後に採集して飼育下で幼体の出嚢を観察するつもりでしたが、春になったら卵嚢は無くなっていました。
卵は卵嚢内で秋のうちに孵化し、そのまま越冬して、翌春に一回目の脱皮をした後に分散する[4]。(wikipediaより)
一度雪に埋もれて溶けた際に卵嚢も一緒に落ちてしまったのか、あるいは鳥が捕食したのでしょうか?


2016/04/30

雪囲いを登るマダラスジハエトリ♀(蜘蛛)



2015年11月中旬

▼前回の記事マダラスジハエトリ幼体(蜘蛛)同士の対決

石灯籠の雪囲いで見つけたマダラスジハエトリPlexippoides annulipedis)。
支柱の上下に♀タイプの幼体2匹(a, b)が居るものの、横棒に阻まれてお互いに見えていません。
共に丸々と太った個体です。

♀aは支柱をどんどん登って行きます。
柱の天辺付近で方向転換すると、今度は歩いて降り始めました。
櫓を組むもう一本の支柱と交差する部分に隠れてしまいました。
日当たりの良い南面なので、日光浴なのですかね?

実は撮影直前に♀aの近くにトンボが止まっていて、狩りをするかと期待したのですけど、先にトンボが飛び立ってしまいました。



2016/04/24

マダラスジハエトリ幼体(蜘蛛)同士の対決



2015年11月中旬

雪国では庭や神社の石灯籠が積雪で倒壊しないように、晩秋になると木材を組み合わせ荒縄で縛った「雪囲い」で石灯籠を一つずつ保護します。(庭木や生け垣なども同じく丹念に雪囲いします。)
雪囲いの陽の当たる南面でマダラスジハエトリPlexippoides annulipedis)を3匹、見つけました。
同種のハエトリグモばかり雪囲いに集まっていたのは偶然でしょうか?
図鑑『日本のクモ』p301によると、本種は「冬季はスギ、ヒノキなどの樹皮下に袋状住居を作って越冬する」とのこと。
越冬場所を探索していたのかもしれませんが、冬籠りするには未だ少し気が早い気がします。

しかも3匹とも♀タイプでした。
マダラスジハエトリ成体の斑紋は性的二型を示すので、未熟な幼体はすべて♀タイプの体色なのかもしれません。(要確認)

一匹の♀cに注目して撮り始めると、こちらに向き直ってビデオカメラのレンズを見つめました。
カメラへの距離を測ると、マダラスジハエトリ♀cは板からカメラに跳び移りました。
そのまま私がビデオカメラを雪囲いの横木にそっと近づけると、♀cは自ら飛び移ってくれました。(映像なし)
すると右上の支柱に居た別個体の♀bが、♀cを目ざとく見つけました。
2匹の幼体は発育状態が異なり、体長の目測では♀b>♀c。
大型の♀bが♀cをめがけて横木に跳び下りました!
縄張り争いのような闘争(小競り合い)なのか、捕食行動(狩り)なのか、どちらでしょう?
跳びかかって来られた瞬間に、狙われた小型の♀cはしおり糸を引きつつ横木から緊急離脱しました。
相手を見失った♀bは、横棒を左に歩き去りました。
難を逃れた♀cはいつの間にか宙吊り状態から雪囲いに戻り、荒縄の上に居ました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



つづく→雪囲いを登るマダラスジハエトリ♀(蜘蛛)

2016/03/06

網にかかったホソヘリカメムシを捕食するジョロウグモ♀(蜘蛛)



2015年11月上旬

堤防の水門に張られた網にジョロウグモ♀(Nephila clavata)に生き餌を給餌してみました。
歩脚に欠損のない五体満足の個体ですけど、体格はやや小型の印象。(未採寸)

水門の裏面を徘徊していたホソヘリカメムシRiptortus pedestris)を生け捕りにし、ジョロウグモの網に投げつけました。
すぐに駆けつけたジョロウグモ♀はかなり長時間、獲物を噛んでいました。
その間は見ていても退屈なので、6倍速の早回し映像に加工しました。

クモに噛まれても毒液があまり効かないのか、ホソヘリカメムシは後脚を動かしてしばらく暴れています。
ホソヘリカメムシは太くて棘のある腿節を闘争用の武器としています。
しかし胸部を噛まれているため、反撃したくても武器が敵に届かず虚しく空を切るばかりです。

・(ホソヘリカメムシの)雄の成虫の後脚腿節が不釣り合いに太く、その内側に棘の列がある[2]。
・雄は雌の居場所を縄張りとし、縄張りをめぐって争う。争いでは棘がついた後ろ足で相手をはさみつけるという方法がとられ、後脚腿節が長いものが有利になる[12]。(wikipediaより)

クモに攻撃されている間、異臭を全く感じなかったので、カメムシは身を守る毒ガスを発しなかったようです。
不思議に思い調べてみると、ホソヘリカメムシは

カメムシには珍しく、匂いがない[4]。(wikipediaより)

一方、ジョロウグモは噛み付きながらときどき歩脚の先で獲物に触れて生死を確認しているようです。(歩脚の先で獲物の周囲の糸を切っているのかも?)

次にジョロウグモは獲物を梱包ラッピングし始めたものの、なぜか手間取っています。
水色のペンキで塗られた水門が背景だとジョロウグモの網も糸も極めて見え難いのですが、梱包ラッピングする捕帯の糸が殆ど出ていない点が気になりました。
レンズを至近距離まで近づけても捕帯の糸は見えません。
晩秋の餌不足でジョロウグモ♀が飢餓状態となり、出糸腺(ブドウ状腺)の糸が枯渇しているのかな?と想像しました。
あるいは産後の肥立ちが悪いのかもしれません(産卵した直後なのか?)。
ジョロウグモ♀は最小限の糸を節約して使い、時間をかけてなんとかラッピングしました。
獲物を噛んで体外消化しながら直ちに消化吸収して、泥縄式に糸を合成したのかもしれません。
ようやく毒が回り、獲物は動かなくなりました。
クモは噛みつきを止めてラッピングに専念しています。

『スパイダーウォーズ』p145-146によると、

オニグモはコガネグモと同じように攻撃ラッピングを多用するクモですので糸腺の数が多く、ジョロウグモはそれをしないので糸腺(ブドウ状腺)も少ない、とも解釈できます。噛みつきによって殺した餌の接着や梱包には、たくさんの糸は必要ないのです。


ジョロウグモ♀は円網の甑に獲物を持ち帰ると身繕い。
糸で汚れた歩脚の先を順に舐めて掃除しています。
化粧が済むと、網に吊り下げていた獲物を引き寄せ、ようやく口を付けました。




【追記】
吉田真『クモはどのようにして餌を捕らえるか?』によると、
ジョロウグモ属のクモでは、捕帯による固定はみられず、固定はもっぱら噛みつきによってなされます。しかし、このクモの網には、セミ・バッタ・トンボなどの大型の昆虫や、ハチなどの危険な昆虫、カメムシなどの不快な匂いを出す昆虫の食いかすが残されています。このことは、捕帯による固定ができなくとも、大型あるいは危険な餌を捕獲できることを示しています。(中略)大型の餌または危険な餌がかかると、このクモはなかなか噛みつこうとせず、固定には長い時間がかかります。その間に網から逃れる昆虫もいるのでしょうが、多くの糸を使った網が餌の逃亡を防ぐ効果的な罠となっているのかもしれません。 (ポピュラー・サイエンス『動物たちの気になる行動(1)食う・住む・生きる篇』p46-47より引用)


2016/03/04

ユカタヤマシログモ(蜘蛛)の吐いた粘着糸で逃れられないオオヒメグモ



2015年11月上旬

ユカタヤマシログモの飼育記録#6


ユカタヤマシログモScytodes thoracica)に強力な粘着糸を繰り返し吐きつけられたオオヒメグモParasteatoda tepidariorum)は幾らもがいても暴れても逃れられません。
一方、ユカタヤマシログモは獲物の目の前で悠然と歩脚の先を舐めて掃除しています。
(容器に蓋をしたサランラップの反射が邪魔ですね…。)
やがてユカタヤマシログモが前進して獲物に右の第一脚でそっと触れ、位置を確認しています。(@1:00)
そのままお互いにしばらく静止。
獲物に噛み付いて食事を始めるかと思いきや、なぜかユカタヤマシログモは獲物から立ち去りました。(@2:15)
絶体絶命のオオヒメグモは擬死(死んだふり)していたようで、ユカタヤマシログモが離れた途端に必死で暴れだしました。

オオヒメグモも自分が紡いだ糸なら舐めて掃除できる(糸を溶かして食べる)はずなのに、いくら必死に身繕いしてもユカタヤマシログモの粘着糸から逃れられません。
ユカタヤマシログモの粘着糸は成分が特殊なのかな?
この点に興味を持ち、「Scytodes thoracica fibrin」をキーワードに検索してみると、面白そうな文献を見つけました。(後で読む)

Zobel-Thropp, Pamela A., et al. "Spit and venom from Scytodes spiders: a diverse and distinct cocktail." Journal of proteome research 13.2 (2013): 817-835.(PDFファイル
時間をかければ脱出できるのでしょうか?

戻って来たユカタヤマシログモが容器の壁にへばりついた獲物(オオヒメグモ)に歩脚の先で触れて調べたのに、しばらくすると再び離れてしまいました。
擬死(死んだふり)していた獲物が暴れだすと向き直って触れ、チェックしています。
危険はないと判断したのか離れてしまった。
その後はオオヒメグモが必死に暴れても粘着糸を振りほどけないでいます。
ユカタヤマシログモが毒腺から作り口から吐く粘着糸には毒液も含まれているので、獲物は暴れて疲れる前に毒が回ってしまうはずです。

せっかく獲物を粘着糸で無力化したのに、今回はなぜか待てど暮らせど噛み付きに来ないのが不思議です。
糸腺が枯渇したので、とどめを刺したくても吐糸できないのかな?
獲物が疲れて(毒が回って)死ぬのを待っているのかもしれません。

今回は生き餌を投入する前に二酸化炭素で軽く麻酔しました。もしかするとその影響で、獲物としての魅力が無くなったのでしょうか?(匂いが気に入らない?)
給餌したのは7日ぶりなのに、ユカタヤマシログモは空腹ではなかったのでしょうか?
捕食する意図はなくて正当防衛のつもりだったのかもしれません。
(狭い容器に無理に同居させて逃げ場もないので自衛のため止むなく吐糸で制圧した?)
冬が近づくとクモは、越冬準備のために絶食することが知られています。
もし胃の中に消化物が残っていると気温が下がった野外では氷結する核になってしまい危険なのです。
ただし、主に屋内で生息するユカタヤマシログモも越冬前に絶食する必要があるのか疑問です。
室内は厳冬期でも野外よりは暖かいはずです。


※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。

つづく→#7


2016/02/29

糸を吐いて獲物を仕留めるユカタヤマシログモ(蜘蛛)【HD動画&ハイスピード動画】



2015年11月上旬

ユカタヤマシログモの飼育記録#5


ユカタヤマシログモScytodes thoracica)が糸を吐いて獲物を仕留める瞬間をどうしても動画で記録したくて、7日ぶりに給餌してみます。(三度目の正直)

浴室の隅で採取したオオヒメグモParasteatoda tepidariorum)幼体を二酸化炭素(CO2)で軽く麻酔してから生き餌として直径35mmのプラスチック容器に同居させました。
ともに地下室などの室内でよく見かけるクモですから、獲物として不自然ではありません。
クモが逃げ出さないようにサランラップで蓋をしました。
(映像はここから。)

初めは通常のHD動画で、つづいて240-fpsのハイスピード動画で撮影してみます。
麻酔から覚めたオオヒメグモが容器の縁に沿って歩き出しました。
ユカタヤマシログモは獲物と対峙すると、歩脚で距離を測ってから攻撃を仕掛けました。
口から糸を吐いた瞬間に獲物が衝撃で吹き飛ばされ、もんどり打って転げました。
吐糸には強い粘着性があり、獲物は容器の壁にへばりついて動きを封じられてしまいました。

粘着糸から振り解こうともがいている獲物に近づいてユカタヤマシログモは繰り返し何度も糸を吹き付けます。
狙いを定めて吐糸する度にユカタヤマシログモの頭胸部に大きな反動があることがよく分かります。(作用・反作用の法則)
ズキューン!という銃撃の効果音を付けたくなりますね。

後半、更に1/5倍速のスローモーションでリプレイするとよく分かるのですが、サランラップの蓋に粘着糸が偶然付着した際にジグザクの軌跡を描きました。
ジグザグの吐糸は奥から手前に向けて天井のサランラップに付着しました。
吐糸の反動で射出口が上を向くのかもしれません。
これこそまさに、ハイスピード動画で確認したかった点です。
糸疣に相当する吐糸器官が高速で噴出する糸の勢いを制御できず(あえて制御しない?)、激しく左右に振動するせいでジグザグの軌跡を描くのでしょう。
庭に水を撒くホースに強い水圧をかけるとホースの端(ノズル)をしっかり保持しなければホースが暴れだすのと似ているかもしれません。
欲を言えば、もっとハイスピードのカメラを手に入れたら撮影に再挑戦したいものです。(240-fpsでは未だ満足できません。)

不規則網の外に出したオオヒメグモが徘徊性クモのユカタヤマシログモに対峙した場合、オオヒメグモに勝算はありません。
自然の状態でオオヒメグモの不規則網にユカタヤマシログモが侵入して積極的に狩りに挑むことがあるのかどうか、興味があります。(ホーム&アウェーの戦い)

※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。
ハイスピード動画を撮るには非常に強い照明が必要となります。
その一方で、照明の反射が邪魔にならないよう角度を調節するのが面倒でした。
糸が見えやすいように容器の下に黒布を敷きました。


【参考文献】

池田博明「ユカタヤマシログモの吐糸説」(PDFファイル

クモ画像集:ユカタヤマシログモできどばんさんのコメントによると、

ユカタヤマシログモの粘液発射口は牙先端近く、他のクモが消化液を出す孔と同じです。
図鑑には「上顎基部先端にある粘液射出口」という表現が見られるが、「上顎」に粘液の出る場所はない。
つづく→#6:ユカタヤマシログモ(蜘蛛)の吐いた粘着糸で逃れられないオオヒメグモ


【追記】
『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』p85によると、(「第11章 ユカタヤマシログモの投網」)
(ヤマシログモ属の)クモの頭部にはほかのクモとは違った奇妙な特殊化があります。毒腺が前後に分かれていて、前部で毒を、後部で糊状物質を生産しているのです。そして、獲物を見つけると、筋肉をすばやく収縮させて、毒と糊をいっしょに吐き出します。



2016/02/16

アメリカセンダングサの花を食すジョロウグモ♀(蜘蛛)の謎



2015年10月上旬

花を食べる造網性クモの謎#10:

ジョロウグモ♀(Nephila clavata)の網にアメリカセンダングサの花を給餌してみました。
頭花を網に投げつけたら、甑から急行したクモが毒液を注入するために噛みつきました。
歩脚の先で慎重に花を触れて調べています。
窓の外に店開きしているクモにとって、未知との遭遇のはずです。

しばらく噛み付いて味見した結果、どうやら花の味が気に入ってくれたようです。
捕帯を繰り出して梱包ラッピングを始めました。(@3:03〜)
甑に持ち帰る途中で花を再びラッピングし直します。(@6:10)
甑に戻ると、下向きに占座しました。
歩脚の先を舐めて身繕い。
ようやく落ち着いたジョロウグモ♀は花を手元に引き寄せ、クルクルと回しながら調べています。(@8:20〜)
やがて緑色の総苞(萼)に噛み付きました。
花粉や花蜜を本当に摂取しているのかどうか、見ているだけではどうしても分かりません。
ラッピングした糸を体外消化してタンパク質を回収しているだけかもしれません。
食べ滓の花を回収して状態を調べれば、何か手がかりが掴めるかもしれません。
私が少し目を離した隙に(数分後)、いつの間にかジョロウグモ♀は花を網から捨てていました。

やや風が強い日でピント合わせに苦労しました。
逆光のため途中ビデオカメラの補助照明として白色LEDを点灯しましたが、クモは気にしないようです。

実は今回給餌したアメリカセンダングサの花は2日前に採集した萎れかけのものでした。
花の鮮度が落ちた花でもクモは食べることがあるというのは意外で、また新たな謎が生まれました。
不思議なことに、同一個体のジョロウグモ♀に後日同じ実験(アメリカセンダングサの花を給餌)を繰り返しても再現性がありませんでした。
花の種類を変えてノコンギクを給餌しても食べてくれず、異物として捨てました。
野外でジョロウグモの網を見つける度にアメリカセンダングサの花を投げつけてみたのですけど、他に食べてくれる個体は見つかりませんでした。

アメリカセンダングサ花を捕食するのがイシサワオニグモだけの食性ではないことが判明したのは収穫です。

▼関連記事
アメリカセンダングサの花を食べるイシサワオニグモ♀(蜘蛛)の謎
花を食べてくれる個体は、梱包ラッピングに先立って長時間噛み付いていることが特徴かもしれません。


つづく→#11:



【追記】
吉田真『クモはどのようにして餌を捕らえるか?』によると、
ジョロウグモ属のクモでは、捕帯による固定はみられず、固定はもっぱら噛みつきによってなされます。 (ポピュラー・サイエンス『動物たちの気になる行動(1)食う・住む・生きる篇』p46より引用)



2016/02/15

ユカタヤマシログモ(蜘蛛)の体外消化を透視する【10倍速映像】



2015年10月下旬

ユカタヤマシログモの飼育記録#4


ユカタヤマシログモScytodes thoracica)が獲物のオオヒメグモParasteatoda tepidariorum)幼体を捕食する様子を微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧ください。

糸を吐いて獲物を仕留めたユカタヤマシログモは身繕いが済むと、獲物の歩脚に噛み付いて体外消化を始めました。
徘徊性のユカタヤマシログモが仕留めた獲物を安全な隠れ家に運んだりせずにその場で捕食してくれるのは、観察する側には助かります。
噛み付く部位は前回と同じなのが興味深く思いました。(すねかじり)

クモの食事は獲物を噛み砕いて飲み込み胃で体内消化するのではなく、強力な消化液を獲物の体内に注入して溶かしてからその肉汁を吸い込んで摂取します。
これを体外消化と呼びます。
今回餌食となったオオヒメグモの歩脚が細く半透明であるおかげで、ストローのように消化液が流動している往復運動が捉えられていました。
ユカタヤマシログモはときどき噛み付く場所を変え、獲物の全歩脚から順番に吸汁しています。

体内消化を行う我々ヒトがカニの脚を食べるときは固い外骨格を苦労して割り、中の身(筋肉)を丹念にほじくり出す必要があります。
一方、クモが食べた後は獲物の外骨格(クチクラ)はほぼ無傷のままで、中身は空っぽになるのでしょう。
体外消化なら、かに道楽でカニの脚をきれいに食べるのも楽そうです。


オオヒメグモの腹部がときどきゆっくりしたリズムで動いていることから、毒液で麻痺した後も未だ完全には死んでおらず、虫の息の状態なのかと初めは思いました。
しかしよく観察すると、噛まれている歩脚内の流動がオオヒメグモ腹部の膨張・収縮に同期しています。
したがって、体外消化液の注入・吸入に応じて獲物の腹部が風船のように受動的に伸縮しているだけなのでしょう。
結構な量の消化液を注入していることが伺えます。
獲物の頭胸部が伸縮しないのは、腹部よりも固いクチクラが発達しているためでしょう。

比較対照としてオオヒメグモ単独で安静時の歩脚を同様に接写して、血液の循環が透けて見えないことを確認する必要があります。
しかしよく考えてみると、ユカタヤマシログモに噛まれていない歩脚では体液の流動や循環が見られないので、改めて比較するまでもなく体外消化による流動で決まりですね。

後半ユカタヤマシログモが噛む場所を変えると(第1脚か?)、今度は獲物の腹部ではなく触肢が左右同時にゆっくり動きました。
もしかするとクモの触肢は普段から筋肉というよりも体液の水圧で駆動しているのかもしれません。

途中で噛む場所を何度も変更しました。
食餌の後半になるほど、その頻度が上がります。
捕食開始から約1時間45分後、満足したユカタヤマシログモは遂に獲物を手放し、離れて行きました。
食餌の時間は意外に短かったです。
餌食となり吸汁され尽くしたオオヒメグモ幼体は体全体が萎んでいました。

ユカタヤマシログモが獲物に噛みつく位置が歩脚に限定されていて(しかも膝関節付近が多い?)、獲物の頭胸部や腹部には最後まで一度も噛み付いていない点が興味深く思いました。
柔らかい腹部に噛み付いてしまうと、その後はパンクした風船のように注入した消化液が漏れてしまうのかもしれません。
それなら、あちこち噛み付いた歩脚から液漏れしないのは何故でしょう?!
必要に応じて一時的な凝固剤や糊を自由自在に注入するのかな?

通常の1倍速(リアルタイム)の映像ではこのような体外消化液の流動には気づきませんでした。

▼前回の記事
獲物を捕食・吸汁するユカタヤマシログモ(蜘蛛)
微速度撮影ならではの成果です。
これは全く予想外の発見でした。

当初の撮影プランとしてはユカタヤマシログモが噛む場所を変えて吸汁したり獲物を丸めて絞り尽くしたりする様子を長時間記録するつもりでした。


※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。(強拡大パートはコントラストを上げるためにHDR-ishのエフェクトをかけています。)
そのために、ユカタヤマシログモの体色が実際よりもかなりどぎつく強調されているのでご了承下さい。

つづく→#5:糸を吐いて獲物を仕留めるユカタヤマシログモ(蜘蛛)【HD動画&ハイスピード動画】


食べ滓
食後のユカタヤマシログモ

2016/02/14

獲物を捕食・吸汁するユカタヤマシログモ(蜘蛛)



2015年10月下旬

ユカタヤマシログモの飼育記録#3


約3週間(22日)ぶりにユカタヤマシログモScytodes thoracica)に給餌してみます。
このぐらいの絶食は平気なはずですが、ユカタヤマシログモは心なしか不活発でした。(これが正常なのかな?)
ピンセットでつついてもゆっくり動きまわるだけで逃げ出しません。
生餌は今回も室内で捕獲したオオヒメグモParasteatoda tepidariorum)幼体。
同居させたオオヒメグモが活発に歩き回り逃げ出そうとするので、容器に蓋をする必要がありました。
小シャーレ(直径3cm)内で同居させたら出会い頭に勝負が決しました。
狩りの瞬間をハイスピード動画に撮ろうと試みたものの、難しくてまた失敗です。(※ 追記参照)
ユカタヤマシログモはしばらく身繕いしてから(動画公開予定)、仕留めた獲物の歩脚に噛み付いて捕食を始めました。

映像はここから。
身繕いすると、仕留めた獲物の歩脚に噛み付いて体外消化を開始。
噛み付く部位は前回と同じなのが興味深く思いました。
途中でユカタヤマシログモは噛む場所を変更しました。(@3:25〜)

※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。

一見すると動きがなくて退屈な映像に見えるかもしれません。
ところが、この食事シーンを微速度撮影してみると、とても面白い現象が見えてきました。

つづく→#4:ユカタヤマシログモ(蜘蛛)の体外消化を透視する【10倍速映像】



※ 追記
【おまけの動画】



トリモチのような粘着糸を吐きつけて獲物を狩る瞬間を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
(失敗作なので、ブログ限定で公開します。)
近づいてきたオオヒメグモに気づくとユカタヤマシログモは歩脚の先で触れて距離を測りました。
分厚い容器越しではピント合わせが難しく、初めは接写に苦労しました。

吐糸一発目の瞬間は残念ながらピンぼけ。
ハイスピード動画撮影のために強い照明を当てたら、透明プラスチック容器に反射して白い糸が見えにくくなってしまいました。
勢い良く吐糸した反動(反作用)でユカタヤマシログモは瞬間的に後方へ動きます。
獲物は逃れようと暴れるものの、粘着糸で磔にされています。
ユカタヤマシログモは獲物を目の前にしつつ、歩脚の先を舐めて身繕いを始めました。
獲物に毒が回るのを待っているのでしょう。

最後はようやく噛み付きました。


※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。


2016/02/12

網に付いたノコンギクの花を取り除くジョロウグモ♀(蜘蛛)



2015年10月上旬

花を食べる造網性クモの謎#9:

ジョロウグモ♀(Nephila clavata)は花を食べることがあるのでしょうか?
近くに咲いていたノコンギクの花を摘んでジョロウグモの馬蹄形円網に投げつけ給餌してみました。
甑に占座していたクモは直ちに駆けつけ、歩脚で慎重に触れて花を調べています。
ジョロウグモにとっては未知との遭遇のはずです。
ようやく獲物ではなく異物と判断したらしく、周囲の糸を切り始めました。
クモは何か食べかけの獲物(体外消化で黒変している)を口に咥えたまま作業しています。
花に噛み付いたり梱包ラッピングしたりすることもありませんでした。
もしこのとき音叉を使って花に振動を与えたらラッピングが解発されたでしょうか?
花の茎が長いせいで、網から完全に外すのに手間取っています。
ようやく花を捨てると(@2:37)、その場で網を歩脚で弾き、他の異物が付いていないかどうか確認しました。
居候の♂が待つ甑に戻ると♀は下向きに占座し、身繕いを開始。

つづく→#10:アメリカセンダングサの花を食すジョロウグモ♀(蜘蛛)の謎


給餌前の♀♂ペア

2016/02/10

網にかかったツマグロオオヨコバイを捕食するイシサワオニグモ♀(蜘蛛)



2015年10月上旬・午前9:57〜10:04

イシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)で色々と実験したお詫びとして、今度は本当の獲物を給餌することにしました。

近くの草むらに飛来したツマグロオオヨコバイBothrogonia ferruginea)を生け捕りにし、垂直円網(甑の少し左下)に付けてやりました。
キイチゴ?葉裏の隠れ家に潜んでいたイシサワオニグモ♀は網に急行すると、まずは獲物の胸部に噛みついて毒液を注入しました。
つづいて獲物を網から外しながら大量の捕帯を繰り出して梱包ラッピングします。
糸を噛み切りながら、円網に開いた穴を補修するため糸で最小限の修繕を施しています。
網全体が崩壊しないよう、切った縦糸を張り直しているようです。
甑から新たな信号糸を糸を張りながら、獲物を隠れ家に持ち帰りました。
隠れ家に落ち着くと、捕食を始めました。
ちなみに午前10:00に測った気象状況は、気温19.1℃、湿度73%。

さて、イシサワオニグモが円網を張り替える行動を観察したくて前日から徹夜で監視したのに空振りに終わりました。(待ちぼうけ)
夜間に網を張り替えなかったのは、私が花や虫を次々に給餌したり音叉を使った実験を繰り返したからでしょうか?
もし何も獲物がかからなければ、「この網ではもう駄目だ」と判断して張り替えたのかな?



2016/02/09

イシサワオニグモ♀(蜘蛛)の網にノコンギクの花を給餌すると…?



2015年10月上旬・午前6:52〜8:10

花を食べる造網性クモの謎#8:花の種類を変えてみると?


イシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)はアメリカセンダングサを特に好んで食べてくれたのでしょうか?
アメリカセンダングサ以外のキク科の花を対照実験として給餌してみることにしました。

近くに生えていたノコンギクの頭花を摘んできて垂直円網に投げつけても、隠れ家(キイチゴ?葉裏)のクモは無反応でした。
鳴らした音叉で花に440Hzの振動を与えると、ようやくクモが甑まで出てきました。
もう一度花に振動を与えると、獲物が暴れていると騙されてクモが花の所まで駆けつけました。
花に触れて調べている間にあともう5回、繰り返し振動を与えてみます。
しかしクモは菊の花に噛み付いたまま静止しているだけで、期待した梱包ラッピングをしてくれませんでした。

ようやく噛んでいた花を手放すと、その花を網に放置したままで甑に素早く戻りました。
信号糸を登り、隠れ家に帰りました。
花を噛んでいる間に花蜜や花粉を摂取したかどうか、外から見ているだけでは分かりません。
隠れ家に持ち帰ってゆっくり食べるほど気に入った味ではなかったのかな?
餌ではなく異物だと認識したにせよ、異物を除去しないで放置するのは初めての反応です。

更にしつこく音叉でノコンギクの花を震わせても隠れ家のクモは無反応でした。
「狼少年の嘘にはもう騙されないぞ!」と学習したようです。
そこで今度は音叉を直接網に付けてやると、クモはすぐに網に降りてきました。
その先はもうクモは騙されず、異物の花を放置したまますぐ隠れ家に戻ってしまいました。

諦めかけたら、何故かしばらくするとイシサワオニグモ♀が隠れ家から網へ自発的に戻って来ました。
先程は何か身の危険を感じて逃げ帰ったのかもしれませんね。
甑に占座したクモは網を歩脚でしゃくり、異物の在処を探り当てると、ようやくノコンギクの花を網から外して捨てました。
その場で網を引き締め、もう他には異物が付いていないことを確認しています。
糸を切ったことによる網全体への影響(張力のバランスなど)を調べているのかもしれません。
甑に戻ると、朝日を浴びながら歩脚の先を舐めて身繕いしています。
捨てられたノコンギクの花はシダの葉に落ちていました。
しばらく日光浴してから、ようやく隠れ家に戻りました。

ちなみに午前8:08に測った気象状況は、気温19.2℃、湿度85%。

つづく→#9:網に付いたノコンギクの花を取り除くジョロウグモ♀(蜘蛛)


2016/02/03

条網を移動するオナガグモ(蜘蛛)



2015年10月上旬・午前9:23〜9:28


▼前回の記事
条網を綱渡りする夜のオナガグモ【蜘蛛:暗視映像】


真夜中に見かけたオナガグモAriamnes cylindrogaster)と翌朝に再会しました。
前夜とほぼ同じ位置に居て、枝間に張り渡した水平の条網で綱渡りしていました。
身繕いしているのか糸屑を食べているのか不明です。
やがて条網上で方向転換しました。
それまで持っていた白い糸屑を条網の三叉路合流点に付けたように見えました。
最後は松葉のように体を伸ばして静止しました。

何をしていたのかよく分かりませんが、糸疣に注目すると条網を張る造網行動(または条網の張り替え)なのかもしれない、という気がしてきました。

クモ生理生態事典 2016」でオナガグモの移動法に関して次のような記述がありました。

糸上を前進する時には第1・2脚で糸をたぐり,第3脚で糸を丸める.この時,右1脚で確保された糸は左2脚へ送られ左3脚で丸められる. 方向転換の時は前方と後方の糸を糸いぼの箇所でつなぎ,転換して,前部で糸を切断してから,新しい糸を糸いぼから出しながら前進する. 上方へ進む時には糸いぼから前へ糸がつながっている点が水平の糸上を進む時と異なる点である〔新海明AT49/50〕.
これを読んで、オナガグモが綱渡り中に糸屑のようなものを持っている理由が判明しました。
不要な糸を丸めるのは良いとして、なぜ食べてタンパク質を再利用しないのでしょう?
欲を言えば、もう少し拡大してスローモーションで接写したかったです。

いつかオナガグモが条網でクモ狩りを行うシーンを観察してみたいものです。
鳴らした音叉で条網に触れるとオナガグモがどんな反応するか、興味があります。(駆け寄ってくるのかな?)

獲物のクモが条網を歩いて来る振動と音叉の振動とは周波数が違う気がします。
今回の個体は手の届かない高所に居たため、指を咥えて眺めているしかありませんでした。



2016/02/02

条網を綱渡りする夜のオナガグモ【蜘蛛:暗視映像】



2015年10月上旬・深夜3:08〜3:46・気温11.8℃

イシサワオニグモ♀の垂直円網を一晩中見張っていると、深夜未明に意外なクモが登場しました。
緑色の細長いオナガグモが空中を綱渡りして移動しています。
初めは居候クモの仲間かと思いきや、オナガグモAriamnes cylindrogaster)でした。
赤外線の暗視ビデオカメラで撮ると、AF頼みではピント合わせに難儀しました。
(冒頭で撮影アングルが定まらないのは奥ピンになりがちなAFでなんとか合焦しようと背景が抜けたアングルを探しているためです。)


オナガグモは「クモを食べるクモ」として知られているので、まさかイシサワオニグモ♀を積極的に捕食しに来たのかと思い、緊張で一気に眠気が吹き飛びました。
しかし様子を見ていると、隠れ家に潜んでいるイシサワオニグモを誘き寄せたり狩ろうとしてるのではなさそうで、ただの「通りすがり」のようでした。

草木も眠る丑三つ時に細長い異形のクモが宙に浮かんでいる様子はちょっと幻想的です。
上の木の枝から糸を引いて懸垂下降して来たのかもしれません。

イシサワオニグモの円網の手前に居ました。
オナガグモは横に張られた糸を伝って左上に移動します。
自ら吹き流しをして張った糸なのかな?
もしかすると条網を張る造網行動なのかもしれません。
しかし図鑑や「クモ生理生態事典 2016」を参照してもオナガグモの造網時刻について記述はありませんでした。
土手に生えたキイチゴ?の葉先に条網の端は固定されているようです。
最後の映像では歩脚の先を舐めて身繕いしていました。

クモ生理生態事典 2016」でオナガグモの移動法に関して次のような記述がありました。

糸上を前進する時には第1・2脚で糸をたぐり,第3脚で糸を丸める.この時,右1脚で確保された糸は左2脚へ送られ左3脚で丸められる. 方向転換の時は前方と後方の糸を糸いぼの箇所でつなぎ,転換して,前部で糸を切断してから,新しい糸を糸いぼから出しながら前進する. 上方へ進む時には糸いぼから前へ糸がつながっている点が水平の糸上を進む時と異なる点である〔新海明AT49/50〕.
しかし、今回の映像ではその奇妙な移動法を確認できませんでした。(明るい昼間にしっかり接写すべき)

ちなみに、午前3:20に測定した気温は11.8℃、湿度100%。

つづく


写真で性別を見分けられるか?
葉に包まれた白い構造物はクモの卵嚢か蛾の繭か?

2016/02/01

アメリカセンダングサの花を食べなくなったイシサワオニグモ♀(蜘蛛)



2015年10月上旬・午前5:44〜5:52

花を食べる造網性クモの謎#7:再現実験2


網の張り替えを期待して徹夜で監視していたら、夜が白々と明けてきました。
赤外線の暗視カメラを使わなくても普通のカメラでなんとかギリギリ映るぐらいの明るさになりました。
※ 動画編集時に自動色調補正を施してあります。

映像冒頭でまず信号糸を説明します。
キイチゴ?葉裏の隠れ家に居るイシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)は、歩脚の先で信号糸に触れています。
その信号糸を下に辿ると、垂直円網の甑につながっています。
円網を横から撮ると、縦糸とは別に信号糸が甑から直接隠れ家まで伸びていることが分かります。※
網の右下はだいぶ破損が激しいですね。
もし信号糸をこっそり切ると、クモは網に獲物がかかっても気づかなくなるのでしょうか?
異変に気づいて信号糸をすぐに張り直すでしょうか?(いつかやってみたい実験です)


※【追記】
『田んぼの生きものたち:クモ』p28によると、オニグモの仲間が張るのは「呼糸こし円網」と呼ぶらしい。
網の中心部から一本の糸(受信糸)を円網の外に引いて、葉の中などに住居をつくる。




眠気覚ましに懸案の花給餌実験をしつこく繰り返してみました。
近くに生えたアメリカセンダングサの頭花を摘んできてイシサワオニグモ♀の垂直円網に向かって投げつけると、画角から外れ網の下部に付いてしまいました。
隠れ家(キイチゴ?葉裏)に潜んでいたクモがすかさず信号糸を伝って甑まで急行します。
歩脚の先で恐る恐る花に触れると、周囲の糸を噛み切り始めました。
捕帯による梱包ラッピングを行わず、異物を網から捨てました。

その場で網を引き締めて揺らし、他の異物の有無を確かめています。
甑に戻ってからも同様の確認作業を繰り返します。
下向きに占座すると、歩脚の先を舐めて身繕い。
網の引き締めを繰り返すのは、網を張り替えるべきかどうか全体の破損状況を評価しているのでしょうか?
最後は信号糸を伝い隠れ家に戻りました。
上から伸びた信号糸を甑で切って手繰り寄せながら登ると同時に、新たに信号糸を張り直しているようにも見えます。

途中でピンぼけになり、良く分かりませんでした(薄暗い条件ではカメラのAFが効きにくいのです)。
ちなみにこの日の日の出時刻は公式発表で5:42。

アメリカセンダングサの花を繰り返し給餌しても二度と食べてくれず、私は落胆しました。
なぜだ…?
逆に5日前にはどうして食べてくれたのか、不思議になります。
花の種類を変えてみるのはどうでしょう?

つづく→#8:イシサワオニグモ♀(蜘蛛)の網にノコンギクの花を給餌すると…?


2016/01/31

網にかかった蚊を捕食するイシサワオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】



2015年10月上旬・午前5:24〜5:38・気温11.3℃

イシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)が夜中に網を張り替えることを期待して徹夜で観察していると、夜が少しずつ明けてきました。
退屈のあまり、私は居眠りしてしまったようです。
いつの間にかクモが垂直円網の甑に占座していました。
慌てて赤外線の暗視カメラで撮り始めました。
歩脚で周囲の糸を引き締めて揺すると、すぐ左下に付着していた蚊の存在に気づいたようです。
私が網に生き餌を給餌したのではなく、自然に網にかかった物です。
おそらく私の血を吸おうと飛んできた藪蚊が天然の蚊帳に囚われたのでしょう。
こんな小さな獲物が網にかかってもイシサワオニグモは隠れ家に居ながらにして感知できるとは、信号糸の感度の良さに驚かされます。
梱包ラッピングするまでもない小さな獲物なので、クモはその場で噛み付いていきなり捕食しました。
甑に戻ると再び網を引き締めて揺らし、他の獲物の有無を確認しています。
そのまましばらく下向きに占座。
それまでこの個体は昼も夜も基本的に隠れ家に潜んでいて必要に迫られなければ網に出てこなかったので、甑に堂々と占座する様子は新鮮でした。



隠れ家に戻る様子を撮り逃さないよう通常のカメラに切り替え、三脚に据えて監視記録してみます。
夜明け前でかなり暗いものの、補助照明無しでもなんとか写っています。
※ この中盤(@1:14〜1:55)の映像のみ動画編集時に自動色調補正を施して、自然光下の暗い映像を増感しています。

やがてクモはゆっくりと信号糸を登り、隠れ家に戻りました。

午前5:00および5:30に測った気温はともに11.3℃、湿度100%
ちなみにこの日の日の出時刻は公式発表で5:42。


2016/01/30

網に付いたアメリカセンダングサの花を食べずに捨てるイシサワオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】


2015年10月上旬・午前00:25・気温12℃

花を食べる造網性クモの謎#6:再現実験


5日前、戯れにアメリカセンダングサの花をイシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)の網に投げつけたら食べ始めて驚愕しました。(記事はこちら
意外な結果を受け入れるには何よりも再現性が肝心ですから、同一個体のクモで花給餌実験をもう一度やってみました。

近くで摘んだアメリカセンダングサの頭花を垂直円網に投げつけると、その振動でイシサワオニグモ♀が隠れ家から花に駆け寄りました。(動画はここから)
花の茎が少し長過ぎたかもしれません。
クモは歩脚で花に触れるものの、噛み付こうとしません。
花の回りの糸を噛み切ると、網から外して捨てました。
今回は梱包ラッピングすら行わず、異物として網から取り除きました。
※ 赤外線ビデオカメラの撮影アングルが不安定なのは、AFの奥ピンを改善するために背景が抜けるアングルを探っているためです。

甑に戻ると周囲の糸を歩脚で引き締めて網を揺らし、もう他に異物が網に残っていないか確かめています。
信号糸を伝い、隠れ家に戻りました。
食べ残しの蛾を引き寄せ、捕食を再開。
撮影直後の午前00:25に測定した気温は12℃、湿度100%。

花を食べてくれなかったので再現性に疑問が生じ、意気消沈しました。
とにかくアメリカセンダングサの花の味が好きで好きで堪らない!という訳ではなさそうです。
蛾を食べている最中に花を給餌したのでクモは満ち足りており、わざわざゲテモノを口にする気にならなかったのでしょうか。

クモの空腹状態をコントロールした上で実験するのは飼育しないと無理そうです。
造網性クモは花を梱包ラッピングしてくれないことには食べてくれないので、網に付けた花をクモが取り除こうと触れたときに音叉を使って花に振動を与えてみれば騙されるかもしれません。


つづく→#7:アメリカセンダングサの花を食べなくなったイシサワオニグモ♀(蜘蛛)


2016/01/29

網にかかった夜蛾を捕食するイシサワオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】

2015年10月上旬

夜にイシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)の営巣地を見に行くと、相変わらず同じ隠れ家(キイチゴ?の葉裏)に潜んでいて一安心。
4日前に給餌したアメリカセンダングサの花は隠れ家に見当たらず、捨てたようです。

夜間観察の目的は、垂直円網の張り替えを記録することです。
古い円網が張られたままで、部分的に壊れていました。


隠れ家のクモ
垂直円網




近くを流れる渓流の水音だけが聞こえてきます。
コオロギやキリギリス類の鳴き声が皆無で、辺りは静まり返って不気味です。
藪蚊が居ないのは助かりました。

寒さと眠気を堪えつつ網の前でじっと見ているのは結構大変です。
日付が変わろうとする真夜中にふと気づくと、クモが網に降りて来ていました。
いつの間にか蛾が網にかかっており、その獲物捕帯で梱包ラッピングしているところでした。
クモが獲物に噛み付くシーンは見逃しました。
私が生き餌を網に給餌したのではなく、自然に網にかかったものです。
残念ながら蛾の種類は分からず仕舞いです。

イシサワオニグモ♀は糸で包んだ獲物を咥え、甑を経由して隠れ家に戻りました。
獲物を糸で固定するとラッピングし直します。
赤外線の暗視カメラでも獲物の複眼が光って見えるのは、夜蛾に特有のタペータムでしょうか?

ちなみに気温の測定結果は
21:53 13.1℃、73%
22:04 11.9℃、83%
22:46 11.3℃、H%
23:52 11.4℃、H%
00:25 12.0℃、H%

つづく→



2016/01/28

オオヒメグモを捕食するユカタヤマシログモ(蜘蛛)



2015年10月上旬

ユカタヤマシログモの飼育記録#2


ユカタヤマシログモScytodes thoracica)を地下室で採集して以来、少なくとも19日間は絶食していたのに平気で生きていました。
飢餓耐性が強いという前評判通りでした。

さてこの日は、本種独特の狩りの習性を観察するために、予め室内で捕獲しておいたオオヒメグモParasteatoda tepidariorum)幼体を与えてみました。

ともに地下室などの室内で見かけるクモですから、獲物として不自然ではありません。
オオヒメグモが不規則網を張ったところにユカタヤマシログモを投入したのではなく、ユカタヤマシログモの飼育容器にオオヒメグモを投入したので、アウェイ環境のオオヒメグモに勝算はありません。
獲物が近くに歩いて来た瞬間にユカタヤマシログモが電光石火で仕留めたようで、オオヒメグモはすぐに動けなくなりました。
狩りの瞬間は撮り損ねてしまい、直後からの撮影です。

接写してみると、獲物は強力な粘着糸で容器底面に貼り付けにされていました。
ユカタヤマシログモが噴射した糸が透明プラスチック容器の底にジグザグに付着しています。
ユカタヤマシログモの頭胸部が巨大(頭でっかち)で奇怪な印象を与えるのは、吐糸器官が収まっているからなのでしょう。

ユカタヤマシログモは獲物の傍らで悠然と身繕いしています。
まず触肢の先を舐めて掃除を始めました。
触肢を互いに擦り合わせています。
次は歩脚の先(跗節)を舐めて掃除。
大顎で足先を甘噛みする動きに合わせ触肢を素早く開閉しています。

オオヒメグモは初めにピクリとかすかに動いただけで、その後は動かなくなりました。
ユカタヤマシログモが噛んで毒液を注入しなくても、吐糸に含まれた毒液に触れただけで獲物の体が麻痺してくるのでしょうか。

化粧が済むとユカタヤマシログモはようやく獲物に噛み付いて捕食(体外消化と吸汁)を開始。
噛み付く場所はオオヒメグモの歩脚の膝?関節でした。

色々とアングルを変えて接写してみても、食餌中はクモの動きが乏しくあまり面白くありません。
よく見るとユカタヤマシログモの触肢と牙が微かに動いています。
映像後半は採寸のため、飼育容器の下に方眼紙を敷きました。(@5:35〜)
今回は室内でも自然光下で接写したら明るく色調も自然で良い感じになりました。

次回はユカタヤマシログモが獲物をめがけて口から高速で吐糸する瞬間をハイスピード動画で記録してみます。

つづく→#3:獲物を捕食・吸汁するユカタヤマシログモ(蜘蛛)


給餌直前のオオヒメグモ
【追記】
22日後に撮った食べ滓の写真です。


2016/01/23

網に付けたアメリカセンダングサの花を除去するオニグモ♀



2015年10月上旬

花を食べる造網性クモの謎#5:オニグモで試すと?


道端に張られた正常円網(垂直円網)に見慣れないオニグモの仲間を見つけました。
こちらに腹面を向け、網の中央部に下向きで占座しています。

さて、最近アメリカセンダングサの花を食べるイシサワオニグモ♀を発見したばかりなので、他の種類のクモではどうだろう?と比べてみたくなりました。
丁度近くに生えていたアメリカセンダングサ(どこにでも見かける帰化植物です)の頭花を摘んで、この網に投げつけてみました。
花を給餌する前に円網の写真を撮ればよかったですね。
円網の甑は丸く穴が開いていました。

給餌してすぐ大失敗に気づきました。
クモの体長に対して花の柄が長過ぎましたね。
見たこともない巨大な獲物に警戒しているのか、クモは慎重に触れて正体を確かめようとしています。
虫とは違い花は動かないので、クモは一度甑に戻りました。(下向き占座@0:44)
すぐにまた下りて行くと、今度は花の柄の先端に向かい、歩脚の先で恐恐と調べています。
ようやくクモが側面を向けてくれました。(@1:30)
茎の先端に対してなぜか捕帯でラッピングしようとしたので驚きました。(@1:45)
こんな巨大な獲物の全体を梱包ラッピングできるかな?
それまでクモは一度も花に噛み付いていません。
やがてクモは茎や葉の周囲の糸を噛み切り始めました。(@2:33)
捕帯でラッピングしかけた白い糸屑は手繰り寄せると殆ど消えてしまったので、自分で食べてしまったようです。

花周囲の糸を切りながらも網全体の張力のバランスが崩れて崩壊しないように、最低限の縦糸などを張り直していますね。
クモがうっかり花を手離してしまい、その拍子にようやく背中を向けてくれました。(@4:32)
腹背中央部の前方に白い斑紋が目立ちます。
まるで誰かが白い油性ペンマーキングしたのかと思ったくらいです。
腹部下面には1対の白点の斑紋があります。
苦心惨憺して、ようやく花全体を網から外し捨てました。(@5:26)
と思いきや、地面に落ちる前に花が網の下部に再び付着してしまいました。
クモはそれをちゃんと分かっていて、対処に向かいます。
今度こそ完全に異物を取り除きました。(@6:52)
その結果、円網が大きく破損してしまいました。
使い物にならなくなった部分の網を取り壊しています。
撮影後半はクモにピントを合わせにくく、苛々した私は甑に戻る前に撮影を打ち切ってしまいました。
画面の奥には防火水槽が見えます。

クモがアメリカセンダングサの花を食べてくれなかったのは残念です。
茎が長過ぎてクモが一度も花の部分に触れなかったので、食物として認識しなかったのは当然でしょう。
我ながら酷い嫌がらせをしてしまいましたが、巨大な異物を網から丹念に取り除いて排除する様子は健気でした。



捕帯で梱包ラッピングしかける。

とにかく腹背上部の白紋が気になったので、どうしても種名が知りたくなりました。
きちんと写真を撮るために、動画撮影直後に採集しました。
小さなプラスチック容器で体に触れると網から糸を引き緊急落下。(映像なし)
地面で擬死していたクモを捕獲しました。
『クモの巣図鑑』をパラパラと見比べて、ヘリジロオニグモ♀なのかと思いました。
念の為にいつもお世話になっている「クモ蟲画像掲示板」にて問い合わせてみると、くも子さんより色彩変異型のオニグモAraneus ventricosus)で未発達の♀だろうとご教示いただきました。
ヘリジロオニグモは切れ網を作り生息地は海岸部らしく、今回の撮影地は内陸(山地に近いほぼ農村部の郊外)であることからも納得です。
『日本産コガネグモ科ジョロウグモ科アシナガグモ科のクモ類同定の手引き』(谷川明男著)という素晴らしいPDF資料を紹介してもらいました。
私には未だ少しレベルが高いようで、精進します。

つづく→#6:網に付いたアメリカセンダングサの花を食べずに捨てるイシサワオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】



【追記】
くも子さんより以下のコメントを頂きました。
○果糖効果がポジティブの例にコガネグモも入っている。(果糖効果の実験をやるなら、幼体26.5%より成体66.7%を選択した方がよさそう…私見)しぐまさんの実験、次にオニグモでやるなら、幼体でなく成体でやると別の結果がでるかも?


外雌器

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