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2023/05/29

ケカビの生えたタヌキの溜め糞を食べるセンチコガネ

 

2022年10月下旬・午後12:45頃・晴れ 

里山の西斜面を直登する細い山道が廃れ、藪が生い茂る獣道となっています。 
ここにホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残したと思われる溜め糞場kがあり、私はときどき通って定点観察しています。 

黒土と化した古い溜め糞場には、糞虫の羽化孔と思われる穴がたくさん開いていました。 
その少し下に、比較的新しい溜め糞がありました。 
地面には枯れた落ち葉が散乱し、その上に排便したタヌキの糞の表面に毛羽立った白カビがびっしり生えていました。 
点々と散らばった獣糞の全てが白カビの菌糸(?)で覆われています。 

そこにセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)が1匹だけ来ていました。 
センチコガネは白カビの生えた獣糞の下に頭を突っ込んで、小刻みにグイグイ押しています。 
「糞ころがし」のように巣穴に向かって獣糞を運んでいるのではなく、その場で食糞しているようです。 
そもそもセンチコガネは糞玉を巣穴へ運ぶ際には後ろ向きに転がすはずです。

関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ タヌキの溜め糞を崩し、後ろ向きに転がして巣穴に運ぶセンチコガネ

もしかすると、センチコガネは獣糞そのものよりも、それに生える菌糸やカビの方を好んで食べているのかもしれません。
我々ヒトの衛生感覚では不潔極まりない物ばかり食べても病気にならない悪食のセンチコガネは、よほど強力な抗菌作用をもっているのでしょう。

関連記事(1.5ヶ月前の撮影)▶ 白い菌糸塊?を食べるセンチコガネ

同定のため、動画撮影後に糞虫を採集しました。 
不潔なので、持参したビニール袋を手袋のように使って採取。 
標本の写真を以下に掲載予定。 
センチコガネの性別は? 

この地点にはトレイルカメラを設置しにくいこともあり、本当にタヌキが通う溜め糞なのかかどうか証拠映像を未だ撮れていません。 

秋になると、他の地点の溜め糞場にも白カビが生えるようになります。 
この時期以外では白カビの発生した獣糞を野外で見かけた記憶がありません。 
秋の長雨によるものか、それとも気温が下がって糞虫や蛆虫(ハエの幼虫)の活動が低下することで白カビが優勢になるのかと、素人ながら勝手に推測していました。 
興味深いことに、溜め糞に生えたモサモサの白カビは数日後に消失します。 
さすがにセンチコガネが白カビを全て食べ尽くすとは思えません。
インターバル撮影で獣糞上に生えるカビやキノコ(糞生菌)の遷移(栄枯盛衰)を観察するのも面白そうです。 

相良直彦『きのこと動物―森の生命連鎖と排泄物・死体のゆくえ』という名著を読むと、知らないことばかりで興奮しました。
特に筆者の専門である「排泄物ときのこ」と題した第4章がとても勉強になりました。
ど素人の私は漠然と「白カビ」と呼んでいましたが、専門的にはケカビというらしい。
・(採取した馬糞を培養して1週間後には:しぐま註)たいていケカビ類(Mucor、接合菌)もいっしょに生えていて、糞塊が綿でくるまれたように見えることが多い。(p74より引用)
・ 接合菌のケカビ類はセルロースを分解する能力がなく、糖類のような可溶性炭水化物を必要とする。その胞子は発芽しやすく、菌糸の生長は早い。このような性質によって、糞に糖類やヘミセルロースなど消費されやすい可溶性物質が存在する初期のあいだは、ケカビ類の増殖期となる。(p78より)
・糞には、蛋白質が半ばこわれたペプトン様の物質が含まれていて、それがケカビ相を産んでいるのではないかと(筆者は:しぐま註)想像する。(p82より)
・(京都で見つけたホンドタヌキの糞場で:しぐま註)比較的新鮮なふんにはケカビの1種とスイライカビの1種が生えていた。(p95より)
・タヌキの溜め糞場に生えるキノコ(アンモニア菌類など)についても詳しく書かれています。(p94〜98)

にわか仕込みの知識を踏まえて、私は次のように想像してみました。
秋になってタヌキが熟した柿の実を食べるようになると、糞には未消化の柿の種が含まれるようになります。
タヌキが甘い熟柿を食べると糞に含まれる糖分の濃度が上がり、ケカビの生育に適した条件が整うのではないでしょうか?
獣糞の糖分が消費され尽くされるとケカビは消失し、次の遷移状態に進みます。
タヌキの溜め糞で見つけた白カビを顕微鏡で観察したり培養したりしてケカビとしっかり同定できていないので、あくまでも素人の推測です。
野生動物がせっかく摂取した果肉から糖分を完全に消化吸収できないまま無駄に排泄するのかどうかも疑問で、実際に調べてみないと分かりません。
タヌキの尿に糖が含まれるとしたら、糖尿病に罹患していることになります。
まさか獣糞が甘いかどうか舐めてみる訳にもいきませんし、フィールドで得た試料から糖分をかんたんに検出する試薬のキットが欲しいところです。
高校化学で習った昔懐かしのベネジクト溶液で調べるしかないのかな?




↑【おまけの動画】
"The Life Cycle of the Pin Mould" by the British Council Film Archives
『ケカビの生活史』
モノクロの古い教育映画ですが、ケカビの一生を顕微鏡で丹念に微速度撮影した労作です。


2023/05/25

タヌキの溜め糞に群がるハクサンベッコウバエ♀♂の諸活動【10倍速映像】

 

2022年10月下旬・午後14:55頃・くもり 

山林の斜面をトラバースする小径にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場dの横に三脚を立てて微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
10分間長撮りしてみても、つい先程獣糞に潜り込んだヨツボシモンシデムシは二度と表に現れませんでした。 
糞塊がモコモコと上下に動かなかったということは、中に糞虫は潜んでいないようです。 

下痢便状のタヌキの糞にはハクサンベッコウバエNeuroctena analis)が群がっていました。 
獣糞上で待ち伏せしていた♂が飛来した♀に飛びつき、カップルが成立しました。 
交尾は早い者勝ちのようです。 
体格は♀<♂で♂同士の熾烈な♀獲得闘争があるはずなのに、交尾が始まると横恋慕したり強奪したりすることはありませんでした。 

左上にある枯れ葉の上でもハクサンベッコウバエ♀♂が交尾しています。 
他には獣糞を吸汁したり身繕いしたりしています。 

途中から(@0:30〜)画面の右下に居座っているハクサンベッコウバエ(♂?)に注目すると、溜め糞上を徘徊する微小なクロアリ(種名不詳)を追い回しました。 
さすがに誤認求愛ではないはずですが、占有行動なのかな?

現場はスギ植林地と雑木林の境界で、かなり薄暗い林床でした。 
動画編集時に自動色調補正したら、暗い映像が劇的に改善しました。 
副作用として、ハクサンベッコウの体色が少しどぎつく強調されてしまったかもしれません。 

次に機会があれば、ハクサンベッコウの配偶行動を微速度撮影ではなくリアルタイムで動画撮影するつもりです。

2023/05/15

タヌキの溜め糞場で活動するヨツボシモンシデムシ

 

2022年10月下旬・午後14:45頃・くもり 

里山の斜面をトラバースする細い山道をときどき通りかかる度に、溜め糞場dを定点観察しています。 
この山道は、スギ植林地と雑木林のちょうど境界になっています。
ここは小規模な溜め糞で持続しない(すぐに消失する)のですが、この日は珍しく新鮮な下痢便が残されていました。 
下痢便の状態だと、どの野生動物の糞か見分けるのが困難です。 
よく下痢をするイメージがあるアナグマの糞でしょうか? 
この地点に後日トレイルカメラを設置して監視したところ、ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が排便に通っていることが確かめられました。

多数のベッコウバエ類やフンバエ類が溜め糞に群がっている他に、ヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)の鮮やかなオレンジ色が目を引きました。 
上翅(=鞘翅)後方の紋が翅端に達するので、マエモンシデムシではなくヨツボシモンシデムシと見分けられます。(参考:『くらべてわかる甲虫1062種』p33) 
てっきり屍肉食専門だとばかり思い込んでいたので、獣糞にも来るとは知りませんでした。 


別の溜め糞場で1年前に撮った写真にヨツボシモンシデムシがたまたま写っていました。 
死肉食性のヨツボシモンシデムシが獣糞に来ることが当時は半信半疑だったのですけど、今回ようやく決定的な証拠映像を撮ることができました。 

溜め糞の半分は水気の多い泥状の液状便(下痢便)でした。 
ヨツボシモンシデムシは水気の少ない側の糞塊に1匹だけ居ました。 
タヌキの黒い糞塊に頭を突っ込んでいるのですが、獣糞を食べているのか吸汁しているのか、肝心の口元がよく見えません。 
途中で糞塊から後退したら顔が見え、触角の先端も橙色でした。 
最後は糞塊の縁を歩いて回り込み、湿った部分の下にグイグイ潜り込み、身を隠しました。 

※ 鬱蒼とした山林のおそろしく暗い林床で撮った映像が編集時の自動色調補正で改善しました。 
その副作用として、ベッコウバエやヨツボシモンシデムシのオレンジ色がどぎつく強調されています。
15cm定規を溜め糞に並べて置く

2023/05/06

秋のタヌキ溜め糞に集まる虫たちの活動【10倍速映像】ベッコウバエ、ハクサンベッコウバエ、オオセンチコガネ、センチコガネなど

 

2022年10月中旬・午後12:00頃・くもり・気温17℃ 

里山のスギ林道に残された溜め糞場sを定点観察しています。 
トレイルカメラを設置して通ってくる野生動物を記録しているのですが、撮れた映像を現場でチェックしたり電池を交換したりする間に、ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞の横に三脚を立てて微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
この日、スギの落ち葉の上に残された獣糞の量は少なく、ほぼ泥状になっていました(少量の下痢便)。 
糞内容物には植物の種子が含まれています。 

秋になると獣糞に集まるハエ類はベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)がメインになりました。 
私が近づくと一斉に飛んで逃げるものの、しばらくすると溜め糞に舞い戻って来ます。 
ベッコウバエより小型のハクサンベッコウバエNeuroctena analis)も集まっていました。
ベッコウバエ類の興味深い配偶行動については、後日改めてじっくり撮影したので、別の記事にします。
キバネクロバエらしき黒っぽいハエもたまに飛来しますが、もっとズームインしないと見分けられません。 
 

 獣糞の周囲のスギの落葉や落枝が上下に細かく動いているのは、直下で糞虫が活動している証です。 
案の定、赤紫の金属光沢に輝くオオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)と鈍い金属光沢のセンチコガネ♀♂(Phelotrupes laevistriatus)がときどき獣糞の表面に出てきます。 
 他には微小なアリ(種名不詳)の群れが獣糞の上を徘徊していました。

2023/04/30

ホンドテンの糞に含まれるアケビ種子のエライオソームに群がるクロオオアリ♀【種子散布と共生関係】

 

2022年10月中旬・午後15:05頃・晴れ 

里山の細い尾根道にホンドテンMartes melampus melampus)がサインポストとして排泄した糞が少し離れて点々と2箇所に続けて残されていました。 




その小さな糞塊をよく見ると、黒くてツヤツヤしたアケビの種子が未消化のまま大量に含まれていました。 
この山に自生するアケビと言えばミツバアケビです。 
雑食性のテンは果実をよく食べますから、アケビの甘い果肉も大好物なのでしょう。 
テンはアケビと持ちつ持たれつの共生関係にあり、アケビの種子散布に一役買っていることになります。 

しかし自然界はもっと複雑で、それだけでは完結しません。 
アケビの種子の端には白いエライオソームが付属しています。 
エライオソームは脂肪酸、アミノ酸、糖などの栄養が豊富で、アリの大好物です。 
テンの消化管を通った後もエライオソームは変性することなく(栄養価を保ったまま)、そのまま排泄されたようです。 
エライオソームを報酬として種子を巣に運び、種子散布を助けるアリがいるのです。 
実際に、クロオオアリCamponotus japonicus)のワーカー♀がテンの糞に群がっていました。 
他には微小のアカアリ(種名不詳)も多数来ていました。 
このアカアリの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、是非教えて下さい。 
急いでいた私はマクロレンズを装着するのが億劫で、アカアリを接写しませんでした。
アカアリはテンの糞塊2つともに集まっていましたが、クロオオアリは片方の糞にしか来ていませんでした。


クロオオアリ♀+アカアリ@テン糞

クロオオアリ♀+アカアリ@テン糞

アカアリのみが来ていたテンの糞塊


急いでいた私はじっくり観察できませんでしたが、アケビの種子を持って巣に運ぶアリは居ませんでした。 
新鮮な糞は粘り気がありますから、個々の種子が互いに接着してアリは運び出せないのでしょうか? 
糞が乾燥するまで非力なアリはアケビの種子を運べないのだとしたら、ここで長期のインターバル撮影したら面白そうです。 
あいにく現場は登山客の往来が多い尾根道だったので、微速度撮影することができませんでした。 
今思えば、テンの糞を丸ごと採取してどこか人気のない山中に放置して、微速度撮影しながらアリが来るのを待てば良かったかもしれません。

それともエライオソームの付いた種子を巣に運ぶのは、種子食専門のアリ(クロナガアリなど)だけなのかな? 
今回来ていたクロオオアリやアカアリはその場でエライオソームを食べるだけなのかもしれません。 
だとすれば、アケビにとってクロオオアリは役立たずで、せっかくコストをかけて作ったエライオソームは無駄になります。(損失)

もしアリがテンの糞に含まれるアケビの種子を巣に運べば、アケビは2段階で種子散布(動物散布型)してもらうことになります。 
つまり、アケビは甘い果肉とエライオソームを駄賃として使い、種子を少しでも遠くに運んでもらうよう複数の動物たちを操作しているのです。 



【参考文献】
 ・楠井晴雄・楠井陽子『テンが運ぶ温帯林の樹木種子』(『種子散布―助けあいの進化論〈2〉動物たちがつくる森』p37-50に収録) 
・中西弘樹『アリによる種子散布』(同書p104-117) 
・大河原恭祐『なぜアリ散布が進化したのか』(同書p118-132)


 アケビ類を含む(テンの:しぐま註)糞には、トビイロケアリ Lasius niger が集まっている場面をよく見かけた。ミツバアケビやアケビの種子にはアリ散布植物に特有のエライオソームがあり、トビイロケアリはこれに誘引されるものと想像される。トビイロケアリが種子を運んでいるところは確認していないが、アリによる二次散布も考えられる。(同書p46より引用)


多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』によれば、

(ミツバアケビの)タネを地面に置くとトビイロシワアリが群がり、白いゼリー質をかじり、運んでいく。この翌年、7m離れた場所に芽が出た。(p146より引用)


 

【追記】

てっきりホンドテンの糞と思い込んでましたが、糞の形状からもしかしてホンドタヌキの糞ですかね? 

タヌキがこんな開けた尾根道で堂々と排便するかな?(反語)という気もします。

タヌキの糞だとしても、全体のストーリーは変わりません。



【追記2】
ちょうど1週間前の2022年10月上旬に同じ稜線を歩いていたら、尾根道にアケビの果皮が転がっていました。
よく見ると歯型が付いていて、中の甘い果肉は残っていませんでした。
野生動物の食べ残し(食痕)だと思います。
丸くて小さなパンチ穴が開いているのは、犬歯による歯型なのか、鳥が嘴でつついたのか、それとも虫食い穴かな?
たとえばアケビコノハ幼虫はアケビの葉だけでなく果実も食害するのでしょうか?
素人目には、ナメクジがキノコをかじった食痕にも似ている気がします。
アケビの果皮は野生動物も捨ててしまうほど苦いのに、ヒト(日本人)は料理して残さず食べてしまうのですから、知恵というか食に対する執念が凄いですね。


【追記3】
吉見光治『テン:種をまく森のハンター』という素晴らしい写真集p57に「アケビを食べたテンの糞」の写真が載っていました。
明るい日中にホンドテンが脱糞するシーンを捉えた写真には驚きました。
♂は目立つ場所に糞をする。このマーキングは縄張りを主張していると考えられる。(p54より引用)
テンの♀がサインポストに糞を残さないのなら、どこに排便するのでしょう?
副題にあるように、この本はテンの種子散布が主要テーマになっています。
残念ながら、テンが実際に木に登って果実を採食している現場の写真は柿だけでした。
撮影の難易度がきわめて高いのは容易に想像できるので、不満という訳ではありません。
アマチュアが糞分析の真似事をするのに参考になりそうなテンの糞の写真がいろいろ載っていたのは助かります。
勉強になったのは、テンは堅果類も食べるが種子散布には貢献しないという点です。
ミズナラとブナの堅果類を食べたテンの糞。種子は噛み砕かれ発芽しない。(p59より引用)



【追記4】 

ホンドテンのロードキル死骸を解剖すると、胃内容物からカキノキ種子および果肉が見つかりました。


関連記事 ▶ 交通事故死したホンドテンを解剖してみる


2023/04/27

タヌキの溜め糞場で婚活するベッコウバエ♀♂の群れ(交尾、翅紋誇示、誤認求愛、交尾拒否)

 

2022年10月中旬・午後15:00頃・晴れ 

ニセアカシア河畔林の木の下にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場rvに久しぶりに来てみると、溜め糞が復活していました! 
一時期はトレイルカメラを設置して監視していたのですが、他のプロジェクトのためカメラを撤去し、それと共に私の足も遠のいていました。 
ヒトの気配が無くなったのでタヌキが警戒を解いてくれ、ここにまた通い始めたのでしょうか。 
やはりタヌキたちもトレイルカメラの存在に気づいて嫌がっていたのでしょうか?
この点については結論が出ておらず、私の気にし過ぎかもしれません。
溜め糞の消長には環境の季節変化やタヌキ側の事情もありそうです。

木漏れ日に照らされたタヌキの糞にベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)の大群が群がっていました。 
私が下手に近づくと皆一斉に逃げてしまうので、まずは少し離れたところから望遠マクロで撮影します。 
黒々としたタヌキの糞塊が2箇所に残されていて、その1つにベッコウバエが集まっています。 
冒頭シーンで数えると22匹ものベッコウバエが来ていました。 
ベッコウバエの性別は腹部の色で容易に見分けられ、♀は黒光りしていて♂は黄金色の毛が密生しています。 

糞塊の表面にまぶされている白いフレーク状の欠片は植物の種子ではなく、ベッコウバエの卵です。 
大量に産み付けられていました。 

交尾中の♀♂ペアにズームインしてみると、体格は♂>♀でした。 
横から見ると腹部の色の性差がよく分かります。 
体格の性的二型は、♀を巡って♂同士の闘争行動があることを示唆しています。 
♂が♀に背後から乗ってマウントしているものの、交尾器は結合していませんでした。(交尾中ではない) 
おそらく♂は♀が産卵するまでライバル♂と浮気されないように交尾後ガード(配偶者ガード)しているのでしょう。 
♂にマウントされた♀はひたすら獣糞を吸汁しています。 

次はあぶれ♂の行動に注目してみましょう。 
獣糞の上を歩き回りながら翅を小刻みに開閉して翅紋を誇示しているのは求愛行動なのでしょうか。 
あぶれ♂は手当たり次第に周囲のベッコウバエに飛びついています。 
♂が♂に飛びつくのは同性愛的な誤認求愛ではなく、一種のマウンティング(優劣行動)や縄張り占有行動なのかもしれません。 
獣糞を吸汁したり身繕いしたりしている単独♀にあぶれ♂が飛びついても、なぜかすぐに別れました。 
このとき単独♀は翅を動かしておらず、交尾拒否の意思表示をどう示したのか分かりませんでした。 
単独♀が腹端を下に屈曲させていたので、産卵中だったのかな? 
あぶれ♂は交尾中(交尾後ガード中)の♀♂ペアにも飛びついて♀を強奪しようとしています。 
しかし交尾中の♂が脚を横に突き出して「来るなよ」とあぶれ♂を牽制するので、諦めました。 
あぶれ♂は苛々と翅紋誇示しながら溜め糞上を徘徊しています。 

今回はベッコウバエの他に糞虫などは見つかりませんでした。
(少なくとも獣糞の表面には居らず) 
糞塊の中をほじくってしっかり探すべきでしたね。

2023/04/02

スギ林道の溜め糞場に来る生き物たち:9/13〜19の全記録【10倍速映像】

 

2022年9月中旬

里山の杉林道にニホンアナグマMeles anakuma)とホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が共有している溜め糞場sがあり、トレイルカメラで長期間監視しています。 
この山林には昼行性の動物もいれば夜行性の動物もいて、秋の溜め糞場は千客万来です。 
9/13〜9/19の丸7日間の全記録を時系列順にまとめ、10倍速の早回し映像にしてみました。 

これまで私は登場する動物種ごとに切り分けて紹介していたのですが、時系列順にするとまた印象が変わる(違ったドラマが見えてくる)かもしれません。 
センサーカメラが起動してから1分間録画するタイマー設定にしているので、動物が居なくなってからも構わず1分間は律儀に撮り続けます。 
従来の報告ではカットしていた退屈な後半(動物の不在映像)も含めています。 

早回し映像に加工すると、溜め糞に集まる糞虫の活動や離合集散がよく分かるようになります。 
引きの絵で撮ると糞虫の動きは緩慢なので、等倍速映像ではどうしても糞虫の存在を見落としがちです。
カメラの誤作動で録画された謎のボツ映像も、よく見直すと糞虫が写っていたりします。 
新鮮な糞塊を糞虫たちがせっせと地中に埋めて食べてくれるおかげで、森の中はきれいに保たれているのです。 
逆に糞虫の活動が落ちると、地上に残る溜め糞の規模は大きくなります。 
ちなみに、街なかで飼い犬や野鳥の糞が大問題になるのは(糞害問題)、現代人が勝手な都合で地面をアスファルトやコンクリートで埋め立てたり殺虫剤を撒いたりした結果、掃除屋の糞虫が活躍できないよう締め出したからに他なりません。 

他にも得体のしれない虫たちが林床を日夜動き回っていることが分かります。 
そうした糞虫などを捕食しようと、次は野鳥たちが溜め糞場に通って来ます。 

夜になると野ネズミが活動します。
種子散布の本に書いてあった通りに、溜め糞に含まれる未消化の種子や糞虫を野ネズミが食べるのではないか?と期待したのですが、そのような決定的な証拠映像はなぜか未だ撮れていません。
正直に言うと、本の記述(先人たちの研究結果)に疑いを持ち始めています。
私の見ているフィールドは他と何が違うのでしょう?

タヌキとアナグマは少し離れた地点に排便していた(平和に棲み分け)のですが、ある日アナグマが急にタヌキの溜め糞場のすぐ横に対抗するように排便しました。 
糞便による2種間の勢力争いも興味深いドラマです。

教科書に書いてあるような、溜め糞場を巡る生態系や食物連鎖、生物多様性を身近なフィールドで実際に目の当たりにすると感動します。 

この撮影手法はやって来る動物次第なので、撮影間隔がどうしても不定期になってしまいます。 
糞虫の日周活動を本格的にタイムラプス動画で記録するのなら、静止画でインターバル撮影(例えば5分間隔)する設定にしても面白いかもしれません。 
ただし、そうすると今度は恒温動物(哺乳類と鳥類)が滅多に写らなくなってしまうでしょう。 
動画用とインターバル写真撮影用と2台のトレイルカメラを併設できれば理想的です。 

2023/03/31

溜め糞上でキバネクロバエ?狩りに失敗し、互いに縄張り争いをするサビハネカクシ

 



2022年9月下旬・午後13:50頃・晴れ 

里山の急斜面を直登する細い山道が廃れて、藪に覆われた獣道になっています。 
その廃道に新旧の下痢便が点々と2箇所にまとめて残されていました。(溜め糞場w) 
今回はホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞と思われる、もう一つの糞塊に注目します。 
やや古い(乾いた)糞塊上で2匹のサビハネカクシOntholestes gracilis)が尻尾をくねらせながら、互いに追いかけあっていました。 
大小の体格差があるのは、幼虫期の栄養状態を反映した個体差なのか、それとも性差なのか、どちらでしょう? 
出会い頭につっかかるように突進(攻撃・牽制?)しています。 
最後は体格の大きな個体が小さな個体を追い払いました。 
同種ですら獲物と認識しているというよりも、どうやら狩場を巡る占有行動のようです。 
以前の観察では、小さい個体が大きい個体を追い払ったので、単純に体長で勝敗が決まるとは言えません。
関連記事(1年前の撮影)▶ タヌキの溜め糞上でハエを襲うサビハネカクシ同士が出会うと…?

その間、おそらくキバネクロバエMesembrina resplendens)と思われる1匹のハエが溜め糞で吸汁していました。 
サビハネカクシが襲いかかっても、敏捷性に優れるキバネクロバエ?は易々と攻撃を交わし、素早く飛んで逃げました。 
獣糞に来るハエをすべて追い払ってしまうと産卵してくれませんから、獲物として捕食しやすいウジ虫が増えるように、ある程度は見逃してやる必要がありそうです。
肉食性のサビハネカクシが狩りに成功するシーンを私は未だ観察できていません。

ところで、撮影中に周囲で聞き慣れないカエルの鳴き声♪がするのですが、何ガエルですかね?
虫が逃げてしまった後のタヌキ?溜め糞場w

2023/03/24

下痢の獣糞(タヌキ?ツキノワグマ?)に集まるキバネクロバエ?とツヤホソバエSepsis?【名前を教えて】

 

2022年9月下旬・午後13:55頃・晴れ 

里山の急斜面を直登する細い山道が廃れて、藪に覆われた獣道になっています。 
その廃道に新旧の下痢便が点々と2箇所にまとめて残されていました。(溜め糞場w) 

今回は糞塊の一つ(新鮮な方)に注目します。 
焦げ茶色をした軟便の糞塊で、未消化の植物種子が混じっています。 
形状が崩れている下痢便では私には何者の糞か見分けられないのですが、タヌキの溜め糞ではなく、よく下痢をするアナグマの仕業かもしれません。 
もし1回分の獣糞だとすると、量がかなり多いので、ツキノワグマUrsus thibetanus)の糞のような気もします。 
現場で糞をほぐしてみて、内容物をしっかり調べてみれば何かヒントが得られていたかもしれませんね。(糞内容物調査) 
トレイルカメラを設置して排便シーンの証拠映像を撮りたくなります。 
しかし、後日ちょくちょく見に通っても安定した溜め糞場ではないようなので、トレイルカメラの設置は後回しになったまま実現できていません。 

金属光沢に輝く(メタリックな構造色)微小のハエが4匹も集まっていました。 
続々と飛来して獣糞の表面を歩き回っています。 
今回はマクロレンズで接写しませんでしたが、ツヤホソバエ科Sepsis属の一種(Sepsis sp.)ですかね?
関連記事(別地点の溜め糞場で撮影)▶ タヌキの溜め糞に集まり産卵するツヤホソバエ科の一種【名前を教えて】
なんとなく、♂が翅を広げて同種♀に求愛誇示しているようです。 

Sepsisよりも今回は、単独で来ていた大きなハエに注目しました。 
糞塊の表面を歩き回り、口吻を伸ばして舐めています。(吸汁) 
胸背は地味な黒色ですが、複眼は赤色です。 
翅の根元がオレンジ色で、脚も中脚と後脚のみオレンジ色でした。 
平均棍を覆う鱗弁もオレンジ色でした。 
あちこちの溜め糞場でよく見かける(常連客)種類のハエなのですが、名前をしっかり調べたことがありませんでした。 
ネット上で調べ物をしていると、キバネクロバエ(イエバエ科)というハエの存在を知りました。 
クマの糞から発生するのだそうです。 
素人目には似ているような気がしたのですが、細部を見比べると、違うかもしれません。 
ネット上の写真でキバネクロバエの体表がもっと黒光りしているのはストロボの影響?


【追記】
安田守『集めて楽しむ昆虫コレクション』という本(写真集)のフン虫を特集した見開きページ(p50〜51)にそっくりのハエの写真を見つけました。
ハナゲバエの仲間
ハエ目イエバエ科/イエバエ科のハエはおもに食植性で、動物のフンや腐敗した植物質に集まるものが多い。(p50キャプションより引用)
ハナゲバエなんていう名前は初耳です。
写真のキャプションを読んでもイエバエ科の解説に終始していて、ハナゲバエ属の生態についてあまりよく分かってないようです。
そもそも私は恥ずかしながらイエバエ科の識別点すら知りません…。


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2023/03/16

タヌキの溜め糞に集まる様々なハエ類に序列はあるか?

 



2022年9月中旬・午後13:45頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が里山の尾根道に残した溜め糞場cに集まるハエ類をマクロレンズで接写しています。 
オオマダラヒロクチバエEuprosopia grahami)が地面を歩き回っています。 
なぜか迂回するようにぐるっと回り込んでからタヌキの溜め糞に到着しました。 
溜め糞で待ち伏せている肉食性のハネカクシ類に捕食されないように警戒しているのかもしれません。
関連記事(9日前の撮影)▶ アカバトガリオオズハネカクシがタヌキの溜め糞で獲物を待ち伏せオオマダラヒロクチバエを狩る
タヌキの糞塊にようやく到達すると、オオマダラヒロクチバエは口吻を伸縮させて獣糞を舐め始めました。 
ズカズカと近づくと先客のキンバエ(青緑色:種名不詳)は飛んで逃げました。 
(先客を追い払った?) 

タヌキの糞を吸汁するオオマダラヒロクチバエの左後ろからツヤホソバエ科(Sepsis sp.)が乱入しました。
Sepsisは両翅を激しく振り立てる動きでオオマダラヒロクチバエを牽制しました。 
うんちレストランから追い払った訳ではなく、Sepsisは通り過ぎただけでした。 

今回登場したハエ3種の体格を比べると、Sepsis sp.<キンバエsp.<オオマダラヒロクチバエ でした。 
ところで、「ハナアブ類のあいだには、種類により花を利用するさいの優劣関係がある。優位の昆虫が来たら席をゆずる」ことが知られているそうです。
(田中肇『花と昆虫、不思議なだましあい発見記』p113-114より) 
樹液酒場に集まる昆虫類の間に力関係の序列があるのは有名ですが、訪花するハナアブ類にも序列があるとは驚きました。 
それなら獣糞に集まる糞食性のハエ類の間にも餌資源をめぐる争いや序列があっても不思議ではありません。
ハネフリバエ科Euxesta sp.やツヤホソバエ科Sepsis sp.が翅を盛んに振り立てる謎の誇示行動は、体格のハンディキャップを補って異種間の縄張り争い(牽制)を少しでも有利に運ぶためにやっているのかもしれません。 
ハエには武器がありませんから、派手な異種格闘戦や「糞山の大将」を目指すバトルロイヤル(喧嘩・闘争)にはなりません。
それでも地道に動画撮影して、獣糞上でハエ同士がニアミスする度にどちらが逃げたかを丹念に記録すれば、何か傾向が見えてくるかな?

2023/03/09

タヌキの溜め糞が乾燥しても居残るオオセンチコガネとセンチコガネ

 

2022年9月中旬・午後13:15頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が里山の尾根道に残した溜め糞場cを定点観察しています。 
この地点は日当たりが良いので、溜め糞の乾燥が早く進みます。
古い溜め糞が乾燥してザクザクした状態を経て、ほとんど土のようになっていました。 
「うんちレストラン」にハエ類は居なくなり、この日はオオセンチコガネPhelotrupes (Chromogeotrupes) auratus auratus)とセンチコガネPhelotrupes laevistriatus)だけが見つかりました。 
赤紫色のオオセンチコガネは、溜め糞場に穴を掘って潜り込もうとしているのか、耕すような動きをしていました。 
一方、右に居た藍色のセンチコガネはじっと静止しています。 

遠足に来た子供たちが私の後ろから賑やかにやって来ます。 
狭い尾根道で通行の妨げにならないように、撮影を早々に打ち切って先へ急ぎます。 

その代わり、糞虫を2匹とも手早く採集して持ち帰りました。 
後で時間のあるときに、標本の写真を撮って載せるつもりです。 
体長と性別を調べること。
左:オオセンチコガネ、右:センチコガネ

2023/03/07

タヌキの溜め糞に集まり産卵するツヤホソバエ科の一種【名前を教えて】

 

2022年9月中旬・午後13:40頃・晴れ 

ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が里山の稜線(尾根道)に残した溜め糞場cに様々なハエ類が群がっています。
去年からの懸案だった謎の微小昆虫が何匹も集まっていたので、カメラにマクロレンズをいそいそと装着して接写してみました。 
三脚なしの手持ちカメラだと無理な体勢を強いられ、長時間の接写は疲れて無理でした。 
一緒に来ていたハネフリバエ科Euxesta属のハエとは明らかに別種と私でも分かります。 

翅は透明ですけど、全身が美しい金属光沢の構造色で覆われています。 
特に腹部は見る角度によって赤紫や鈍い金色に輝き、とても綺麗です。 

透明な翅の先端付近(前縁)に黒いシンプルな斑紋(縁紋?)あります。 
その翅紋を誇示するように広げた翅を振り立てることもありますが、Euxestaほど熱心ではありません。 
歩行中も白い平均棍を上下にピコピコと動かしています。 

白くて細長い卵を腹端から出し入れしている個体がいました。 
立ち止まると後脚を擦り合わせて身繕いを始めました。 
せっかく♀が産卵しそうだったのに、なぜか私は撮影を中断してしまいました。 

糞塊の上をとにかく忙しなく歩き回るので、口吻を伸ばして獣糞を吸汁するシーンが上手く接写できませんでした。 
同種のハエ同士が糞上で頻繁にニアミスするものの、もう少しズームアウトしないと求愛や闘争などの相互作用が撮れません。 

さて、このハエの名前は何でしょう? 
ときどきお世話になっている「みんなで作る双翅目図鑑サイト」の画像一括閲覧ページを眺めてみると、似た写真に「ツヤホソバエ科Sepsis sp?」とキャプションが付いてました。 
ツヤホソバエ科Sepsis」で改めて検索すると、フッカーSさんのブログ記事がヒットしました。 
翅の外縁あたりに1対の小黒点がある、スリムな体型のハエ。頭部は丸い。 翅に小黒点があるツヤホソバエといえば、Sepsis属のヒトテンツヤホソバエ(Sepsis monostigma)がよく知られているが、Sepsis属で翅に黒紋があるものは10種類くらいおり、安易にヒトテンツヤホソバエとは判断出来ない。 (ツヤホソバエ科の一種 @東京23区内の虫 2 より引用)
今回私が撮ったハエも、とりあえずSepsis sp.としておきます。 
もし間違っていたら、ご指摘願います。
昨年は通常レンズでしか撮れず、ハエなのかハチなのかさえ見分けられませんでした。
微小な寄生蜂なのかと思い込んでいたぐらいです。
この謎の虫をなんとか接写したいがために、今季は頑張ってタヌキの溜め糞をひたすら見て回っていたと言っても過言ではありません。
手ブレの酷い動画ですけど、これで一歩前進です。




【追記】
平凡社『日本動物大百科 (9)昆虫II』を紐解くと、ツヤホソバエ類に関する詳細な解説が載っていました。
 ツヤホソバエ科は小型で体の細いハエで、アリに似ていることから英語でant fly、地上では翅を頻繁に動かすことからドイツ語でSchwing Fliegenと呼ばれている。
 日本全国に分布し、11属35種が知られる。(中略)
翅の先に黒い点状の斑紋をもつものが多い。
 成虫は(中略)あらゆる環境に生息し、動物、家畜の糞、堆肥、腐肉など、広く腐敗物によく集まり、(中略)花を訪れるのは吸蜜するためである。(中略)幼虫はほとんどが糞食性または腐食性で、成虫が集まる糞や腐敗物に発生するが、なかには泥に発生するものもいる。
 卵は白く、長楕円形で、大きさは0.7〜1.5mm、ほとんどが卵の長さの何倍もある呼吸管をもっている。卵は少なくとも2日以内に1齢幼虫となる。(中略)幼虫は、糞や腐敗物を食べて成長し、発生源の内部または下の土中で蛹になる。
 ツヤホソバエ類の成虫の行動でもっとも特徴的なものは、求愛行動と繁殖戦略である。とくにSepsis属の多くの種の交尾行動は新鮮な牛糞上で起きる。♀を探索する♂は、牛糞周辺で活発に活動し、翅を頻繁に動かしたり、腹部を上下に動かすなどして、牛糞に飛来した♀をつかまえる。そして♀の体の上に乗り、そのまま牛糞上を移動して歩き、♀が産卵しているあいだ、交尾器の接触を試み、ほかの♂に侵略されそうになると翅を頻繁に動かして反応する。♀が成熟卵を産み付けたのち、ペアは牛糞から離れ、一般には交尾は成立するが、♀に拒否されることもある。交尾は約20分ほど続く。このように、最初の産卵の後の交尾によって受精が起きる。最初の産卵における受精については正確にはわかっていない。
次に機会があれば、Sepsisの繁殖行動をじっくり観察してみたいものです。

産卵シーン?

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