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2023/03/09

車に轢かれたニホンイタチの死骸に群がるハエ他

 

2022年9月中旬・午前10:20頃・くもり 

田園地帯を通る農道(砂利道)の端にニホンイタチMustela itatsi)の死骸が転がっていました。 
イタチの遺骸を見つけたのは、これで2回目です。
関連記事(5年前の撮影)▶ ニホンイタチの死骸

前回は死骸の損傷が激しく、テンとの区別も迷いました。
今回の死骸は足の裏が黒くないので、テンではないと分かります。

15cmの定規を死骸の横に並べて置きました。 
開いたままの目は少し濁っていました。 
乾いているものの、全身が泥水をかぶった後のように汚れている点が気になります。 
車にはねられたイタチが砂利道を転がって砂で汚れたのかな? 
それとも、イタチは死ぬ直前まで水田に出入りしていたのでしょうか? 
田んぼには黄色い稲穂が実っています。 
農薬による中毒死という可能性も頭をよぎったのですけど、頭頂部に乾いた流血痕があることから、おそらく夜の間に走ってきた車と正面からぶつかって即死したのでしょう。 
私はロードキルの加害経験がないのですが、果たして夜の砂利道で野生動物を轢き殺すほど車のスピードを出すでしょうか? 
車の眩しいヘッドライトに照らされると野生動物はパニックになり、徐行していても車に向かって突進してくるのかな?
直線の舗装路を夜中に猛スピードで暴走していた車がイタチをはねてしまい、動転した運転者がその死骸を横の農道までわざわざ運んで捨てたのかもしれません。 
しかし、普通の人は野生動物の死骸を手で持つ気になれないでしょう。 


せっかく新鮮なご馳走(遺骸)があるのに、朝からカラスやトビなど大型のスカベンジャーが来てないのも不思議です。 
死骸を食い荒らした形跡がありませんでした。
もしかすると、トビなどがイタチの死骸を車道(舗装路)から農道(砂利道)まで一旦持ち去って、いざ食べようとしたら邪魔が入って逃げたのではないか?などと想像しました。 

関連記事(7ヶ月後に現場近くで撮影)▶ 動物の死骸を独り占めする恐妻家のトビ(野鳥)


屍肉食の昆虫は、ハエとアリしか来ていませんでした。 
死骸にウジ虫(ハエの幼虫)は未だ発生しておらず、新鮮な死骸であることを物語っています。 
飛来したクロバエの仲間(種名不詳)がイタチの開いた口から吸汁を始めました。 
キンバエ類(種名不詳)も多数飛び回っています。 


せっかくの機会なので、この死骸をお土産としてありがたく持ち帰ることにしました。 
素手で触れないように、ありあわせのビニール袋を手袋として使います。 
イタチの死骸をジップロックに詰めてから、更に大きなビニール袋で二重に密閉しました。 
こういうときのために、10kgの米が入っていた大きなビニール袋を私は常に持ち歩いています。 
米袋はビニールの材質がとても丈夫ですし、匂いやドリップ(死骸の血液・体液)も通しませんし、中身が透けて見えることもありません。 
ニホンイタチの亡骸を持ち上げると、ぐにゃりと柔らかい感触が印象に残りました。 
死後硬直は未だ起きていないことになります。
急ぐ用事のあった私は、外性器をチェックする余裕もありませんでした。(性別不明) 
死骸の下には微小なアリ(種名不詳)が群がっていました。 


本当はイタチの頭骨標本を作りたいのですが、残念ながら頭蓋骨は折れていそうです。 
この日は忙しい予定があり、イタチの死骸を解剖して胃内容物を調べる余力もありませんでした。 
どこか人里離れた山中に死骸を放置して、様々なスカベンジャー(屍肉食者)によって分解され土に還るまでの一部始終をトレイルカメラで記録するのも面白そうです。 
しかし、いざ実際にやろうとすると細々とした準備が必要なので、急には対応できませんでした。 
残暑が続く季節のため、放っておくと死骸は刻々と腐敗してしまいます。 
仕方がないので、今回は手っ取り早く遺骸をそのまま地中に埋めて、白骨化するまで気長に待つことにしました。 

つづく→?

2022/07/26

川岸で死んだ魚を漁る2羽のハシブトガラス(野鳥)

 

2022年5月下旬・午後15:05頃・晴れ 

川の対岸で2羽のハシブトガラスCorvus macrorhynchos)が集まり、何か死骸をガツガツと嘴に詰め込んでいました。 
おそらく川岸に打ち上げられて腐りかけた川魚の死骸を見つけたのでしょう。 
左の個体Lは対岸でカメラを向けている私を露骨に警戒しているようで、大きな餌を咥えたまま飛び去りました。 
上流へ少し飛ぶと、川岸の倒木に止まりました。 
奥の河畔林ではニセアカシア灌木の白い花が満開に咲いています。 
ハシブトガラスLは両足を揃えてピョンピョン跳んだりトコトコ歩いたりして、丸木橋のように倒木を渡ります。 (ハシブトガラスのトコトコ歩きは珍しいです。)

更に上流へ少し飛ぶと、別の倒れかけた木に止まり直しました。 
この止まり木で、ハシブトガラスLは白い泥状の糞をダラっと排泄しました。(@0:26) 
どうしてもメニューを知りたくて私がカラスの口元にデジタルズームインした途端に、ハシブトガラスLはまたもや詮索を嫌って上流へ飛び去り、見失いました。 
Lの後からRも追いかけるように、一緒に飛んで行きます。 
ハシブトガラスRは、餌を詰め込んだ喉袋が大きく膨らんでいます。

この辺りの川岸は治水のためのコンクリートで護岸されていません。
土の崖や砂利、年季の入った倒木など自然な状態が保たれていて、短い区画でも貴重な環境です。
 

2022/07/05

動物の死骸を運んで逃げるハシボソガラス(野鳥)

 

2021年9月下旬・午後14:00頃・晴れ

山麓の農村部で廃屋の庭にあるケヤキ樹上にハシボソガラスCorvus corone)が止まっています。 
何か動物の腐乱死骸を嘴に咥えているようなので私がカメラを向けると、途端にカラスは警戒して枝葉の陰に隠れてしまいました。 
私としてはカラスの屍肉食を咎めているつもりは全くないのに、カラスは死骸を持って飛び去ってしまいました。 

慌てて追いかけると、ハシボソガラスは近くのカキノキに止まり直していました。 
柿の実が橙色に色づき始めています。 
カラスはまたもや私の目を恐れているようで、餌を咥えたまま枝から枝へピョンピョン跳んで枝葉の陰に隠れようとします。 
これほど警戒するということは、近所の農家のヒトと普段からよほど敵対的な関係にあるのではないかと疑ってしまいます。 
私としては死骸の正体をなんとか突き止めたいのですが、手前の電線も邪魔でカラスにピントが合わず、フラストレーションが溜まります。 

死骸を咥えたままカキノキ樹上から再び飛び立つと、今度は少し離れたビニールハウスの骨組の梁に着地しました。 
しつこいパパラッチから離れたカラスはようやく落ち着いたようで、屍肉を啄み始めました。 
今度は手前の灌木が邪魔でカラスにピントが合いません…。 
(映像はここまで) 
もっと見通しの良い撮影アングルを求めて私が横に少し移動したり近付こうとしたら、完全に逃げられてしまいました。 

逃げ回るカラスを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみても、死骸の正体は分からず仕舞いで残念でした。 
車に轢かれたロードキルではないかと思うのですが、野ネズミなのか子猫あるいはタヌキなのか…?

2022/06/30

ミールワーム幼虫は発泡スチロールを食べるか?【飼育80日目:共食い】

 

チャイロコメノゴミムシダマシTenebrio molitor)幼虫(ミールワーム)の餌を発泡スチロールのみに切り替えてから80日目。 
ミールワームの一部は未だ生きています。 
生存者の食事シーンをマクロレンズで接写してみると、発泡スチロールではなくて、仲間の死骸を食べていることが明らかになりました。 
ミールワームは手足が未発達なので、食べている死骸がうまく押さえられずに動いてしまいます。 
耳を澄ますと、カリカリ♪と咀嚼音を立てたりパチン♪と噛み切る音がかすかに聞こえます。 
栄養失調を死骸で補っているのでしょう。 
成虫に育つどころか、いつまで経っても蛹も出てこないのは、すぐに共食いされてしまうからなのかもしれません。 
通常は「ふすま」を給餌するだけでミールワームを簡単に継代飼育できます。 
しかし発泡スチロールではミールワームを継代飼育できない、というのが私の結論です。 
発泡スチロールに虫食い穴も期待した程は出来ていませんでした。 
以前、唐揚げを食べた後の骨を与えたときのミールワームの食いつきの良さとは大違いです。
関連記事(12年前の撮影)▶ ミールワームによる骨のクリーニング実験

素人実験をしてみた結果、ミールワームが発泡スチロールを食べるという話に対して私は懐疑的のままです。 
実験失敗(期待外れ)の原因を検討してみましょう。
原著論文をもう一度斜め読みすると、ミールワーム幼虫が死んだら直ちに飼育容器から取り除くべきでした。 
飼育した室温が低くて腸内細菌がポリスチレンをうまく分解できなかったのかもしれません。 
あるいは、私がペットショップで購入したミールワームの継代株には、たまたまポリスチレンを分解できる腸内細菌がほとんど居なかった可能性も考えられます。 
近親交配を繰り返していますから、 系統によって形質が微妙に変わっていることはあり得ます。(近交弱勢)
ミールワームのブリーダーが良かれと思ってミールワームの餌(ふすま)に抗生物質を混ぜたりしていたら台無し(腸内細菌は全滅)です。
この実験を追試するならば、あちこちの店で別系統のミールワームを買い揃えるべきでした。
お子様の夏休み自由研究のテーマに、いかがでしょうか?

ミールワーム幼虫は他の肉食性小動物の生き餌として使われます。 
昆虫食ブームの昨今では、ヒトの食用にも供されるようです。 
ミールワームの餌代をケチって発泡スチロールだけを与えて育てたミールワームを他の小動物の餌にしては駄目でしょう。 
未消化のポリスチレンを一緒に食べてしまうことになるからです。 

この研究は眉唾(フェイクニュース?)だと私は勝手に決めつけて、動画もお蔵入りにしていたのですが、最近になって研究が進展したとネットニュースで知りました(続報)。 
この分野の研究者たちはしつこく追求していたのでしょう。
関連サイト@ナゾロジー:発泡スチロールを食べられるスーパーワームを発見!
ミールワーム(Tenebrio molito)とは別種のスーパーワーム(Zophobas morio)も同様に発泡スチロールを食べて分解できると分かったそうです。 
今後の研究の流れとしては、ミールワームよりもその腸内細菌が持つ分解酵素の研究になるでしょう。 
活性の高いポリスチレン分解酵素が単離できれば、大量廃棄された発泡スチロールをゴミ処理場で分解できるようになると期待されます。

そもそも、ミールワームが発泡スチロールを食べるという奇想天外な発見はどのように生まれたのでしょう?
ペニシリンの発見のようなセレンディピティかな?と私は秘かに予想しています。
動物虐待の残酷な実験だとか飼育放棄(ネグレクト)、多頭飼育崩壊などと安易に非難されるのを恐れてか、論文には詳しく書いてませんでした。
実用化まで漕ぎ着けたら、誰も文句を言わなくなるでしょう。


2022/06/27

ミールワーム幼虫は発泡スチロールを食べるか?【飼育67日目:10倍速映像】

 

2019年3月下旬〜5月下旬 

熊澤辰徳『趣味からはじめる昆虫学』という本を読んでいたら、面白い話を知りました。
チャイロコメノゴミムシダマシ Tenebrio molitor の幼虫(ミールワーム)は発泡スチロールを食べて分解できることが知られています。 (p123より引用) 
Yang, Yu, et al. "Biodegradation and mineralization of polystyrene by plastic-eating mealworms: Part 1. Chemical and physical characterization and isotopic tests." Environmental science & technology 49.20 (2015): 12080-12086.
wikipediaにも次のような記述を見つけました。
2015年には、ミールワームに発泡スチロールを食べて分解する能力があることが、スタンフォード大学の研究者チームによって発見された。発泡スチロールはミールワームの腸内微生物によって堆肥と二酸化炭素に分解され、排出されていることが分かっている[1][2]。
発泡スチロールは日常生活に欠かせない便利な素材ですが、使用済み発泡スチロールの処理が問題になります。
燃やすと有害なガスを発生しますし、不燃ごみとして埋め立てられると永遠に残り続けると考えられていました。
つまり、発泡スチロールは生分解性が無いと長らく考えられていたのです。
発泡スチロールを食べて分解できる生物がいるとしたら、画期的な発見です。
疑り深い私は、自分で実験してみることにしました。 

ありあわせの発泡スチロールの箱を切り刻んでタッパーウェア容器にぎっしり敷き詰めてから、ペットショップで購入したチャイロコメノゴミムシダマシTenebrio molitor)の幼虫(=ミールワーム)を約50匹投入しました。 
他には餌も水も一切与えていません。 
ちなみに、ミールワームには通常、おが屑のような「ふすま」(小麦を脱穀した残りカス)を与えて飼育します。

そのまま室内に放置して67日目の記録です。 
容器の蓋を開けてミールワームの活動を微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。 
死骸も少しあるものの、幼虫が未だ結構生き残っています。 
(画面に写っていませんが、ミールワームは光を嫌うので、発泡スチロールの床の下に潜り込んで隠れている個体が多数います。)
発泡スチロールを食べて育ったということでしょうか? 
もっと虫食い穴だらけになるかと期待したのですが、それほどではありませんでした。
辺りに散乱している粉末はミールワームの排泄した糞でしょう。
中央上部の個体が仲間の死骸の欠片をかじっています。 (共食いではなく屍肉食)
欠片が動くので食べにくそうです。 


 

↑【関連動画】
New Scientist:“Superworm” beetle larvae eat polystyrene, which may help recycle plastics

2021/11/25

トノサマガエルの死骸を屋根の上に運んで食べるハシボソガラス(野鳥)

 

2021年8月下旬・午後14:25頃・晴れ

郊外の住宅地で民家の屋根に2羽のハシボソガラスCorvus corone)が飛び乗りました。 
左側の個体Lは体つきが華奢なので、おそらく幼鳥のようです。 
そのカラスLが干からびたカエルの死骸を持ち運んでいました。 
道で車に轢かれたロードキルや周囲の田んぼから死骸を拾ってきたのでしょう。 
カエル死骸の頭部が千切られたように欠損しているのは、カラスが啄んだ後なのかな? 
大きさからおそらくトノサマガエルPelophylax nigromaculatus)と思われます。 
逆光のせいか、トノサマガエルにしては死骸が赤っぽく見えます。 

私がカメラを向けているのを嫌い、ハシボソガラスLは獲物を咥えたまま左へ飛び去りました。 
屋根に残った個体Rは小さな肉片を摘み上げて、逆の右へ飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
撮影中、2羽とも全く鳴きませんでした。

2021/11/11

毛虫を運ぶムネアカオオアリ♀

 

2021年8月下旬・午前11:25頃・晴れ 

里山の尾根道でムネアカオオアリCamponotus obscuripes)のワーカー♀が毛虫を咥えて前進歩行していました。 
獲物を巣に運んでいるのです。 
道中であちこちに獲物が引っかかって運びにくそうです。 
最後は落枝の下に潜り込んだアリを、見失ってしまいました。 
尾根道の左右は雑木林です。 

毛虫は薄い黄緑で胸部だけが白く毛が疎らに生えていました。 
蛾の幼虫だと思うのですが、どなたか種類を見分けられる達人がいらっしゃいましたら教えて下さい。 
幼虫は既に死んでいるのか無抵抗でした。 
脱皮途中に襲われた可能性もありますかね?
   

2021/10/31

水辺の獣道をパトロールするホンドタヌキの動画まとめ【トレイルカメラ】

 

2021年7月中旬〜8月上旬

湿地帯の周囲の獣道を利用する野生動物の活動を知るためにトレイルカメラ(無人センサーカメラ)を設置したところ、最も多く登場した主役はホンドタヌキNyctereutes viverrinus)でした。 
タヌキの動画をまとめてみました。(初出しのシーンも含まれます。) 
1ヶ月以上調査した結果、計9日分の記録が撮れました。 
ただし、トレイルカメラで24時間監視する設定にはしていないので、記録漏れがあるかもしれません。 
夜行性のタヌキは明るい昼間に活動しないだろうと考え、バッテリーの消耗を抑えるために夕方から早朝までの時間帯に限定して監視するタイマーを設定しました。 
撮れた映像を見ると、確かにタヌキはまだ明るい薄暮の頃から活動を始めるようです。 
明るい真っ昼間にタヌキが活動することは絶対ないと言い切るには、24時間監視してみないといけません。 

進行方向は、左から右へ(→)が計5回、逆の右から左(←)が計9回でした。 
途中で引き返したのは両方にカウントしました。 

大雨が降るとここは氾濫原となり、獣道も泥だらけになったり、すっかり水浸しになったり(冠水)します。 
水が引くと道に残った泥が夏の日差しでカラカラに乾き、ひび割れた状態になります。 
路上に残されたアメリカザリガニの死骸をタヌキが拾って持ち去ったのが、このトレイルカメラ調査の白眉でした。
関連記事▶ 水辺の獣道でアメリカザリガニの死骸を持ち去るホンドタヌキ【トレイルカメラ】
カメラの前で立ち止まり、左後足で体を掻いてくれた役者のタヌキも愛嬌がありました。(@1:59) 

タヌキの性別判定も個体識別もできていませんが、2頭のタヌキが続けざまに通りかかったシーンが2回撮れたので(7/15および8/4)、少なくとも2頭のペアが生息していると分かりました。 
おそらく♀♂つがいではないかと予想しています。 

しばらく調査を続けると、画面の左右をまっすぐ通る獣道(元々は舗装された遊歩道)とは別に、左斜め奥へとヨシ原の茂みに潜り込む別な獣道もありそうだと気づきました。 
つまり現場は獣道のY字路になっていたのです。 
どうやらタヌキはヨシ原の奥から頻繁に登場するようです。 
後半にカメラのアングルを少し左に向けたところ、予想通り獣道の分岐点を捉えることが出来ました。(@2:46) 
ちなみに、一度だけ登場したハクビシンも吉原(ヨシ原の奥)に通っていました。
関連記事▶ 水辺の獣道をハクビシンが深夜徘徊【トレイルカメラ:暗視映像】
湿地帯の中を通る獣道に踏み込んで柳灌木林やヨシ原を掻き分けながらタヌキの足跡を追跡しようか、私は迷いました。 
タヌキの生態についてよく知らないのですけど、子育て中の巣穴が近くにありそうです。 
見てみたい気持ちもありつつ、不用意に踏み込んでタヌキの家族を怖がらせてしまって引っ越しされると元も子もありません。 
繁殖期が終わるまで今季はこのまま見守ることにしました。 
ところが台風の上陸で大雨が降り、川の増水で氾濫原が再び冠水してしまいました。 
せっかく面白くなってきたのに、これを最後にタヌキは獣道に来なくなってしまいました。 
泥の上の足跡も見かけなくなりました。 
なんとなく、タヌキたちは平地から山に避難したまま帰らなくなったのではないかと予想しています。 
やはり思いついたときに躊躇せずヨシ原の奥の足跡を辿ってみるべきだったと後悔しました。 

シーン1:7/12 ← 
シーン2:7/15 →→ 連続で2頭が登場。 
シーン3:7/17 →←(ザリガニの拾い食いでUターン)。←。時間を空けて2回登場(別個体?)。 
シーン4:7/19 ← 
シーン5:7/21 ← 
シーン6:7/26 ← 体掻き。ヨシ原奥の獣道入口に興味を示すも通り過ぎる(@2:04)。 
シーン7:8/04 →→ 連続で2頭が登場。 
シーン8:8/06 ← 
シーン9:8/08 ←← 時間を空けて同一個体が戻って来た?別個体? 


シリーズ完。 
トレイルカメラの使い方にだいぶ慣れてきたので、次はまた別な場所に仕掛けてみることにします。 

トレイルカメラの調査はすごく楽しいのですけど、使い捨て乾電池の消費が激しいので環境への負荷が心苦しくなります。 
試しにメーカー推奨のアルカリ乾電池からニッケル水素充電池に変えてみたところ、電圧が低いのか動画で記録してくれなくなりました。 
一時期、記録が全く途絶えたのはそのためです。 
ソーラーパネルで給電するエコなオプションも用意されているものの、絶対誰にも見つからない僻地に設置しない限り、機材の盗難が心配で導入に踏み切れません。 

2021/10/10

水辺の獣道でアメリカザリガニの死骸を持ち去るホンドタヌキ【トレイルカメラ】

 

2021年7月中旬・午後18:53(日の入りは午後19:01)・気温23℃

前回の記事(3日前の撮影):▶ アメリカザリガニの死骸に群がるキンバエとニクバエが繰り広げる行動


実は、水辺の獣道に仕掛けておいた無人カメラ(トレイルカメラ)のちょうど目の前の地面(泥の上)でたまたま2匹のアメリカザリガニProcambarus clarkii)が並んで死んでいたのでした。 
死骸の生物分解が進んだ3日後の日没直前に、1頭のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が水辺の獣道を左から登場しました。 
トレイルカメラで野生のタヌキを明るい時間帯に撮れたのは初めてです! 
厳密な夜行性ではなく、薄暗くなる頃(薄暮)から採食活動を始めるようです。 
虫の知らせでトレイルカメラの撮影時刻の設定を夕方から夜明け後に変更しておいたのが幸いしました。 

泥が乾いた地面の匂いを嗅ぎながら進んで来たホンドタヌキは、アメリカザリガニの死骸を見つけると、1匹を口に咥えて獣道を引き返しました。 
決定的瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう。 
タヌキは先に白化したザリガニ死骸の存在に気づいたはずなのに、それは素通りしています。 
未だ殻が赤くて比較的新鮮な方のザリガニ死骸を選んで持ち去っていました。 
死んだザリガニを一度近くの地面に置いて咥え直してから運搬しました。 

タヌキはなぜその場でザリガニを食べなかったのでしょうか? 
獣道は少し開けた場所なので、タヌキは警戒しているのかもしれません。 
ヨシ原の茂みの奥に隠れて自分で食べたのかな? 
あるいは、巣穴で待つ幼獣のために持ち帰って給餌した可能性も考えられます。 
タヌキの営巣地を突き止めたいところですが、遊歩道を外れて画面左のヨシ原の奥に獣道が続いていそうな雰囲気です。 
トレイルカメラの画角をもう少し左にずらして設置し直す必要がありそうです。 

松岡節『狸の来た日々』という観察記録によると、
付き合いはじめてからタヌキも食物をくわえて運ぶことを知った。運ぶ理由は、私の観察と想像からの判断であるが、食物をどこかに隠して貯蔵しておくことと、♀や子どものために運ぶ―の2つがあげられる。(kindle版より引用)
貯食の可能性を私は思いつきませんでした。
しかし、腐りかけの(というか腐った)ザリガニを改めて貯食するとは考えにくいです。

ザリガニをバリバリと食べるシーンは撮れなかったものの、死骸を持ち去ったことから、ホンドタヌキはアメリカザリガニ(の死骸)を食べることが強く示唆されました。 
この湿地帯(氾濫原)にはアメリカザリガニが多数生息していますから、タヌキがこの獣道を気に入ってよく往来している理由も納得です。 
中嶋捷恵『我が家にはいろんな動物がやって来る』という本によると、
・食性について、タヌキは肉食性が強いものの、穀類でも果物でも何でもOKだ。腐りかかった動物性の物を好んで食べる。 (p52より引用) 
・タヌキは、夏の時期、ネズミ、ヘビ、カエル、昆虫類などが主食 (p56より引用)
ちなみに、同じ日の約1時間後(日没後)にもう1頭のタヌキ(同一個体?)が現れ、獣道の匂いを嗅ぎながら逆方向に(右から左へ)通り過ぎました。 
路上に残されたアメリカザリガニの死骸に気付くと、腐臭を嫌って足早に立ち去りました。
やはり、タヌキは腐敗の進んだ死骸を食べないようです。 

※ 後半の暗視映像は動画編集時に正規化処理を施し、画面全体を明るくしています。

今思うと、ザリガニの死骸を拾い集めて監視カメラの前の獣道に予めばら撒いておく作戦を一度ぐらい試してみればよかったですね。
野生動物の餌付けは色々と問題があるので、私は躊躇してしまいました。
獣道の状態をヒトが下手に撹乱すると、野生動物は嫌がって(警戒して)来なくなるのではないか?という心配もあります。
素人の杞憂かもしれませんが、トレイルカメラを始めたばかりで勝手の分からない私は、このままストイックに(餌付け無しで)やってみることにします。


【追記】
現場の裏手は階段状にコンクリートで護岸されていて、そこにタヌキの溜め糞場uがあります。

2022年7月中旬
アメリカザリガニの外骨格(殻)の赤い破片が未消化のまま糞として排泄されていました。
確かにタヌキがザリガニを食べたという証拠が追加されました。




2021/10/09

アメリカザリガニの死骸に群がるキンバエとニクバエが繰り広げる行動

 

2021年7月中旬・午後14:15頃・晴れ 

大雨で増水した氾濫原の水が引くと、泥だらけになった遊歩道にアメリカザリガニProcambarus clarkii)が2匹並んで死んでいました。 
日向で腐敗が進んでいるようで、赤い殻の表面に黒斑が出ています。 
死骸に真っ先に集まるキンバエ類は、メタリックグリーンのものとメタリックブルーのものと2種類が来ているようです。(種名不詳) 
他にはニクバエの一種(種名不詳)も来ています。 
個体数ではキンバエ類の方がニクバエよりも多いです。 
集まったハエは、アメリカザリガニの死骸を舐め回したり、身繕いしたりしています。 

左の死骸Lは頭胸甲の殻が外れかけていました。 
脱皮の途中で死んだのかな? 
こちらの死骸Lはハエにあまり人気が無いようで、ニクバエが1匹だけ乗っていました。 

右の死骸R上では多数のハエが目まぐるしく飛び回り、互いに位置を変えています。 
その様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、ハエ同士の間で面白いドラマが繰り広げられていることが分かりました。(@1:34〜) 

(1)死骸上の熾烈な陣取り合戦 
隣り合うハエ同士が互いに脚で蹴ったり叩いたりして牽制し合っていました。 
小さなニクバエが隣の大きなキンバエを蹴って追い払うこともありました。 
それでも強引に割り込んで来るハエがいます。
ハエの占有行動で脚を使うとは知りませんでした。
武器の無いハエの喧嘩はどうもコミカルに見えてしまいます。

(2)ニクバエ同士で誤認求愛? 
小型のニクバエの新顔が死骸に飛来すると、先客の大型ニクバエが背後から飛びつきました。 
マウントして交尾を挑んだのかと思いきや、すぐに別れました。 
こうした♂同士の誤認求愛と思われる小競り合いが繰り返されていました。 (あるいは♀の交尾拒否?)

240fpsのハイスピード動画で撮れば、もっと詳細に観察できたはずです。 


 

2021/10/03

湿地帯に散乱するアメリカザリガニの大量死骸を処理するクロクサアリ♀の大群

 

2021年7月上旬・午後15:30頃・くもり 

大雨の後で氾濫原の水が引くと、死んだアメリカザリガニProcambarus clarkii)が湿地帯にたくさん散乱していました。 
大量死の原因が気になるところですけど、私には死因が分かりません。
泥だらけの遊歩道の一区画に集中して転がっていた4匹の死骸を動画で記録しました。 
なぜかここにだけクロクサアリLasius fuji)のワーカー♀が死骸に群らがっていました。 
甲殻類のアメリカザリガニは硬い外骨格で守られていますが、割れた隙間からクロクサアリが潜り込んで死肉を細かく千切り、巣に持ち帰っています。 
(ざり)かに道楽を楽しんでいます。 

アリも泥の上を歩くのは嫌なようで、倒伏した枯れ草(ヨシ?)の茎の上を歩きやすい高速道路として行列を作り、巣と往復していました。 
行列を追跡してクロクサアリの営巣地をしっかり突き止めるべきでしたね。 
堤防に自生する灌木の根際があやしいです。
(クロクサアリの)巣は樹木の根部にある。行列を作って樹木に生息するアブラムシに集まり、甘露を定常的な餌にしている。(『アリハンドブック』p61より引用)
ザリガニのハサミだけが転がっていたりすることもありました。 
冒頭に登場する死骸は、まるで映画『エイリアン』のフェイスハガーを連想する造形でした。 

ニクバエ科の一種もザリガニの死臭に誘引されて飛来しました。 
しかし、ハエはクロクサアリの大群に遠慮して順番待ちしている印象です。
つづく→死んだアメリカザリガニに群がり解体運搬するクロクサアリ♀【10倍速映像】

2021/09/22

死んだアメリカザリガニに群がり解体運搬するクロクサアリ♀【10倍速映像】

 

2021年7月上旬・午後15:35〜16:08頃・くもり 

大雨の後で氾濫した湿地帯の水が引くと、アメリカザリガニProcambarus clarkii)の死骸が多数散乱していました。 
その中で、クロクサアリLasius fuji)のワーカー♀が群がっていた2匹の死骸a,bに注目し、三脚を立てて微速度撮影してみました。 
10倍速の早回し映像をご覧ください。
関連記事(6年前の撮影)▶ アメリカザリガニの死骸に群がるクロヤマアリ♀【微速度撮影】
シーン1:(@0:00〜) 
アメリカザリガニの死骸aは腹を向けて地面(遊歩道)に転がっていました。 
クロクサアリ♀は死んだザリガニの外骨格の隙間から潜り込み、体内の柔らかい組織を細かい肉片に解体してせっせと巣に運んでいます。
シーン2:(@1:20〜) 
少し離れた地点で、アメリカザリガニの死骸bは側面を向けて地面(遊歩道)に転がっていました。 
クロクサアリ♀は泥だらけの地面をなるべく歩きたくないようです。 
画面左で斜めに通る枯れ草の茎を餌の運搬通路(高速道路)として使っています。 

2021/07/20

ニホンアマガエルの轢死体を咥えて巣に運ぶハシボソガラス♂(野鳥)

 

2021年5月中旬・午前5:50頃・くもり 

静かな早朝に郊外の住宅地の路上をハシボソガラス♂(Corvus corone)がトコトコ歩いて横断していました。 
嘴に何か細長い餌を咥えています。 
干からびたミミズのように見えたのですが、定かではありません。(あるいは植物質の巣材?)
このときカラスの喉袋は空っぽでした。 

ハシボソガラス♂は路肩の白線付近で潰れたカエルの死体を見つけて捕食し始めました。 
初めから咥えていた物を一旦路上に落としてから、足で獲物を押さえつけ、嘴で屍肉を引きちぎります。 
このとき緑色が見えたので、おそらくニホンアマガエルHyla japonica)が車に轢かれた死骸のようです。 

関連記事(2、7、9年前の撮影)▶ 
ハシボソガラスが蛙の死骸を拾い食い【野鳥】 
トノサマガエルの死骸を食すハシボソガラス(野鳥) 
ハシボソガラスが水田の畦道でカエルを捕食(野鳥)
しかしカラスはその場でアマガエルの肉片を食べるのではなく、初めから持っていた細長い餌と一緒に喉袋に詰め込みました。 
路上から飛び上がると、近くの電線に止まりました。 
餌を詰め込んだ喉袋はパンパンに膨らんでいます。 
周囲の安全を確かめ、帰巣のタイミングを見計らっているようです。 
尾羽をパッパッと開閉しているのは、軽い興奮の現れなのかな? 

この個体がなぜ♂だと分かったかというと…。 



 

2021/05/02

死んだオオミズアオ(蛾)の前翅を運ぼうとするクロヤマアリ♀

 

2020年7月下旬・午後14:30頃・小雨 

舗装された峠道で、おそらくオオミズアオActias aliena)と思われる蛾の死骸を見つけました。(またはオナガミズアオ) 
胴体は見当たらずなぜか1枚の前翅だけが落ちていたので、おそらく鳥に捕食された食べ残しなのでしょう。 
翅の鱗粉がぱらつく雨水の滴を弾いています。 
通りかかったクロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀がオオミズアオ前翅の根元に残った僅かな屍肉を見つけました。 
翅を巣に持ち帰ろうとしても路面に翅がへばりついていて、剥がれません。 

後半は定規を並べて置いて前翅長を採寸しました。 
舗装路にへばりついた翅を定規でペリペリと裏返すと、白い鱗粉が魚拓のように路面に残りました。 
左右どちらの翅か、私にはよく分かりません。

2021/01/31

タヌキの轢死体に群がるハエと蛆虫

 

2020年9月下旬・午後15:10頃・晴れ 

山麓の農村部を走る舗装された車道のセンターライン付近でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が死んでいました。 
車に轢かれた死骸(ロードキル)です。 
猛スピードで走り去る車が途切れる隙に、タヌキの轢死体に近寄って調べてみました。 
遺体の損傷が激しく、強い腐敗臭が辺りに漂っていました。 
うつ伏せ状態でペシャンコに踏み潰されています。 
全身の骨格があまりにも不自然な体勢なので、死後も(大型)車に何度も踏み潰されたのではないかと思います。 
死体の状態が良ければ骨格標本を作りたかったのですが、これでは駄目です。
開いた口の奥には白い歯が見えます。 
歯を見ただけで年齢が分かるぐらい私もタヌキに詳しくなりたいものです。 

生物分解が進む遺骸からは腐った体液が滲み出すはずなのに、この死骸は全体に乾いた印象です。 
夏の太陽に照らされて熱くなる舗装路に何日も放置されたせいでしょう。 
路面に血痕などはありませんでした。 
雨で洗い流されたのかもしれません。 

タヌキの顔にハエ(クロバエまたはキンバエの仲間)が何匹も飛来しました。 
大小様々の白いウジ虫が死骸を這い回り、生物分解(体外消化)に勤しんでいます。 
死骸を離れ路上に落ちて蠢いている(ワンダリング)のは老熟幼虫でしょう。 
蛹化のため地中に潜りたいはずですけど、舗装路では不可能です。 
長距離(蛆虫にとっては大冒険)を這って危険な車道を横断し、道端の地面に辿り着く個体はどれだけ居るのでしょうか? 

車の自動運転の実現に向けて研究が進められていると聞きますが、ゆくゆくは対人、対車両だけでなく野生動物も轢き殺さないで済むように緊急回避するようプログラムして欲しいものです。(倫理学や人工知能のトロッコ問題) 
野生動物と共存するためには、交通量の多い車道を安全に渡れるように獣道との交差点を上手くデザインしてやることで(立体交差や獣専用トンネルなどの設置)ロードキル問題が解消される場合もあります。
ただし今回の現場に適用するのは無理そうです…。
「(夜の)車道に突然飛び出して来る野生動物を常人の反射神経と運転技術ではとても回避できない」というのが問題なので、自動運転という技術革新で解決するしかないと私は期待しています。

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