2024/04/15

夏の夜に渓谷をペアで渡る野生動物の正体とは?【トレイルカメラ:暗視映像】

 

 2023年7月上旬・午前0:20頃・ 




里山の渓谷(沢の源流部)が厳冬期に雪崩で埋もれると、そのスノーブリッジを野生動物が恐る恐る渡っていました。 
春以降も引き続き定点観察したかったのですけど、運用しているトレイルカメラの台数が足りなくなり、泣く泣く撤去しました。 
他所のプロジェクトがようやく一段落ついたので、夏の渓谷を再び無人センサーカメラで監視することにしました。 
低山なので、谷底の万年雪が雪渓として夏まで残ることはありません。
夏には両岸の切り立った崖を登り降りして沢を渡る野生動物の足跡や蹄跡が獣道に残っています。(フィールドサイン) 
有蹄類のニホンカモシカやニホンイノシシが渡る場合は、「義経の鵯越の逆落し」のような迫力のある動画がトレイルカメラで撮れるのではないかと期待しました。 

冒頭のシーンは明るい昼間に撮れた現場の様子なのですが、サイケデリックなモアレが生じてしまいました。 
こんな症状は初めてです。 
古いトレイルカメラを騙し騙し使い続けてきたのですけど、いよいよ寿命なのかも知れません。
 (トレイルカメラのmicroSDカードを挿し直して電源を再起動すると症状が直ることが分かりました。) 
カメラを設置しながら試写したつもりなのに、夏の日差しが眩しすぎてカメラの液晶画面がよく見えず、ほとんど勘だけでアングルを決めました。 
こういうときの対処法として、液晶画面を覆う日除け(液晶サンシェード)を後に自作することになります。 
幸い、夜の暗視映像には影響を及ぼしませんでした。 

7月上旬の深夜にカメラが起動したときには、謎の野生動物が2匹、V字状の渓谷(高低差約4〜5m)を渡る途中でした。 
此岸(右岸)の崖を下りて谷底の沢を渡河する様子は撮れていませんでした。 
対岸(左岸)の急な崖を2頭の獣が前後して直登しています。 
先行して崖をよじ登っている個体が途中で振り返り、後続個体と鼻を突き合わせて励ましたようです。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
旧機種のトレイルカメラは赤外線LEDの光量が弱くて、あまり遠くまで届きません。 
強引に明るく加工したので暗視映像の画質が粗くなってしまいました。 
そのため、動画を何度見返しても、謎の野生動物の正体が分かりません。 
ほとんど白く光る目しか見えません。
ホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の♀♂つがいか、あるいはニホンカモシカCapricornis crispus)の母子かもしれません。
タヌキは険しい崖の途中でわざわざ立ち止まったり引き返したりしないような気がします。 

画質があまりにも酷い動画なので、個人的な備忘録としてブログ限定の公開としておきます。
いつか新機種のトレイルカメラを設置し直して再チャレンジするつもりです。 
冬はまだしも草木が生い茂る夏は特にトレイルカメラをきわめて設置しにくい場所なので、何か斬新な作戦を考えないといけません。

林床のヘビに対してモビングするシジュウカラなど小鳥の群れ【野鳥:トレイルカメラ】

 

2023年7月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後の旧営巣地(セット)を自動センサーカメラで見張っていると、ある日に大事件が勃発しました。 

シーン0:7/22・午後14:10頃・晴れ(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。 
古いトレイルカメラの変な癖で、これ以降はなぜかフルカラーで録画してくれなくなります。


シーン1:7/25・午前9:40頃・晴れ(@0:03〜) 
二次林に多くの小鳥が集まり、耳障りな警戒声を発しながら忙しなく飛び回っています。 
何事かと思って動画をよく見直すと、アナグマの巣穴Rから2匹のヘビ(種名不詳)がニョロニョロと外に這い出て来ました! 
林床の地面を手前に向かってゆっくり蛇行します。 
ヘビの動きが緩慢で分かりにくいので、5倍速の早回し映像でリプレイします。(@1:03〜1:15) 

そもそも林内で2匹のヘビが一緒にいること自体が珍しいです。
(私はこれまで単独行動のヘビしか見たことがありません。) 
アナグマ家族が転出した後の空き巣にヘビの群れが住みついたというよりも、よく出入りしている野ネズミ(ノネズミ)の匂いを嗅ぎ取って巣穴に潜り込んでいたのでしょう(探餌行動)。 

アオダイショウElaphe climacophora)など木登りが得意なヘビは鳥の巣を襲い、卵や雛鳥を捕食しますから、野鳥の天敵です。 
したがって、天敵のヘビを見つけると野鳥は特有の警戒声を発して仲間を呼び寄せ、騒ぎ立てます。 
これはモビング(擬攻撃)と呼ばれる行動です。 
鳥たちは警戒して集まるだけで、ヘビを嘴でつつくなど直接的な攻撃をすることは一度もありませんでした。 
安全な樹上から地面のヘビを見下ろして鳴き騒ぎ、止まり木から止まり木へ忙しなく飛び移っています。 
縄張りからヘビが居なくなるまで、森に住む鳥たちは協力して、その動向を見張るのです。 
野鳥にしてみれば、自分たちの巣やねぐらをヘビにこっそり奇襲されるのが一番困ります。
ヘビに対して直接攻撃しなくても、「そこに居るのは知ってるぞ!」としつこくアピールするだけで抑止効果があります。 

動画内でジャージャー♪と耳障りな声で何度も鳴いているのは、シジュウカラがヘビに対して発する典型的な警戒声です。 (※ おまけの動画を参照) 
ヘビに対するモビングに参加する鳥の群れは同種だけとは限らず、異種の鳥も集まってくるのが特徴です。 
つまり、各種の鳥が発する「ヘビがいるぞ! 集まれ! 気をつけろ!」という種固有の警戒声を他種の鳥も理解した上で適切に振る舞っていることになります。
今回集まってきた小鳥はシジュウカラParus minor minor)がメインのようですが、白黒映像では種類をしっかり見分けられません。 

関連記事(同所でほぼ同時期の撮影)▶ 


他にはヒヨドリHypsipetes amaurotis)やカラス類が鳴き騒ぐ声が聞こえるものの、姿は写っていません。 
ヘビに対する鳥の集団モビング行動を実際に観察したのはこれが初めてで、とても感動しました。
フルカラーで録画できなかったのが、つくづく残念です…。 


シーン2:7/25・午後12:40頃・晴れ・気温32℃(@1:17〜) 
約3時間後の暑い昼下がりにトレイルカメラが再び起動すると、森はすっかり静まり返っていました。 
ヘビに集団モビングしていた鳥たちは既に解散したようです。

1羽の猛禽(種名不詳)が飛来したようで、林縁の低い灌木に止まってキョロキョロと辺りを見回しています。(画面の赤丸) 
私にはモノクロ映像から猛禽の種類を見分けられなくて残念ですが、後日にもまた登場します。(映像公開予定) 

やがて、ヘビ(種名不詳)が1匹アナグマが掘った古い巣穴Rlから外に這い出てきたのでびっくりました。 
どうやら、さっき鳥たちに集団モビングされて逃げ出した蛇のうち1匹がいつの間にか戻ってきたようです。 
ヘビは変温動物の爬虫類ですから、ヘビが単独でいくら活発に動き回ってもトレイルカメラのセンサーは反応しません。
温血動物(恒温動物)の鳥や哺乳類と同時に現れたときにしかヘビの行動は記録されないことになります。 
(実際、このヘビが木から降りるシーンは撮れていませんでした。)

等倍速ではヘビの動きが緩慢で分かりにくいので、まずは5倍速の早回し映像でご覧ください。(@1:17〜1:30) 
セットの広場を蛇行して横切ると、林縁に生えた細い灌木(樹種不明)をスルスルとよじ登り始めました。 
樹上に鳥の巣を探して求めているのかな? 
木登りする蛇を見るのは、これが2回目です。 
関連記事(11年前の撮影)▶ アオダイショウの木登り 


こんなに低い止まり木にじっとして居る猛禽を見るのは、珍しい気がします。
この猛禽はおそらく、カラスの大群にモビング(擬攻撃)されて林内に逃げ込み、ほとぼりが冷めるまで身を潜めているのでしょう。 
枝葉が鬱蒼と生い茂った二次林の低層に隠れると、上空を飛ぶカラスの目からは見えなくなるようです。
この猛禽が近くで動き回るヘビに飛びかかって捕食しないのが不思議でした。 
おそらくヘビは猛禽の死角に入り、見えてないようです。
それともカラスに追われる身の猛禽にしてみれば、ヘビを狩るどころではないのかもしれません。 (下手に動くとカラスに居場所がばれてしまう。)
あるいは、ニホンマムシGloydius blomhoffii)など危険な毒蛇を忌避しているのかな? 
もし森の小鳥たちがこの猛禽を見つけたら、ヘビに対するのとは別の鳴き方で警戒声を発して猛禽への激しいモビングを始めるはずですが、まだ誰にも見つかっていません。


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳥の鳴き声が聞き取れるように、動画の一部は編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


 

↑【おまけの動画】
『【永久保存版】シジュウカラ語を一撃で理解できる最強の動画』by ゆる言語学ラジオ 

シジュウカラの言語研究で名を挙げた鈴木俊貴先生が一般人にも分かりやすく直々に解説してくれています。 
シジュウカラがジャージャー♪と鳴くのは、「天敵の蛇だ!」という意味です。 
これを聞くと仲間の鳥は(シジュウカラに限らず)一斉に集まって地上のヘビを探します。 
ちなみに、シジュウカラの雛は親鳥の警戒声「蛇だ!(ジャージャー♪)」を聞くと巣内から慌てて飛び出すらしい。 
これは学習によらない本能行動なのだそうです。 


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2024/04/14

夏の夜に延々と追いかけっこや取っ組み合いをして遊ぶニホンアナグマの幼獣3頭【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月下旬〜8月上旬 

旧営巣地に戻って来たニホンアナグマMeles anakuma)の幼獣3頭が、元気いっぱいで互いに追いかけっこしたり格闘遊びしたりしてはしゃぎ回る微笑ましい様子をまとめました。 
疲れを知らぬ 724+29+803 


シーン0:7/22・午後13:19・晴れ・気温38℃?(@0:00〜) 
シーン1:7/22・午後14:07・晴れ・(@0:04〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 


シーン2:7/24・午後20:00(@0:07〜) 
2頭の幼獣が奥の二次林内で駆け回り、取っ組み合いを始めました。 
右下に居た別個体の幼獣も参戦しようと駆け出したら、暗闇で細い灌木に頭から衝突しました。(@0:51〜) 
ぶつかった立木がしばらく左右に揺れています。 
慌てていたのかもしれませんが、 夜行性でもアナグマは目が悪いことを示しています。 
灌木の隙間をすり抜けられると思ったのかな?  
鈍臭い幼獣は幸い脳震盪を起こすこともなく、無事だったようです。 


シーン3:7/29・午前4:13・(@1:07〜)日の出時刻は午前4:36。 
5日後の夜明け前にも幼獣が3頭だけで旧営巣地に来て遊び呆けていました。 
地面の匂いを嗅いでいる別個体の尻に突進してわざとぶつかり、喧嘩を仕掛けました。 
それをきっかけに3頭が急に荒ぶり始め、1頭がもんどり打って巣穴Rに転がり落ちました。 
その際にマルバゴマキの樹冠に伸びている長い蔓にぶつかって、上の枝葉が激しく揺れました。 


シーン4:7/29・午前4:15・気温28℃?(@2:07〜) 
続きが別アングルの監視カメラで撮れていました。 


シーン5:7/29・午前4:16(@2:57〜) 
2頭の幼獣が激しい追いかけっこをしている途中で、もつれ合うように巣口Lに転がり落ちました。(@3:30〜、@3:48〜) 
格闘中に互いに甘噛みしているのか、短い唸り声♪も聞こえます。 


シーン6:7/29・午前4:18(@3:58〜) 
幼獣2頭が左で格闘遊びをしている間、別個体が巣口Lから顔を出してその様子を伺っています。

辺りは未だ真っ暗ですけど、目覚めたヒグラシ♂(Tanna japonensis)が林内でカナカナカナ…♪と鳴き始めました。 (@4:38〜) 
時刻は午前4:19。(日の出時刻の17分前) 


シーン7:7/29・午前4:17(@4:48〜) 
別アングルの広角カメラでも撮れていました。 
2頭が対峙して、ひたすら格闘遊びを繰り広げています。 


シーン8:7/29・午前4:19(@5:24〜) 
巣口Lを半ば塞ぐように生えた木の根を甘噛みしたり、はしゃいで跳びはねたり、幼獣が独り遊びしていました。 
巣穴Lから外に出てきた別個体が左へ行くと、それを追いかけて対決が始まりました。 
ガゥッ♪と吠える声が聞こえました。 


シーン8:7/29・午前4:22(@6:05〜) 
巣口R付近で幼獣3頭がはしゃぎ回っていると、左から4頭目の成獣が登場しました。 
成獣は落ち着いていて、幼獣が「遊ぼう遊ぼう!」と挑発するように目の前で飛び跳ねても、遊びには付き合いません。 
腹面に乳首が見えたので、母親♀のようです。 
カメラを振り返ったときに、左右の目が不均等であることが確認できました。(右目<左目) 
母親♀が近くに居た幼獣を毛繕いしてやろうと試みるも、元気いっぱいの幼獣は逃げてしまいました。 


シーン9:7/29・午前4:22(@7:03〜) 
別アングルの監視カメラでも撮れていました。 
巣口Lを点検していた母親♀が振り返って左に行くと、出迎えた幼獣2頭が♀にまとわりついて遊びに誘います。 
仲間との追いかけっこで逃げてきた幼獣が入巣Lしたものの、すぐに出巣Lしました。 


シーン10:7/29・午前4:23(@7:40〜) 
腕白盛りの幼獣2頭が疲れを知らず、はしゃぎ回っています。 
獣道に泰然と佇んでいた母親♀に突進しても、成獣はうんざりしたような顔で(?)、誘いに乗りません。 
母子の群れは獣道を右上奥へ立ち去りました。 
元気が有り余っている幼獣は、無駄に走って何度も往復しています。 


シーン11:7/29・午前4:24(@8:27〜) 
しばらくすると、幼獣2頭が追いかけっこしながら獣道から駆け戻ってきて、巣穴Lに入りました。 
少し休んでから、幼獣2頭ともまた外に出てきて走り去りました。 


シーン12:8/3・午後19:24・(@9:01〜) 
5日後の晩にも、同様の光景が見られました。 
ニホンアナグマの幼獣だけが3頭現れ、林内でふざけて追いかけっこしています。 
母親♀の姿は見えませんが、おそらく近くで採食しているはずです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。


【考察】 
この巣穴で今季アナグマ♀から生まれた同腹の兄弟姉妹は4頭いたはずなのに、最近は3頭しか見かけません。 
まさか3頭が結託して仲間外れにしているのでしょうか?
それとも残りの幼獣1頭は死亡したのか?と心配になります。 
来季のヘルパー候補♂はあまり幼獣同士では遊ばずに母親とべったりなのかもしれない、と想像したものの、母親♀が旧営巣地に現れたときも同行していませんでした。 
前回の記事で紹介したように、足りない幼獣1頭は家族群からはぐれて迷子になったのか、それとも独り遊びが好きな個体なのかもしれません。(親離れや独立が早い個体?) 


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