2023/01/04

里山で夜道を歩くツキノワグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2022年8月下旬・午後21:50頃 

里山の林道でヌタ場(だと期待している水溜り)をトレイルカメラで監視していると、夜にツキノワグマUrsus thibetanus)がやって来ました。 
カメラの起動が遅れ、残念ながら数秒間しか写っていません。
短い登場シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 
熊は水たまりを避けるように、林道の左端を歩いて左から右へ通り過ぎました。 
進行方向には水場があるのですが、池畔に設置した別のトレイルカメラにはツキノワグマの姿が写っていませんでした。
途中で林道から逸れて行ったのかもしれません。



クサコアカソの葉を糸で綴って巣を作るアカタテハ終齢幼虫【30倍速映像】

 

アカタテハの飼育記録:2022年#1 



2022年8月下旬・夕方〜深夜・室温23〜24℃ 

前日に里山で採集してきたアカタテハVanessa indica)の終齢幼虫のために、新鮮な食草を採取してきました。 
農薬散布の影響が無さそうな自生地として、平地の用水路沿いにわんさか生えているクサコアカソの群落を選びました。 
虫食い(食痕)の無い3株の茎を切って現場で水切りし、家に持ち帰りました。 
早速、アカタテハ終齢幼虫を新鮮な食草クサコアカソに移してやりました。
アカタテハ幼虫の棘に触れても全然痛くないのですが、飼育中の幼虫には素手で触れず、柔らかな筆を使うようにしています。 



幼虫は株の上部に移動してから、小さな若い葉を絹糸で綴って隠れ家を作り始めました。 
巣作りの一部始終を微速度撮影してみました。 
30倍速の早回し映像をご覧ください。 
自分の周囲にある小葉や果穂に絹糸を何本も張り巡らせ、その張力で次第に巣材を引き寄せ、互いに綴り合わせます。 

赤い葉柄が固くて巣材として加工しにくい場合には、茎の一部を大顎で齧って切れ込みを入れ、曲げやすくしています。 
茎や葉柄を噛み切って完全に切り落とさないのがポイントで、薄く皮1枚残しておけばやがて茎の先端部は萎れて柔らかくなります。 
これは食前のトレンチ行動も兼ねているのでしょう。

【参考文献】 
チョウの行動生態学 (環境Eco選書)』という専門書の第1章「幼虫の行動」に井出純哉「アカタテハの巣作り行動」と題した総説が収録されていて、とても勉強になりました。 
原著論文はこちら。
Ide, Jun-Ya. "Leaf trenching by Indian red admiral caterpillars for feeding and shelter construction." Population Ecology 46.3 (2004): 275-280.
作業の合間にお腹が空くと、アカタテハ幼虫は巣材をときどき齧っています。 
巣内に下半身を隠しながら上半身を一杯に伸ばして、巣の近くにある葉をときどき食べています。 
クサコアカソの葉縁からきれいに食べ進むのが目的ではなく、あくまでも巣作り工程のついでに巣材のあちこちをつまみ食いしているようです。 
巣内で休憩(食休み? 大休止)することもあります。 

出来上がった隠れ家(シェルター)は隙間だらけのゆるゆるで、天敵(捕食者および寄生者)に対する要塞というよりも、ただの目隠し(ブラインド)にしかなりません。 
アカタテハ幼虫がオトシブミのように巣を隙間なくきっちり(堅牢に)作り込まないのは、手間がかかるのと、却って天敵に目立ってしまうからだと思います。 
食草の群落でなるべく違和感がない巣を作る必要があります。 

カラムシの群落でアカタテハ幼虫が巣を作ると、白色の葉裏が表側になり、逆に目立ってしまうことが知られています。 
今回、巣を構成するクサコアカソの葉は必ずしも裏面を外側に向けてはいませんでした。 
クサコアカソはカラムシほど裏表で葉の色が変わりませんから、隠れ家の存在はあまり目立ちません。 
次回はカラムシを食草として与えて巣作りを改めて観察してみるつもりです。 
(近所にカラムシの群落が無いので、調達が難しいのです。) 

【参考サイト】 
アカタテハの観察日記2@晶子のお庭は虫づくし 


鱗翅目の幼虫で隠れ家(巣)を作るのは一部の種だけです。 
繭を紡ぎ始める前から巣作り用の絹糸腺に栄養を投資する必要があるとすれば、巣を作らない他種の蝶や蛾の幼虫よりもアカタテハは成長が少し遅れると予想されます。 



関連記事(2年前の撮影)▶ アカタテハの飼育記録:2020年


造巣開始

以下の写真は、完成した巣を色んなアングルで撮影したものです。







2023/01/03

ニホンアナグマが排泄した糞塊から翌晩に離れる糞虫【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2022年8月下旬 

里山のスギ林道にある溜め糞場sを自動撮影カメラで見張っている記録です。 

シーン1:8/25・午後19:26・気温21℃ 
林道を右から来たニホンアナグマMeles anakuma)が下草の匂いを嗅ぎながら自分たちの溜め糞場に近づくと、左を向いたまま脱糞しました。 
暗視カメラが照射する赤外線が強過ぎるのか、白飛びしてアナグマの顔に縦縞がよく見えません。 
縦縞が薄い個体なのかな? 
カメラの設定で赤外線LEDの光量を調節できると知ったので、少し下げてみることも検討します。 

今回のアナグマは排便しながら前進し、林道上に糞を点々と撒き散らしました。 
ただし、タヌキの溜め糞の上に重ねてアナグマが脱糞することはありません。
この行動はアナグマに特有なのか、タヌキでは見たことがありません。 
アナグマの排便は縄張り宣言のための匂い付けという意味合いが強いのかもしれません。 

林道を左に立ち去る前に、アナグマはスギの木の根元に生えた下草に尻を擦り付けました。 
排便直後の肛門周りを下草で拭いているようにも見えますが、この行動はしゃがむ姿勢で肛門付近の臭腺を擦り付けるアナグマに特有な匂い付けの行動(スクワットマーキング)なのだそうです。 
ここはタヌキと共有している溜め糞場なので、アナグマはタヌキに対抗して匂いを強くアピールする必要があるのかもしれません。
つまり、自分の糞や臭腺の匂いで結界を張っているのでしょう。
実際に、画面の手前半分がタヌキの領域、奥の半分がアナグマの領域という風に2種は棲み分けています。


シーン2:8/26・午後21:37・気温23℃ (@0:15〜) 
 翌日の晩、左から走ってきたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が溜め糞場sで排便せずに素通りしました。 

それよりも注目すべきは、赤丸で囲んだ前日にアナグマが残した糞です。 
1匹の黒い糞虫がアナグマの糞塊から離れ、スギの落葉で覆われた林道を右に歩き去りました。 
動きが遅いので、5倍速の早回し映像に加工しました。 
センチコガネまたはオオセンチコガネだと思うのですが、定かではありません。 
糞塊の横をタヌキが通りかかったから糞虫が慌てて逃げ出した、という訳でもなさそうです。
糞塊の近くに巣穴を構えて、そこに帰るところだったのでしょう。 
糞虫は巣穴と糞塊を往復していると考えられますが、今回撮れたのは糞に向かうシーンではなく、逆に糞から離れるシーンでした。 

糞虫は変温動物ですから、いくら活発に獣糞の分解活動に励んでいてもトレイルカメラのセンサーは感知できません。 
たまたま恒温動物(哺乳類や野鳥)が通りかかったときの監視動画に、糞虫が写っていればラッキーです。 

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