2013/07/12

ウワミズザクラの葉を食すシロシタバ(蛾)幼虫



2013年6月上旬

里山の山腹に生えた若いウワミズザクラの枝先で若葉をもりもり食べているカラフルな幼虫を発見。
毛虫ではなく芋虫タイプの幼虫です。
腰のあたりにある赤い条が目立ちます。

葉の食べ方が独特で、枝に止まって葉の主脈から蚕食するため中央から虫食い穴が出来ました。
柔らかそうな若葉を食べ尽くすと次は葉柄までも摂食しました。
食後は尺取り運動で移動します。(後退も可能。)

これほどユニークな外見で食草も分かっているのに、自分で調べても幼虫の名前が分かりませんでした。
未採集、未採寸。
飼育ネタはもう手一杯なので、今回は採集せずスルー。
よく見ると腹部の歩脚が5対あるので、シャクガ科ではなさそうです。
尺取虫とは呼べないかも)

いつもお世話になっている「不明幼虫の問い合わせのための画像掲示板」にて問い合わせたところ、atozさんから以下のコメントを頂きました。

『日本産蛾類生態図鑑』を参照すると、頭部頂点近くの赤斑や、第5腹節の大きなオレンジの隆起とそれに続く側面の帯、亜背線に並ぶオレンジの小突起列が、シロシタバCatocala nivea nivea)の幼虫に似ています。 ただ、ネット上で検索すると出るシロシタバとされている幼虫(昆虫エクスプローラなど)とは異なるので、どちらかが誤同定でしょう。 シロシタバは幼虫の食性が狭く、サクラ属(Prunus)の中でもウワミズザクラやイヌザクラなど特定の種群しか食べず、ヤマザクラやソメイヨシノ等は食べないと言われています。 一方ノコメキシタバについてはリンゴ属(Malus)を食べるがサクラ属は食べないと言われています。(PDF文献 このような食樹の情報からもシロシタバの可能性が高いのではないかと思います。

『日本のCatocala』(西尾規孝 著)は長年カトカラを研究されてきた著者の集大成となる書で、日本産のカトカラ属29種の生態、卵、幼虫(若齢、終齢)がカラー写真を使って詳細に解説されております。その中でカトカラの幼虫には似通った種が多く、かつ色彩変異が激しいことが分かり、今回の幼虫同定のポイントとして、「食餌植物」、「頭部の斑紋」、「第5腹節の隆起」、「分布」に着目してみました。
まず食餌植物で、サクラ属を食べる可能性があるのはシロシタバ、ワモンキシタバ、キララキシタバ、ハイモンキシタバの4種で、ノコメキシタバについてはサクラ属の記録をどの文献でも見つけることができませんでした。
(なお、シロシタバは蛾類生態図鑑にはヤマザクラやソメイヨシノは食べないと書いてありましたが、「日本のCatocala」ではこれらも代用食となると書かれています。自然状態では大抵ウワミズザクラで、孵化幼虫はヤマザクラなどには食いつかないケースが多いようです)
形態については上記の種は色彩変異があり、同種内でも突起がオレンジ、黒、白と様々で、体色も明るい色から黒い色まで様々でしたので、色では同定は無理だと思います。第5腹節の隆起に違いが見られ、シロシタバだけがしぐまさんの幼虫のように幅が広い形をしています。ハイモンとノコメは小さめで、ワモンとキララは長く突出します。
また、頭部の斑紋にも違いがあり、動画を確認するとシロシタバと一致します。

最後に分布ですが、しぐまさんがノコメは未見とおっしゃるように、ノコメは北海道と本州中部に隔離分布しており、なぜか東北地方は空白地帯となっています。(宮城県などで少数の記録があるのみ)。信州では普通種なのに不思議です。
シロ、ハイモン、ワモンは東北にも分布しています。ワモンに近縁のキララは北海道中部以東に分布します。

以上からこの幼虫はシロシタバだろうと結論付けました。
『日本のCatocala』掲載の数個体のシロシタバ終齢幼虫のうちの1例が、この幼虫と色彩がそっくりに見えます。

ちなみに、昆虫エクスプローラのシロシタバ幼虫はカトカラ属ではなく、カキバトモエの間違いだと思います。








2013/07/11

フランスギクの茎に初期巣を作るフタモンアシナガバチ創設女王



2013年6月上旬

フランスギクの茎に作られたフタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)の初期巣の定点観察。

創設女王がせっせと育房を増設していました。
作業を終えると女王は他の育房を点検して回り、外出しました。
映像のラストシーンは女王蜂の飛び立ちを1/8倍速のスローモーションでリプレイしてみました。
この程度のスローモーションでは蜂の羽ばたきが全く捉えられていません。
やはりハイスピード動画で撮る必要があります。

関連記事→「初期巣に出入りするフタモンアシナガバチ創設女王の飛翔【ハイスピード動画】
(ブログに公開する順番が逆になりましたが、実はこちら↑が続編です。)

その後は残念ながら、この巣は草刈りで駆除されてしまいました。
予想通りというか、ここは子供の通学路なので仕方がありません。




ヒメギフチョウ幼虫の臭角



2013年6月上旬

ヒメギフチョウの飼育記録8

計5頭のヒメギフチョウ(Luehdorfia puziloi inexpecta)幼虫が大きく育ちました。
映像の冒頭は採寸も兼ねて方眼紙上を歩かせました。
大きくなった4齢幼虫だと思っているのですけど、この後に蛹化したので実は既に終齢(5齢)になっていたのかもしれません。
(忙しくて幼虫の齢数に関しては余り真面目に観察していません。)
体の側面にヒメギフチョウに特有の黄色の斑点が並んで見えます(気門下隆起)。
胸部(T2-3)にはこれが無いことに気づきました。

幼虫の体に強く触れてみると、頭部から臭角を出して威嚇しました。
綿棒では刺激がソフトすぎるのか、それとも慣れが生じたのか、後半はなかなか反応しなくなりました。
面白がって何度も繰り返すと黄色い液体が少量、綿棒に付きました。
この黄色い染みを直接嗅いでみると独特の臭いがします。
空気中には特に匂いを感じなかったので、揮発性が低い成分なのかもしれません。



『日本の昆虫1:ギフチョウ』p32によると、

幼虫が臭角を持つのはアゲハチョウ科の特徴。ギフチョウの幼虫では1齢で乳白色、2令で淡緑色、3齢以降は橙色というように色彩が変化し、成長するにつれて分泌物の臭いも強烈になる。

臭角の色が成長に応じて変化するとは知りませんでした。
ヒメギフチョウはどうなのか、しっかり調べればよかったですね。
私が飼育中に調べたのはこのときだけでした。

つづく→「ヒメギフチョウの蛹化【微速度撮影】



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