ラベル 発生 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 発生 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016/07/14

羽化直後に蛹便を排泄するホシカレハ♀(蛾)



2016年5月下旬

ホシカレハの飼育記録#4

▼前回の記事
ホシカレハ♀(蛾)の羽化【10倍速映像】
繭から羽化したホシカレハ♀(Gastropacha populifolia angustipennis)は、伸ばした翅を乾かしながら腹端をときどきヒクヒクと収縮させています。
ホシカレハ♀を腹面から撮ると腹部が太く寸胴で、いかにも卵が詰まっていそうです。

午前9:52、繭にしがみついてじっとしていたホシカレハ♀が急に動き始め、勢い良く排便しました!
翅の伸展に使った体液の余りを排泄したのです。
噴射した羽化液(蛹便)は薄い黄土色でした。
水っぽいクリーム色の羽化液が下に敷いた白紙とペットボトル側面にも垂れています。
午前9:30時点の室温は24.9℃、湿度35%。
午前10:24時点の室温は25.8℃、湿度36%。

午後になり、前翅長を採寸するために蛾を方眼紙に載せようと思いました。
指をそっと差し出して手乗りを試みたらホシカレハ♀は嫌がって逃げ出しました。
そのまま強引に手掴みにしようとすると怖がって、私の手のひらに抗議の脱糞。
蛹便は生温い(常温の)液体でした。
決して排泄物特有の不快な悪臭ではなく、やや香ばしい匂いがしました。
アキノノゲシなどの茎の切り口から滲み出る乳液の匂いを連想しました。

つづく→#5:初飛行





2016/07/13

ホシカレハ♀(蛾)の羽化【10倍速映像】



2016年5月下旬

ホシカレハの飼育記録#3



▼前回の記事
繭を紡ぐホシカレハ(蛾)終齢幼虫【10倍速映像】


オノエヤナギの枝で終齢幼虫が繭を紡ぎ始めてから14日目。
遂に成虫が羽化しました。
終齢幼虫を採集してきた際に体内寄生されていなくて良かったです。
どうしても羽化の瞬間を動画に記録したくて、愚直に微速度撮影で監視した甲斐がありました。
実は飼育中はカレハガだろうと思い込んでいました。
先人の飼育記録をインターネットで検索してみると、営繭から羽化まで11日という例を見つけました。(参考ブログ:廿日市市の自然観察(昆虫)
という訳で、私も営繭10日目から連日監視していたのです。
繭の表面を覆っていた柳の葉は予め取り除いてあります。

羽化の一部始終を10倍速映像でご覧ください。
本格的に蠕動を始めて蛹を破った時刻は午前7:23。

繭の上端の脱出口を押し広げて成虫が抜け出ました。
繭に掴まりつつ少し伝い降りて繭の中央部で静止しました。
翅脈に体液を送り込んで、その水圧でしわくちゃに折り畳まれていた翅を一気に伸ばします。
翅伸展は急速に完了しました。
これを観察するのが蝶蛾類(鱗翅目)を飼育する醍醐味です。
伸びたばかりの翅を乾かすために、しばらく翅を立てた(閉じた)姿勢でじっとしていました。
この状態はカレハガ科にしては見慣れない姿勢です。
午前7:45に測った室温は22.5℃、湿度37%。

午前8:07、遂に翅を屋根状に畳みました。
このときの室温は23.8℃、湿度36%。
翅の色は黄色っぽい黄土色でした。
翅表に黒点が星のように散りばめられていることから、カレハガではなくホシカレハ♀(Gastropacha populifolia angustipennis)と判明しました。
触角が糸状なので♀ですね。
成虫の口吻は退化しているようです。
やがて腹部を激しく収縮するようになりました。(実際の動きはこの映像よりも1/10遅いことに注意。)


つづく→#4:羽化液(蛹便)の排泄


右の触角
成虫の口吻は退化
繭の脱出口



↑【おまけの動画】

結局、羽化の前兆は分かりませんでした。
繭内で蛹がときどき自発的に蠕動していたのかもしれませんが、私は気づきませんでした。
興味のある人のために、羽化する前(午前4:46〜7:21の2時間35分間)の繭を微速度撮影した10倍速映像をブログ限定で公開します。

撮影のために何日も連続照明を繭に当てたのに蛹の体内時計は乱れず、早朝に羽化しました。

繭がしっかり遮光しているとは思えません。
外界の光に依存しない自律性の体内時計があるのでしょうか?
最低気温を感知して羽化を開始するのかもしれません。



2016/06/08

繭を紡ぐホシカレハ(蛾)終齢幼虫【10倍速映像】



2016年5月上旬〜中旬

ホシカレハの飼育記録#2



▼前回の記事
柳の枝で繭を紡ぐホシカレハ♀(蛾)終齢幼虫

採取したオノエヤナギの枝を持ち帰り、飼育下でホシカレハGastropacha populifolia angustipennis)♀の終齢幼虫の営繭を微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
ホシカレハ幼虫は周囲の葉を引き寄せると絹糸で綴り合わせいます。
ときどき休憩したり方向転換しながら繭を紡いでいきます。
撮影中の室温は約22℃。

余談ですが、採取した柳には別種の蛾の幼虫(青虫)が紛れ込んでいて、柳の葉を食べたり徘徊したりしています。
また、葉が萎れ始めると多数のアブラムシが逃げ惑い始めるのもちょっと面白かったです。

焦って採集したので柳の枝の水切りに失敗し、葉がみるみるうちに萎れてしまいました。
見栄えは悪いですけど、繭作りやその後の変態には影響ないはずです。
繭が完成する前に初日だけで微速度撮影を止めてしまいました。
柳の葉に隠れた中で営繭するので何をやっているのかよく見えず、あまり面白くないのです。

繭を紡ぎ始めてから2日後、どうやら繭が完成したようです。
繭の表面からピンセットとハサミを使って柳の葉を少しずつ取り除いてみたら、繭が毛羽立ってしまいました。
その作業中に、蛹が繭内で暴れる気配はありませんでした。
ヤドリバエや寄生蜂に寄生されているのではないかという不安を抱えつつ、このまま見守ります。
ホシカレハの繭に埋め込まれた黒毒毛に触れると皮膚が痒くなったりかぶれるので要注意。

繭の黒点は幼虫時代の毒針毛で、触ると痛みや発疹を生じるといわれている。(『繭ハンドブック』p37より)


幼虫と繭は先端の鋭い棘を持ち、接触時痛みを感じ、軽い発赤や丘疹を生ずる。短時間で治癒。(みんなで作る日本産蛾類図鑑サイトより)


つづく→#3:羽化の微速度撮影



完成後の繭@方眼紙
羽化に備えて繭の上端に脱出口が用意されている?

2016/06/07

柳の枝で繭を紡ぐホシカレハ♀(蛾)終齢幼虫



2016年5月上旬

ホシカレハの飼育記録#1


湿地帯に生えたオノエヤナギの木で大きく育った灰色の毛虫を見つけました。
枝先で周囲から柳の葉を何枚も引き寄せて絹糸で綴り、繭を紡いでいます。
絹糸で繭の足場が粗く作られているだけで、未だ繭を作り始めたばかりのようです。
この日は風がやや強く吹いて枝が揺れるので、左手で枝を掴んで固定しながら撮影しました。



撮影当日はてっきりカレハガの幼虫だろうと予想したのですが、後日に羽化した成虫を見てホシカレハGastropacha populifolia angustipennis)♀の終齢幼虫と判明しました。

柳の種類を見分けるのが昔から苦手で敬遠していたのですけど、後日に枝葉を採集して検討した結果、オノエヤナギだろうとなんとか分かりました。

(オノエヤナギは)冬は雪が積もるような寒冷地に多く、北日本で数が多い。葉は細長く、カワヤナギなどに似るが、表面にしわが目立ち、裏面に葉脈が隆起して細かい毛が密生することが特徴である。葉脈は表面でくぼみ、裏面に隆起する。(『樹液に集まる昆虫ハンドブック』p75より)


葉裏


ホシカレハ幼虫の食餌植物として、ヤナギ科のハコヤナギ属が知られています。
この個体はオノエヤナギ(ヤナギ属)の葉を食べて育ったと考えるのが自然ですが、確かにハコヤナギの幼木も現場近くの湿地帯で見かけています。
繭を紡ぐ場所を探し求めて、わざわざオノエヤナギの木を登って来たのでしょうか?
今回は低い枝に居たので見つけることが出来ました。
英語版ウィキペディアによれば、本種(の欧州産亜種)は柳類の葉も普通に食べるようです。

The larvae feed on Populus and willow species.

撮影後に柳の枝ごと切り落としてホシカレハ幼虫を採集し、急いで持ち帰りました。
飼育下でじっくり営繭を観察します。
映像の後半(@2:23〜)は飼育下で接写したものです。

つづく→#2:営繭の微速度撮影


2016/06/06

ヨシの葉に残るオツネントンボの産卵痕



2016年5月上旬


▼前回の記事
♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀

オツネントンボ♀(Sympecma paedisca)の産卵地点となった湿地帯を4日後に再訪してみると、水溜りの水が少し干上がりかけていました。

産卵したヨシの生えた手前の岸辺から水溜りが干上がってる。

2日前に産卵したヨシの葉を探してマクロレンズで接写してみると、粒状の点列が並んでいました。
葉縁に朝露の水滴が光っています。

ミミズ腫れのような刺青のような産卵痕が並んでいます。
強拡大しても残念ながら倍率不足で卵の中はよく見えませんでした。
胚の頭の向きは♀の産卵姿勢に対してどちら向きなのか知りたかったのですけど、やはり本格的な顕微鏡が必要になりそうです。
もしかすると、葉裏から観察した方が見え易いのでしょうか?

孵化のシーンを観察したいので、葉ごと採集して持ち帰り飼育すべきかどうか悩みます。
現場に残しても、このまま雨が降らなければ水溜りが完全に干上がってしまい、孵化したヤゴは生き残れないでしょう。
未経験の私が採取したら植物体を枯らしてしまいそうですが、中の卵も死んでしまうのではないか?という不安があります。
「近畿地方のトンボ雑記」サイトでオツネントンボの孵化を観察した記録を見つけました。
それによると、

最短卵期は11日,平均卵期(半数孵化)は13日でした.


つづく→





2016/05/15

巣内で休眠越冬するノシメマダラメイガ(蛾)老熟幼虫



2015年12月上旬

ノシメマダラメイガの飼育記録#30


ノシメマダラメイガ
Plodia interpunctella
飼育容器の蓋代わりに観察しやすいようにサランラップを張っています。
その裏面に3匹の終齢幼虫がいつの間にか絹糸を紡いで薄い繭のような巣を作り、その中で越冬していました。
本種は幼虫のステージで冬越しすることが知られています。
ピンセットでサランラップ越しに幼虫に触れると動いたので、休眠状態で生きていることが分かります。
しつこく刺激しないと反応しません。
うっかり、室温を測り忘れました。
冒頭は大きさの比較として1円玉を写しました。

実は、この容器はカシノシマメイガを飼育していたものでした。
当然、カシノシマメイガの幼虫が越冬しているのだと初めは思い込んでいました。
カシノシマメイガの飼育は大失敗に終わったはずなのに、放置していたらようやく幼虫が発生したのかと無邪気に喜んでいました。
ところが春になり、蛹化を経て次々に羽化してきた成虫はなんとノシメマダラメイガでした。
事態は混乱していますが、次のように考えました。
チョコレートなど餌の匂いに誘引されて、ノシメマダラメイガ幼虫が外からカシノシマメイガの密閉飼育容器内に侵入した可能性は低いでしょう。
室内でノシメマダラメイガやカシノシマメイガの成虫を見つける度に、ポケットに忍ばせておいたビニール袋で採集して、それぞれの飼育容器に追加投入していました。
同じビニール袋を捕虫網代わりに使い回していたのが問題です。
おそらく採集時にノシメマダラメイガ♀の受精卵が袋内に零れ落ち、カシノシマメイガの飼育容器にノシメマダラメイガの卵が混入したと推測されます。
以上、お恥ずかしい裏話でした。
ノシメマダラメイガの成虫は口吻が退化しているため、幼虫の餌だけを与えればよく、飼育はとても簡単です。
その一方で、カシノシマメイガは成虫をいくら容器に集めても成虫の餌を与えなければ産卵する前に死んでしまいます。



2016/05/06

羽化直後のノシメマダラメイガ(蛾)



2015年10月下旬

ノシメマダラメイガの飼育記録#29

生のニンニクだけを餌にしてノシメマダラメイガPlodia interpunctella)が育つか?という実験をしていました。
諦めかけて放置していたら、容器内で遂に羽化したばかりの成虫を1頭見つけました。

繭から抜け出した直後らしく、体液を翅脈に送り込んで翅伸展している途中(後半)でした。
慌てて動画と写真で記録します。
翅がすっかり伸び切ると、その翅を立てて乾かします。
ノシメマダラメイガが翅を閉じている(立てている)姿勢はこれまで一度も見たことがないので、とても珍しく思いました。
male wing gland?
成虫の口吻は退化していますが、口元でときどき開閉しているのは下唇鬚?でしょうか。
腹端を少し持ち上げていて、コーリング姿勢に似ているかもしれません。
しばらくすると閉じた翅を再び広げたのですけど、その瞬間は見逃しました。
羽化に気づいたのが外出の間際だったので、撮影に全然集中できませんでした。
記録として中途半端ですけど、ゼロよりましなので。(完全版が撮れたら差し替えます。)
次に機会があれば羽化の一部始終を微速度撮影でじっくり記録したいものです。

桑原保正『性フェロモン:オスを誘惑する物質の秘密』によると、「ノシメマダラメイガは午後にだらだらと羽化する」らしい。(p148より引用)



さて、この結果からノシメマダラメイガはニンニクだけを食べて卵から成虫まで育つことが分かりました。
大量の産卵数に比べて生存率は極めて低いです。
幼虫が栄養失調で共食いしたかもしれません。(未確認)
一つ不思議なのは、密閉容器内でこれまで全くノシメマダラメイガの交尾行動を観察していないことです。
もしかすると、ニンニク臭が性フェロモンの働きを撹乱する作用が有るのかな?と思ったりしました。

つづく→#30:巣内で休眠越冬するノシメマダラメイガ(蛾)老熟幼虫



2016/02/11

クロシタアオイラガ(蛾)幼虫の繭作り失敗【60倍速映像】



2015年10月中旬

採集してきたクロシタアオイラガParasa sinica)の幼虫に柿の葉を与えても食べてくれず、飼育容器内で落ち着きなくウロウロするばかりです。
ノギスで採寸すると、体長17mm。
『イモムシハンドブック』p56によれば、クロシタアオイラガ終齢幼虫の体長は18mmほど、とのこと。


食欲がないので終齢幼虫が繭を紡ぐ場所を探しているのではないかと思い、いつものように紙箱(ティッシュペーパーの空き箱)に閉じ込めてみました。

60倍速に加工した早回し映像をご覧ください。
照明が眩しくても気にしない様子で箱の中を徘徊しています。
頭部で∞の字を書きながらゆっくり前進しています。
足場となる絹糸を張り巡らしているのでしょう。
紙箱の隅の縁に沿ってシルクロードを敷設しながら前進し続けます。
なかなか営繭場所が定まらないようで、箱の隅に行き着くと引き返します。
立ち止まって休息している間も早回し映像で見ると体全体が脈動しています。
消耗した絹糸腺の回復を待っているのかと初めは思いました。

活動を再開した幼虫はやがて箱の側面と底面に交互に口を付けるようになり、遂に絹糸を紡ぎ始めたようです。
反省点として、背景が灰色のボール紙だと肝心の絹糸がよく見えませんね。
黒く塗っておくべきでした。
ところが場所が気に入らなかったのか、しばらくすると再び移動を始めました。
箱のダンボール紙と絹糸の接着の相性が悪いのかもしれません。
四方を何か物に囲まれた環境なら幼虫も落ち着いて正常に営繭できるのでしょうか?
動画撮影の邪魔になる物はなるべく入れたくないのですが、繭棚のような基質を入れてやるべきかどうか、悩みます。
もし本格的に営繭を始めたら一気呵成に仕上げるはずです。

幼虫がうずくまるように休んでいるときも、早回し映像を見ると、ときどき腕立て伏せするような奇妙な動きをしています。
どうも健康な個体ではないような気がしてきました。
例えば体内寄生による不随意運動や神経症状が疑われます。
あるいは繭作りではなくて、もう一度脱皮するための準備なのか?と思ったりもしました。
謎の病原菌に冒されていた可能性も考えられます。
カラフルな背筋が脈打っているのは、背脈管(昆虫の心臓)の拍動が透けて見えているのかな?

相変わらず探索徘徊と繭の試作と休息を繰り返しています。
ごく短距離なら後退できることが分かりました。
ただし、あまり得意ではなさそう。

またしばらくすると、いつの間にか紙箱の隅で仰向けにひっくり返っていました。
仰向け姿勢で繭を紡いでいる様子もなく、奇妙な蠕動するも起き上がる力が失われています。
前日に見られたような起き上がり運動をする元気がありません。

一縷の望みを込めて、幼虫の周囲にありあわせの物を置いてやり、より狭い空間に閉じ込めてみました。
これまでよりも落ち着いて粗末な繭を作りかけたようにも見えたのですが、やはり正常な営繭運動ではなく、ほとんどの時間は(苦しげに?)休んでいるだけでした。

実はこのようなイラガの営繭異常は見覚えがあります。

▼関連記事
繭を紡ぎ始めたイラガ(蛾)終齢幼虫
イラガ(蛾)幼虫の営繭異常【早回し映像】

諦めてクロシタアオイラガ幼虫を放置していたら、9日後には完全に死んでいました。
蛹化せず幼虫のまま萎んでいました。
白い糞を排泄した跡が横に残っています。
これはイラガの仲間に特有の堅牢な繭を作るために必須のシュウ酸カルシウムを含んだ分泌物(硬化剤)なのでしょう。

今回は営繭の撮影を優先したので、密閉容器に閉じ込めていません。
開放空間のため、たとえ寄生ハエの終齢幼虫(ウジ虫)が寄主脱出しても分かりません。
営繭異常の原因が体内寄生だったかどうか、分からず仕舞いでした。
7年前にイラガの繭を採集したら、蛾ではなく寄生ハエが固い繭から羽化してきました。
このハエは寄主に正常の繭を作らせてから捕食した(殺した)ことになります。

▼関連記事
イラガに寄生するヤドリバエ(イラムシヤドリバエ?)
もし次回イラガを飼育するときは蚕棚やまぶしのような四方をしっかり囲まれた空間に幼虫を閉じ込めて繭を作らせた方がよいかもしれません。



【追記】
カキノキが幼虫による食害を防ぐために毒を葉に貯め込む以外に、成長ホルモン様物質が含まれている可能性も考えられます。
稲垣栄洋 『たたかう植物: 仁義なき生存戦略 』(ちくま新書)によると、
例えばイノコヅチには昆虫の脱皮を促す成長ホルモン様物質が含まれている。(中略)この物質を食べると体内のホルモン系が撹乱を起こし、大して体も大きくならないうちに脱皮を繰り返して早く成虫になってしまう。 (p106-107より)

同様に、イラガ類の幼虫が充分に育っていない内に営繭を始めてしまうようなスイッチを入れる化学物質がカキノキの葉に含まれているとすれば、食害への対抗措置になり得るでしょう。




腹面
背面

2015/12/24

トリノフンダマシ(蜘蛛)幼体は団居を作らない?



2015年9月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#14


卵嚢から脱出したトリノフンダマシCyrtarachne bufo)幼体は各自が糸を引きながら分散し、後続の個体は綱渡りしています。

出嚢したばかりの幼体は、色形ともに成体とは似ても似つかぬ状態です。
脱出した幼体を接写すると、腹部はオレンジ色がかった褐色系で頭胸部は灰色、腹部腹面は黒っぽいです。
単眼付近は橙色っぽいです。

翌日になっても飼育容器内で幼体は集合せず団居まどいを形成しませんでした。

長時間の微速度撮影してみれば分散の挙動がよく分かったかもしれません。
容器に閉じ込められても共食いしている様子はありませんでした。(私が気づいていないだけ?)
野外の自然状態では直ちにバルーニングで分散するのですかね?(蜘蛛の子を散らす)
何匹の幼体が出嚢したのかカウントすべきなのですが、面倒でやっていません。

※ 冒頭の出嚢シーン(@〜00:30)のみ動画編集時に自動色調補正を施しています。

さて、採集した3つの卵嚢でちょっとした実験をしています。
近縁種オオトリノフンダマシの場合、卵嚢内の幼体は重力に逆らって上に向かい、卵嚢が置かれた向きに応じて上部に脱出口を開けるのだそうです。
今回私も真似をして、採集時の自然状態の向きに対して正立、倒立、横向きと3つの条件でトリノフンダマシの卵嚢を容器内に固定しました。
意外なことに、この記事を書いている現在(12月下旬)も、残る2個の卵嚢から幼体は孵化していません。
このまま室内で越冬するのでしょうか?※
それともオオトリノフンダマシの卵嚢とは異なり、トリノフンダマシでは正立条件以外(倒立、横倒し)では卵嚢内の幼体が脱出できなくなり死んでしまったのでしょうか?
トリノフンダマシとオオトリノフンダマシでは卵嚢の形状が違いますから、実験結果が違っても不思議ではありません。
春まで様子を見守ることにします。

※『クモ生理生態事典 2011
』サイトでトリノフンダマシの項を参照すると、

関東では9月に成体,中旬に産卵,産卵後3週間をして出のう,2令幼体で越冬(椿の葉裏など).(中略)10月24日に出のうした幼体雄は翌年4月18日,5月20日に脱皮.

つづく?



【追記】
本種の幼体を飼育したことは未だありませんが、造網せずに捕虫するらしい。
『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化のなぞを探る』第3話 池田博明「似てない親子」p21によると、
 親になると網を持つという例があります。コガネグモ科のトリノフンダマシの仲間がそうです。この仲間は夏の夜に独特な網を張りますが、幼体や♂の網は知られていませんでした。(中略) 幼体は夕方暗くなるころから活動を開始し、ユズの葉のへりに移動してきます。そこで第4脚で葉のへりを、第3脚で葉の表面をおさえ、第1・第2脚を大きく広げて、飛んでくる羽虫を抱き込むようにつかまえるのです。♀の亜成体や♂も同じようにして捕虫します。(中略)コガネグモ科では幼体の時期に網を持たないで捕虫するクモが何種類か知られています。


2015/12/22

卵嚢から孵化するトリノフンダマシ(蜘蛛)幼体



2015年9月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#13

トリノフンダマシCyrtarachne bufo)幼体の出嚢を今度は微速度撮影ではなくリアルタイムで接写してみました。
卵嚢表面の穴から脱出すると、前の個体が残した糸を伝って綱渡りのように容器内に分散します。
脱出を躊躇う個体も見受けられます。
脱出した幼体を接写すると、腹部はオレンジ色がかった褐色系で頭胸部は灰色、腹部腹面は黒っぽいです。
単眼付近は橙色っぽいです。

つづく→#14:トリノフンダマシ(蜘蛛)幼体は団居を作らない?



2015/12/21

トリノフンダマシ幼体(蜘蛛)の出嚢【微速度撮影】

2015年9月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#12


桑の葉裏に吊るされたトリノフンダマシCyrtarachne bufo)の卵嚢3個を採集して室内で飼育することにしました。



同属の近縁種オオトリノフンダマシ(Cyrtarachne inaequalis)の場合、紡錘形の卵嚢に出来る脱出孔は必ず重力と反対側に出来ることが実証されているそうです。
(文葉社『クモの巣と網の不思議:多様な網とクモの面白い生活』p131より)。
中の幼体に負の重力走性(走地性)があり、脱出しようと上に向かって同じ位置を噛み付いた結果、開孔するのだそうです。



▼関連記事(2006年の撮影)
オオトリノフンダマシ幼体の出嚢:前編

トリノフンダマシとオオトリノフンダマシは卵嚢の形状が明確に異なります(球形、紡錘形)。
今回、同じ母クモが産んだと思われる卵嚢を3個手に入れたので、私も真似をしてトリノフンダマシの球形の卵嚢で実験してみることにしました。
採集時の自然状態の向きに対して正立、倒立、横向きと3種類の条件で木工用ボンドやリングなどを使って容器内に固定しました。





採集して4日後の晩、幼体の孵化が始まりました。
出嚢したのは密閉容器内に正立して置いた卵嚢です。
つまり、採集時(自然状態)と上下を同じ向きにしておいた卵嚢です。
初めの2個の卵嚢に関しては母クモが産卵した順番が分かりません。

普通に考えれば産卵順に孵化するのでしょう。
真上ではないものの、確かに卵嚢の上部を食い破って穴を開け、幼体が続々と脱出してきます。
大小2個の脱出孔が並んでいます。
大脱走の様子を3時間、微速度撮影してみました。
60倍速の早回し映像でご覧ください。

【おまけの動画】
早回し速度を変えたバージョンを2本、ブログ限定公開します。
眠れない夜にでもご覧下さい。
「羊が1匹、羊が2匹、… zzz」




↑40倍速映像



↑10倍速映像

つづく→#13:卵嚢から孵化するトリノフンダマシ(蜘蛛)幼体




ランダムに記事を読む