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2015/05/28

夜に産卵するモリアオガエルの群れ【暗視動画】



2015年5月中旬

モリアオガエルRhacophorus arboreus)が繁殖する里山の小さな沼に毎年通って定点観察しています。
岸辺に生えた木の枝に集まり泡巣を作りながら抱接産卵する様子を2012年に動画で記録し、2013年には微速度撮影しました。

今年のテーマは夜間の撮影です。
この日は午前中まで雨が降り午後から晴れたので、いざ出陣。
すると予想通り、既に繁殖期が始まっていました。
例年より少し早いようです。

雨が降ったせいで沼の水量が多く、毎年使っているお気に入りの撮影ポイントが水没していました。
カエルが集結している木に接近しずらくなり、三脚も使えず困りました。
マユミの枝先に産み付けられた泡巣の一部は枝がしなって水に浸っていました。
このように泡巣が着水すると水中に住む天敵に卵が捕食されてしまうのでしょうか?



枝の2箇所で今まさに集団産卵が行われているのを明るいうちから見つけておきました。
暗くなるのを待ってビデオカメラを手に岸からゆっくり水辺に近づきます。

この日一番の失態は赤外線投光機を家に忘れてきたことです。
したがって、ビデオカメラ内蔵の赤外線LEDが届く範囲まで被写体に近づかないといけません。
なるべく枝を揺らさないよう慎重に忍び寄り、間近で繁殖行動を撮影しました。
それでも接近中にカエルを驚かせてしまい、泡巣から数匹が下の水面にポチャンと飛び降り逃げてしまいました。
ヤブ蚊対策としてウィンドブレーカーを上下に着こみ、ニット帽と手袋まで着けました。
季節外れの重装備でも、日が暮れた山中ではあまり暑くありません。

隣接して生い茂ったマユミケナシヤブデマリが重なりあう枝葉に産み付けられた泡巣bにまず注目します。(泡巣aについては別記事に)



モリアオガエルの繁殖行動に影響を及ぼさないよう、照明はなるべく控えて赤外線の暗視カメラで撮りました。(※追記参照)
途中でビデオカメラを通常モードに切り替え、試しに白色LEDで照らしてもカエルは平気そうでした。

♀らしき巨大な個体が中央に居て、その背中に♂と思われる小型の個体が多数しがみついています(抱接)。
長い休息を挟みながら、ときどき一斉に鳴き始め、それを合図に脚で粘液を泡立てています。
このとき産卵および受精が行われているそうです。
鳴いている喉の動きが見えます。
夜行性というよりも、「昼間から始めた産卵行動を暗くなっても続けている」という印象でした。
夜の方が多くのモリアオガエルが集まってくる、ということもありませんでした。(短い観察時間ですけど)

翌日に再訪しても泡巣の数はもう増えていませんでした。

ちなみに、日の入り時刻は18:43PMでした。
ほぼ新月(月齢27.3)でしかもとっくに沈んだ後なので、月明かりは全くありません。
気温を測り忘れたのが残念。

▼つづく

古池やモリアオガエル飛び込む水の音♪【暗視動画】

以下は翌日に現場を再訪して撮ったケナシヤブデマリの写真。
いつもうろ覚えのムシカリと間違えるので、この機会に記録しておきます。



※【追記】
『動物の記録8:モリアオガエルの谷』p102によると、
現在まで何回か産卵を観察したわたしの経験によりますと、ふだんはおくびょうで、とても注意ぶかいモリアオガエルも、卵をうみはじめると、それに神経を集中するせいか、生来の神経がにぶってくるようです。近よって懐中電灯で照らしても、大きな音をたてても、枝をうごかしてさえもにげません。写真をとるにしても、近くに三脚を立てて、ゆっくりと撮影することができます。

2015/05/19

セアカヒメオトシブミの揺籃作り【前編】



2015年5月中旬

平地の水辺に生い茂った(樹種不詳※)の灌木群落で夕方、葉に止まって交尾中のセアカヒメオトシブミApoderus geminus)♀♂ペアを発見。
♀は揺籃(落し文)を作り始めたばかりのようです。

ヒメクロオトシブミ背赤型と外見で区別するのは困難らしいのですが、揺籃の材料となるホスト植物にヤナギ類を含むのはセアカヒメオトシブミの方でした。




一枚の若葉を選んだ♀は基部を両側から主脈だけを残して既に切っており(挟裁きょうさい型の揺籃)、葉が適度に萎れるのを待っているようです。
映像冒頭では葉裏に止まった♀が主脈の折り目で葉を折り曲げようとしています。
♀にマウントした♂がときどき暴れて♀の背中を足で激しく擦っています。(@0:24)
振り落とされないよう必死にしがみついているだけなのか、それとも♀に何かの合図を出しているのでしょうか?



隣の葉表に別個体(性別不明)が止まっていて(@0:40)、しばらくすると向きを変えてから飛び立ちました(@1:10)。
あぶれ♂なら交尾干渉するはずなので、♀なのかな?
それとも既に喧嘩で負けた♂βなのでしょうか?

後述するように本種は形態的な性差に乏しい(性的二形に分化していない)ので、♂同士の闘争は激しくないことが予想されます。
実際のところはどうなんでしょうね?
実は初めに見つけた時は3匹がもっと近くにいて何かしていたのですが、私がマクロレンズを用意している間に別れてしまいました。
『オトシブミ ハンドブック』p38によると、本種は

日当たりの良い環境で高密度で生息している場合が多い。複数の♀が同じ葉を利用して作業している場合さえある
とのこと。

交尾中のペアは挟裁した葉の裏面(白っぽい)下側におとなしく静止し、葉先が萎れて垂れ下がるように自らが重しとなっています。
マガネアサヒハエトリ♂がすぐ近くを徘徊しても、互いに無関心でした。(映像省略)

ようやく♀が揺籃作りを再開しました。(@2:07)
♂を背負ったまま♀が方向転換すると、主脈に沿って葉先へ歩き始めました。
葉縁のあちこちに食痕があるものの、♀は気にせずこの葉を揺籃の材料に選びました。
♂は交尾器を結合したままです。
ようやく全身像を拝むことができました。
セアカヒメオトシブミの形態的な性差はほとんど無い(『オトシブミ・ハンドブック』p38)ものの、「オトシブミ・チョッキリの世界」サイトの解説によると

後頭部の形状がオスとメスとではわずかに違いメスのほうがより丸みが強い
とのこと。(標本で要確認)

この♀の左鞘翅中央に白い微小な汚れ(ゴミ)が付いていて、個体識別できる目印になりそうです。

♀は葉裏を下りながら両足を使い、葉を主脈で半分に折り畳むように、折り癖を付けています。
葉先に辿り着くと♀は方向転換し、いよいよ葉先から上に巻き始めました。
巻きながら葉に噛み傷を付けているかもしれませんが、よく見えません。(@2:50)
その間、マウントした♂は前脚の先を擦り合わせ、のんびり身繕いしています。

交尾を終えた♂が遂に♀から離れ、巻いている葉を徘徊開始。(@5:29)
♀は葉先で黙々と作業しています。
すぐに飛び去るかと思いきや、意外にも♂は再び♀のもとに戻りマウントし直しました。
これ以降はおそらく交尾器を結合しておらず、交尾後ガード(♀が産卵するまでライバル♂から守る)のようです。


本種の揺籃作りを観察したのはこれが初めてのため、映像を見直しても♀がいつ産卵したのか私には分かりませんでした。
(♀がお尻を向こう側に向けているときに産卵?)
完成した揺籃を分解して調べれば、卵の位置が分かるはずです。

カールした葉先の近くの葉裏に見える黄色っぽい粒が、もしや卵なのかと疑いました。
再び♂がマウント解除し、徘徊を始めました。(@9:45)
揺籃に巻き込まれそうになっていた謎の粒を♂が右中脚の跗節で蹴飛ばし除去しました。(@9:50)
これが♂の意図的な行動なのか不明です。
托卵(労働寄生)するオトシブミ♀や寄生虫の卵が揺籃に混入しないよう、警戒しているのでしょうか?
もしそうなら、手が離せない♀を助ける共同作業と言えるでしょう。
あるいは、♂が歩き回る時にゴミ粒を偶然に右中脚の跗節で蹴飛ばしただけかもしれません。

実験でこの行動を再現できるでしょうか?
つまり、卵を模した異物を製作中の揺籃に付けたら交尾後ガード中の♂は甲斐甲斐しく除去するでしょうか?
♂はすぐにまた戻ると交尾後ガードのため♀にマウントしました。(@10:15)





♀は巻いた葉先の主脈を噛んで傷を付けているように見えます。
揺籃作りが進むにつれて、♂はあまり♀にマウントしなくなりました。
それでも♀から離れた♂はすぐ上の葉裏に静止し、交尾後ガードを続けています。
♀が巻き上げている葉を♂はときどき点検して回ります。
葉の基部で静止し、辺りを見回したり♀を見下ろしたりしています。
♂が再び♀のもとに戻りマウント…するかと思いきや、♀の背中を通り過ぎました。(@12:57)
葉を一回りしてから♂がまた♀のもとに戻り、体に触れるもマウントせず離れました。(@13:35)

ところで、♂は交尾後ガードを解除するタイミングをどのように知るのか、とても不思議です。
♂も揺籃作りの手順を知っていて、産卵の有無を見れば分かるのでしょうか?
産卵後は♀の体臭(性フェロモン?)が変わるのかな?
葉巻の進捗状況を挟裁部からの歩数で計測しているのかもしれません。


『オトシブミハンドブック』に掲載された「オトシブミ揺籃検索表」によれば、セアカヒメオトシブミが作る揺籃の特徴は

  • 揺籃は葉の一部分で作られる。
  • 揺籃は円柱形。
  • 葉の基部以外の大半が巻かれる。
  • 揺籃は切り落とされる。
  • 揺籃の主脈には噛み傷があり、多角形。
  • 揺籃の外側の大部分は葉の裏面。

※ どなたか柳の詳しい樹種を見分けられる方は教えて下さい。
柳の花も少し咲いていました。




生憎この日は三脚を忘れたので、微速度撮影が出来ませんでした。
マクロレンズを付けた手持ちカメラで接写すると無理な体勢ですぐに疲れてしまい、集中力が続きません。
ときどき休みながら頑張って動画に記録しました。
下手に近づくと足元の枝に触れて揺らしてしまうため、撮影アングルを思うように変えられませんでした。
接写の大敵である風があまり吹いていなかったのは助かりました。


長撮りした素材をつなげただけの長編映像なので、お急ぎの方はYouTubeプレイヤー再生速度の設定を変えて早回しでご覧下さい。
FLASHではなくHTML5プレイヤーを推奨します。(ブラウザに依存?)

つづく→中編


2015/03/11

卵鞘を産み始めたヤマトゴキブリ♀の水飲み行動



2014年6月上旬

ヤマトゴキブリPeriplaneta japonica)飼育個体♀aの記録です。

腹端に産みかけの白い卵鞘をぶら下げていました。
この個体が産んだ7個目の卵鞘です。
まさに産卵マシーン!
そのまま飼育容器内を歩き回り給水皿(ペットボトルの蓋)に近づいて水を飲む様子を接写できました。
この日の晩になると卵鞘は見慣れた黒褐色に変わりました。

夜間にヤマトゴキブリ♀が卵鞘を朽木に産み付けその表面に木屑をまぶす興味深い行動を暗視カメラで撮影するのが今後の目標です。



2015/03/06

アキアカネ♀♂の連結打水産卵【HD動画&ハイスピード動画】



2014年9月中旬

農道の水たまりで尾繋がりの赤トンボ♀♂が連結打水産卵していました。
その様子を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
雌雄どちらが連結飛翔の主導権を握っているのですかね?
たまに♂♀のタイミングが合わず、♀が空振りしていました。

同定のため連写モードで写真に撮ると、アキアカネSympetrum frequens)と判明。



2015/01/12

ノシメトンボの連結打空産卵



2014年9月下旬

稲刈りが進行中の田んぼで、尾繋がりのトンボが飛びながら産卵していました。
黄金色の稲穂のすぐ上から連結打空産卵しています。
ハイスピード動画や同定用の写真を撮る前に♀♂ペアは飛び去り、見失ってしまいました。
映像を見る限り、おそらくノシメトンボSympetrum infuscatum)だと思います。
『ヤマケイポケットガイド18:水辺の昆虫』p152でノシメトンボの項目を参照すると、

♀♂が連結。挺水植物の生えているところで打空産卵
とあります。


水抜きされた田んぼに卵を産みつけても孵化できるのか、という疑問が湧きます。
調べてみると、本種は卵で越冬するらしい。
【参考サイト】:保存版 ノシメトンボの見分けと産卵によると、

春まで卵のままで越冬し、春先に水が田んぼに張られると孵化して幼虫になります。



2014/12/05

スギ伐採木に産卵するオオホシオナガバチ♀



2014年8月中旬

里山の林道でスギの木が無造作に転がして置かれていました。
おそらく最近ここで伐採されたようです。※
その倒木にオオホシオナガバチ♀(Megarhyssa praecellens)が産卵しに来ていました。
一瞬キバチ科の仲間かと思いきや、キバチ類の幼虫に外部寄生※※するヒメバチ科の一種でした。
前翅の斑紋が目立つので、同属のエゾオナガバチではなくオオホシオナガバチと分かります。

※※ この「外部寄生」という解説は『ハチハンドブック』p26に書いてあるのですが、内部の間違いではないですかね? 英語版wikipediaのMegarhyssa属の項にはendoparasitoid(内部寄生捕食者)とありました。(自己解決したので追記参照。)産卵直後に樹皮を剥いて寄主を探し、実際にどうなのか調べてみたいものです。



初めは長い触角で材の表面を探っています。
やがて産卵場所を決めると、長い産卵管を垂直に突き立て始めました。
樹皮が激しくめくれ、ささくれだっている場所を選んだようです。
腹端をカールさせて産卵しています。
このとき、オオホシオナガバチの特徴である第2腹節の背板の凸状黄色斑が見えました。
産卵管の根元は2本に別れていることも分かりました。
産卵を終えて産卵管を抜くと、もう次の産卵場所を探索し始めました。
2回目の産卵は観察しやすい場所を選んでくれました。
産卵中の無防備な状態の時に背後から微小なアリ(種名不詳)が通りかかると(@6:55)、オオホシオナガバチ♀は嫌がって噛まれた左後脚をピクリと動かし足踏みしました。
産卵中はすぐには逃げ出せませんからね。
産卵管を抜いて徘徊・探索を再開したところで撮影を止めたのですけど、直後に蜂は材木から飛び立ちました。
採集を試みたのですが逃げられました。
実は2匹も見かけました。

本種の産卵行動について『狩蜂生態図鑑』p150にとても興味深い記述を見つけました。

後脚の一部に半円状のくぼみがあり、左右の後脚を合わせると、産卵管の大きさにピッタリとしたすき間となる。これを照準として、朽木の中にいる幼虫に産卵している。


「日本産ヒメバチ目録」サイトには本種の寄主としてニトベキバチ、ヒラアシキバチ?、ニホンキバチが挙げられていました。

また、古い文献で次の記述を見つけました。

オオホシオナガバチが産卵に際し産卵管をまげて腹部第7〜8節間の膨張膜が気球のように大きく丸くふくれている。
南川仁博. "オオホシオナガバチの産卵状況." 昆蟲 36.2 (1968): 163.(PDFへのリンク)より
今回の映像ではアングルがいまいちなのか、この点はよく分かりませんでした。

ところで私はキバチの生態に疎いのですけど、木が切り倒されてしまったら中に潜むキバチの幼虫は成長できずに死んでしまうのですかね?
それとも初めから倒木を選んで産卵するキバチもいるのでしょうか。
オオホシオナガバチに産卵されたら捕食寄生される運命なので、どちらにせよもう関係ないですけどね。

※ 最近、砂防ダム改修工事のため沢の両岸の林を大量に伐採した結果、スギ倒木などが大量に転がっている状況でした。


※【追記】
『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』という名著の第9章 藏滿司夢「キノコとキバチと寄生バチ:枯れ木をめぐる奇妙な三者系」を読むと、オナガバチの仲間の産卵行動について詳しく知ることができました。
キバチ類を寄主として利用する寄生バチの(中略)1つはヒメバチ科オナガバチ亜科の寄生バチで、キバチの幼虫に外部寄生する殺傷寄生者として知られている。(中略)
腹部を高く持ち上げると同時に、長い産卵管鞘を木に突き立て、それをリードにして器用に産卵管を木の中へと挿入していく姿は圧巻である。挿入する産卵管の角度をときどき変えながら、木のなかに隠れるキバチ幼虫を探すのだ。この寄生バチのなかまは産卵管の先に感覚器と化学受容器を持っており、それによって産卵管が寄主に到達したことを認知すると寄主の体表に産卵する。 (p190より引用)
もう一つ勉強になったのは、寄主のキバチについてです。
キバチ亜科に属するキバチ類は全ての種類がマツ科やヒノキ科などの針葉樹を食樹とする。それに対して、ヒラアシキバチ亜科に属するキバチ類はブナ科やムクロジ科などの広葉樹を食樹としているのである。 (p185より引用)
今回私が観察した事例では、スギ倒木で産卵行動が行われたので、オオホシオナガバチの寄主はキバチ亜科に属する種類(ニトベキバチまたはニホンキバチ)に絞り込めそうです。(ヒラアシキバチ属は除外できる。)




2014/11/25

寄主モンスズメバチの巣の近くに産卵するムツボシベッコウハナアブ♀



2014年8月中旬

▼前回の記事
巣の裏のクヌギ樹洞を物色するモンスズメバチ♀

モンスズメバチの巣の定点観察4

クヌギの樹洞に営巣したモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)のコロニーを観察していると、不審な訪問者が繰り返し現れました。
ムツボシベッコウハナアブ♀(Volucella nigropicta)です。
左右の複眼が離れているので♀と判明。
同じ日にすぐ近くのミズナラ樹液酒場で♀♂共に樹液を舐めに来ていました。

▼関連記事
ミズナラ樹液を吸いつつ排泄するムツボシベッコウハナアブ♂
ミズナラの樹液を舐めるムツボシベッコウハナアブ♀
そのときの個体と比べて今回は黄色い腹部の体色がくすんでいる(薄い)ように見えますが、個体差でしょうか。
(もしかすると別種の可能性は?)
観察したドラマを紹介する前に、生態について少し予備知識が必要になります。

京都府レッドデータブックでムツボシベッコウハナアブの項目を参照すると、

生態は不明であるが、成虫はクヌギの樹液に集まることが知られている。一般にこの属の種の幼虫はスズメバチ等の巣内に生息し、日本産の種の多くがそうであるが、海外では樹液で生育する種も知られている。本種の幼虫もクヌギの樹液に生息しているか不明だが、いずれにしてもクヌギへの依存度は高い。

『日本動物大百科9昆虫II』p133によると、

ベッコウハナアブの仲間の幼虫はスズメバチ類とマルハナバチ類の巣内に入り、巣の下の土中にいて、ハチの食物の残りや、ハチの幼虫、蛹、成虫の死骸などが棄てられるのを食べているらしい。巣の活動が終わりに近づくと、巣盤まで入り込んで幼虫や蛹などを食べることもある。しかし、かなり早い時期から巣盤などに入り込んで幼虫などを食べることもあるようで、単なる掃除者ではなく、捕食寄生者に変身することもあるようである。

ちなみに『スズメバチの科学』p64-65によれば、同属のニトベベッコウハナアブはモンスズメバチの巣房内に白い卵塊を産みつけることが報告されています。

オオスズメバチやモンスズメバチのように外被が釣り鐘型になっている種の巣下には、ベッコウハナアブの幼虫やナミクシヒゲハネカクシの幼虫が多数生息し、排泄物などを食べて、掃除屋として君臨している。

堅苦しいお勉強(予習)はこのぐらいにしておいて、映像をご覧ください。
ムツボシベッコウハナアブ♀がクヌギの幹を登ったり下りたりして樹洞の横を通り過ぎました。
初めは巣内のモンスズメバチに気づかれていません。
ムツボシベッコウハナアブ♀がときどき腹端を幹に付けているのは産卵でしょうか。
(卵を確認していないので、確証はありません。)
必ずしもムツボシベッコウハナアブの成虫♀がモンスズメバチの巣内に侵入できなくても、樹洞の近くに産卵できれば孵化した幼虫が自力で這って寄主の巣に侵入するのかもしれません。

再び同じクヌギの幹に飛来したムツボシベッコウハナアブ♀(腹部の黄色が濃い別個体?)が歩いたり飛んだりして寄主の巣に接近を試みるも、今度はモンスズメバチのワーカー♀に追い払われました。
同様のシーンが何度も繰り返されています。
寄主モンスズメバチに追い払われる瞬間を1/2倍速のスローモーションでリプレイしてみました。

ちなみに、このクヌギの木は昆虫が集まる樹液を分泌していませんでした。
したがって、ムツボシベッコウハナアブ♀が繰り返し来たのは樹液目当てではなく、モンスズメバチの巣に寄生産卵することが目的でしょう。

クヌギの木で私が見かけたムツボシベッコウハナアブは♀だけでした。
すぐ隣のミズナラ樹液酒場ではムツボシベッコウハナアブ♀の産卵行動は見ていません。
ムツボシベッコウハナアブの幼虫は樹液を摂取するのではないか、という上記レッドデータブックが示唆する可能性に私は否定的です。
やはりスズメバチの巣内で掃除屋(スカベンジャー)として育つのではないか、と推理するのが自然な気がします。

どうやらムツボシベッコウハナアブ♀は、寄主の巣内に産卵する機会を虎視眈々と狙っている印象を受けました。
しかし樹洞への侵入に成功した例は見ていません。
いつもモンスズメバチが気づいて飛びかかり、巣の近くから排除しています。
ムツボシベッコウハナアブのことを無害な掃除屋あるいは共生者ではなく、明らかに厄介な捕食寄生者(=天敵)とみなしているのでしょうか。
モンスズメバチの巣を初めて見つけたこの日、どうして蜂がこれほど興奮したように巣の回りを飛び回り忙しなく巣に出入りしているのか、不思議でなりませんでした。※
味方同士の空中戦が頻発しています。
この状態が普通なのかな?
そうでなければ考えられる理由の一つとして、オオスズメバチなどの外敵に対してコロニー全体が警戒レベルを上げているのかもしれません。
この日は実際にクヌギの木の近くで飛ぶオオスズメバチを一度だけ目撃しました。(映像なし)
ただし、オオスズメバチが他の社会性ハチ(ミツバチやスズメバチ類)の巣を襲い始めるのは晩秋になってからのはずです。
ムツボシベッコウハナアブ♀の接近を深刻な脅威と捉え、コロニー全体が最大限に警戒しているのでしょうか。
スズメバチよりもアブの方が動きが敏捷なので、殺される前に飛んで逃げてしまい、しばらくするとムツボシベッコウハナアブはクヌギの木に戻って来ます。
(※ 実は引っ越してきたばかりの移動巣ではないか?というまた別な解釈も抱いているのですけど、続報の記事で詳しく述べることにします。)

ムツボシベッコウハナアブの体色は黄色と黒の配色であり、モンスズメバチと少し似ていなくもありません。
アブ自身が捕食されないよう毒針を持ったスズメバチに似せたベーツ型擬態なのかもしれません。
また、体色を寄主に似せて油断させて巣に近づき産卵するという戦略が考えられますけど、実際は攻撃的擬態と呼べるほどの効果を果たしているかどうか、甚だ疑問です。
警戒中のモンスズメバチは巣に近づく者には同じ巣の仲間に対してもとりあえず迎撃する方針のようです(味方への誤認攻撃をも辞さず)。
敵味方を視覚ではしっかり識別していませんでした。(シリーズ12のブログ記事を参照)
社会性昆虫を騙しの標的とするのであれば、体表の化学成分を似せる(化学擬態)ことが先決でしょう。

以上はあくまでも短い観察(午後の数時間)にもとづく個人的な仮説ですので、今後の定点観察が楽しみです。

つづく→シリーズ#5:扇風行動



【追記】
『マルハナバチの謎〈下巻〉 (ハリフマンの昆虫ウオッチング・社会性昆虫記)』p38によると、
寄生するものの外見は寄主の特徴にどこか似ています。(中略)ベッコウハナアブは殺されても、死後卵を排せつして自分たち一族の繁栄をはかります。粘っこい卵はすぐに産みつけられた場所にくっつき、卵からかえった幼虫は巣の古い繭に向かって突進します。



2014/10/27

ブロッコリーに産卵するモンシロチョウ♀



2014年8月上旬

家庭菜園のブロッコリー畑でモンシロチョウPieris rapae)が何頭も飛び回っていました。
ブロッコリーもアブラナ科なので、♀が食草の葉に産卵しているようです。
既にモンシロチョウの幼虫に食害されたようで、虫喰い穴だらけの葉もありました。



2014/09/22

電柱で集団産卵するマイマイガ♀(蛾)



2014年7月中旬

郊外某施設の駐車場でコンクリートの電柱に夥しい数のマイマイガ♀(Lymantria dispar japonica)がびっしり群がり、集団産卵していました。
夜に煌々と灯される水銀灯に誘引されて集まって来たのでしょう。
思わず笑ってしまうほどの大発生でした。
卵塊の表面には♀の毛が植えられ、越冬に備えて保護しています。
来春に孵化する幼虫はいくら広食性とは言え、果たして食草にありつけるのでしょうか?
近くの花壇や庭木は全滅でしょうが、とても食欲を満たせないでしょう。
その後、近隣住民の苦情が寄せられたようで、電柱の卵塊は除去されました(害虫駆除)。 (※追記参照)

今年は全国各地でマイマイガ大量発生のニュースが報じられました。(例:2014年8月28日朝日新聞@秋田県

『日本動物大百科9昆虫II』p78によると、

日没と同時にマイマイガの♀は活発になり、歩き回ったり飛び回ったりして産卵場所を探し、夜の間に産卵する。日本での最近の研究によれば、♀は、卵や孵化幼虫の生存に適した高さに産卵し、積雪の程度などによって、地方ごとに産卵の高さが異なるという。(信ぴょう性に疑問)


小汐千春『じらすメスと離れないオス―昼行性のガの場合』によると、
北海道立林業試験場におられる東浦康友さんが、マイマイガの♀の産卵場所選択に関する興味深い論文を発表された。マイマイガの♀は、北海道や北陸地方の雪の深いところでは、下枝より低い所、特に雪に埋もれる低い位置に産卵するのに対して、京都や奈良などの雪の少ない地方では下枝より高い所に産卵する傾向があり、これを、餌の乏しい冬期における鳥による捕食と、孵化後の幼虫にとってたいせつな餌までの距離という観点から解析している (『虫たちがいて、ぼくがいた:昆虫と甲殻類の行動』第2-2章p71より引用)


しかし、私個人としては、この説に懐疑的です。
今回撮影したフィールドは東北地方の雪国なのに、マイマイガの卵塊は冬期の積雪に埋もれそうにない高さにも多数産みつけられていました。



【追記】
中村眞樹子(NPO法人札幌カラス研究会)『なんでそうなの 札幌のカラス』を読むと、カラスがマイマイガの駆除に一役買っているのだそうです。
夏から秋にかけてよく大発生するマイマイガは、住民にとっては頭の痛い厄介者ですが、相当数の幼虫や卵塊をカラスが食べてくれています。これに限らず昆虫の大発生は突然のように起きますが、カラスがいるおかげで、人間への被害が少なく抑えられているのです。 (p70-71より引用)

ブト(=ハシブトガラス:しぐま註)はマイマイガなどをホバリング(停止飛翔)しながら食べます。蛹化する時期のあの大きさの幼虫になると、スズメでは食べる量が限られます。でも晩夏からの晩秋にかけてのガの大発生を抑えてくれるカラスの存在は、ほとんど思い出されることはありません。 p73より引用)
私もいつかカラスによる捕食シーンを観察してみたいものです。






2014/08/24

ミツバの葉に産卵するキアゲハ♀【ハイスピード動画】




2014年6月下旬

キアゲハPapilio machaon hippocrates)は開けた草地に居る蝶だとばかり思っていたので、雑木森の中で飛ぶ姿を見かけて驚きました。
忙しなく飛び回る様子を見ていると、どうやら山道の下草で産卵する場所を探しているようです。

幼虫の食草(セリ科)に止まった♀の産卵シーンを240-fpsのハイスピード動画で撮影に成功しました。
軽く羽ばたいてバランスを取りながら腹端を軽く曲げて葉に擦り付け、卵を産み付けています。
近くの葉で計2回産卵しました。

産卵直後に調べてみると、真ん丸で黄白色の卵が葉表にすぐ見つかりました。
茎の一番上に付いた目立つ葉に一粒だけ産卵していました。
この植物は野生のミツバ(セリ科)と判明。
花は咲いていません。

この卵を採集して飼育するか迷ったのですけど、とても余力がなくて諦めました。
前年にはキアゲハの終齢幼虫から飼ってみたものの、寄生されたり蛹で死んだりして、成虫が羽化してくれませんでした。




【追記】
『日本動物大百科9昆虫II』p31によると、アゲハチョウ類の産卵行動はジャコウアゲハを例にとると
羽ばたきながら前あしで交互に葉の表面を激しく叩き(ドラミング行動)、やがてその葉にしがみついて産卵を始める。♀成虫の前肢には「葉の味」を感じる感覚毛が生えていて、これで食草特有の化学成分を感じているのだ。ドラミングは、食草以外の葉の上でも頻繁に行われる。

2014/07/21

ウツギの蕾に産卵するトラフシジミ春型♀



2014年6月中旬

春型のトラフシジミRapala arata)が平地でウツギを訪花しています。
ところが口吻を伸ばしていないので、花蜜が目的ではないようです。
花というよりも蕾のついた枝から枝へ歩いて移動しています。
ときどき翅を擦り合わせ、尾状突起を触角のように動かします。

蕾の付いた枝先にときどき腹端を擦り付け、産卵管を伸ばしていました。
撮影後に調べてみても、なぜか卵は見つけられませんでした。(私が経験不足なだけ?)
♀が本当に卵を産みつけたかどうか不明です。
産卵に適した場所を腹端で探る行動なのかもしれません。
蕾の近くだけでなく、ウツギの葉表でも腹端を擦り付けていました。

帰ってから幼虫図鑑サイトで調べてみると、トラフシジミ幼虫の食草としてウツギもリストアップされていました。
卵は青色らしい。


▼関連記事
リョウブの蕾に産卵するトラフシジミ春型♀


2014/06/14

卵鞘をぶら下げて歩くヤマトゴキブリ♀




2014年5月中旬

羽化してから10日後、ヤマトゴキブリ♀(Periplaneta japonica)の腹端から何か白っぽい物が脱腸のようにはみ出ていました。
産み始めの卵鞘は白い球体状で、少しだけ茶色に色づいています。
♂との求愛行動や交尾を観察する前に♀が卵鞘を産み始めてしまいました。
本種は♀だけで単為生殖が可能らしいのですが、普通に考えれば同居♂と交尾しているはずです。

産卵の過程や卵鞘の色の変化を微速度撮影したいところですが、♀が動き回るので断念。
仕方なく、数時間ごとに撮った短い映像をつなぎ合わせることにします。
やがて白い膜が破れて中から茶色の卵鞘が現れました。
♀の腹端の一部が裂けたように見えましたが、よく見ると蝶番のように外側に開く仕組みになっています。
産み終えたらこの蝶番は閉じるのでしょう。
♀は腹端に卵鞘をぶら下げたまま持ち歩いてガードします。



翌朝になると、腹端の卵鞘が無くなっていました。
卵鞘ガードは1日だけ行うようです。(これは毎回の産卵で同じ。)
腹端に卵鞘をぶら下げて持ち歩く点はコモリグモ♀が糸でくるんだ卵嚢を持ち歩く様と似ていると思ったのですが、ガード期間は異なりますね。
収斂進化なのでしょう。
当初は卵鞘をどこに隠したのか見つけられず、♀が食卵したのかとやきもきしました。
8日後、ようやく朽木の表面に産み付けられている卵鞘を発見しました。
卵鞘の表面には木屑が丁寧にまぶしてあり巧妙に偽装隠蔽されていたため、見落としていたのです。
腹端にぶら下げているときの卵鞘は乾いているように見えます。
朽木に産み付ける際には粘液または唾液で卵鞘をくっつけるのだろうと想像しました。

次に問題になるのは、産み付けられた卵鞘の表面の木屑です。
朽木に放置された後でゴキブリが歩き回る(踏みつける)結果、卵鞘が自然に汚れるのでしょうか。
わずか数時間でここまで満遍なく汚れるとはとても考えられません。
母親が意図的に木屑をまぶしているはずです。

卵鞘の表面は明らかに木屑なので、糞を塗りつけているのではないと思います。
以前、ヤマトゴキブリが朽木の樹皮を採食する行動を観察しました。

▼関連記事朽木を食べるヤマトゴキブリ♀
おそらく♀が夜間に朽木から噛みちぎった木屑を卵鞘の表面に丹念に塗りつけるのだろうと推測しました。(追記2、3を参照)
今まで読んだゴキブリ関連の本にはそのような隠蔽行動をするとの記述はありませんでした。(新発見?)
きっと、朽木を入れてゴキブリを飼育する人が今まで少なかったのでしょう。


餌を充分に与えてやるとヤマトゴキブリ♀は多産で、数日間隔で次々に卵鞘を産み落とします。
卵鞘の産み付けおよび隠蔽工作を証拠映像に残したくて挑戦しているのですけど、今のところうまくいきません。
最大のネックは撮影用の照明で、暗くしないと卵鞘を産み付けてくれないのです。
赤外線の暗視カメラが欲しいなぁ…。
食餌などは明るくても行うようになってくれたのですが、完全には照明に慣れてくれません。
もう一つの難点は、ヤマトゴキブリ♀は朽木の割れ目の奥など安全な隠れ家に潜んでいる間に卵鞘を産み付けることです。
物陰にこっそり隠れてやる行動を動画に撮るのは至難の業です(撮影アングルが確保できない)。



産みたての卵鞘は本で読んだ通り柔らかく、ピンセットで摘むときにプチッと潰れやすいので注意が必要です。
すぐには孵化しないので、日数が経って固まってから卵鞘を朽木から剥がして採取するようにします。
記念すべき一つ目の卵鞘はエタノール液浸標本にすることにしました。
浮くかと思いきや、意外にも70%エタノールよりも比重が重く沈みました。
固定されたら卵鞘の中を開いて卵を数える予定です。※

ヤマトゴキブリは1卵鞘あたり生まれてくる幼虫は20匹以下と非常に少ないが、一生の間に20個以上の卵鞘を産むそうです。


【追記】
※ エタノールで脱水固定された卵鞘の皮を切り開いて中身を調べてみました。
卵は9個×2列=計18個ありました。
卵の大きさは1×3mm。

講談社現代新書『ぼくらの昆虫記』に著者がヤマトゴキブリの飼育体験を記した章があります。
産卵後しばらくすると卵鞘を割っても、中の卵は比較的よく形を保つ。こうしてとりだした卵は、大きな卵鞘で14個、小さな卵鞘で8個が入っていた。また、一つ一つの卵は、細長い卵形をしており、その長径は3.7mmほどであった。(p72より)


【追記2】
ネット検索すると、「昆虫学講座 第5回ゴキブリ目」と題したPDFファイルで以下の記述を見つけました。
(ヤマトゴキブリ♀は)卵鞘を尾端から1日足らずではずして木材などにはり付ける。
【追記3】
クロゴキブリの飼育記録をまとめた本『ゴキブリを調べる』p20によると、
(クロゴキブリ♀は)うす暗く、やわらかで、てきとうな温度と湿度のあるところをさがして、卵のさやをおとします。おとすときには、紙きれや、ごみなどをだ液でまぜ、卵のさやにつけて、カムフラージュします。そして、かくれるものの内側やパンの上、戸棚のすみ、ひきだしのおくなどにくっつけます。


 【追記4】
盛口満『昆虫の描き方: 自然観察の技法II』p55によれば、

越冬幼虫から飼い始めたヤマトゴキブリは、春になると羽化し、さらに交尾をして、産卵をし始めた。飼育ケースの中には、折り曲げた画用紙をシェルター替わりに入れていたが、その表面に卵鞘が産み付けられた。また、卵鞘の表面には、紙の断片が張り付けられていた。

2014/06/11

ヤマツツジの蕾に産卵するコツバメ♀



2014年5月中旬

里山の広場に咲いたヤマツツジの赤い花にコツバメ♀(Callophrys ferrea ferrea)が来ていました。
吸蜜もせずに花から花へ飛び回り徘徊しているのが不思議でした。
ときどき腹端を曲げて花に擦り付ける仕草が見られたので、産卵に関係した行動のようです。
産卵に適した場所を探っているだけかもしれません。
帰ってから調べてみると、幼虫の食草はツツジ科のアセビの蕾とされていました。
しかし、ツツジの蕾に産卵する例もあるようです(ソース1ソース2)。
撮影後に卵の有無をしっかり確認しなかったことを後悔…。

ツツジの花から花へ飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました
ハイスピード動画でも羽ばたきが早過ぎるため、更に1/4倍速のスローモーションでリプレイ。



2014/04/16

ゴイシシジミの産卵・飛翔【ハイスピード動画】



2013年8月中旬

笹の葉裏(アズマネザサ?)に止まっているゴイシシジミTaraka hamada)を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
葉裏にはササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica)のコロニーがあります。
ゴイシシジミは口吻を伸ばしていないので、アブラムシの甘露を吸汁しているのではなさそうです。
腹端を葉裏に付けているので、♀が卵を産み付けているのかもしれません。
最後に方向転換してから葉裏を舐め、飛び去りました。
卵を確認しておらず、本当に産卵だったのかどうか定かではありません。
(そもそも私はゴイシシジミを形態で♀かどうか、しっかり判別できないのです。)
この日気づいたのですけど、ゴイシシジミは笹以外の葉に止まった際も腹端を葉に擦り付けて歩くことがあるようです。
この思わせぶりな行動は産卵とは無関係なのかな?
腹端の感覚毛で産卵場所を探っているのかもしれません。


2014/04/05

卵塊を毛で覆うクロテンフユシャク?♀(冬尺蛾)



2013年11月下旬・気温12℃

里山の尾根道の道標(標高〜630m)に登山客の忘れた木綿の白い手拭いが巻かれていて、そこに無翅の冬尺蛾♀が産卵していました。
地上からの高さは〜140cmで、東面に産卵していました。
周囲の環境は雑木林の潅木。

産卵後に卵塊を断熱保護するために植毛しているようです。
ときどき体を左右に揺すり、腹端に発達した毛束を卵塊に擦り付けています。
通常であればこんな目立つ場所ではなく樹皮に産卵するので、地味な灰褐色の毛で覆うことにより偽装(カモフラージュ)効果もあると思われます。
前の年に飼育下で同様の植毛行動を観察しましたが、野外で観察するのはこれが初めてです。

▼関連記事▼
シロオビフユシャク♀?(冬尺蛾)の産卵【15倍速映像】
側面から接写したり採寸するのをうっかり忘れてしまいました。
同じ手拭いで産卵していたチャバネフユエダシャク♀にすっかり気を取られていました。
この個体はシャクガ科フユシャク亜科でAlsophila属もしくはInurois属の♀だと思うのですが、どうでしょうか?
無翅の♀単独では同定が難しいらしいので、次回は交尾中の♀を採集してから産卵行動を観察するか、あるいは孵化した幼虫を飼育して成虫♂を得る必要があります。
暫定的に(当てずっぽうで)クロテンフユシャク♀(Inurois membranaria)?としておきます。
クロバネフユシャク♀(Alsophila foedata)にしては時期が早い?

前日の天気は一日中雨。
この日は晴れたが、翌日からまた天気が崩れる予報。



2014/03/22

チャバネフユエダシャク♀の産卵【冬尺蛾】



2013年11月下旬・気温12℃

里山の尾根道の道標(標高〜630m)に登山客の忘れた木綿の白い手拭いが巻かれていて、そこに冬尺蛾♀が産卵していました。
チャバネフユエダシャク♀(Erannis golda)は初見です。
地上からの高さは〜140cmで、東面に産卵していました。
周囲の環境は雑木林の潅木。

野外で冬尺蛾の産卵行動を観察したのはこれが初めて。
ちなみに前年にはシロオビフユシャク♀の産卵を飼育下で観察しています。

▼関連記事▼
シロオビフユシャク♀?(冬尺蛾)の産卵【15倍速映像】

白地に黒い斑模様のチャバネフユエダシャク♀はほぼ無翅で、よく見ると極めて短い翅がありました。
徘徊しながら腹端から橙色の産卵管を伸ばして白布を探っているものの、産卵行動そのものは撮れませんでした。

落ち着いて白布を調べると、白布の皺や襞の奥に卵塊が一列に産み付けられていました。
卵塊は剥き出しの状態で、植毛やカモフラージュ(偽装隠蔽工作)などは全く施されていません。
シロオビフユシャク♀とは異なり、チャバネフユエダシャク♀の腹端には毛束が無いので、卵塊が毛で被覆されていないのは当然ですね。

卵の色は黄色で、一部は緑色でした。
この色の違いはどういうことでしょうか。

  • 別種の冬尺蛾♀が産んだ卵か?
  • 受精卵/未受精卵の違い?
  • 産卵後の時間経過で変色する?
飼育下で産卵を観察すれば分かるはずです。
ところがこの♀を採集して持ち帰っても、卵を産んでくれませんでした。
既に体内の卵を全て産み尽くしたのかもしれません。

白布ごと卵塊を採集すれば良かったかもしれませんが、とても越冬卵から成虫まで世話して育てる自信が無くて諦めました。

前日の天気は一日中雨。
この日は晴れたが、翌日からまた天気が崩れる予報。





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