ラベル 産卵 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 産卵 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2014/11/25

寄主モンスズメバチの巣の近くに産卵するムツボシベッコウハナアブ♀



2014年8月中旬

▼前回の記事
巣の裏のクヌギ樹洞を物色するモンスズメバチ♀

モンスズメバチの巣の定点観察4

クヌギの樹洞に営巣したモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)のコロニーを観察していると、不審な訪問者が繰り返し現れました。
ムツボシベッコウハナアブ♀(Volucella nigropicta)です。
左右の複眼が離れているので♀と判明。
同じ日にすぐ近くのミズナラ樹液酒場で♀♂共に樹液を舐めに来ていました。

▼関連記事
ミズナラ樹液を吸いつつ排泄するムツボシベッコウハナアブ♂
ミズナラの樹液を舐めるムツボシベッコウハナアブ♀
そのときの個体と比べて今回は黄色い腹部の体色がくすんでいる(薄い)ように見えますが、個体差でしょうか。
(もしかすると別種の可能性は?)
観察したドラマを紹介する前に、生態について少し予備知識が必要になります。

京都府レッドデータブックでムツボシベッコウハナアブの項目を参照すると、

生態は不明であるが、成虫はクヌギの樹液に集まることが知られている。一般にこの属の種の幼虫はスズメバチ等の巣内に生息し、日本産の種の多くがそうであるが、海外では樹液で生育する種も知られている。本種の幼虫もクヌギの樹液に生息しているか不明だが、いずれにしてもクヌギへの依存度は高い。

『日本動物大百科9昆虫II』p133によると、

ベッコウハナアブの仲間の幼虫はスズメバチ類とマルハナバチ類の巣内に入り、巣の下の土中にいて、ハチの食物の残りや、ハチの幼虫、蛹、成虫の死骸などが棄てられるのを食べているらしい。巣の活動が終わりに近づくと、巣盤まで入り込んで幼虫や蛹などを食べることもある。しかし、かなり早い時期から巣盤などに入り込んで幼虫などを食べることもあるようで、単なる掃除者ではなく、捕食寄生者に変身することもあるようである。

ちなみに『スズメバチの科学』p64-65によれば、同属のニトベベッコウハナアブはモンスズメバチの巣房内に白い卵塊を産みつけることが報告されています。

オオスズメバチやモンスズメバチのように外被が釣り鐘型になっている種の巣下には、ベッコウハナアブの幼虫やナミクシヒゲハネカクシの幼虫が多数生息し、排泄物などを食べて、掃除屋として君臨している。

堅苦しいお勉強(予習)はこのぐらいにしておいて、映像をご覧ください。
ムツボシベッコウハナアブ♀がクヌギの幹を登ったり下りたりして樹洞の横を通り過ぎました。
初めは巣内のモンスズメバチに気づかれていません。
ムツボシベッコウハナアブ♀がときどき腹端を幹に付けているのは産卵でしょうか。
(卵を確認していないので、確証はありません。)
必ずしもムツボシベッコウハナアブの成虫♀がモンスズメバチの巣内に侵入できなくても、樹洞の近くに産卵できれば孵化した幼虫が自力で這って寄主の巣に侵入するのかもしれません。

再び同じクヌギの幹に飛来したムツボシベッコウハナアブ♀(腹部の黄色が濃い別個体?)が歩いたり飛んだりして寄主の巣に接近を試みるも、今度はモンスズメバチのワーカー♀に追い払われました。
同様のシーンが何度も繰り返されています。
寄主モンスズメバチに追い払われる瞬間を1/2倍速のスローモーションでリプレイしてみました。

ちなみに、このクヌギの木は昆虫が集まる樹液を分泌していませんでした。
したがって、ムツボシベッコウハナアブ♀が繰り返し来たのは樹液目当てではなく、モンスズメバチの巣に寄生産卵することが目的でしょう。

クヌギの木で私が見かけたムツボシベッコウハナアブは♀だけでした。
すぐ隣のミズナラ樹液酒場ではムツボシベッコウハナアブ♀の産卵行動は見ていません。
ムツボシベッコウハナアブの幼虫は樹液を摂取するのではないか、という上記レッドデータブックが示唆する可能性に私は否定的です。
やはりスズメバチの巣内で掃除屋(スカベンジャー)として育つのではないか、と推理するのが自然な気がします。

どうやらムツボシベッコウハナアブ♀は、寄主の巣内に産卵する機会を虎視眈々と狙っている印象を受けました。
しかし樹洞への侵入に成功した例は見ていません。
いつもモンスズメバチが気づいて飛びかかり、巣の近くから排除しています。
ムツボシベッコウハナアブのことを無害な掃除屋あるいは共生者ではなく、明らかに厄介な捕食寄生者(=天敵)とみなしているのでしょうか。
モンスズメバチの巣を初めて見つけたこの日、どうして蜂がこれほど興奮したように巣の回りを飛び回り忙しなく巣に出入りしているのか、不思議でなりませんでした。※
味方同士の空中戦が頻発しています。
この状態が普通なのかな?
そうでなければ考えられる理由の一つとして、オオスズメバチなどの外敵に対してコロニー全体が警戒レベルを上げているのかもしれません。
この日は実際にクヌギの木の近くで飛ぶオオスズメバチを一度だけ目撃しました。(映像なし)
ただし、オオスズメバチが他の社会性ハチ(ミツバチやスズメバチ類)の巣を襲い始めるのは晩秋になってからのはずです。
ムツボシベッコウハナアブ♀の接近を深刻な脅威と捉え、コロニー全体が最大限に警戒しているのでしょうか。
スズメバチよりもアブの方が動きが敏捷なので、殺される前に飛んで逃げてしまい、しばらくするとムツボシベッコウハナアブはクヌギの木に戻って来ます。
(※ 実は引っ越してきたばかりの移動巣ではないか?というまた別な解釈も抱いているのですけど、続報の記事で詳しく述べることにします。)

ムツボシベッコウハナアブの体色は黄色と黒の配色であり、モンスズメバチと少し似ていなくもありません。
アブ自身が捕食されないよう毒針を持ったスズメバチに似せたベーツ型擬態なのかもしれません。
また、体色を寄主に似せて油断させて巣に近づき産卵するという戦略が考えられますけど、実際は攻撃的擬態と呼べるほどの効果を果たしているかどうか、甚だ疑問です。
警戒中のモンスズメバチは巣に近づく者には同じ巣の仲間に対してもとりあえず迎撃する方針のようです(味方への誤認攻撃をも辞さず)。
敵味方を視覚ではしっかり識別していませんでした。(シリーズ12のブログ記事を参照)
社会性昆虫を騙しの標的とするのであれば、体表の化学成分を似せる(化学擬態)ことが先決でしょう。

以上はあくまでも短い観察(午後の数時間)にもとづく個人的な仮説ですので、今後の定点観察が楽しみです。

つづく→シリーズ#5:扇風行動



【追記】
『マルハナバチの謎〈下巻〉 (ハリフマンの昆虫ウオッチング・社会性昆虫記)』p38によると、
寄生するものの外見は寄主の特徴にどこか似ています。(中略)ベッコウハナアブは殺されても、死後卵を排せつして自分たち一族の繁栄をはかります。粘っこい卵はすぐに産みつけられた場所にくっつき、卵からかえった幼虫は巣の古い繭に向かって突進します。



2014/10/27

ブロッコリーに産卵するモンシロチョウ♀



2014年8月上旬

家庭菜園のブロッコリー畑でモンシロチョウPieris rapae)が何頭も飛び回っていました。
ブロッコリーもアブラナ科なので、♀が食草の葉に産卵しているようです。
既にモンシロチョウの幼虫に食害されたようで、虫喰い穴だらけの葉もありました。



2014/09/22

電柱で集団産卵するマイマイガ♀(蛾)



2014年7月中旬

郊外某施設の駐車場でコンクリートの電柱に夥しい数のマイマイガ♀(Lymantria dispar japonica)がびっしり群がり、集団産卵していました。
夜に煌々と灯される水銀灯に誘引されて集まって来たのでしょう。
思わず笑ってしまうほどの大発生でした。
卵塊の表面には♀の毛が植えられ、越冬に備えて保護しています。
来春に孵化する幼虫はいくら広食性とは言え、果たして食草にありつけるのでしょうか?
近くの花壇や庭木は全滅でしょうが、とても食欲を満たせないでしょう。
その後、近隣住民の苦情が寄せられたようで、電柱の卵塊は除去されました(害虫駆除)。 (※追記参照)

今年は全国各地でマイマイガ大量発生のニュースが報じられました。(例:2014年8月28日朝日新聞@秋田県

『日本動物大百科9昆虫II』p78によると、

日没と同時にマイマイガの♀は活発になり、歩き回ったり飛び回ったりして産卵場所を探し、夜の間に産卵する。日本での最近の研究によれば、♀は、卵や孵化幼虫の生存に適した高さに産卵し、積雪の程度などによって、地方ごとに産卵の高さが異なるという。(信ぴょう性に疑問)


小汐千春『じらすメスと離れないオス―昼行性のガの場合』によると、
北海道立林業試験場におられる東浦康友さんが、マイマイガの♀の産卵場所選択に関する興味深い論文を発表された。マイマイガの♀は、北海道や北陸地方の雪の深いところでは、下枝より低い所、特に雪に埋もれる低い位置に産卵するのに対して、京都や奈良などの雪の少ない地方では下枝より高い所に産卵する傾向があり、これを、餌の乏しい冬期における鳥による捕食と、孵化後の幼虫にとってたいせつな餌までの距離という観点から解析している (『虫たちがいて、ぼくがいた:昆虫と甲殻類の行動』第2-2章p71より引用)


しかし、私個人としては、この説に懐疑的です。
今回撮影したフィールドは東北地方の雪国なのに、マイマイガの卵塊は冬期の積雪に埋もれそうにない高さにも多数産みつけられていました。



【追記】
中村眞樹子(NPO法人札幌カラス研究会)『なんでそうなの 札幌のカラス』を読むと、カラスがマイマイガの駆除に一役買っているのだそうです。
夏から秋にかけてよく大発生するマイマイガは、住民にとっては頭の痛い厄介者ですが、相当数の幼虫や卵塊をカラスが食べてくれています。これに限らず昆虫の大発生は突然のように起きますが、カラスがいるおかげで、人間への被害が少なく抑えられているのです。 (p70-71より引用)

ブト(=ハシブトガラス:しぐま註)はマイマイガなどをホバリング(停止飛翔)しながら食べます。蛹化する時期のあの大きさの幼虫になると、スズメでは食べる量が限られます。でも晩夏からの晩秋にかけてのガの大発生を抑えてくれるカラスの存在は、ほとんど思い出されることはありません。 p73より引用)
私もいつかカラスによる捕食シーンを観察してみたいものです。






2014/08/24

ミツバの葉に産卵するキアゲハ♀【ハイスピード動画】




2014年6月下旬

キアゲハPapilio machaon hippocrates)は開けた草地に居る蝶だとばかり思っていたので、雑木森の中で飛ぶ姿を見かけて驚きました。
忙しなく飛び回る様子を見ていると、どうやら山道の下草で産卵する場所を探しているようです。

幼虫の食草(セリ科)に止まった♀の産卵シーンを240-fpsのハイスピード動画で撮影に成功しました。
軽く羽ばたいてバランスを取りながら腹端を軽く曲げて葉に擦り付け、卵を産み付けています。
近くの葉で計2回産卵しました。

産卵直後に調べてみると、真ん丸で黄白色の卵が葉表にすぐ見つかりました。
茎の一番上に付いた目立つ葉に一粒だけ産卵していました。
この植物は野生のミツバ(セリ科)と判明。
花は咲いていません。

この卵を採集して飼育するか迷ったのですけど、とても余力がなくて諦めました。
前年にはキアゲハの終齢幼虫から飼ってみたものの、寄生されたり蛹で死んだりして、成虫が羽化してくれませんでした。




【追記】
『日本動物大百科9昆虫II』p31によると、アゲハチョウ類の産卵行動はジャコウアゲハを例にとると
羽ばたきながら前あしで交互に葉の表面を激しく叩き(ドラミング行動)、やがてその葉にしがみついて産卵を始める。♀成虫の前肢には「葉の味」を感じる感覚毛が生えていて、これで食草特有の化学成分を感じているのだ。ドラミングは、食草以外の葉の上でも頻繁に行われる。

2014/07/21

ウツギの蕾に産卵するトラフシジミ春型♀



2014年6月中旬

春型のトラフシジミRapala arata)が平地でウツギを訪花しています。
ところが口吻を伸ばしていないので、花蜜が目的ではないようです。
花というよりも蕾のついた枝から枝へ歩いて移動しています。
ときどき翅を擦り合わせ、尾状突起を触角のように動かします。

蕾の付いた枝先にときどき腹端を擦り付け、産卵管を伸ばしていました。
撮影後に調べてみても、なぜか卵は見つけられませんでした。(私が経験不足なだけ?)
♀が本当に卵を産みつけたかどうか不明です。
産卵に適した場所を腹端で探る行動なのかもしれません。
蕾の近くだけでなく、ウツギの葉表でも腹端を擦り付けていました。

帰ってから幼虫図鑑サイトで調べてみると、トラフシジミ幼虫の食草としてウツギもリストアップされていました。
卵は青色らしい。


▼関連記事
リョウブの蕾に産卵するトラフシジミ春型♀


2014/06/14

卵鞘をぶら下げて歩くヤマトゴキブリ♀




2014年5月中旬

羽化してから10日後、ヤマトゴキブリ♀(Periplaneta japonica)の腹端から何か白っぽい物が脱腸のようにはみ出ていました。
産み始めの卵鞘は白い球体状で、少しだけ茶色に色づいています。
♂との求愛行動や交尾を観察する前に♀が卵鞘を産み始めてしまいました。
本種は♀だけで単為生殖が可能らしいのですが、普通に考えれば同居♂と交尾しているはずです。

産卵の過程や卵鞘の色の変化を微速度撮影したいところですが、♀が動き回るので断念。
仕方なく、数時間ごとに撮った短い映像をつなぎ合わせることにします。
やがて白い膜が破れて中から茶色の卵鞘が現れました。
♀の腹端の一部が裂けたように見えましたが、よく見ると蝶番のように外側に開く仕組みになっています。
産み終えたらこの蝶番は閉じるのでしょう。
♀は腹端に卵鞘をぶら下げたまま持ち歩いてガードします。



翌朝になると、腹端の卵鞘が無くなっていました。
卵鞘ガードは1日だけ行うようです。(これは毎回の産卵で同じ。)
腹端に卵鞘をぶら下げて持ち歩く点はコモリグモ♀が糸でくるんだ卵嚢を持ち歩く様と似ていると思ったのですが、ガード期間は異なりますね。
収斂進化なのでしょう。
当初は卵鞘をどこに隠したのか見つけられず、♀が食卵したのかとやきもきしました。
8日後、ようやく朽木の表面に産み付けられている卵鞘を発見しました。
卵鞘の表面には木屑が丁寧にまぶしてあり巧妙に偽装隠蔽されていたため、見落としていたのです。
腹端にぶら下げているときの卵鞘は乾いているように見えます。
朽木に産み付ける際には粘液または唾液で卵鞘をくっつけるのだろうと想像しました。

次に問題になるのは、産み付けられた卵鞘の表面の木屑です。
朽木に放置された後でゴキブリが歩き回る(踏みつける)結果、卵鞘が自然に汚れるのでしょうか。
わずか数時間でここまで満遍なく汚れるとはとても考えられません。
母親が意図的に木屑をまぶしているはずです。

卵鞘の表面は明らかに木屑なので、糞を塗りつけているのではないと思います。
以前、ヤマトゴキブリが朽木の樹皮を採食する行動を観察しました。

▼関連記事朽木を食べるヤマトゴキブリ♀
おそらく♀が夜間に朽木から噛みちぎった木屑を卵鞘の表面に丹念に塗りつけるのだろうと推測しました。(追記2、3を参照)
今まで読んだゴキブリ関連の本にはそのような隠蔽行動をするとの記述はありませんでした。(新発見?)
きっと、朽木を入れてゴキブリを飼育する人が今まで少なかったのでしょう。


餌を充分に与えてやるとヤマトゴキブリ♀は多産で、数日間隔で次々に卵鞘を産み落とします。
卵鞘の産み付けおよび隠蔽工作を証拠映像に残したくて挑戦しているのですけど、今のところうまくいきません。
最大のネックは撮影用の照明で、暗くしないと卵鞘を産み付けてくれないのです。
赤外線の暗視カメラが欲しいなぁ…。
食餌などは明るくても行うようになってくれたのですが、完全には照明に慣れてくれません。
もう一つの難点は、ヤマトゴキブリ♀は朽木の割れ目の奥など安全な隠れ家に潜んでいる間に卵鞘を産み付けることです。
物陰にこっそり隠れてやる行動を動画に撮るのは至難の業です(撮影アングルが確保できない)。



産みたての卵鞘は本で読んだ通り柔らかく、ピンセットで摘むときにプチッと潰れやすいので注意が必要です。
すぐには孵化しないので、日数が経って固まってから卵鞘を朽木から剥がして採取するようにします。
記念すべき一つ目の卵鞘はエタノール液浸標本にすることにしました。
浮くかと思いきや、意外にも70%エタノールよりも比重が重く沈みました。
固定されたら卵鞘の中を開いて卵を数える予定です。※

ヤマトゴキブリは1卵鞘あたり生まれてくる幼虫は20匹以下と非常に少ないが、一生の間に20個以上の卵鞘を産むそうです。


【追記】
※ エタノールで脱水固定された卵鞘の皮を切り開いて中身を調べてみました。
卵は9個×2列=計18個ありました。
卵の大きさは1×3mm。

講談社現代新書『ぼくらの昆虫記』に著者がヤマトゴキブリの飼育体験を記した章があります。
産卵後しばらくすると卵鞘を割っても、中の卵は比較的よく形を保つ。こうしてとりだした卵は、大きな卵鞘で14個、小さな卵鞘で8個が入っていた。また、一つ一つの卵は、細長い卵形をしており、その長径は3.7mmほどであった。(p72より)


【追記2】
ネット検索すると、「昆虫学講座 第5回ゴキブリ目」と題したPDFファイルで以下の記述を見つけました。
(ヤマトゴキブリ♀は)卵鞘を尾端から1日足らずではずして木材などにはり付ける。
【追記3】
クロゴキブリの飼育記録をまとめた本『ゴキブリを調べる』p20によると、
(クロゴキブリ♀は)うす暗く、やわらかで、てきとうな温度と湿度のあるところをさがして、卵のさやをおとします。おとすときには、紙きれや、ごみなどをだ液でまぜ、卵のさやにつけて、カムフラージュします。そして、かくれるものの内側やパンの上、戸棚のすみ、ひきだしのおくなどにくっつけます。


 【追記4】
盛口満『昆虫の描き方: 自然観察の技法II』p55によれば、

越冬幼虫から飼い始めたヤマトゴキブリは、春になると羽化し、さらに交尾をして、産卵をし始めた。飼育ケースの中には、折り曲げた画用紙をシェルター替わりに入れていたが、その表面に卵鞘が産み付けられた。また、卵鞘の表面には、紙の断片が張り付けられていた。

2014/06/11

ヤマツツジの蕾に産卵するコツバメ♀



2014年5月中旬

里山の広場に咲いたヤマツツジの赤い花にコツバメ♀(Callophrys ferrea ferrea)が来ていました。
吸蜜もせずに花から花へ飛び回り徘徊しているのが不思議でした。
ときどき腹端を曲げて花に擦り付ける仕草が見られたので、産卵に関係した行動のようです。
産卵に適した場所を探っているだけかもしれません。
帰ってから調べてみると、幼虫の食草はツツジ科のアセビの蕾とされていました。
しかし、ツツジの蕾に産卵する例もあるようです(ソース1ソース2)。
撮影後に卵の有無をしっかり確認しなかったことを後悔…。

ツツジの花から花へ飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画で撮影してみました
ハイスピード動画でも羽ばたきが早過ぎるため、更に1/4倍速のスローモーションでリプレイ。



2014/04/16

ゴイシシジミの産卵・飛翔【ハイスピード動画】



2013年8月中旬

笹の葉裏(アズマネザサ?)に止まっているゴイシシジミTaraka hamada)を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
葉裏にはササコナフキツノアブラムシCeratovacuna japonica)のコロニーがあります。
ゴイシシジミは口吻を伸ばしていないので、アブラムシの甘露を吸汁しているのではなさそうです。
腹端を葉裏に付けているので、♀が卵を産み付けているのかもしれません。
最後に方向転換してから葉裏を舐め、飛び去りました。
卵を確認しておらず、本当に産卵だったのかどうか定かではありません。
(そもそも私はゴイシシジミを形態で♀かどうか、しっかり判別できないのです。)
この日気づいたのですけど、ゴイシシジミは笹以外の葉に止まった際も腹端を葉に擦り付けて歩くことがあるようです。
この思わせぶりな行動は産卵とは無関係なのかな?
腹端の感覚毛で産卵場所を探っているのかもしれません。


2014/04/05

卵塊を毛で覆うクロテンフユシャク?♀(冬尺蛾)



2013年11月下旬・気温12℃

里山の尾根道の道標(標高〜630m)に登山客の忘れた木綿の白い手拭いが巻かれていて、そこに無翅の冬尺蛾♀が産卵していました。
地上からの高さは〜140cmで、東面に産卵していました。
周囲の環境は雑木林の潅木。

産卵後に卵塊を断熱保護するために植毛しているようです。
ときどき体を左右に揺すり、腹端に発達した毛束を卵塊に擦り付けています。
通常であればこんな目立つ場所ではなく樹皮に産卵するので、地味な灰褐色の毛で覆うことにより偽装(カモフラージュ)効果もあると思われます。
前の年に飼育下で同様の植毛行動を観察しましたが、野外で観察するのはこれが初めてです。

▼関連記事▼
シロオビフユシャク♀?(冬尺蛾)の産卵【15倍速映像】
側面から接写したり採寸するのをうっかり忘れてしまいました。
同じ手拭いで産卵していたチャバネフユエダシャク♀にすっかり気を取られていました。
この個体はシャクガ科フユシャク亜科でAlsophila属もしくはInurois属の♀だと思うのですが、どうでしょうか?
無翅の♀単独では同定が難しいらしいので、次回は交尾中の♀を採集してから産卵行動を観察するか、あるいは孵化した幼虫を飼育して成虫♂を得る必要があります。
暫定的に(当てずっぽうで)クロテンフユシャク♀(Inurois membranaria)?としておきます。
クロバネフユシャク♀(Alsophila foedata)にしては時期が早い?

前日の天気は一日中雨。
この日は晴れたが、翌日からまた天気が崩れる予報。



2014/03/22

チャバネフユエダシャク♀の産卵【冬尺蛾】



2013年11月下旬・気温12℃

里山の尾根道の道標(標高〜630m)に登山客の忘れた木綿の白い手拭いが巻かれていて、そこに冬尺蛾♀が産卵していました。
チャバネフユエダシャク♀(Erannis golda)は初見です。
地上からの高さは〜140cmで、東面に産卵していました。
周囲の環境は雑木林の潅木。

野外で冬尺蛾の産卵行動を観察したのはこれが初めて。
ちなみに前年にはシロオビフユシャク♀の産卵を飼育下で観察しています。

▼関連記事▼
シロオビフユシャク♀?(冬尺蛾)の産卵【15倍速映像】

白地に黒い斑模様のチャバネフユエダシャク♀はほぼ無翅で、よく見ると極めて短い翅がありました。
徘徊しながら腹端から橙色の産卵管を伸ばして白布を探っているものの、産卵行動そのものは撮れませんでした。

落ち着いて白布を調べると、白布の皺や襞の奥に卵塊が一列に産み付けられていました。
卵塊は剥き出しの状態で、植毛やカモフラージュ(偽装隠蔽工作)などは全く施されていません。
シロオビフユシャク♀とは異なり、チャバネフユエダシャク♀の腹端には毛束が無いので、卵塊が毛で被覆されていないのは当然ですね。

卵の色は黄色で、一部は緑色でした。
この色の違いはどういうことでしょうか。

  • 別種の冬尺蛾♀が産んだ卵か?
  • 受精卵/未受精卵の違い?
  • 産卵後の時間経過で変色する?
飼育下で産卵を観察すれば分かるはずです。
ところがこの♀を採集して持ち帰っても、卵を産んでくれませんでした。
既に体内の卵を全て産み尽くしたのかもしれません。

白布ごと卵塊を採集すれば良かったかもしれませんが、とても越冬卵から成虫まで世話して育てる自信が無くて諦めました。

前日の天気は一日中雨。
この日は晴れたが、翌日からまた天気が崩れる予報。





2014/03/01

赤トンボ♂♀の連結打水産卵【ハイスピード動画】



2013年9月下旬

農道の水溜まりでアカトンボの仲間(種名不詳)が何組も一緒に産卵していました。
連結打水産卵の様子を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
タンデムの停空飛翔が見事で、影の動きもフォトジェニック♪
前で飛ぶ♂とのタイミングが合わず、ときどき♀が空振りすることもあります。

♀の腹面は白い。アキアカネ? ナツアカネ?
同定用の写真を撮ろうと思ったときには皆どこかへ行ってしまいました…。


2014/02/28

産卵中のクルマバッタモドキ♀



2013年10月下旬

河川敷の遊歩道で砂の多い地面に穴を掘って産卵しているバッタを見つけました。
胸背にX紋を確認したのでクルマバッタモドキ♀(Oedaleus infernalis)と判明。
この辺りは分布の北限(東北地方南部)らしい。
腹端を伸ばして地面に差し込んでいます。

産卵行動を最後まで見届けたかったのですけど、このジョギングコースを向こうから走って来る人が居ます。
このままではバッタが踏み潰されてしまうか、跳んで逃げられてしまう…と焦り、慌てて採集に切り替えました。
産卵中の♀は意外におとなしく(動きが鈍く)、ありあわせの紙袋を被せるだけで簡単に捕獲出来ました。

クルマバッタモドキ♀が産卵していた穴を覗いてみると、卵は無く未だ穴を掘っている段階だったようです。

交尾が済んで卵が成熟したメスは地面を掘り進みながら腹部を普段の2倍以上のばし、産卵する。卵は非常に細かい泡でくるまれており生まれたばかりは白いが固まると薄い赤褐色となる。メスは力つきるまでの3ヶ月間の間、3-6回ほど産卵する。(wikipediaより)

1円玉を並べた産卵坑

忙しくて数日間、死骸を放置していたら胸背にあったX紋が消えていました(非常に見えにくい)。
標本の翅を広げて、後翅の黒紋を確認しました。
♀にしては小柄な個体のようです。
飼育下での産卵観察にもいつか挑戦してみたいです。
腹部を解剖したら卵を見れたかもしれませんね。


標本:側面@方眼紙
標本:腹面@方眼紙
左翅
前翅
後翅に黒紋

2014/01/29

ミドリヒョウモン♀の産卵と交尾拒否



2013年9月下旬

山裾の林道の草むらでミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)が産卵しているようです。
そこへもう一頭(♂)が飛来しました。
産卵中の♀に求愛するも、拒否されたのかすぐに飛び去りました。
♀がどのような交尾拒否行動をしたのか、よく分かりませんでした。



2014/01/05

石垣に産卵するミドリヒョウモン♀暗色型



2013年9月下旬

林縁で山裾を法面補強するコンクリートブロックの辺りを飛び回る暗色型のミドリヒョウモン♀(Argynnis paphia)が居ます。
石垣に止まると驚いたことに腹端を曲げて擦り付けるように産卵していました。
忙しなく飛んで石垣を横に移動しながら産卵を続けます。

その後は草むらに下りて産卵していました。(映像なし)
どうやら産卵基質は何でも良いみたいで、手当り次第あちこちに産んでいます。
しかし、よくよく見ると無機質なコンクリートブロックそのものではなく、その隙間に生えたコケ(地衣類?)を選んでその上に産卵しているようです。

本種の幼虫はスミレ類を食べて育つそうですが、食草に産み付ける親心も無い放任主義とは意外でした。
きわめて多産のr戦略なのでしょうか?
雪国で越冬するための知恵なのかもしれません。(本種は卵または若齢幼虫で越冬するとのこと。)

動き回る蝶を追っていると産卵場所を見失いがちで、卵そのものは確認していません。


【追記】
私が知らなかっただけで、実はこのような産卵行動は別に珍しくないのかもしれません。
『日本動物大百科9昆虫II』p48によると、
1卵ずつ産む産卵様式は大型ヒョウモンチョウ類でも見られるが、このグループでは卵は食草に産みつけられるのではなく、食草の自生する生息場所内の立木、枯れ枝、小石、コケ類、その他に産みつけられる。


【追記2】
『チョウのはなしII』p13より
ミドリヒョウモンは秋になって食草のスミレがありそうな樹林の中にやってくると、あたりの立木の樹皮などに卵を産むのです。春になって孵化した幼虫は、木を伝ってスミレにたどりつくのですが、わずか2mmくらいの仔虫にとって、ときには10m以上もの道のりは苦難の旅立ちといえましょう。



2013/12/19

産卵中のマイマイガ♀(蛾)



2013年8月上旬

某山寺の板壁の隅にマイマイガ♀(Lymantria dispar japonica)がじっと止まっていました。
飛び立つ瞬間の動画を撮るつもりで翅に触れたのですが、全く動じません。
翅をめくると卵塊が見えたので、産卵中だったようです。
♀は死んでいるのかと思いきや、かすかに動きました。
「卵塊には産卵時に♀が植えた毛がある」らしいので、接写すればよかったですね。

ドクガ科でもマイマイガの成虫に毒毛はないので、触れてもかぶれたりする心配は無用です。

【追記】
英語版wikipediaの解説によると、マイマイガの♀は飛べないので羽化した場所の近くに産卵するらしい。


ただし、日本産のマイマイガについては当てはまらず、交尾を終えた♀は日没後に歩行や飛翔が活発になり産卵場所へ移動することを後に知りました。
マイマイガを研究した小汐千春『じらすメスと離れないオス―昼行性のガの場合』によると、
アジアやヨーロッパの♀は飛ぶらしいが、アメリカの♀は飛ばないようだというのである。もともとヨーロッパから人工的に持ち込まれた個体群であるのに、アメリカの個体群に飛翔能力がないらしいことは、一種のボトルネック効果ともいうべき現象で興味深い。 (『虫たちがいて、ぼくがいた:昆虫と甲殻類の行動』第2-2章p69より引用)


【追記2】
『繭ハンドブック』p107によれば、
(マイマイガ)卵塊の表面に♀成虫腹部の鱗毛を付着させている。





2013/10/26

ギンヤンマ♂♀の連結産卵



2013年8月中旬

池の岸辺に生えたガマの葉にギンヤンマAnax parthenope)の連結ペアが止まり、産卵していました。
憧れのギンヤンマを初めて見て興奮しました。

♀は腹端を水に浸すだけで、全身を水没させることはありません。

ギンヤンマの成虫は交尾後にオスとメスが連結したまま、あるいは、単独で水面に突き出た水草などに止まる。メスは腹部先端にある産卵管を植物の組織内に突き刺し、1粒ずつ産卵する。(wikipediaより)

ギンヤンマのカップルが連結したまま少し飛んで産卵場所を移動したので、私も水際まで近づき望遠で狙います。
やや側面のアングルになり、胸部側面に黒条が無いのでクロスジギンヤンマは除外されます。

実は池の上をパトロールする別個体の♂がいたのですけど、その飛翔シーンは速過ぎて撮れませんでした。
産卵中にあぶれ♂が接近すると、翅を少し持ち上げかすかに震わせるだけで撃退しました。
強引に♀を強奪しないところが紳士的だなーと思いました。
それでもあぶれ♂は何度もやって来たことが、カップルの動きで分かります。
♂は交尾した♀の首根っこを掴んでおけばライバル♂に寝取られる心配はないのでしょう。(交尾後ガード)
ギンヤンマの♂は性成熟すると池で縄張り争いするらしい。(『カラー自然シリーズ15:ギンヤンマ』より)
縄張りの広さは長さ30m、幅10mにおよぶことがあるとのこと。



【追記】
図鑑『ネイチャーガイド:日本のトンボ』でギンヤンマを参照すると、
交尾を終えたペアは連結態のまま水面に飛来し、浮葉植物の葉や浮いた枯死植物などに産卵する。♀単独での産卵も行う。 (p207より引用)



▼関連記事(6年後に撮影)
池で単独産卵するギンヤンマ♀


ギンヤンマ♂♀@連結産卵。♀♂ともに脚の体節が赤褐色
ギンヤンマ♂♀@連結産卵


2013/10/17

笹の葉裏でアブラムシの甘露を舐め産卵するゴイシシジミ♀



2013年8月上旬

山道を歩いていたら笹の群落(アズマネザサ?)から2頭のゴイシシジミTaraka hamada)が飛び立ちました。
しばらく待つと笹の葉裏に戻りました。
2頭とも翅が丸みを帯びているので♀だと思います。

♀の翅は丸みを帯び、とくに前翅の外縁は丸みが強いが、♂では直線状で翅の端が尖るので区別できる。寒地産の♀の前翅の表には、はっきりした白い斑紋が出ることがある。(『標準原色図鑑全集1:蝶・蛾』p52より)

その葉裏にはササコナフキツノアブラムシと思われるアブラムシがびっしり群がっています。
ゴイシシジミの幼虫は笹に付くアブラムシを捕食する(完全肉食性)という唯一無二の珍しい食性をもちます。
そのため成虫♀はアブラムシのコロニーに産卵します。

♀が腹端で葉裏に触れながらゆっくり移動しているのは産卵なのか、単に探っているだけなのか、現場ではよく分かりませんでした。
(夕暮れ時のため、動画を撮るにはやや光量不足でした。)
直後の葉裏に卵の有無も確認すれば良かったですね…。
アブラムシのコロニーで伸ばした口吻を動かし、甘露(アブラムシの分泌液)を吸汁しているようです。

ゴイシシジミもアブラムシも、その生態はとても興味深いので、少し予習をしてから定点観察に通うことにします。

つづく→「笹の葉裏でアブラムシを捕食するゴイシシジミ幼虫【微速度撮影】

ゴイシシジミ吸汁@アブラムシ
ゴイシシジミ吸汁@アブラムシ
ゴイシシジミ吸汁@アブラムシ



こちらの動画は8月中旬の昼間に再訪して撮ったものです。
これも♀の産卵行動でしょうか。

ずっと見ていると、どうもササ以外の葉に止まった際も腹端を葉に擦り付けて歩くことがあるようです。
思わせぶりな行動ですけど、必ずしも産卵行動ではないのかもしれません。
腹端の感覚器でアブラムシの存在を探っているのでしょうか。


ランダムに記事を読む