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2016/06/06

ヨシの葉に残るオツネントンボの産卵痕



2016年5月上旬


▼前回の記事
♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀

オツネントンボ♀(Sympecma paedisca)の産卵地点となった湿地帯を4日後に再訪してみると、水溜りの水が少し干上がりかけていました。

産卵したヨシの生えた手前の岸辺から水溜りが干上がってる。

2日前に産卵したヨシの葉を探してマクロレンズで接写してみると、粒状の点列が並んでいました。
葉縁に朝露の水滴が光っています。

ミミズ腫れのような刺青のような産卵痕が並んでいます。
強拡大しても残念ながら倍率不足で卵の中はよく見えませんでした。
胚の頭の向きは♀の産卵姿勢に対してどちら向きなのか知りたかったのですけど、やはり本格的な顕微鏡が必要になりそうです。
もしかすると、葉裏から観察した方が見え易いのでしょうか?

孵化のシーンを観察したいので、葉ごと採集して持ち帰り飼育すべきかどうか悩みます。
現場に残しても、このまま雨が降らなければ水溜りが完全に干上がってしまい、孵化したヤゴは生き残れないでしょう。
未経験の私が採取したら植物体を枯らしてしまいそうですが、中の卵も死んでしまうのではないか?という不安があります。
「近畿地方のトンボ雑記」サイトでオツネントンボの孵化を観察した記録を見つけました。
それによると、

最短卵期は11日,平均卵期(半数孵化)は13日でした.


つづく→





2016/05/30

♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀



2016年5月上旬
▼前回の記事
尾繋がりのオツネントンボ♀♂がヨシの葉に産卵開始

オツネントンボ♀(Sympecma paedisca)が産卵中でも♂ががっちり束縛するのは、ライバル♂に寝取られないようにガード(産卵警護)して確実に自分の精子で受精した卵を産んでもらおうという企みなのでしょう。
ところが私が少し目を離した隙に、♂が尾繋がりを解除して飛び立ち、近くの柳の低灌木の方へ飛び去りました。
てっきり♂は尾繋がりで産卵を最後まで見届けると思い込んでいたので、交尾後ガード解除の瞬間を撮り損ねてしまいました。残念無念…。
尾繋がりの状態で♂は後ろで行われている産卵の進展状況を見れないはずです(トンボの複眼の広い視野では真後ろも見えるのか?!)。
産卵を始めてある程度の時間が経過すると♂の交尾後ガードする衝動が減退消失するのでしょう。

交尾後ガードなどと難しい概念を持ち出さなくても♂の離脱を説明できそうです。
♀がヨシの葉の根元から上に登りつつ産卵するので、行き場所が無くなった♂が葉先から追い出されたというか、♀に場所を譲ったのかもしれません。(尾繋がりのまま♂だけ葉裏に回りこむのは無理なのか?)

それとも、空腹になった♂がどうしても我慢できず目の前に飛来した獲物を狩るために♀を残して飛び立った可能性もありますかね?

♂を見失ったものの、しばらくすると近くに生えたススキ枯れ茎に止まっているのを発見。
この状態でも近くで産卵している♀を警護しているという意図はあるのでしょうか?
別個体の♂が縄張りに侵入してきた時の♂の反応を見たかったのですが、そのような展開にはなりませんでした。
今の♀を警護しつつ、あわよくば次の♀が飛来したら交尾したいのかもしれません。

一方、取り残された♀は単独で産卵を続けます。
予備知識がなければ、この静止姿勢の単独♀を見つけても産卵行動とは思わないかもしれません。
♂の付き添いがあっても無くても♀の産卵の様子は特に変わりません。
腹端を葉身から離してしばらく休息してから、また産卵を再開しました。

産卵の完了を待たずに私の方が飽きてしまい、撮影終了。
三脚が無いと長時間の撮影は肉体的に疲れてしまい集中力も限界があります。
産卵地点を定規で測ると地面からの高さ約18cmでした。

wikipediaによると、オツネントンボの

卵の期間は1-2週間ほどで、年に1回の産卵を行う[3]。ヤゴ(幼虫)の期間は1.5-3か月[3]。7-9月にヤゴが羽化して成虫となり、未熟のまま越冬し翌年交尾して、植物の組織内に卵を産み付ける[5][1]。

卵から孵化するまで定点観察してみます。
ヨシの葉が大きく育つにつれて産卵痕の形状も少し変化するかもしれません。

つづく→ヨシの葉に残るオツネントンボの産卵痕

左に見える上に伸びた葉にも産卵痕
オツネントンボ♀@単独産卵@ヨシ葉

オツネントンボ♂@尾繋がり解除直後+ススキ枯れ茎




【おまけの動画】
単独産卵シーンの一部(@2:06〜)を6倍速の早回し映像に加工してみました。
ブログ限定で公開します。
三脚を使っていないので、手ブレはご容赦ください。


2016/05/28

尾繋がりのオツネントンボ♀♂がヨシの葉に産卵開始



2016年5月上旬

▼前回の記事
ヨシの葉に産卵するオツネントンボ♀【接写】

ここで前回から時間を少し遡ります。
夕方に湿地帯の遊歩道を私が歩いていたら、尾繋がりしたオツネントンボSympecma paedisca)の♀♂ペアが驚いて飛び立ち、水溜りの近くに生えたヨシの枯れ茎に止まり直しました。
これからハート型の交尾体勢に入るのかと期待して撮り始めたら、産卵を始めたのでした。

カメラを警戒したのか、茎の反対側に回り込んで隠れました。
こちらもそっと回り込んで隠し撮りします。
♀は水平に伸ばしていた腹部を曲げて腹端で枯れ茎に触れました。
枯れ茎は見るからに固そうで産卵基質として適しているとは思えません。
やがて♀は身繕いを始めました。
後脚で棘状の産卵管を左右から挟み込んで、しごくように掃除しています。

再びタンデムで枯れ茎から飛び立ち、下に生えたばかりのヨシの若葉に止まり直しました。
♀は直ちに産卵姿勢になりました。
♀が歩いて下に降りようとすると、♂も追従します。
またタンデムで飛び立つも、同じ葉に止まり直し、産卵します。
翅の縁紋は♂が濃くて♀が薄いですね。(オツネントンボは常にそうなのかな?)
どうも♀はここが気に入らなかったようで、タンデムで飛び立つと見失ってしまいました。

慌てて追いかけると、水溜りの端っこでなんとか♀♂ペアを見つけることができました。
産卵場所の選定(飛行)は♂が主導権を握っているのかな?
気に入らなければ♀が一瞬先に飛び立つのでしょうか?
それとも♀の不満を感じた♂が阿吽の呼吸で先導するのでしょうか?(♀をグイグイ引っ張っていく亭主関白タイプ?)
タンデム飛行(尾繋がり)の飛び立ちをハイスピード動画で撮れば分かるかもしれません。

ようやく安住の地を見つけ、とあるヨシの葉表で落ち着いて産卵を始めました。(@1:45〜)
オツネントンボの産卵を観察するのは初めてなので、この後はひたすら望遠マクロで長撮りしました。
途中で撮影アングルを何度か変えています。
合間にマクロレンズで接写した産卵映像は前回紹介しました。
背後の湿地帯ではオオヨシキリの鳴き声♪が響き渡ります。
本当は産卵シーンを微速度撮影したかったのですけど、あいにく三脚を持参していませんでした。
葉身に卵を並べていく順番を早回し映像で記録したかったです。

撮影中はトンボに夢中で気づかなかったのですが、後で写真を見直すと、同じヨシの茎についた別の若葉にも似たような(刺青のようなミミズ腫れのような)産卵痕が見えます。
やはり人気のスポットには集中するようです。

♀が産卵中でも♂ががっちり束縛するのは、ライバル♂に寝取られないようにガード(警護)して確実に自分の精子で受精した卵を産んでもらおうという企みなのでしょう。
♂による交尾後ガードはいつまで続くのか?

つづく→♂が離れた後も単独で産卵するオツネントンボ♀






【おまけの動画】
産卵シーンの一部を6倍速の早回し映像に加工してみました(@8:42〜)。
ブログ限定で公開します。
三脚を使っていないので、手ブレはご容赦ください。


2016/05/27

ヨシの葉に産卵するオツネントンボ♀【接写】



2016年5月上旬

尾繋がりしたオツネントンボSympecma paedisca)の♀♂ペアが産卵していました。
場所は、湿地帯の水溜りの岸に生えかけたヨシ(=葦、アシ)の群落です。
そっと近寄りマクロレンズで接写してみると、翅の縁紋がずれていることを確認できたので、ホソミオツネントンボではなくオツネントンボです。

ヨシ若葉の表面に止まった♀の腹端には、焦げ茶色でやや湾曲した棘状の突起があります。
その産卵管をヨシの縦に走る葉脈に沿って葉身の薄い植物組織内に器用に差し込んで、卵を一粒ずつ産み付けています。
産卵管を引き抜くと真横にずれて挿し直すため、産卵痕はほぼ等間隔で横一列に並びます。
葉縁に達すると♀はヨシの葉を少し前進してからまた横へ産み進めます。
その結果、独特のパターンで刺青のような産卵痕が並ぶことになります。
もっと細かく観察すると、♀は腹部を屈曲させΩの体勢で産卵を始めます。
♀は少しずつ腹部を後ろに伸ばしていくため、産卵痕の列は後ろへ後ろへ並びます。
腹部が伸び切ったり腹端が障害物(ヨシの茎)に突き当たったりすると、♀はヨシの葉を少し前進してから改めて産卵を再開します。

♂は産卵する♀の首根っこを掴んだままおとなしく待っています。
尾繋がりの♀♂ペアが左右の足でヨシの葉を抱え込むことで葉身を軽く丸め(凸状に湾曲)、産卵しやすくしているのかもしれません。
一心不乱に産卵する♀の前脚の先が左右ともに欠損している事に気づきました。
本種は「越年蜻蛉」の名前が示すように成虫で越冬することで有名ですから、凍傷で壊死したのかな?

帰ってから手持ちのトンボ関連本や図鑑を調べても、オツネントンボの産卵行動に関する記述は見つかりませんでした。
こんな時期に産卵するということも、植物組織内に産むことも知りませんでした。
ヨシの葉が大きく育つと産卵痕はどのような形状になるのでしょう?
ところで、孵化した幼虫(ヤゴ)はヨシの茎を歩いて降りて下の水溜りに自力で入水するのでしょうか?
ヤゴは鰓呼吸のはずですが、陸上ではどうするのでしょう?
それともヨシの葉裏から孵化してすぐ水溜りに落下するのかな?

つづく→尾繋がりのオツネントンボ♀♂が産卵開始


オツネントンボ♂側面@尾繋がり+産卵中
オツネントンボ♂縁紋@尾繋がり+産卵中
オツネントンボ♀側面@尾繋がり+産卵中。
焦げ茶色の部分に白い毛が生えています。
オツネントンボ♀産卵管@尾繋がり+産卵中@ヨシ葉

2016/01/18

網にかかったトンボには目もくれず花を食べるイシサワオニグモ♀(蜘蛛)



2015年10月上旬

花を食べるイシサワオニグモ♀(蜘蛛)の謎#3:


このイシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)がゲテモノ食いに走ったのは、ひどく飢えているからでしょうか?
空腹状態を調べるために、何か普通の獲物(昆虫)を網に給餌してみましょう。

2年前の観察によれば、イシサワオニグモ♀は食事中にもし網に新たな獲物がかかれば食べかけを置いて新しい獲物を確保しに行くはずです。
梱包ラッピングして網に吊るしてから食べかけの獲物に戻りました。

▼関連記事
網にかかったオツネントンボ♂を捕帯でラッピングするイシサワオニグモ♀(蜘蛛)

この時期はめっきり虫の数が減り探すのに苦労したのですが、なんとか近くでアキアカネ♀(Sympetrum frequens)を生け捕りにしました。



ところが私の予想に反して、給餌したトンボが円網上で暴れても隠れ家のクモは完全に無視していました。(午後15:18)
甑から隠れ家に伸びる信号糸が切れている訳ではありませんし、クモは網の振動を感知しているはずです。

活きの良い虫よりもアメリカセンダングサの花に夢中!という驚くべき結論になりました。

※ 映像では網に付けたトンボが擬死したようにおとなしく、クモが気づかないのは当然と思うかもしれません。
撮影を止めてから(両手を使って)念の為に網上のトンボをつついたりして刺激してもクモは無反応でした。

イシサワオニグモ♀が虫と花のどちらを欲しているのか嗜好性を調べるのであれば、その2つを網に同時に付けてやりクモに選ばせるべきでしょうか?

次は音叉で網に振動刺激を与えてみました。(午後15:25)
残念ながら動画ファイルが破損してしまいお見せできませんが、実験をしつこく繰り返してもクモは騙されず無反応でした。
音叉をかなり強く叩いて鳴らしてから網に触れたのにクモは隠れ家から網に降りて来ず、相変わらずアメリカセンダングサの花を手放しませんでした。

以上の結果から、この悪食の個体は飢えているせいで止むなく花を食べたのではなく、花の味がよほど気に入って病みつきになったのでしょう。
造網性のオニグモの仲間が自然状態で花を常食しているとは考え難いのですが、それでも花を与えれば副食として食べることがあるというのは衝撃的で興味深い知見です。

※ 素人臭い実験でネガティブな結果が出た時(クモが無反応)にいつも解釈に悩むのですけど、私が続けざまに変な物を網に付けるのでクモがいじけてしまったり、学習して「狼少年にはもう騙されないぞ!」と不信感を強めてしまった可能性もありますかね?
もっと時間間隔を開けて実験すべきなのか、こうした実験の正式な作法を知りたいところです。


いつになったらクモが花を捨てるのか、花がどこまで体外消化されるのか、見届けたかったのですけど帰る時間が迫り、泣く泣く観察を打ち切りました。
最後に見た午後15:30にもイシサワオニグモ♀は花を食べ続けていました。
夜まで待てば円網の張り替えを観察できたかもしれません。

網に残されたトンボ1匹とアメリカセンダングサの花2個をクモは結局食べたのか、捨てたのか、どちらでしょうね?

花を食べるクモというのは非常に興味深く、更に追求する価値がありそうです。
私も未だ半信半疑なので、とりあえず追試が必要です。
同一個体のイシサワオニグモ♀に後日もう一度アメリカセンダングサの花を給餌すると、今度はすぐに捨てるでしょうか?
もし再び捕食すれば、本当に花の味が気に入ったと言えるでしょう。
花の種類を変えてみたらどうなるでしょうか?
また、イシサワオニグモ以外の造網性クモは花を食べるのか?などの対照実験もしてみたいですね。

これ以来、クモの網を見つける度に花を投げつける日々が始まりました。

つづく→#4:隠れ家でアメリカセンダングサの花を噛むイシサワオニグモ♀(蜘蛛)


2015/12/26

円網にかかったナツアカネ♀を捕食するアカオニグモ♀(蜘蛛)



2015年9月下旬・午前10:28

アカオニグモ♀の定点観察#11


近くで生け捕りにしたナツアカネ♀(Sympetrum darwinianum)をアカオニグモ♀(Araneus pinguis)の垂直円網に給餌してみました。
あまり暴れ過ぎないようにトンボの後翅を毟り取ってから網に投げつけると、意外にも暴れずにじっとしています(擬死?)。



隠れ家のクモは無視しています。
つい先程行った異物除去実験で糠喜びさせてしまったので、
「きっとまた狼少年だ…」「疑似餌にはもう騙されないぞ!」と警戒しているのでしょうか?
草の葉でトンボをつついてみてもおとなしくしています。
諦めて一旦トンボを網から引き剥がしてから再び網に投げつけると、今度はトンボが激しく暴れました。(映像はここから)
クモが隠れ家から信号糸を伝って網の中心部へ直行し、獲物に噛み付きました。
毒の回りが遅く、赤トンボはしばらく暴れています。
ナツアカネ♀が暴れても構わずアカオニグモ♀は捕帯で軽くラッピングしながら周囲の網を噛み切ります。
明るい昼間に見ているせいか、捕帯に使う糸の量は少ない印象です。
獲物を咥えながら円網の甑を経由すると、信号糸伝いに一気に隠れ家へ戻りました。
隠れ家に吊り下げた獲物を手元に引き寄せ、ゆっくり捕食します。

つづく→#12:破網後に隠れ家で休む夜のアカオニグモ♀【蜘蛛:暗視映像】



2015/10/12

クロイトトンボ♀♂の交尾



2015年7月下旬

雨上がりの山道を尾繋がりで飛んで来た(やや低空飛行)クロイトトンボParacercion calamorum calamorum)の♀♂ペアが道端の草むらに止まりました。
尾繋がり状態のまま、前にいる♂がまず副性器に移精しました。
つづいて後ろで首根っこを掴まれた♀が腹部を前に曲げ、♂の副性器と結合しました。
これでペアがハート型の交尾姿勢になりました。
胴体をくねらせています。
背面および側面から撮影。
先を急ぐ用事があった私は、連結解除まで見届けられませんでした。
(尾繋がりのままで産卵行動に移行するのかな?)



トンボ類を見分けるのは苦手なのでなんとか採集したかったのですが、茂みの奥に居るため踏み込んで近づいたら逃げられそうに思い断念しました。
どうにか写真鑑定でクロイトトンボだろうと同定できました。
その際に「神戸のトンボ」サイトに掲載されたクロイトトンボ属の検索表を参考にしました。
個人的にクロイトトンボは初見です。
東北地方では希な種類らしい。
近くにある溜池をいつか重点的に調べないといけません。



【追記】
上村佳孝『昆虫の交尾は、味わい深い…。 (岩波科学ライブラリー)』によれば、
♂副性器を拡大すると、ライバル♂の精子を掻き出すためのするどいトゲが並ぶ。(精子競争に勝つための「攻め」の適応 p20より引用) 
・トンボの交尾後ガードは、精子競争に対する「守り」の進化だ。 
・(ギフチョウやウスバシロチョウで見られるような)「貞操帯」はトンボでは進化し得ないだろう。トンボを含む多くの昆虫の♀では、精子が入ってくる「入り口」は受精した卵が体の外に出て行く「出口」を兼ねている。つまり、巨大な交尾栓をつけられた♀は、産卵できなくなる可能性が高いのだ。



2015/09/09

蛾を捕食するシオカラトンボ♂



2015年7月中旬

河川敷で何か大きな獲物を抱えたトンボが飛び回っていました。
砂利道の雑草に着陸してようやく落ち着いて食べ始めたところを撮影すると、シオカラトンボ♂(Orthetrum albistylum speciosum)でした。
トンボに疎い私は、シオカラトンボ♂にしては側面から見た黒紋が違う気がしたのですけど、腹部が上下に平べったいのはシオカラトンボの特徴なのだそうです。

風が吹いてイネ科の草が大きく揺れても必死にしがみ付き、食餌を続けます。
餌食となった蛾はなんとなくマイマイガですかね?(自信なし)
獲物の頭部から食べています。
大顎で咀嚼する動きが恐ろしや。
横を歩行者が通り過ぎたときは警戒して咀嚼を中断しました。
撮りながら少しずつ近づいたら、最後は獲物を抱えたまま飛んで逃げられました。
土手の茂みの上へ飛んで行き、見失ってしまいました。

後で思うと、食べ終わるまでじっくり長撮りすべきでしたね。
忍び寄って採集できるかな?と途中から欲が出てしまいました。
獲物の翅は食べ残して捨てるはずなので、慌てなくても同定できたのに…。
トンボを撮り慣れていないのです。



2015/08/29

川沿いで捕食活動するハグロトンボ♀♂の群れII【HD動画&ハイスピード動画】



2015年7月中旬

▼前回の記事
川沿いで捕食活動するハグロトンボ♀♂の群れ【HD動画&ハイスピード動画】

郊外を流れる川のコンクリート護岸に並ぶハグロトンボ♀♂(Calopteryx atrata)が飛び立ち空中で虫を捕らえては岸に戻る様子を、今度は少し引きの絵(広角)で撮ってみました。
縄張り争いにしては変だし、どうして求愛行動に発展しないのだろう?と思いながら初めは見ていました。
後半は240-fpsハイスピード動画です。(@〜1:35)



2015/08/18

川沿いで捕食活動するハグロトンボ♀♂の群れ【HD動画&ハイスピード動画】



2015年7月中旬

郊外を流れる川のコンクリート護岸にハグロトンボCalopteryx atrata)が集まっていました。
必ず顔を川に向け、水際でほぼ一列に止まっています。
ときどき飛び立って水面の上を飛び、すぐに舞い戻る、という謎の行動を繰り返しているのが気になりました。

幸いハグロトンボの性別を見分けるのは簡単で、♀は胴体が黒く、♂の腹部は金属光沢のある緑色です。
♀も♂も両方混在しているのに、なぜか求愛や交尾行動は見られません。
ハグロトンボは「ほかのカワトンボ類のような儀式ばった配偶行動はない。」(ヤマケイポケットガイド18『水辺の昆虫』p48より)

wikipediaによれば、ハグロトンボの

羽化後の若い個体は薄暗いところを好み、水域から離れて林の中で生活するが、成熟すると再び水域に戻り、明るい水辺の石や植物などに止まり縄張りを張る。

地上で止まっている時に黒い翅を勢い良く開閉して誇示しているのは以前も見たことがあります。
▼関連記事 
ハグロトンボ♀の翅紋誇示 
ハグロトンボ♂が翅を開閉
『昆虫の研究:トンボの楽園』p8によると、
ハグロトンボは、ふだん羽をとじてとまる。羽を開くのは、近づくなという縄張り争いの信号だ。
もし単純な縄張り争いだとしたら、領空侵犯されても迎撃して追い払わないのは解せません。
隣接個体とのパーソナルスペースを守るためだけに飛び上がっては止まり直し、川岸での居場所を変えているのでしょうか?

京都鴨川の名物となっている堤防に等間隔で座るヒトのカップル※のように、ハグロトンボも川岸で自然に等間隔で並ぶようになるのかな?
※ 興味のある方のためへのリンク集



回転寿司のように水面を流れてくる餌を待って捕食しているのでしょうか?
群れの様子を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみたら(@1:41〜)、飛び上がる謎が解けました。
飛びながら巧みに身を翻して小さな昆虫を空中で狩り、捕食していたのです。

皆が川の方を向いて止まっていた理由もこれで分かりました。
♀♂が集まっていたのに交尾しなかったのは、色気よりも食い気だったようです。
脚で捕らえた獲物を口元に持って行ってから着陸しました。
飛んでる獲物が小さ過ぎて見えないのが残念です。
ただし目の前の水面をアメンボが横切ってもハグロトンボは無反応です。
アメンボは肉食性の水生昆虫だから捕食の対象にはならないのでしょう。

着陸地点は元の位置とは限らず、右に左に移動します。


つづく→引きの絵で撮影


2015/06/11

クロスジギンヤンマ♀の単独産卵



2015年6月上旬

溜池の岸辺でクロスジギンヤンマ♀(Anax nigrofasciatus nigrofasciatus)が産卵していました。
私が気づかずに池の畔を歩いていたら驚いて飛び立つも、場所を変えてすぐ産卵を再開してくれました。

岸辺の水面に浮いた抽水植物の枯れた茎に止まって卵を産み付けています。
ときどき軽く飛び上がり、産卵場所を変えていました。
産卵法に関する図鑑の記述がことごとく的中していて、感嘆しました。

夕方、単独で産卵する。浮遊植物などの水面に近い部分の組織内に産卵。
『ヤマケイポケットガイド18:水辺の昆虫』p97より


♂と尾繋がりしないで♀が単独産卵する種類のトンボがいるという知識はあったものの、実際に見るのはこれが初めてでした。(追記:そんなことはなかった)
辺りを見回しても、産卵中の♀を警護する♂は居ませんでした。

途中からは取り出した三脚にカメラを固定し、じっくり撮らせてもらう余裕がありました。(映像では順番を逆にしてあります。)
この溜池は今年水量が激減し、水質が悪化したので心配です。
同じ場所で以前ギンヤンマ♂♀の連結産卵を観察していますが、クロスジギンヤンマは初見です。





2015/05/03

ニホンカワトンボの縄張り争い?求愛未遂?【ハイスピード動画】




2014年6月下旬

登山道入り口近くを流れる沢の横の薄暗い草むらで無色翅型のニホンカワトンボMnais costalis)が2匹争っていました。
東日本に分布するニホンカワトンボの♂には橙色翅と無色翅の二型があり(種内多形)、♀の翅は無色です。



冒頭、フキの葉で2匹のニホンカワトンボが休んでいます。
正面を向いた右側の個体Rは縁紋が白色なので♀のようです。(あるいは未熟な♂?) 
左側の個体Lは縁紋が褐色なので♂のようです。 互いに至近距離に止まっているのに、しばらく動きがありません。 
成熟♂同士なら縄張り争いで互いに闘争・排斥するはずなのに…と不思議に思いました。
縄張り争いの膠着状態なのかな? 
240-fpsのハイスピード動画に切り替えると、先に♀Rが飛び立ちました。 
それに反応して♂Lも離陸。 
低空でホバリング(停空飛翔)しつつ互いに向かい合い、軽い空中戦になりました。 
ところが激しい闘争や排斥行動にはならず、右手のフキの葉に双方が縦列で着陸しました。
♂が♀の背後にぴたりと付けました。 
♀に求愛したのに交尾には至らず、ふられたのですかね?
♀はどのように連結拒否の合図を♂に伝えたのでしょう?

wikipediaの解説によれば、ニホンカワトンボの
オスは水辺の植物や石に留まって縄張りを作り、近付いて来た他のオスを追い払う。メスが現れるとホバリングして求愛行動をする[2]。

後半は(@1:02〜)近くの葉に単独で止まっていた♂個体が飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。




【追記】
『トンボの繁殖システムと社会構造』の第一章「異なる繁殖戦略の共存と種内多形―カワトンボ―」を読んで今後の観察のためにお勉強。
ただし本書はカワトンボの分類が未だ混乱していた時期に執筆されているため、旧名のヒガシカワトンボが使われています。
以下、ポイントを抜き書き。

  • 透明♂は、橙色♂のように縄張りを占有することはなく、橙色♂の縄張りに侵入しては追い出される。また、一つの縄張りの周辺に長く止まることはなく、渓流に沿って少しずつ移動してはとどまる。(p4)
  • 橙色♂の方が透明♂よりも縄張りを占有するうえで優位にある。(p5)
  • 透明♂は橙色♂がいなければ、縄張りを占有する性質を持っている。(橙色♂の除去実験;p13)
  • ヒガシカワトンボの闘争行動は、水平追尾、上昇追尾、ラセン追尾、対峙飛翔にわけられる。(p13)
  • ヒガシカワトンボの橙色♂も♀を縄張りで発見すると、静止した♀の前で1、2秒間停止飛翔(求愛行動)してから、♀の胸部背面に乗りかかって連結になり、縄張り内で交尾する。(p18)
  • 透明♂は縄張りの周辺部に静止していて、時どきスニーキングによって♀の獲得を試みる。それが成功して♀と交尾する場合、透明♂が♀の前で停止飛翔せず、いきなり乗りかかる。(p18)
  • ヒガシカワトンボ♀が産卵基質としてしばしば利用する倒れた朽ち木などは、集中分布している。(p23)
  • 透明♂は橙色♂がいなければ、潜在的に縄張り占有の性質をもつが、実際には、橙色♂に縄張りを予め専有されるか、あるいは、奪い取られたりするために、自然状態では非縄張りになっている。透明♂は橙色♂の縄張りの周辺にスニーカーとしてとどまったり、より広い範囲を探索する傾向をもっている。(p24)
  • 透明♂は、通常、交尾後♀の産卵警護をしない。(p25)
  • 透明♂が個体群中で占める割合は、むしろ透明♂が多い。(p25)
  • 透明♂は求愛行動なしに交尾を試み、そのほとんどが成功する。(p25)
  • 透明♂の戦略は、橙色♂よりも劣位にあるため縄張りの維持ができず、スニーキング、または探索によって♀を獲得する。このようなスニーキング戦略は、透明の翅をもち、♀に外見が似ている透明型にはむしろ適している。(p27)

2015/04/17

稲穂に離着陸するナツアカネ♂の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】



2014年9月中旬

黄金色の稲穂が実った田んぼで赤トンボが飛んでいます。
農道から秋の風物詩を撮影しました。

写真鑑定でナツアカネ成熟♂(Sympetrum darwinianum)と判明。
顔色が赤いです。

ある稲穂に止まって休んでいるナツアカネ♂に注目すると、ときどきパッと飛び立っては近くを一回りしてから元の稲穂に戻る、という行動を繰り返していました。
トンボでよく見られるこの行動は「縄張りを張っている」と表現して良いのでしょうか?

稲穂を中心とした縄張りのパトロール飛行を休み休み行っているのでしょうか?
どうも交尾相手の♀または獲物の昆虫が飛来するのを待ち伏せしているようです。
後半は240-fpsのハイスピード動画に切り替えて撮ってみました。(@0:32〜)

スローモーション映像で分かったこと。

  • 飛び立つ直前に首をひねって巨大な複眼の視線を変えることがよくありました。スクランブル発進したものの、再着陸した際に獲物を捕らえていないので狩りには失敗したのでしょう。
  • 離陸直後に空中で急旋回したりフェイントのような変な(複雑な)動きをすることがありました。獲物と空中戦の追いかけっこをしているのでしょう。しかし引きの絵にすると、獲物の虫は小さ過ぎるのか映像に写っていませんでした。
  • 飛行中は着陸の直前まで脚を胴体に引きつけていました。空気抵抗を減じるためでしょう。



2015/03/06

アキアカネ♀♂の連結打水産卵【HD動画&ハイスピード動画】



2014年9月中旬

農道の水たまりで尾繋がりの赤トンボ♀♂が連結打水産卵していました。
その様子を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
雌雄どちらが連結飛翔の主導権を握っているのですかね?
たまに♂♀のタイミングが合わず、♀が空振りしていました。

同定のため連写モードで写真に撮ると、アキアカネSympetrum frequens)と判明。



2015/02/22

ヒメジョオンの茎にぶら下がるオニヤンマ♀



2014年6月下旬

田園地帯の道端(ガードレール横)に生えたヒメジョオンの茎にオニヤンマ♀(Anotogaster sieboldii)がしがみ付いていました。
羽化直後かと思ったのですけど、近くに羽化殻は見当たりません。
風が強い日でした。





2015/02/02

モノサシトンボ♂奇形個体が狩りに失敗【ハイスピード動画】



2014年8月中旬


▼前回の記事
モノサシトンボ♂奇形個体の飛翔【ハイスピード動画】

山中の池の畔で見つけたモノサシトンボ♂(Copera annulata)は、長い胴体が途中で曲がっている奇形の個体でした。
飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮っていると、狩りのシーンが偶然記録されていました。

木の葉に乗って休んでいる奇形モノサシトンボ♂は、前脚を擦り合わせ身繕いしています。
その目の前を小さな昆虫が飛んで来ました。
すかさず飛び立つと、空中で獲物をトゲだらけの脚で鷲掴みしようとしています。
獲物はヤブ蚊ですかね?
一度目は狩りに失敗し、更に追いかけて二度目は画面から外れてしまいました。
同じ葉に舞い戻って来た際に獲物を抱えていなかったので、おそらく取り逃がしたのでしょう。
奇形のせいで狩りに失敗したかどうかは分かりません。
腹部の異常ですから、影響があるとしたら繁殖行動(♀との尾繋がりなど)に支障を来すかもしれません。
比較対象として正常個体の狩りの瞬間を同じようにハイスピード動画に撮らないといけませんが、未だものにできていません。


▼関連記事(正常個体の捕食成功例)
蚊取りモノサシトンボ♂



2015/01/25

モノサシトンボ♂奇形個体の飛翔【ハイスピード動画】



2014年8月中旬

山中の池の茂みで奇形のモノサシトンボ♂(Copera annulata)を見つけました。
長い胴体が途中で曲がっている個体です。
原因不明ですが、羽化不全とか水質汚染の影響なのでしょうか?
葉から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
飛び立ってもすぐ近くの葉に再着陸するので、同一個体を追いかけて撮影を続けました。
腹部が曲がっていても飛翔には特に支障がないようです。
(厳密には空気抵抗が不均等になりそうですけど、飛行姿勢を制御できる範囲内なのでしょう。)
最後は採寸代わりに人差し指を写し込みました。
そのついでにトンボの腹端に軽く触れると驚いてつんのめるように緊急発進しました。
揚力よりも前への推進力を優先して避難したようです。
映像後半は1/5倍速のスローモーションでリプレイ。


▼つづく
モノサシトンボ♂奇形個体が狩りに失敗【ハイスピード動画】


▼関連記事
飛べ!モノサシトンボ(未成熟個体)【ハイスピード動画】



2015/01/12

ノシメトンボの連結打空産卵



2014年9月下旬

稲刈りが進行中の田んぼで、尾繋がりのトンボが飛びながら産卵していました。
黄金色の稲穂のすぐ上から連結打空産卵しています。
ハイスピード動画や同定用の写真を撮る前に♀♂ペアは飛び去り、見失ってしまいました。
映像を見る限り、おそらくノシメトンボSympetrum infuscatum)だと思います。
『ヤマケイポケットガイド18:水辺の昆虫』p152でノシメトンボの項目を参照すると、

♀♂が連結。挺水植物の生えているところで打空産卵
とあります。


水抜きされた田んぼに卵を産みつけても孵化できるのか、という疑問が湧きます。
調べてみると、本種は卵で越冬するらしい。
【参考サイト】:保存版 ノシメトンボの見分けと産卵によると、

春まで卵のままで越冬し、春先に水が田んぼに張られると孵化して幼虫になります。



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